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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第四章 第一三艦隊誕生 (2)

第 四 章 第 一三 艦隊 誕生 (2)

キャゼルヌ 少将 が 笑う だろう 、 抵抗 する に して も 方法 が 拙劣 だ 、 と 。 しかし ヤン は ここ で 円熟 した おとな と して 行動 する 気 に なれ なかった 。 起立 する の も いやであり 、 拍手 する の も 同盟 万 歳 を 叫ぶ の も いやだった 。 トリューニヒト の 演説 に 感動 し なかった が ゆえ に 非 愛国 者 と 指弾 さ れる の なら 、 仰せ の とおり と 応じる しか ない 。 いつでも 、 王様 は 裸 だ と 叫ぶ の は おとな で は なく 子供 な のだ 。

「 貴 官 は どういう つもり で ……」

中年 の 准将 が わめこう と した とき 、 壇上 の トリューニヒト が 腕 の 位置 を さげた 。 かるく 両手 で 聴衆 を 抑える 動作 を する 。 それ に ともなって 狂 熱 の 水量 が 減少 し 、 静寂 が 音響 を 圧し はじめた 。 人々 の 頭部 の 位置 が 低く なる 。

ヤン を にらみつけて いた 中年 の 准将 も 、 厚い 頰肉 を 不満 そうに 震わせ ながら 席 に 着いた 。

「…… 諸君 」

壇上 の 国防 委員 長 は ふたたび 口 を 開いた 。 長 広 舌 と 絶叫 で 彼 の 口腔 は 乾 上がって おり 、 その 声 は 非 音楽 的に かすれた 。 せき を ひと つ する と 彼 は 演説 を つづけた 。

「 吾々 の 強大な 武器 は 、 全 国民 の 統一 さ れた 意思 である 。 自由 の 国 であり 民主 的 共和 政体 である 以上 、 どれほど 崇高な 目的 であって も 強制 する こと は でき ない 。 各人 に は 国家 に 反対 する 自由 が ある 。 しかし 良識 ある わが国 民 に は あきらかな はずだ 。 真 の 自由 と は 卑小 な 自我 を 捨てて 団結 し 、 共通の 目的 に むかって 前進 する こと だ 、 と 。 諸君 ……」

そこ で トリューニヒト が 口 を 閉ざした の は 、 口 が 乾いて 声 が かすれた ため で は ない 。 ひと り の 女性 が 座席 間 の 通路 を 演壇 へ と 歩みよる の に 気づいた から である 。 ライト ・ ブラウン の 頭髪 を した 若い 女性 で 、 すれちがう 男 の 半数 以上 が ふりむく であろう ていど に は 美しかった 。 彼女 の 歩む 、 その 両側 から 低い 不審 の ざわめき が 生じて 周囲 に 波紋 を ひろげた 。

…… 誰 だ 、 あの 女 は ? なに を する 気 だ ?

ヤン が 他の 聴衆 に ならって 女 の ほう を 見た の は 、 トリューニヒト の 顔 を 見 つづける より ましだ と 思った から だ が 、 女 を 認めて かるく 眉 を うごかさ ず に は い られ なかった 。 彼 の 記憶 に ある 容貌 だった のだ 。

「 国防 委員 長 」

ひびき の よい メゾソプラノ の 声 で 女 は 壇上 に むかって 語りかけた 。

「 わたし は ジェシカ ・ エドワーズ と 申します 。 アスターテ 会戦 で 戦死 した 第 六 艦隊 幕僚 ジャン ・ ロベール ・ ラップ の 婚約 者 です 。 いいえ 、 婚約 者 でした 」

「 それ は ……」

雄弁な はずの 〝 次代 の 指導 者 〟 は 絶句 した 。

「 それ は お 気の毒でした 、 お嬢さん 、 しかし ……」

らち も ない こと を 言って 、 国防 委員 長 は 意味 も なく 広い 会場 を 見わたした 。 六万 の 聴衆 は 六万 の 沈黙 で 彼 に 応えた 。 全員 が 息 を ひそめて 、 婚約 者 を 失った 娘 を 見つめて いた 。

「 いたわって いただく 必要 は ありません 、 委員 長 、 わたし の 婚約 者 は 祖国 を まもって 崇高な 死 を とげた のです から 」 ジェシカ は 静かに 委員 長 の 狼狽 を 抑え 、 トリューニヒト は 露骨に 安堵 の 表情 を 浮かべた 。

「 そう です か 、 いや 、 あなた は まさに 銃後 の 婦女子 の 鑑 と も いう べき 人 だ 。 あなた の 称賛 す べき 精神 は かならず 厚く 酬 われる でしょう 」

臆 面 の ない その 姿 に 、 今度 は ヤン は 目 を 閉じ たく なった 。 羞恥心 の 欠けた 人物 に 不可能 事 は ない のだ と しか 思え ない 。

いっぽう 、 ジェシカ は 冷静な ように みえた 。

「 ありがとう ございます 。 わたし は ただ 、 委員 長 に ひと つ 質問 を 聞いて いただき たくて まいった のです 」

「 ほう 、 それ は どんな 質問 でしょう 、 私 が 答えられる ような 質問 だ と いい のだ が ……」 「 あなた は いま 、 どこ に います ? 」 トリューニヒト は まばたき した 。 質問 の 意図 を 諒 解 でき なかった 聴衆 の 多数 も おなじ こと を した 。

「 は 、 なんで す と ? 」 「 わたし の 婚約 者 は 祖国 を まもる ため に 戦場 に おもむいて 、 現在 は この世 の どこ に も いま せ ん 。 委員 長 、 あなた は どこ に います ? 死 を 賛美 なさる あなた は どこ に います 」 「 お嬢さん ……」

国防 委員 長 は 誰 の 目 に も たじろいで 見えた 。

「 あなた の ご 家族 は どこ に います ? 」 ジェシカ の 追及 は 容赦 なく つづいた 。 「 わたし は 婚約 者 を 犠牲 に ささげ ました 。 国民 に 犠牲 の 必要 を 説く あなた の ご 家族 は どこ に います ? あなた の 演説 に は 一 点 の 非 も ありません 。 でも ご 自分 が それ を 実行 なさって いる の ? 」 「 警備 兵 ! 」 右 を 見 、 左 を 見て トリューニヒト は 叫んだ 。 「 この お嬢さん は とり乱して おら れる 。 別室 へ お つれ しろ 。 軍 楽隊 、 私 の 演説 は 終わった 。 国歌 を ! 国歌 の 吹奏 だ 」

ジェシカ の 腕 を 誰 か が つかんだ 。 ふりはらおう と して 彼女 は 相手 の 顔 を 見 、 思いとどまった 。

「 行こう 」

ヤン ・ ウェンリー は 穏やかに 言った 。

「 ここ は あなた の いる べき 場所 で は ない と 思う ……」

勇壮な 昂 揚 感 に あふれた 音楽 が 会場 内 に みち はじめて いた 。 自由 惑星 同盟 の 国歌 「 自由 の 旗 、 自由 の 民 」 である 。

「 友 よ 、 いつ の 日 か 、 圧政 者 を 打倒 し

解放 さ れた 惑星 の 上 に

自由 の 旗 を 樹 て よう

吾 ら 、 現在 を 戦う 、 輝く 未来 の ため に

吾 ら 、 今日 を 戦う 、 実り ある 明日 の ため に

友 よ 、 謳おう 、 自由 の 魂 を

友 よ 、 示そう 、 自由 の 魂 を 」

音楽 に あわせて 聴衆 が 歌い はじめる 。 先刻 の 無秩序な 叫び声 と ことなり 、 それ は 統一 さ れた ゆたかな 旋律 だった 。

「 専制 政治 の 闇 の 彼方 から

自由 の 暁 を 吾 ら の 手 で 呼びこもう 」

演壇 に 背 を むけて 、 ヤン と ジェシカ は 通路 を 出口 へ と 歩いて いった 。

両者 が 傍 を すぎる とき 、 聴衆 は 視線 を 投げ 、 すぐに 視線 を 壇上 に もどして 歌い つづける 。 両者 の 前 で 音 も なく 開いた ドア が 、 彼ら の 背後 で 閉じる とき 、 国歌 の 最後 の 一節 が 耳 を うった 。

「 おお 、 吾 ら 自由 の 民

吾 ら 永遠に 征服 さ れ ず ……」

Ⅱ 落日 の 最後 の 余 光 が 消えさり 、 甘美な 夜 の 涼 気 が 地上 を おおって いた 。 絢爛 たる 星 の 群 が 蒼銀 の 光 を ふりそそぎ はじめた 。 この 季節 、 螺旋 状 の 絹 帯 に たとえられる 星座 の 輝き が ひときわ 鮮烈である 。 ハイネセンポリス の 宇宙 港 は 喧騒 を きわめて いた 。

広大な ロビー に 種々雑多な 人々 が 群れ つどって いる 。 旅 を 終えた 者 が おり 、 これ から 旅立つ 者 が いる 。 見送る 者 、 出迎える 者 、 昔ながら の スーツ 姿 の 一般 市民 、 黒い ベレー 帽 を かぶった 軍人 、 コンビネーション ・ スーツ の 技術 者 、 人 いきれ に 閉口 した ような 表情 で 要所 要所 に たたずむ 警備 官 、 仕事 に おいまわさ れ ながら 足早に 歩く 宇宙 港 職員 、 はしゃぎ まわる 子供 たち 、 邪魔な 人間 ども の 間隙 を 縫って 二十 日 鼠 の ように 走りまわる 荷物 運搬 の ロボット ・ カー ……。

「 ヤン 」

ジェシカ ・ エドワーズ は 傍 に いる 青年 の 名 を 呼んだ 。

「 うん ? 」 「 わたし の こと 、 いやな 女 だ と 思った でしょう ね 」 「 どうして ? 」 「 悲し み を 黙って たえて いる 遺族 が 大部分 な のだ し 、 大勢 の 人 の 前 で あんな こと 叫んだり して 。 不快に 思って 当然だ わ 」

黙って たえて いる ばかりで 事態 が 改善 さ れた 例 は ない 、 誰 か が 指導 者 の 責任 を 糾弾 し なくて は なら ない のだ 。 ヤン は そう 考えた が 、 口 に だして は こう 言った だけ だった 。

「 いや 、 そんな こと は ない よ 」

ふた り は 宇宙 港 ロビー の ソファー の ひと つ に ならんで すわって いた 。

ジェシカ は 一 時間 後 の 定期 船 で ハイネセン の 隣 の 惑星 テルヌーゼン に 帰る のだ と いう 。 彼女 は その 地 で 初等 学校 の 音楽 の 教師 を して いる のだ 。 ジャン ・ ロベール ・ ラップ 少佐 が 生きて いれば 、 当然 、 ちかい 将来 、 退職 して 結婚 して いた であろう 。

「 あなた は 出世 なさった わ ね 、 ヤン 」

ジェシカ が 、 眼前 を 通過 する 三 人 の 親子 を 見つめ ながら 言った 。 ヤン は 返答 し なかった 。

「 アスターテ で の ご 活躍 、 うかがった わ 。 それ 以前 の 功績 も …… ジャン ・ ロベール が いつも 感心 して いた わ 、 同期 生 の 誇り だ と 言って 」

ジャン ・ ロベール ・ ラップ は いい 男 だった 。 ジェシカ が 彼 を えらんだ の は 賢明な 選択 だった と 、 いささか の 心 寂し さ と ともに ヤン は 思う 。 士官 学校 の 事務 長 の 娘 で 、 音楽 学校 に かよって いた ジェシカ ・ エドワーズ 。 現在 で は 婚約 者 を 失った 音楽 教師 ……。

「 あなた を のぞいて 同盟 軍 の 提督 たち は 皆 、 恥じる べき ね 。 一 度 の 会戦 で 一〇〇万 人 以上 も の 死者 を だした のです もの 。 道義 上 も 恥じる べきな んだ わ 」

それ は すこし ちがう 、 と ヤン は 思った 。 非 戦闘 員 を 虐殺 した と か 休戦 協定 を 破った と か の 蛮行 が あった 場合 は ともかく 、 本来 、 名将 と 愚 将 と の あいだ に 道義 上 の 優劣 は ない 。 愚 将 が 味方 を 一〇〇万 人 殺す とき 、 名将 は 敵 を 一〇〇万 人 殺す 。 その 差 が ある だけ で 、 殺されて も 殺さ ない と いう 絶対 的 平和 主義 の 見地 から すれば 、 どちら も 大量 殺人 者 である こと に 差 は ない のだ 。 愚 将 が 恥じる べき は 能力 の 欠如 であって 、 道義 と は レベル の ことなる 問題 である 。 だが この こと を 言って も 理解 して は もらえ ない だろう し 、 理解 を もとめる べき こと で も ない ように 思わ れた 。

宇宙 港 の 搭乗 案内 が ジェシカ を ソファー から たた せた 。 彼女 の 乗る 定期 船 の 出港 が 迫った のだ 。

「 さようなら 、 ヤン 、 送って くださって ありがとう 」

「 気 を つけて 」

「 出世 なさって ね 、 ジャン ・ ロベール のぶん も 」

搭乗 口 に 消える ジェシカ の 後ろ姿 を ヤン は じっと 見送った 。

出世 なさって 、 か 。 それ は より 多く の 敵 を 殺せ と いう こと だ と 、 彼女 は 気づいて いる だろう か 。 たぶん 、 いや 絶対 に 気づいて は いない だろう 。 それ は 銀河 帝国 に 彼女 と おなじ 境遇 の 女性 を つくれ と いう こと で も ある のだ 。 その とき 帝国 の 女性 たち は 誰 に 悲哀 と 怒り を ぶつける のだろう ……。

「 あの 、 ヤン ・ ウェンリー 准将 で いらっしゃいます か 」 年老いた 女性 の 声 が した 。 ヤン は ゆっくり ふりむいて 、 五 、 六 歳 の 男の子 を つれた 上品 そうな 老婦 人 の 姿 を 視界 の うち に 見いだした 。

「 そう です が ……」

「 ああ 、 やっぱり 。 これ 、 ウィル 、 この 方 が アスターテ の 英雄 です よ 、 ごあいさつ なさい 」

男の子 は はにかんで 老婦 人 の 背後 に 隠れた 。

「 わたし は メイヤー 夫人 と 申します 。 夫 も 、 息子 も 、 息子 と いう の は この 子 の 父親 です が 、 軍人 で 、 帝国 軍 と 戦って 名誉 の 戦死 を とげ ました 。 あなた の 武 勲 を ニュース で 知って 感激 した のです けれど 、 こんな 場所 で お 目 に かかれる なんて 望外 の 幸福で ございます わ 」

「…………」

自分 は いったい 、 いま どんな 表情 を して いる のだろう と ヤン は 思った 。

「 この 子 も 軍人 に なりたい と 申して おります 。 帝国 軍 を やっつけて パパ の 讐 を 討つ んだ と …… ヤン 准将 、 あつかましい お 願い と は 存じます が 、 英雄 で いらっしゃる あなた の お手 を この 子 に あたえて やって くださいません かしら 。 握手 を して いただけば この 子 に とって は 将来 へ の はげみ に なる と 思います の 」 老婦 人 の 顔 を ヤン は 正視 でき なかった 。

返答 が ない の を 承認 と とった のであろう 、 老婦 人 は 孫 を 若い 提督 の 前 に おしだそう と した 。

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第 四 章 第 一三 艦隊 誕生 (2) だい|よっ|しょう|だい|かずみ|かんたい|たんじょう 第4章 第十三舰队的诞生(2)

キャゼルヌ 少将 が 笑う だろう 、 抵抗 する に して も 方法 が 拙劣 だ 、 と 。 |しょうしょう||わらう||ていこう|||||ほうほう||せつれつ|| しかし ヤン は ここ で 円熟 した おとな と して 行動 する 気 に なれ なかった 。 |||||えんじゅく|||||こうどう||き||| 起立 する の も いやであり 、 拍手 する の も 同盟 万 歳 を 叫ぶ の も いやだった 。 きりつ|||||はくしゅ||||どうめい|よろず|さい||さけぶ||| トリューニヒト の 演説 に 感動 し なかった が ゆえ に 非 愛国 者 と 指弾 さ れる の なら 、 仰せ の とおり と 応じる しか ない 。 ||えんぜつ||かんどう||||||ひ|あいこく|もの||しだん|||||おおせ||||おうじる|| いつでも 、 王様 は 裸 だ と 叫ぶ の は おとな で は なく 子供 な のだ 。 |おうさま||はだか|||さけぶ|||||||こども||

「 貴 官 は どういう つもり で ……」 とうと|かん||||

中年 の 准将 が わめこう と した とき 、 壇上 の トリューニヒト が 腕 の 位置 を さげた 。 ちゅうねん||じゅんしょう||||||だんじょう||||うで||いち|| かるく 両手 で 聴衆 を 抑える 動作 を する 。 |りょうて||ちょうしゅう||おさえる|どうさ|| それ に ともなって 狂 熱 の 水量 が 減少 し 、 静寂 が 音響 を 圧し はじめた 。 |||くる|ねつ||すいりょう||げんしょう||せいじゃく||おんきょう||あっし| 人々 の 頭部 の 位置 が 低く なる 。 ひとびと||とうぶ||いち||ひくく|

ヤン を にらみつけて いた 中年 の 准将 も 、 厚い 頰肉 を 不満 そうに 震わせ ながら 席 に 着いた 。 ||||ちゅうねん||じゅんしょう||あつい|頰にく||ふまん|そう に|ふるわせ||せき||ついた

「…… 諸君 」 しょくん

壇上 の 国防 委員 長 は ふたたび 口 を 開いた 。 だんじょう||こくぼう|いいん|ちょう|||くち||あいた 長 広 舌 と 絶叫 で 彼 の 口腔 は 乾 上がって おり 、 その 声 は 非 音楽 的に かすれた 。 ちょう|ひろ|した||ぜっきょう||かれ||こうこう||いぬい|あがって|||こえ||ひ|おんがく|てきに| せき を ひと つ する と 彼 は 演説 を つづけた 。 ||||||かれ||えんぜつ||

「 吾々 の 強大な 武器 は 、 全 国民 の 統一 さ れた 意思 である 。 われ々||きょうだいな|ぶき||ぜん|こくみん||とういつ|||いし| 自由 の 国 であり 民主 的 共和 政体 である 以上 、 どれほど 崇高な 目的 であって も 強制 する こと は でき ない 。 じゆう||くに||みんしゅ|てき|きょうわ|せいたい||いじょう||すうこうな|もくてき|||きょうせい||||| 各人 に は 国家 に 反対 する 自由 が ある 。 かくじん|||こっか||はんたい||じゆう|| しかし 良識 ある わが国 民 に は あきらかな はずだ 。 |りょうしき||わがくに|たみ|||| 真 の 自由 と は 卑小 な 自我 を 捨てて 団結 し 、 共通の 目的 に むかって 前進 する こと だ 、 と 。 まこと||じゆう|||ひしょう||じが||すてて|だんけつ||きょうつうの|もくてき|||ぜんしん|||| 諸君 ……」 しょくん

そこ で トリューニヒト が 口 を 閉ざした の は 、 口 が 乾いて 声 が かすれた ため で は ない 。 ||||くち||とざした|||くち||かわいて|こえ|||||| ひと り の 女性 が 座席 間 の 通路 を 演壇 へ と 歩みよる の に 気づいた から である 。 |||じょせい||ざせき|あいだ||つうろ||えんだん|||あゆみよる|||きづいた|| ライト ・ ブラウン の 頭髪 を した 若い 女性 で 、 すれちがう 男 の 半数 以上 が ふりむく であろう ていど に は 美しかった 。 らいと|||とうはつ|||わかい|じょせい|||おとこ||はんすう|いじょう|||||||うつくしかった 彼女 の 歩む 、 その 両側 から 低い 不審 の ざわめき が 生じて 周囲 に 波紋 を ひろげた 。 かのじょ||あゆむ||りょうがわ||ひくい|ふしん||||しょうじて|しゅうい||はもん||

…… 誰 だ 、 あの 女 は ? だれ|||おんな| なに を する 気 だ ? |||き|

ヤン が 他の 聴衆 に ならって 女 の ほう を 見た の は 、 トリューニヒト の 顔 を 見 つづける より ましだ と 思った から だ が 、 女 を 認めて かるく 眉 を うごかさ ず に は い られ なかった 。 ||たの|ちょうしゅう|||おんな||||みた|||||かお||み|||||おもった||||おんな||みとめて||まゆ|||||||| 彼 の 記憶 に ある 容貌 だった のだ 。 かれ||きおく|||ようぼう||

「 国防 委員 長 」 こくぼう|いいん|ちょう

ひびき の よい メゾソプラノ の 声 で 女 は 壇上 に むかって 語りかけた 。 |||||こえ||おんな||だんじょう|||かたりかけた

「 わたし は ジェシカ ・ エドワーズ と 申します 。 |||||もうします アスターテ 会戦 で 戦死 した 第 六 艦隊 幕僚 ジャン ・ ロベール ・ ラップ の 婚約 者 です 。 |かいせん||せんし||だい|むっ|かんたい|ばくりょう||ろべーる|らっぷ||こんやく|もの| いいえ 、 婚約 者 でした 」 |こんやく|もの|

「 それ は ……」

雄弁な はずの 〝 次代 の 指導 者 〟 は 絶句 した 。 ゆうべんな||じだい||しどう|もの||ぜっく|

「 それ は お 気の毒でした 、 お嬢さん 、 しかし ……」 |||きのどくでした|おじょうさん|

らち も ない こと を 言って 、 国防 委員 長 は 意味 も なく 広い 会場 を 見わたした 。 |||||いって|こくぼう|いいん|ちょう||いみ|||ひろい|かいじょう||みわたした 六万 の 聴衆 は 六万 の 沈黙 で 彼 に 応えた 。 ろくまん||ちょうしゅう||ろくまん||ちんもく||かれ||こたえた 全員 が 息 を ひそめて 、 婚約 者 を 失った 娘 を 見つめて いた 。 ぜんいん||いき|||こんやく|もの||うしなった|むすめ||みつめて|

「 いたわって いただく 必要 は ありません 、 委員 長 、 わたし の 婚約 者 は 祖国 を まもって 崇高な 死 を とげた のです から 」 ||ひつよう|||いいん|ちょう|||こんやく|もの||そこく|||すうこうな|し|||の です| ジェシカ は 静かに 委員 長 の 狼狽 を 抑え 、 トリューニヒト は 露骨に 安堵 の 表情 を 浮かべた 。 ||しずかに|いいん|ちょう||ろうばい||おさえ|||ろこつに|あんど||ひょうじょう||うかべた

「 そう です か 、 いや 、 あなた は まさに 銃後 の 婦女子 の 鑑 と も いう べき 人 だ 。 |||||||じゅうご||ふじょし||かがみ|||||じん| あなた の 称賛 す べき 精神 は かならず 厚く 酬 われる でしょう 」 ||しょうさん|||せいしん|||あつく|しゅう||

臆 面 の ない その 姿 に 、 今度 は ヤン は 目 を 閉じ たく なった 。 おく|おもて||||すがた||こんど||||め||とじ|| 羞恥心 の 欠けた 人物 に 不可能 事 は ない のだ と しか 思え ない 。 しゅうちしん||かけた|じんぶつ||ふかのう|こと||||||おもえ|

いっぽう 、 ジェシカ は 冷静な ように みえた 。 |||れいせいな|よう に|

「 ありがとう ございます 。 わたし は ただ 、 委員 長 に ひと つ 質問 を 聞いて いただき たくて まいった のです 」 |||いいん|ちょう||||しつもん||きいて||||の です

「 ほう 、 それ は どんな 質問 でしょう 、 私 が 答えられる ような 質問 だ と いい のだ が ……」 ||||しつもん||わたくし||こたえられる||しつもん||||| 「 あなた は いま 、 どこ に います ? 」 トリューニヒト は まばたき した 。 質問 の 意図 を 諒 解 でき なかった 聴衆 の 多数 も おなじ こと を した 。 しつもん||いと||りょう|かい|||ちょうしゅう||たすう|||||

「 は 、 なんで す と ? 」 「 わたし の 婚約 者 は 祖国 を まもる ため に 戦場 に おもむいて 、 現在 は この世 の どこ に も いま せ ん 。 ||こんやく|もの||そこく|||||せんじょう|||げんざい||このよ||||||| 委員 長 、 あなた は どこ に います ? いいん|ちょう||||| 死 を 賛美 なさる あなた は どこ に います 」 し||さんび|||||| 「 お嬢さん ……」 おじょうさん

国防 委員 長 は 誰 の 目 に も たじろいで 見えた 。 こくぼう|いいん|ちょう||だれ||め||||みえた

「 あなた の ご 家族 は どこ に います ? |||かぞく|||| "¿Dónde está su familia? 」 ジェシカ の 追及 は 容赦 なく つづいた 。 ||ついきゅう||ようしゃ|| 「 わたし は 婚約 者 を 犠牲 に ささげ ました 。 ||こんやく|もの||ぎせい||| 国民 に 犠牲 の 必要 を 説く あなた の ご 家族 は どこ に います ? こくみん||ぎせい||ひつよう||とく||||かぞく|||| あなた の 演説 に は 一 点 の 非 も ありません 。 ||えんぜつ|||ひと|てん||ひ|| でも ご 自分 が それ を 実行 なさって いる の ? ||じぶん||||じっこう||| 」 「 警備 兵 ! けいび|つわもの 」 右 を 見 、 左 を 見て トリューニヒト は 叫んだ 。 みぎ||み|ひだり||みて|||さけんだ 「 この お嬢さん は とり乱して おら れる 。 |おじょうさん||とりみだして|| 別室 へ お つれ しろ 。 べっしつ|||| 軍 楽隊 、 私 の 演説 は 終わった 。 ぐん|がくたい|わたくし||えんぜつ||おわった 国歌 を ! こっか| 国歌 の 吹奏 だ 」 こっか||すいそう|

ジェシカ の 腕 を 誰 か が つかんだ 。 ||うで||だれ||| ふりはらおう と して 彼女 は 相手 の 顔 を 見 、 思いとどまった 。 |||かのじょ||あいて||かお||み|おもいとどまった

「 行こう 」 いこう

ヤン ・ ウェンリー は 穏やかに 言った 。 |||おだやかに|いった

「 ここ は あなた の いる べき 場所 で は ない と 思う ……」 ||||||ばしょ|||||おもう

勇壮な 昂 揚 感 に あふれた 音楽 が 会場 内 に みち はじめて いた 。 ゆうそうな|たかし|よう|かん|||おんがく||かいじょう|うち|||| 自由 惑星 同盟 の 国歌 「 自由 の 旗 、 自由 の 民 」 である 。 じゆう|わくせい|どうめい||こっか|じゆう||き|じゆう||たみ|

「 友 よ 、 いつ の 日 か 、 圧政 者 を 打倒 し とも||||ひ||あっせい|もの||だとう|

解放 さ れた 惑星 の 上 に かいほう|||わくせい||うえ|

自由 の 旗 を 樹 て よう じゆう||き||き||

吾 ら 、 現在 を 戦う 、 輝く 未来 の ため に われ||げんざい||たたかう|かがやく|みらい|||

吾 ら 、 今日 を 戦う 、 実り ある 明日 の ため に われ||きょう||たたかう|みのり||あした|||

友 よ 、 謳おう 、 自由 の 魂 を とも||うたおう|じゆう||たましい|

友 よ 、 示そう 、 自由 の 魂 を 」 とも||しめそう|じゆう||たましい|

音楽 に あわせて 聴衆 が 歌い はじめる 。 おんがく|||ちょうしゅう||うたい| 先刻 の 無秩序な 叫び声 と ことなり 、 それ は 統一 さ れた ゆたかな 旋律 だった 。 せんこく||むちつじょな|さけびごえ|||||とういつ||||せんりつ|

「 専制 政治 の 闇 の 彼方 から せんせい|せいじ||やみ||かなた|

自由 の 暁 を 吾 ら の 手 で 呼びこもう 」 じゆう||あかつき||われ|||て||よびこもう

演壇 に 背 を むけて 、 ヤン と ジェシカ は 通路 を 出口 へ と 歩いて いった 。 えんだん||せ|||||||つうろ||でぐち|||あるいて|

両者 が 傍 を すぎる とき 、 聴衆 は 視線 を 投げ 、 すぐに 視線 を 壇上 に もどして 歌い つづける 。 りょうしゃ||そば||||ちょうしゅう||しせん||なげ||しせん||だんじょう|||うたい| 両者 の 前 で 音 も なく 開いた ドア が 、 彼ら の 背後 で 閉じる とき 、 国歌 の 最後 の 一節 が 耳 を うった 。 りょうしゃ||ぜん||おと|||あいた|どあ||かれら||はいご||とじる||こっか||さいご||いっせつ||みみ||

「 おお 、 吾 ら 自由 の 民 |われ||じゆう||たみ

吾 ら 永遠に 征服 さ れ ず ……」 われ||えいえんに|せいふく|||

Ⅱ 落日 の 最後 の 余 光 が 消えさり 、 甘美な 夜 の 涼 気 が 地上 を おおって いた 。 らくじつ||さいご||よ|ひかり||きえさり|かんびな|よ||りょう|き||ちじょう||| 絢爛 たる 星 の 群 が 蒼銀 の 光 を ふりそそぎ はじめた 。 けんらん||ほし||ぐん||あおぎん||ひかり||| この 季節 、 螺旋 状 の 絹 帯 に たとえられる 星座 の 輝き が ひときわ 鮮烈である 。 |きせつ|らせん|じょう||きぬ|おび|||せいざ||かがやき|||せんれつである ハイネセンポリス の 宇宙 港 は 喧騒 を きわめて いた 。 ||うちゅう|こう||けんそう|||

広大な ロビー に 種々雑多な 人々 が 群れ つどって いる 。 こうだいな|ろびー||しゅじゅざったな|ひとびと||むれ|| 旅 を 終えた 者 が おり 、 これ から 旅立つ 者 が いる 。 たび||おえた|もの|||||たびだつ|もの|| 見送る 者 、 出迎える 者 、 昔ながら の スーツ 姿 の 一般 市民 、 黒い ベレー 帽 を かぶった 軍人 、 コンビネーション ・ スーツ の 技術 者 、 人 いきれ に 閉口 した ような 表情 で 要所 要所 に たたずむ 警備 官 、 仕事 に おいまわさ れ ながら 足早に 歩く 宇宙 港 職員 、 はしゃぎ まわる 子供 たち 、 邪魔な 人間 ども の 間隙 を 縫って 二十 日 鼠 の ように 走りまわる 荷物 運搬 の ロボット ・ カー ……。 みおくる|もの|でむかえる|もの|むかしながら||すーつ|すがた||いっぱん|しみん|くろい||ぼう|||ぐんじん||すーつ||ぎじゅつ|もの|じん|||へいこう|||ひょうじょう||ようしょ|ようしょ|||けいび|かん|しごと|||||あしばやに|あるく|うちゅう|こう|しょくいん|||こども||じゃまな|にんげん|||かんげき||ぬって|にじゅう|ひ|ねずみ||よう に|はしりまわる|にもつ|うんぱん||ろぼっと|かー

「 ヤン 」

ジェシカ ・ エドワーズ は 傍 に いる 青年 の 名 を 呼んだ 。 |||そば|||せいねん||な||よんだ

「 うん ? 」 「 わたし の こと 、 いやな 女 だ と 思った でしょう ね 」 ||||おんな|||おもった|| 「 どうして ? 」 「 悲し み を 黙って たえて いる 遺族 が 大部分 な のだ し 、 大勢 の 人 の 前 で あんな こと 叫んだり して 。 かなし|||だまって|||いぞく||だいぶぶん||||おおぜい||じん||ぜん||||さけんだり| 不快に 思って 当然だ わ 」 ふかいに|おもって|とうぜんだ|

黙って たえて いる ばかりで 事態 が 改善 さ れた 例 は ない 、 誰 か が 指導 者 の 責任 を 糾弾 し なくて は なら ない のだ 。 だまって||||じたい||かいぜん|||れい|||だれ|||しどう|もの||せきにん||きゅうだん|||||| ヤン は そう 考えた が 、 口 に だして は こう 言った だけ だった 。 |||かんがえた||くち|||||いった||

「 いや 、 そんな こと は ない よ 」

ふた り は 宇宙 港 ロビー の ソファー の ひと つ に ならんで すわって いた 。 |||うちゅう|こう|ろびー||そふぁー|||||||

ジェシカ は 一 時間 後 の 定期 船 で ハイネセン の 隣 の 惑星 テルヌーゼン に 帰る のだ と いう 。 ||ひと|じかん|あと||ていき|せん||||となり||わくせい|||かえる||| 彼女 は その 地 で 初等 学校 の 音楽 の 教師 を して いる のだ 。 かのじょ|||ち||しょとう|がっこう||おんがく||きょうし|||| ジャン ・ ロベール ・ ラップ 少佐 が 生きて いれば 、 当然 、 ちかい 将来 、 退職 して 結婚 して いた であろう 。 |ろべーる|らっぷ|しょうさ||いきて||とうぜん||しょうらい|たいしょく||けっこん|||

「 あなた は 出世 なさった わ ね 、 ヤン 」 ||しゅっせ||||

ジェシカ が 、 眼前 を 通過 する 三 人 の 親子 を 見つめ ながら 言った 。 ||がんぜん||つうか||みっ|じん||おやこ||みつめ||いった ヤン は 返答 し なかった 。 ||へんとう||

「 アスターテ で の ご 活躍 、 うかがった わ 。 ||||かつやく|| それ 以前 の 功績 も …… ジャン ・ ロベール が いつも 感心 して いた わ 、 同期 生 の 誇り だ と 言って 」 |いぜん||こうせき|||ろべーる|||かんしん||||どうき|せい||ほこり|||いって

ジャン ・ ロベール ・ ラップ は いい 男 だった 。 |ろべーる|らっぷ|||おとこ| ジェシカ が 彼 を えらんだ の は 賢明な 選択 だった と 、 いささか の 心 寂し さ と ともに ヤン は 思う 。 ||かれ|||||けんめいな|せんたく|||||こころ|さびし||||||おもう 士官 学校 の 事務 長 の 娘 で 、 音楽 学校 に かよって いた ジェシカ ・ エドワーズ 。 しかん|がっこう||じむ|ちょう||むすめ||おんがく|がっこう||||| 現在 で は 婚約 者 を 失った 音楽 教師 ……。 げんざい|||こんやく|もの||うしなった|おんがく|きょうし

「 あなた を のぞいて 同盟 軍 の 提督 たち は 皆 、 恥じる べき ね 。 |||どうめい|ぐん||ていとく|||みな|はじる|| 一 度 の 会戦 で 一〇〇万 人 以上 も の 死者 を だした のです もの 。 ひと|たび||かいせん||ひと|よろず|じん|いじょう|||ししゃ|||の です| 道義 上 も 恥じる べきな んだ わ 」 どうぎ|うえ||はじる|||

それ は すこし ちがう 、 と ヤン は 思った 。 |||||||おもった 非 戦闘 員 を 虐殺 した と か 休戦 協定 を 破った と か の 蛮行 が あった 場合 は ともかく 、 本来 、 名将 と 愚 将 と の あいだ に 道義 上 の 優劣 は ない 。 ひ|せんとう|いん||ぎゃくさつ||||きゅうせん|きょうてい||やぶった||||ばんこう|||ばあい|||ほんらい|めいしょう||ぐ|すすむ|||||どうぎ|うえ||ゆうれつ|| 愚 将 が 味方 を 一〇〇万 人 殺す とき 、 名将 は 敵 を 一〇〇万 人 殺す 。 ぐ|すすむ||みかた||ひと|よろず|じん|ころす||めいしょう||てき||ひと|よろず|じん|ころす その 差 が ある だけ で 、 殺されて も 殺さ ない と いう 絶対 的 平和 主義 の 見地 から すれば 、 どちら も 大量 殺人 者 である こと に 差 は ない のだ 。 |さ|||||ころされて||ころさ||||ぜったい|てき|へいわ|しゅぎ||けんち|||||たいりょう|さつじん|もの||||さ||| 愚 将 が 恥じる べき は 能力 の 欠如 であって 、 道義 と は レベル の ことなる 問題 である 。 ぐ|すすむ||はじる|||のうりょく||けつじょ||どうぎ|||れべる|||もんだい| だが この こと を 言って も 理解 して は もらえ ない だろう し 、 理解 を もとめる べき こと で も ない ように 思わ れた 。 ||||いって||りかい|||||||りかい||||||||よう に|おもわ|

宇宙 港 の 搭乗 案内 が ジェシカ を ソファー から たた せた 。 うちゅう|こう||とうじょう|あんない||||そふぁー||| 彼女 の 乗る 定期 船 の 出港 が 迫った のだ 。 かのじょ||のる|ていき|せん||しゅっこう||せまった|

「 さようなら 、 ヤン 、 送って くださって ありがとう 」 ||おくって||

「 気 を つけて 」 き||

「 出世 なさって ね 、 ジャン ・ ロベール のぶん も 」 しゅっせ||||ろべーる||

搭乗 口 に 消える ジェシカ の 後ろ姿 を ヤン は じっと 見送った 。 とうじょう|くち||きえる|||うしろすがた|||||みおくった

出世 なさって 、 か 。 しゅっせ|| それ は より 多く の 敵 を 殺せ と いう こと だ と 、 彼女 は 気づいて いる だろう か 。 |||おおく||てき||ころせ||||||かのじょ||きづいて||| たぶん 、 いや 絶対 に 気づいて は いない だろう 。 ||ぜったい||きづいて||| それ は 銀河 帝国 に 彼女 と おなじ 境遇 の 女性 を つくれ と いう こと で も ある のだ 。 ||ぎんが|ていこく||かのじょ|||きょうぐう||じょせい||||||||| その とき 帝国 の 女性 たち は 誰 に 悲哀 と 怒り を ぶつける のだろう ……。 ||ていこく||じょせい|||だれ||ひあい||いかり|||

「 あの 、 ヤン ・ ウェンリー 准将 で いらっしゃいます か 」 |||じゅんしょう||| 年老いた 女性 の 声 が した 。 としおいた|じょせい||こえ|| ヤン は ゆっくり ふりむいて 、 五 、 六 歳 の 男の子 を つれた 上品 そうな 老婦 人 の 姿 を 視界 の うち に 見いだした 。 ||||いつ|むっ|さい||おとこのこ|||じょうひん|そう な|ろうふ|じん||すがた||しかい||||みいだした

「 そう です が ……」

「 ああ 、 やっぱり 。 これ 、 ウィル 、 この 方 が アスターテ の 英雄 です よ 、 ごあいさつ なさい 」 |||かた||||えいゆう||||

男の子 は はにかんで 老婦 人 の 背後 に 隠れた 。 おとこのこ|||ろうふ|じん||はいご||かくれた

「 わたし は メイヤー 夫人 と 申します 。 |||ふじん||もうします 夫 も 、 息子 も 、 息子 と いう の は この 子 の 父親 です が 、 軍人 で 、 帝国 軍 と 戦って 名誉 の 戦死 を とげ ました 。 おっと||むすこ||むすこ||||||こ||ちちおや|||ぐんじん||ていこく|ぐん||たたかって|めいよ||せんし||| あなた の 武 勲 を ニュース で 知って 感激 した のです けれど 、 こんな 場所 で お 目 に かかれる なんて 望外 の 幸福で ございます わ 」 ||ぶ|いさお||にゅーす||しって|かんげき||の です|||ばしょ|||め||||ぼうがい||こうふくで||

「…………」

自分 は いったい 、 いま どんな 表情 を して いる のだろう と ヤン は 思った 。 じぶん|||||ひょうじょう||||||||おもった

「 この 子 も 軍人 に なりたい と 申して おります 。 |こ||ぐんじん||||もうして| 帝国 軍 を やっつけて パパ の 讐 を 討つ んだ と …… ヤン 准将 、 あつかましい お 願い と は 存じます が 、 英雄 で いらっしゃる あなた の お手 を この 子 に あたえて やって くださいません かしら 。 ていこく|ぐん|||ぱぱ||しゅう||うつ||||じゅんしょう|||ねがい|||ぞんじます||えいゆう|||||おて|||こ||||| 握手 を して いただけば この 子 に とって は 将来 へ の はげみ に なる と 思います の 」 あくしゅ|||||こ||||しょうらい|||||||おもいます| 老婦 人 の 顔 を ヤン は 正視 でき なかった 。 ろうふ|じん||かお||||せいし||

返答 が ない の を 承認 と とった のであろう 、 老婦 人 は 孫 を 若い 提督 の 前 に おしだそう と した 。 へんとう|||||しょうにん||||ろうふ|じん||まご||わかい|ていとく||ぜん||||