三 姉妹 探偵 団 01 chapter 12 (2)
じゃ ね 。
珠美 」
と 、 走って 行く 。
珠美 は 、 しばし 、 呆然と 突っ立って いた 。
そう だった !
どうして 気 が 付か なかったろう ?
体育 の 時間 に は 、 ロッカー の 鍵 を 担任 教師 の 机 に 入れて おく のだ 。
キーホルダー から 外す の は 面倒な ので 、 つい そのまま 放り込む 。 ── 全部 の 鍵 が 、 そこ に ついて いる わけである 。
「 安東 先生 ……」
どこ へ 行った のだろう ?
珠美 は 廊下 を 駆け出した 。
珠美 は 、 まず 滅多に 走る と いう こと が ない 。
エネルギー の 浪費 は 極力 避け たい と 思って いる のである 。
しかし 、 今 は それ どころ で は なかった 。
珠美 は 校門 へ 向 って 突っ走った 。
しかし 、 もう 安東 の 姿 は どこ に も ない 。 職員 室 に 戻る と 、 事務 の 女性 を 捕まえた 。
「 ねえ 、 さっき の …… さっき の ……」
「 どうした の ?
「 息 が 切れて ……。
さっき 、 ほら …… 安東 先生 が …… 電話 に 出て た …… でしょ 」
「 ええ 」
「 あの 電話 、 つないだ の は ?
「 私 よ 」
「 相手 は ?
「 知ら ない わ 、 そんな こと 」
「 どんな 人 、 男 ?
女 ? 「 そう ね ……。
女 よ 。 若い 感じ の 声 ね 、 ずいぶん おとなしい 」
おとなしい 声 。
若い 女 。 ── 安東 の 妻 は いかにも 教師 らしい はっきり した 声 を して いる 。 と いう こと は ……。
「 大変だ !
珠美 は 外 線 用 の 電話 へ 飛びついた 。
そう なる と 、 さて 、 どこ へ 行った のだろう 。
いくら 、 外 へ 出 た がら ない 綾子 でも 、 行く先 を 当てる ところ まで 、 夕 里子 は 知り尽くして い ない 。
仕方ない 。
一旦 、 片瀬 家 へ 帰ろう 、 と 思った 。
国友 と は 、 この ビル の 前 で 別れた 。
そして 、 夕 里子 は 、 あの 水口 淳子 の 母親 の 言葉 を 、 国友 へ 伝え なかった のである 。
なぜ ?
── 本当に 、 なぜ だろう ?
夕 里子 自身 に も 、 よく 分 って い ない 。
おそらく 、 綾子 の こと を 心配 する から だろう 。
しかし 、 本当に 心配 なら 、 国友 へ 話 を して 、 安東 の こと を 調べて もらえば いい 。 だが 、 夕 里子 は そう し なかった のである 。
綾子 を 傷つけ たく ない 、 と いう 思い か 。
それとも 、 あくまでも 犯人 は 自分 で 見つける 、 と いう 、 探偵 気取り の せい な の か 。
夕 里子 自身 に も 、 よく 分 ら なかった 。
表 に 出た 夕 里子 は 、 急に 、 ひとりぼっち に なった ような 、 寂し さ と 、 無力 感 に 捉え られた 。
ふと 、 野上 幸代 に 会い たく なった 。
そこ から 、 父 の 勤めて いた K 建設 まで 、 遠く は ない 。
夕 里子 は 行って みる こと に した 。
もう 一 時 半 だ 。
昼 休み も 終って いる 。
地下鉄 で 、 K 建設 の 下 に 出た の は 、 一 時 四十 分 だった 。
あの 地下 街 を 通って も もう 一向に 怖く ない 。
K 建設 に 近い 出口 へ 向 って 歩いて いる と 、
「 お嬢さん 」
と 、 呼びかけ られた 。
振り向く と 、 穏やかな 笑顔 が あった 。
「 まあ 、 王様 」
あの 、 浮 浪 者 たち の リーダー が 、 相 変ら ず の 服装 で 立って いる 。
「 どこ へ 行く のです か ?
「 いえ ……。
別に どこ と いう こと も あり ませ ん 」
「 それなのに 、 わざわざ ここ へ ?
「 ただ …… 何となく 誰 か に 会い たくて 。
王様 に 会えて 、 何だか ホッと し ました わ 」
「 あちら に 来 ませ ん か 。
新しい 仲間 が いる 。 紹介 し ましょう 」
と 王様 は 言った 。
夕 里子 は 、 ちょっと 迷った が 、
「 ええ 、 いい です わ 」
すぐに 肯 いて 、 王様 に ついて 歩き 出した 。
はた目 に は どう 見える かしら 、 と 思った が 、 むしろ それ を 面白がる の が 、 夕 里子 の 性格 である 。
あの 休憩 所 の 一角 に 、 何 人 か の 浮 浪 者 たち が 集まって いた 。
「 王様 の お 越し だ 」
「 ああ 、 構わ ない 、 続けて くれ 。
── 酒 も いい が 、 体 を 壊す まで 飲む な よ 」
と 王様 は 言って 、「 新 入り は どうした ?
と 訊 いた 。
「 便所 です 。
今 、 戻って 来 ます 」
「 そう か 。
── お嬢さん は そこ の ベンチ へ かけて 下さい 」
「 皆さん は ?
「 私 たち は 、 人通り が なくなって から 座り ます 。
普通の 人々 の 邪魔 を して は いけない から です よ 」
「 まあ 、 難しい んです ね 」
「 本来 は その はずです 。
どこ に も 属さ ず に 生きて 行こう と いう のです から 。 しかし 、 それ を 続ける こと は 困難です 。 ── ああ 、 来 ました 。 新しい 仲間 です よ 」
振り向いた 夕 里子 は 、 思わず 、 目 を 見張った 。
「 まあ !
課長 さん ! 少し 赤ら顔 で 、 愉 し げ に 鼻歌 を 歌い ながら やって 来た の は 、 植松 であった 。