こころ 7
Herz 7
mind 7
Serce 7
Coração 7
心 7
私 ( わたくし ) は 不思議に 思った 。
わたくし|||ふしぎに|おもった
|I||mysteriously|
I (I) wondered.
しかし 私 は 先生 を 研究 する 気 で その 宅 へ 出入り を する ので は なかった 。
|わたくし||せんせい||けんきゅう||き|||たく||でいり|||||
|||||study|||||||coming and going|||||
However, I didn't go in and out of the house with the intention of studying the teacher.
但是,我並沒有帶著研究他的意圖進出他的房子。
私 は ただ そのまま に して 打ち過ぎた 。
わたくし||||||うち すぎた
|||as is|||overdid it
||||||أفرطت في
||||||打ち過ぎた
I just left it as it was and hit it too much.
我只是放手,放手。
今 考える と その 時 の 私 の 態度 は 、 私 の 生活 の うち で むしろ 尊む べき もの の 一 つ であった 。
いま|かんがえる|||じ||わたくし||たいど||わたくし||せいかつ|||||たかし む||||ひと||
|||||||||||||||||respektieren||||||
||||||||||||||||rather|to value||||||
|||||||||||||||||أحترم||||||
|||||||||||||||||尊む||||||
When I think about it now, my attitude at that time was rather one of the most precious things in my life.
現在回想起來,我當時的態度,是我人生中最應該尊重的事情之一。
私 は 全く その ため に 先生 と 人間らしい 温かい 交際 が できた のだ と 思う 。
わたくし||まったく||||せんせい||にんげん らしい|あたたかい|こうさい|||||おもう
||||||||human-like|warm|||was able to|||
I think that was the reason why I was able to have a warm and human-like relationship with my teacher.
我相信正是因為這個原因,我才能與他建立起如此溫暖和人性化的關係。
もし 私 の 好奇心 が 幾分 でも 先生 の 心 に 向かって 、 研究的 に 働き掛けた なら 、 二 人 の 間 を 繋ぐ 同情 の 糸 は 、 何の 容赦もなく その 時 ふつり と 切れて しまったろう 。
|わたくし||こうきしん||いくぶん||せんせい||こころ||むかって|けんきゅう てき||はたらきかけた||ふた|じん||あいだ||つなぐ|どうじょう||いと||なんの|ようしゃ も なく||じ|ふ つり||きれて|
|||||||||||||||||||||||||||ohne Gnade||||||
||||||||||||research||worked on|||||||connect||||||without mercy|||suddenly|||probably would have
||||||||||||||||||||||||||||||بشكل مفاجئ|||
If my curiosity worked researcher towards the teacher's heart, the thread of sympathy that would connect the two would break without any mercy. I'm sure it's gone.
若い 私 は 全く 自分 の 態度 を 自覚 して い なかった 。
わかい|わたくし||まったく|じぶん||たいど||じかく|||
||||||||awareness|||
それ だ から 尊い の かも 知れ ない が 、 もし 間違えて 裏 へ 出た と したら 、 どんな 結果 が 二人 の 仲 に 落ちて 来たろう 。
|||とうとい|||しれ||||まちがえて|うら||でた||||けっか||ふた り||なか||おちて|きたろう
|||precious|||||||by mistake|back||||if|what kind of|result||||relationship||fallen|would have come
|||尊い|||||||||||||||||||||
Therefore, I may not be the one who has the honor, but if I make a mistake and go out, what kind of result will come to my side?
私 は 想像 して も ぞっと する 。
わたくし||そうぞう||||
||imagination|||shuddering with fear|
I'm horrified to imagine.
先生 は それ で なくて も 、 冷たい 眼 で 研究 される の を 絶えず 恐れていた のである 。
せんせい||||||つめたい|がん||けんきゅう|さ れる|||たえず|おそれて いた|
||||||cold|||||||constantly|was afraid|
Even if that was not the case, the teacher was constantly afraid to study with cold eyes (Manako).
私 は 月 に 二 度 もしくは 三 度 ずつ 必ず 先生 の 宅 へ 行く ように なった 。
わたくし||つき||ふた|たび||みっ|たび||かならず|せんせい||たく||いく||
||||||or|||each||||||||
I started going to the teacher's home (of which) twice or three times a month.
私 の 足 が 段々 繁くなった 時 の ある 日 、 先生 は 突然 私 に 向かって 聞いた 。
わたくし||あし||だんだん|しげ く なった|じ|||ひ|せんせい||とつぜん|わたくし||むかって|きいた
|||||heavily|||||||||||
Eines Tages, als meine Beine immer dünner wurden, wandte sich der Lehrer plötzlich an mich und fragte: "Was soll ich für dich tun?
「 あなた は 何で そう たびたび 私 の ような もの の 宅 へ やって 来る のです か 」 「 何で と いって 、 そんな 特別な 意味 は ありません 。
||なんで|||わたくし|||||たく|||くる|||なんで||||とくべつな|いみ||あり ませ ん
||||often||||||||||||||||special|||
―― しかし お邪魔 なんです か 」 「 邪魔だ と は いいません 」 なるほど 迷惑 と いう 様子 は 、 先生 の どこ に も 見えなかった 。
|おじゃま|なんで す||じゃまだ|||いい ませ ん||めいわく|||ようす||せんせい|||||みえ なかった
|intrusion|it's a nuisance||it's a nuisance|||does not say|I see|||||||||||did not see
――But is it an obstacle?” “I don't think it's an obstacle.” I couldn't see anything that was annoying anywhere in the teacher.
私 は 先生 の 交際 の 範囲 の 極めて 狭い 事 を 知っていた 。
わたくし||せんせい||こうさい||はんい||きわめて|せまい|こと||しっていた
||||||scope||extremely|narrow|||knew
Ich wusste, dass der Umfang seiner Gesellschaft sehr begrenzt war.
I knew that my teacher's companionship range was narrow.
先生 の 元 の 同級生 など で 、 その頃 東京 に いる もの は ほとんど 二人 か 三人 しか ない と いう 事 も 知っていた 。
せんせい||もと||どうきゅう せい|||そのころ|とうきょう||||||ふた り||みっり|||||こと||しっていた
||||classmate|||that time|||||||||three people|||||||
Er wusste auch, dass nur zwei oder drei seiner ehemaligen Klassenkameraden zu dieser Zeit in Tokio waren.
I also knew that there were only two or three of my former classmates in Tokyo at that time.
先生 と 同郷 の 学生 など に は 時たま 座敷 で 同座 する 場合 も あった が 、 彼ら の いずれ も は 皆な 私 ほど 先生 に 親しみ を もって いない ように 見受けられた 。
せんせい||どうきょう||がくせい||||ときたま|ざしき||どう ざ||ばあい||||かれら|||||みな な|わたくし||せんせい||したしみ|||||みうけ られた
||hometown||||locative particle||sometimes|tatami room||sitting together||||||||||||||||familiarity|||||seemed
Occasionally, the teacher and students in the same country sometimes shared the same room, but it seemed that none of them was as close to me as I was.
「 私 は 淋しい 人間 です 」 と 先生 が いった 。
わたくし||さびしい|にんげん|||せんせい||
||lonely||||||
「 だから あなた の 来て 下さる 事 を 喜んで います 。
|||きて|くださる|こと||よろこんで|い ます
||||will come|||gladly|exists
"That's why I'm glad that you're here.
“這就是為什麼我很高興你在這裡。
だから なぜ そう たびたび 来る の か と いって 聞いた のです 」 「 そりゃ また なぜ です 」 私 が こう 聞き返した 時 、 先生 は 何とも 答え なかった 。
||||くる|||||きいた||||||わたくし|||ききかえした|じ|せんせい||なんとも|こたえ|
||||||||||||||||||asked again||||||
Also habe ich ihn gefragt, warum er so oft kommt." "Nun, noch einmal, warum?" Als ich ihn zurückfragte, gab er mir keine Antwort.
That's why I asked him why he came so often. "" That's why again. "When I asked back, the teacher didn't answer at all.
這就是為什麼我問他為什麼他經常來。” “嗯,為什麼?
ただ 私 の 顔 を 見て 「 あなた は 幾歳 です か 」 と いった 。
|わたくし||かお||みて|||いく さい||||
||||||||how old||||
この 問答 は 私 に とって すこぶる 不得要領 の もの であった が 、 私 は その 時底 まで 押さず に 帰って しまった 。
|もんどう||わたくし||||ふ とく ようりょう|||||わたくし|||じ そこ||おさ ず||かえって|
|question and answer|||||very|not clear||||||||at that time||without pressing|||
|الأسئلة والأج|||||بشكل كبير|غير واضح|||||||||||||
|||||||不得要領|||||||||||||
Dies war eine Frage und Antwort, die mir überhaupt nicht gefiel, aber ich habe sie nicht bis zum Ende durchgezogen, bevor ich ging.
This question and answer was a very unprofitable point for me, but at that time I returned without pushing to the bottom (there).
しかも それ から 四 日 と 経たない うち に また 先生 を 訪問 した 。
|||よっ|ひ||たた ない||||せんせい||ほうもん|
furthermore||||||||||||visit|
先生 は 座敷 へ 出る や否や 笑い出した 。
せんせい||ざしき||でる|や いな や|わらい だした
||tatami room|||as soon as|started laughing
「 また 来ました ね 」 と いった 。
|き ました|||
|came|||
「 ええ 来ました 」 と いって 自分 も 笑った 。
|き ました|||じぶん||わらった
||||||laughed
私 は 外 の 人 から こう いわれたら きっと 癪 に 触ったろう と 思う 。
わたくし||がい||じん|||||しゃく||さわったろう||おもう
||||||like this|if told|probably|annoyance|locative particle|got annoyed||
|||||||||癪||||
Ich bin sicher, dass ich beleidigt gewesen wäre, wenn jemand von außen dies zu mir gesagt hätte.
I'm sure I would have touched the tantrum if someone outside (other) said this.
しかし 先生 に こう いわれた 時 は 、 まるで 反対であった 。
|せんせい||||じ|||はんたいであった
||||was told||||oppositeだった
癪 に 触らない ばかりで なく かえって 愉快 だった 。
しゃく||さわら ない||||ゆかい|
||did not irritate|||on the contrary|pleasant|
癪|||||||
Not only did he not touch the tantrum, but it was fun.
「 私 は 淋しい 人間 です 」 と 先生 は その 晩 また この 間 の 言葉 を 繰り返した 。
わたくし||さびしい|にんげん|||せんせい|||ばん|||あいだ||ことば||くりかえした
「 私 は 淋しい 人間 です が 、 ことに よる と あなた も 淋しい 人間 じゃ ない です か 。
わたくし||さびしい|にんげん||||||||さびしい|にんげん||||
||||||especially|by|||||||||
私 は 淋しくって も 年 を 取って いる から 、 動かず に いられる が 、 若い あなた は そう は 行かない の でしょう 。
わたくし||さびしく って||とし||とって|||うごか ず||いら れる||わかい|||||いか ない||
||lonely||||getting older|||without moving|||||||||will not go||
I'm lonely but old, so I can stay still, but young you probably won't.
動ける だけ 動きたい のでしょう 。
うごける||うごき たい|
can move||want to move|probably
Sie wollen sich so viel wie möglich bewegen.
You want to move as much as you can.
動いて 何 か に 打つかりたい のでしょう ……」 「 私 は ちっとも 淋しく は ありません 」 「 若い うち ほど 淋しい もの は ありません 。
うごいて|なん|||うつ かりたい||わたくし|||さびしく||あり ませ ん|わかい|||さびしい|||あり ませ ん
||||want to hit||||not at all|lonely|||||||||
Du willst dich bewegen und etwas treffen. ......" "Ich vermisse dich überhaupt nicht. Es gibt nichts Einsameres, als wenn man jung ist.
I wonder if I want to move and hit something...” “I'm not exactly sad,” “There aren't as many people as young.
そん なら なぜ あなた は そう たびたび 私 の 宅 へ 来る のです か 」 ここ でも この 間 の 言葉 が また 先生 の 口 から 繰り返さ れた 。
|||||||わたくし||たく||くる||||||あいだ||ことば|||せんせい||くち||くりかえさ|
then|||||||||||||||||||||||||||
Warum kommst du dann so oft zu mir nach Hause?" Auch hier wiederholte der Lehrer, was er zuvor gesagt hatte.
「 あなた は 私 に 会って も おそらく まだ 淋 ( さび ) しい 気 が どこ か で して いる でしょう 。
||わたくし||あって||||りん|||き|||||||
||||meeting||probably||lonely|lonely|probably||||||||
"You're probably still feeling lonely somewhere when you meet me.
私 に は あなた の ため に その 淋しさ を 根元 から 引き抜いて 上げる だけ の 力 が ない んだ から 。
わたくし||||||||さびし さ||ねもと||ひきぬいて|あげる|||ちから||||
||||||||loneliness||the root||pull out|give|||||||
Ich habe nicht die Kraft, diese Einsamkeit aus dir herauszuziehen.
I don't have the power to pull out that loneliness from your roots and raise it for you.
あなた は 外 の 方 を 向いて 今に 手 を 広げなければ ならなく なります 。
||がい||かた||むいて|いまに|て||ひろげ なければ|なら なく|なり ます
||||||||||must spread|must not become|
Sie müssen jetzt nach außen schauen und Ihre Hände öffnen.
You will have to look outward (and others) and reach out now.
今に 私 の 宅 の 方 へ は 足 が 向かなく なります 」 先生 は こういって 淋しい 笑い方 を した 。
いまに|わたくし||たく||かた|||あし||むか なく|なり ます|せんせい||こう いって|さびしい|わらい かた||
||||||||||will not head||||like this||sad laughter||
Jetzt wirst du nicht mehr zu mir nach Hause kommen können." Die Lehrerin lächelte traurig.
Right now I'm not going to go to my home."