JIN - 仁 - #07
( 仁 ) 平成 二十二 年 …
てこ と は …
( 洪 庵 ) 私 に は …→
時間 が ない
( 勝 ) 医学 所 辞め ち まった か ( 橘 ) はい
「 一連の 騒動 は 自分 の 落ち度 だ 」 と 言い出して
≪( 勝 ) どこ 行く んだ ? 龍 の 字
( 龍 馬 ) 先生 の 護衛 に 行く ぜ よ
まだまだ どう なる か 分から ん
お前 さん 頼む よ ああ …
どう いて じゃ !?
そろそろ 海軍 を つくる 根回し を 始めよう と 思って よ
けん ど 今 は …
死に かかって る の は 人 ばかり じゃ ない んだ ぜ
この 国 だって 死に かかって んだ
( 山田 ) どうぞ
少し チクッ と し ます
( 野 風 ) 先生 から お 礼 の 文 を いただき ん した が
先生 は あ ちき の 文 そのもの は ご覧 に ?
( 咲 ) どうした もの か 私 も 判断 を いたし かね
あの … お 見せ した 方 が ?
いえ …
どうか そのまま 破り 捨てて おく ん なん し
あの … 野 風 様 は 先生 の こと を お 慕い して
あ ちき に も 情 人 の 一 人 ぐらい は お ざん して な
その お方 の こと を 考え 書いた まで の こと
南方 先生 の こと を お 慕い して る わけで は ご ざん せ ん
先生
ご 無事で 何より で
別人 な の は 分かって んだ けど な ~
あれ … いい んです か ? 咲 さ ん
一緒に 歩いて る こと に なっちゃ うんじゃ
つまら ぬ こと を 気 に する の は やめた のです
歩き たい ように 歩け ぬ 人 も いる のです から
は あ …
( 玄 朴 ) 無断 で ペニシリン を 持ち出す と は 何事 じゃ !
( 山田 ) ペニシリン は 南方 先生 が つくりだした もの です し …
薬 を つくる 施設 材 全て 医学 所 持ち であろう !
今回 の 件 に かんし まして は
全て 私 が 立て替え ます ゆえ
この こと は 南方 先生 に は 内密に
しかし 使用 の たび に これ で は …
やはり 一連の 下手人 を 捜した 方 が よろしい ので は
恨み は … 恨み を 買う だけ や と 思い ませ ん か ?
ああ …
ペニシリン を 守る ため に は もっと 別の 策 を 講じ ん と …
≪( 山田 ) 大丈夫で ございます か ?
ただ の 流行り 風邪 で ございます
( せき込む )
( 栄 ) どう なさる お つもりでしょう ね ? 先生 は
もう ずいぶん 何 を なされる でも なく
それ は 未来 の もの です か ?
ああ … はい 丘 に 落ちて て
では どなた か が 先生 の ように
いら した と いう こと で ございます か ?
誰 か が 来た の か
これ だけ が 落ちて きた の か 分から ない んです けど
戻れる 道 を お 捜し に なって いる のです か ?
今 戻って も 未来 さん の 手術 が
成功 する ような 世に は なって い ない と
案じて いらっしゃる ?
どうして 分かった んです か ?
先生 が 迷わ れる と したら それ し かない です から
でも ここ で ずっと 生きて く 覚悟 は ある の か って 言わ れる と …
ご 判断 を 急ぐ 必要 は ない ので は ない でしょう か
いつか 天命 も まいり ましょう し
天命 ?
人 に は いかに 生きる べき か
天命 を 授かる とき が くる と 言い ます から
〈 もし いつか 〉
〈 本当に 天命 なんて もの が 空 から 降って きた と して 〉
これ が ペニシリン で ございます
〈 それ が もし 〉
〈 この 時代 で 生きて いく こと だった と したら 〉
〈 俺 は あきらめきれる んだろう か 〉
〈 この 手 の 中 の 可能 性 を 〉
南方 仁 なる 医者 が つくり ました
〈 あきらめきれる んだろう か ?〉
〈 君 と の 未来 を 〉
≪( 喜市 ) 先生 !→
茜 ねえちゃん が !
揚げ物 の 油 を かぶ っち まって !
《≪ 茜 ちゃん 大丈夫 かい !?》
( 洪 庵 ) ペニシリン は すばらしい 薬 です が
管理 が 難しく 保存 が きか ぬ ゆえ
絶えず 人 の 手 を 必要 と し ます
その 上 に 我ら を 快う 思わ ん 連中 の 手 に よって
害 を なす と いう 事件 まで 起きて おり ます
( 客 ) 害 皆 恐ろしい ので ございます
南方 先生 の 医術 が 進み すぎて
( 客 ) 緒方 先生 は 恐ろしく は ない のです か ?
医術 に 命 を かけた 者 と して は 落胆 も いたし ました
が しかし か の 人 の 医術 が 広まれば
たちどころに 幾 万 … いや
幾 十万 の 人 の 命 を 救う こと が でき ます
南方 先生 と ペニシリン は
本邦 医学 界 が 守ら ねば なら ん
宝 で ございます
( 母親 ) 先生 茜 の 顔 は 元 に 戻り ます でしょう か ?
( 茜 ) 無理 言う な よ いくら 何でも こんな ヤケド …
まったく 元どおり と いう わけに は いか ない かも しれ ませ ん が
化粧 を すれば 分から ない 程度 に は できる と 思い ます
とりあえず 今日 は 消毒 を し ましょう
≪( 茜 ) はい
≪( 咲 ) どのような 治療 を なさる のです か ?
失った 皮膚 を 別の 部分 から 移して 植え 替え ます
そのような こと が できる のです か ?
でも … その ため に は 大量の ペニシリン が 必要な んです
では 医学 所 に
お 願い する しか あり ませ ん ね
は は ~ 皮膚 を 移植 なさる
はい 損傷 は 表皮 だけ で なく
真 皮 全 層 に まで 達して い ます
皮膚 の 再生 は 望め ない 状態 だ と 思い ます
ですから 他の 部分 から 皮膚 を 移植 する のです が
手術 後 約 二 週間 ほど
感染 症 予防 の ため に ペニシリン が 大量に 必要です
その ため の ペニシリン で ございます か
あの … 大量 と は どの 程度 に ?
必要な だけ どう か お 申しつけ ください
≪( 洪 庵 ) それ は それ と して
その 手術 私 の 知人 に 見せて いただく こと は でき ます か
かまい ませ ん が かた じ け のう ございます
で その 手術 どのように なさる のです か ?
はい まず 麻酔 を した あと
ヤケド で 壊死 した 部分 を カミソリ で 取り除き ます
それ を 「 デブリードマン 」 と いう のです が …
≪( 山田 ) 先生 先生 ?
大丈夫で ございます
≪( 山田 ) 風邪 を こじら して いらっしゃる ようです
この ところ 遅く まで 書き物 を して おる らしく
お 疲れ な ので ございましょう
山田 先生 も ペニシリン 管理 する の 大変です よ ね ?
え ッ ? それ を 大量に つくって くれ なんて
ペニシリン は 誰 が 何と 言おう と 南方 先生 の もの で ございます
存分に お 使い ください ませ
( 医師 B ) あの 連中 は 何も 反省 して おら ぬ ようじゃ の
( 瓦版 売り ) ついに やった よ 攘夷 だ
長 州 が メリケン の 船 を 攻撃 した って よ ~
ほんとに 幕末 な んだ な
≪( 洪 庵 ) 南方 先生
私 の 古い 恩人 で ございます
( 濱口 ) 今日 は よろしく お 願い し ます
はい
麻酔 導入 し ました
デブリードマン は い
あれ は 何 を して いる のです か ?
壊死 した 皮膚 を →
けずり 取って おる ので ございましょう
( おばちゃん ) 山田 先生 ずっと 泊まり込み な んだ って ?
南方 先生 に よい ペニシリン を 持っていか ねば なら ぬ から
( 佐分利 ) 山田 先生 !
製造 所 から 火 が !
ペニシリン が …
うわ ~ ッ ! 山田 先生 !
≪( 佐分利 ) 山田 先生 !
採 皮 部分 を 縫 合し ます は い
南方 殿 は 誠に …
この世 の … 奇跡
≪( 横 松 ) 緒方 先生 南方 先生 !→
いらっしゃい ます か !?→
ペニシリン 製造 所 から 出火 し ました !→
ペニシリン を 全て 失い ました !
緒方 先生 !
ペニシリン が …
今日 は 蒸し ます ね 先生
はい
続け ます
( 八木 ) 誰 が こんな こと を
ええ 株 持ち出せて る じゃ ないで す か
ひと 株 で は …
どうにも
先生 !
( 山田 ) 先生 私 は …
私 は 南方 先生 に 合わす 顔 が ござ り ませ ぬ !
( 濱口 ) 南方 殿 ペニシリン と いう 薬 なし で →
今後 の 治療 は できる のです か ?
できる だけ 丁寧に 縫 合し ました
何とか なる のです か ?
皮膚 の 固定 に 気 を 配り まめに 消毒 を 続けて いき ます
《 お 願い が ございます 薬 を つくり たい んです 》
《 ペニシリン と 言い ます 》
《≪( 洪 庵 ) やり ました な 》
≪( 濱口 ) 緒方 先生
私 は … 頭取 失格 です
お 恥ずかしい こと で ございます
この 事件 の 裏側 に は 医学 所 内 の 派閥 争い が ございます
南方 先生 が 辞め なければ なら ん かった 理由 も
突きつめれば そこ に ございます
私 は … 何一つ でき ん かった
南方 先生 から 数 限りない 医術 を 与え られ ながら
私 は …
何一つ !
緒方 先生 … あ ッ !
濱口 様 後生 で ございます
( 洪 庵 ) お 願い いたし ます ! お 願い いたし ます
では 緒方 先生 に お 会い する こと は ?
今 は ちょっと …
ペニシリン を 再び つくる 目 処 は ?
全力 で やり ます それ は お 約束 し ます んで
早くて も 二 週間 は かかる か
先生 青 カビ を 集め ましょう
この 季節 です し カビ も 育ち やすう ございましょう
≪( 男 ) 山田 純 庵 殿 で ご ざる か ?
先生 カビ あり ました ありがとう ございます
おい ら に でき ん の は カビ を 集める くらい の 気 も する が
考えちゃ みる が よ お 願い し ます
坂本 殿 より の 文 で ございます か ?
ああ 海軍 塾 の お 足 越前 の 殿様 から
五千 両 借り られた って よ 五千 両 !?
殿様 の 前 で ペニシリン の 話 を した らしい ぜ
《( 龍 馬 ) その 南方 先生 っ ちゅう が は 》
《 ペニシリン っ ちゅう 秘密 兵器 を 持 っち ょる が じゃ 》
《 これ が あるき !》
《 腹 を か っ さばく っ ちゅう 大胆な 治療 が できる が じゃ 》
《 列強 に 負け ん ような 海軍 は 》
《 こん 国 の ペニシリン に なる ぜ よ !》
あの 口先 は 才能 だ な はい …
( 初音 ) よう 見え りん す
ありがとう ご ざん す 橘 様
それ で 少し は 暮らし やすく なろう
けん ど これ で は 客 はつ きんせん な
もう … つか ず と も よい で は ない か
もっと 早う 出会い たかった であり ん す
( 野 風 ) 他言 は いたし ん せんけん ど
女 郎 の 言葉 に は 必ず 嘘 が 入りまじって おり ん す
それ だけ は 心して おく ん なん し
説教 と は 花魁 と は ずいぶん 偉い もの である な
真 の 世 から は あ ちき など
蚊帳 の 外 で お ざん すよ
私 も だ
思う ように は 増え ませ ん ね
よかった んでしょう か ? これ で
同じ 過ち を おかして は なり ませ ん
あんまり よく ない んだ ろ ?
そんな こと ないで すよ
い いって あたい は 顔 で 売って た んじゃ ないし さ
感染 症 を 起こし かけて いる !? はい
このまま だ と まず い です
ペニシリン は まだ でき ぬ のです か ?
これ から 抽出 して も あと 一 週間 は
そう だ … 先生 ?
ちょっと 行って き ます !
先生 どこ へ !?
≪( 医者 ) 医学 館 の 名 を つぶして おいて →
よくも の この こ来 られた な ! お 願い し ます !
このまま で は 感染 症 に なる 危険 が あり ます
化膿 に 効く 生薬 か 何 か を ! お 願い し ます
( 医者 ) うるさい !
( 橘 ) 行き ましょう 先生
あの 程度 の ヤケド を 治せ ない なんて
「 神 は 乗り越え られる 試練 しか 与え ない 」
喜市 ちゃん が 以前 先生 に そう 言わ れた と
はい
どうぞ ありがとう ございます
南方 様 に お 荷物 が 届いて おり ます
私 に ?
( 山田 )「 まだ 少し です が ペニシリン を お 届け し ます 」
「 これ から 毎日 このように お 届け いたし ます ゆえ 」
「 ご 安堵 召さ れ ます よう 」
どう やった んでしょう ? たった 七 日間 で
分かり ませ ん
でも …
これ で 治 せる
上がった な ~
これ で 治った の か ?
傷あと は 時間 の 経過 と ともに どんどん 消えて き ます
ほんとに !? はい 大丈夫です よ
ねえちゃん 店 いつ から 出 れ んだ よ ?
ねえちゃん の 呼び込み が ない と 寂しくて いけ ねえ って
み ~ んな うるさく って
明日 に は 拝ま せて やる って そう 言 っと け !
よかった で すね は い
佐分利 先生
もう そろそろ 教えて いただけ ませ ん か ?
どう やって ペニシリン を つくった の か
( 橘 ) こんな 所 で つくって た んです か
放火 やった んで しばらく 場所 は ふせて おけ と 緒方 先生 が
でも 一 週間 じゃ カビ も 育た ない でしょう
そこ は 山田 先生 が 命からがら 株 を 持ち出して くれた んで
これ は …
ここ は もと 醤油 が 運ば れる 倉 だった 所 です
醤油 ? ええ
この 者 達 は 醤油 づくり の 職人 です →
もともと 培養 したり ろ過 したり →
そういった 作業 に は 慣れて る わけです
ゆえに 七 日間 で ペニシリン が ? ええ
でも どうして こんな こと が できて ?
手術 見学 して はった 方 あの 方 は →
濱口 様 っ ちゅう 醤油 づくり の ヤマサ の ご 当主 な んです よ
あった んだ この 時代 から
≪( 山田 ) 濱口 様 は 医学 所 の 前身 の 種痘 所 を 再興 したり
医学 の 研究 の ため に ばく大な 援助 を して くれて る 方 です
緒方 先生
どうして 言って くれ なかった んです か ?
私 が 素性 を 明かさ ぬ ように お 願い した のです
あの とき は まだ ペニシリン に 対する 援助 を
決め かねて おり ました ので
でも 結局 あの とき は ペニシリン を 使わ ず に …
私 は あなた の 神業 の ような 医術 や
薬 の 威力 ゆえ に 心 を 決めた わけで は ございませ ぬ
あなた と あなた の 医術 を 守り たい と いう
緒方 先生 の お 心 に 打た れた ので ございます
緒方 先生 の お 心 ? はい →
先生 から は 数 ヵ 月 に わたって →
何度 も 丁寧な 文 を いただき 何度 も 足 を お 運び いただき →
その 熱心 さ は 少々 恐ろしい ほど で ございました
この 製造 所 は 緒方 先生 が 命 を けずって
お つくり に なら れた もの です
あなた の ため に
その後 緒方 先生 に は お 会い に なら れ ました か ?
いえ
では 一 日 も 早く
お 礼 を おっしゃり に 行って ください
緒方 先生 は 恐らく …
重い 労 咳 に
え ッ !?
( 橘 ) 先生 お 待ち ください 先生
《 何とぞ 我ら に コロリ の 治療 法 を ご 教授 願い たく 》
《 山田 を お 願い し ます 》
《 道 を 開く と いう こと は な 》
《 自分 だけ の 逃げ道 を つくる こと や ない !》
《 して … その 薬 の 名 は ?》
( 八重 ) 南方 様 と おっしゃる お方 が
着替え を
南方 殿 は 私 の 師 に も あたる お方 や
こんな 格好で は 無礼に あたる
ああ お 待た せ して 申し訳 ございませ ん
先生
ペニシリン の 件 で は 本当に お 世話に なり ました
いえいえ
あれ は 濱口 様 が いたれば こそ の こと
緒方 先生 は い
診察 を さ せて いただけ ます か ?
これ は これ は
お 見たて の ほど よろしゅう お 願い し ます
先生
先生 は 医 の 道 は どこ へ 通じる と お 思い です か ?
え ッ ?
私 に は …
私 は 医 の 道 は
平らな 世に 通じる と 思う てま す
武士 や 百姓 や と 人 に 勝手に
身分 の 上下 つけ とる 世の中 で は ございます が
腹 割れば 同じ もん が 入って ます
天 の 下 に 人 皆 等しき なり
医学 の 目指す べき 地平 は そこ や と 思う て
日々 精進 して まいり ました
未来 は … 平らな 世 で ございます か ?
先生 は 未来 から 来た お 人 でしょう ?
そんな こと は あり え ん
そんな バカな こと を 考える それ だけ で 蘭学 者 失格 や
でも … 何べん 考えて も
そう と しか 思え ん のです わ
冥土 の 土産 に し ます ゆえ 教えて ください
私 の 思う た と おりや ったら
先生 目 つぶって ください
お 恥ずかしい こと で ございます
一 年 前 住み慣れた 大坂 から
江戸 へ 召し 出さ れて
口 で は 「 国 の ため 道 の ため 」 など と 言う ており ました が
心 の 中 で は もう 寂しゅう て 寂しゅう て
たかが 大坂 から 江戸 へ 召し 出さ れた だけ で
恥ずかしい こと で ございます
南方 先生 の 寂し さ に 比べれば
私 など … いかほど の もんか
もう … 私 に できる こと は
何も ございませ ん
だから どうか
先生 の その 寂し さ
この 洪 庵 に お 分け ください
洪 庵 冥土 に 持っていき ます
心細く は あり ました が
私 は 孤独で は あり ませ ん でした
私 の ような 得体の知れない 者 を 信じ
支えて くださった 方 が い ました から
私 は …
決して 孤独で は あり ませ ん でした
緒方 先生
私 に も 一 つ お 教え 願え ます か ?
私 は この ご恩 に どう 報いれば よろしい のでしょう か ?
より よき 未来 を お つくり ください
未来 を ?
皆 が 楽しゅう 笑い 合う
平らな 世 を お つくり ください
国 の ため
道 の ため
はい
南方 先生
未来 で は この 労 咳 と いう 病 は
治 せる 病 に なって おる んです な ?
ああ … ああ …
〈 そして 1863 年 〉
〈7 月 25 日 〉
〈 緒方 先生 は 帰ら ぬ 人 と なった 〉
〈 俺 と かかわった こと で 〉
〈 寿命 が 延びた の か 縮んだ の か それとも 〉
〈 何も 変わら なかった の か は 分から ない 〉
〈 だけど 満足 そうに 〉
〈 微笑んで いか れた と いう 〉
〈 その 顔 は たとえ 歴史 が どう 変わって も 〉
〈 変わら なかった のだろう と 思う 〉
長 州 が アメリカ と フランス から
攘夷 の 報復 攻撃 を 受けた ちゅう 話 じゃ が
( 勝 ) これ で 奴 ら も 攘夷 なんて 絵 に 描いた 餅 だ と 分かった だろう
長 州 を たたき おった 異国 の 船 は 幕府 が 修理 し
再び 長 州 を たたき に 出て いった っ ちゅう 噂 は
誠 かい ? 怒って ん の かい ?
思う とこ は 違う けん ど 奴 ら は こん 国 を 守る ため に
戦 こうち ょる ぜ よ それ を …
これ を 理由 に 戦 なんか 仕掛け られて みろ
あっという間 に 占領 さ れて 終わり さ
先生 は それ で ええ が かえ !?
おい ら 幕 臣 だ よ
幕 臣 だ から できる こと は 山 の ように ある
が 幕 臣 だ から のま なきゃ な ん ねえ こと も ある
《 より よき 未来 を お つくり ください 》
より よき 未来 …
お 手紙 です
「 友 」?
( 龍 馬 )「 先生 元気に しち ょる かえ 」
龍 馬 さん
「 どうでも ええ こと じゃけん ど 」
「 今日 は 一 つ 聞いて ほしい ぜ よ 」
「 長 州 を 攻撃 した 異国 の 船 を 幕府 が 秘密裏 に 修理 し 」
「 その 船 が また 長 州 を たた い とる っ ちゅう 噂 は 」
「 聞 いち ょる かえ ?」
「 わしゃ 勝 先生 に 」
「 それ で ええ かえ と つめよった けん ど 」
「 先生 は 幕 臣 である が ゆえ に 」
「 どうにも なら ん こと が ある ち 言う が じゃ 」
「 ならば それ こそ が わし の 天命 で は ない か え 」
「 天 より する こと かも しれ ん と 思う た ぜ よ 」
「 わし に は 身分 も ない 」
「 その かわり に しがらみ も ない 」
「 何の 力 も ない けん ど この 身 一 つ 」
「 どうにでも 動ける き 」
「 わし は 日本 を いま 一 度 せんたく する ぜ よ 」
「 攘夷 派 も 開国 派 も まとめて みせる き 」
「 この 日 の 本 を 一 つ に する ぜ よ 」
「 一 つ 」
一 つ に …
する
〈 これ って もし かして 〉
〈 天命 って やつ じゃ ない か って 思った んだ よ 〉
未来
俺 さ 病院 を つくって みる よ
誰 も が 気軽に かかれる ような 値段 で
そこ で は 西洋 医学 と 漢方 と が 融合 した 治療 が 受け られる
その 二 つ を 一 つ に する こと で
新しい 医療 が 生まれる 可能 性 が ある と 思う んだ
その こと で 君 の 未来 が 一時的に 悪く なったり
いろいろ する んだろう けど
大きな うねり で は
絶対 に いい 方向 に 向かう と 思う んだ
未来 が 過去 の 結果 だ と する なら
最善 を 尽くした 結果 が 悪く なる はず は ない だろう し
俺 は そう 信じ たい
俺 は ここ から
君 の 腫瘍 を 治 せる ような 未来 を つくって み せる
〈 これ は 俺 の …〉
〈 新たな 船出 だ 〉
皆さん 改めて よろしく お 願い し ます !
はい !