ウグイス 長者 (ちょうじゃ)
うぐいす|ちょうじゃ|
bush warbler||
Uguisu Chouja (Häuptling der Uguisu-Häuptlinge)
Uguisu Chouja
Chouja(日本莺)
ウグイス 長者 ( ちょうじゃ )
うぐいす|ちょうじゃ|
Nightingale Long (Chouja)
むかし むかし の 、 ある 寒い 冬 の 事 です 。
||||さむい|ふゆ||こと|
Once upon a time, on a cold winter's day.
お 茶 売り の 男 が 山道 を 歩いて いる と 、 いつの間にか 竹やぶ の 中 に い ました 。
|ちゃ|うり||おとこ||やまみち||あるいて|||いつのまにか|たけやぶ||なか|||
As a tea seller was walking along the mountain path, he found himself in a bamboo grove before he knew it.
「 どうやら 、 道 に 迷った らしい 」 男 が 薄暗い 竹やぶ を さまよって いる と 、 ふと 大きな 屋敷 の 前 に 出 ました 。
|どう||まよった||おとこ||うすぐらい|たけやぶ||||||おおきな|やしき||ぜん||だ|
"It seems that I have lost my way," as a man wanders through a dimly lit bamboo grove, he suddenly comes upon a large mansion.
「 こんな 竹やぶ の 中 に 、 お 屋敷 と は 」 屋敷 の 庭 に は 季節 外れ の 梅 が 咲いて いて 、 とても 良い 香り が 漂って き ます 。
|たけやぶ||なか|||やしき|||やしき||にわ|||きせつ|はずれ||うめ||さいて|||よい|かおり||ただよって||
"In the middle of such a bamboo grove, a mansion?" In the mansion's garden, out-of-season plum blossoms are blooming, and a very pleasant fragrance wafts through the air.
「 ほう 、 何とも 良い 香り じゃあ 」 する と 突然 、 若くて 美しい 四 人 の 娘 たち が 、 梅 の 木 の かげ から 現れ ました 。
|なんとも|よい|かおり||||とつぜん|わかくて|うつくしい|よっ|じん||むすめ|||うめ||き||||あらわれ|
"Oh, what a delightful scent!" Suddenly, four young and beautiful daughters appeared from the shade of the plum tree.
「 あら 、 珍しい 。
|めずらしい
Ah, how unusual.
人間 の 男 の 人 だ わ 」 「 どうぞ 、 家 の 中 に お 入り ください な 」 男 は 娘 たち に 案内 さ れる まま 、 屋敷 の 中 に 入って 行き ました 。
にんげん||おとこ||じん||||いえ||なか|||はいり|||おとこ||むすめ|||あんない||||やしき||なか||はいって|いき|
It’s a human man. Please, come inside our house.” The man was guided by the daughters and walked into the mansion.
すると 屋敷 の 中 から 、 もう 一 人 の 女 の 人 が 出て 来て 言い ました 。
|やしき||なか|||ひと|じん||おんな||じん||でて|きて|いい|
Then, another woman came out from inside the mansion and said.
「 わたし は 、 娘 たち の 母親 です 。
||むすめ|||ははおや|
"I am the mother of the daughters."
どうぞ 今夜 は 、 泊まって 下さい ませ 」 そして 母親 と 娘 たち は 、 男 を ごちそう で もてなし ました 。
|こんや||とまって|ください|||ははおや||むすめ|||おとこ|||||
"Please stay the night," they said. Then the mother and daughters treated the man to a meal.
次の 朝 、 母親 は あらためて 男 に 言い ました 。
つぎの|あさ|ははおや|||おとこ||いい|
The next morning, the mother said again to the man.
「 ここ は 女 だけ の 家 で 、 あなた の 様 な 男 の 人 が 現れる の を 待って い ました 。
||おんな|||いえ||||さま||おとこ||じん||あらわれる|||まって||
"This is a house for women only, and we have been waiting for a man like you to appear.
娘 は 四 人 おり ます から 、 誰 でも 好きな 娘 の 婿 に なって 下さい ませ 」 男 に とって は 、 夢 の 様 な 話 です 。
むすめ||よっ|じん||||だれ||すきな|むすめ||むこ|||ください||おとこ||||ゆめ||さま||はなし|
Since we have four daughters, please become the husband of any daughter you like." For the man, it was a dream-like story.
「 わし で 良ければ 、 喜んで 」 こうして 男 は 、 長女 の 婿 に なり ました 。
||よければ|よろこんで||おとこ||ちょうじょ||むこ|||
|||||||eldest daughter|||||
"If it is fine with me, I will gladly do it," thus the man became the husband of the eldest daughter.
やがて 冬 も 終わり 、 暖かい 春 が やって 来 ました 。
|ふゆ||おわり|あたたかい|はる|||らい|
Eventually, winter came to an end, and warm spring arrived.
ある 日 、 母親 が 男 に 言い ました 。
|ひ|ははおや||おとこ||いい|
One day, the mother said to the man.
「 今日 は 日 より が 良い ので 、 娘 たち を 連れて お 花見 に 行って 来 ます 。
きょう||ひ|||よい||むすめ|||つれて||はなみ||おこなって|らい|
||sun|||better|||||||cherry blossom viewing||||
Since today is nicer than yesterday, I will take my daughters to see the cherry blossoms.
すみません が 、 留守番 を お 願い し ます 。
||るすばん|||ねがい||
I'm sorry, but I ask you to stay home.
もし 退屈でしたら 、 家 の 倉 でも 見て いて 下さい 。
|たいくつでしたら|いえ||くら||みて||ください
|bored|||||||
If you get bored, please feel free to just look around the storage in the house.
きっと 、 気 に 入る と 思い ます 。
|き||はいる||おもい|
I'm sure you'll like it.
・・・ でも 、 四 つ 目 の 倉 だけ は 、 決して 開けて は いけ ませ ん よ 」 「 わかった 。
|よっ||め||くら|||けっして|あけて||||||
... But please, never open the fourth warehouse, okay? "Got it.
四 つ 目 は 見 ない よ 」
よっ||め||み||
I won't look at the fourth one."
さて 、 女 たち の 出かけた 後 、 男 は 何も する 事 が なくて ボンヤリ と して い ました 。
|おんな|||でかけた|あと|おとこ||なにも||こと|||ぼんやり||||
Well, after the women went out, the man had nothing to do and was zoning out.
「 ひまじゃ ー 。
|-
not busy|
"I'm so bored."
・・・ そうじゃ 、 倉 の 中 でも 見て みる か 」 男 は まず 、 一 番 目 の 倉 の 戸 を 開けて み ました 。
そう じゃ|くら||なか||みて|||おとこ|||ひと|ばん|め||くら||と||あけて||
…That's right, let's see what's in the barn. The man first opened the door to the first barn.
する と 、 ザザーーッ 。
||ザザー-ッ
||rustling
When I did, there was a sound of rushing water.
と 、 波 が 男 の 足元 に 押し寄せて 来 ました 。
|なみ||おとこ||あしもと||おしよせて|らい|
|||||||rushed||
Then, waves rushed in at the man's feet.
不思議な 事 に 倉 の 中 に は 、 真 夏 の 海 が 広がって いた のです 。
ふしぎな|こと||くら||なか|||まこと|なつ||うみ||ひろがって||
Strangely, inside the barn, there was a summer sea spreading out.
空 に は カモメ が 飛んで 、 まっ 白い 砂浜 に は カニ が い ます 。
から|||||とんで||しろい|すなはま|||かに|||
|||seagull|||||||||||
Seagulls are flying in the sky, and there are crabs on the pure white sandy beach.
「 海 は 、 気持ち が いい のう 」 それ から 男 は 、 二 番 目 の 倉 を 開けて み ました 。
うみ||きもち||||||おとこ||ふた|ばん|め||くら||あけて||
"The sea feels nice," then the man tried opening the second warehouse.
そこ に は 、 美しい 秋 の 山 が あり ました 。
|||うつくしい|あき||やま|||
There was a beautiful autumn mountain there.
赤 や 黄色 に 色づいた 木々 が あり 、 大きな 柿 の 木 に は まっ 赤 な 柿 の 実 が なって い ます 。
あか||きいろ||いろづいた|きぎ|||おおきな|かき||き||||あか||かき||み||||
||||colored|||||||||||||||||||
There are trees colored red and yellow, and on a large persimmon tree, there are bright red persimmons hanging.
「 モミジ に 柿 と は 、 風流 ( ふうりゅう ) じゃ のう 」 次に 男 は 、 三 番 目 の 倉 を 開けて み ました 。
||かき|||ふうりゅう||||つぎに|おとこ||みっ|ばん|め||くら||あけて||
||||||elegance||||||||||||||
The man said, 'Maples and persimmons are quite elegant.' Then he opened the third warehouse.
すると 中 から 、 ビューーッ と 冷たい 風 が 吹いて き ました 。
|なか||ビュー-ッ||つめたい|かぜ||ふいて||
|||a sound of wind|||||||
As he did, a cold wind blew out from inside.
倉 の 中 は 、 一面 まっ 白 な 雪 景色 です 。
くら||なか||いちめん||しろ||ゆき|けしき|
||||||||snow||
Inside the warehouse, there is a completely white snowy landscape.
「 う ー 、 寒い 、 寒い 。
|-|さむい|さむい
Ugh, it's cold, it's cold.
冬 は 苦手じゃ 」 男 は 寒 そうに 身 を 震わせる と 、 四 番 目 の 倉 へ と やって 来 ました 。
ふゆ||にがてじゃ|おとこ||さむ|そう に|み||ふるわせる||よっ|ばん|め||くら||||らい|
|||||||||shivering|||||||||||
The man, who is not good with winter, shivered in the cold and came to the fourth warehouse.
そして 戸 を 開けよう と した 男 は 、 母親 が 出がけ に 言った 言葉 を 思い出し ました 。
|と||あけよう|||おとこ||ははおや||でがけ||いった|ことば||おもいだし|
||||||||||just before leaving||||||
And as the man tried to open the door, he remembered the words his mother said when she left.
『 四 つ 目 の 倉 だけ は 、 決して 開けて は いけ ませ ん よ 』 開けて は いけない と 言わ れる と 、 余計に 見 たく なる 物 です 。
よっ||め||くら|||けっして|あけて||||||あけて||||いわ|||よけいに|み|||ぶつ|
"You must never open the fourth storehouse." When you are told not to open it, it makes you want to see it even more.
「 うーん 。
"Hmm.
約束 は した が 、 ちょっと ぐらい なら 大丈夫だろう 」 男 は 我慢 し きれ ず に 、 四 番 目 の 倉 の 戸 を 開け ました 。
やくそく|||||||だいじょうぶだろう|おとこ||がまん|||||よっ|ばん|め||くら||と||あけ|
I made a promise, but just a little should be fine," the man, unable to restrain himself, opened the door of the fourth storehouse.
「 ほう 、 これ は 見事だ !
|||みごとだ
Oh, this is magnificent!
」 倉 の 中 に は 、 暖かい 春 が 広がって い ました 。
くら||なか|||あたたかい|はる||ひろがって||
Inside the warehouse, a warm spring was spreading.
さらさら と 流れる 小川 の ほとり に は 桃色 の 花 が 咲いた 梅 の 木 が あり 、 梅 の 木 に は 五 羽 の ウグイス が 楽し そうに 飛びかって い ます 。
||ながれる|おがわ|||||ももいろ||か||さいた|うめ||き|||うめ||き|||いつ|はね||うぐいす||たのし|そう に|とびかって||
||||||||||||||||||||||||||||||fluttering||
By the gently flowing stream, there was a plum tree with pink flowers, and on the plum tree, five bush warblers were joyfully flitting about.
♪ ホーホケキョ ♪ ホーホケキョ ウグイス が 、 とても 美しい 声 で 鳴き ました 。
||うぐいす|||うつくしい|こえ||なき|
cuckoo|||||||||
♪ Hohokekyo ♪ Hohokekyo, the bush warbler sang with a very beautiful voice.
「 ウグイス じゃあ 、 きれいじゃ な ぁ ~」 でも ウグイス たち は 男 の 姿 を 見る と 、 びっくり した 様 に 鳴く の を 止めて 、 どこ か へ 飛んで 行って しまい ました 。
うぐいす||||||うぐいす|||おとこ||すがた||みる||||さま||なく|||とどめて||||とんで|おこなって||
The bush warblers said, 'Well, isn't it pretty?' But when they saw the man, they stopped singing, startled, and flew away somewhere.
それ と 同時に 周り の 景色 が 変わり 、 男 は いつの間にか 竹やぶ の 真ん中 に 立って いた のです 。
||どうじに|まわり||けしき||かわり|おとこ||いつのまにか|たけやぶ||まんなか||たって||
At the same time, the surrounding scenery changed, and the man found himself standing in the middle of a bamboo grove without realizing how he got there.
「 あれ ?
Huh?
倉 は ?
くら|
Where is the warehouse?
屋敷 は ?
やしき|
Where is the mansion?
」 男 が きょろきょろ して いる と 、 どこ から と も なく 母親 の 声 が 聞こえて 来 ました 。
おとこ|||||||||||ははおや||こえ||きこえて|らい|
||looking around|||||||||||||||
As the man was looking around, suddenly he heard his mother's voice coming from nowhere.
「 約束 を 破って 、 四 番 目 の 倉 を 開けて しまい ました ね 。
やくそく||やぶって|よっ|ばん|め||くら||あけて|||
You broke the promise and opened the fourth warehouse, didn't you?
わたし たち は 、 この 竹やぶ に 住む ウグイス です 。
||||たけやぶ||すむ|うぐいす|
||||||live||
We are the nightingales that live in this bamboo grove.
今日 は 日 より が 良い ので 、 みんな で 元 の 姿 に 戻って 遊んで いた のです 。
きょう||ひ|||よい||||もと||すがた||もどって|あそんで||
Today is better than yesterday, so everyone has returned to their original form and was playing together.
あなた と は 、 いつまでも 一緒に 暮らそう と 思って い ました 。
||||いっしょに|くらそう||おもって||
I thought we would always live together.
しかし 姿 を 見 られた から に は 、 もう 一緒に 暮らす 事 は 出来 ませ ん 。
|すがた||み||||||いっしょに|くらす|こと||でき||
However, since I was seen, we can no longer live together.
さようなら 」 「 そんな ・・・」 男 は 仕方なく 、 一 人 で 山 を おりて 行き ました 。
||おとこ||しかたなく|ひと|じん||やま|||いき|
"Goodbye." "That's..." The man, having no choice, went down the mountain alone.
おしまい