（ 生徒 たち の 話し声 ）
（ 文乃 ( ふみの ) ） わ ～ ！
（ うる か ） 山 だ ！ ヤッバ い テンション 上がる
（ 文乃 ） 空気 が おいしい ね
（ 理 珠 ( り ず ) ） 空気 の 味 が 分かる の です か ？ すごい 味覚 です ね 文乃
そう いう 意味 じゃ なく て …
（ 小林 ( こば やし ) ） 今年 も 始まった ね
一ノ瀬 ( いち の せ ) 学園 名物 ２ 泊 ３ 日 の 学習 強化 合宿
（ 大森 ( おおもり ) ） 何 が 悲しゅう て
山 に まで 来 て 朝 から 晩 まで 勉強 し なきゃ な ん ねえ ん だ
せめて 風呂 が 混浴 で あった なら ！
（ 大森 ） く う ～ （ 小林 ） ん な わけな い じゃ ん
バカ 野郎 ！
その くらい 夢み なきゃ やって ら れっか ！
なあ 唯 我 ( ゆい が )
（ 大森 ） ん ？ （ 小林 ） おお ？
（ 成幸 ( なりゆき ) ） う わ ～ ！ 山 ウド だ
これ 天ぷら に する と うまい ん だ よ
（ 小林 ） 成 ( なり ) ちゃん は 通常 運転 だ ね
（ 成幸 ） これ は ぜひ 持って 帰って …
（ 現 国 教師 ） 男子 ども 何 たむろ って る
う わ ！
（ 現 国 教師 ） ほれ ちゃんと 列 に なって 歩く
（ 成幸 ） あっ あ あ ～ ちょっと 待って ！
あれ 妹 たち の 好物 で …
（ 現 国 教師 ） 何 を 言 っと る ん だ お前 は
山 ウド ～ ！
（ 文乃 ） り っちゃ ん どう かし た ？
あっ
さっき から 唯 我 君 の こと すごい 見 てる けど …
え ？ 誰 が です か ？
だから りっ ちゃん だって ば ！
♪ ～
～ ♪
（ 理 珠 ） まったく 文乃 も 妙 な こと を
なぜ 私 が 唯 我 さん を 必要 以上 に 注視 し なけ れ ば なら ない の です か
あっ
（ 理 珠 ） いっ いや 違い ます
今 の は 見 た の で は なく たまたま 視界 に …
（ 成幸 ） あっ ヤベ 間違え た
（ 理 珠 ） ああ …
（ 成幸 ） う う っ
（ 理 珠 ） は っ ！ これ を 渡し たら
また 唯 我 さん の こと を 見 て い た など と いう
事実 無 根 も 甚だしい 疑い を かけ られ て しまう の で は ？
私 は 一体 どう すれ ば …
（ 文乃 ） も う ～ 唯 我 君 って ば これ あげる
私 予備 で ２ つ 持って る から
ああ いや 悪い よ 古橋 ( ふる は し )
これ くらい 気 に し ない で いつも 助け て もらって る ん だ から
（ 理 珠 ） ん ん …
それ じゃ お 言葉 に 甘え て
あ …
（ 文乃 ） あら ら
ああ すま ん
（ うる か ） あっ
ほ い 成幸
ぶ ふ っ ！
う う … ありがとう 武 元 ( たけ もと )
すま ん ！
あ あっ ここ こ … こっち こそ
ごめん 上 から 渡せ ば よかった よ ね
（ 理 珠 ） む う ～
（ 小銭 を 投入 する 音 ）
（ 理 珠 ） ふ っ く …
（ 理 珠 ） これ は きっと カルシウム 不足 です
で なけ れ ば
この 原因 不明 の イライラ に 説明 が つき ませ ん
（ 理 珠 ） う ぐ … も … もう ちょ い …
ふ っ ぐ ぐ …
（ ガタン ！ ） あっ
よう 緒方 ( お がた ) 勉強 は 進 ん でる か ？
分か ん ない と こ あれ ば いつ で も 聞い …
うん ？
ん ？ ん ？ ん ？
ん ん ？
唯 我 さん に は 関係ない でしょ う ！ 放って おい て ください
（ 成幸 ） え ～ っ 俺 確か 君 の 教育 係 だ よ ね ？
（ 理 珠 ） さ さ … さ よう なら
（ 成幸 ） えっ どこ 行く の ？ 外出 禁止 だ けど
（ 理 珠 ） 少し 外 の 空気 を 吸って くる だけ です
おいしい らしい ので
（ 成幸 ） え … 何 ？ 急 な 反抗 期 ？
（ 理 珠 ） 私 は なぜ あんな 態度 を ？
で … でも どう しよ う
こんな とき どう 謝って いい の か 分から ない
そんな 自分 が 嫌 に なる
あっ
あれ は …
（ 成幸 ） あ あ ～ ちょっと 待って ！ あれ 妹 たち の 好物 で …
あっ ここ に も
そこ に も
こっち に も
はっ あっ ち に も たくさん …
フウ ～
いっぱい 採 れ た
あっ
これ は 早く 帰った ほう が よ さ そう です ね
あれ ？
私 どっち から 来 た ん でし た っけ
（ 成幸 ） う わ すげ え 雨
山 の 天気 は 変わり やすい って ホント だ な
（ 紗和 子 ( さわ こ ) ） 唯 我 成幸
お ？
（ 紗和 子 ） 緒方 理 珠 を 見 なかった かしら
関城 ( せきじょう ) か 緒方 が どう かし た の か ？
講義 室 に も 部屋 に も 自習 室 に も い ない の よ
合宿 中 スマホ は 取り上げ られ て いる から 不便 よ ね
お前 どん だけ 緒方 の こと 好き な ん だ よ
は あ ？
そ … そんな ん じゃ ない わ よ
あ …
俺 が 緒方 を 見 た の は 講義 の あと 自販機 コーナー で …
（ 成幸 ） はっ
（ 理 珠 ） 少し 外 の 空気 を 吸って くる だけ です
（ 成幸 ） まさか … あいつ まだ ？
（ 成幸 ） って いくら 何でも
この どしゃ 降り の 中
わざわざ 外 歩く アホ が いる わけ ねえ か
アホ らしい
戻って 風呂 入って 勉強 し よ
ん ？
（ 理 珠 ） く しゅ ！
（ 理 珠 ） スマホ も ない ここ が どこ かも 分から ない
おとなしく 助け が 来る の を 待つ しか ない です ね
雨 も 小 降り に なって き まし た し
さすが に 明日 に なれ ば
96 パーセント 以上 の 確率 で 誰 か が 助け に …
（ 成幸 ） 助け に 来 た ぞ ！ 緒方
（ 理 珠 ） な っ … なぜ ここ で 唯 我 さん の 顔 が …
４ パーセント 未満 の 事象 を 優先 し て シミュレート する など
合理 的 で は あり ませ ん
それ に ひどい 態度 を 取って しまい まし た し
（ 成幸 ） 緒方 ！
（ 理 珠 ） う … ついに 幻 聴 まで
あっ
（ 成幸 ） お前 その 座り 方
スカート の 中 見え そう だ から やめ た ほう が いい ぞ
どう し て ここ に ？
これ 確か …
初めて お前 と 一緒に やった ゲーム の カード だ よ な
あ …
（ 成幸 ） こいつ が 雨水 で 流れ て き た の を 見つけ て さ
より 高い 所 に 目星 を 付け て 探し て み たら
大 正解 だった みたい だ な
ヘヘッ
で お前 は こんな とこ で 何 やって ん だ ？
あ …
な に その 山 ウド ！ すげ え 量 じゃ ねえ か
お前 も 好き な の ？
す …
そんな ん じゃ あり ませ ん 欲しい なら あげ ます
マジ ？
お前 超 いい ヤツ だ な
まあ なん に せよ ホント に 無事 で よかった わ
さっ 帰 ろ う ぜ
（ 理 珠 ） はい
あ … う う …
（ 成幸 ） も しか して 怖く て 降り られ ない …
そんな わけ あり ませ ん ！
私 は 別 に …
わ っ う わ ～ ！
緒方 ！
（ 水 希 ( み ず き ) の 鼻歌 ）
（ パリン ！ ） （ 水 希 ） あっ
お … お 兄ちゃん の 茶碗 ( ちゃわん ) が いきなり …
はっ もし かして
お 兄ちゃん の 身 に 何 か よから ぬ こと が …
フッ な ～ ん て ね そんな わけない か
（ タイル を 洗う 音 ）
まっ まあ なん だ 緒方
昨日 無断 外出 し た 罰 が
宿 の 風呂 掃除 くらい で 済 ん で よかった な ホント
（ 理 珠 ） そう です ね
（ 成幸 ） 気まず すぎる
昨日 の あれ 以来 …
（ 成幸 ） な … な …
（ 成幸 ） い … 今 の …
ファースト キス ？ ノー カン ？
どっち ？
あっ あの … 緒方 さん ？
（ 理 珠 ） 失礼 し まし た
あ …
（ 理 珠 ） それでは 戻り ま しょ う
（ 成幸 ） えっ ちょ … 緒方 ！ そっち 宿 と 逆 ！
（ 成幸 ） 緒方 あれ から 一 度 も 目 を 合わせ て くれ ない し
や っぱ 怒って る の か な
俺 が 悪い って わけ じゃ ない と 思う けど
コト が コト だ し な ～
（ 成幸 ） ハア
あっ
（ 成幸 ） に し て も あっ ち い なあ
上 脱 い どく か
（ 理 珠 ） あっ ！ う う …
（ 女子 たち の にぎやか な 話し声 ）
（ ２ 人 ） ん ？
（ 文乃 ） わ ～ い ！ お 風呂 大好き
（ うる か ） 丸 １ 日 勉強 で くったく ただ よ ～
やっと 泳 げ る ～ ！
（ 慌てる 声 ）
（ 成幸 ） な な … なんで あいつ ら 入って き てん の ？
さっき 緒方 に
清掃 中 の 札 掛け とい て くれ って 渡し た よ な ？
あっ はい ！
ですから ちゃんと ここ に …
（ 成幸 ） 入り口 に 決まって ん だ ろ ～ ！
（ うる か ） ねえちゃん め っちゃ すべ すべ や ん け
（ 文乃 ） や だ ～ （ うる か ） イヒッ イヒヒ …
（ 文乃 ） くすぐったい よ ～ フフフ
（ 理 珠 ） そう こう する 間 に も 刻一刻 と 事態 は 深刻 に …
あ ～ が が が が ！
ど ど ど ど … どう しよ う
ノゾキ の レッテル な ん ぞ 貼ら れ たら 推薦 終わる ぞ ！
推薦 どころ で は ない 気 も し ます が …
（ 成幸 ） ガーン
（ 理 珠 ） すみません
とにかく 唯 我 さん は ひとまず サウナ に ！
（ 成幸 ） え ？
ここ は 私 が なんとか し ます ！
（ 成幸 ） 嫌 だ 緒方 さん かっこいい ！
（ 理 珠 ） ふんす ！
あれ ？ り っちゃ ん
どう し た ん ？ 真面目 な 顔 し て
（ 成幸 ） 頼 ん だ ぜ 緒方
正直 に 事情 を 話し て 一旦 女子 たち に 出 て いって もらえ ば
何 の 問題 も ない はず
み っ 皆さん
サウナ は とって も 熱い ので 入って は ダメ です ！
（ 成幸 ） あっ れ ～ ？ 緒方 さん まさか テンパ って る ？
何 も 解決 し ない よ ね ？ それ
それ よ か さ ～
リズ りん なんで お 風呂 で 服 着 てん の ？
（ 理 珠 ） え …
ほら ほら 脱 い だ 脱 い だ ！ 裸 の つきあい しよ う ぜ
（ 理 珠 ） ちょ … 武 元 さん やっ やめ て ください
あ …
（ うる か ） デケ え
（ 理 珠 ） ゆ … 唯 我 さん が そこ に いる のに …
（ 紗和 子 ） さ ～ て どこ から 入 ろ う かしら
関城 さん ちゃん と 隠し て ください
え ？
なんで よ 別に いい じゃ ない
（ 理 珠 ） 全然 よく あり ませ ん ！ （ 紗和 子 ） え ？
（ 文乃 ） サウナ 大好き ！
（ うる か ） お っ いっちゃ う ？ 文乃 っち
あ ～ ！ 熱い から ダメ だ と 言った でしょ う ！
そう いや そんな こと 言って た っけ
腕 が 鳴る じゃ ん
（ 理 珠 ） あ あ ～ ！
サウナ は 熱く なくっちゃ ね
（ 理 珠 ） う う … （ ２ 人 ） お ？
（ 理 珠 ） う … あ ？
（ ドア が 閉まる 音 ）
（ 文乃 ） う わ ！ ホント 熱い
（ うる か ） よ ～ し 勝負 しよ う ぜ 文乃 っち
（ 文乃 ） 負け ない よ ～
（ 理 珠 ） えっ ？
（ 成幸 ） な っ 何 この 状況 …
バレ たら 最後 しか し 体 の 限界 も 近い
緒方 頼む ！ ２ 人 を 一刻 も 早く 外 に ！
う う ～ お前 だけ が 頼り だ
（ 理 珠 ） 唯 我 さん が 下 に …
私 その 上 で 裸 …
（ 成幸 ） 緒方 ～ ！
（ 荒い 息遣い ）
（ うる か ） あ ～ ！ あたし もう 限界 ！
先 に 上がる ね ！ 水 ～ ！
（ 成幸 ） やった
あと は 古橋 さえ 出 て いって くれ れ ば …
あっ あの … 私 たち も 出 ませ ん か ？
フフ フッ り っちゃ ん
戦い は これ から ！ あと 10 分 は 軽い ね
（ 成幸 ） 何 その プロ 根性
気 に せ ず りっち ゃん は 外 に 出 な よ
（ 理 珠 ） う … いえ その …
（ 成幸 ） マ … マジ でも う 限界 だ
あと 10 分 も い たら 本当 に 死 ん で しまう ！
（ 文乃 ） ん ？ （ 理 珠 ） あっ
（ 成幸 ） しまった ！
あれ ？ 椅子 の 下 に 何 か …
（ 成幸 ） もう ダメ だ ！
（ バン ！ ） （ ２ 人 ） あっ
（ 紗和 子 ） ちょっと あなた たち 大変 よ ！
露天 風呂 で 流星 群 見える らしい わ
えっ ！ 流星 群 ？
見る 見る ！ 行 こ り っちゃ ん ！
あっ ちょ …
文乃 待って ください
いる ん でしょ 唯 我 成幸
（ ぶつかる 音 ） （ 成幸 ） う お っ
あっ ホント に い た
（ ゴソゴソ … ）
せ っ 関城 これ に は 深い 事情 が …
（ 紗和 子 ） いい わ よ 状況 は 大体 察し てる から
え ？
あん ま こっち 見 ない で
あ あっ ゴメン
緒方 理 珠 の 様子 が おかしい から 少し 調べ て み たら
掃除 用具 一式 と 一緒に あなた の ジャージ が 出 て き た の よ
った く この 貸し は デカ い わ よ
恩 に 着る 関城 ！
（ 走り去る 足音 ）
（ あゆ 子 ） 流星 群 どこ よ ？
（ 智 波 ( ちなみ ) ） 見え な ～ い
（ 成幸 ） た … 助かった
ああ 生き てる って す ばら …
（ 成幸 ） たっ 武 元 …
（ 成幸 ） 終わった ～ ！
う … え ？
（ 成幸 ） た … 助かった の か ？
（ うる か ） わ わ わ … こんな とこ で まで 成幸 の 幻 見 ちゃ う と か …
どん だけ な わけ あたし ！
（ 花枝 ( は なえ ) ） こ ～ ら
ちゃんと 肩 まで つかる
あっ 今日 は お 兄ちゃん の 布団 出し と か なく て いい ん だ っけ
（ 吸う 音 ）
（ 水 希 ） お 兄ちゃん の 匂い …
（ 和樹 ( かず き ) ） 姉ちゃん お 風呂 空 い た よ
ひ ゃ ～ ！
（ 小林 ） 成 ちゃん 昨日 今日 どこ 行って た の さ ？
ああ … いや その …
なあ なあ 女子 風呂 ノゾキ に 行か ね ？
う う … 勘弁 し て ください
（ 大森 ） なんで だ よ 唯 我 小林 お前 は 行く よ な ？
小林 ？
（ 理 珠 ） あの 昨日 今日 と いろいろ すみません で し た
関城 さん に も
緒方 うどん の 割引 券 を 渡し て おき まし た ので
ハハハ
ホント 慌ただしい ２ 日間 だった な
まあ なん に せよ お互い 無事 で よかった
はっ はい 本当 に …
（ ２ 人 ） あ …
あっ あの … 昨日 の アレ は …
物理 現象 と し て は アレ かも しれ ませ ん が …
違い ます から ただ の 接触 事故 です から ね
だっ … だ よ な
俗 に 言う アレ と は 違う よ な
も っ もちろん です
俗 に 言う アレ と は 概念 が 違い ます 概念 が
（ 成幸 ） ま … 一 歩 間違え ば 人生 終了 だった けど
おかげ で こう し て また まっすぐ 面 と 向かって 話せる よう に なった し
よかった かな
（ 理 珠 ） ところ で 唯 我 さん （ 成幸 ） ん ？
見 た ん です か ？
（ 理 珠 ） 見 た ん です ね ？
（ 成幸 ） いっ いや 違う ぞ ！
湯気 で ずっと 眼鏡 曇って た から うっすら と しか …
（ 理 珠 ） うっすら と は 見 た と ？
（ 成幸 ） あ あ ～ そんな まっすぐ 見 ない で ！
♪ ～
～ ♪
（ 真冬 ( まふゆ ) ） あの ３ 人 の 調子 は どう かしら ？ 唯 我 君
はっ はい
着実 に 苦手 分野 の 成績 が 伸び 始め て て いい 感じ か と …
（ 真冬 ） 確か に 中間 テスト の 成績 は アップ し て い た よう ね
（ 成幸 ） この 桐 須 ( きり す ) 先生 が …
（ 成幸 ） 初代 教育 係 ？
（ 理 珠 ） はい
その 桐 須 先生 から 呼び出し と は
恐らく 私 たち に 関する こと だ と 思い ます
（ 成幸 ） どんな 人 な ん だ ？
とても … 冷たい 人 です
だいぶ 責任 を 持って 教育 係 に 励 ん で くれ て いる よう ね
（ 成幸 ） あっ はい
精いっぱい やら せ て いた だい て ます
そう 精いっぱい …
不 埒 ( ふ らち )
山 で 緒方 さん と キス を し て い た の も 精いっぱい の 一環 かしら ？
が っ …
「 天才 [ Ｘ ] ( エックス ) たち は 」
「 かくして 勉強 が でき ない 」
