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Readings, 小川 未明 - 牛 女 ( Eriko Shima ) (1)

小川 未明 - 牛 女 ( Eriko Shima ) (1)

ある 村 に 、 脊 の 高い 、 大きな 女 が ありました 。 あまり 大きい ので 、 くび を 垂れて 歩きました 。 その 女 は 、 おし でありました 。 性質 は 、 いたって やさしく 、 涙もろくて 、 よく 、 一人 の 子供 を かわいがりました 。

女 は 、 いつも 黒い ような 着物 を きて いました 。 ただ 子供 と 二人 ぎり で ありました 。 まだ 年 の いか ない 子供 の 手 を 引いて 、 道 を 歩いて いる の を 、 村 の人 は よく 見た のであります 。 そして 、 大 女 で やさしい ところ から 、 だれ が いった もの か 「 牛 女 」 と 名づけた のであります 。

村 の 子供 ら は 、 この 女 が 通る と 、「 牛 女 」 が 通った と いって 、 珍しい もの でも 見る よう に 、 みんな して 、 後ろ に ついていって 、 いろいろの こと を いい はやしました けれど 、 女 は おし で 、 耳 が 聞こえません から 、 黙って 、 いつも の よう に 下 を 向いて 、 の そり の そり と 歩いて ゆく ようす が 、 いかにも かわいそうであった のであります 。

牛 女 は 、 自分 の 子供 を かわいがる こと は 、 一 通り で ありません でした 。 自分 が 不 具者 だ と いう こと も 、 子供 が 、 不 具者 の 子だから 、 みんな に ばかに される のだろう と いう こと も 、 父親 が ない から 、 ほか に だれ も 子供 を 育てて くれる もの が ない と いう こと も 、 よく 知っていました 。

それ です から 、 いっそう 子供 に 対する 不憫 がました と みえて 、 子供 を かわいがった のであります 。

子供 は 男の子 で 、 母親 を 慕いました 。 そして 、 母親 の ゆく ところ へ は 、 どこ へ でも ついて ゆきました 。

牛 女 は 、 大 女 で 、 力 も 、 また ほか の人 たち より は 、 幾 倍 も ありました うえ に 、 性質 が 、 やさしく あった から 、 人々 は 、 牛 女 に 力 仕事 を 頼みました 。 たき ぎ を しょったり 、 石 を 運んだり 、 また 、 荷物 を かつが したり 、 いろいろの こと を 頼みました 。 牛 女 は 、 よく 働きました 。 そして 、 その 金 で 二人 は 、 その 日 、 その 日 を 暮らして いました 。

こんなに 大きくて 、 力 の 強い 牛 女 も 、 病気 に なりました 。 どんな もの でも 、 病気 に かからない もの は ないで ありましょう 。 しかも 、 牛 女 の 病気 は 、 なかなか 重かった のであります 。 そして 働く こと も でき なく なりました 。

牛 女 は 、 自分 は 死ぬ のでない か と 思いました 。 もし 、 自分 が 死ぬ ような こと が あった なら 、 子供 を だれ が 見て くれよう と 思いました 。 そう 思う と 、 たとえ 死んで も 死に きれない 。 自分 の 霊魂 は 、 なに か に 化けて きて も 、 きっと 子供 の 行く末 を 見守ろう と 思いました 。 牛 女 の 大きな やさしい 目 の 中 から 、 大粒の 涙 が 、 ぽと り ぽと り と 流れた のであります 。

しかし 、 運命 に は 牛 女 も 、 しかたがなかった と みえます 。 病気 が 重く なって 、 とうとう 牛 女 は 死んで しまいました 。

村 の人々 は 、 牛 女 を かわいそうに 思いました 。 どんなに 置いて いった 子供 の こと に 心 を 取ら たろう と 、 だれしも 深く 察して 、 牛 女 を あわれま ぬ もの は なかった のであります 。

人々 は 寄り集まって 、 牛 女 の 葬式 を 出して 、 墓地 に うずめて やりました 。 そして 、 後 に 残った 子供 を 、 みんな が めんどう を 見て 育てて やる こと に なりました 。

子供 は 、 ここの 家 から 、 かしこ の 家 へ と いう ふうに 移り変わって 、 だんだん 月日 と ともに 大きく なって いった のであります 。 しかし 、 うれしい こと 、 また 、 悲しい こと が ある に つけて 、 子供 は 死んだ 母親 を 恋しく 思いました 。

村 に は 、 春 が き 、 夏 が き 、 秋 と なり 、 冬 と なりました 。 子供 は 、 だんだん 死んだ 母親 を なつかしく 思い 、 恋しく 思う ばかりでありました 。

ある 冬 の 日 の こと 、 子供 は 、 村 は ずれ に 立って 、 かなた の 国境 の 山々 を ながめて います と 、 大きな 山 の 半 腹 に 、 母 の 姿 が はっきり と 、 真っ白な 雪 の 上 に 黒く 浮き出 して 見えた のであります 。 これ を 見る と 、 子供 は びっくり しました 。 けれど 、 この こと を 口 に 出して だれ に も いいません でした 。

子供 は 、 母親 が 恋しく なる と 、 村 は ずれ に 立って 、 かなた の 山 を 見ました 。 すると 、 天気 の いい 晴れた 日 に は 、 いつでも 母親 の 黒い 姿 を ありあり と 見る こと が できた の です 。 ちょうど 母親 は 、 黙って 、 じっと こちら を 見つめて 、 我が 子 の 身の上 を 見守って いる よう に 思われた ので ありました 。

子供 は 、 口 に 出して 、 その こと を いいません でした けれど 、 いつか 村人 は 、 ついに これ を 見つけました 。

「 西 の 山 に 、 牛 女 が 現れた 。」 と 、 いいふらしました 。 そして 、 みんな 外 に 出て 、 西 の 山 を ながめた のであります 。

「 きっと 、 子供 の こと を 思って 、 あの 山 に 現れた のだろう 。」 と 、 みんな は 口々に いいました 。 子供 ら は 、 天気 の いい 晩 方 に は 、 西 の 国境 の 山 の 方 を 見て 、

「 牛 女 ! 牛 女 ! 」 と 、 口々に いって 、 その 話 で もち きった の です 。

ところが 、 いつしか 春 が きて 、 雪 が 消え かかる と 、 牛 女 の 姿 も だんだん うすく なって いって 、 まったく 雪 が 消えて しまう 春 の 半ば ごろ に なる と 、 牛 女 の 姿 は 見られ なく なって しまった の です 。

しかし 、 冬 と なって 、 雪 が 山 に 積もり 里 に 降る ころ に なる と 、 西 の 山 に 、 またしても 、 ありあり と 牛 女 の 黒い 姿 が 現れました 。 村 の人々 や 子供 ら は 冬 の 間 、 牛 女 の うわさ で もちきりました 。 そして 、 牛 女 の 残して いった 子供 は 、 恋しい 母親 の 姿 を 、 毎日 の よう に 村 は ずれ に 立って ながめた のであります 。

「 牛 女 が 、 また 西 の 山 に 現れた 。 あんなに 子供 の 身の上 を 心配 して いる 。 かわいそうな もの だ 。」 と 、 村人 は いって 、 その 子供 の めんどう を よく 見て やった のす 。

やがて 春 が きて 、 暖かに なる と 、 牛 女 の 姿 は 、 その 雪 と ともに 消えて しまった のでありました 。

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小川 未明 - 牛 女 ( Eriko Shima ) (1) おがわ|みめい|うし|おんな|| stream|Miyako|cow||| Ogawa|Miyume|vaca|||

ある 村 に 、 脊 の 高い 、 大きな 女 が ありました 。 |むら||せき||たかい|おおきな|おんな|| có||||||||| |village||back|||big||| あまり 大きい ので 、 くび を 垂れて 歩きました 。 |おおきい||||しだれて|あるきました |||neck||dropped| |||||pendendo| It was so big that I walked around with my head drooping. その 女 は 、 おし でありました 。 |おんな|||で ありました |||ancestor|was |||mãe| The woman was mute. 性質 は 、 いたって やさしく 、 涙もろくて 、 よく 、 一人 の 子供 を かわいがりました 。 せいしつ||||なみだもろくて||ひとり||こども|| nature||very||sentimental||||||cherished a criança||muito|gentil|emocional|||||| He was of a very gentle and tearful nature, and he often doted on one child.

女 は 、 いつも 黒い ような 着物 を きて いました 。 おんな|||くろい||きもの||| |||preto||||| ただ 子供 と 二人 ぎり で ありました 。 |こども||ふた り||| just|child|||just||was |criança|||apenas|| It was just the two of us, just me and my child. まだ 年 の いか ない 子供 の 手 を 引いて 、 道 を 歩いて いる の を 、 村 の人 は よく 見た のであります 。 |とし||||こども||て||ひいて|どう||あるいて||||むら|の じん|||みた| still|year||まだ年のいかない||||||pulling|||||||||||| |ano||||||||puxando|||||||||||| The villagers would often see him walking down the road holding the hand of a young child. そして 、 大 女 で やさしい ところ から 、 だれ が いった もの か 「 牛 女 」 と 名づけた のであります 。 |だい|おんな||||||||||うし|おんな||なづけた| |big|||||||||||cow|||| |||||caráter||quem||||||||nomeou| And because she was a large woman and kind, someone must have named her "Cow Woman."

村 の 子供 ら は 、 この 女 が 通る と 、「 牛 女 」 が 通った と いって 、 珍しい もの でも 見る よう に 、 みんな して 、 後ろ に ついていって 、 いろいろの こと を いい はやしました けれど 、 女 は おし で 、 耳 が 聞こえません から 、 黙って 、 いつも の よう に 下 を 向いて 、 の そり の そり と 歩いて ゆく ようす が 、 いかにも かわいそうであった のであります 。 むら||こども||||おんな||とおる||うし|おんな||かよった|||めずらしい|||みる|||||うしろ|||||||||おんな||||みみ||きこえません||だまって|||||した||むいて||||||あるいて|||||| ||||||||passes|||||passed|||rare|こと||||||||||||||||||||||||silently|||||||||sledge|||||||||| |||as||||||||||passou|||||mesmo||||||||seguindo|||||disseram||||surda||||||silenciosamente|||||||olhando|||||||vai|||como se||

牛 女 は 、 自分 の 子供 を かわいがる こと は 、 一 通り で ありません でした 。 うし|おんな||じぶん||こども|||||ひと|とおり||| |||||||adorar||||normalidade||| 自分 が 不 具者 だ と いう こと も 、 子供 が 、 不 具者 の 子だから 、 みんな に ばかに される のだろう と いう こと も 、 父親 が ない から 、 ほか に だれ も 子供 を 育てて くれる もの が ない と いう こと も 、 よく 知っていました 。 じぶん||ふ|ぐ しゃ||||||こども||ふ|ぐ しゃ||こだから||||さ れる||||||ちちおや||||||||こども||そだてて||||||||||しっていました ||não|deficiente||||||||deficiente|deficiente|||||zombar|será|deve|||||||||||ninguém||||criar||||||||||

それ です から 、 いっそう 子供 に 対する 不憫 がました と みえて 、 子供 を かわいがった のであります 。 ||||こども||たいする|ふびん||||こども||| ||||||đối với|||||||yêu quý|thì |is||all the more|||toward|pity|increased|||child||| |||ainda mais|||em relação a|piedade|parece||||||

子供 は 男の子 で 、 母親 を 慕いました 。 こども||おとこのこ||ははおや||したいました ||cậu bé||mẹ||thương yêu ||||||adored ||||||admira そして 、 母親 の ゆく ところ へ は 、 どこ へ でも ついて ゆきました 。 |ははおや|||||||||| và|mẹ||đi|nơi|||||||đi ||||place||||||| |||ir||||||||

牛 女 は 、 大 女 で 、 力 も 、 また ほか の人 たち より は 、 幾 倍 も ありました うえ に 、 性質 が 、 やさしく あった から 、 人々 は 、 牛 女 に 力 仕事 を 頼みました 。 うし|おんな||だい|おんな||ちから||||の じん||||いく|ばい|||||せいしつ|||||ひとびと||うし|おんな||ちから|しごと||たのみました bò|nữ||||||||||||||||||||||||||||||công việc|| |||||||||other|||||||||||||||||||||||| ||||||||||||||quantos||||||natureza|||||||||||||confiaram たき ぎ を しょったり 、 石 を 運んだり 、 また 、 荷物 を かつが したり 、 いろいろの こと を 頼みました 。 ||||いし||はこんだり||にもつ||かつ が|||||たのみました thác|gì|||||||||||||| waterfall|branch||carried||||||||||||asked |||carregar|pedra||transportar||bagagem||carregar||||| 牛 女 は 、 よく 働きました 。 うし|おんな|||はたらきました ||||đã làm việc そして 、 その 金 で 二人 は 、 その 日 、 その 日 を 暮らして いました 。 ||きむ||ふた り|||ひ||ひ||くらして| |||||||||||vivendo|

こんなに 大きくて 、 力 の 強い 牛 女 も 、 病気 に なりました 。 |おおきくて|ちから||つよい|うし|おんな||びょうき|| tão|grande|||||||doença|| どんな もの でも 、 病気 に かからない もの は ないで ありましょう 。 |||びょうき||かから ない|||| any|||||will not catch|||| |||||pegar|||| しかも 、 牛 女 の 病気 は 、 なかなか 重かった のであります 。 |うし|おんな||びょうき|||おもかった| ||||||||was além disso||||||bastante|| そして 働く こと も でき なく なりました 。 |はたらく|||||

牛 女 は 、 自分 は 死ぬ のでない か と 思いました 。 うし|おんな||じぶん||しぬ|ので ない|||おもいました |||||||||thought もし 、 自分 が 死ぬ ような こと が あった なら 、 子供 を だれ が 見て くれよう と 思いました 。 |じぶん||しぬ||||||こども||||みて|||おもいました ||||||||||||||faria|| そう 思う と 、 たとえ 死んで も 死に きれない 。 |おもう|||しんで||しに|きれ ない |||mesmo que|||| 自分 の 霊魂 は 、 なに か に 化けて きて も 、 きっと 子供 の 行く末 を 見守ろう と 思いました 。 じぶん||れいこん|||||ばけて||||こども||ゆくすえ||みまもろう||おもいました ||alma|||||se transformar|||certamente|||futuro||verificar|| 牛 女 の 大きな やさしい 目 の 中 から 、 大粒の 涙 が 、 ぽと り ぽと り と 流れた のであります 。 うし|おんな||おおきな||め||なか||おおつぶの|なみだ|||||||ながれた| |||||||||grande lágrima|||||||||

しかし 、 運命 に は 牛 女 も 、 しかたがなかった と みえます 。 |うんめい|||うし|おんな|||| but|fate|||cow||||| |destino||||||||parece 病気 が 重く なって 、 とうとう 牛 女 は 死んで しまいました 。 びょうき||おもく|||うし|おんな||しんで| ||||finalmente|||||

村 の人々 は 、 牛 女 を かわいそうに 思いました 。 むら|の ひとびと||うし|おんな|||おもいました |as pessoas da vila|||||| どんなに 置いて いった 子供 の こと に 心 を 取ら たろう と 、 だれしも 深く 察して 、 牛 女 を あわれま ぬ もの は なかった のであります 。 |おいて||こども||||こころ||とら||||ふかく|さっして|うし|おんな||||||| |placed|||||||||||||||||||||| não importa quão|deixar|||||||||||ninguém||entender||||a pena||||não havia|

人々 は 寄り集まって 、 牛 女 の 葬式 を 出して 、 墓地 に うずめて やりました 。 ひとびと||よりあつまって|うし|おんな||そうしき||だして|ぼち||| |(topic marker)|gathered|||possessive particle|funeral|||cemetery|locative particle|| ||se reuniram|||||||||| そして 、 後 に 残った 子供 を 、 みんな が めんどう を 見て 育てて やる こと に なりました 。 |あと||のこった|こども||||||みて|そだてて|||| |||||||(subject marker)|trouble|||||||

子供 は 、 ここの 家 から 、 かしこ の 家 へ と いう ふうに 移り変わって 、 だんだん 月日 と ともに 大きく なって いった のであります 。 こども||ここ の|いえ||||いえ|||||うつりかわって||つきひ|||おおきく||| ||cái nhà này|||||||||||||||||| しかし 、 うれしい こと 、 また 、 悲しい こと が ある に つけて 、 子供 は 死んだ 母親 を 恋しく 思いました 。 ||||かなしい||||||こども||しんだ|ははおや||こいしく|おもいました

村 に は 、 春 が き 、 夏 が き 、 秋 と なり 、 冬 と なりました 。 むら|||はる|||なつ|||あき|||ふゆ|| 子供 は 、 だんだん 死んだ 母親 を なつかしく 思い 、 恋しく 思う ばかりでありました 。 こども|||しんだ|ははおや|||おもい|こいしく|おもう|

ある 冬 の 日 の こと 、 子供 は 、 村 は ずれ に 立って 、 かなた の 国境 の 山々 を ながめて います と 、 大きな 山 の 半 腹 に 、 母 の 姿 が はっきり と 、 真っ白な 雪 の 上 に 黒く 浮き出 して 見えた のであります 。 |ふゆ||ひ|||こども||むら||||たって|||くにざかい||やまやま|||||おおきな|やま||はん|はら||はは||すがた||||まっしろな|ゆき||うえ||くろく|うきで||みえた| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||stood out|浮き出して|| これ を 見る と 、 子供 は びっくり しました 。 ||みる||こども||| けれど 、 この こと を 口 に 出して だれ に も いいません でした 。 ||||くち||だして|||||

子供 は 、 母親 が 恋しく なる と 、 村 は ずれ に 立って 、 かなた の 山 を 見ました 。 こども||ははおや||こいしく|||むら||||たって|||やま||みました すると 、 天気 の いい 晴れた 日 に は 、 いつでも 母親 の 黒い 姿 を ありあり と 見る こと が できた の です 。 |てんき|||はれた|ひ||||ははおや||くろい|すがた||||みる||||| ちょうど 母親 は 、 黙って 、 じっと こちら を 見つめて 、 我が 子 の 身の上 を 見守って いる よう に 思われた ので ありました 。 |ははおや||だまって||||みつめて|わが|こ||みのうえ||みまもって||||おもわれた||

子供 は 、 口 に 出して 、 その こと を いいません でした けれど 、 いつか 村人 は 、 ついに これ を 見つけました 。 こども||くち||だして||||||||むらびと|||||みつけました

「 西 の 山 に 、 牛 女 が 現れた 。」 にし||やま||うし|おんな||あらわれた と 、 いいふらしました 。 そして 、 みんな 外 に 出て 、 西 の 山 を ながめた のであります 。 ||がい||でて|にし||やま|||

「 きっと 、 子供 の こと を 思って 、 あの 山 に 現れた のだろう 。」 |こども||||おもって||やま||あらわれた| と 、 みんな は 口々に いいました 。 |||くちぐちに| 子供 ら は 、 天気 の いい 晩 方 に は 、 西 の 国境 の 山 の 方 を 見て 、 こども|||てんき|||ばん|かた|||にし||くにざかい||やま||かた||みて ||||||||||||border||||||

「 牛 女 ! うし|おんな 牛 女 ! うし|おんな 」 と 、 口々に いって 、 その 話 で もち きった の です 。 |くちぐちに|||はなし|||||

ところが 、 いつしか 春 が きて 、 雪 が 消え かかる と 、 牛 女 の 姿 も だんだん うすく なって いって 、 まったく 雪 が 消えて しまう 春 の 半ば ごろ に なる と 、 牛 女 の 姿 は 見られ なく なって しまった の です 。 ||はる|||ゆき||きえ|||うし|おんな||すがた|||||||ゆき||きえて||はる||なかば|||||うし|おんな||すがた||みられ|||||

しかし 、 冬 と なって 、 雪 が 山 に 積もり 里 に 降る ころ に なる と 、 西 の 山 に 、 またしても 、 ありあり と 牛 女 の 黒い 姿 が 現れました 。 |ふゆ|||ゆき||やま||つもり|さと||ふる|||||にし||やま|||||うし|おんな||くろい|すがた||あらわれました 村 の人々 や 子供 ら は 冬 の 間 、 牛 女 の うわさ で もちきりました 。 むら|の ひとびと||こども|||ふゆ||あいだ|うし|おんな|||| そして 、 牛 女 の 残して いった 子供 は 、 恋しい 母親 の 姿 を 、 毎日 の よう に 村 は ずれ に 立って ながめた のであります 。 |うし|おんな||のこして||こども||こいしい|ははおや||すがた||まいにち||||むら||||たって||

「 牛 女 が 、 また 西 の 山 に 現れた 。 うし|おんな|||にし||やま||あらわれた あんなに 子供 の 身の上 を 心配 して いる 。 |こども||みのうえ||しんぱい|| かわいそうな もの だ 。」 と 、 村人 は いって 、 その 子供 の めんどう を よく 見て やった のす 。 |むらびと||||こども|||||みて|| |||||||care|||||

やがて 春 が きて 、 暖かに なる と 、 牛 女 の 姿 は 、 その 雪 と ともに 消えて しまった のでありました 。 |はる|||あたたかに|||うし|おんな||すがた|||ゆき|||きえて|| eventually|||||||||||||||together|||