三 姉妹 探偵 団 (2) Chapter 13 (2)
── 冷た さ が 、 しばらく は 快い 気分 だった 。
あー あ 。
どうして こう 、 私 たち は 、 変な 目 に あう ように 、 できて る んだろう ?
と いって ── あまり 「 運命 の 女神 」 の せい に は でき ない 。
何しろ 、 夕 里子 みたいに 、 好きで 自分 から 危 い こと へ 首 を 突っこむ 妹 が いる のだ から 。
でも 、 あの 子 も 、 もう 十八 歳 。
来年 に は 短大 へ 進む 。
いつまでも 殺人 だの 死体 だの と は 言って いない だろう 。 でも 、 あの 国友 さん と お 付合い して いる 限り は 、 こんな 状態 が 続く かも しれ ない 。
もと は と いえば 、 私 が しっかり して いない から な んだ わ 、 と 綾子 は 反省 した 。 そう 。
だから 夕 里子 が あんなに 「 しっかり者 」 に なって しまった 。 珠美 と 来たら バーナード ・ ショー じゃ ない けど 、
「 一 番 の 愛読 書 は 銀行 の 通帳 」
って いう 始末 だ 。
そう だ わ 。
私 が もっと しっかり して いれば ……。
考えて いる 内 に 、 綾子 は 段々 落ち込んで 来た 。
私 さえ い なきゃ 、 何もかも うまく 行った のに ……。
一 人 で 勝手に そんな こと を 考えて 、 胸 が 痛む 。
しかし 、 こういう タイプ は 、 実際 に ノイローゼ に なる こと は ない ようである 。
「 あら 」
と 、 呟く 。
小 犬 が 一 匹 、 少し 離れた 所 で 座って 、 綾子 を 見て いた 。
「── どうした の ?
綾子 は 、 その 小 犬 の 方 へ と 歩み寄った 。
小 犬 は 、 ちょっと ビクッ と して 、 後 ず さった が 、 綾子 が 手 を 出して 、
「 大丈夫 よ 。
怖く ない わ 。 ── ほら 、 大丈夫だ から ね ……」
と 、 声 を かけて やる と 、 安心 した の か 、 ちょっと 尻尾 を 振ったり して いる 。
「 お前 も 一 人 ぼっち な の ? 私 も よ 。 妹 は 二 人 も いる けど 、 私 と は まるで 別 世界 の 人 だ し ね ……」
よし よし 、 と いう 感じ で 、 小 犬 の 頭 を 撫でて やる 。
小 犬 の 方 は 、 クーン 、 と 鼻 を 鳴らして 、 綾子 の 膝頭 に 、 顔 を こすり つけて 来た 。
「 可愛い ……」
と 、 綾子 は 微笑んだ 。
── 駐車 場 の 一方 が 入口 、 反対 側 に 出口 が ある 。
今 、 入って 来る 車 は なかった 。
しかし 、〈 出口 〉 の 方 から 、 一 台 の 車 が 、 ライト を 消した まま 、 静かに 入り込んで 来て いた 。
「 私 も 小 犬 だったら なあ 」
と 、 綾子 は 呟いた 。
「 殺人 事件 に 巻き込ま れる こと も ない のに 」
それ は 確かに その 通り だ 。
しかし 、 この 場合 、 必ずしも 、 そう と は 言え なかった 。
ブルル 、 と エンジン の 音 が した 。
綾子 は 顔 を 上げた 。
サッと 車 の ライト が 点いて 、 綾子 を 照らし出した 。
車 は 、 猛然と ダッシュ して 、 爪 を むき 出した 獣 の ように 、 綾子 に 向って 飛びかかって 来た 。 「 危 い !
綾子 は 、 小 犬 を 両手 で 抱きかかえる と 、 そのまま 、 頭から 地面 に 突っ込む ように して 転った 。 車 が 、 風 を 巻き起こして 駆け抜けて 行った 。
「── お 姉さん !
夕 里子 が 飛び出て 来る 。
「 綾子 君 !
国友 も 、 財布 を ポケット へ 入れる 間 が なく 、 手 に 握りしめた まま 、 駆けて 来た 。
珠美 は 、 ちゃんと 、 おつり を もらって から 、 出て 来た 。
「 けが は ?
何とも ない ? と 夕 里子 が 抱き 起す と 、 綾子 は 体 を 震わせ ながら 、 小 犬 を 抱きしめた 。
「 何て 車 でしょ !
「 見た ?
「 いいえ 、 暗くて 」
「 ともかく 良かった !
国友 は ホッ と して いた 。
夕 里子 から 、 姉 を 守って 、 と 言われて いる のだ から 。 「 でも 、 ただ の 車 の 通り抜け じゃ ない わ 、 これ は 」
と 、 夕 里子 が 言った 。
「 それ は もちろん だ わ 」
綾子 も 力強く 肯 いた 。
「 はっきり 、 狙って 来た の よ ! 「 分った ? 「 ええ 。
間違い ない わ 」
綾子 は 、 立ち上る と 、 言った 。
「 あの 車 、 この 小 犬 を 、 ひき 殺そう と した んだ わ !