( 入江 琴子 ( いりえ ことこ )) あれ ? あの 子 …
♪~
( 佐川 好美 ( さがわ このみ )) うわっ !
( 佐川 好美 ( さがわ このみ )) うわっ !
わあっ ! ああ …
わあっ ! ああ …
あなた 前 に も ウチ の 前 に …
あっ すいません ! あの 私 …
えっと …
その 制服 … 斗南 中学 の ?
あ …
ああ ! 裕樹 ( ゆうき ) 君 の お 友達 ?
ごめんなさい !
あっ 待って !
あなた 裕樹 君 の こと 好き でしょ ?
( 琴子 ) え ~!
F 組 な の ?
はい 私 なんか 勉強 苦手 みたい で …
裕樹 君 と 同じ クラス に なり たい って ―
いっつも A 組 目指して 頑張って る んです けど …
( 琴子 ) わかる !
おんなじ ! 一緒 ! 私 も F 組 だった もん
えっ お 姉さん も F 組 だった んです か ?
( 琴子 ) そう !
斗南 の 落ちこぼれ と 蔑ま れて いる あの F 組 だった の よ 私 !
お 姉さん !
ヤダ お 姉さん なんて 照れくさい
え … でも お 姉さん は ―
裕樹 君 の お 兄さん と 結婚 して る んです よ ね ?
まあ そう な んだ けど
どうやって 結婚 できた んです か ?
入江 君 の お 兄さん も すっごい 天才 で
女 嫌い だって 聞いて る んです けど
うーん そう ねえ
これといった 決め手 は 思い当たら ない けど …
告白 して から の 押して 押して 押して ー の …
4 年間 連続 技 って とこ かしら
根性 です ね … できる かな ~ 私
好美 ちゃん は 裕樹 君 の どこ が いい の ?
どこ が って … そ ~ です ね ~
やっぱり 頭 が いい ところ でしょ ?
それ に あの 冷たい 目 …
顔 は 抜群 に かっこいい し
背 は … まあ これ から 伸びる と して
( 入江 裕樹 ) バーカ
へえ ~ あいつ が そう 見える んだ
恋 は 盲目 っていうか 何て いう か
( 好美 ) え ?
ううん 何でもない …
あっ そうだ 裕樹 君 に 何か アプローチ とか して る の ?
それ が … まだ 一度も 口 きいた こと なく って
( 琴子 ) 一度も !?
たぶん 私 の 存在 すら 知ら ない と 思う んです
だって 彼 は A 組 私 は F 組
A 組 から F 組 の 距離 なんて ―
ホント は たいした こと ない んです けど
でも 私 の 中 で は ―
はるか 砂漠 の かなた の ような 気持ち な の …
わかるっ わかる わ !
まるで 昔 の 私 を 見て る よう …
お 姉さん …
裕樹 君 は 性格 に かなり 問題 あり だ けど
私 応援 する !
頑張って 恋 実らせ よう ね !
でも …
( 琴子 ) 大丈夫 !
裕樹 君 の お 兄さん も 頭 の 悪い 奴 は 嫌い だ と か 言って た けど ―
こうして 結婚 して る んだ から !
琴子 お 姉さん に 任せ なさい ―
ウフフ ウフフ
( 琴子 ) と は 言う もの の …
( 裕樹 ) 何 だ よ 琴子 ! 邪魔 す んな よ
じゃ 邪魔 なんて …
じゃあ なんで さっきから ずっと ―
俺 の 周り に 張りついて ボケッと して んだ よ
ボケッと なんか …
あっ 糸くず
( 裕樹 ) 用 が ない なら あっち 行って ろ
( 琴子 ) ガード 固い って いう か いつも 通り って いう か …
ねえ 佐川 好美 ちゃん って 知って る ?
佐川 好美 ?
私 の 知り合い の … 知り合い の 姪っ子 で
斗南 中学 に 通って る ん だって
知り合い の 知り合い の 姪 っ子 ?
そう そう … すっごーく かわいい んだ って
その 子 確か 裕樹 君 と 同じ 学年 だった ような …
知ら ない
知ら ない ?
ウチ の クラス に そんな 子 い ない し
A 組 の 女子 以外 覚えて ない
( 琴子 ) まあ こいつ は そういう 奴 だ けど
じゃ ! じゃ じゃ … じゃあ !
裕樹 君 好き な 女の子 とか って いない の ?
何 だ よ
好きな 女の子 !
はあ ?
じゃあ 女の子 に 興味 と か は ?
ない !
じゃあ 今 の ところ ―
好き な 女の子 は いない って こと ね ?
まあ 琴子 見て る と ―
女 って 生き物 に は 余計 に 興味 が なくなる ね
好き な 女の子 は いない で …
送信 !
おい !
♪~
たくさん 食べて ね
うっとうしい なあ
あっ 入江 君 今 ご飯 用意 する から ね ~
よいしょ はい どうぞ ―
あっ そうだ
今日 理美 ( さとみ ) の 赤ちゃん 見て きた んです よ ~
( 相原 重雄 ( あいはら しげお )) おお そう か
( 入江 紀子 ( のりこ )) まあ 理美 ちゃん の ?
どう だった ? 元気 だった ? 理美 ちゃん
元気 に お 母さん して ました
赤ちゃん も すっごーく かわいくて … ほら !
ま ~ 理美 ちゃん そっくり !
( 琴子 ) あんまり かわいくて 泣い ちゃい ました よ
確かに … かわいい
( 琴子 ) お 父さん 泣いて ん の ?
バカ ! 泣いて なんか いねえ よ
相原 さん ?
いや だって 理美 ちゃん も じんこ ちゃん も ―
昔 から 知って る から 娘 みたいな もん だろう ?
お 父さん …
そんな ん じゃ 琴子 ちゃん が 赤ちゃん 産んだら 大変 よ
琴子 ちゃん の 赤ちゃん だったら きっと ―
信じ られ ない ぐらい かわいい に 決まって る んです もの
琴子 の … 赤ちゃん …
( 紀子 ) 相原 さん !
( 重雄 ) やべ … こいつ の 小さい頃 思い出し ちゃって …
( 入江 直樹 ( なおき )) どう だった んです か ? 小さい 時 の 琴子 は
もう 一日中 びゃ ~ びゃ ~ 泣いて て さ
俺 も 悦子 ( えつこ ) も 最初 は 途方 に 暮れて …
か と 思う と いきなり 静かに なっ ちゃって
今度 は 死んで る んじゃ ない か って 二 人 して 慌てて …
え … で どう なった の ?
( 重雄 ) ん ?
まっ ただ 寝て た だけ だった んだ けど な
まっ !
今 と あんま 変わんない な
まっ そう な んだ よ ね
進歩 の ない 奴 …
これ 裕樹 !
そう いえば 琴子 の 小さい 時 の 写真 見た こと ない な
ほら ウチ 家 崩壊 し ちゃった じゃ ない ?
( 直樹 ) 流星群 で ?
うん … それ で わかん なくなっ ちゃって
( 紀子 ) そう だった わ ねえ かわいそうに
赤ちゃん の 時 は 知ら ない です けど ―
ちっちゃい 時 は 今 と 同じ 顔 だって 言って ます
琴子 ちゃん かわいい から
ガキ っぽい んだ ろ ?
お袋 さん の こと も 全然 知ら ない もん な
そっか …
そう だ よ な 昔 の 写真 も ほとんど 残って ない し
( 紀子 ) かわいらしい 人 だった わ ねえ 悦子 さん
よして ください よ
まあ 俺 に とって は … ね
あっ でも “ ミス あきた こまち ” だった ん でしょ ?
ミス あきた こまち ?
( 重雄 ) うん そう らしい よ
( 琴子 ) 私 に よく 似て る ん でしょ ?
あんまり 覚えて ない けど おしとやか で 品 も あって ―
かなり 美人 だった 記憶 が …
琴子 に 似て て かなり の 美人 ?
お 義父 ( とう ) さん
お 義父 ( とう ) さん
( 重雄 ) ん ?
来週 琴子 の お袋 さん の 命日 です よ ね
おお まあ そう だ けど …
知って た の ? 入江 君
ああ 毎年 この 時期 二人 で お 墓参り 行って た だろ ?
そう だった わ ね ~
悦子 さん が 亡くなって もう 何 回忌 に なる の かしら ?
ん ー こいつ が 小学校 1 年生 だった から
あ … もう 18 年 に なり ます か ね
あら もう そんなに なる の
まっ 今年 も 二人 で さっと 行って き ます よ
うん
( 直樹 ) 今年 は 俺 も 行き ます
(2 人 ) えっ !!
毎年 思って た んです ちゃんと お 墓参り した いって
あ … いや あの へんぴ な 所 だ し 遠い し さ
そそ そそ ! しかも 入江 君 勉強 大変 だろう し ~
もう その 気持ち だけ で 十分 だ よ
そう ! 無理 しなくて いい から ね !
無理 なんか して ない って
ちょうど その 時期 あいてる んだ よ
それ に ご 実家 って 秋田 です よ ね
新幹線 も 通って る し 大丈夫 です よ
いや … しかし …
実家 で お袋 さん の 写真 も 見 たい し な
ミス あきた こまち の
やみ ません ね
母さん … 雨女 だった から な
次 来た バス に 乗って 30 分 って とこ です か ね ?
ね … 直樹 君
今回 は 墓参り だけ さっと 終わら せて 引き揚げ ない ?
あの 実家 は また 今度 って こと で
あっ ほら こんな びしょ濡れ で 寄ったら 失礼 だ し さ
いいね お父さん ナイス 提案
それ で あの 温泉 に でも 寄って 鍋 でも つつこう よ
それ は 無理 です ね
(2 人 ) え ?
お袋 が もう 秋田 の ご 実家 に 連絡 入れて ます
お世話になる んで よろしく お 願い し ます と
何 か 隠して ます ね ?
仕方がない … 観念 する か
観念 ?
着けば わかる よ
( 直樹 ) ここ から どう やって 行く んです か ?―
タクシー です か ?
ああ …
どう やって って いう か その …
( 吉田 鶴三 ( よしだ つるぞう )) あっ ! 琴子 だ !
おおっ おーい !
ようこそ ~! 直木 さーん !
( 歓声 )
( 鶴三 ) や ~ いぐ来たな ~ いぐ来たな ~
初めて お 目 に 会う っす な ―
琴子 ちゃん も 重雄 君 も しばらく ぶり !
琴子 の 母親 の 兄 の 鶴三 伯父さん で ございます
さっ こっち さ 来て !―
こっち さ さ … こっち さ 来て はよ はよ こっち さ 来て …
ハッハッハッ …
( ハウリング )
え ~ それでは ―
ミス 熊代 ( くましろ ) より 花束 の 贈呈 で ございます
( 拍手 )
花束 の 贈呈 で ございます !
( ミス 熊代 ) ようこそ 熊代 へ
どうも
( 歓声 )
( 男性 ) いやあ―
あの ヨツ ヨツ 歩き だった 琴子 ちゃん が ね ~
( 男性 ) んだ よ ね こんだら 大きく なって ~
( 男性 ) 直木 さん は たいそう 頭 の いい ―
ムコ はん で お 医者 さん に なる んだ って
うわっ …
さ さ さ … はい 直木 さん も 一言 おねげします
はい はい …
( 琴子 ) ちょっと 伯父さん !
いい から いい から … はいはい …
( ハウリング )
( 鶴三 ) ごめんなさい
はじめ まして 入江 直樹 です
( 歓声 )
想像 を 絶する 大変な 歓迎 ありがとう ございます
( 鶴三 ) どう いたし まして
ただ 直樹 の “ き ” の 字 は 樹木 の “ じゅ ” の 方 でして
( 男性 ) え ?
( 男性 ) しまった …
( 男性 ) 誰 だあ 間違えた の ?
( 男性 ) 調べ とけ よー
もう一つ 言い ます と ―
歓迎 の “ かん ” の 字 も 間違って い ます
( 男性 ) あれ じゃなかった け か
( 男性 ) しまった !
迎 も 一画 多い です
( 男性 ) いや ~ 頭 の いい ムコ さん だ な ~
琴子 ちゃ ! おめ に しちゃ 出来 すぎ な ムコ さん だ な !―
よぐやった よぐやった
( 鶴三 ) それじゃあ 早速 家 さ 連れて いく べ
さあ さあ さあ …
( 重雄 ) 鶴三 さん もう 気持ち だけ で 十分 です から
僕ら だけ で 墓参り 行き ます んで …
なーに 言 っとる 重雄 君
そん だら ごど でけえ したら ―
悦 っちゃん が モッコ さ なって 出て くる で ~
モッコ ?
モッコ てば オバケ の こと だ へ
ハハハ !
ベー !―
さあさ 乗る べ 乗る べ あー 乗る べ 乗る べ ―
さ ~ 乗る べ 乗る べ ~
( 鶴三 ) 東京 から 姪っ子 が ムコ 連れて きて んだ
ほい で うち で 今晩 宴会 やっ から 飲み さ こね か
( 男性 ) 行ぐ 行ぐ
( 男性 ) 行ぐ 行ぐ
お ~ 来い 来い …
お ~ 来い 来い …
もう なんで いつも こう な の よ ウチ の 親戚 は !
し ~! 声 が 大きい よ
だって 恥ずかしい じゃない 入江 君 だって いる のに
何 よ この 車 ! 選挙 でも す ん の !?
それ に なんで ミス 熊代 が 助手席 座って ―
私 達 が …
俺 は もう 結構 慣れた けど
( 重雄 ) すまない ね 直樹 君
いや ~ こいつ の 母親 の 親戚 って いう の が ―
どうも こう お祭り 好き って いう か
派手 好き な 一族 で さあ
私 は 違う から ね !
俺 は どうしても これ が 苦手 で ね …
だから 墓参り は いつも 内緒 で こっそり 来て た んだ が
もし かして お 義父 さん も 昔 こういう 歓迎 を 受けた と か ?
そう ! そう な んだ よ !
佐賀 から 東京 に 出て 母さん と 知り合って 結婚 する こと に なって
初めて 挨拶 に 来た 時 の 衝撃 と 言ったら もう ね …
わかる 気 が し ます
いや ~ その 点 直樹 君 は 立派 だった
俺 なんか あがり まくっ ちゃって 思い出し たく も ない !
いや ~
君 だけ だ よ この 衝撃 を 分かち合える の
直樹 君 ! 君 と 俺 は もはや 同志 だ !
あまり … 分かち合い たく は ない です ね
うん … そうだ ね
( 琴子 ) ついに … ついに バレ て しまった !―
ウチ の 恥ずかしい 親戚 の こと が …―
入江 君 に だけ は 知られ たくなかった のに ―
どうか もう これ 以上 の こと が 起き ません ように …
( 鶴三 達 ) いち に …―
さーん !
( 拍手 )
まあまあ いい から いい から …
( 秀美 ( ひでみ )) よ … よぐ 来た ね 直樹 さん
どうも
( 琴子 ) 久しぶり だ ね 美晴 ( みはる ) ちゃん
ん にゃ 琴子 ねっ ちゃう ち 秀美 だ よ !
え ? そうだ っけ ?