×

We use cookies to help make LingQ better. By visiting the site, you agree to our cookie policy.


image

銀河英雄伝説 01黎明篇, 第五章 イゼルローン攻略 (1)

第 五 章 イゼルローン 攻略 (1)

Ⅰ イゼルローン 。 それ は 銀河 帝国 の 重要な 軍事 拠点 の 名称 である 。 帝国 首都 星 より 六二五〇 光年 の 距離 に 壮年 期 の 恒星 アルテナ が ある が 、 もともと これ は 惑星 を もた ない 孤独な 太陽 だった 。 ここ に 直径 六〇 キロ の 人工 惑星 を 建設 し 、 銀河 帝国 が 基地 と した の は 、 その 地理 上 の 重要 性 に あった 。

銀河 系 を 天 頂 方向 から 俯 瞰 する と 、 イゼルローン は 、 銀河 帝国 の 勢力 が 自由 惑星 同盟 の ほう へ のびた 、 その 周縁 部 の 、 三 角形 を なす 頂点 付近 に 位置 して いる 。 この 一帯 は 宇宙 航行 上 の 難所 で 、 かつて 、 自由 惑星 同盟 の 建国 者 たち が 多数 の 同志 を 失った 〝 宇宙 の 墓場 〟 な のだ 。 そして その 事実 も 、 帝国 の 要人 たち を 満足 さ せ 、 この 宙 域 に 同盟 を 威嚇 する 軍事 拠点 を きずく 、 その 意図 を 固め させる 原因 と なった こと であろう 。

変 光 星 、 赤色 巨星 、 異常な 重力 場 …… それ ら の 密集 する なか に 、 細い 一筋 の 安全 地帯 が あり 、 その 中心 に イゼルローン が 鎮座 して いる 。 この 場 を とおる こと なく 同盟 から 帝国 へ 赴く に は べつの ルート から フェザーン 自治 領 を 経由 し なくて は なら ず 、 むろん それ を 軍事 行動 に 使用 する わけに は いか ない 。

イゼルローン 回廊 と フェザーン 回廊 。 この 両者 以外 に も 同盟 と 帝国 を つなぐ ルート が 見いだせ ない か 、 同盟 の 為政者 も 用 兵 家 も 腐心 した が 、 星 図 の 不備 と 帝国 および フェザーン の 有形 無形 の 妨害 と が 、 その 意図 を 永く 挫折 さ せて きた 。 フェザーン に して みれば 、 中継 交易 地 と して の 存在 価値 が かかって おり 、〝 第 三 の 回廊 〟 など 発見 されて は たまった もの で は なかった 。 かくして 、 帝国 領域 へ 侵攻 せ ん と の 同盟 軍 の 意図 は 、 イゼルローン 攻略 戦 に 結実 する こと に なる 。 四 半 世紀 の あいだ に 、 大規模な 攻略 作戦 を 敢行 する こと 六 回 、 ことごとく 撃退 さ れ 、

「 イゼルローン 回廊 は 叛乱 軍兵 士 の 死 屍 を もって 舗装 さ れたり 」

と 帝国 軍 を 豪語 さ せて きた 。

イゼルローン 攻略 作戦 に は ヤン ・ ウェンリー も 二 度 参加 して いる 。 第 五 次 作戦 の とき は 少佐 、 第 六 次 作戦 の とき は 大佐 だった 。 死者 の 大量 生産 を 二 度 に わたって 目撃 し 、 強引な 力 攻 め の 愚 劣 さ を 知る こと に なった のだ 。

イゼルローン を 攻略 する に は 外 から で は だめだ 、 と 敗走 する 艦隊 の なか で ヤン は 思った 。 では どう すれば いい の か ?

イゼルローン は 要塞 である と 同時に 、〝 イゼルローン 駐留 艦隊 〟 と 称さ れる 一万五〇〇〇 隻 の 艦隊 を 擁して いる 。 要塞 司令 官 と 艦隊 司令 官 は 同格 の 大将 である 。 その あたり に 、 つけ いる 隙 が あり は し ない か ?

今回 の ローエングラム 伯 の 侵攻 も 、 イゼルローン を 前進 基地 と して の こと である 。 同盟 に とって 不吉 きわまる 、 この 帝国 の 軍事 拠点 は なんと して も 陥落 さ せ ねば なら ない 。 しかも ヤン に あたえ られた の は 〝 半 個 艦隊 〟 で しか なかった 。

「 率直な ところ 、 お前 さん が この 任務 を 承知 する と は 思わ なかった な 」

キャゼルヌ 少将 が 部隊 編成 書 の ページ を 指 で めくり ながら 言った 。 統合 作戦 本部 ビル 内 に ある 彼 の オフィス である 。

「 委員 長 に も 本 部長 に も それぞれ 思惑 が ある …… その どちら も お前 さん に は 読めて いる はずだ 」

彼 の 前 に すわった ヤン は 笑った だけ で 応え ない 。 キャゼルヌ は 音 高く 書類 を 机上 に たたきつける と 、 興味深 げ な 視線 を 士官 学校 の 後輩 に むけた 。

「 わが 軍 は 過去 六 回 に わたって イゼルローン の 攻略 を 試み 、 六 回 失敗 した 。 それ を お前 さん は 半 個 艦隊 で 成功 さ せよう と いう の か 」

「 まあ 、 やって みよう と 思います 」 ヤン の 返答 が 、 先輩 の 両眼 を 心もち 細め させた 。

「 成算 が あり そうだ な 、 どう する 気 だ 」

「 秘密です 」

「 おれ に も ? 」 「 こういう こと は もったいぶった ほう が ありがた み が でます から 」 「 もっともだ 。 用意 する 物資 が あったら 言って くれ 、 袖 の 下 なし で 話 に のる ぞ 」

「 では 帝国 軍 の 軍艦 を 一 隻 、 これ は かつて 鹵獲 した もの が ある はずです 。 それ に 軍服 を 二〇〇 着 ほど 用意 して いただきましょう 」 キャゼルヌ は 細めた 目 を 大きく 開いた 。

「 期限 は ? 」 「 三 日 以内 」 「…… 超過 勤務 手当 を だせ と は 言わ ん が 、 コニャック の 一 杯 ぐらい おごれ よ 」

「 二 杯 は おごります よ 。 ところで もう ひと つ お 願い が ある んです が 」

「 三 杯 に して もらおう 。 なんだ ? 」 「 憂国 騎士 団 と 称する はねあがり ども の こと です が ね 」 「 ああ 、 聞いて いる 。 災難 だった な 」

留守 が ユリアン ひと り な ので 憲兵 の 巡回 を 手配 して くれる よう ヤン は 依頼 した のだった 。 少年 を どこ か 他家 へ あずけよう か と も 思った のだ が 、 留守 司令 官 を もって 任じる ユリアン が 承知 し なかった のである 。 すぐ 手配 しよう 、 と 返答 して から 、 キャゼルヌ は 思いだした ように 、 あらためて ヤン を 見た 。

「 そうそう 、 フェザーン の 高等 弁 務 官 が な 、 このごろ 妙に お前 さん の こと を 知り た がって いる 」

「 ほう ? 」 フェザーン と いう 特殊な 存在 に 、 ヤン は 他人 と 多少 ちがう 興味 を もって いる 。 あの 〝 自治 領 〟 を つくった の は 、 レオポルド ・ ラープ と いう 地球 出身 の 大 商人 だ が 、 彼 の 経歴 や 資金 の 出 処 に は 、 不明の こと が 多い のだ 。 何者 か が なに か の 目的 で フェザーン と いう 存在 を ラープ に つくら せた のだろう か ―― 歴史 家 に なり そこねた ヤン は そんな こと も 考えて みる のだった 。 もっとも この こと は 誰 に も 話して いない 。 「 フェザーン の 黒 狐 が お前 さん に 興味 を いだいた らしい 。 スカウト に 来る かも しれ ん ぞ 」

「 フェザーン の 紅茶 は 美味 い でしょう か ね 」

「 毒気 で 味つけ して ある だろう よ …… ところで 予定 の 進行 状況 は どう だ ? 」 「 予定 どおり こと が はこぶ こと は 、 めったに ありません よ 。 と いって 予定 を たて ない わけに も いきま せ ん しね 」

そう 言って ヤン は たちあがった 。 山積 する 仕事 が 彼 を 待って いた 。

第 一三 艦隊 は 艦艇 と 将兵 の 数 が 通常 の 半数 である だけ で は ない 。 その 将兵 たる や 、たいはん は アスターテ で 惨敗 した 第 四・六 艦隊 の 敗 残 兵 であり 、 残り は 戦闘 体験 を 欠く 新 兵 である 。 指揮 官 は 気鋭の 少将 と は いえ 二〇 代 の 孺子 …… 老練 の 提督 たち が 驚き 、 呆れ 、 嘲笑 する 声 は 当然 ヤン の 耳 に も とどいて いた 。 おむつ も とれ ない 赤ん坊 が 、 素手 で ライオン を 殴り殺す つもり らしい ぞ 、 いい 観 物 だろう て 。 さ せる ほう も させる ほう だ が 、 やる ほう も いやはや ……。

ヤン は 腹 も たて なかった 。 今度 の 作戦 に かんして 成功 を 危惧 し ない 者 が いる と したら よほど 楽天 的な 人物 だろう 、 と 、 ヤン 自身 で すら 思う 。

ただ ひと り 、 ヤン を 弁護 して くれた の は 第 五 艦隊 司令 官 ビュコック 中将 だった 。 年齢 は 七〇 歳 、 愛想 の 悪い 白髪 の 提督 で 、 頑固 かつ 短気な 人物 と して 知られて いる 。 ヤン など が 敬礼 する と 、「 どこ の 青二才 だ 」 と 言わんばかり の うさん臭 げ な 目つき で おもしろく も な さ そうに 答礼 する 。 その 〝 おっか ない 親父 さん 〟 が 、 高級 士官 の クラブ 『 白い 牡鹿 』 で 第 一三 艦隊 と ヤン を 笑い話 の 種 に して いる 同僚 の 提督 たち に 言った と いう 。 「 後日 、 恥じ入る ような こと が なければ よい が な 。 お前 さん たち は 大樹 の 苗木 を 見て 、 それ が 高く ない と 笑う 愚 を おかして いる かも しれ ん のだ ぞ 」

一同 は しんと 静まりかえった 。 アスターテ や それ 以前 の 戦闘 で しめさ れた ヤン の 才 幹 を 思いだした のである 。 老 将 の ひと 声 で 群 集 心理 が 消えさる と 、 提督 たち は それぞれ の 胸 に ばつ の 悪 さ を かかえ つつ 酒 杯 を 乾 して 散会 した のだった ……。

その 話 を 伝え聞いた ヤン は 、 べつに ビュコック 中将 に 謝辞 を 述べよう と は し なかった 。 そんな こと を すれば 、 白髪 の 提督 に 鼻 で 笑われる と 知っていた から である 。

提督 たち の 反感 は いちおう 、 しりぞけた もの の 、 全体 の 情況 が それほど 好転 した わけで は なかった 。 難 攻 不 落 の 要塞 を 攻める 、 敗 残 兵 プラス 新 兵 の 〝 混成 半 個 艦隊 〟 と いう 悲観 的な 事実 は 、 厳 と して 存在 して いる のだ 。

ヤン は 幹部 の 人事 に 意 を もちいた 。 副 司令 官 に は 第 四 艦隊 で 善戦 した 老 巧 の フィッシャー 准将 を えらび 、 首席 幕僚 に は 独創 性 は 欠く もの の 緻密で 整理 さ れた 頭脳 を もつ ムライ 准将 を 、 次 席 幕僚 に は ファイター と さ れる パトリチェフ 大佐 を 、 それぞれ 任命 した 。

ムライ に は 常識 論 を 提示 して もらい 、 作戦 立案 と 決断 の 参考 に する 。 パトリチェフ に は 兵士 へ の 叱 咤 激励 役 を ひきうけて もらう 。 フィッシャー に は 堅実な 艦隊 運用 を 、 と いう の が ヤン の 意図 だった 。

ここ まで は まず 満足 できる 配置 だった が 、 副 官 の 人事 で 、 だめで もともと 、 と 思い 、「 優秀な 若手 士官 を 」 と キャゼルヌ に 注文 して おいた ところ 、「 七九四 年度 、 士官 学校 次 席 卒業 。 お前 さん より よほど 優等 生 だ 。 現在 、 統合 作戦 本部 情報 分析 課 勤務 」 と の 連絡 が とどいた のだ 。

ヤン の 前 に あらわれた の は 、 自然に ウェーブ の かかった 金 褐色 の 頭髪 と ヘイゼル の 瞳 を もつ 、 美しい 若い 女性 で 、 黒 と 象牙 色 を 基調 と した 単純な デザイン の 軍服 まで が 華麗に みえた 。 ヤン は サングラス を はずして 、 じっと 彼女 を 見つめた 。

「 F ・ グリーンヒル 中尉 です 。 今度 、 ヤン 少将 の 副 官 を 拝 命 し ました 」

それ が 彼女 の あいさつ だった 。

ヤン は サングラス を かけ なおして 表情 を 隠し 、 アレックス ・ キャゼルヌ と いう 男 は 軍服 の スラックス の した に 、 先端 の とがった 黒い しっぽ を ひそめて いる に ちがいない と 考えた 。 彼女 は 統合 作戦 本部 次長 ドワイト ・ グリーンヒル 大将 の 娘 であり 、 驚く べき 記憶 力 の 所有 者 と して 知られて いた のだ 。 このように 第 一三 艦隊 の 人事 は 決定 さ れた のである 。

Ⅱ 宇宙 暦 七九六 年 四 月 二七 日 、 自由 惑星 同盟 軍 第 一三 艦隊 司令 官 ヤン ・ ウェンリー 少将 は イゼルローン 要塞 攻略 の 途 に のぼった 。 これ は 公式 的に は 、 帝国 方面 国境 と 反対 側 の 辺境 星 域 に おける 新 艦隊 最初 の 大規模 演習 と いう こと に なって いた ため 、 五〇 光速 の パルス ・ ワープ 航法 に よって 同盟 首都 から イゼルローン と 反対 方向 に 離れ 、 三 日間 それ を つづけた のち 、 あらためて 航路 を 算定 し 、 八 回 の 長 距離 ワープ と 二 回 の 短 距離 ワープ を くりかえして 、 ようやく イゼルローン 回廊 に はいった 。

「 四〇〇〇 光年 を 二四 日 。 悪く ない な 」

ヤン は つぶやいた が 、 悪く ない どころ か 、 急 編成 さ れた できあい の 艦隊 が 一 隻 の 脱落 も ださ ず 、 とにかく も 目的 地点 に 到着 し えた の は 賞 賛 に 値する もの だった 。 もっとも 、 この 功 は 、 艦隊 運用 に おいて 名人 芸 を 謳われる 副 司令 官 フィッシャー 准将 の 熟練 した 手腕 に 帰せられる べきであろう 。


第 五 章 イゼルローン 攻略 (1) だい|いつ|しょう||こうりゃく Chapter 5 The Iserlohn Offensive (1)

Ⅰ イゼルローン 。 Ⅰ Iserloan. それ は 銀河 帝国 の 重要な 軍事 拠点 の 名称 である 。 ||ぎんが|ていこく||じゅうような|ぐんじ|きょてん||めいしょう| 帝国 首都 星 より 六二五〇 光年 の 距離 に 壮年 期 の 恒星 アルテナ が ある が 、 もともと これ は 惑星 を もた ない 孤独な 太陽 だった 。 ていこく|しゅと|ほし||ろくにご|こうねん||きょり||そうねん|き||こうせい||||||||わくせい||||こどくな|たいよう| ここ に 直径 六〇 キロ の 人工 惑星 を 建設 し 、 銀河 帝国 が 基地 と した の は 、 その 地理 上 の 重要 性 に あった 。 ||ちょっけい|むっ|きろ||じんこう|わくせい||けんせつ||ぎんが|ていこく||きち||||||ちり|うえ||じゅうよう|せい||

銀河 系 を 天 頂 方向 から 俯 瞰 する と 、 イゼルローン は 、 銀河 帝国 の 勢力 が 自由 惑星 同盟 の ほう へ のびた 、 その 周縁 部 の 、 三 角形 を なす 頂点 付近 に 位置 して いる 。 ぎんが|けい||てん|いただ|ほうこう||うつむ|かん|||||ぎんが|ていこく||せいりょく||じゆう|わくせい|どうめい||||||しゅうえん|ぶ||みっ|すみ かた|||ちょうてん|ふきん||いち|| この 一帯 は 宇宙 航行 上 の 難所 で 、 かつて 、 自由 惑星 同盟 の 建国 者 たち が 多数 の 同志 を 失った 〝 宇宙 の 墓場 〟 な のだ 。 |いったい||うちゅう|こうこう|うえ||なんしょ|||じゆう|わくせい|どうめい||けんこく|もの|||たすう||どうし||うしなった|うちゅう||はかば|| そして その 事実 も 、 帝国 の 要人 たち を 満足 さ せ 、 この 宙 域 に 同盟 を 威嚇 する 軍事 拠点 を きずく 、 その 意図 を 固め させる 原因 と なった こと であろう 。 ||じじつ||ていこく||ようじん|||まんぞく||||ちゅう|いき||どうめい||いかく||ぐんじ|きょてん||||いと||かため||げんいん||||

変 光 星 、 赤色 巨星 、 異常な 重力 場 …… それ ら の 密集 する なか に 、 細い 一筋 の 安全 地帯 が あり 、 その 中心 に イゼルローン が 鎮座 して いる 。 へん|ひかり|ほし|あかいろ|きょせい|いじょうな|じゅうりょく|じょう||||みっしゅう||||ほそい|ひとすじ||あんぜん|ちたい||||ちゅうしん||||ちんざ|| この 場 を とおる こと なく 同盟 から 帝国 へ 赴く に は べつの ルート から フェザーン 自治 領 を 経由 し なくて は なら ず 、 むろん それ を 軍事 行動 に 使用 する わけに は いか ない 。 |じょう|||||どうめい||ていこく||おもむく||||るーと|||じち|りょう||けいゆ|||||||||ぐんじ|こうどう||しよう|||||

イゼルローン 回廊 と フェザーン 回廊 。 |かいろう|||かいろう この 両者 以外 に も 同盟 と 帝国 を つなぐ ルート が 見いだせ ない か 、 同盟 の 為政者 も 用 兵 家 も 腐心 した が 、 星 図 の 不備 と 帝国 および フェザーン の 有形 無形 の 妨害 と が 、 その 意図 を 永く 挫折 さ せて きた 。 |りょうしゃ|いがい|||どうめい||ていこく|||るーと||みいだせ|||どうめい||いせいしゃ||よう|つわもの|いえ||ふしん|||ほし|ず||ふび||ていこく||||ゆうけい|むけい||ぼうがい||||いと||ながく|ざせつ||| フェザーン に して みれば 、 中継 交易 地 と して の 存在 価値 が かかって おり 、〝 第 三 の 回廊 〟 など 発見 されて は たまった もの で は なかった 。 ||||ちゅうけい|こうえき|ち||||そんざい|かち||||だい|みっ||かいろう||はっけん||||||| かくして 、 帝国 領域 へ 侵攻 せ ん と の 同盟 軍 の 意図 は 、 イゼルローン 攻略 戦 に 結実 する こと に なる 。 |ていこく|りょういき||しんこう|||||どうめい|ぐん||いと|||こうりゃく|いくさ||けつじつ|||| 四 半 世紀 の あいだ に 、 大規模な 攻略 作戦 を 敢行 する こと 六 回 、 ことごとく 撃退 さ れ 、 よっ|はん|せいき||||だいきぼな|こうりゃく|さくせん||かんこう|||むっ|かい||げきたい||

「 イゼルローン 回廊 は 叛乱 軍兵 士 の 死 屍 を もって 舗装 さ れたり 」 |かいろう||はんらん|ぐんぴょう|し||し|しかばね|||ほそう||

と 帝国 軍 を 豪語 さ せて きた 。 |ていこく|ぐん||ごうご|||

イゼルローン 攻略 作戦 に は ヤン ・ ウェンリー も 二 度 参加 して いる 。 |こうりゃく|さくせん||||||ふた|たび|さんか|| 第 五 次 作戦 の とき は 少佐 、 第 六 次 作戦 の とき は 大佐 だった 。 だい|いつ|つぎ|さくせん||||しょうさ|だい|むっ|つぎ|さくせん||||たいさ| 死者 の 大量 生産 を 二 度 に わたって 目撃 し 、 強引な 力 攻 め の 愚 劣 さ を 知る こと に なった のだ 。 ししゃ||たいりょう|せいさん||ふた|たび|||もくげき||ごういんな|ちから|おさむ|||ぐ|おと|||しる||||

イゼルローン を 攻略 する に は 外 から で は だめだ 、 と 敗走 する 艦隊 の なか で ヤン は 思った 。 ||こうりゃく||||がい||||||はいそう||かんたい||||||おもった では どう すれば いい の か ?

イゼルローン は 要塞 である と 同時に 、〝 イゼルローン 駐留 艦隊 〟 と 称さ れる 一万五〇〇〇 隻 の 艦隊 を 擁して いる 。 ||ようさい|||どうじに||ちゅうりゅう|かんたい||そやさ||いちまんご|せき||かんたい||ようして| 要塞 司令 官 と 艦隊 司令 官 は 同格 の 大将 である 。 ようさい|しれい|かん||かんたい|しれい|かん||どうかく||たいしょう| その あたり に 、 つけ いる 隙 が あり は し ない か ? |||||すき||||||

今回 の ローエングラム 伯 の 侵攻 も 、 イゼルローン を 前進 基地 と して の こと である 。 こんかい|||はく||しんこう||||ぜんしん|きち||||| 同盟 に とって 不吉 きわまる 、 この 帝国 の 軍事 拠点 は なんと して も 陥落 さ せ ねば なら ない 。 どうめい|||ふきつ|||ていこく||ぐんじ|きょてん|||||かんらく||||| しかも ヤン に あたえ られた の は 〝 半 個 艦隊 〟 で しか なかった 。 |||||||はん|こ|かんたい|||

「 率直な ところ 、 お前 さん が この 任務 を 承知 する と は 思わ なかった な 」 そっちょくな||おまえ||||にんむ||しょうち||||おもわ||

キャゼルヌ 少将 が 部隊 編成 書 の ページ を 指 で めくり ながら 言った 。 |しょうしょう||ぶたい|へんせい|しょ||ぺーじ||ゆび||||いった 統合 作戦 本部 ビル 内 に ある 彼 の オフィス である 。 とうごう|さくせん|ほんぶ|びる|うち|||かれ||おふぃす|

「 委員 長 に も 本 部長 に も それぞれ 思惑 が ある …… その どちら も お前 さん に は 読めて いる はずだ 」 いいん|ちょう|||ほん|ぶちょう||||おもわく||||||おまえ||||よめて||

彼 の 前 に すわった ヤン は 笑った だけ で 応え ない 。 かれ||ぜん|||||わらった|||こたえ| キャゼルヌ は 音 高く 書類 を 机上 に たたきつける と 、 興味深 げ な 視線 を 士官 学校 の 後輩 に むけた 。 ||おと|たかく|しょるい||きじょう||||きょうみぶか|||しせん||しかん|がっこう||こうはい||

「 わが 軍 は 過去 六 回 に わたって イゼルローン の 攻略 を 試み 、 六 回 失敗 した 。 |ぐん||かこ|むっ|かい|||||こうりゃく||こころみ|むっ|かい|しっぱい| それ を お前 さん は 半 個 艦隊 で 成功 さ せよう と いう の か 」 ||おまえ|||はん|こ|かんたい||せいこう||||||

「 まあ 、 やって みよう と 思います 」 ||||おもいます ヤン の 返答 が 、 先輩 の 両眼 を 心もち 細め させた 。 ||へんとう||せんぱい||りょうがん||こころもち|ほそめ|さ せた

「 成算 が あり そうだ な 、 どう する 気 だ 」 せいさん|||そう だ||||き|

「 秘密です 」 ひみつ です

「 おれ に も ? 」 「 こういう こと は もったいぶった ほう が ありがた み が でます から 」 「 もっともだ 。 用意 する 物資 が あったら 言って くれ 、 袖 の 下 なし で 話 に のる ぞ 」 ようい||ぶっし|||いって||そで||した|||はなし|||

「 では 帝国 軍 の 軍艦 を 一 隻 、 これ は かつて 鹵獲 した もの が ある はずです 。 |ていこく|ぐん||ぐんかん||ひと|せき||||ろかく|||||はず です それ に 軍服 を 二〇〇 着 ほど 用意 して いただきましょう 」 ||ぐんぷく||ふた|ちゃく||ようい|| キャゼルヌ は 細めた 目 を 大きく 開いた 。 ||ほそめた|め||おおきく|あいた

「 期限 は ? きげん| 」 「 三 日 以内 」 みっ|ひ|いない 「…… 超過 勤務 手当 を だせ と は 言わ ん が 、 コニャック の 一 杯 ぐらい おごれ よ 」 ちょうか|きんむ|てあて|||||いわ|||||ひと|さかずき|||

「 二 杯 は おごります よ 。 ふた|さかずき||| ところで もう ひと つ お 願い が ある んです が 」 |||||ねがい|||ん です|

「 三 杯 に して もらおう 。 みっ|さかずき||| なんだ ? 」 「 憂国 騎士 団 と 称する はねあがり ども の こと です が ね 」 ゆうこく|きし|だん||しょうする||||||| 「 ああ 、 聞いて いる 。 |きいて| 災難 だった な 」 さいなん||

留守 が ユリアン ひと り な ので 憲兵 の 巡回 を 手配 して くれる よう ヤン は 依頼 した のだった 。 るす|||||||けんぺい||じゅんかい||てはい||||||いらい|| 少年 を どこ か 他家 へ あずけよう か と も 思った のだ が 、 留守 司令 官 を もって 任じる ユリアン が 承知 し なかった のである 。 しょうねん||||たけ||||||おもった|||るす|しれい|かん|||にんじる|||しょうち||| すぐ 手配 しよう 、 と 返答 して から 、 キャゼルヌ は 思いだした ように 、 あらためて ヤン を 見た 。 |てはい|||へんとう|||||おもいだした|よう に||||みた

「 そうそう 、 フェザーン の 高等 弁 務 官 が な 、 このごろ 妙に お前 さん の こと を 知り た がって いる 」 そう そう|||こうとう|べん|つとむ|かん||||みょうに|おまえ|||||しり|||

「 ほう ? 」 フェザーン と いう 特殊な 存在 に 、 ヤン は 他人 と 多少 ちがう 興味 を もって いる 。 |||とくしゅな|そんざい||||たにん||たしょう||きょうみ||| あの 〝 自治 領 〟 を つくった の は 、 レオポルド ・ ラープ と いう 地球 出身 の 大 商人 だ が 、 彼 の 経歴 や 資金 の 出 処 に は 、 不明の こと が 多い のだ 。 |じち|りょう|||||||||ちきゅう|しゅっしん||だい|しょうにん|||かれ||けいれき||しきん||だ|しょ|||ふめいの|||おおい| 何者 か が なに か の 目的 で フェザーン と いう 存在 を ラープ に つくら せた のだろう か ―― 歴史 家 に なり そこねた ヤン は そんな こと も 考えて みる のだった 。 なにもの||||||もくてき|||||そんざい||||||||れきし|いえ|||||||||かんがえて|| もっとも この こと は 誰 に も 話して いない 。 ||||だれ|||はなして| 「 フェザーン の 黒 狐 が お前 さん に 興味 を いだいた らしい 。 ||くろ|きつね||おまえ|||きょうみ||| スカウト に 来る かも しれ ん ぞ 」 すかうと||くる||||

「 フェザーン の 紅茶 は 美味 い でしょう か ね 」 ||こうちゃ||びみ||||

「 毒気 で 味つけ して ある だろう よ …… ところで 予定 の 進行 状況 は どう だ ? どっけ||あじつけ||||||よてい||しんこう|じょうきょう||| 」 「 予定 どおり こと が はこぶ こと は 、 めったに ありません よ 。 よてい||||||||| と いって 予定 を たて ない わけに も いきま せ ん しね 」 ||よてい|||||||||

そう 言って ヤン は たちあがった 。 |いって||| 山積 する 仕事 が 彼 を 待って いた 。 さんせき||しごと||かれ||まって|

第 一三 艦隊 は 艦艇 と 将兵 の 数 が 通常 の 半数 である だけ で は ない 。 だい|かずみ|かんたい||かんてい||しょうへい||すう||つうじょう||はんすう||||| その 将兵 たる や 、たいはん は アスターテ で 惨敗 した 第 四・六 艦隊 の 敗 残 兵 であり 、 残り は 戦闘 体験 を 欠く 新 兵 である 。 |しょうへい|||||||ざんぱい||だい|よっ|むっ|かんたい||はい|ざん|つわもの||のこり||せんとう|たいけん||かく|しん|つわもの| 指揮 官 は 気鋭の 少将 と は いえ 二〇 代 の 孺子 …… 老練 の 提督 たち が 驚き 、 呆れ 、 嘲笑 する 声 は 当然 ヤン の 耳 に も とどいて いた 。 しき|かん||きえいの|しょうしょう||||ふた|だい||じゅし|ろうれん||ていとく|||おどろき|あきれ|ちょうしょう||こえ||とうぜん|||みみ|||| おむつ も とれ ない 赤ん坊 が 、 素手 で ライオン を 殴り殺す つもり らしい ぞ 、 いい 観 物 だろう て 。 ||||あかんぼう||すで||らいおん||なぐりころす|||||かん|ぶつ|| さ せる ほう も させる ほう だ が 、 やる ほう も いやはや ……。

ヤン は 腹 も たて なかった 。 ||はら||| 今度 の 作戦 に かんして 成功 を 危惧 し ない 者 が いる と したら よほど 楽天 的な 人物 だろう 、 と 、 ヤン 自身 で すら 思う 。 こんど||さくせん|||せいこう||きぐ|||もの||||||らくてん|てきな|じんぶつ||||じしん|||おもう

ただ ひと り 、 ヤン を 弁護 して くれた の は 第 五 艦隊 司令 官 ビュコック 中将 だった 。 |||||べんご|||||だい|いつ|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう| 年齢 は 七〇 歳 、 愛想 の 悪い 白髪 の 提督 で 、 頑固 かつ 短気な 人物 と して 知られて いる 。 ねんれい||なな|さい|あいそ||わるい|しらが||ていとく||がんこ||たんきな|じんぶつ|||しられて| ヤン など が 敬礼 する と 、「 どこ の 青二才 だ 」 と 言わんばかり の うさん臭 げ な 目つき で おもしろく も な さ そうに 答礼 する 。 |||けいれい|||||あおにさい|||いわんばかり||うさんくさ|||めつき||||||そう に|とうれい| その 〝 おっか ない 親父 さん 〟 が 、 高級 士官 の クラブ 『 白い 牡鹿 』 で 第 一三 艦隊 と ヤン を 笑い話 の 種 に して いる 同僚 の 提督 たち に 言った と いう 。 |||おやじ|||こうきゅう|しかん||くらぶ|しろい|おしか||だい|かずみ|かんたい||||わらいばなし||しゅ||||どうりょう||ていとく|||いった|| 「 後日 、 恥じ入る ような こと が なければ よい が な 。 ごじつ|はじいる||||||| お前 さん たち は 大樹 の 苗木 を 見て 、 それ が 高く ない と 笑う 愚 を おかして いる かも しれ ん のだ ぞ 」 おまえ||||たいじゅ||なえぎ||みて|||たかく|||わらう|ぐ||||||||

一同 は しんと 静まりかえった 。 いちどう|||しずまりかえった アスターテ や それ 以前 の 戦闘 で しめさ れた ヤン の 才 幹 を 思いだした のである 。 |||いぜん||せんとう||しめ さ||||さい|みき||おもいだした| 老 将 の ひと 声 で 群 集 心理 が 消えさる と 、 提督 たち は それぞれ の 胸 に ばつ の 悪 さ を かかえ つつ 酒 杯 を 乾 して 散会 した のだった ……。 ろう|すすむ|||こえ||ぐん|しゅう|しんり||きえさる||ていとく|||||むね||||あく|||||さけ|さかずき||いぬい||さんかい||

その 話 を 伝え聞いた ヤン は 、 べつに ビュコック 中将 に 謝辞 を 述べよう と は し なかった 。 |はなし||つたえきいた|||||ちゅうじょう||しゃじ||のべよう|||| そんな こと を すれば 、 白髪 の 提督 に 鼻 で 笑われる と 知っていた から である 。 ||||しらが||ていとく||はな||えみわれる||しっていた||

提督 たち の 反感 は いちおう 、 しりぞけた もの の 、 全体 の 情況 が それほど 好転 した わけで は なかった 。 ていとく|||はんかん||||||ぜんたい||じょうきょう|||こうてん|||| 難 攻 不 落 の 要塞 を 攻める 、 敗 残 兵 プラス 新 兵 の 〝 混成 半 個 艦隊 〟 と いう 悲観 的な 事実 は 、 厳 と して 存在 して いる のだ 。 なん|おさむ|ふ|おと||ようさい||せめる|はい|ざん|つわもの|ぷらす|しん|つわもの||こんせい|はん|こ|かんたい|||ひかん|てきな|じじつ||いわお|||そんざい|||

ヤン は 幹部 の 人事 に 意 を もちいた 。 ||かんぶ||じんじ||い|| 副 司令 官 に は 第 四 艦隊 で 善戦 した 老 巧 の フィッシャー 准将 を えらび 、 首席 幕僚 に は 独創 性 は 欠く もの の 緻密で 整理 さ れた 頭脳 を もつ ムライ 准将 を 、 次 席 幕僚 に は ファイター と さ れる パトリチェフ 大佐 を 、 それぞれ 任命 した 。 ふく|しれい|かん|||だい|よっ|かんたい||ぜんせん||ろう|こう|||じゅんしょう|||しゅせき|ばくりょう|||どくそう|せい||かく|||ちみつで|せいり|||ずのう||||じゅんしょう||つぎ|せき|ばくりょう|||ふぁいたー|||||たいさ|||にんめい|

ムライ に は 常識 論 を 提示 して もらい 、 作戦 立案 と 決断 の 参考 に する 。 |||じょうしき|ろん||ていじ|||さくせん|りつあん||けつだん||さんこう|| パトリチェフ に は 兵士 へ の 叱 咤 激励 役 を ひきうけて もらう 。 |||へいし|||しか|た|げきれい|やく||| フィッシャー に は 堅実な 艦隊 運用 を 、 と いう の が ヤン の 意図 だった 。 |||けんじつな|かんたい|うんよう||||||||いと|

ここ まで は まず 満足 できる 配置 だった が 、 副 官 の 人事 で 、 だめで もともと 、 と 思い 、「 優秀な 若手 士官 を 」 と キャゼルヌ に 注文 して おいた ところ 、「 七九四 年度 、 士官 学校 次 席 卒業 。 ||||まんぞく||はいち|||ふく|かん||じんじ|||||おもい|ゆうしゅうな|わかて|しかん|||||ちゅうもん||||しちきゅうし|ねんど|しかん|がっこう|つぎ|せき|そつぎょう お前 さん より よほど 優等 生 だ 。 おまえ||||ゆうとう|せい| 現在 、 統合 作戦 本部 情報 分析 課 勤務 」 と の 連絡 が とどいた のだ 。 げんざい|とうごう|さくせん|ほんぶ|じょうほう|ぶんせき|か|きんむ|||れんらく|||

ヤン の 前 に あらわれた の は 、 自然に ウェーブ の かかった 金 褐色 の 頭髪 と ヘイゼル の 瞳 を もつ 、 美しい 若い 女性 で 、 黒 と 象牙 色 を 基調 と した 単純な デザイン の 軍服 まで が 華麗に みえた 。 ||ぜん|||||しぜんに||||きむ|かっしょく||とうはつ||||ひとみ|||うつくしい|わかい|じょせい||くろ||ぞうげ|いろ||きちょう|||たんじゅんな|でざいん||ぐんぷく|||かれいに| ヤン は サングラス を はずして 、 じっと 彼女 を 見つめた 。 ||さんぐらす||||かのじょ||みつめた

「 F ・ グリーンヒル 中尉 です 。 ||ちゅうい| 今度 、 ヤン 少将 の 副 官 を 拝 命 し ました 」 こんど||しょうしょう||ふく|かん||おが|いのち||

それ が 彼女 の あいさつ だった 。 ||かのじょ|||

ヤン は サングラス を かけ なおして 表情 を 隠し 、 アレックス ・ キャゼルヌ と いう 男 は 軍服 の スラックス の した に 、 先端 の とがった 黒い しっぽ を ひそめて いる に ちがいない と 考えた 。 ||さんぐらす|||なお して|ひょうじょう||かくし|||||おとこ||ぐんぷく||すらっくす||||せんたん|||くろい||||||||かんがえた 彼女 は 統合 作戦 本部 次長 ドワイト ・ グリーンヒル 大将 の 娘 であり 、 驚く べき 記憶 力 の 所有 者 と して 知られて いた のだ 。 かのじょ||とうごう|さくせん|ほんぶ|じちょう|||たいしょう||むすめ||おどろく||きおく|ちから||しょゆう|もの|||しられて|| このように 第 一三 艦隊 の 人事 は 決定 さ れた のである 。 このよう に|だい|かずみ|かんたい||じんじ||けってい|||

Ⅱ 宇宙 暦 七九六 年 四 月 二七 日 、 自由 惑星 同盟 軍 第 一三 艦隊 司令 官 ヤン ・ ウェンリー 少将 は イゼルローン 要塞 攻略 の 途 に のぼった 。 うちゅう|こよみ|しちきゅうろく|とし|よっ|つき|にしち|ひ|じゆう|わくせい|どうめい|ぐん|だい|かずみ|かんたい|しれい|かん|||しょうしょう|||ようさい|こうりゃく||と|| これ は 公式 的に は 、 帝国 方面 国境 と 反対 側 の 辺境 星 域 に おける 新 艦隊 最初 の 大規模 演習 と いう こと に なって いた ため 、 五〇 光速 の パルス ・ ワープ 航法 に よって 同盟 首都 から イゼルローン と 反対 方向 に 離れ 、 三 日間 それ を つづけた のち 、 あらためて 航路 を 算定 し 、 八 回 の 長 距離 ワープ と 二 回 の 短 距離 ワープ を くりかえして 、 ようやく イゼルローン 回廊 に はいった 。 ||こうしき|てきに||ていこく|ほうめん|くにざかい||はんたい|がわ||へんきょう|ほし|いき|||しん|かんたい|さいしょ||だいきぼ|えんしゅう||||||||いつ|こうそく||||こうほう|||どうめい|しゅと||||はんたい|ほうこう||はなれ|みっ|にち かん||||||こうろ||さんてい||やっ|かい||ちょう|きょり|||ふた|かい||みじか|きょり||||||かいろう||

「 四〇〇〇 光年 を 二四 日 。 よっ|こうねん||にし|ひ 悪く ない な 」 わるく||

ヤン は つぶやいた が 、 悪く ない どころ か 、 急 編成 さ れた できあい の 艦隊 が 一 隻 の 脱落 も ださ ず 、 とにかく も 目的 地点 に 到着 し えた の は 賞 賛 に 値する もの だった 。 ||||わるく||||きゅう|へんせい|||||かんたい||ひと|せき||だつらく||||||もくてき|ちてん||とうちゃく|||||しょう|さん||あたいする|| もっとも 、 この 功 は 、 艦隊 運用 に おいて 名人 芸 を 謳われる 副 司令 官 フィッシャー 准将 の 熟練 した 手腕 に 帰せられる べきであろう 。 ||いさお||かんたい|うんよう|||めいじん|げい||うたわれる|ふく|しれい|かん||じゅんしょう||じゅくれん||しゅわん||きせられる|