Section 009 - Kokoro - Soseki Project
section|kokoro|soseki|project
Section 009 - Kokoro - Soseki Project
Sekcja 009 - Projekt Kokoro - Soseki
Bölüm 009 - Kokoro - Soseki Projesi
私 は 墓地 の 手前 に ある 苗 畠 の 左側 から は いって 、 両方 に 楓 を 植え付けた 広い 道 を 奥 の 方 へ 進んで 行った 。
わたくし||ぼち||てまえ|||なえ|はた||ひだりがわ||||りょうほう||かえで||うえつけた|ひろい|どう||おく||かた||すすんで|おこなった
I entered from the left side of the sapling ridge in front of the graveyard and proceeded to the back on a wide road with maple plants on both sides.
すると その 端 れ に 見える 茶店 の 中 から 先生 らしい 人 が ふい と 出て 来た 。
||はし|||みえる|ちゃみせ||なか||せんせい||じん||||でて|きた
私 は その 人 の 眼鏡 の 縁 が 日 に 光る まで 近く 寄って 行った 。
わたくし|||じん||めがね||えん||ひ||ひかる||ちかく|よって|おこなった
そうして 出し抜けに 「 先生 」 と 大きな 声 を 掛けた 。
|だしぬけに|せんせい||おおきな|こえ||かけた
先生 は 突然 立ち 留まって 私 の 顔 を 見た 。
せんせい||とつぜん|たち|とどまって|わたくし||かお||みた
「 どうして ……、 どうして ……」
先生 は 同じ 言葉 を 二 遍 繰り返した 。
せんせい||おなじ|ことば||ふた|へん|くりかえした
The teacher repeated the same words twice.
その 言葉 は 森 閑 と した 昼 の 中 に 異様な 調子 を もって 繰り返さ れた 。
|ことば||しげる|ひま|||ひる||なか||いような|ちょうし|||くりかえさ|
The words were repeated in a strange tone during the quiet daytime.
私 は 急に 何とも 応えられ なく なった 。
わたくし||きゅうに|なんとも|こたえ られ||
I suddenly couldn't answer anything.
「 私 の 後 を 跟 け て 来た のです か 。
わたくし||あと||こん|||きた||
"Did you come after me?
どうして ……」
先生 の 態度 は むしろ 落ち付いて いた 。
せんせい||たいど|||おちついて|
声 は むしろ 沈んで いた 。
こえ|||しずんで|
けれども その 表情 の 中 に は 判然 いえ ない ような 一種 の 曇 り が あった 。
||ひょうじょう||なか|||はんぜん||||いっしゅ||くもり|||
私 は 私 が どうして ここ へ 来た か を 先生 に 話した 。
わたくし||わたくし|||||きた|||せんせい||はなした
「 誰 の 墓 へ 参り に 行った か 、 妻 が その 人 の 名 を いいました か 」 「 いいえ 、 そんな 事 は 何も おっしゃいません 」 「 そう です か 。
だれ||はか||まいり||おこなった||つま|||じん||な||いい ました||||こと||なにも|おっしゃい ませ ん|||
"Who went to the grave, did your wife say that person's name?" "No, you didn't say anything like that." "Yes.
―― そう 、 それ は いう はず が ありません ね 、 始めて 会った あなた に 。
||||||あり ませ ん||はじめて|あった||
――Yes, that cannot be said, to you who met for the first time.
いう 必要 が ない んだ から 」
|ひつよう||||
There is no need to say "
先生 は ようやく 得心 した らしい 様子 であった 。
せんせい|||とくしん|||ようす|
The teacher seemed to be finally enthusiastic.
しかし 私 に は その 意味 が まるで 解ら なかった 。
|わたくし||||いみ|||わから|
先生 と 私 は 通り へ 出よう と して 墓 の 間 を 抜けた 。
せんせい||わたくし||とおり||でよう|||はか||あいだ||ぬけた
The teacher and I slipped between the tombs trying to get out on the street.
依 撒 伯拉 何 々 の 墓 だの 、 神 僕 ロギン の 墓 だの と いう 傍 に 、 一切 衆生 悉有 仏 生 と 書いた 塔 婆 など が 建てて あった 。
よ|ま|はくらつ|なん|||はか||かみ|ぼく|||はか||||そば||いっさい|しゅじょう|しつあり|ふつ|せい||かいた|とう|ばあ|||たてて|
Beside the tombs of the gods and servants Rogin, there was a tower and a grandmother who wrote that they were all sentient beings and Buddhas.
全権 公使 何 々 と いう の も あった 。
ぜんけん|こうし|なん||||||
There were also envoys with full power.
私 は 安 得 烈 と 彫り付けた 小さい 墓 の 前 で 、「 これ は 何と 読む んでしょう 」 と 先生 に 聞いた 。
わたくし||やす|とく|れつ||ほりつけた|ちいさい|はか||ぜん||||なんと|よむ|||せんせい||きいた
「 アンドレ と でも 読ま せる つもりでしょう ね 」 と いって 先生 は 苦笑 した 。
|||よま||||||せんせい||くしょう|
The teacher smiled bitterly, saying, "You're going to read it with Andre."