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刀語, Katanagatari Episode 9 (3)

Katanagatari Episode 9 (3)

踏襲 と いう より ここ で は こう 言って おいた 方 が いい か

わたし たち が 狙う の は まぐれ 勝ち だ

分から ず

まさか お前 が 残って 2 人 を 逃がす と は

煙幕 か 古臭い 忍法 を 使う な

うるさい の よ

ただ 単に あんた ごとき は わたし 一 人 で 十分 と いう だけ の こと よ

大した 自信 だ

しかし わたし は お前 が 相手 で は 不満な のだ

わたし の 目的 は 真庭 鳳凰 の 暗殺 な のだ から

あんた 何者 よ

答え ず

もし かして あんた だ ね

海亀 さん を やった の は

あれ は 「 毒 刀 · 鍍 」 か

あ 何 だい あんた 話 を 聞いて いた の かい

あの 距離 から よく 聞こえた ねえ

いや 知っていた だけ だ

は あ

理解 し なくて いい どうせ お前 は ここ で 死ぬ のだ から

そうかい

むち か

真庭 忍法 永 劫鞭

行 くわ よ

巻き戻し の 鴛鴦 か

どう する

面白い

褒めて もらって うれしい わ ね

お礼 に 教えて あげる

これ 攻撃 力 は それ ほど で も ない の

先端 の 刃物 だけ 気 を 付けて いれば 致命 傷 は 避け られる わ よ

でも ね この 永 劫鞭 は

敵 を じわじわ と なぶり 殺し に する の に 最高に 適した 武器 な の よ

ならば 相生 拳法 背 弄 拳

悪い わ ね

禁じ 得 ず

驚き を 禁じ 得 ない 背 弄 拳 が 通じ ない と は

そんな 相手 は 真庭 鳳凰 くらい か と

は あ 何 だい あんた 鳳凰 さま と 知り合い な の かい

知り合い 以上 怨敵 未満 だ

答え に なって ない よ

どうした の もう 終わり かい

そう よ ね これ は むち の 結 界

防御 こそ 最大 の 攻撃 って こと

じゃ こっち から 終わら せて あげる

あんた の 命 海亀 さん に 捧げて やる

だが それ は わたし に は 通じ ず

それ は 何

満た ず

結局 真庭 鳳凰 暗殺 は 失敗 だ

しかし この 女 は 見事に 役割 を 全うした

さすが は 忍者

忍者 を 辞めた わたし より ずっと 潔い

褒めて やろう

聞こえ ず か

蝶 ちょう さん

あの さ できれば 汽口 と は 泥仕合 は 避け たい な

やはり そ なた 汽口 に じょ 情 が 移った のだ な

そな たま たも 心変わり を した と いう の か

また もって 俺 が いつ

ど 道場 で

二 人きり で 何 を して おった の か わたし は 知っている のだ ぞ

ああ 知って の とおり 稽古 だ

何の 稽古 だ か

わたし は そな た を 信頼 して あの 道場 に 通わせて いた と いう のに

もう そ なた の 浮気 性 に は 付き合い きれ ぬわ

付き合い きれ ない の は こっち だ

自分 から そういう 話 を 振って きて おいて

俺 は あんた の 言う とおり この 十 日間

とがめ ちょっと ヤバ い かも しれ ない ぞ

ヤバ い

いや まあ 確かに よそ の 流派 の 門下 生 に なれ と いう

わたし の 命令 は 理不尽であった と 思う し

それ で 愛想 を 尽かさ れて も 仕方ない の かも しれ ない けど

わたし に は わたし なり の 考え が あって だ な

それ を 聞いて くれて も いい で は ない か

それ を それ を

分かった 分かった

いや その 件 に ついて の 話 は もう 終わって いる

「 終わって いる 」 と は 何 だ

まだ 話し合い の 余地 は 残って おる だろう が

2 人 で 築いて きた 関係 を

1 人 で 一方的に 終わら そう と は どういう つもり だ

わたし は この 十 日間 どういう 思い で

いや ヤバ いの は とがめ の 立てた 奇 策 だ よ

そう な の か ならば よい

いや よく は ないだ ろ

で 奇 策 が どう ヤバ い

つまり さ その 奇 策 は

俺 が 刀剣 使い の 素人 である こと を 前提 に 考え られて いる わけだ ろ

けれど とがめ 十 日 前 なら いざ 知ら ず

あんた が その 奇 策 を 練って いる 間 に

俺 は 達人 である 汽口 から 直々 に ずっと 教え を 受けて いた んだ ぜ

俺 は もう 素人 と は 言え ない んじゃ ない の か

あっ そう か 確かに そこ まで は 考えて は い なかった

わたし と した こと が 不覚だった な

よし 分かった

まだ 何 か 覚えて おる か

全部 忘れた

まだ 七 花 殿 は わたし と 戦う まで に は 及んで い ない と

相手 の 実力 が 劣る と いう 理由 で 立ち合う に 及ば ない と は

汽口 殿 も ずいぶん と 思い上がった こと を 言う で は ない か

剣 の 道 に さ ような 絶対 は ある まい

どのような 実力 差 が あろう が

剣 を 取って 立ち合う 以上 は 対等であろう

分かり ました

とがめ の 思惑 どおり だ

ただ その 前 に お 願い が あり ます

この 勝負 わたし が 勝った ならば

どう か 「 王 刀 · 鋸 」 を すっぱ り と あきらめて いただき たい

承知 した

では まずは 将棋 戦 9 局

王手

ですが 結局 4 勝 5 敗

将棋 戦 9 局 は とがめ 殿 の 勝ち です

では 次 剣 術 は 1 回 勝負 の 1 本 勝負 で

用意 は いい です か 七 花 殿

いい よ

一応 先 に 言 っと く けど 十 日間 色々 と 世話に なった な

何一つ 身 に 付き は し なかった

出来 の 悪い 門下 生 だった けれど

いい 経験 に なった と 思って いる ぜ

いや わたし の 方 が 多く の もの を 学ば さ れ ました

おそらく

まだ 私 は 人 に もの を 教え られる ような 立場 に ない

と いう こと だった のでしょう

か の ような 結果 に 終わって しまった こと に ついて は

誠に 申し訳なく 思って おり ます

まだ 謝る な よ

これ で もしも 俺 が あんた に 勝てば

あんた の 正し さ が 逆に 証明 さ れる って こと に も なる んじゃ ない か

そう です ね

七 花 殿 あの

木刀 の 持ち 方 が 間違って い ます

七 花 殿 心 の 鬼 を 心 で 斬る

これ を もって 慚愧 と 名乗る

心 王 一 鞘流 十二 代 目 汽口 慚愧 お 手並み 拝見 いたし ます

言わ れ なくて も 見せて やる さ

ただし そのころ に は

あんた は 八 つ 裂き に なって いる かも しれ ない けど な

それでは そろそろ 始め ましょう か

それでは いざ 尋常に 始め

7六 歩

わたし は 3四 歩 と 返す

2六 歩

4四 歩

2五 歩

3 三角

まるで わたし の 手 を 読み 知っている か の ように

4八 銀

動け ない 駄目だ 集中 力 を 乱さ れる

3二 銀

5六 歩

そう か だ から 9 局 対局 を 負け で 終わら せた の か

4三 銀

最後に 先手 を 取る ため に

5八 金 右

この 人 と は 10 局 対局 した だけ

わずか 2000 手 で わたし の 動き を 読み取って しまった

この 人 は

6八 玉

考え なければ いい のだ

そう か 七 花 殿 は 将棋 が でき ない のであった な

7八 銀

考え なければ いい のに

どうしても 考えて しまう

2二 飛

7八 玉

面 心 王 一 鞘流 対 虚 刀 流 の 一 番 は とても 静かに あっけなく しかも 地味に 決着 が ついた ので ございます

なるほど 心理 戦 ね

まったく 俺 の 苦手な 領域 だ な

しかし とがめ の その 才覚 は

できれば 敦賀 迷彩 戦 あたり で 発揮 して ほしかった もの だ が

た わけ が だ から 何度 も 言う が

戦闘 は あくまで そ なた の 領分 であろう が

今回 の こと こそ 例外 だ と 思え

まあ そう だ な でも さ あれ って 厳密に は 反則 じゃ ない の か

横合い から 選手 に ぺらぺら と 話し掛ける って いう の は

何だか ずるい 気 も する んだ けど

そ なた は 何 を 言って おる のだ

反則 に 決まって おろう が

でも だったら そう 指摘 し そうな もの じゃ ねえ か

あれ だけ 規則 に うるさい 汽口 なら

だが な 七 花 その 反則 を 取る の は 誰 だ

審判 役 の わたし であろう が

確かに

それ に この 村 に おいて

まさか 将棋 を 指した こと を 反則 扱い は でき まいよ

えっ

なぜなら ここ は 将棋 の 聖地 だ ふん

でも とがめ の 将棋 は ホントに すごい な

全力 で お 願い し ます

あっという間 に

42 手 だ

参り ました

とがめ の 圧勝

そな たも 6 割 の 力 で 戦う と いう 縛り でも 圧勝 した で は ない か

いやいや

奥義 · 百花 繚乱 を 繰り出して やっと の 勝利 だ

参り ました

お み それ し ました 七 花 殿

知ら なかった と は いえ

あなた の ような 使い 手 を

わたし の ごとき 未熟 者 の 門下 生 と して 扱った 無礼 を

お 許し ください

だから そんなに 謝 んな よ

あんた の 剣 は 何も 間違っちゃ い ない んだ から

剣 を 取った 方 が 弱く なる など まるで 呪い の ようです ね

呪い

どうぞ 約束 どおり 「 王 刀 · 鋸 」 は お 渡し し ます

いい の か よ それ は 当主 の 証し なんだ ろ

わたし に は まだ この 刀 を 持つ 資格 は ない ようです

いえ 逆です ね

わたし は この 刀 から すでに 十分な 力 を 得 ました

天下 国家 の ため に 使う なり 折って 捨てる なり 何なり と

その後 の 処理 は お 任せ いたし ます

また いつでも いら して ください

そして その 際 に は ぜひ もう 一 度 お 相手 願い たい

その とき を 楽しみに

わたし は 心 王 一 鞘流 の 看板 を これ から も 守り 続けよう と 思い ます

看板 って 看板 は 王 刀 じゃ なかった の か よ

心 の 鬼 を 心 で 斬る

これ を もって 慚愧 と 名乗る

これ から は わたし 自身 が 看板 です

看板 娘 です

楽しかった な

ち ぇり お

何 だ 鼻 の 下 が 伸びて おる ぞ

どこ が

お っ 自覚 ありか

だから 何の

まあ よい それ より 残る 刀 は いよいよ 3 本 か

ま にわ に の 連中 あっ ち も あ っち で 刀 集めて たり する の か な

さて どう だろう な

連中 に それ だけ の 器量 が ある と も 思え ぬ が

1 本 くらい は やつ ら の 手 に 落ちて いて も 不思議 は ない な

七 花 今回 の 件 は あまり 考え たく ない 今後 の 可能 性 を 示唆 して おる な

ああ 俺 が 刀 を 持つ と めちゃめちゃ 弱 いって こと か

けど 今回 みたいな 場合 って さすが に もう ない と

いや それ は それ で はなはだ 不安 要素 で は ある が

旧 将軍 の こと だ

旧 将軍

刀狩 令 の こと だ

旧 将軍 は 「 どうして 「 王 刀 · 鋸 」 を 収集 でき なかった の か 」 と な

どうして って

毒 を 発さ ない と か 毒気 を 抜く と か

そんな 王 刀 楽土 の 効果 を さておけば

あくまでも ただ の 木刀 だ ぞ

その 木刀 で

どう やって 当時 の 「 王 刀 · 鋸 」 の 所有 者 は 旧 将軍 を 撃退 した のだ

うん

刀狩 令 表向き の 目的 は 刀 大仏 建立 の ため

裏 向き の 目的 は 剣 客 撲滅 の ため

真 の 目的 は 四季 崎記 紀 の 変 体 刀 集め

しかし 実は その 裏 が あった ので は ない だろう か

旧 将軍 の 刀 集 め の 失敗 も

わたし が 思う ところ と は 違った の かも しれ ぬ

だ と したら どう なる んだ

だから

だ と したら

いや まだ 可能 性 の 話 だ

そな たが 気 に する ような こと で は ない 忘れて おけ

「 忘れて おけ 」 って でも そんな 気 に なるこ と 言わ れたら

それとも 何 か また

また 忘れ させて ほしい と いう お ねだり の つもり か

さて 2 人 は この後 いったん 尾張 に 戻った もの の

せきたて られる ように

次の 目的 地 へ と 旅立つ こと に なる ので ございます

10 本 目 の 収集 対象 は 「 誠 刀 · 銓 」

そして 次の 目的 地 と いえば 奥 州

物語 も 佳境 に 入って まいり ました

あろう こと か

奇 策 士 と が め の 知ら れ ざる 生まれ故郷 が

次の 完成 形 変 体 刀 「 誠 刀 · 銓 」 の 在りか な ので ございます


Katanagatari Episode 9 (3) Katanagatari Episode 9 (3)

踏襲 と いう より   ここ で は こう 言って おいた 方 が いい か とうしゅう||||||||いって||かた|||

わたし たち が 狙う の は まぐれ 勝ち だ |||ねらう||||かち|

分から ず わから|

まさか   お前 が 残って 2 人 を 逃がす と は |おまえ||のこって|じん||にがす||

煙幕 か   古臭い 忍法 を 使う な えんまく||ふるくさい|にんぽう||つかう|

うるさい の よ

ただ 単に あんた ごとき は わたし 一 人 で 十分 と いう だけ の こと よ |たんに|||||ひと|じん||じゅうぶん||||||

大した 自信 だ たいした|じしん|

しかし わたし は お前 が 相手 で は 不満な のだ |||おまえ||あいて|||ふまんな|

わたし の 目的 は 真庭 鳳凰 の 暗殺 な のだ から ||もくてき||まにわ|ほうおう||あんさつ|||

あんた   何者 よ |なにもの|

答え ず こたえ|

もし かして   あんた だ ね

海亀 さん を やった の は うみがめ|||||

あれ は 「 毒 刀 · 鍍 」 か ||どく|かたな|と|

あ   何 だい   あんた 話 を 聞いて いた の かい |なん|||はなし||きいて|||

あの 距離 から よく 聞こえた ねえ |きょり|||きこえた|

いや   知っていた だけ だ |しっていた||

は あ

理解 し なくて いい   どうせ お前 は ここ で 死ぬ のだ から りかい|||||おまえ||||しぬ||

そうかい

むち か

真庭 忍法   永 劫鞭 まにわ|にんぽう|なが|ごうむち

行 くわ よ ぎょう||

巻き戻し の 鴛鴦   か まきもどし||おしどり|

どう する

面白い おもしろい

褒めて もらって うれしい わ ね ほめて||||

お礼 に 教えて あげる お れい||おしえて|

これ   攻撃 力 は それ ほど で も ない の |こうげき|ちから|||||||

先端 の 刃物 だけ 気 を 付けて いれば 致命 傷 は 避け られる わ よ せんたん||はもの||き||つけて||ちめい|きず||さけ|||

でも ね   この 永 劫鞭 は |||なが|ごうむち|

敵 を じわじわ と なぶり 殺し に する の に 最高に 適した 武器 な の よ てき|||||ころし|||||さいこうに|てきした|ぶき|||

ならば   相生 拳法   背 弄 拳 |あいおい|けんぽう|せ|もてあそ|けん

悪い わ ね わるい||

禁じ 得 ず きんじ|とく|

驚き を 禁じ 得 ない   背 弄 拳 が 通じ ない と は おどろき||きんじ|とく||せ|もてあそ|けん||つうじ|||

そんな 相手 は 真庭 鳳凰 くらい か と |あいて||まにわ|ほうおう|||

は あ   何 だい   あんた 鳳凰 さま と 知り合い な の かい ||なん|||ほうおう|||しりあい|||

知り合い 以上   怨敵 未満 だ しりあい|いじょう|おんてき|みまん|

答え に なって ない よ こたえ||||

どうした の もう 終わり かい |||おわり|

そう よ ね   これ は むち の 結 界 |||||||けつ|かい

防御 こそ   最大 の 攻撃 って こと ぼうぎょ||さいだい||こうげき||

じゃ   こっち から 終わら せて あげる |||おわら||

あんた の 命   海亀 さん に 捧げて やる ||いのち|うみがめ|||ささげて|

だが   それ は わたし に は 通じ ず ||||||つうじ|

それ は   何 ||なん

満た ず みた|

結局 真庭 鳳凰 暗殺 は   失敗 だ けっきょく|まにわ|ほうおう|あんさつ||しっぱい|

しかし この 女 は 見事に 役割 を 全うした ||おんな||みごとに|やくわり||まっとうした

さすが は 忍者 ||にんじゃ

忍者 を 辞めた わたし より ずっと 潔い にんじゃ||やめた||||いさぎよい

褒めて やろう ほめて|

聞こえ ず   か きこえ||

蝶   ちょう   さん ちょう||

あの さ   できれば 汽口 と は 泥仕合 は 避け たい な |||きくち|||どろじあい||さけ||

やはり そ なた   汽口 に じょ 情 が 移った のだ な |||きくち|||じょう||うつった||

そな たま たも 心変わり を した と いう の か |||こころがわり||||||

また もって   俺 が いつ ||おれ||

ど   道場 で |どうじょう|

二 人きり で 何 を して おった の か わたし は 知っている のだ ぞ ふた|ひときり||なん||||||||しっている||

ああ   知って の とおり   稽古 だ |しって|||けいこ|

何の 稽古 だ か なんの|けいこ||

わたし は そな た を 信頼 して あの 道場 に 通わせて いた と いう のに |||||しんらい|||どうじょう||かよわ せて||||

もう そ なた の 浮気 性 に は 付き合い きれ ぬわ ||||うわき|せい|||つきあい||

付き合い きれ ない の は こっち だ つきあい||||||

自分 から そういう 話 を 振って きて おいて じぶん|||はなし||ふって||

俺 は あんた の 言う とおり   この 十 日間 おれ||||いう|||じゅう|にち かん

とがめ ちょっと ヤバ い かも しれ ない ぞ

ヤバ い

いや   まあ 確かに   よそ の 流派 の 門下 生 に なれ と いう ||たしかに|||りゅうは||もんか|せい||||

わたし の 命令 は 理不尽であった と 思う し ||めいれい||りふじんであった||おもう|

それ で 愛想 を 尽かさ れて も 仕方ない の かも しれ ない けど ||あいそ||つかさ|||しかたない|||||

わたし に は わたし なり の 考え が あって だ な ||||||かんがえ||||

それ を 聞いて くれて も いい で は ない か ||きいて|||||||

それ を   それ を

分かった   分かった わかった|わかった

いや   その 件 に ついて の 話 は もう 終わって いる ||けん||||はなし|||おわって|

「 終わって いる 」 と は 何 だ おわって||||なん|

まだ 話し合い の 余地 は 残って おる だろう が |はなしあい||よち||のこって|||

2 人 で 築いて きた 関係 を じん||きずいて||かんけい|

1 人 で 一方的に 終わら そう と は どういう つもり だ じん||いっぽうてきに|おわら||||||

わたし は この 十 日間 どういう 思い で |||じゅう|にち かん||おもい|

いや   ヤバ いの は とがめ の 立てた 奇 策 だ よ ||||||たてた|き|さく||

そう な の か   ならば よい

いや よく は ないだ ろ

で   奇 策 が どう ヤバ い |き|さく||||

つまり さ   その 奇 策 は |||き|さく|

俺 が 刀剣 使い の 素人 である こと を 前提 に 考え られて いる わけだ ろ おれ||とうけん|つかい||しろうと||||ぜんてい||かんがえ||||

けれど とがめ 十 日 前 なら いざ 知ら ず ||じゅう|ひ|ぜん|||しら|

あんた が その 奇 策 を 練って いる 間 に |||き|さく||ねって||あいだ|

俺 は 達人 である 汽口 から 直々 に ずっと 教え を 受けて いた んだ ぜ おれ||たつじん||きくち||じきじき|||おしえ||うけて|||

俺 は もう 素人 と は 言え ない んじゃ ない の か おれ|||しろうと|||いえ|||||

あっ そう か 確かに そこ まで は 考えて は い なかった |||たしかに||||かんがえて|||

わたし と した こと が 不覚だった な |||||ふかくだった|

よし   分かった |わかった

まだ 何 か 覚えて おる か |なん||おぼえて||

全部 忘れた ぜんぶ|わすれた

まだ 七 花 殿 は   わたし と 戦う まで に は 及んで い ない と |なな|か|しんがり||||たたかう||||およんで|||

相手 の 実力 が 劣る と いう 理由 で 立ち合う に 及ば ない と は あいて||じつりょく||おとる|||りゆう||たちあう||およば|||

汽口 殿 も ずいぶん と 思い上がった こと を 言う で は ない か きくち|しんがり||||おもいあがった|||いう||||

剣 の 道 に さ ような 絶対 は ある まい けん||どう||||ぜったい|||

どのような 実力 差 が あろう が |じつりょく|さ|||

剣 を 取って 立ち合う 以上 は 対等であろう けん||とって|たちあう|いじょう||たいとうであろう

分かり ました わかり|

とがめ の 思惑 どおり だ ||おもわく||

ただ   その 前 に お 願い が あり ます ||ぜん|||ねがい|||

この 勝負 わたし が 勝った ならば |しょうぶ|||かった|

どう か 「 王 刀 · 鋸 」 を すっぱ り と あきらめて いただき たい ||おう|かたな|のこぎり|||||||

承知 した しょうち|

では まずは 将棋 戦 9 局 ||しょうぎ|いくさ|きょく

王手 おうて

ですが   結局 4 勝 5 敗 |けっきょく|か|はい

将棋 戦 9 局 は とがめ 殿 の 勝ち です しょうぎ|いくさ|きょく|||しんがり||かち|

では 次 剣 術 は 1 回 勝負 の 1 本 勝負 で |つぎ|けん|じゅつ||かい|しょうぶ||ほん|しょうぶ|

用意 は いい です か 七 花 殿 ようい|||||なな|か|しんがり

いい よ

一応 先 に 言 っと く けど 十 日間 色々 と 世話に なった な いちおう|さき||げん||||じゅう|にち かん|いろいろ||せわに||

何一つ 身 に 付き は し なかった なにひとつ|み||つき|||

出来 の 悪い 門下 生 だった けれど でき||わるい|もんか|せい||

いい 経験 に なった と 思って いる ぜ |けいけん||||おもって||

いや   わたし の 方 が 多く の もの を 学ば さ れ ました |||かた||おおく||||まなば|||

おそらく

まだ 私 は 人 に もの を 教え られる ような 立場 に ない |わたくし||じん||||おしえ|||たちば||

と いう こと だった のでしょう

か の ような 結果 に 終わって しまった こと に ついて は |||けっか||おわって|||||

誠に 申し訳なく 思って おり ます まことに|もうし わけなく|おもって||

まだ 謝る な よ |あやまる||

これ で もしも 俺 が あんた に 勝てば |||おれ||||かてば

あんた の 正し さ が 逆に 証明 さ れる って こと に も なる んじゃ ない か ||ただし|||ぎゃくに|しょうめい||||||||||

そう です ね

七 花 殿   あの なな|か|しんがり|

木刀 の 持ち 方 が   間違って い ます ぼくとう||もち|かた||まちがって||

七 花 殿   心 の 鬼 を 心 で 斬る なな|か|しんがり|こころ||おに||こころ||きる

これ を もって 慚愧 と 名乗る |||ざんき||なのる

心 王 一 鞘流 十二 代 目 汽口 慚愧 お 手並み 拝見 いたし ます こころ|おう|ひと|さやりゅう|じゅうに|だい|め|きくち|ざんき||てなみ|はいけん||

言わ れ なくて も 見せて やる さ いわ||||みせて||

ただし そのころ に は

あんた は 八 つ 裂き に なって いる かも しれ ない けど な ||やっ||さき||||||||

それでは そろそろ 始め ましょう か ||はじめ||

それでは いざ 尋常に   始め ||じんじょうに|はじめ

7六 歩 むっ|ふ

わたし は 3四 歩 と 返す ||よっ|ふ||かえす

2六 歩 むっ|ふ

4四 歩 よっ|ふ

2五 歩 いつ|ふ

3 三角 さんかく

まるで わたし の 手 を 読み 知っている か の ように |||て||よみ|しっている|||よう に

4八 銀 やっ|ぎん

動け ない   駄目だ 集中 力 を 乱さ れる うごけ||だめだ|しゅうちゅう|ちから||みださ|

3二 銀 ふた|ぎん

5六 歩 むっ|ふ

そう か   だ から 9 局 対局 を 負け で 終わら せた の か ||||きょく|たいきょく||まけ||おわら|||

4三 銀 みっ|ぎん

最後に 先手 を 取る ため に さいごに|せんて||とる||

5八 金   右 やっ|きむ|みぎ

この 人 と は 10 局 対局 した だけ |じん|||きょく|たいきょく||

わずか 2000 手 で わたし の 動き を 読み取って しまった |て||||うごき||よみとって|

この 人 は |じん|

6八 玉 やっ|たま

考え なければ いい のだ かんがえ|||

そう か   七 花 殿 は 将棋 が でき ない のであった な ||なな|か|しんがり||しょうぎ|||||

7八 銀 やっ|ぎん

考え なければ いい のに かんがえ|||

どうしても 考えて しまう |かんがえて|

2二 飛 ふた|と

7八 玉 やっ|たま

面 心 王 一 鞘流 対 虚 刀 流 の 一 番 は とても 静かに あっけなく おもて|こころ|おう|ひと|さやりゅう|たい|きょ|かたな|りゅう||ひと|ばん|||しずかに| しかも   地味に 決着 が ついた ので ございます |じみに|けっちゃく||||

なるほど   心理 戦 ね |しんり|いくさ|

まったく 俺 の 苦手な 領域 だ な |おれ||にがてな|りょういき||

しかし とがめ の その 才覚 は ||||さいかく|

できれば 敦賀 迷彩 戦 あたり で 発揮 して ほしかった もの だ が |つるが|めいさい|いくさ|||はっき|||||

た わけ が だ から 何度 も 言う が |||||なんど||いう|

戦闘 は あくまで そ なた の 領分 であろう が せんとう||||||りょうぶん||

今回 の こと こそ 例外 だ と 思え こんかい||||れいがい|||おもえ

まあ そう だ な でも さ   あれ って 厳密に は 反則 じゃ ない の か ||||||||げんみつに||はんそく||||

横合い から 選手 に ぺらぺら と 話し掛ける って いう の は よこあい||せんしゅ||||はなしかける||||

何だか ずるい 気 も する んだ けど なんだか||き||||

そ なた は 何 を 言って おる のだ |||なん||いって||

反則 に 決まって おろう が はんそく||きまって||

でも   だったら そう 指摘 し そうな もの じゃ ねえ か |||してき||そう な||||

あれ だけ 規則 に うるさい 汽口 なら ||きそく|||きくち|

だが な 七 花 その 反則 を 取る の は 誰 だ ||なな|か||はんそく||とる|||だれ|

審判 役 の わたし であろう が しんぱん|やく||||

確かに たしかに

それ に   この 村 に おいて |||むら||

まさか 将棋 を 指した こと を 反則 扱い は でき まいよ |しょうぎ||さした|||はんそく|あつかい|||

えっ

なぜなら ここ は   将棋 の 聖地 だ ふん |||しょうぎ||せいち||

でも   とがめ の 将棋 は ホントに すごい な |||しょうぎ||ほんとに||

全力 で お 願い し ます ぜんりょく|||ねがい||

あっという間 に あっというま|

42 手 だ て|

参り ました まいり|

とがめ の 圧勝 ||あっしょう

そな たも 6 割 の 力 で 戦う と いう 縛り でも 圧勝 した で は ない か ||わり||ちから||たたかう|||しばり||あっしょう|||||

いやいや

奥義 · 百花 繚乱 を 繰り出して   やっと の 勝利 だ おうぎ|ひゃっか|りょうらん||くりだして|||しょうり|

参り ました まいり|

お み それ し ました   七 花 殿 |||||なな|か|しんがり

知ら なかった と は いえ しら||||

あなた の ような 使い 手 を |||つかい|て|

わたし の ごとき 未熟 者 の 門下 生 と して 扱った 無礼 を |||みじゅく|もの||もんか|せい|||あつかった|ぶれい|

お 許し ください |ゆるし|

だから   そんなに 謝 んな よ ||あやま||

あんた の 剣 は 何も 間違っちゃ い ない んだ から ||けん||なにも|まちがっちゃ||||

剣 を 取った 方 が 弱く なる など まるで 呪い の ようです ね けん||とった|かた||よわく||||まじない||よう です|

呪い まじない

どうぞ   約束 どおり 「 王 刀 · 鋸 」 は お 渡し し ます |やくそく||おう|かたな|のこぎり|||わたし||

いい の か よ それ は 当主 の 証し なんだ ろ ||||||とうしゅ||しょうし||

わたし に は まだ   この 刀 を 持つ 資格 は ない ようです |||||かたな||もつ|しかく|||よう です

いえ   逆です ね |ぎゃく です|

わたし は   この 刀 から すでに 十分な 力 を 得 ました |||かたな|||じゅうぶんな|ちから||とく|

天下 国家 の ため に 使う なり 折って 捨てる なり   何なり と てんか|こっか||||つかう||おって|すてる||なんなり|

その後 の 処理 は お 任せ いたし ます そのご||しょり|||まかせ||

また いつでも いら して ください

そして その 際 に は ぜひ もう 一 度 お 相手 願い たい ||さい|||||ひと|たび||あいて|ねがい|

その とき を 楽しみに |||たのしみに

わたし は 心 王 一 鞘流 の 看板 を これ から も 守り 続けよう と 思い ます ||こころ|おう|ひと|さやりゅう||かんばん|||||まもり|つづけよう||おもい|

看板 って   看板 は 王 刀 じゃ なかった の か よ かんばん||かんばん||おう|かたな|||||

心 の 鬼 を 心 で 斬る こころ||おに||こころ||きる

これ を もって   慚愧 と 名乗る |||ざんき||なのる

これ から は わたし 自身 が 看板 です ||||じしん||かんばん|

看板 娘 です かんばん|むすめ|

楽しかった な たのしかった|

ち ぇり お

何 だ   鼻 の 下 が 伸びて おる ぞ なん||はな||した||のびて||

どこ が

お っ   自覚 ありか ||じかく|

だから   何の |なんの

まあ よい それ より 残る 刀 は いよいよ 3 本 か ||||のこる|かたな|||ほん|

ま にわ に の 連中 あっ ち も あ っち で 刀 集めて たり する の か な ||||れんちゅう|||||||かたな|あつめて|||||

さて   どう だろう な

連中 に それ だけ の 器量 が ある と も 思え ぬ が れんちゅう|||||きりょう|||||おもえ||

1 本 くらい は やつ ら の 手 に 落ちて いて も 不思議 は ない な ほん||||||て||おちて|||ふしぎ|||

七 花 今回 の 件 は あまり 考え たく ない 今後 の 可能 性 を 示唆 して おる な なな|か|こんかい||けん|||かんがえ|||こんご||かのう|せい||しさ|||

ああ   俺 が 刀 を 持つ と めちゃめちゃ 弱 いって こと か |おれ||かたな||もつ|||じゃく|||

けど   今回 みたいな 場合 って さすが に もう ない と |こんかい||ばあい||||||

いや   それ は それ で はなはだ 不安 要素 で は ある が ||||||ふあん|ようそ||||

旧 将軍 の こと だ きゅう|しょうぐん|||

旧 将軍 きゅう|しょうぐん

刀狩 令 の こと だ かたながり|れい|||

旧 将軍 は 「 どうして 「 王 刀 · 鋸 」 を 収集 でき なかった の か 」 と な きゅう|しょうぐん|||おう|かたな|のこぎり||しゅうしゅう||||||

どうして って

毒 を 発さ ない と か 毒気 を 抜く と か どく||はっさ||||どっけ||ぬく||

そんな 王 刀 楽土 の 効果 を さておけば |おう|かたな|らくど||こうか||

あくまでも ただ の 木刀 だ ぞ |||ぼくとう||

その 木刀 で |ぼくとう|

どう やって 当時 の 「 王 刀 · 鋸 」 の 所有 者 は 旧 将軍 を 撃退 した のだ ||とうじ||おう|かたな|のこぎり||しょゆう|もの||きゅう|しょうぐん||げきたい||

うん

刀狩 令 表向き の 目的 は 刀 大仏 建立 の ため かたながり|れい|おもてむき||もくてき||かたな|だいぶつ|こんりゅう||

裏 向き の 目的 は 剣 客 撲滅 の ため うら|むき||もくてき||けん|きゃく|ぼくめつ||

真 の 目的 は 四季 崎記 紀 の 変 体 刀 集め まこと||もくてき||しき|さきき|き||へん|からだ|かたな|あつめ

しかし 実は   その 裏 が あった ので は ない だろう か |じつは||うら|||||||

旧 将軍 の 刀 集 め の 失敗 も きゅう|しょうぐん||かたな|しゅう|||しっぱい|

わたし が 思う ところ と は 違った の かも しれ ぬ ||おもう||||ちがった||||

だ と したら   どう なる んだ

だから

だ と したら

いや   まだ 可能 性 の 話 だ ||かのう|せい||はなし|

そな たが 気 に する ような こと で は ない 忘れて おけ ||き||||||||わすれて|

「 忘れて おけ 」 って でも そんな 気 に なるこ と 言わ れたら わすれて|||||き||||いわ|

それとも 何 か また |なん||

また 忘れ させて ほしい と いう お ねだり の つもり か |わすれ|さ せて||||||||

さて  2 人 は この後 いったん 尾張 に 戻った もの の |じん||このあと||おわり||もどった||

せきたて られる ように ||よう に

次の 目的 地 へ と 旅立つ こと に なる ので ございます つぎの|もくてき|ち|||たびだつ|||||

10 本 目 の 収集 対象 は  「 誠 刀 · 銓 」 ほん|め||しゅうしゅう|たいしょう||まこと|かたな|せん

そして 次の 目的 地 と いえば 奥 州 |つぎの|もくてき|ち|||おく|しゅう

物語 も 佳境 に 入って まいり ました ものがたり||かきょう||はいって||

あろう こと か

奇 策 士 と が め の 知ら れ ざる 生まれ故郷 が き|さく|し|||||しら|||うまれこきょう|

次の 完成 形 変 体 刀  「 誠 刀 · 銓 」 の 在りか な ので ございます つぎの|かんせい|かた|へん|からだ|かたな|まこと|かたな|せん||ありか|||