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三姉妹探偵団 3 珠美・初恋篇, 三姉妹探偵団 3 Chapter 00

三 姉妹 探偵 団 3 Chapter 00

プロローグ

女 は 校門 の 前 まで 来て 、 ためらった 。

本当に 門 が 開く かしら ?

それ に 、 開く と したって 、 凄い 音 が する んじゃ ない だろう か 。 こんな 夜中 に 、 大きな 音 を 立てたら 、 近所 の 家 に 聞こえ そうだ けど ……。

女 は 、 鉄柵 の 門 を 押そう と して 、 もう 一 度 、 後ろ を 振り向いた 。

誰 か が 見て いる 。 ── そう 思えて なら なかった 。

家 を 出て 、 ここ まで 来る 間 、 ずっと そう 感じて いた のだ 。

誰 か が 尾 け て 来る 。 見 られて いる 。

気のせい だ わ 、 と 自分 に 言い聞かせた 。

こんな 風 に 人目 を 忍んで 出かけて 来た とき は 、 いつ だって そんな 気 が する もの だ 。

本当に 、 私 が 先生 と ホテル へ 入る とき だって 、 いつも 誰 か に 見 られて いる ような 気 が した 。

でも 、 結局 は 何でもなかった のだ 。

── そう 。 今 だって 、 気のせい に 決 って いる 。

女 は 、 ためらい を 振り切る ように 、 大きく 一 つ 息 を ついて 、 それ から 思い切って 、 門 を 押して みた 。

カタカタカタ ……。

びっくり する ほど 音 は 小さかった 。

門 は 、 内側 へ 楽々 と 開いた 。

ホッと 息 を つく 。

これ なら 、 誰 も 気付く まい 。 女 は 中 へ 入る と 、 門 を 元 の 通り に 閉めて おいた 。

女 が 、 神経 を 尖ら せて いる の も 、 理由 の ない こと で は なくて ── ともかく 、 辺り は 静かだった のである 。

夜 、 十二 時 、 と いう 時間 の せい も ある が 、 今時 、 十二 時 ぐらい まで 起きて いる 若者 は 珍しく も ない 。

しかし 、 今 、 少なくとも 校門 から 見える 家 に は 、 一 つ も 明り の 点いた 窓 は なかった 。

薄気味悪い ほど の 静寂 。

月 も 出て い ない 。 ほとんど 闇夜 に 近かった 。

女 は 、 校舎 へ と 目 を やった 。

── 校門 を 入る と 運動 場 で 、 大した 広 さ で は なかった が 、 校舎 は その 奥 だった 。

一 つ 、 明り の 点いた 窓 が あった 。

「 あそこ だ わ 」

と 、 女 は 呟いた 。

足下 も はっきり 見え ない ような 夜 だ 。

懐中 電灯 でも 持って 来る んだった わ 、 と 思った が 、 もう 遅い 。

出入 口 の 上 に 、 一 つ 、 常 夜 灯 が 灯って いる 。

そこ を 目指して 、 真 直ぐに 歩いて 行った 。

近付いて 、 足下 が 見える ように なる と 、 ホッと した 。

ここ も ちゃんと 開けて ある かしら ?

戸 は 、 楽に 開いた 。

── さすが に 抜かり が ない んだ から ……。

校舎 の 中 へ 入る と 、 何となく 気 が 楽に なった 。

もちろん 、 あまり 居心地 の いい 場所 で ない こと は 確かである 。

廊下 に 、 光 が 洩 れて いた 。

あの 、 明り の 点いて いた 教室 である 。

その 教室 の 戸 を 開ける 。

今度 は 、 ちょっと ギクリと する ような 、 大きな 音 が した 。

でも ── 校舎 の 中 なら 、 どう って こと は ない わ 。

「 先生 ……」

と 、 女 は 低い 声 で 呼んで みた 。

空っぽの 教室 は 、 外 以上 に 寒々 と して いた 。

外 も 、 もう 大分 寒い 。

もう すぐ 十二 月 に なろう と いう ところ だ 。 本当 なら 、 この 教室 の 中 の 方 が 暖 い はずだ が 、 いつも 人 が 沢山 いる 場所 が 空っぽに なって いる の は 、 寂しい 光景 であった 。

どこ に 行った の かしら ……。

中 に 入って 、 女 は 、 教壇 の 上 に 立って みた 。

── 先生 に なった 気分 だ わ 、 と 思って 、 微笑 する 。

でも ── すぐに 笑み は 消えた 。

今夜 の 話 の こと を 考える と 、 心 は 重い 。

話して くれ なくて も 分 って いる こと を 、 改めて 人 の 口 から 聞く の は 辛い もの だ 。

でも 、 聞か なくて は なら ない 。

そう 。

結局 は 私 と 先生 と 、 二 人 の 責任 なんだ から 。 逃げる こと は でき ない のだ 。

足音 が 、 廊下 を やって 来た 。

── 女 は 入口 の 方 へ 顔 を 向けた 。 戸 は 開いた まま に なって いる 。

「 どこ に 行って た の ?

と 、 女 が 言って ── 表情 が こわばった 。

体 が 動く 間 も なかった 。

一気に 迫って 来た その 人物 の 両手 が 真 直ぐに 伸びて 来て 、 女 の 首 を がっしり と つかまえた 。

声 を 上げよう に も 、 絞め 上げ られて 、 息 が 通ら ない 。

女 の 目 が カッ と 見開いた 。

振り 放そう と 体 を 左右 へ 激しく 揺らした 。

首 に 食い込んだ 指 は 外れ なかった 。

女 が よろける 。

── 二 人 は 、 生徒 の 机 に 向 って 一緒に 倒れた 。 机 が 、 二 つ 、 三 つ 、 派手な 音 を 立てて 倒れる 。

二 人 は 、 床 の 上 で 、 なおも 激しく もみ合った ……。

三 姉妹 探偵 団 3 Chapter 00 みっ|しまい|たんてい|だん|chapter Three Sisters Detectives 3 Chapter 00

プロローグ ぷろろーぐ prologue

女 は 校門 の 前 まで 来て 、 ためらった 。 おんな||こうもん||ぜん||きて| The woman came to the front of the school gate and hesitated.

本当に 門 が 開く かしら ? ほんとうに|もん||あく| Does the gate really open?

それ に 、 開く と したって 、 凄い 音 が する んじゃ ない だろう か 。 ||あく|||すごい|おと|||||| Well, if you open it, it sounds amazing. こんな 夜中 に 、 大きな 音 を 立てたら 、 近所 の 家 に 聞こえ そうだ けど ……。 |よなか||おおきな|おと||たてたら|きんじょ||いえ||きこえ|そう だ| If you make a loud noise in the middle of the night like this, you might hear it at your neighbor's house ...

女 は 、 鉄柵 の 門 を 押そう と して 、 もう 一 度 、 後ろ を 振り向いた 。 おんな||てっさく||もん||おそう||||ひと|たび|うしろ||ふりむいた The woman turned around again, trying to push the gate of the iron fence.

誰 か が 見て いる 。 だれ|||みて| Someone is watching. ── そう 思えて なら なかった 。 |おもえて|| ──I didn't think so.

家 を 出て 、 ここ まで 来る 間 、 ずっと そう 感じて いた のだ 。 いえ||でて|||くる|あいだ|||かんじて|| I felt that way all the time I left home and came this far.

誰 か が 尾 け て 来る 。 だれ|||お|||くる Someone will come after you. 見 られて いる 。 み|| It has been seen .

気のせい だ わ 、 と 自分 に 言い聞かせた 。 きのせい||||じぶん||いいきかせた I told myself that it was my fault.

こんな 風 に 人目 を 忍んで 出かけて 来た とき は 、 いつ だって そんな 気 が する もの だ 。 |かぜ||ひとめ||しのんで|でかけて|きた||||||き|||| Whenever I go out with a sneak peek like this, I always feel like that.

本当に 、 私 が 先生 と ホテル へ 入る とき だって 、 いつも 誰 か に 見 られて いる ような 気 が した 。 ほんとうに|わたくし||せんせい||ほてる||はいる||||だれ|||み||||き|| Really, when I entered the hotel with my teacher, I always felt like someone was watching me.

でも 、 結局 は 何でもなかった のだ 。 |けっきょく||なんでもなかった| But in the end it was nothing.

── そう 。 今 だって 、 気のせい に 決 って いる 。 いま||きのせい||けっ|| Even now, it's decided because of my mind.

女 は 、 ためらい を 振り切る ように 、 大きく 一 つ 息 を ついて 、 それ から 思い切って 、 門 を 押して みた 。 おんな||||ふりきる||おおきく|ひと||いき|||||おもいきって|もん||おして| The woman took a big breath, as if to shake off her hesitation, and then took the plunge and pushed the gate.

カタカタカタ ……。 Rattling …….

びっくり する ほど 音 は 小さかった 。 |||おと||ちいさかった The sound was surprisingly quiet.

門 は 、 内側 へ 楽々 と 開いた 。 もん||うちがわ||らくらく||あいた The gate opened easily inward.

ホッと 息 を つく 。 ほっと|いき|| Take a breath.

これ なら 、 誰 も 気付く まい 。 ||だれ||きづく| If this is the case, no one will notice it. 女 は 中 へ 入る と 、 門 を 元 の 通り に 閉めて おいた 。 おんな||なか||はいる||もん||もと||とおり||しめて| When the woman went inside, she closed the gate back to its original state.

女 が 、 神経 を 尖ら せて いる の も 、 理由 の ない こと で は なくて ── ともかく 、 辺り は 静かだった のである 。 おんな||しんけい||とがら|||||りゆう||||||||あたり||しずかだった| The woman's nerves were sharpened, not for no reason ── anyway, the area was quiet.

夜 、 十二 時 、 と いう 時間 の せい も ある が 、 今時 、 十二 時 ぐらい まで 起きて いる 若者 は 珍しく も ない 。 よ|じゅうに|じ|||じかん||||||いまどき|じゅうに|じ|||おきて||わかもの||めずらしく|| It is not uncommon for young people to stay up until about 12 o'clock at night, partly because of the time of 12 o'clock.

しかし 、 今 、 少なくとも 校門 から 見える 家 に は 、 一 つ も 明り の 点いた 窓 は なかった 。 |いま|すくなくとも|こうもん||みえる|いえ|||ひと|||あかり||ついた|まど|| But now, at least in the house visible from the school gate, there were no lit windows.

薄気味悪い ほど の 静寂 。 うすきみわるい|||せいじゃく Creepy silence.

月 も 出て い ない 。 つき||でて|| The moon hasn't risen either. ほとんど 闇夜 に 近かった 。 |やみよ||ちかかった It was almost dark night.

女 は 、 校舎 へ と 目 を やった 。 おんな||こうしゃ|||め|| The woman looked at the school building.

── 校門 を 入る と 運動 場 で 、 大した 広 さ で は なかった が 、 校舎 は その 奥 だった 。 こうもん||はいる||うんどう|じょう||たいした|ひろ||||||こうしゃ|||おく| ── When you entered the school gate, it was an athletic field, and although it was not very large, the school building was in the back.

一 つ 、 明り の 点いた 窓 が あった 。 ひと||あかり||ついた|まど|| There was one window with a light.

「 あそこ だ わ 」 "It's over there"

と 、 女 は 呟いた 。 |おんな||つぶやいた The woman muttered.

足下 も はっきり 見え ない ような 夜 だ 。 あしもと|||みえ|||よ| It's a night when you can't even see your feet clearly.

懐中 電灯 でも 持って 来る んだった わ 、 と 思った が 、 もう 遅い 。 かいちゅう|でんとう||もって|くる||||おもった|||おそい I thought I would bring a flashlight, but it's too late.

出入 口 の 上 に 、 一 つ 、 常 夜 灯 が 灯って いる 。 しゅつにゅう|くち||うえ||ひと||とわ|よ|とう||ともって| There is one nightlight above the doorway.

そこ を 目指して 、 真 直ぐに 歩いて 行った 。 ||めざして|まこと|すぐに|あるいて|おこなった Aiming for that, I walked straight.

近付いて 、 足下 が 見える ように なる と 、 ホッと した 。 ちかづいて|あしもと||みえる||||ほっと| I was relieved when I got closer and could see my feet.

ここ も ちゃんと 開けて ある かしら ? |||あけて|| I wonder if this is also opened properly?

戸 は 、 楽に 開いた 。 と||らくに|あいた The door opened comfortably.

── さすが に 抜かり が ない んだ から ……。 ||ぬかり|||| ──Because there is no excuse ...

校舎 の 中 へ 入る と 、 何となく 気 が 楽に なった 。 こうしゃ||なか||はいる||なんとなく|き||らくに| When I entered the school building, I felt at ease.

もちろん 、 あまり 居心地 の いい 場所 で ない こと は 確かである 。 ||いごこち|||ばしょ|||||たしかである Of course, it's certainly not a very cozy place.

廊下 に 、 光 が 洩 れて いた 。 ろうか||ひかり||えい|| Light was leaking into the corridor.

あの 、 明り の 点いて いた 教室 である 。 |あかり||ついて||きょうしつ| That is the classroom where the lights were on.

その 教室 の 戸 を 開ける 。 |きょうしつ||と||あける Open the door of the classroom.

今度 は 、 ちょっと ギクリと する ような 、 大きな 音 が した 。 こんど|||ぎくりと|||おおきな|おと|| This time, there was a loud, slightly jarring sound.

でも ── 校舎 の 中 なら 、 どう って こと は ない わ 。 |こうしゃ||なか||||||| But ──If it's inside the school building, there's nothing wrong with it.

「 先生 ……」 せんせい

と 、 女 は 低い 声 で 呼んで みた 。 |おんな||ひくい|こえ||よんで| The woman called in a low voice.

空っぽの 教室 は 、 外 以上 に 寒々 と して いた 。 からっぽの|きょうしつ||がい|いじょう||さむざむ||| The empty classroom was colder than outside.

外 も 、 もう 大分 寒い 。 がい|||だいぶ|さむい It's already cold outside.

もう すぐ 十二 月 に なろう と いう ところ だ 。 ||じゅうに|つき|||||| It's about to be December. 本当 なら 、 この 教室 の 中 の 方 が 暖 い はずだ が 、 いつも 人 が 沢山 いる 場所 が 空っぽに なって いる の は 、 寂しい 光景 であった 。 ほんとう|||きょうしつ||なか||かた||だん|||||じん||たくさん||ばしょ||からっぽに|||||さびしい|こうけい| If true, it should have been warmer in this classroom, but it was a lonely sight that the place where there were always a lot of people was empty.

どこ に 行った の かしら ……。 ||おこなった|| I wonder where I went ...

中 に 入って 、 女 は 、 教壇 の 上 に 立って みた 。 なか||はいって|おんな||きょうだん||うえ||たって| Once inside, the woman stood on the podium.

── 先生 に なった 気分 だ わ 、 と 思って 、 微笑 する 。 せんせい|||きぶん||||おもって|びしょう| ──I feel like I'm a teacher, and smile.

でも ── すぐに 笑み は 消えた 。 ||えみ||きえた But ── Immediately the smile disappeared.

今夜 の 話 の こと を 考える と 、 心 は 重い 。 こんや||はなし||||かんがえる||こころ||おもい Thinking about tonight's story, my heart is heavy.

話して くれ なくて も 分 って いる こと を 、 改めて 人 の 口 から 聞く の は 辛い もの だ 。 はなして||||ぶん|||||あらためて|じん||くち||きく|||からい|| It's hard to hear again from the human mouth that you know what you know without telling us.

でも 、 聞か なくて は なら ない 。 |きか||||

そう 。

結局 は 私 と 先生 と 、 二 人 の 責任 なんだ から 。 けっきょく||わたくし||せんせい||ふた|じん||せきにん|| After all, it's the responsibility of me and the teacher. 逃げる こと は でき ない のだ 。 にげる||||| You can't run away.

足音 が 、 廊下 を やって 来た 。 あしおと||ろうか|||きた Footsteps came down the hallway.

── 女 は 入口 の 方 へ 顔 を 向けた 。 おんな||いりぐち||かた||かお||むけた ── The woman turned her face toward the entrance. 戸 は 開いた まま に なって いる 。 と||あいた|||| The door remains open.

「 どこ に 行って た の ? ||おこなって||

と 、 女 が 言って ── 表情 が こわばった 。 |おんな||いって|ひょうじょう|| Said the woman, ── the expression was stiff.

体 が 動く 間 も なかった 。 からだ||うごく|あいだ|| I didn't have time to move.

一気に 迫って 来た その 人物 の 両手 が 真 直ぐに 伸びて 来て 、 女 の 首 を がっしり と つかまえた 。 いっきに|せまって|きた||じんぶつ||りょうて||まこと|すぐに|のびて|きて|おんな||くび|||| The person's hands, which came at a stretch, stretched out straight and grabbed the woman's neck tightly.

声 を 上げよう に も 、 絞め 上げ られて 、 息 が 通ら ない 。 こえ||あげよう|||しめ|あげ||いき||とおら| Even if I try to raise my voice, I can't breathe because I'm squeezed.

女 の 目 が カッ と 見開いた 。 おんな||め||||みひらいた The woman's eyes opened wide.

振り 放そう と 体 を 左右 へ 激しく 揺らした 。 ふり|はなそう||からだ||さゆう||はげしく|ゆらした I shook my body violently from side to side to shake it off.

首 に 食い込んだ 指 は 外れ なかった 。 くび||くいこんだ|ゆび||はずれ| The finger that bite into the neck did not come off.

女 が よろける 。 おんな|| The woman staggers.

── 二 人 は 、 生徒 の 机 に 向 って 一緒に 倒れた 。 ふた|じん||せいと||つくえ||むかい||いっしょに|たおれた 机 が 、 二 つ 、 三 つ 、 派手な 音 を 立てて 倒れる 。 つくえ||ふた||みっ||はでな|おと||たてて|たおれる The desk collapses with two, three, and a flashy noise.

二 人 は 、 床 の 上 で 、 なおも 激しく もみ合った ……。 ふた|じん||とこ||うえ|||はげしく|もみあった