こうふく の おうじ -1-
まち の うえ に たかく はしら が そびえ 、 その うえ に こうふく の おうじ の ぞう が たって いました 。 おうじ の ぞう は ぜんたい を うすい じゅんきん で おおわ れ 、 め は ふた つ の かがやく サファイア で 、 おうじ の つる ぎ の つか に は おおきな あか いる び ー が ひかって いました 。 おうじ は みんな の じまん でした 。 「 かざみどり と おなじ くらい に うつくしい 」 と 、 げいじゅつ てき な センス が ある と いう ひょうばん を え た がって いる ひと り の しかい ぎいん が いいました 。 「 もっとも かざみどり ほど べんりじゃ ない が ね 」 と つけくわえて い いました 。 これ は むそう か だ と おもわ れ ない ように 、 と しんぱい した から です 。 じっさい に は かれ は むそう か なんか じゃ なかった のです が 。
「 どうして あの こうふく の おうじ みたいに ちゃん と でき ない の 」 つき が ほしい と ないて いる おさない おとこのこ に 、 けんめいな お かあさん が ききました 。 「 こうふく の おうじ は けっして なに か を ほしがって ないたり し ない の よ 」
「 この せかい の なか に も 、 ほんとうに こうふくな ひと が いる 、 と いう の は うれしい こと だ 」 しつぼう した おとこ が 、 この すばらしい ぞう を みつめて つぶやきました 。 「 てんし の ようだ ね 」 と 、 あかるい あか の マント と きれいな しろい そで なし ドレス を きた よういく いん の こども たち が せいどう から でて きて い いました 。 「 どうして そのような こと が わかる の か ね 」 と すうがく きょうし が いいました 。 「 てんし など みた こと が ない のに 」
「 ああ 、 でも みた こと は あります よ 。 ゆめ の なか で 」 と こども たち は こたえました 。 すると すうがく きょうし は まゆ を ひそめて とても きびしい かおつき を しました 。 と いう の は かれ は こども たち が ゆめ を みる こと は よろしく ない と かんがえて いた から です 。
ある ばん 、 その まち に ちいさな ツバメ が とんで きました 。 ともだち ら は すでに 6 しゅうかん まえ に エジプト に しゅっぱつ して いました が 、 その ツバメ は のこって いました 。 かれ は さいこうに きれいな あし に こい を して いた から です 。 ツバメ が かのじょ に であった の は はる の はじめ 、 おおきくて きいろい が を おって かわ の かりゅう へ むかって とんで いた とき でした 。 あし の すらっと した こし が あまりに も みりょく てき だった ので 、 ツバメ は たちどまって かのじょ に はなしかけた のです 。 < 版権 表示 > オスカー ・ ワイルド 作 結城 浩 訳 Copyright ( C )2000 HiroshiYuki ( 結城 浩 ) http :// www . hyuki . com / trans / prince . html 本 翻訳 は 、 この 版権 表示 を 残す 限り 、 訳者 および 著者 にたいして 許可 を とったり 使用 料 を 支払ったり する こと 一切 なし に 、 商業 利用 を 含む あらゆる 形 で 自由に 利用 ・ 複製 が 認められます 。 プロジェクト 杉田 玄 白 正式 参加 作品 。 http :// www . genpaku . org /