三 姉妹 探偵 団 01 chapter 08 (2)
みっ|しまい|たんてい|だん|
珠美 は たちまち スパゲッティ を 平らげる と 、 更に サンドイッチ を ペロリ 。
たまみ|||||たいらげる||さらに|さんどいっち||ぺろり
「 病院 の 食事 じゃ 、 餓死 しちゃ う 」
びょういん||しょくじ||がし||
「 昨日 一晩 じゃ ない の 。
きのう|ひとばん|||
"It's not one night yesterday.
呆れた !
あきれた
多少 落ち着いて から 、 夕 里子 は 珠美 に 、 片瀬 紀子 が 殺さ れた 事件 と 、 今日 の 地下 街 で の 事件 を 話して やった 。
たしょう|おちついて||ゆう|さとご||たまみ||かたせ|としこ||ころさ||じけん||きょう||ちか|がい|||じけん||はなして|
「 へえ !
じゃ 本当な の ね 」
|ほんとうな||
「 あんた 、 姉 を 信用 でき ない の ?
|あね||しんよう|||
「 私 が 信じる の は お 金 だけ よ 」
わたくし||しんじる||||きむ||
"I only believe in money."
こういう こと を 真面目に 言って いる ところ が 怖い のである 。
|||まじめに|いって||||こわい|
It is scary to say that these things are serious.
「 で 、 お 姉ちゃん 、 大丈夫だった の ?
||ねえちゃん|だいじょうぶだった|
「 この 通り 生きて る わ よ 」
|とおり|いきて|||
"I'm alive this way,"
「 そう じゃ なくて 、 さ 。
三 人 に 犯さ れ なかった ?
みっ|じん||おかさ||
Didn't three of you get fucked?
処女 膜 再生 手術 って 高い の よ 、 保険 きか ない から 」
しょじょ|まく|さいせい|しゅじゅつ||たかい|||ほけん|||
Hymen 's surgery is expensive, because I can not afford insurance "
「 ひっぱ たく ぞ 、 もう !
"I can't wait, it 's already!
と 夕 里子 は 拳 を 振り上げた 。
|ゆう|さとご||けん||ふりあげた
「 殴ったら 、 お 金 やら ない !
なぐったら||きむ||
"I won't give you money if you get it!
何しろ 大蔵 大臣 は 強い 。
なにしろ|おおくら|だいじん||つよい
The Minister of Finance is strong.
夕 里子 は 渋々 拳 を おろした 。
ゆう|さとご||しぶしぶ|けん||
Yuuriko reluctantly dropped her fist.
珠美 は 鞄 を 開ける と 、
たまみ||かばん||あける|
「 じゃ 、 まあ 事実 と 認めて 、 千 円 ほど 出し ましょう か 」
||じじつ||みとめて|せん|えん||だし||
"Well, let 's just say it is a fact, and let' s give it a thousand yen."
「 ケチ !
五千 円 に して よ 」
ごせん|えん|||
Make five thousand yen "
二 人 は 、 やや はた目 に は 見 っと も ない 交渉 を 続けて 、 やっと 三千 円 で 手 を 打った 。
ふた|じん|||はため|||み||||こうしょう||つづけて||さんせん|えん||て||うった
The two men continued to negotiate with their eyes slightly and finally struck for 3,000 yen.
「 それ で ね 、 珠美 。
|||たまみ
あんた に お 願い が ある んだ けど 」
|||ねがい||||
I have a wish for you.
「 いくら くれる ?
"How much will you do?
夕 里子 は 無視 して 、
ゆう|さとご||むし|
「 ちょっと お 姉さん の 様子 が おかしい の よ ね 。
||ねえさん||ようす|||||
"The appearance of my sister is a bit strange, isn't it?
よく 見て て ほしい の 」
|みて|||
I want you to look closely "
「 新入 社員 の 五 月 病 じゃ ない ?
しんにゅう|しゃいん||いつ|つき|びょう||
"Isn't it a new employee 's May disease?
「 そんな ん じゃ ない の よ 。
どうも …… 安東 先生 に 熱 を 上げて る みたいな の 」
|あんどう|せんせい||ねつ||あげて|||
It looks like you're raising a fever to Mr. Ando.
珠美 は 目 を 丸く して 、
たまみ||め||まるく|
Tamami rounded her eyes,
「 綾子 姉さん が ?
あやこ|ねえさん|
まさか !
と 笑い 出した 。
|わらい|だした
「 冗談 じゃ ない の よ 。
じょうだん||||
どうも 変な の 。
|へんな|
It is strange.
安東 先生 て 、 評判 どう ?
あんどう|せんせい||ひょうばん|
「 安東 ねえ 。
あんどう|
悪く ない よ 。
わるく||
だって 、 親切だ しね 、 頼り がい ある し さ 。
|しんせつだ||たより||||
うち の クラス だって 、 二 月 十四 日 に ゃ バレンタイン ・ チョコ 贈った の 、 何 人 か いた もん 」
||くらす||ふた|つき|じゅうよん|ひ|||ばれんたいん|ちょこ|おくった||なん|じん|||
Some of my class members gave me Valentine chocolate on February 14th. "
「 あんた は ?
「 馬鹿らしい !
ばからしい
女 は もらう の が 役目 よ 」
おんな|||||やくめ|
The role of the woman is to get it.
珠美 の 哲学 である 。
たまみ||てつがく|
「 そう ね 、 安東 先生 と いえば 、 結構 人気 は ある な 。
||あんどう|せんせい|||けっこう|にんき|||
姉さん が 勝手に ポーッ と なって も 、 別に いい じゃ ない 。
ねえさん||かってに|||||べつに|||
Even if my sister gets a poop on her own, it's not good.
お 金 かかる わけで なし 」
|きむ|||
It does not cost money. "
「 それ なら いい の よ 。
"That 's fine.
でも 、 安東 先生 の 態度 も 気 に なる の 」
|あんどう|せんせい||たいど||き|||
But you also care about Mr. Ando's attitude.
「 まさか !
奥さん 一緒に いる の よ 」
おくさん|いっしょに|||
My wife is with me "
「 でも 、 帰り 遅い でしょ 」
|かえり|おそい|
「 そう ねえ ……」
珠美 は ちょっと 考え込んで 、「 まあ 、 この ところ 、 全然 夜 の 生活 は ない みたい ね 」
たまみ|||かんがえこんで||||ぜんぜん|よ||せいかつ||||
Tamami thinks a little bit, "Well, these days, there seems to be no night life at all."
「 あんた 、 どうして そんな こと 分 る の ?
||||ぶん||
"Why are you aware of that?
「 だって 、 安東 の いびき が 聞こえる んだ もん 。
|あんどう||||きこえる||
"Because you can hear Ando's snoring.
寝たら 即 、 いびき よ 。
ねたら|そく||
As soon as I go to bed, I'm sorry.
奥さん と 愛し 合って たら 、 いびき かけ ない じゃ ない 」
おくさん||あいし|あって||||||
If you love one's wife, you won't start snoring. "
「 あんた たち に 遠慮 して んじゃ ない の 」
|||えんりょ||||
"Don't hold back to you."
「 まさか !
我慢 して られる もん じゃ ない わ よ 、 男 なんて 」
がまん||||||||おとこ|
It 's not something I can endure, man. "
どっち が 年上 か 分 ら ない 。
||としうえ||ぶん||
I am not sure which one is older.
「 ともかく 、 先生 と お 姉さん の 様子 、 よく 見て て 。
|せんせい|||ねえさん||ようす||みて|
いい わ ね ?
これ 、 あんた の 役目 よ 」
|||やくめ|
「 私 、 只 の 仕事 って 嫌いな んだ けど ……」
わたくし|ただ||しごと||きらいな||
"I hate the work of a wolf but ..."
珠美 は 夕 里子 の にらみつける 目 に 押さ れて 、「 まあ 、 今回 は 我慢 する わ 」
たまみ||ゆう|さとご|||め||おさ|||こんかい||がまん||
と 言った 。
|いった
「 当り前でしょ 。
あたりまえでしょ
私 が こんな ひどい 目 に 遭って る んだ から 」
わたくし||||め||あって|||
I have such a terrible eyes. "
「 殺人 が 二 つ 、 文書 偽造 、 窃盗 、 婦女 暴行 か 。
さつじん||ふた||ぶんしょ|ぎぞう|せっとう|ふじょ|ぼうこう|
"Are there two murders, forgery of documents, theft, and women's assault?
だいぶ 賑やかに なって 来た わ ね 」
|にぎやかに||きた||
「 暴行 未遂 」
ぼうこう|みすい
と 、 夕 里子 が 訂正 する 。
|ゆう|さとご||ていせい|
「 は いはい 。
── あ 、 そう か !
と 、 珠美 が ハッと した 。
|たまみ||はっと|
「 大変だ !
たいへんだ
「 どうした の ?
「 片瀬 さん の 奥さん 、 亡くなった んでしょ ?
かたせ|||おくさん|なくなった|
お 葬式 出す の よ ね 、 きっと ?
|そうしき|だす||||
「 そりゃ そう よ 」
「 お 香典 、 いくら に する ?
|こうでん|||
"How much will you cook?
夕 里子 は 、 しっかり し すぎた 妹 も 困った もん だ 、 と 思った 。
ゆう|さとご|||||いもうと||こまった||||おもった
Yuuriko thought that her sister, who was too strong, was also troubled.
夕 里子 と 珠美 は 顔 を 見合わせた 。
ゆう|さとご||たまみ||かお||みあわせた
やっぱり おかしい 、 と 肯 き 合う 。
|||こう||あう
「 や あ 、 済ま ん なあ 」
||すま||
"Hey, I'm done."
茶の間 へ 入って 来る と 、 安東 が 言った 。
ちゃのま||はいって|くる||あんどう||いった
「 家庭 料理 の 味 なんか 、 久しぶりだ 」
かてい|りょうり||あじ||ひさしぶりだ
「 ちょっと 失礼 」
|しつれい
"A little bit rude"
夕 里子 は 立ち上って 、 台所 へ 入って 行った 。
ゆう|さとご||たちのぼって|だいどころ||はいって|おこなった
Yuuriko got up and went into the kitchen.
「 姉さん !
ねえさん
気 でも 違った の ?
き||ちがった|
Is it different from your mind?
と 声 を 低めて 、「 カマボコ 切る のだ って 下手くそな くせ に !
|こえ||ひくめて||きる|||へたくそな||
Lower her voice and said, "I'm not good at cutting kamaboko!
「 いい の よ 。
出来て る の 買って 来た んだ もの 」
できて|||かって|きた||
I'm buying it is done. "
と 綾子 は 、 デパート の 食料 品 売場 の 袋 から 、 おかず を 皿 へ 移し ながら 言った 。
|あやこ||でぱーと||しょくりょう|しな|うりば||ふくろ||||さら||うつし||いった
Said gyoza from the department store 's grocery store' s bag, transferring the side dishes to a plate.
夕 里子 は 胸 を 撫でおろした 。
ゆう|さとご||むね||なでおろした
どんな ひどい もの を 食べ させ られる か と 、 気 が 気 で なかった のだ 。
||||たべ|さ せ||||き||き|||
I didn't care what kind of awful thing I could eat.
「 でも 、 先生 、 家庭 料理 だ と 思って る わ よ 」
|せんせい|かてい|りょうり|||おもって|||
"But the teacher thinks it's home-cooked."
「 いい の よ 。
〈 家庭 の 味 〉 って コーナー で 買って 来た んだ から 」
かてい||あじ||こーなー||かって|きた||
"Home taste" I bought it at the corner "
夕 里子 は 、 どうして 、 こう も 我が 姉妹 の 発想 は 人間 離れ して いる の か 、 と 思った 。
ゆう|さとご|||||わが|しまい||はっそう||にんげん|はなれ||||||おもった
Yuriko wondered why my sister's idea is so far from humans.
「 だけど 、 そのまま じゃ だめ よ !
"But, don't leave it alone!
私 に かして 、 いくら 何でも 、 温め なきゃ 」
わたくし||||なんでも|あたため|
I have to warm it up for anything.
「 悪い わ ね 。
わるい||
お 魚 なんか 、 火 に かけたら 、 真っ黒に なり そうで ……」
|ぎょ||ひ|||まっくろに||そう で
If you put a fish on fire, it's going to be black ... "
「 任せ と いて 。
まかせ||
お 姉さん 、 お 湯 でも 沸かし なさい よ 」
|ねえさん||ゆ||わかし||
My sister, please boil even with hot water.
「 うん 。
それ 得意な の 」
|とくいな|
と 、 綾子 は 嬉し そうに 言った 。
|あやこ||うれし|そう に|いった
「── 旨 い !
むね|
大した もん じゃ ない か 」
たいした||||
Isn't it a big deal? "
と 、 食べ ながら 、 安東 は しきりに 感心 する 。
|たべ||あんどう|||かんしん|
And, while eating, Andong impresses me very much.
「 これ なら 、 いつでも 嫁 に 行ける ぞ 」
|||よめ||いける|
"With this, I can always go to my bride"
綾子 が 、 すっかり 頰 を 上気 さ せて 、 ご飯 の おかわり など を よ そって いる 。
あやこ|||||じょうき|||ごはん|||||||
Dumplings are completely upset about the chopsticks, and are scorning for another meal.
あんな こと した こと ない くせ に 。
I have never done such a thing.
夕 里子 は 呆れて 物 も 言え なかった 。
ゆう|さとご||あきれて|ぶつ||いえ|
Yuuriko was amazed and couldn't say anything.
「 どう だ 、 犯人 捜し は 進 ん ど る の か ?
||はんにん|さがし||すすむ|||||
と 、 安東 が 言った 。
|あんどう||いった
「 あ 、 そうだ 。
|そう だ
忘れて た わ 」
わすれて||
と 、 綾子 が 言った 。
|あやこ||いった
「 どうした の ?
「 あの ね 、 今日 会社 で 神田 さん が 話して くれた の 」
||きょう|かいしゃ||しんでん|||はなして||
"Well, Mr.Kanda talked about it today at work."
「 神田 さん って …… 水口 淳子 と 親しかった って 人 ね 」
しんでん|||みずぐち|あつこ||したしかった||じん|
「 そう 。
ホテル で ね 、 水口 淳子 と 一緒の 男性 を 見た こと ある んです って 」
ほてる|||みずぐち|あつこ||いっしょの|だんせい||みた||||
I've seen a man with Ms. Mizuguchi Mizuki at a hotel.
夕 里子 は 、 耳 を 疑って いた 。
ゆう|さとご||みみ||うたがって|
「 一緒に いた 男 」 を 見た ……。
いっしょに||おとこ||みた
「 じゃ 、 犯人 を 見た の ?
|はんにん||みた|
"Well, did you see the culprit?
「 分 ん ない の 。
ぶん|||
後ろ姿 だった らしい の よ 。
うしろすがた||||
でも 聞いて みる と パパ じゃ ない の 。
|きいて|||ぱぱ|||
全然 違う 感じ だった わ 」
ぜんぜん|ちがう|かんじ||
「 それ 以外 に 何 か ?
|いがい||なん|
"What else?"
「 うん 。
ええ と …… 何 だった か な 。
||なん|||
あ 、 そうだ 。
|そう だ
つい この 間 、 また その ホテル へ ね 、 神田 さん 行った らしい 。
||あいだ|||ほてる|||しんでん||おこなった|
年中 行って る らしい んだ けど 。
ねんじゅう|おこなって||||
It seems that I will go all year round.
そこ で 同じ 男らしい の を 見た んです って 」
||おなじ|おとこらしい|||みた||
I saw that same manly there "
夕 里子 は 、 しばし ポカン と して いた 。
ゆう|さとご||||||
Yuuriko has been a pokane for a while.
そんな 凄い 情報 を 、 忘れて た 、 です って ?
|すごい|じょうほう||わすれて|||
── さすが に 夕 里子 も 頭 へ 来て 、 怒鳴ろう と した が 、 そこ は 安東 の 前 で 、 ぐっと こらえる 。
||ゆう|さとご||あたま||きて|どなろう||||||あんどう||ぜん|||
さ As expected, Yuuriko also came to her head and tried to shout, but in front of Andong, I could stand still.
「 それ は すぐ 警察 へ 知らせた 方 が いい わ 」
|||けいさつ||しらせた|かた|||
夕 里子 は 立ち上って 、「 先生 、 お 電話 を お 借り し ます 」
ゆう|さとご||たちのぼって|せんせい||でんわ|||かり||
「 ああ 、 いい と も 」
"Oh, that's good too"
夕 里子 が 、 茶の間 の 襖 を ガラリ と 開ける と 、 目の前 に 安東 岐子 が 立って いて 、 思わず 、
ゆう|さとご||ちゃのま||ふすま||がらり||あける||めのまえ||あんどう|しこ||たって||おもわず
When Yuuriko opens her bowl of tea, she sees Kyoko Ando standing in front of her eyes.
「 キャッ !
と 声 を 上げて しまった 。
|こえ||あげて|
「 お 、 お 帰り なさい ……」
||かえり|
「 何 だ 岐子 、 帰って た の か 」
なん||しこ|かえって|||
"What is Yoshiko, are you home?"
と 、 安東 が 言った 。
|あんどう||いった
「 気 が 付か なかった ぞ 。
き||つか||
"I did not notice it.
早い じゃ ない か 。
はやい|||
Isn't it early?
さ 、 食べろ よ 。
|たべろ|
綾子 君 が 作って くれた 。
あやこ|きみ||つくって|
なかなか いける ぞ 」
I can't wait. "
安東 岐子 は 、 青ざめた 顔 を こわばら せて 、 茶の間 へ 入って 来た 。
あんどう|しこ||あおざめた|かお||||ちゃのま||はいって|きた
Kyoko Ando broke into a pale face and came into the tea room.
何となく 、 誰 も 動け なくて 、 そのまま じっと 、 息 を 殺して いた 。
なんとなく|だれ||うごけ||||いき||ころして|
Somehow, no one was able to move, and as it was, I was killing my breath.
「── 何 だ 。
なん|
どうした ?
と 、 安東 が 言った 。
|あんどう||いった
「 そんなに この 女の子 の 料理 が 気 に 入った の なら 、 この 子 と 結婚 なさったら いかがです か ?
||おんなのこ||りょうり||き||はいった||||こ||けっこん|||
"If you were interested in the food of this girl, how would you like to marry this girl?
と 、 岐子 は 鋭い 声 で 言った 。
|しこ||するどい|こえ||いった
「 おい 、 妙な こと を 言う な よ 」
|みょうな|||いう||
"Hey, do not say strange things"
安東 は 顔 を しかめた 。
あんどう||かお||
「 綾子 君 は 、 ただ 好意 で ──」
あやこ|きみ|||こうい|
「 私 が 何も 知ら ない と 思って る んです か !
わたくし||なにも|しら|||おもって|||
岐子 が 叫んだ 。
しこ||さけんだ
綾子 は 怯えて 身 を 縮めた 。
あやこ||おびえて|み||ちぢめた
「 住む 家 が ない と いう から 面倒 を みて やって いる のに 、 主人 に 色 目 を 使う なんて ……」
すむ|いえ||||||めんどう||||||あるじ||いろ|め||つかう|
"Even though I'm taking care of you because I don't have a house to live in, I'm trying to use my color to my master ..."
岐子 は 、 綾子 を にらみつける と 、「 この 泥棒 猫 !
しこ||あやこ|||||どろぼう|ねこ
と 言う なり 、 平手 で 綾子 の 頰 を 打った 。
|いう||ひらて||あやこ||||うった
Then I hit a ladder with a palm.
「 私 …… 何も ……」
わたくし|なにも
綾子 が ワッ と 泣き出す 。
あやこ||||なきだす
「 おい !
何て こと を する んだ !
なんて||||
安東 が 腰 を 浮かした 。
あんどう||こし||うかした
Andong came back to his feet.
「 あなた は 黙って なさい !
||だまって|
岐子 が 金切り声 を 上げる 。
しこ||かなきりごえ||あげる
Giko screams.
「 こんな 子供 の どこ が いい の !
|こども|||||
"What kind of child like this is good!
どうせ 男 の 学生 と すぐ 寝る 不良に 決 って る じゃ あり ませ ん か !
|おとこ||がくせい|||ねる|ふりょうに|けっ|||||||
Anyway, I'm going to go to bed with a student of a man right away?
「 ひどい わ 、 そんな ──」
綾子 が 泣きじゃくり ながら 言った 。
あやこ||なきじゃくり||いった
Yuko said while crying.
「 私 …… 何も やましい こと なんか あり ませ ん !
わたくし|なにも||||||
"I ... ... There is nothing to be foolish!
「 そう だ と も 。
お前 の 邪推 と いう もん だ 、 それ は 」
おまえ||じゃすい||||||
It is your evil devotion, it is
「 だったら 、 もう この 家 を 出て 行けば いい じゃ ない の !
|||いえ||でて|いけば||||
"Well then, you can leave this house already!
いつまでも 図 々 しく 居座って 。
|ず|||いすわって
Stay with me forever and ever.
私 の 帰り が 遅い の を いい こと に して 、 何 やって る か 知れた もん じゃ ない !
わたくし||かえり||おそい|||||||なん||||しれた|||
The good thing is that my return is late and it is not what I know what to do!
夕 里子 は 、 やっと 我 に 返って 、
ゆう|さとご|||われ||かえって
Yuriko finally came back to me,
「 お 姉さん 、 ああ 言わ れて る んだ から 、 出て 行こう よ 」
|ねえさん||いわ|||||でて|いこう|
"Sister, oh, I'm told, so let's go out."
と 、 綾子 の 肩 に 手 を かけた 。
|あやこ||かた||て||
「 でも ……」
「 ね 、 今夜 一晩 ぐらい 、 敦子 の 所 で 泊めて くれる わ よ 」
|こんや|ひとばん||あつこ||しょ||とめて|||
"Yeah, I'll be staying at the dumplings for about one night tonight."
綾子 が 、 安東 の 方 を 涙 に 濡れた 目 で 見た 。
あやこ||あんどう||かた||なみだ||ぬれた|め||みた
Reiko saw Ando with eyes wet with tears.
安東 は 何 か 言い た げ に 口 を 開き かけた が 、 岐子 の 険しい 目 に 出くわして 、 そのまま 黙って しまった 。
あんどう||なん||いい||||くち||あき|||しこ||けわしい|め||でくわして||だまって|
Ando opened his mouth to say something, but when he came across Kiko's steep eyes, he shut up silently.
「 さあ 、 持って行く もの が あったら 取って 来て 」
|もっていく||||とって|きて
"Come on, take it with you if you have something to take with you"
夕 里子 は 綾子 を 支えて 立た せ 、「 珠美 、 あんた も よ 」
ゆう|さとご||あやこ||ささえて|たた||たまみ|||
Yuuriko is supporting Yuko and standing up, "Tsumi, you too"
「 私 も かな 、 やっぱり 」
わたくし|||
"I am too, after all"
「 当り前でしょ 」
あたりまえでしょ
珠美 が 肩 を すくめて 立ち上る 。
たまみ||かた|||たちのぼる
綾子 と 珠美 が 奥 の 部屋 へ 入って 行く と 、 夕 里子 は 、 そこ に 正座 して 、
あやこ||たまみ||おく||へや||はいって|いく||ゆう|さとご||||せいざ|
When Yuko and Shukumi went into the room at the back of the room, Yuuriko sat up there,
「 どうも 長い 間 、 姉 と 妹 が お 世話に なって しまって 、 申し訳 あり ませ ん でした 」
|ながい|あいだ|あね||いもうと|||せわに|||もうしわけ||||
"I am sorry that my sister and sister have been indebted for a long time."
と 頭 を 下げた 。
|あたま||さげた
「 いや 。
教育 者 と して 当然の こと さ 」
きょういく|もの|||とうぜんの||
と 、 安東 は 言った 。
|あんどう||いった
「 何の 教育 を して いる の か ……」
なんの|きょういく|||||
"What kind of education are you doing ..."
と 岐子 が 、 わざとらしく そっぽ を 向いて 言う 。
|しこ|||||むいて|いう
「 つい 、 ご 好意 に 甘えて しまって 、 色々 不愉快な こと も あった と 思い ます 。
||こうい||あまえて||いろいろ|ふゆかいな|||||おもい|
"I think that I was addicted to the favor and there were a lot of unpleasant things.
どう か 、 許して 下さい 」
||ゆるして|ください
夕 里子 は 立ち上る と 、 奥 から 出て 来た 綾子 と 珠美 を 玄関 の 方 へ 押しやった 。
ゆう|さとご||たちのぼる||おく||でて|きた|あやこ||たまみ||げんかん||かた||おしやった
表 に 出る と 、 珠美 が フーッ と 息 を 吐いて 、
ひょう||でる||たまみ||||いき||はいて
When it comes to the front, Tamami exudes breath and
「 凄い ねえ 、 中年 女 の 嫉妬 って 」
すごい||ちゅうねん|おんな||しっと|
と 言った 。
|いった
綾子 が 、 立ち止って 、 じっと 安東 の 家 を 振り返って いる 。
あやこ||たちどまって||あんどう||いえ||ふりかえって|
「 お 姉さん 」
|ねえさん
と 、 夕 里子 は 促した 。
|ゆう|さとご||うながした
「 うん ……」
綾子 は 、 また グスン と すすり 上げる と 、 力なく 歩き 出した 。
あやこ||||||あげる||ちからなく|あるき|だした