Youjo Senki ( The Saga of Tanya the Evil ) Episode 12
( ターニャ ) 第 二 〇三 航空 魔 導 大隊 の ―
ターニャ ・ フォン ・ N デグレチャフ 少佐 で あり ます
( ターニャ ) ゼートゥーア 閣下 に お 取り次ぎ を
( 将校 ) ああ 少佐 殿
申し訳 あり ませ ん が 閣下 は 現在 外出 中 です
では ルーデルドルフ 閣下 を
( 将校 ) 失礼 し まし た
その … 参謀 連 は 皆様 そろって 外出 中 で し て
何 か 重大 な 会議 でも ?
恐らく ビアホール か と 思い ます が
ビアホール ?
でき れ ば 自分 も まざり たい ところ です が
これ ばかり は … フッ ( 将校 たち ) あ …
( レル ゲン ) 何 か あった の か ?
( 将校 ) は っ !
( レル ゲン ) デグレチャフ 少佐 だ
いえ 特に は …
ゼートゥーア 閣下 に
お 会い し たい と の こと で し た ので ―
ビアホール だ と お 伝え し まし た が
( レル ゲン ) デグレチャフ 少佐
確か ミルク と 砂糖 は …
はい 必要 あり ませ ん
( レル ゲン ) やはり 違う か ね ?
戦勝 記念 の ドル マイヤー だ
帝 室 の 御用達 だ ぞ
ゼートゥーア 閣下 を 訪問 さ れ た よう だ が ―
今回 の 勝利 に 貴 官 の 功績 は 計り知れない
何 か 進言 が ある の なら 忌憚 ( き た ん ) の ない 意見 を 聞か せ て ほしい
忌憚 の ない 意見 … です か
何 か ?
確かに 我が 軍 は 実に 見事 な 勝利 を 収め まし た
今や 世界 の 誰 も が 我が国 の 雄姿 に 瞠目 ( どう もく ) する しか ない でしょ う
帝国 の 勝利 と 栄光 も
この 瞬間 だけ は 本物 な の かも しれ ませ ん
この 瞬間 ?
( ターニャ ) 勝利 … それ は 何とも 魅惑 的 で あり ます
誰 も が その 美 酒 を 口 に し たい と 思う の は 当然 です
しかし なぜ 参謀 本部 は
その 勝利 を 活用 なさら ない の でしょ う ?
( ヴァイス ) 少佐 殿 が 参謀 本部 に ?
( ヴィー シャ ) あの 様子 だ と
もしかしたら どなり 込 ん でる の かも …
( ヴァイス ) まあ 心配 は 要 らん だ ろ う
( ヴィー シャ ) でも いつも と 明らか に …
( グランツ ) 大丈夫 です よ
( グランツ ) 少佐 殿 が ルール 違反 を 犯す なんて 考え られ ませ ん
( ノイマン ) どうせ 今頃 は 晩さん 室 で ワイン でも ―
… って それ は 無理 か あ
( ケーニッヒ ) 誰 か 塗り 薬 持って ない か ?
( ケーニッヒ ) 日焼け し すぎ た ( グランツ ) ああ 確か ―
タイヤ ネン 准尉 の 持ち物 に あり まし た よ
( ヴィー シャ ) ハァ …
ん …
勝利 を 活用 し ない ?
失礼 ながら 我ら が 参謀 本部 は 勝利 の しかた を 知って い て も
勝利 の 使い 方 は ご 存じ ない よう に 思わ れ まし た ので
どういう 意味 だ ね ?
参謀 本部 の 皆様 は 今
勝利 の 美 酒 に 酔いしれ て おら れる そう です ね
もちろん 前 戦 で 義務 を 十全 に 果たし た 将兵 たち に は ―
ひととき の 享 楽 を 謳歌 ( おう か ) する 権利 も あり ま しょ う
しかし 戦争 指導 に 当たる べき 上級 将校 まで も が ―
無邪気 に 勝利 に 沸き返って いる の で あれ ば ―
それ は 怠 惰 で あり 失策
犯罪 的 な 無為 無策 と 言う ほか あり ませ ん
少佐 その ぐらい に し て おけ さすが に 言葉 が 過ぎる
忌憚 の ない 意見 を と おっしゃら れ た の は
中佐 殿 で あり ます が ?
いくら 軍 神 マルス に 愛さ れ て いる と は いえ ―
さすが に ごう 慢 だ ろ う
お 言葉 です が 神 に 愛さ れ て いる など と は 微塵 ( みじん ) も …
( レル ゲン ) 貴 官 は 卓越 し た 先見 性 と 判断 力 を 有 し た ―
類い まれ なる 将校 だ が
やはり 人間 の 本性 は 変わら ない と いう わけ か
貴 官 の 抗 命 未遂 に つい て 西方 方面 軍 より 抗議 が あった そう だ
小 官 は 与え られ た 権限 内 で の 行動 を とろ う と し た まで です
( レル ゲン ) 規律 違反 を 犯す よう な 軍人 で ない こと は 分かって いる
と は 言え 参謀 本部 より 貴 官 に 与え られ た 権限 は
現場 で の 摩擦 を 生む ため の もの で は ない
武 勲 を 誇る の は 結構 だ が ―
1 人 で 打ち立て た と 思って もらって は 困る
共和 国 は 首都 を 制圧 さ れ た の だ
これ 以上 の 交戦 は 無意味 有害 で すら ある
この先 も 戦争 を 続けよ う と する 理由 が どこ に ある ?
近代 国家 に おい て 軍 と は 国家 の 暴力 装置 だ
国家 自体 を 犠牲 に し て まで 戦い 続ける など ―
狂気 の 沙汰 と しか 言え まい
いかにも その とおり です
で あれ ば 何故 貴 官 は 戦争 が 続く と の 主張 を ?
せ ん 越 ながら 申し上げ ます に ―
ゼートゥーア 閣下 や ルーデルドルフ 閣下 は ―
政治 と 軍事 に 優れ た 合理 的 な プラグマティスト
偉大 なる 軍人 です
この 点 中佐 殿 も 同類 で あら れる
論理 と 知識 の 牙城 ―
それ が 我が 帝国 の 参謀 本部 で あり ます
その ため に 誰 も が 合理 的 な 考え の 下 ―
戦争 の 終結 を 信じ て おら れる
しかし … それ は 不完全 な 合理 性 と 言わ ざる を え ませ ん
不完全 な … 合理 性 ?
( ターニャ ) 参謀 本部 の 皆様 は あまりに 合理 的 すぎる の です
故に 完全 に 見落とし て おら れる の です
人間 と いう 存在 が 合理 性 だけ で は 動か ない ―
愚か な 生き物 で ある と いう こと を
貴 官 は 我々 人類 が ―
いまだ 理性 を 欠 い た 獣 だ と でも 言い たい の か ね
( ターニャ ) 語弊 を 恐れ ず に 申し上げる なら ば ―
まったく もって その とおり か と
( レル ゲン ) 何 を 根拠 に そう 言い 切れる !
( ターニャ ) 歴史 で あり ます
と 言って も 私 自身 の 歴史
個人 的 な 経験 で は あり ます が
聞か せ て もら お う
( ターニャ ) 私 は 見 て き まし た
憎しみ に とらわれ た 燃える よう な 人々 の 目 を
優秀 な 部下 が 怒り に 身 を 任せ 冷静 さ を 失った 瞬間 を
憎悪 のみ に 突き動かさ れる ―
復讐 ( ふく しゅう ) の 連鎖 を
そして 小 官 は 気づ い た の です
いや … 気づ い た と 言う より ―
思い出し た と 言う べき かも しれ ませ ん
私 は 以前 合理 主義 に 対 する 狂気 的 な 反発 を ー
身をもって 経験 し まし た
いかに 近代 化 が 進 も う と も ―
いかに 社会 規範 が 浸透 しよ う と も ―
人間 は 時として 合理 性 より も ―
感情 を 優先 する 愚か な 存在 で ある と いう こと を
憎悪 に とらわれ た 人間 は
打算 も 合理 性 も 損得 さえ 抜き に どこまでも 抗 い 続け ます
だからこそ 小 官 は 申し上げ ず に は い られ ない の です
我々 は かりそめ の 勝利 に なぞ 酔いしれる べき で は ない
憎悪 の 火 は 全て 消し去ら ね ば なら ない と
( ノック )
( 将校 ) し … 失礼 し ます
( 将校 ) まだ 調査 中 の 情報 で は あり ます が ―
南方 大陸 で 共和 国 軍 残党 に 動き が …
( ド ・ ルーゴ ) 私 は 自由 を 愛 する ―
共和 国 市民 と して ―
誇り ある 共和 国 市民 と して 誓う !
( ド ・ ルーゴ ) 勝利 の 日 まで 決して 武器 は 下ろさ ぬ と !
我が 戦友 諸君 も その 力 を 貸し て くれよ う と して いる !
我々 に 世界 の 命運 が 懸かって いる の だ !
よって 私 は 今
祖国 を 代表 する 自由 共和 国 の 一員 と して
帝国 へ の 徹底 抗戦 を ―
ここ に 宣言 する !
( 共和 国 兵士 たち の 歓声 )
( 男性 ) 共和 国 は 落ち た ん じゃ なかった の か ?
( 男性 ) クソッ 軍 の ヤツ ら は 何 やって ん だ !
( 女性 ) ヨハン もう ずっと 連絡 が ない の
( 女性 ) まだ 戦争 は 続く の かしら …
( ラジオ 音声 ) 帝国 陸軍 発表 午後 3 時 の 戦局 情報 です
( 男性 ) 早く 南方 大陸 攻めろ よ
( 男性 ) 早く 南方 大陸 攻めろ よ
( ラジオ 音声 ) ド ・ ルーゴ 将軍 率いる 共和 国 軍 の 残党 は ―
( ラジオ 音声 ) ド ・ ルーゴ 将軍 率いる 共和 国 軍 の 残党 は ―
( 男性 ) これほど 長期 化 し て いい の か ?
( ラジオ 音声 ) ド ・ ルーゴ 将軍 率いる 共和 国 軍 の 残党 は ―
( 男性 ) これほど 長期 化 し て いい の か ?
逃亡 先 の 南方 大陸 にて 自由 共和 国 を 称し ―
( 男性 ) これほど 長期 化 し て いい の か ?
逃亡 先 の 南方 大陸 にて 自由 共和 国 を 称し ―
我が 帝国 軍 に 対 する 徹底 抗戦 を 宣言 し まし た
( グランツ ) フゥ …
一体 いつまで こんな こと が 続く ん でしょ う か
次 の クリスマス まで に は 戦争 も 終わる
そう 聞い て い た のに な
結局 休み も ほとんど なし
また いつも の 最 前線 で
泥 だらけ に なって 冷め た ご はん か あ …
( ヴィー シャ たち ) ハァ …
( ヴァイス ) “ 至難 の 戦場 ”
“ わずか な 報酬 剣 林 弾 雨 ( けん りん だ ん う ) の 日々 ”
“ 絶え ざる 危険 ”
“ 生還 の 暁 に は 名誉 と 称賛 を 得る ”
大隊 の 募集 要項 です か ?
ああ 最後 の 文句 以外 は 真実 だった な
( ルーデルドルフ ) 浮か ない 顔 だ な
まだ 久しぶり の 酒 が 抜け て ない の か ?
自由 共和 国 軍 と やら は 着々 と 戦力 を 拡大 中 だ そう だ
協商 連合 の 生き残り や 連合 王国 も 合流 し 始め た らしい
本土 で 進 ん で い た 講和 の 件 が 白紙 撤回 さ れる の も 当然 だ な
ぐ …
( ゼートゥーア ) 結局 の ところ ―
敵 を 倒し きれ なかった こと が 問題 で あ ろ う
こう なった 以上 南方 に 派兵 する しか ある まい
( ゼートゥーア ) 我々 は 陸軍 国家 だ
海 を 渡った 外 征 は 戦力 基盤 に 相当 な 負荷 を 及ぼす
規模 は 最小 限 に とどめ ね ば なら ん ぞ
少数 精鋭 か で は 例の 大隊 に 出 て もら お う
( ゼートゥーア ) ああ そう だ な …
( ルーデルドルフ ) ん ? 何 だ ?
( ゼートゥーア ) いや … 何も ない はず だ
我々 の 仲 だ 何 が 言い たい
( ゼートゥーア ) 我々 は 何 か を 間違って い ない だ ろ う か
( ルーデルドルフ ) ん ?
( ゼートゥーア ) 南方 作戦 とて ―
これ 以上 の 参 戦国 が 増え ない こと を 前提 に し た 計画 だ
もし 仮に 更 なる 国 が 戦争 に 参加 する と なる と …
う っ …
( ターニャ ) 戦火 の 絶え ない 呪わ れ た 世界 で ―
その 国 は “ 帝国 ” と 呼ば れ て い た
帝国 は 絶大 な 軍事 力 ―
卓越 し た 戦術 と 優れ た 機動 力 に より ―
ダキア 公 国 協商 連合 共和 国 を 圧倒
安全 保障 上 の 脅威 を 次々 に 退け 誰 も が 随喜 ( ず いき ) し た
だが それゆえ 彼ら は 想像 し え なかった
帝国 が 強大 無比 な 覇権 を 大陸 中央 に 確立 する と いう 事実 ―
その こと に 対 する 周辺 諸国 の 根本 的 な 恐怖 を …
( 将校 ) いやはや 信じ られ ん な ( 将校 ) まったく … 往生 際 の 悪い
( ターニャ ) 帝国 は 自ら が 握った 剣 の 鋭 さ を 誇示 する あまり ―
その 剣 に 対 する 恐怖 を 想像 し え ない で い た の だ
無論 誰 も が 平和 を 願って いる
そう あれ か し と …
そえ ゆえ 皆 平和 を 守る ため に 銃 を 取り ―
平和 を 願って 戦い に 身 を 投じる
( 人々 の 歓声 )
( ターニャ ) 過酷 な 戦争 を 終わら せる べく ―
帝国 以外 の 誰 も が 願って い た
帝国 と いう 邪悪 な 敵 が この 地 より 撃 滅 さ れ ん こと を
かくして 何たる 矛盾 だ ろ う か
皮肉 な こと に 平和 へ の 願い に よって ―
戦争 は 鎮まる どころ か 激化 の 一途 を たどって いく
( 徴兵 担当 官 ) 確かに 合衆国 軍 は 現在
友好 国 に 派遣 さ れる 義 勇 派兵 部隊 の 志願 を 募って い ます が …
メアリー ・ スー さん あなた は 志願 できる 最低 年齢 です
もっと じっくり 考え て から 決断 を し て も 遅く は …
( メアリー ) いえ 志願 し ます
心意気 は 大変 うれしく 思い ます が ―
戦場 に 出 れ ば ケガ を する かも しれ ませ ん し ―
命 を 落とす こと だって …
覚悟 は でき て い ます
( 徴兵 担当 官 ) お 母 様 …
それ に 亡くなら れ た お 父 様 も きっと
あなた が 平和 な 地 で 過ごさ れる こと を
願って おら れる はず です よ
それ は 分かって い ます
でも だ から こそ
私 は 自分 の できる こと を し たい の です
その 平和 を 守る ため に !
( 徴兵 担当 官 ) 決意 は 変わら ない よう です ね
分かり まし た で は 志願 に 際 し 宣誓 を !
宣誓 ! 私 は 守る べき 平和 の ため ―
何より 大切 な 家族 の ため
力 の 全て を 費やし ます !
もう 二 度 と 帝国 に よって 家族 を 失う 悲しみ が ―
繰り返さ れ ない 世界 を つくる ため に !
そして … 神 の 正義 を なす ため に !
主 を 信じる 善良 なる 心 に 誓って
神 の ご 加護 が あら ん こと を !
♪~
~♪
( ヴァイス ) 総員 傾注 !
大 隊長 より 訓示 !
諸君 やれ 停戦 だ 出撃 だ と まったく 上 も 勝手 な もの だ な
だが 仕事 で ある 以上 は やむ を えん
命令 に 従い 敵 を たたき 潰さ ね ば なる まい
と は 言え 今や 世界 の 全て が 我々 の 敵 だ
過酷 な 戦闘 は 避け られよ う も なく 泥沼 の 戦い に 終わり は 見え ない
だからこそ 諸君 ら に は 改めて 伝え て おき たい
この世 を つかさどる 神 が いる と すれ ば
どこまでも 厳格 で 限りなく 善良
あまり に も 偉大 な 存在 で あ ろ う
神 と やら は 非情 な 運命 ばかり を 突きつけ て くる
それ が 世界 に 課 せ られ た ルール の よう だ
( 将校 ) 派遣 でき た の は たった の 2 個 師団 と 支援 部 隊 のみ
( 将校 ) 共和 国 の 現地 警備 隊 で すら 対抗 可能 な 数 です
( 将校 ) ここ に 同盟 国 の 派兵 も 加わる と なる と …
( ゼートゥーア ) 現場 へ の 指示 は ?
既に 通達 済み だ
我が 軍 は 到着 と 同時に 徹底 し た 機動 戦 を 展開
分散 進撃 し て くる 敵 を 各 個 撃破 する 計画 です
その 先鋒 ( せ ん ぽ う ) と なる の が
デグレチャフ 少佐 の 率いる 二〇三 大隊
( 将校 ) しかし あの 少佐 とて この 程度 の 戦力 で は …
確かに ご もっとも な 意見 だ と 思い ます
( ターニャ ) そこ で だ 私 は 今 ここ に 改めて 宣言 する
おお 神 よ !
貴 様 を 切り 刻 ん で 豚 の エサ に でも して やる と !
( 隊員 たち の どよめき )
ですが 何一つ … 何一つ と して 心配 は ご 無用 でしょ う
クソッ タレ の 神 に 我ら が 戦場 は 不似合い だ !
今 こそ 神 の 仕事 を 肩代わり して やろ う で は ない か !
我ら 将兵 の ある うち は 我々 が 神 に 取って代わる の だ !
ごう 慢 な 神 と や ら を 失業 さ せ て やれ !
( 隊員 たち ) は っ !
( レル ゲン ) せ ん 越 ながら 申し上げ ます と ―
あれ は 幼女 の 皮 を かぶった ―
化 物 です !
では 戦友 諸君 …
戦争 の 時間 だ !