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Aozora Bunko, トロッコ (2/3)

トロッコ (2/3)

その後 十 日 余り たって から 、 良平 は 又 たった 一 人 、 午 過ぎ の 工事 場 に 佇み ながら 、 トロッコ の 来る の を 眺めて いた 。

すると 土 を 積んだ トロッコ の 外 に 、 枕木 を 積んだ トロッコ が 一 輛 、 これ は 本線 に なる 筈 の 、 太い 線路 を 登って 来た 。 この トロッコ を 押して いる の は 、 二 人 と も 若い 男 だった 。 良平 は 彼等 を 見た 時 から 、 何だか 親しみ 易い ような 気 が した 。 「 この 人 たち ならば 叱ら れ ない 」―― 彼 は そう 思い ながら 、 トロッコ の 側 へ 駈 け て 行った 。 「 おじさん 。 押して やろうか ? 」 その 中 の 一 人 、―― 縞 の シャツ を 着て いる 男 は 、 俯 向き に トロッコ を 押した まま 、 思った 通り 快い 返事 を した 。 「 おお 、 押して くよう 」 良平 は 二 人 の 間 に は いる と 、 力一杯 押し 始めた 。 「 われ は 中 中 力 が ある な 」 他の 一 人 、―― 耳 に 巻 煙草 を 挟んだ 男 も 、 こう 良平 を 褒めて くれた 。 その 内 に 線路 の 勾配 は 、 だんだん 楽に なり 始めた 。 「 もう 押さ なく と も 好い 」―― 良平 は 今にも 云われる か と 内心 気がかりで なら なかった 。 が 、 若い 二 人 の 土 工 は 、 前 より も 腰 を 起した ぎり 、 黙黙と 車 を 押し 続けて いた 。 良平 は とうとう こらえ 切れ ず に 、 怯ず 怯ず こんな 事 を 尋ねて 見た 。 「 何時までも 押して いて 好い ? 」 「 好い とも 」 二 人 は 同時に 返事 を した 。 良平 は 「 優しい 人 たち だ 」 と 思った 。 五六 町 余り 押し 続けたら 、 線路 は もう 一 度 急 勾配 に なった 。 其処 に は 両側 の 蜜柑 畑 に 、 黄色い 実 が いくつ も 日 を 受けて いる 。 「 登り 路 の 方 が 好い 、 何時までも 押さ せて くれる から 」―― 良平 は そんな 事 を 考え ながら 、 全身 で トロッコ を 押す ように した 。 蜜柑 畑 の 間 を 登り つめる と 、 急に 線路 は 下り に なった 。 縞 の シャツ を 着て いる 男 は 、 良平 に 「 やい 、 乗れ 」 と 云 った 。 良平 は 直 に 飛び乗った 。 トロッコ は 三 人 が 乗り移る と 同時に 、 蜜柑 畑 の におい を 煽り ながら 、 ひた 辷 り に 線路 を 走り出した 。 「 押す より も 乗る 方 が ずっと 好い 」―― 良平 は 羽織 に 風 を 孕ま せ ながら 、 当り前の 事 を 考えた 。 「 行き に 押す 所 が 多ければ 、 帰り に 又 乗る 所 が 多い 」―― そう も また 考えたり した 。 竹藪 の ある 所 へ 来る と 、 トロッコ は 静かに 走る の を 止めた 。 三 人 は 又 前 の ように 、 重い トロッコ を 押し 始めた 。 竹藪 は 何時か 雑木林 に なった 。 爪先 上 り の 所 所 に は 、 赤錆 の 線路 も 見え ない 程 、 落葉 の たまって いる 場所 も あった 。 その 路 を やっと 登り 切ったら 、 今度 は 高い 崖 の 向う に 、 広広 と 薄ら寒い 海 が 開けた 。 と 同時に 良平 の 頭 に は 、 余り 遠く 来 過ぎた 事 が 、 急に はっきり と 感じ られた 。 三 人 は 又 トロッコ へ 乗った 。 車 は 海 を 右 に し ながら 、 雑木 の 枝 の 下 を 走って 行った 。 しかし 良平 は さっき の ように 、 面白い 気もち に は なれ なかった 。 「 もう 帰って くれれば 好い 」―― 彼 は そう も 念じて 見た 。 が 、 行く 所 まで 行きつか なければ 、 トロッコ も 彼等 も 帰れ ない 事 は 、 勿論 彼 に も わかり切って いた 。 その 次に 車 の 止まった の は 、 切崩した 山 を 背負って いる 、 藁 屋根 の 茶店 の 前 だった 。 二 人 の 土 工 は その 店 へ は いる と 、 乳呑児 を おぶった 上さん を 相手 に 、 悠悠と 茶 など を 飲み 始めた 。 良平 は 独り いらいら し ながら 、 トロッコ の まわり を まわって 見た 。 トロッコ に は 頑丈な 車台 の 板 に 、 跳ねかえった 泥 が 乾いて いた 。 暫く の 後 茶店 を 出て 来 しな に 、 巻 煙草 を 耳 に 挟んだ 男 は 、( その 時 は もう 挟んで い なかった が ) トロッコ の 側 に いる 良平 に 新聞 紙 に 包んだ 駄菓子 を くれた 。 良平 は 冷淡に 「有難う」 と 云った 。 が 、 直 に 冷淡に して は 、 相手 に すまない と 思い 直した 。 彼 は その 冷淡 さ を 取り繕う ように 、 包み 菓子 の 一 つ を 口 へ 入れた 。 菓子 に は 新聞 紙 に あった らしい 、 石油 の に おい が しみついて いた 。 三 人 は トロッコ を 押し ながら 緩い 傾斜 を 登って 行った 。 良平 は 車 に 手 を かけて いて も 、 心 は 外 の 事 を 考えて いた 。 その 坂 を 向う へ 下り 切る と 、 又 同じ ような 茶店 が あった 。 土 工 たち が その 中 へ は いった 後 、 良平 は トロッコ に 腰 を かけ ながら 、 帰る 事 ばかり 気 に して いた 。 茶 店 の 前 に は 花 の さいた 梅 に 、 西日 の 光 が 消え かかって いる 。 「 もう 日 が 暮れる 」―― 彼 は そう 考える と 、 ぼんやり 腰かけて も い られ なかった 。 トロッコ の 車輪 を 蹴って 見たり 、 一 人 で は 動か ない の を 承知 し ながら うん うん それ を 押して 見たり 、―― そんな 事 に 気もち を 紛ら せて いた 。 ところが 土 工 たち は 出て 来る と 、 車 の 上 の 枕木 に 手 を かけ ながら 、 無造作に 彼 に こう 云 った 。 「 われ は もう 帰 ん な 。 おれたち は 今日 は 向う 泊り だ から 」 「 あんまり 帰り が 遅く なる と われ の 家 でも 心配 する ず ら 」 良平 は 一 瞬間 呆気 に とられた 。 もう かれこれ 暗く なる 事 、 去年 の 暮 母 と 岩村 まで 来た が 、 今日 の 途 は その 三四 倍 ある 事 、 それ を 今 から たった 一 人 、 歩いて 帰ら なければ なら ない 事 、―― そう 云 う 事 が 一 時 に わかった のである 。

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トロッコ (2/3) とろっこ trolley Wagen (2/3) Minecart (2/3) Carro (2/3) Chariot (2/3) Carrello (2/3) 토롯코 (2/3) Carrinho (2/3) 手推车 (2/3) 礦車 (2/3)

その後 十 日 余り たって から 、 良平 は 又 たった 一 人 、 午 過ぎ の 工事 場 に 佇み ながら 、 トロッコ の 来る の を 眺めて いた 。 そのご|じゅう|ひ|あまり|||りょうへい||また||ひと|じん|うま|すぎ||こうじ|じょう||たたずみ||とろっこ||くる|||ながめて| |||余|||||||||午||||||站着|||||||| |||more than|||||||||||||||standing still|||||||| |||ponad dziesięć|||||znów|zaledwie|||po|po||budowa|||stał|||||||obserwował| After ten days thereafter, Ryohei watching the arrival of the truck while standing alone in the construction site in the afternoon. 其後過了十天左右,良平又獨自一人站在午後的工地上,眺望著來的貨車。

すると 土 を 積んだ トロッコ の 外 に 、 枕木 を 積んだ トロッコ が 一 輛 、 これ は 本線 に なる 筈 の 、 太い 線路 を 登って 来た 。 |つち||つんだ|とろっこ||がい||まくらぎ||つんだ|とろっこ||ひと|りょう|||ほんせん|||はず||ふとい|せんろ||のぼって|きた |||||||||||||||||本线||||||||| ||||||||railroad ties||||||one|||main line||||||||| |ziemia||załadowany|||na zewnątrz|do|podkład||załadowany||||wagon|||główna linia||stać|powinien||gruby|tor kolejowy||wspinając się| Then, besides the mine truck with the soil, there was one mine truck with the sleepers, which climbed the thick railroad track, which should become the main line. 這時,裝滿泥土的貨車外,還有一輛裝著枕木的貨車,這應該是通往主線的,正沿著粗大的鐵道向上爬來。 この トロッコ を 押して いる の は 、 二 人 と も 若い 男 だった 。 |とろっこ||おして||||ふた|じん|||わかい|おとこ| |||||||||||young|młody mężczyzna| It was both young men who were pushing this truck. 正在推這輛貨車的,兩個都是年輕的男人。 良平 は 彼等 を 見た 時 から 、 何だか 親しみ 易い ような 気 が した 。 りょうへい||かれら||みた|じ||なんだか|したしみ|やすい||き|| ||||||||亲近|容易|||| |||||||||easy to approach|||| ||oni|||czasie||somehow|sympatia|łatwy|||| From the time I saw them, Ryohei felt that it was kind of familiar. 良平從看到他們的時候,就覺得似乎很親切。 「 この 人 たち ならば 叱ら れ ない 」―― 彼 は そう 思い ながら 、 トロッコ の 側 へ 駈 け て 行った 。 |じん|||しから|||かれ|||おもい||とろっこ||がわ||く|||おこなった ||||被骂||||||||||||||| ||||||||||||||||ran||| |||if they|skarceni||||||||||bok||biec|do|| “These guys can't be scolded.”—He thought, he went to the side of the truck. 「這些人應該不會罵我」—— 他一邊這樣想,一邊跑向小車旁。 「 おじさん 。 Uncle . 「叔叔。」 押して やろうか ? おして|やろう か |做吗 |shall I |Shall I Shall I push you? 要我推一下嗎? 」   その 中 の 一 人 、―― 縞 の シャツ を 着て いる 男 は 、 俯 向き に トロッコ を 押した まま 、 思った 通り 快い 返事 を した 。 |なか||ひと|じん|しま||しゃつ||きて||おとこ||うつむ|むき||とろっこ||おした||おもった|とおり|こころよい|へんじ|| |||||||||||||俯|||||||||愉快的||| |||||||||||||down|||||||||pleasant||| ten|wśród||jeden|człowiek|pasiasty|z|||||||pochylony|w dół|||||wciąż|myślał|zgodnie z oczekiwaniami|przyjemny|odpowiedź|| "One of them, a man wearing a striped shirt, responded as expected while holding the trolley in the heel. 那其中的一人,——穿著條紋襯衫的男人,低著頭推著小車,正如他所想的那樣,愉快地回答了。 「 おお 、 押して くよう 」   良平 は 二 人 の 間 に は いる と 、 力一杯 押し 始めた 。 |おして||りょうへい||ふた|じん||あいだ|||||ちからいっぱい|おし|はじめた ||来||||||||||||| ||like this||||||||||||| |||||||||||||z całych sił|| “Oh, let's push it.” Ryohei began to push as much as he was between them. 「哦,要我推嗎」良平在兩人之間,開始全力以赴地推。 「 われ は 中 中 力 が ある な 」   他の 一 人 、―― 耳 に 巻 煙草 を 挟んだ 男 も 、 こう 良平 を 褒めて くれた 。 ||なか|なか|ちから||||たの|ひと|じん|みみ||かん|たばこ||はさんだ|おとこ|||りょうへい||ほめて| 我|||||||||||||卷|||夹着||||||| ||||||||another||||||cigarette||||||||| |||w|||||inny|||ucho||papierosa|papieros||włożona||||||chwalić|podziękował "I'm in the middle," said one other man, a man with a cigarette in his ear and a cigarette, also praised Ryohei. 「我有中中力」另一個人,——耳中夾著煙草的男子也這樣稱讚了良平。 その 内 に 線路 の 勾配 は 、 だんだん 楽に なり 始めた 。 |うち||せんろ||こうばい|||らくに||はじめた |||||坡度||||| |w||tor||nachylenie||gradually|łatwiej|| In the meantime, the slope of the track began to become easier. 此時,鐵路的坡度開始變得逐漸容易。 「 もう 押さ なく と も 好い 」―― 良平 は 今にも 云われる か と 内心 気がかりで なら なかった 。 |おさ||||この い|りょうへい||いまにも|うん われる|||ないしん|きがかりで|| ||||||||马上就要|说|||内心|担心|| |||||||||would be said||||worried|| ||||||||zaraz|jest mówione|||wewnętrznie|zmartwiony|| "I don't want to push anymore." 「不再需要推了」——良平心裡擔心著,幾乎要如此被告知。 が 、 若い 二 人 の 土 工 は 、 前 より も 腰 を 起した ぎり 、 黙黙と 車 を 押し 続けて いた 。 |わかい|ふた|じん||つち|こう||ぜん|||こし||おこした||もくもくと|くるま||おし|つづけて| ||||||||||||||勉强|默默地||||| |||||||||||||sat up||silently||||| |młodzi||||grunt|robotnik||||też|w pasie||wstać||milcząco||||kontynuował| However, the two young earthworks kept their silence and pushing the car as long as they stood up more than before. 然而,年輕的兩位泥水匠,稍微挺起腰來,默默地繼續推著車子。 良平 は とうとう こらえ 切れ ず に 、 怯ず 怯ず こんな 事 を 尋ねて 見た 。 りょうへい||||きれ|||きょう ず|きょう ず||こと||たずねて|みた |||||||怯怯|||||| |||||||without courage|||||| |||wytrzymać|nie wytrzymał|||z obawą|z lękiem||sprawa||zapytując| Ryohei wasn't scared at last, and he asked and saw something like this. 良平終於忍不住,戰戰兢兢地問了這樣的問題。 「 何時までも 押して いて 好い ? いつまでも|おして||この い 什么时候||| forever||| how long|||dobrze "Can you keep pushing for as long as you want? 「要推到什麼時候才好呢?」 」 「 好い とも 」   二 人 は 同時に 返事 を した 。 この い|と も|ふた|じん||どうじに|へんじ|| |||||jednocześnie|odpowiedź|| "I like it," the two replied at the same time. 」 「 好的 」 兩人同時回答了。 良平 は 「 優しい 人 たち だ 」 と 思った 。 りょうへい||やさしい|じん||||おもった ||łagodny||||| Ryohei thought, "They are kind people." 良平心想:「真是溫柔的人們。」 五六 町 余り 押し 続けたら 、 線路 は もう 一 度 急 勾配 に なった 。 ごろく|まち|あまり|おし|つづけたら|せんろ|||ひと|たび|きゅう|こうばい|| ||||继续||||||||| ||||if continued||||||||| |miasto|ponad||jeśli kontynuowano|tor kolejowy|||||strome|strome nachylenie|| If I kept pushing it too much, the railroad track became steep again. 如果再繼續推進五六個街區,鐵路又將一次急勾配了。 其処 に は 両側 の 蜜柑 畑 に 、 黄色い 実 が いくつ も 日 を 受けて いる 。 そこ|||りょうがわ||みかん|はたけ||きいろい|み||いく つ||ひ||うけて| |||||蜜橘|田地|||||||||| |||||mandarin orange||||||||||| Tam|||po obu stronach||mandarynki|pole||yellow|owoce||ileś||||otrzymują światło| There are also yellow fruits in the tangerine fields on both sides. 那裡兩邊的蜜柑園裡,許多黃色的果實在陽光下閃耀。 「 登り 路 の 方 が 好い 、 何時までも 押さ せて くれる から 」―― 良平 は そんな 事 を 考え ながら 、 全身 で トロッコ を 押す ように した 。 のぼり|じ||かた||この い|いつまでも|おさ||||りょうへい|||こと||かんがえ||ぜんしん||とろっこ||おす|| wspinaczka|droga||strona|||||||||||||myśl||całym ciałem||trolej|||| ``I prefer the uphill road, because it will let me push as long as I want.'' Thinking this, Ryohei pushed the trolley with all his might. 「上坡的路比較好,因為可以讓我一直推下去」,良平一邊這樣想,一邊全身心地推著小車。 蜜柑 畑 の 間 を 登り つめる と 、 急に 線路 は 下り に なった 。 みかん|はたけ||あいだ||のぼり|||きゅうに|せんろ||くだり|| ||||||登||||||| ||||||climb||||||| mandarynki|pole|||||wspinać się||nagle|tor kolejowy||zjazd|| After climbing up through the mandarin orange fields, the track suddenly descended. 在蜜柑園之間向上攀登時,軌道突然轉為下坡。 縞 の シャツ を 着て いる 男 は 、 良平 に 「 やい 、 乗れ 」 と 云 った 。 しま||しゃつ||きて||おとこ||りょうへい|||のれ||うん| pasiasty||||||||||Hej|wsiadaj|and|mówił|powiedział The man in the striped shirt said to Ryohei, "Come on, get on." 穿著條紋襯衫的男人對良平說:「喂,上來。」 良平 は 直 に 飛び乗った 。 りょうへい||なお||とびのった ||prosto||skoczył na Ryohei jumped in immediately. 良平直接跳了上去。 トロッコ は 三 人 が 乗り移る と 同時に 、 蜜柑 畑 の におい を 煽り ながら 、 ひた 辷 り に 線路 を 走り出した 。 とろっこ||みっ|じん||のりうつる||どうじに|みかん|はたけ||||あおり|||すべり|||せんろ||はしりだした |||||乘上||||||||煽动||一直||滑|||| |||||board||||||||stirring||suddenly|||||| |||||przesiąść się||jednocześnie|mandarynki|pole||||wzbudzając zapach||z impetem|zjeżdżać|||tor kolejowy||ruszył At the same time as the three people were transferred, the truck started running on the track, whilst scorching the citrus field. 當三人同時上車時,小車沿著鐵路滑行,帶著柑橘園的香氣開始行駛。 「 押す より も 乗る 方 が ずっと 好い 」―― 良平 は 羽織 に 風 を 孕ま せ ながら 、 当り前の 事 を 考えた 。 おす|||のる|かた|||この い|りょうへい||はおり||かぜ||はらま|||あたりまえの|こと||かんがえた ||||||||||||||孕|||理所当然||| ||||||||||||||pregnant|||obvious||| |||wsiąść|||dużo||||hakama||wiatr||nosić wiatr|||oczywisty|||myślał o “It ’s much better to ride than to push.” — Ryohei thought about what was natural, while hareing the wind. 「推而不乘,反而更好」——良平一邊讓和服借風,一邊思考著理所當然的事情。 「 行き に 押す 所 が 多ければ 、 帰り に 又 乗る 所 が 多い 」―― そう も また 考えたり した 。 いき||おす|しょ||おおければ|かえり||また|のる|しょ||おおい||||かんがえたり| |||||如果多的话|||||||||||| |||||if many|||||||||||| |||miejsce||więcej miejsc|powrocie||znów|wsiadać|miejsce||||||| "If there are many places to push to go, there are many places to get on the way home again." 「去的時候推的地方多,回來的時候又乘的地方也多」——他也這樣思考過。 竹藪 の ある 所 へ 来る と 、 トロッコ は 静かに 走る の を 止めた 。 たけやぶ|||しょ||くる||とろっこ||しずかに|はしる|||とどめた |||||||||||||停下 bambusowy gaj|||||||||cicho|biegać||| When I came to a place with a bamboo basket, the minecart stopped running quietly. 來到有竹林的地方,手推車靜靜地停止了行駛。 三 人 は 又 前 の ように 、 重い トロッコ を 押し 始めた 。 みっ|じん||また|ぜん|||おもい|とろっこ||おし|はじめた The three of them started pushing the heavy trolley again. 竹藪 は 何時か 雑木林 に なった 。 たけやぶ||いつか|ぞうきばやし|| |||杂木林|| ||sometime|mixed forest|| bambusowy gaj||いつか|las liściasty|| At some point, the bamboo grove became a thicket. 竹林在某個時候變成了雜木林。 爪先 上 り の 所 所 に は 、 赤錆 の 線路 も 見え ない 程 、 落葉 の たまって いる 場所 も あった 。 つまさき|うえ|||しょ|しょ|||あかさび||せんろ||みえ||ほど|らくよう||||ばしょ|| 爪尖||||||||赤锈|||||||落叶|||||| toe||||||||red rust|||||||fallen leaves|||||| palce u nóg|||||miejscu|||czerwony rdza|of|||||tak|opadłe liście||nagromadzone||miejsca|| There was a place where the fallen leaves were accumulated in the place on the tip of the toe so that the red rust line could not be seen. 在尖端上升的地方,有些地方甚至看不見紅銹的鐵路,也有堆積落葉的地方。 その 路 を やっと 登り 切ったら 、 今度 は 高い 崖 の 向う に 、 広広 と 薄ら寒い 海 が 開けた 。 |じ|||のぼり|きったら|こんど||たかい|がけ||むかい う||ひろびろ||うすらさむい|うみ||あけた |||||||||崖||对面||||微微寒冷||| |||||||||cliff||||spacious||slightly cold||| |droga|||wspinać|jak tylko zszedł| teraz||wysoki|klif||na horyzoncie||szeroki||chilly|morze||otworzyła się When I finally reached the top of the road, I found myself facing a high cliff with a vast, cold sea on the other side. 當我終於爬上那條路後,這次是高崖的對面,展現出一片寬廣而微寒的海洋。 と 同時に 良平 の 頭 に は 、 余り 遠く 来 過ぎた 事 が 、 急に はっきり と 感じ られた 。 |どうじに|りょうへい||あたま|||あまり|とおく|らい|すぎた|こと||きゅうに|||かんじ| | jednocześnie|||głowie|||zbyt|daleko||minęło||||||odczuł| At the same time, Ryohei's mind suddenly became clear that he had come too far. 與此同時,良平的腦中感受到自己已經來得太遠,這種感覺突然變得明顯。 三 人 は 又 トロッコ へ 乗った 。 みっ|じん||また|とろっこ||のった The three of them boarded the trolley again. 三人再次上了手推車。 車 は 海 を 右 に し ながら 、 雑木 の 枝 の 下 を 走って 行った 。 くるま||うみ||みぎ||||ぞうき||えだ||した||はしって|おこなった ||||||||杂木||||||| ||||||||mixed trees||||||| ||||right||||krzewy||gałąź||pod||| The car drove under the branches of a thicket of trees, keeping the sea to the right. 車子沿著右手邊的海,穿過雜木樹枝行駛而過。 しかし 良平 は さっき の ように 、 面白い 気もち に は なれ なかった 。 |りょうへい|||||おもしろい|き もち|||| |||||||心情|||| |||||||feeling|||| However, Ryohei was not in an amused mood as before. 「 もう 帰って くれれば 好い 」―― 彼 は そう も 念じて 見た 。 |かえって||この い|かれ||||ねんじて|みた ||||||||念头| ||||||||wished| ||||||||życzył| "I'd be happy for you to leave now." -- He also saw it in his mind's eye. 「再回來就好了」——他這樣想過。 が 、 行く 所 まで 行きつか なければ 、 トロッコ も 彼等 も 帰れ ない 事 は 、 勿論 彼 に も わかり切って いた 。 |いく|しょ||ゆきつか||とろっこ||かれら||かえれ||こと||もちろん|かれ|||わかりきって| ||||||||||||||||||明白| ||||will not reach||||||||||||||understood| |iść|miejsce||||||oni|też|||||oczywiście|||||był However, he knew very well that if they didn't reach their destination, neither the handcar nor they could return. 但是,如果不去到能去的地方,無論是小車還是他們都無法回去,這一點他當然也清楚。 その 次に 車 の 止まった の は 、 切崩した 山 を 背負って いる 、 藁 屋根 の 茶店 の 前 だった 。 |つぎに|くるま||とまった|||きりくずした|やま||せおって||わら|やね||ちゃみせ||ぜん| |||||||坍塌的|||背负着||稻草|||||| |||||||collapsed||||||||tea shop||| |następnie||||||osunięta góra|||niesionym||słoma|dach||herbaciarni||| The next place the car stopped was in front of a straw-roofed tea shop, which stood against a crumbled mountain. 接下來車停下來的地方,是背負著切崩山的稻草屋頂的茶館前。 二 人 の 土 工 は その 店 へ は いる と 、 乳呑児 を おぶった 上さん を 相手 に 、 悠悠と 茶 など を 飲み 始めた 。 ふた|じん||つち|こう|||てん|||||ちち どんじ||お ぶった|のぼさ ん||あいて||ゆうゆうと|ちゃ|||のみ|はじめた |||||||||||||||夫人||||悠闲地||||| ||||||||||||||auf dem Rücken|Frau Ue||||||||| ||||||||||||baby||carried|woman||||leisurely||||| ||||||||||||niemowlę||nosiła|pani||partner||powoli||||| When the two laborers entered the shop, they started leisurely drinking tea with the shopkeeper, who was carrying a baby on his back. 兩個土工進入店裡,悠閒地喝著茶,面對著背著嬰兒的老婆。 良平 は 独り いらいら し ながら 、 トロッコ の まわり を まわって 見た 。 りょうへい||ひとり||||とろっこ|||||みた ||Sam|irritated|||||około||wokół| Ryohei walked around the tram alone, feeling frustrated. 良平獨自煩躁地繞著小車走了一圈。 トロッコ に は 頑丈な 車台 の 板 に 、 跳ねかえった 泥 が 乾いて いた 。 とろっこ|||がんじょうな|くるま だい||いた||はねかえった|どろ||かわいて| |||坚固的|||||弹回的|||| |||sturdy|carriage frame||||bounced back|||| |||solidny|podwozie pojazdu||płyta||odbite|błoto||wyschnięty| On the tram, the dried mud bounced on the sturdy platform boards. 小車的堅固底板上乾了彈跳回來的泥巴。 暫く の 後 茶店 を 出て 来 しな に 、 巻 煙草 を 耳 に 挟んだ 男 は 、( その 時 は もう 挟んで い なかった が ) トロッコ の 側 に いる 良平 に 新聞 紙 に 包んだ 駄菓子 を くれた 。 しばらく||あと|ちゃみせ||でて|らい|||かん|たばこ||みみ||はさんだ|おとこ|||じ|||はさんで||||とろっこ||がわ|||りょうへい||しんぶん|かみ||つつんだ|だがし|| 过了一会儿|||||||しな||||||||||||||夹着|||||||||||||||零食|| |||||||||Zigarette||||||||||||||||||||||||||||| Chwilę|||herbaciarnia||||||papieros|papierosy||ucho||włożył|||||||włożył||||||boku|||||gazeta|papier||opakowane|słodycze|| A man who had just come out of the tea shop placed a rolled up cigarette behind his ear, and (although he no longer had it at that time) gave Ryohei wrapped confectionery in a newspaper as he stood next to the tram. 不久後,從茶店出來的男人,耳朵夾著捲煙(當時已經不夾了),給正在側邊的良平一包用報紙包著的小零食。 良平 は 冷淡に 「有難う」 と 云った 。 りょうへい||れいたんに|ありがたう||うん った ||冷淡地||| ||coldly|thank you||said ||coldly|dziękuję||powiedział 良平冷淡地說了聲「謝謝」。 が 、 直 に 冷淡に して は 、 相手 に すまない と 思い 直した 。 |なお||れいたんに|||あいて||||おもい|なおした |再|||||||||| |prosto||zimno|||osoba|||||naprawił However, I was reminded that I'm sorry for the other party if I was apathetic. 但是,他立即想起直接冷淡對對方不太好,便改了主意。 彼 は その 冷淡 さ を 取り繕う ように 、 包み 菓子 の 一 つ を 口 へ 入れた 。 かれ|||れいたん|||とりつくろう||つつみ|かし||ひと|||くち||いれた |||冷淡|||掩饰|||||||||| |||indifference||||||||||||| |||obojętność|||ukryć||opakowanie|słodycze||||||| To compensate for his indifference, he put one of the wrapped pastries in his mouth. 他 像 是 要 掩飾 那種 冷淡 , 把 一 個 包 裏 點 心 放進 了 嘴 裡。 菓子 に は 新聞 紙 に あった らしい 、 石油 の に おい が しみついて いた 。 かし|||しんぶん|かみ||||せきゆ|||||| |||||||||||||渗透| |||||||||||||soaked in| słodycze|||newspaper|||||olej|||||przesiąknięty| The pastry had a petroleum stain on it, apparently from the newspaper. 點 心 上 碰到 的 似乎 是 報 紙 , 沾 了一 股 石 油 的 香 味。 三 人 は トロッコ を 押し ながら 緩い 傾斜 を 登って 行った 。 みっ|じん||とろっこ||おし||ゆるい|けいしゃ||のぼって|おこなった |||||||缓的|||| |||||||łagodny|nachylenie||wspinać| The three of them pushed the trolley up the gentle slope. 三 個 人 一邊 推著 小 車 一邊 緩 緩 地 上 山。 良平 は 車 に 手 を かけて いて も 、 心 は 外 の 事 を 考えて いた 。 りょうへい||くるま||て|||||こころ||がい||こと||かんがえて| |||||||||||outside||||| Even though Ryohei had his hand on the car, his mind was thinking about things outside. 良平雖然手上在碰車,但心裡卻在考慮外面的事情。 その 坂 を 向う へ 下り 切る と 、 又 同じ ような 茶店 が あった 。 |さか||むかい う||くだり|きる||また|おなじ||ちゃみせ|| that|stromej drogi||w kierunku||down|przejść|||||herbaciarnia|| Once he went down the hill and reached the bottom, there was another similar teahouse. 下了那個坡後,又有一家同樣的茶館。 土 工 たち が その 中 へ は いった 後 、 良平 は トロッコ に 腰 を かけ ながら 、 帰る 事 ばかり 気 に して いた 。 つち|こう||||なか||||あと|りょうへい||とろっこ||こし||||かえる|こと||き||| ||||||||||||||talia||siedział|||||||| After the laborers entered it, Ryohei sat on the trolley and could only think about going back. 在土工們進去之後,良平坐在小火車上,只在想著回家的事情。 茶 店 の 前 に は 花 の さいた 梅 に 、 西日 の 光 が 消え かかって いる 。 ちゃ|てん||ぜん|||か|||うめ||にしび||ひかり||きえ|| ||||||||盛开的|||西日|||||| ||||||||bloomed|||setting sun|||||| ||||||||kwitnących|śliwa||zachodnie słońce||||wygasa|| 茶店前面盛開的梅花,西陽的光線正逐漸消失。 「 もう 日 が 暮れる 」―― 彼 は そう 考える と 、 ぼんやり 腰かけて も い られ なかった 。 |ひ||くれる|かれ|||かんがえる|||こしかけて|||| |日|助词|暮れる||||||发呆||||| ||||||||||sat down|||| |dzień||zmierzcha||||||mgliste|siedząc|||could|nie było "It's already dark."-He couldn't even sit vaguely, thinking so. 「天要黑了」——他如此想到,便無法再茫然地坐著。 トロッコ の 車輪 を 蹴って 見たり 、 一 人 で は 動か ない の を 承知 し ながら うん うん それ を 押して 見たり 、―― そんな 事 に 気もち を 紛ら せて いた 。 とろっこ||しゃりん||けって|みたり|ひと|じん|||うごか||||しょうち|||||||おして|みたり||こと||き もち||まぎら|| ||||踢|||||||||||||嗯|||||||||||分散|| ||||||||||||||||||||||||||||distraction|| ||koła||kopiąc||||||||||wiedząc|||tak, tak|||||||||||rozpraszać|| Kicking the wheel of the truck, and knowing that it couldn't move alone, I pushed it by yeah, and I was confused about it. 他踢著小車的輪子,明知道一個人是無法移動的,卻仍然試著推著——就這樣分散著自己的注意力。 ところが 土 工 たち は 出て 来る と 、 車 の 上 の 枕木 に 手 を かけ ながら 、 無造作に 彼 に こう 云 った 。 |つち|こう|||でて|くる||くるま||うえ||まくらぎ||て||||むぞうさに|かれ|||うん| ||||||||||||||||||随意地||||| Jednak|gleba|||||||||||podkład||||na||bezładnie||||| But when the earthmovers came out, they put their hands on the sleepers on top of the car and told him curtly, "We're going to have to go back to the car. 然而,工人們出來時,一邊用手扶著車上的枕木,隨意地對他說道。 「 われ は もう 帰 ん な 。 |||かえ|| |||回|| "I am not going back. 「我們要回去了。」 おれたち は 今日 は 向う 泊り だ から 」 「 あんまり 帰り が 遅く なる と われ の 家 でも 心配 する ず ら 」   良平 は 一 瞬間 呆気 に とられた 。 ||きょう||むかい う|とまり||||かえり||おそく|||||いえ||しんぱい||||りょうへい||ひと|しゅんかん|ぼけ き||とら れた 我们||||||||||||||||||||会||||||呆住|| |||||overnight stay|||||||||||||||||||||astonished||taken aback ||dzisiaj||w stronę|nocleg|||za bardzo|||późno|||||||martwić się|||będziemy||||moment|zaskoczony|| We're staying over there today. "" I'm worried about my house being too late to return. "Ryohei was taken a moment by dismay. 「我們今天要去那邊過夜,所以如果回得太晚,我們家也會擔心的。」良平一時間愣住了。 もう かれこれ 暗く なる 事 、 去年 の 暮 母 と 岩村 まで 来た が 、 今日 の 途 は その 三四 倍 ある 事 、 それ を 今 から たった 一 人 、 歩いて 帰ら なければ なら ない 事 、―― そう 云 う 事 が 一 時 に わかった のである 。 ||くらく||こと|きょねん||くら|はは||いわむら||きた||きょう||と|||さんし|ばい||こと|||いま|||ひと|じん|あるいて|かえら||||こと||うん||こと||ひと|じ||| |大约||||||暮|||||||||路程|||三四||||||||||||||||||||||一|时||| ||||||||||Iwamura|||||||||three or four|||||||||||||||||||||||||| |już od jakiegoś czasu|ciemno|||zeszły rok||rok|matka||Iwamura||||||droga||| trzy lub cztery|razy||||||||||idąc samotnie|wrócić|||||||jest||||||Zrozumiałem| I knew at once that it was going to be dark soon, that the journey to Iwamura with my mother at the end of last year was thirty-four times longer, and that I would have to walk all the way home by myself. 已經快要變暗了,去年我來到暮母和岩村,但今天的路程是那時的三四倍,現在必須一個人走回去——我一下子就明白了這件事。