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火星の記憶 (The Memory of Mars) by Raymond F. Jones, パート18

パート18

彼 は 時間 の 感覚 を 失った 。 宇宙 服 の クロノメーター は 動いて いない 。 もう 何 時間 も 経過 した ような 気 が した とき 、 身体 の 下 の 船体 に かすかな 衝撃 が 走り抜ける の を 感じた 。 彼 は つかの間 、 心 が 高揚 した 。 船体 が 分離 した のだ 。 彼 の 捜索 は ―― かりに あった と して も ―― 断念 さ れた のだ 。

彼 は のろのろ と 少しずつ 船体 に そって 進み 、 黒い 宇宙 船 を 望み 見た 。 相変わらず 数 百 ヤード 離れた ところ に 停止 して いる 。 その 光景 は 気分 を めいら せた 。 もう 二 隻 の 船 が いっしょに いる べき 理由 は ない 。 マーシャン ・ プリンセス 号 は 地球 に 向けて 方向 転換 しなければ なら ない 。 その とき 彼 は 目 の 片隅 で それ を とらえた 。 なに か が 動いて いる 。 閃光 が 走った 。 小さい 月 の ように それ は 遠く 離れた 船体 の 湾曲 部分 を じりじり と 登って くる 。 ふと その 数 が 増えた 。 ちらちら と 輝く 衛星 の 集団 。

メル は なにも 考え ず 噴射 装置 を 押し 、 宇宙 空間 に 飛び出した 。

最初に 飛び出した とき の 恐怖 は 、 捜索 者 たち の 存在 に よって 何 倍 に も ふくれあがって いた 。 マーシャン ・ プリンセス 号 の 乗務 員 だ な 、 と 彼 は 思った 。 たぶん 宇宙 服 が なくなって いた ので 、 ばれて しまった のだ 。

がむしゃらに 逃げ出した 彼 は 、 果てし の な さ と 、 暗黒 と 、 孤独 に 直面 した 。 太陽 は 丸く 、 熱く 燃えて いた が 、 なにもの を も 照らし出す こと が なかった 。 心 が それ 自身 と まわり の 宇宙 を 見分ける すべ は 、 ことごとく 失わ れた 。 彼 は 起源 も 目的 も 向かう ところ も なく 、 ただ 宇宙 に 浮いて いる 原始 的な 単 細胞 の ような もの だった 。

かすかな 記憶 だけ が 濃密な 恐怖 を 貫いて 一筋 の 理性 の 光り を もたらした 。 アリス 。 アリス の ため に 生き延び なければ なら ない 。 アリス の ところ に 戻る 方法 、 地球 に 戻る 方法 を 見つけ なければ なら ない 。

彼 は マーシャン ・ プリンセス 号 の ほう を 、 船体 に へばりついて いる 捜索 者 たち の ほう を 見て 、 音 の ない 暗闇 の 中 で 悲鳴 を あげた 。 捜索 者 たち は 船体 を 離れ 、 彼 に むかって 宇宙 空間 を 進んで きて いた 。 その スピード は 彼 の スピード を はるかに しのいで いる 。 逃げよう と して も むだ だ ―― マーシャン ・ プリンセス 号 から 逃げだそう と して も むだだ 。 生き延びる チャンス 、 あるいは 成功 する チャンス は 船 に 乗って 地球 に 行く こと に しか ない 。 大きな 曲線 を 描いて 彼 は 船 の ほう に 戻って いった 。 すぐに 捜索 者 が 包囲 する ように 近づき 、 衝突 針路 上 で 彼 と 出会った 。

その とき 捜索 者 たち の 正体 を 知った 。 予想 と 違って 宇宙 服 を 着た 乗務 員 たち で は なかった 。 それどころか 、 その 物体 二 機 は 小型の 宇宙 船 の ように 見えた 。 いく つ も の 光り の 筋 が 前方 の 空間 を つらぬいて いる 。 彼 は レーダー と 赤外線 に よる 探知 も 行って いる ので は ない か と 思った 。

マーシャン ・ プリンセス 号 から 来た ので は ない な 、 と 彼 は 心 の 底 で 思った 。 乗務 員 が 入って いる わけで も ない 。 ある 種 の 飛行 ロボット で 、 あの 巨大な 黒い 船 から 来た のだ 。

彼 は 探照灯 の 光り が 身体 に あたる の を 感じ 、 死 を もたらす 熱線 か 殺人 光線 が かっと 噴き出す の を 待った 。 しかし 次に 起こった こと は 予想 も し ない こと だった 。

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パート18 ぱーと 部分 part Part 18. 第 18 部分

彼 は 時間 の 感覚 を 失った 。 かれ||じかん||かんかく||うしなった ||||||失去 ||||sense|| He lost his sense of time. 宇宙 服 の クロノメーター は 動いて いない 。 うちゅう|ふく||||うごいて| |||chronometer||| |||chronometer||| The spacesuit chronometer is not moving. 宇宙服的计时器没有在运转。 もう 何 時間 も 経過 した ような 気 が した とき 、 身体 の 下 の 船体 に かすかな 衝撃 が 走り抜ける の を 感じた 。 |なん|じかん||けいか|||き||||からだ||した||せんたい|||しょうげき||はしりぬける|||かんじた ||||经过|||||||||||船体||微弱的|冲击||穿过||| |what|time||passed|||||||||||ship's hull||slight|impact||raced||| ||||||||||||||||||||走り抜ける||| When I felt like hours had passed, I felt a faint shock running through the hull under my body. 当我感觉已经过去了好几个小时的时候,身体下方的船体传来一阵微弱的冲击。 彼 は つかの間 、 心 が 高揚 した 。 かれ||つかのま|こころ||こうよう| ||片刻|||| ||brief moment|||elated| ||一瞬|||| He was uplifted for a short time. 他短暂地感到心潮澎湃。 船体 が 分離 した のだ 。 せんたい||ぶんり|| ||分离|| hull||separated|| The hull was separated. 彼 の 捜索 は ―― かりに あった と して も ―― 断念 さ れた のだ 。 かれ||そうさく|||||||だんねん||| ||||假如|||||放弃||| ||search||even if|||||abandoned||| ||||仮に|||||中止||| His search-even if it happened-was abandoned. Его поиски, даже если они и случились, были прекращены. 他的搜寻——即使确实存在——也已经放弃了。

彼 は のろのろ と 少しずつ 船体 に そって 進み 、 黒い 宇宙 船 を 望み 見た 。 かれ||||すこしずつ|せんたい|||すすみ|くろい|うちゅう|せん||のぞみ|みた |||||||沿着||||||| ||slowly|||hull||along|advanced|||||wished| He slowly followed the hull, hoping for a black spaceship. 他缓慢地沿着船体一点一点向前,望着那艘黑色的宇宙船。 相変わらず 数 百 ヤード 離れた ところ に 停止 して いる 。 あいかわらず|すう|ひゃく|やーど|はなれた|||ていし|| as usual|several|hundred|yards|away|||stopped|| |||ヤード|||||| It still stops hundreds of yards away. Todavía se detiene a cientos de metros de distancia. 依然停留在几百码远的地方。 その 光景 は 気分 を めいら せた 。 |こうけい||きぶん||| that|scene||mood||to weigh down| |||||高揚させ| The scene made me feel good. Сцена заставила меня почувствовать себя хорошо. もう 二 隻 の 船 が いっしょに いる べき 理由 は ない 。 |ふた|せき||せん|||||りゆう|| ||counter||||together|||reason|| There is no reason why two more ships should be together. Нет причин, по которым еще два корабля должны быть вместе. マーシャン ・ プリンセス 号 は 地球 に 向けて 方向 転換 しなければ なら ない 。 |ぷりんせす|ごう||ちきゅう||むけて|ほうこう|てんかん|し なければ|| |||(topic marker)|earth||toward|direction|direction change||| The Marshall Princess must turn around to face Earth. その とき 彼 は 目 の 片隅 で それ を とらえた 。 ||かれ||め||かたすみ|||| ||||||corner||||caught that||||||||||捉えた At that time, he caught it out of the corner of his eye. なに か が 動いて いる 。 |||うごいて| |||moving| Something is moving. 閃光 が 走った 。 せんこう||はしった flash of light|(subject marker)|ran flash|| A flash of light ran. 小さい 月 の ように それ は 遠く 離れた 船体 の 湾曲 部分 を じりじり と 登って くる 。 ちいさい|つき|||||とおく|はなれた|せんたい||わんきょく|ぶぶん||||のぼって| |moon|||||far||||curve|part||creeping||climbing| |||||||||||||じりじり||| Like a small moon, it climbs up the curved parts of a distant hull. ふと その 数 が 増えた 。 ||すう||ふえた ||number|| Suddenly the number increased. ちらちら と 輝く 衛星 の 集団 。 ||かがやく|えいせい||しゅうだん twinkling||shining|satellites||group ちらちら||||| A group of shining satellites.

メル は なにも 考え ず 噴射 装置 を 押し 、 宇宙 空間 に 飛び出した 。 |||かんがえ||ふんしゃ|そうち||おし|うちゅう|くうかん||とびだした |||||firing|device||push||||rushed out Without thinking, Mel hit the jet propulsion system and flew into space.

最初に 飛び出した とき の 恐怖 は 、 捜索 者 たち の 存在 に よって 何 倍 に も ふくれあがって いた 。 さいしょに|とびだした|||きょうふ||そうさく|もの|||そんざい|||なん|ばい|||| |rushed out|||fear||search||||presence|||many|times|||swelled| |||||||||||||||||膨れ上が| The horror of the first jump was many times greater due to the presence of the searchers. Ужас первого прыжка был в разы больше из-за присутствия поисковиков. マーシャン ・ プリンセス 号 の 乗務 員 だ な 、 と 彼 は 思った 。 |ぷりんせす|ごう||じょうむ|いん||||かれ||おもった ||||crew||||||| He thought to himself, "It must be the crew of the "Marchant Princess". たぶん 宇宙 服 が なくなって いた ので 、 ばれて しまった のだ 。 |うちゅう|ふく||||||| |||||||was found|| |||||||ばれる|| Perhaps they were discovered because their space suits were missing.

がむしゃらに 逃げ出した 彼 は 、 果てし の な さ と 、 暗黒 と 、 孤独 に 直面 した 。 |にげだした|かれ||はてし|||||あんこく||こどく||ちょくめん| recklessly|ran away|||endless|||ness||dark||loneliness||confront| ||||果てしな|||||darkness||||| As he desperately ran away, he was confronted with endlessness, darkness, and loneliness. Он в спешке убежал и столкнулся с бесконечностью, тьмой и одиночеством. 太陽 は 丸く 、 熱く 燃えて いた が 、 なにもの を も 照らし出す こと が なかった 。 たいよう||まるく|あつく|もえて|||なにも の|||てらしだす||| sun||round|hot|burning|||no one|||to illuminate|||not The sun was round and burning hot, but it did not illuminate anything. Солнце было круглым и обжигающим, но ничего не освещало. 心 が それ 自身 と まわり の 宇宙 を 見分ける すべ は 、 ことごとく 失わ れた 。 こころ|||じしん||||うちゅう||みわける||||うしなわ| |||itself||||||distinguish|means||completely|lost| ||||||||||手段||すべて|| All the way the mind distinguishes itself from the universe around it has been lost. Путь, которым разум отличается от окружающей его вселенной, был потерян. 彼 は 起源 も 目的 も 向かう ところ も なく 、 ただ 宇宙 に 浮いて いる 原始 的な 単 細胞 の ような もの だった 。 かれ||きげん||もくてき||むかう|||||うちゅう||ういて||げんし|てきな|ひとえ|さいぼう|||| ||origin||||heading|||||||floating||primitive||single|cell|||| He had no origin, no purpose, no destination, just like a primitive single cell floating in space.

かすかな 記憶 だけ が 濃密な 恐怖 を 貫いて 一筋 の 理性 の 光り を もたらした 。 |きおく|||のうみつな|きょうふ||つらぬいて|ひとすじ||りせい||ひかり|| faint|memory|||intense|intense fear||piercing|ray||reason||||brought Only the faintest of memories brought a ray of reason through the dense fear. アリス 。 Alice . アリス の ため に 生き延び なければ なら ない 。 ||||いきのび||| ||||to survive||| We must survive for Alice. アリス の ところ に 戻る 方法 、 地球 に 戻る 方法 を 見つけ なければ なら ない 。 ||||もどる|ほうほう|ちきゅう||もどる|ほうほう||みつけ||| ||||||earth|||||must find||| We must find a way to get back to Alice, to Earth.

彼 は マーシャン ・ プリンセス 号 の ほう を 、 船体 に へばりついて いる 捜索 者 たち の ほう を 見て 、 音 の ない 暗闇 の 中 で 悲鳴 を あげた 。 かれ|||ぷりんせす|ごう||||せんたい||||そうさく|もの|||||みて|おと|||くらやみ||なか||ひめい|| ||||||||ship's hull||clinging||search|||||||sound|||darkness||||scream|| ||||||||||くっついて|||||||||||||||||| He looked at the Marshall Princess, looking at the searchers clinging to the hull, and screamed in the silent darkness. 捜索 者 たち は 船体 を 離れ 、 彼 に むかって 宇宙 空間 を 進んで きて いた 。 そうさく|もの|||せんたい||はなれ|かれ|||うちゅう|くうかん||すすんで|| search|||||||||toward|||||| |||||||||向かって|||||| The searchers had left the ship and were moving toward him in space. その スピード は 彼 の スピード を はるかに しのいで いる 。 |すぴーど||かれ||すぴーど|||| |||||speed||by far|exceeded| ||||||||上回って| His speed is far superior to his own. 逃げよう と して も むだ だ ―― マーシャン ・ プリンセス 号 から 逃げだそう と して も むだだ 。 にげよう|||||||ぷりんせす|ごう||にげだそう|||| let's escape||||useless||||||try to escape||||useless No wastes trying to escape -- No wastes trying to escape from the Marsh Princess. 生き延びる チャンス 、 あるいは 成功 する チャンス は 船 に 乗って 地球 に 行く こと に しか ない 。 いきのびる|ちゃんす||せいこう||ちゃんす||せん||のって|ちきゅう||いく|||| survive|||success||||||||||||| The only chance for survival or success is to get on a ship and go to Earth. 大きな 曲線 を 描いて 彼 は 船 の ほう に 戻って いった 。 おおきな|きょくせん||えがいて|かれ||せん||||もどって| |curve||drew|||||||| He returned to the ship in a large curve. すぐに 捜索 者 が 包囲 する ように 近づき 、 衝突 針路 上 で 彼 と 出会った 。 |そうさく|もの||ほうい|||ちかづき|しょうとつ|しんろ|うえ||かれ||であった |search||(subject marker)|surround||||collision|course|||||met ||||||||衝突の進|衝突の進||||| Searchers soon approached to surround him and met him on the collision course. Сразу же поисковик подошел к осаде и встретил его на встречных курсах.

その とき 捜索 者 たち の 正体 を 知った 。 ||そうさく|もの|||しょうたい||しった ||search||||true identity|| It was then that he learned the identity of the searchers. 予想 と 違って 宇宙 服 を 着た 乗務 員 たち で は なかった 。 よそう||ちがって|うちゅう|ふく||きた|じょうむ|いん|||| expectation||different|||||||||| Unexpectedly, the crew members were not dressed in spacesuits. それどころか 、 その 物体 二 機 は 小型の 宇宙 船 の ように 見えた 。 ||ぶったい|ふた|き||こがたの|うちゅう|せん|||みえた far from it||object|two|two||small||||| On the contrary, the two objects looked like small spacecraft. いく つ も の 光り の 筋 が 前方 の 空間 を つらぬいて いる 。 ||||ひかり||すじ||ぜんぽう||くうかん||| ||||||line|(subject marker)|front||space||piercing| ||||||||||||貫いて| Several streaks of light penetrate the space ahead. 彼 は レーダー と 赤外線 に よる 探知 も 行って いる ので は ない か と 思った 。 かれ||れーだー||せきがいせん|||たんち||おこなって|||||||おもった ||radar||infrared|||detection|also|going||||||| I thought he might also be using radar and infrared detection.

マーシャン ・ プリンセス 号 から 来た ので は ない な 、 と 彼 は 心 の 底 で 思った 。 |ぷりんせす|ごう||きた||||||かれ||こころ||そこ||おもった ||||||||||||||heart|| Deep in his heart, he knew it could not have come from the "Marchant Princess. 乗務 員 が 入って いる わけで も ない 。 じょうむ|いん||はいって|||| There is no crew on board. ある 種 の 飛行 ロボット で 、 あの 巨大な 黒い 船 から 来た のだ 。 |しゅ||ひこう|ろぼっと|||きょだいな|くろい|せん||きた| |kind||flight|robot|||gigantic||||| It was some kind of flying robot, coming from that huge black ship.

彼 は 探照灯 の 光り が 身体 に あたる の を 感じ 、 死 を もたらす 熱線 か 殺人 光線 が かっと 噴き出す の を 待った 。 かれ||さが あきら とう||ひかり||からだ|||||かんじ|し|||ねっせん||さつじん|こうせん||か っと|ふきだす|||まった ||searchlight||||||hits||||||bring|heat ray||murdering|light||suddenly|spurted|||stopped ||searchlight||||||||||||||||||勢いよく|||| He felt the glow of the searchlight hit his body and waited for the heat rays or killer rays that would bring about his death to erupt. しかし 次に 起こった こと は 予想 も し ない こと だった 。 |つぎに|おこった|||よそう||||| ||happened|||expected||||| But what happened next was unexpected.