( 千鶴 ) 誰 も 好き で こんな 生き物 に なった わけ じゃ ない わ 。
( 敏夫 ) 片付ける の を 手伝って くれ 。
( 長谷川 ) この世 に 化け物 や 魔法 は 存在 し ない 。
( 千鶴 ) せ ん せ … 。
( 夏野 ) 清水 恵 は 死 ん だ と 思って いる の か ?
( 沙 子 ) 《 昔 まだ 土葬 が 一般 的 だった ころ の お 話 》 →
《 その 女の子 の お うち は とても 裕福 だった 》 →
《 それ は ハイカラ な 洋館 で 何 十 人 も 奉公 人 を 抱える →
とても とても 大き な お うち 》
( 沙 子 ) 《 女の子 は 両親 に 愛さ れ ながら →
何 不自由 なく 育って いった わ 》
( 沙 子 ) 《 でも ある 日 》 →
《 父親 の 友達 が あの 人 を 連れ て き た の … 》
朝 の 光 を 手放し た 花
注が れ ない 雨 を 求め
覚め ない 眠り に つく
誰 か を そっと 呼ぶ 声
闇 の 楽園 は
嘘 か 夢 か
失う の は 身体 と
自分 と いう 心
その 対価 を 差し出し
何 を 得 られる の だ ろ う
この 涙 で 奪え る 程 に
命 は 脆く て 儚く て
全て に 訪れる
終わり を
「 恐怖 」 と 嘆く の か
終演 を 歌う 金 盞花
静か に 咲き誇る
憎しみ も
悲しみ も
その 根 で た くり 寄せ て
終焉 を 歌う 金 盞花
寂し さ を 潤す
注が れ ない 雨 を 求め て
覚め ない 眠り に つく
( 徹 ) 夏野 … 。 俺 は また 人 を 殺し た よ 。
( 徹 ) こう やって 罪 を 重ねて いく 。
( 正 志郎 ) フフッ 。 お 墓参り か ね ?
( 正 志郎 ) そんな こと を し たら むしろ 苦しむ ばかり だ と 思う が 。
あんた に 何 が 分かる !
( 正 志郎 ) うん ? フッ 。 確かに 。
( 徹 ) 制裁 に 来 た の か ?
沙 子 が 呼 ん で いる 。 兼 正 に 行き なさい 。
( 奈緒 ) 《 お 父さん が 死 ん だ 》 →
《 わたし が 殺し た 》
( 辰巳 ) 腐 臭 が する ね 。 →
徳次郎 さん は 起き上がら ない 。
( 奈緒 ) 《 わたし の 実 の 父母 は 酒 に 溺れ 賭け 事 に 溺れ →
詐欺 まがい の 事件 を 起こし て どこ か へ 逃げ て しまった 》 →
《 6 歳 の とき わたし を 残し て 》 →
《 両親 が 欲しかった 》 →
《 温かい 家庭 が 欲しかった 》 →
《 自分 の 居場所 と なる 家 が 欲しかった 》
( 奈緒 ) 《 幹 康 が それ を 与え て くれ た 》 →
《 愛 する 夫 と 息子 》 →
《 わたし は お 母さん と お 父さん を 実の 両親 の よう に 思って い た 》 →
《 だから 呼び寄せ たかった 》
( 奈緒 ) 《 でも 幹 康 も 進 も お 母さん も お 父さん も →
起き上がら なかった … 》
( 奈緒 ) 《 わたし の 起き上がる 性質 は →
あの 実 の 父母 から 受け継 い だ の だ ろ う 》 →
《 あの 悪い 人 たち から 生まれ た 子 だ から ! 》 →
《 優しい みんな は 死に わたし は こんな 生き物 に なった 》 →
《 きっと みんな は 穏やか に 目 を 閉じ た まま →
安穏 と し た どこ か に 集い 安らか に 眠る に 違いない 》
( 奈緒 ) あっ !
ハァ ハァ ハァ … 。
《 わたし は そこ に たどり着け ない 》 →
《 あの とき 桐 敷 正 志郎 に →
訪ね て き て ください と 言った の は わたし 》 →
《 でも あの とき 正 志郎 を 招 い た の は →
淳 ちゃん だって 一緒 な のに … 》 →
《 不公平 だ よ 。 淳 ちゃん だって そう 思う でしょ ? 》
《 不公平 で かわいそう だって →
思って くれる よ ね ? 》
( 徹 ) 《 兼 正 の 住人 から の 呼び出し は 制裁 を 意味 する 》 →
《 中でも 沙 子 から の 呼び出し は 一 番 重い 》 →
《 叱責 と 大きな ペナルティー 》 →
《 最悪 殺さ れる 》
( 足音 )
( 沙 子 ) 座って 。
《 屍 鬼 は 通常 の 食べ物 は 受け付け ない が →
水分 なんか は 取って 取れ ない こと も ない 》
( 沙 子 ) どうぞ 。
( 徹 ) 《 人間 ごっこ だ 》
( 沙 子 ) あなた 結城 夏野 君 を 殺し た こと で →
苦し ん で いる ん です って ?
当たり前 だ ろ う !
フフフ 。 わたし は 人 を 襲う こと が 悪い こと だ と 思って い ない わ 。
どうして だ よ ? これ は 人殺し な ん だ ぞ !
自分 を 責める くらい なら →
自分 を 憎 ん で 殺せ る ほど で なけ れ ば 駄目 よ 。
そう いえ ば 昔 →
本当 に 昔 土葬 が 一般 的 だった ころ →
あなた と 同じ ように 1 人 で 苦しむ 女の子 が い た わ 。 →
その 女の子 は ある 日 目覚め たら 真っ暗 な 棺おけ の 中 に い た の 。
( 悲鳴 )
( 沙 子 ) 女の子 は たくさん 泣 い た し 叫 ん だ わ 。 →
そし たら 人 が 来 て 助け て くれ た の 。 →
そして その 人 を わたし 襲った の 。
( 徹 ) 《 「 わたし 」 ? 》
( 沙 子 ) だって とても おなか が すい て た ん だ もの 。
家 に 戻る と 間もなく わたし は 知ら ない 町 に 送ら れ て →
そこ に あった 蔵 に 押し込め られ た 。
( 沙 子 ) 日 に 一 度 人 が ご飯 を 運 ん で くる 。 →
だから その 人 を 襲って い た 。 →
次 から 次 へ と 顔触れ が 変わった わ 。 →
今 から 思う と 怖い 話 ね 。
きっと 両親 は こんな わたし でも 養って くれ て いた ん だ わ 。
( 沙 子 ) 蔵 の 中 で は →
たくさん の こと を 知った し 学 ん だ わ 。 →
自分 が どういう 生き物 な の かも 理解 し た 。 →
それ で そこ を 逃げ出し た の 。
( 沙 子 ) 親切 な 人 を 犠牲 に し ながら 家 に 戻った わ 。
( 沙 子 ) 家 に は 別 の 人 が 住 ん で い た 。 家族 は 引っ越し て い た の 。 →
だから 捜し た 。
( 沙 子 ) ずっと ずっと 捜し た の 。
( 沙 子 ) そう して いる うち に →
お 母 さま が 生き て いる はず も ない ほど 時間 が たち →
それ でも ずっと ずっと 捜し て →
気付 い たら 妹 だって 死 ん で 当然 な ほど →
時間 が たって しまった わ 。
どうして その 話 を 俺 に ? ( 沙 子 ) さあ … 。
あなた なら 分かって くれ そう な 気 が し た から かしら 。
その 女の子 の 気持ち が 。
( 佐知子 ) 昭 ! ! 何 やって ん の ! 早く 起き なさい ! →
朝食 が 冷める でしょ ! ( 昭 ) は ー い !
( かおり ) いって き ま ー す !
( かおり ) 昭 。 寝癖 。 ( 昭 ) あー ん ?
( 恵 の 鼻歌 )
( 恵 ) 今日 も たくさん 吸った わ ー ! →
控え なきゃ 太っちゃ ー う ! あら ?
( 恵 ) お っ じ さ ー ん !
( 良和 ) 恵 ちゃん ! 何て こと を し て くれ た ん だ !
おじさん の 血 を 吸った こと ?
あなた に わたし を 責める 資格 ある の ?
ここ に いる って こと は おじさん も やった ん でしょ ? →
わたし たち が 起き上がって 最初 に する あれ 。
《 あぁ … あぁ … 。 ん ぐ ! 》
( 恵 ) 弱った 人間 2 ~ 3 人 の 血 を 吸う 儀式 。
ねぇ 殺し た ん でしょ ? →
じゃ ない と 外 に 出し て もらえ ない はず よ !
( 良和 ) あ … あれ は 誰 だった ん だ ?
初心 者 用 に 都会 から 間引 い て き た 人間 よ 。 →
いきなり 村 の 知り合い は 襲え ない でしょ ?
で どう する の ?
だ ー か ー ら ー !
あした から は 自分 で 食事 を し ない と いけない の よ 。
( 良和 ) えっ ! ?
家族 が いい と 思う わ !
おじさん が 起き上がった ん だ も の 血縁 は 起き上がる 確率 が 高い わ 。
1 人 じゃ 寂しい でしょ ?
君 は 何て こと を !
おじさん が やら なく て も ほか の 誰 か が 襲う の よ 。
君 は 家族 を … ! ?
冗談 じゃ ない わ ! !
あんな 人 たち ここ に 来 て ほしく ない ! →
ともかく あした また 声 掛ける わ ね !
( 正雄 ) 女 って 怖 え … 。
( 物音 )
《 自分 の 家 。 家族 たち の 住まう 場所 》 →
《 帰って き た よ 。 ただいま 》 →
《 よくぞ 戻った と 迎え入れ て おくれ 》
( 良和 ) これ が 閉ざさ れ て いる と いう こと か 。
もう 家族 の 一員 で は ない わたし は →
招待 さ れ ない かぎり 入れ ない の だ 。
( ラブ の 吠え 声 )
ラブ 。 お前 も … ! ( ラブ の 吠え 声 )
( 物音 ) ( ラブ の 吠え 声 )
( ラブ の 吠え 声 )
( 佐知子 ) ラブ ! 何 の 騒ぎ な の ? ( ラブ の 吠え 声 )
( ラブ の 吠え 声 )
ご 近所 の 迷惑 でしょ やめ なさい ! ( ラブ の 吠え 声 )
( 良和 ) 佐知子 。 ( ラブ の 吠え 声 )
わたし だ よ 。
ひ ぃ ー ! ! で … 出 たっ ! !
あぁ ぁ … 。 ( 良和 ) どう し た ? わたし だ よ 。
あ … あんた 何 迷って き た の ! ( 良和 ) 佐知子 … 。
( 佐知子 ) ここ は 戻って くる 場所 じゃ ない よ !
あんた 死 ん だ の ! あっ ち 行き なさい ! ! 帰って くる な !
あっ ! あぁ … ! あぁ … ! →
あっ ! あぁ … ! あぁ … ! あぁ … ! →
あぁ ぁぁ ぁ ! あぁ … ! あぁ … !
( ラブ の 吠え 声 )
な … 何で 帰って き た の … ! !
あぁ ! ! →
あぁ ぁぁ !
た … !
( ラブ の 遠吠え )
フフ ~ ン !
昭 。 起き て ! もう 9 時 よ 。 遅刻 遅刻 !
( 昭 ) 嘘 ? 何で 母ちゃん 起こし て くれ なかった の ?
( あくび )
何 だ よ もう ! いっ つ も 起きろ 起きろ うるさい くせ に … 。
お 母さん 。 もう 9 時 だ よ 。 学校 行く ね 。
そう … 。
( かおり ) 昭 。 ゆうべ ラブ が 吠え て た 。
( 昭 ) あん ?
( かおり ) どう しよ う … 。
恵 だ !
あいつ ら 俺 たち を 皆殺し に する つもり な ん だ 。
恵 ちゃん … 。 どうして … 。
俺 溝辺 町 に 行って くる 。 ( かおり ) えっ 。 何 し に ?
また 八幡 さま で お守り と か を 買う ん だ よ 。
でも 学校 は ? ( 昭 ) 学校 なんか 関係ない だ ろ ! →
それ に 俺 たち は 父親 に 死な れ た かわいそう な 子供 な ん だ よ 。 →
大 目 に 見 て くれる さ 。 →
かおり は 物置 に ある 角材 で くい を 作って ろ !
( かおり ) な … 何 よ ! 偉 そう に 。
( 昭 ) 兄ちゃん を 殺さ れ 父ちゃん を 殺さ れ →
この上 母ちゃん まで … 。
こう なりゃ 徹底 抗戦 だ ! !
( 武子 ) あれ に は びっくり し た ね 。 ( 笈 太郎 ) ああ 。
( 弥栄子 ) おや 。 田中 さん と この 息子 じゃ ない かい ? →
こんな 時間 に どこ 行く ん だい ? ( 昭 ) 母ちゃん が 具合 悪く て →
出 ら ん ない から さ 用事 を 頼ま れ て 。
( 武子 ) おや ま ぁ 。 お 父さん が 亡くなった ばかり な のに 大変 だ ね 。
( 笈 太郎 ) 金物 屋 の 嫁 さん だって 逝 っち まっ て なぁ 。
( 笑い声 )
何 笑って ん だ よ ! ( 笈 太郎 ) あぁ ?
こんなに ば たば た 死 ん で ん のに さ !
どうして 大人 は 笑って 何も し ない ん だ ! ?
どうして 放っておく ん だ ! !
な … 何 を … 。 ( 弥栄子 ) 笈 太郎 さん 。
すまない ねぇ 。 わたし たち も →
何も 考え て ない わけ じゃ ない ん だ けど ね 。 →
尾崎 の 先生 に も どうにも でき ない ん だ ろ う ?
わし ら だって なぁ 村 全部 が 少しずつ 変 に なって →
どう し たら いい やら … 。 →
あちこち 家 が 空 に なった か と 思う と →
いつの間にか 人 が 戻って たり 。
そう だ ね 。 どう し たら いい の か … 。 ( 昭 ) もう いい よ !
( 武子 ) あぁ そう ! 郁美 さん とこ も !
( 弥栄子 ) 親子 で い なく なった らしい ね 。
( 武子 ) それ が さ 最近 夜 に なる と 誰 か いる らしい ん だ よ 。
戻った の かい ? ( 武子 ) いい や 。 それ が →
死 ん だ 前田 の 巌 さん に 見え た って 。
( 笈 太郎 ) 武 さん 。 何 バカ な こと を !
それ どこ ?
( 昭 ) かおり ! くい でき た ?
( かおり ) な … 何 よ ! まだ 2 本 しか でき て な いわ よ 。
( 昭 ) それ は ? ( かおり ) これ で 2 本 。
( 昭 ) もらって く ! ( かおり ) 昭 !
《 俺 は やる よ 兄ちゃん ! もう 大人 に は 頼ら ない ! 》
( 弥栄子 ) あれ 何て いう ん だ ? 紙切れ の は 。
( 笈 太郎 ) そりゃ 紙 吹雪 だ ろ 。 ( 弥栄子 ) アハハ 。 そう だった 。
( 武子 ) 困った ねぇ 。
( 神楽 )
( 敏夫 ) 霜月 神楽 の 練習 が 始まった よう だ 。
悠長 な こと だ 。
あと しばらく で この 村 の 主人 は 人間 から 屍 鬼 に 移る こと に なる 。
この 状況 から 逆転 する チャンス は おそらく 一 度 。
やつ ら が 勝利 を 確信 する 寸前 か 。
耐え て 待つ 必要 が ある 。 たとえ どれほど 犠牲 が 進 ん で も 。
言 っと く が 俺 は 屍 鬼 を 滅ぼす つもり だ 。
説得 や 交渉 を する つもり は ない 。
もちろん だ 。 屍 鬼 は 全て 滅ぼす 。
そして 俺 も だ 。
( 昭 ) 大丈夫 だ 。 やつ ら は 夜 に しか 出 て こ ない 。 →
時間 は じゅうぶん に ある 。
《 内側 から 板 が 張ら れ てる 》 →
《 中 に 光 を 入れ ない よう に し て いる ん だ 》
兄ちゃん … 。
う ぅ ぅ ! →
くそ ー ! あぁ ! あぁ !
ハァ ハァ ハァ … 。
( 昭 ) 《 やはり 空き家 って 感じ が し ない 》
《 だけど … 》
( 昭 ) 《 誰 も い ない ? 》 →
《 板 や 石こう の 袋 が 置 い て ある ほか は 変 な 所 は … 》
カーテン ?
《 押し入れ … 》
あっ ! !
( 昭 ) 《 前田 の じいさん だ 》
冷たい 。 →
み … 見つけ た ぞ 。
やっつけ て やる から な 全員 !
こいつ ら は 人殺し だ 。
兄ちゃん も 父ちゃん も こい つら が 殺し た 。
だから 俺 だって ひどい こと だ なんて 思わ ない から な !
やる ん だ ! !
《 うん … 。 あれ ? 》
ん ー ! ん っ ! ん ー !
ん ー っ ! ! ん っ ! ん っ !
( 昭 の 悲鳴 )
闇 に 紛れ て
息 を 殺す
闇 を まとって
ふっと 微笑む
気のせい さ
お前 など 誰 も 知る はず ない
月 だけ が
見つめ て いる
ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う
ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て
ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う
ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て