三 姉妹 探偵 団 3 Chapter 12 みっ|しまい|たんてい|だん|chapter

12　 秘密 取引 ひみつ|とりひき

朝 が 来た 。 あさ||きた

と いって も 、 まだ 、 やっと 夜 が 明けた 、 と いう 状態 で 、 通り に も 車 の 姿 は ほとんど なかった 。 |||||よ||あけた|||じょうたい||とおり|||くるま||すがた||| Although saying that, still, the night finally opened, there were few cars on the street.

「── 眠い よう 」 ねむい|

と 、 目 が 閉じ そうに なる の を 、 必死で こじあけて いる の は 、 杉 下 ルミ だ 。 |め||とじ|そう に||||ひっしで|||||すぎ|した|るみ|

「 寝れば ？ ねれば

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 あんた は ？

「 私 は 国 友 さん が 来る の を 待って る わ よ 」 わたくし||くに|とも|||くる|||まって|||

「 じゃ 、 私 も 待って る ！ |わたくし||まって|

と 、 ルミ は 頭 を 振って 、 何とか 目 を 覚まそう と した 。 |るみ||あたま||ふって|なんとか|め||さまそう||

夕 里子 は 、 何 を 言う 元気 も ない 。 ゆう|さとご||なん||いう|げんき||

今 、 夕 里子 と 勇一 、 それ に ルミ の 三 人 は 、 小峰 邸 の 近く に あった 二十四 時間 営業 の レストラン に 入って いた 。 いま|ゆう|さとご||ゆういち|||るみ||みっ|じん||こみね|てい||ちかく|||にじゅうし|じかん|えいぎょう||れすとらん||はいって|

こんな 明け方 と いう のに 、 長 距離 トラック の 運転手 など で 、 結構 客 は 入って いる 。 |あけがた||||ちょう|きょり|とらっく||うんてんしゅ|||けっこう|きゃく||はいって|

小峰 邸 で の 大騒ぎ に とても 堪え 切れ ず 、 ここ へ 避難 して 来た のである 。 こみね|てい|||おおさわぎ|||こらえ|きれ||||ひなん||きた|

「 あれ が 俺 の 祖父 か ……」 ||おれ||そふ|

と 、 勇一 は 呟く ように 、 何度 目 か の 言葉 を 口 に した 。 |ゆういち||つぶやく||なんど|め|||ことば||くち||

夕 里子 から 、 小 峰 と 、 母親 と の こと を 聞か さ れた のである 。 ゆう|さとご||しょう|みね||ははおや|||||きか|||

「 何 だって 、 うち の お 袋 、 あんな 奴 の 娘 に 生れた んだ ろ 」 なん|||||ふくろ||やつ||むすめ||うまれた||

と 、 勇一 は 言った 。 |ゆういち||いった

「 金持 なんて ！ かねもち| 最低じゃ ねえ か 」 さいていじゃ||

「 どんな 事情 が あった の か 分 ら ない わ 」 |じじょう|||||ぶん|||

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 非難 する の は 、 それ が 分 って から に し なさい よ 」 ひなん||||||ぶん|||||| "To blame it, do it after you know it"

「 お 説教 は よせよ 」 |せっきょう|| "Prepare your sermons"

と 、 勇一 は 横 を 向いて しまった 。 |ゆういち||よこ||むいて|

「── 助かる と いい わ ね 」 たすかる||||

少し 間 を 置いて 、 夕 里子 が 言った 。 すこし|あいだ||おいて|ゆう|さとご||いった

「 知る かい 」 しる|

勇一 は 、 外 を 見た まま 、 言った 。 ゆういち||がい||みた||いった

拳銃 で 撃た れた 小 峰 は 、 病院 へ 運ば れて いた 。 けんじゅう||うた||しょう|みね||びょういん||はこば||

弾丸 は わずかに 心臓 を それて いた が 、 何といっても 、 老人 であり 、 助かる か どう か 、 半々 と いう ところ らしかった 。 だんがん|||しんぞう|||||なんといっても|ろうじん||たすかる||||はんはん||||

夕 里子 は 、 ウェイター を 呼んで 、 コーヒー を 頼んだ 。 ゆう|さとご||||よんで|こーひー||たのんだ

もう 五 杯 目 だ 。 |いつ|さかずき|め| It is already the fifth cup.

「── 俺 も もらおう 」 おれ||

と 、 勇一 が 言って 、 それ から 、 |ゆういち||いって||

「 ごめん よ 」

「 何 が ？ なん|

「 珠美 の こと 、 心配だ ろ ？ たまみ|||しんぱいだ|

それなのに 、 俺 一 人 で 文句 言って て ……」 |おれ|ひと|じん||もんく|いって|

「 いい わ よ 」

夕 里子 は 微笑んで 見せた 。 ゆう|さとご||ほおえんで|みせた

「 珠美 は しっかり して る から 、 大丈夫 。 たまみ||||||だいじょうぶ 何とか 切り抜ける わ よ 」 なんとか|きりぬける||

自分 に 向 って も 、 言って いる のだった 。 じぶん||むかい|||いって||

国 友 が 、 店 に 入って 来た 。 くに|とも||てん||はいって|きた

「 や あ 」

と だけ 言って 、 ドサッ と 席 に つく 。 ||いって|||せき||

「 お 疲れ さま 」 |つかれ|

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 片付いた の ？ かたづいた| 「 まだ だ 。 " Still .

でも 、 後 は もう 任せて おける 。 |あと|||まかせて| But I can leave it to you later. ── くたびれた ！ と 、 大 欠 伸 を する 。 |だい|けつ|しん||

「 ごめんなさい 。

もっと 私 たち が 早く 知らせて あげて れば 、 お 客 たち が 帰り 出す 前 に 、 手 を 打てた のに ね 」 |わたくし|||はやく|しらせて||||きゃく|||かえり|だす|ぜん||て||うてた|| If we let you know sooner, we could hurt our hands before our customers left. "

「 同じ こと さ 。 おなじ||

ともかく 偉い の ばかり 、 手 こ ずる よ 」 |えらい|||て|||

「 手がかり は ？ てがかり|

「 うん 。

──、 小 峰 の 秘書 から 話 を 聞いて る 」 しょう|みね||ひしょ||はなし||きいて|

「 競売 で 司会 を して た 人 かしら 」 きょうばい||しかい||||じん|

「 そうだ 。 そう だ

珠美 君 の こと も 、 きっと 何 か 知って る 。 たまみ|きみ|||||なん||しって| 訊 き 出して 見せる よ 」 じん||だして|みせる|

「 信じて る わ 」 しんじて||

夕 里子 は 肯 いた 。 ゆう|さとご||こう|

「 その 子 も 、 きっと ね 」 |こ|||

見れば 、 杉 下 ルミ は 、 もう グーグー 眠って いる のだった 。 みれば|すぎ|した|るみ||||ねむって||

「── 眠って る と 、 あんまり 憎らしく 見え ない わ ね 」 ねむって||||にくらしく|みえ|||

と 、 夕 里子 は 微笑んだ 。 |ゆう|さとご||ほおえんだ

「 全く だ 」 まったく|

国 友 は 、 コーヒー を 注文 して 、 運ば れて 来る と 、 たちまち 飲み干して しまった 。 くに|とも||こーひー||ちゅうもん||はこば||くる|||のみほして|

「── もう 一 杯 ！ |ひと|さかずき 「 胃 に 悪い わ よ 」 い||わるい||

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 目 が 覚め ない んだ 。 め||さめ||

仕方ない よ 」 しかたない|

「 若い から って 、 無理 し ないで 」 わかい|||むり||

「 それ は こっち の セリフ だ よ 」 ||||せりふ||

と 、 国 友 は 苦笑 した 。 |くに|とも||くしょう| And the national friend smiled bitterly.

「 小峰 さん の 容態 、 どう な の ？ こみね|||ようだい|||

「 今 、 問い合せた けど 、 変り ない ようだ 。 いま|といあわせた||かわり||

今日 一杯 もてば 大丈夫 、 と 言って る 」 きょう|いっぱい||だいじょうぶ||いって|

「 そう 」

夕 里子 は 肯 いた 。 ゆう|さとご||こう|

「── ね 、 あんた は お 母さん から 、 小峰 さん の こと 、 聞か なかった の ？ ||||かあさん||こみね||||きか|| 「 全然 」 ぜんぜん

と 、 勇一 は 首 を 振った 。 |ゆういち||くび||ふった

「 お 袋 は 両親 が とっくに 死んで る と 言って た 」 |ふくろ||りょうしん|||しんで|||いって|

「 親戚 付合い と か 、 何 か なかった の ？ しんせき|つきあい|||なん|||

「 うち の お 袋 、 えらく しっかり者 だった んだ 。 |||ふくろ||しっかりもの||

── 他人 は 当て に なら ない って の が 、 口ぐせ だった 。 たにん||あて|||||||くちぐせ| ── It was a casual thought that others could not be counted on. 親戚 だけ じゃ なくて 、 近所 の かみ さん たち と も 、 まるで 付合って なかった みたいだ 。 しんせき||||きんじょ||||||||つきあって|| 住んで た 団地 じゃ 嫌わ れて た んだ ぜ 」 すんで||だんち||きらわ||||

「 へえ 」

「 しっかり は して る けど 、 どこ か 呑気 って の か な 。 |||||||のんき|||| "I am doing well, but is somewhere dangerous?

どっしり 構えて る って とこ が あった んだ 。 |かまえて|||||| そういう とこ が 、 お 高く 止って る と か 言わ れて 、 近所 じゃ 嫌わ れて た みたいだ な 」 ||||たかく|とまって||||いわ||きんじょ||きらわ|||| It seems that such things were told that they were stopping high, and they were hated in the neighborhood. "

それ は 、 小峰 家 の 一 人 娘 と いう 育ち の せい だろう 、 と 夕 里子 は 思った 。 ||こみね|いえ||ひと|じん|むすめ|||そだち|||||ゆう|さとご||おもった

育った 環境 で 身 に つけた 生活 の テンポ と いう の は 、 そう 簡単に は 変ら ない もの だ 。 そだった|かんきょう||み|||せいかつ||てんぽ||||||かんたんに||かわら||| To say the tempo of the life worn by the raised environment is not so easy to change.

「── 父親 の こと を 聞か せて くれ ない ？ ちちおや||||きか|||

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 父親 ？ ちちおや

── ああ 、 俺 の 親父 の こと か 」 |おれ||おやじ|||

勇一 は 肩 を すくめた 。 ゆういち||かた||

「 俺 は 顔 も 知ら ねえ よ 」 おれ||かお||しら||

「 家 を 出た って ── じゃ 、 そんなに 昔 の こと な の ？ いえ||でた||||むかし||||

「 うん 。

家 を 出た 、 と いう より 、 結婚 する ところ まで 行か なかった んじゃ ない か な 。 いえ||でた||||けっこん||||いか||||| Rather than leaving home, I guess I did not go to where I got married. 俺 が 生れた こと は 知って たろう けど 」 おれ||うまれた|||しって||

「 有田 って いう 人 な んでしょ ？ ありた|||じん||

「 名前 は 知ら ない よ 。 なまえ||しら||

有田 って の は 、 父親 の 名前 じゃ ない んだ 」 ありた||||ちちおや||なまえ|||

「 違う の ？ ちがう|

「 うん 。

俺 が 五 つ か 六 つ ぐらい の とき に 、 お 袋 、 一 度 結婚 した んだ よ 。 おれ||いつ|||むっ|||||||ふくろ|ひと|たび|けっこん||| その 相手 が 有田 って いったん だ 」 |あいて||ありた|||

「 その 人 は ？ |じん|

「 結婚 して 一 ヵ 月 目 に 事故 で 死 ん じ まった 。 けっこん||ひと||つき|め||じこ||し|||

その こと は 憶 えて る 」 |||おく||

「 まあ 。

── 運 が 悪い の ね 」 うん||わるい||

「 そう だ な 」

勇一 は 、 ちょっと 唇 の 端 で 笑った 。 ゆういち|||くちびる||はし||わらった

「 でも ── お 袋 は 、 大して ショック で も ない みたいだった 。 ||ふくろ||たいして|しょっく|||| お 袋 は ね 、 少女 みたいに ロマンチックな ところ が あった んだ 」 |ふくろ|||しょうじょ||ろまんちっくな||||

「 少女 みたいに ──？ しょうじょ|

「 うん ……」

勇一 は 、 ちょっと 視線 を 遠く へ 向けた 。 ゆういち|||しせん||とおく||むけた

母親 の 面影 を 追い かける ように 。 ははおや||おもかげ||おい||

「 しっかり者 で 、 自分 で 働いて 、 俺 を 育てた し 、 太っ腹で 、 俺 が 喧嘩 相手 を 死な せて 少年院 送り に なった とき も 、『 これ も 人生 勉強 だ よ 』 って 言って 怒り も し なかった 。 しっかりもの||じぶん||はたらいて|おれ||そだてた||ふとっぱらで|おれ||けんか|あいて||しな||しょうねんいん|おくり|||||||じんせい|べんきょう||||いって|いかり||| "I am a solid person, I worked myself, raised myself, and when I got sent to a juvenile training school by letting a fighting opponent die, I was angry also to say" This is also life study " There was not.

── でも 、 その 一方 じゃ 、『 私 が 愛して た の は 、 あんた の お 父さん だけ よ 』 なんて 、 大真面目に 言う んだ 」 ||いっぽう||わたくし||あいして|||||||とうさん||||おおまじめに|いう| ─ ─ But, on the other hand, say, "I am the only one your father loved" to the great seriousness. "

夕 里子 は 、 思い も かけ ない 優し さ が 溢れる 勇一 の 顔 を 見て 、 ふと 胸 の 熱く なる の を 覚えた 。 ゆう|さとご||おもい||||やさし|||あふれる|ゆういち||かお||みて||むね||あつく||||おぼえた Yuriko saw Yuichi 's face full of unexpected kindness, and suddenly learned that his chest got hot.

この 子 、 母親 を 本当に 愛して た んだ わ 、 と 思った 。 |こ|ははおや||ほんとうに|あいして|||||おもった

そして 、 それ だけ の 魅力 ある 母親 だった のだ 、 と いう こと も 分 った ……。 ||||みりょく||ははおや|||||||ぶん| And I also found out that it was such an attractive mother ... ....

「 素敵な 人 だった の ね 、 あんた の お 母さん 」 すてきな|じん|||||||かあさん

と 、 夕 里子 は 言った |ゆう|さとご||いった

勇一 が 夕 里子 を 見て 、 微笑んだ 。 ゆういち||ゆう|さとご||みて|ほおえんだ

「── ありがとう 」

と 、 勇一 は 言って 、 それ から 表情 を 引き締める と 、「 だから 許せ ない んだ ── お 袋 を 殺した 奴 の こと が 」 |ゆういち||いって|||ひょうじょう||ひきしめる|||ゆるせ||||ふくろ||ころした|やつ|||

「 しかし な 」 "But"

と 、 国 友 が 静かに 言った 。 |くに|とも||しずかに|いった

「 制裁 は こっち へ 任せろ 。 せいさい||||まかせろ お 袋 さん だって 、 お前 が また 少年院 送り に なる の を 喜び や し ない ぞ 」 |ふくろ|||おまえ|||しょうねんいん|おくり|||||よろこび|||| Even bags will not be pleased that you will be sent to a juvenile training school again "

勇一 は 、 真 直ぐに 国 友 の 目 を 見返して 、 ゆういち||まこと|すぐに|くに|とも||め||みかえして

「 お 袋 に ゃ 喜ぶ こと も 、 怒る こと も でき ない んだ よ 」 |ふくろ|||よろこぶ|||いかる|||||| "I can not get joyful or angry with your bags"

と 言った 。 |いった

国 友 も 、 それ に は 何も 言え ない 。 くに|とも|||||なにも|いえ|

── 勇一 は 、 立ち上る と 、 化粧 室 へ 歩いて 行った 。 ゆういち||たちのぼる||けしょう|しつ||あるいて|おこなった

「 やれやれ 」

と 、 国 友 は ため息 を ついた 。 |くに|とも||ためいき||

「 でも 、 悪い 子 じゃ ない と 思う わ 」 |わるい|こ||||おもう|

夕 里子 の 言葉 に 、 国 友 は 肯 いた 。 ゆう|さとご||ことば||くに|とも||こう|

「 分 って る さ 。 ぶん|||

僕 だって そう 思う 。 ぼく|||おもう だから 、 いい 機会 さえ あれば 、 きっと 並 じゃ ない 人間 に なる と 思って 、 ため息 を ついた んだ 」 ||きかい||||なみ|||にんげん||||おもって|ためいき|||

「 そう ね 」

夕 里子 は 微笑んだ 。 ゆう|さとご||ほおえんだ

「 国 友 さん と 意見 が 一致 して 嬉しい わ 」 くに|とも|||いけん||いっち||うれしい|

「 いつも 一致 して る じゃ ない か 」 |いっち|||||

「 そう ね 」

二 人 は 、 ゆっくり と コーヒー を 飲んだ 。 ふた|じん||||こーひー||のんだ

国 友 は ブラック で 、 夕 里子 は 、 クリーム も 砂糖 も たっぷり 入れて 。 くに|とも||ぶらっく||ゆう|さとご||くりーむ||さとう|||いれて

「 珠美 君 の こと が 心配だ な 」 たまみ|きみ||||しんぱいだ|

と 、 国 友 は 言った 。 |くに|とも||いった

「 屋敷 の 中 は 捜して みた んだ が ……」 やしき||なか||さがして|||

「 あの 子 は 大丈夫 よ 。 |こ||だいじょうぶ|

でも ── もちろん 早く 捜し 出し たい けど 」 ||はやく|さがし|だし||

「 当然だ 。 とうぜんだ

── 僕 が 現場 に 居 合せれば 、 事情 は 違って いた かも しれ ない のに 。 ぼく||げんば||い|あわせれば|じじょう||ちがって||||| 僕 の 手落ち だ よ 」 ぼく||ておち||

「 だけど ──」

夕 里子 は 、 ともすれば 落ち 込み かける 気持 を 立て直して 、「 小峰 さん を 撃った の は 誰 な の かしら ？ ゆう|さとご|||おち|こみ||きもち||たてなおして|こみね|||うった|||だれ|||

動機 は ？ どうき| 「 あれ だけ の 資産 家 だ から ね 。 |||しさん|いえ|||

狙わ れる こと が あって も 不思議じゃ ない が ──」 ねらわ||||||ふしぎじゃ||

国 友 は 、 勇一 が 立って 行った 化粧 室 の 方 へ 目 を やって 、「 そう か 。 くに|とも||ゆういち||たって|おこなった|けしょう|しつ||かた||め||||

もしかすると 、 あの 子 の こと が 絡んで る かも しれ ない な 」 ||こ||||からんで|||||

「 私 も そう 思った の 。 わたくし|||おもった|

勇一 が 小峰 さん の 孫 だって こと が 証明 さ れたら 、 相当な 財産 を 引き継ぐ わけでしょう ？ ゆういち||こみね|||まご||||しょうめい|||そうとうな|ざいさん||ひきつぐ| 「 有田 信子 の 死 で 、 孫 の 存在 が 知れた 。 ありた|のぶこ||し||まご||そんざい||しれた

その 直後 に 小 峰 が 撃た れた 」 |ちょくご||しょう|みね||うた|

「 偶然 と は 思え ない わ 」 ぐうぜん|||おもえ||

「 うん ……」

国 友 は 考え 込んだ 。 くに|とも||かんがえ|こんだ

「 それ に 、 もし 、 有田 信子 殺し まで 、 それ に 絡んで る と したら ？ |||ありた|のぶこ|ころし||||からんで|||

「 可能 性 は ある な 」 かのう|せい|||

「 大体 、 有田 信子 を 殺す 動機 って 、 何 か 考え られる ？ だいたい|ありた|のぶこ||ころす|どうき||なん||かんがえ|

捜査 で 分 った こと が ある の ？ そうさ||ぶん||||| 国 友 は 、 ちょっと 夕 里子 を 眺めて いた が 、 やがて 諦めた ように 、 くに|とも|||ゆう|さとご||ながめて||||あきらめた|

「 いい だろう 。

── 君 たち 姉妹 を 巻き 込み たく なかった んだ が 、 ここ まで 来て しまって は ね 」 きみ||しまい||まき|こみ|||||||きて|||

「 そう よ 。

諦めて 白状 し なさい 」 あきらめて|はくじょう||

国 友 は 、 苦笑 した 。 くに|とも||くしょう|

「── 有田 信 子 に は 恋人 が いた らしい 」 ありた|しん|こ|||こいびと|||

「 まあ 」

夕 里子 は 、 目 を 見開いた 。 ゆう|さとご||め||みひらいた

「 誰 な の ？ だれ|| 「 それ は 分 って ない 。 ||ぶん||

ただ 、 彼女 の 持って いた バッグ に 手帳 が 入って いて ね 、 そこ に ホテル の 名前 が あった 」 |かのじょ||もって||ばっぐ||てちょう||はいって|||||ほてる||なまえ||

「 ホテル ？ ほてる

「 そう 。

言う なれば ラブ ホテル か な 」 いう||らぶ|ほてる||

「 へえ 。

── 意外 ね 」 いがい|

何となく 、 勇一 の 話した 母親 の イメージ と 、 一致 し ない ような 気 が した のである 。 なんとなく|ゆういち||はなした|ははおや||いめーじ||いっち||||き||| Somehow, it felt like it did not match with the image of mother who Yuichi talked about.

「 いつも 同じ ホテル を 使って いた らしい んで 、 写真 を 持って 、 行って みた 」 |おなじ|ほてる||つかって||||しゃしん||もって|おこなって|

「 一 人 で ？ ひと|じん|

「 当り前じゃ ない か 」 あたりまえじゃ||

と 、 国 友 は 笑って 言った 。 |くに|とも||わらって|いった

「── ホテル の 従業 員 が 憶 えて いた よ 」 ほてる||じゅうぎょう|いん||おく|||

「 相手 の こと も ？ あいて|||

「 いや 、 有田 信子 の 方 だけ だ 。 |ありた|のぶこ||かた||

── いつも 彼女 の 方 は 堂々と して 、 と いう か 、 全然 悪びれた 風 も なく やって 来た 、 と いう んだ よ 」 |かのじょ||かた||どうどうと|||||ぜんぜん|わるびれた|かぜ||||きた|||| ── Always she is dignified, or saying she came with no wind bad at all. "

「 相手 は ？ あいて|

「 それ が 、 いつも 同じ 相手 らしい 、 と いう こと は 分 った んだ が 、 顔 を 伏せて 、 コソコソ 歩いて る んで 、 どんな 男 だ か 全く 分 ら ない 、 と いう んだ 」 |||おなじ|あいて||||||ぶん||||かお||ふせて|こそこそ|あるいて||||おとこ|||まったく|ぶん||||| "I understood that it always seemed to be the same partner, but I said that I am walking down the mountain face and not knowing what kind of guy it is."

「 なるほど ね 」

「 まあ 、 彼女 に 恋人 が いて も 、 おかしく は ない 」 |かのじょ||こいびと||||||

「 そう ね 。

四十 に なって 独り暮し じゃ 、 寂しい でしょう から ね 。 しじゅう|||ひとりぐらし||さびしい||| でも ──」

と 、 夕 里子 は 眉 を 寄せる 。 |ゆう|さとご||まゆ||よせる

「 何 だい ？ なん|

「 なぜ ホテル を 使う の かしら ？ |ほてる||つかう||

彼女 の アパート は 、 勇一 も い なかった んだ から 、 いつでも 一 人 だった わけでしょ 」 かのじょ||あぱーと||ゆういち|||||||ひと|じん||

「 それ は きっと 、 近所 の 目 を 避けた んじゃ ない か な 」 |||きんじょ||め||さけた||||

「 あ 、 そう か 」

夕 里子 は 肯 いた 。 ゆう|さとご||こう|

「 近所 に 対して は 、 きっと 超然 と して た の ね 」 きんじょ||たいして|||ちょうぜん|||||

「 男 の 方 の 部屋 に は ……」 おとこ||かた||へや||

「 行か なかった 。 いか|

── もし 、 男 の 部屋 へ 行って 構わ ない の なら 、 何度 も ホテル を 使ったり し なかった でしょう 。 |おとこ||へや||おこなって|かまわ||||なんど||ほてる||つかったり||| と いう こと は ……」

「 僕 も そう にらんで る 。 ぼく||||

── 有田 信子 の 恋人 に は 、 きっと 女房 が いたんだ よ 」 ありた|のぶこ||こいびと||||にょうぼう|||

と 、 国 友 は 言った 。 |くに|とも||いった

「 もし 、 それ が 殺人 の 動機 だ と したら ……」 |||さつじん||どうき|||

「 今 、 その 恋人 が 誰 だった か を 、 当ら せて る ところ さ 。 いま||こいびと||だれ||||あたら||||

しかし 、 漠然と して る から ね 」 |ばくぜんと||||

「 他 に も 問題 が ある わ 」 た|||もんだい|||

と 、 夕 里子 は 身 を 乗り出す 。 |ゆう|さとご||み||のりだす

「 有田 信子 が なぜ 学校 で 殺さ れた か 、 よ 」 ありた|のぶこ|||がっこう||ころさ|||

「 うん 、 それ も ある 」

「 勇一 が あの 中学校 に 通った の は 、 ほんの わずか 。 ゆういち|||ちゅうがっこう||かよった||||

しかも 二 年生 の とき でしょう 。 |ふた|ねんせい||| 今 、 有田 信 子 と あの 学校 と は 何の 関係 も ない はずだ わ 」 いま|ありた|しん|こ|||がっこう|||なんの|かんけい||||

「 そう だ な 」

「 それなのに 、 なぜ 夜中 に あんな 所 へ 出かけて 行った の か ……」 ||よなか|||しょ||でかけて|おこなった||

「 誰 か と 会う ため だった の かも しれ ない な 。 だれ|||あう|||||||

その 相手 が あそこ を 指定 した ……」 |あいて||||してい|

「 夜中 の 中学校 を ？ よなか||ちゅうがっこう|

── ちょっと 考え にくい わ ね 」 |かんがえ|||

夕 里子 は 首 を 振った 。 ゆう|さとご||くび||ふった

「 例の テスト 用紙 の コピー が 、 何 か 関係 して る の かも しれ ない わ 」 れいの|てすと|ようし||こぴー||なん||かんけい|||||||

「 そこ だ 。

── あれ が なぜ 彼女 の バッグ に 入って いた の か 」 |||かのじょ||ばっぐ||はいって|||

「 謎 ね 。 なぞ|

しかも クシャクシャ に なって いた ……」 |くしゃくしゃ|||

「 犯人 が 入れた と 考える の も 、 ちょっと 意味 が 分 ら ない ね 」 はんにん||いれた||かんがえる||||いみ||ぶん|||

「 待って 。 まって

── 現場 に は 争った 跡 が あった の ね ？ げんば|||あらそった|あと|||| 「 うん 。

派手に 机 や 椅子 が 倒れて た 」 はでに|つくえ||いす||たおれて|

「 じゃ ── その コピー は 、 有田 信子 が 、 犯人 と 争って 、 奪い取った の かも しれ ない わ 」 ||こぴー||ありた|のぶこ||はんにん||あらそって|うばいとった|||||

「 なるほど 。

それ なら クシャクシャ に なって いた の も 分 る な 」 ||くしゃくしゃ||||||ぶん||

国 友 は 肯 いた 。 くに|とも||こう|

「 理由 は 分 ら ない けど ……。 りゆう||ぶん|||

争って 、 コピー を 取り 上げ 、 バッグ に 入れる 。 あらそって|こぴー||とり|あげ|ばっぐ||いれる 帰り かけた とき に 後ろ から ──」 かえり||||うしろ|

「 後 頭部 を 一撃 か 。 あと|とうぶ||いちげき|

うん 、 状況 に は ピッタリ だ 」 |じょうきょう|||ぴったり|

「 そう なる と 、 学校 と 関係 の なかった 有田 信子 が 、 なぜ 相手 から コピー を 取り 上げよう と した か が 問題 ね 」 |||がっこう||かんけい|||ありた|のぶこ|||あいて||こぴー||とり|あげよう|||||もんだい|

「 その辺 は 、 本当 なら 、 殺さ れた 丸山 に 詳しく 訊 き たい ところ だった な 」 そのへん||ほんとう||ころさ||まるやま||くわしく|じん||||| "The neighborhood was really where I wanted to ask more about the killed Maruyama."

「 そう ね ……」

夕 里子 は 、 考え 込み ながら 肯 いた 。 ゆう|さとご||かんがえ|こみ||こう|

── ある 考え が 、 少しずつ 形 を 整え つつ あった 。 |かんがえ||すこしずつ|かた||ととのえ|| ── One idea was shaping shape little by little.

論理 的 と は とても 言え ない 、 直感 みたいな もの だった が ── でも 、 もし 本当に そう だ と したら ──。 ろんり|てき||||いえ||ちょっかん|||||||ほんとうに|||| It was a kind of intuition, which can not be described logically, but ─ ─, but if it really were - ─ ─.

考え 込んで いる ところ に 、 かんがえ|こんで|||

「 ちょっと ！

と 、 凄い 声 が 叩きつけ られた 。 |すごい|こえ||たたきつけ|

国 友 は 振り返って 、 びっくり した 。 くに|とも||ふりかえって||

「 や あ 、 あなた は ──」

「 あなた は 、 じゃ あり ませ ん ！

それ は 、 有田 信子 が 殺さ れて いる の を 通報 して 来た 坂口 正明 の 母親 、 坂口 爽子 だった 。 ||ありた|のぶこ||ころさ|||||つうほう||きた|さかぐち|まさあき||ははおや|さかぐち|そうこ|

いや 、 当の 正明 も 、 母親 の 後ろ に 、 隠れる ように 立って いる 。 |とうの|まさあき||ははおや||うしろ||かくれる||たって|

「 どうした ん です ？

と 国 友 が 訊 く と 、 坂口 爽子 は キッ と 目 を つり 上げて 、 |くに|とも||じん|||さかぐち|そうこ||||め|||あげて When Koumi asked, Sakaguchi Reiko lifted his eyes fairly,

「 また 、 この 子 を いじめた の ね ！ ||こ||||

「 いじめる ？

── いや 、 パーティ に 出て いた わけです から ね 、 一応 手続き と して ──」 |ぱーてぃ||でて|||||いちおう|てつづき||

「 許せ ませ ん ！ ゆるせ||

児童 虐待 で 告訴 も 考え ます から ね ！ じどう|ぎゃくたい||こくそ||かんがえ||| 「 ねえ ママ ──」 |まま

と 、 正明 が 言い かける の を 、 |まさあき||いい|||

「 あなた は 黙って なさい ！ ||だまって|

と 遮り 、「 この 寒い 夜 に 、 うち の 正明 ちゃん を 一睡 も さ せ ず に おく なんて ！ |さえぎり||さむい|よ||||まさあき|||いっすい||||||| "In this cold night, I will not leave my Masaaki sleeping!"

それ が 原因 で 風邪 を ひき 、 それ が もと で 肺炎 に でも なったら どう する んです か ！ ||げんいん||かぜ|||||||はいえん||||||| 「 ママ 、 僕 ──」 まま|ぼく

「 ママ に 任せ なさい ！ まま||まかせ|

── いい です ね 、 刑事 さん 、 私 の 方 に も 覚悟 が あり まして よ ！ |||けいじ||わたくし||かた|||かくご|||| 「 ママ 、 あの ね ──」 まま||

「 いらっしゃい ！

早く お うち に 帰って 、 あったかい スープ を 飲ま なくちゃ 」 はやく||||かえって||すーぷ||のま|

坂口 爽子 は 、 正明 の 手 を つかんで 、 有無 を 言わ せ ず 、 引 張って 行って しまった 。 さかぐち|そうこ||まさあき||て|||うむ||いわ|||ひ|はって|おこなって|

しばし 啞然 と して いた 夕 里子 は 、 |啞ぜん||||ゆう|さとご|

「── 凄い お 母さん ね 」 すごい||かあさん|

と 、 言って 、 首 を 振った 。 |いって|くび||ふった

「 母親 も 色々だ 」 ははおや||いろいろだ

と 、 国 友 は 笑って 言った 。 |くに|とも||わらって|いった

二 人 は 、 また コーヒー を 飲んだ が ……。 ふた|じん|||こーひー||のんだ|

ふと 、 顔 を 上げ 、 目 を 見交わす 。 |かお||あげ|め||みかわす

「── 遅い じゃ ない ？ おそい||

と 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

勇一 の こと である 。 ゆういち|||

「 おかしい な 」

国 友 は 、 立って 、 化粧 室 へ と 急いだ 。 くに|とも||たって|けしょう|しつ|||いそいだ

── ほんの 何 秒 か の 後 、 国 友 は 、 飛び出して 来た 。 |なん|びょう|||あと|くに|とも||とびだして|きた

「 窓 から 逃げた ！ まど||にげた

畜生 ！ ちくしょう 夕 里子 は 、 レストラン を 出て 、 裏手 へ と 駆け 出す 国 友 を 、 腰 を 浮か した まま 見送って いた 。 ゆう|さとご||れすとらん||でて|うらて|||かけ|だす|くに|とも||こし||うか|||みおくって|

「── 色々 ご 迷惑 を お かけ し ました 」 いろいろ||めいわく|||||

小 峰 の 秘書 、 井口 が 、 額 の 汗 を ハンカチ で 拭って 、 頭 を 下げた 。 しょう|みね||ひしょ|いぐち||がく||あせ||はんかち||ぬぐって|あたま||さげた

傍 で 見て いる 夕 里子 に は 、 それ は いかにも わざとらしい 、 不必要な 仕草 に 見えた 。 そば||みて||ゆう|さとご|||||||ふひつような|しぐさ||みえた

姿 を 消した 勇一 を 捜した もの の 、 徒労 に 終って 、 国 友 と 夕 里子 は 小峰 邸 に 戻って いた のである 。 すがた||けした|ゆういち||さがした|||とろう||しまって|くに|とも||ゆう|さとご||こみね|てい||もどって||

ルミ は 、 迎え に 来た 父親 の 車 で 家 に 帰って いた 。 るみ||むかえ||きた|ちちおや||くるま||いえ||かえって|

ほとんど 眠った まま だった が 。 |ねむった|||

「 小峰 さん の 事件 は ともかく と して ──」 こみね|||じけん||||

国 友 は 、 手帳 を 閉じて 言った 、「 もう 一 つ 、 佐々 本 珠美 さん を 誘拐 して 来た 件 に ついて は 、 どう 釈明 し ます ？ くに|とも||てちょう||とじて|いった||ひと||ささ|ほん|たまみ|||ゆうかい||きた|けん|||||しゃくめい||

「 誘拐 で すって ？ ゆうかい||

と 、 井口 が 大げさに 驚いて 見せた 。 |いぐち||おおげさに|おどろいて|みせた

「 とんでもない ！ そりゃ 確かに ── 睡眠 薬 を 服 ませたり は し ました 。 |たしかに|すいみん|くすり||ふく|||| あの 競売 へ 出す とき に です 。 |きょうばい||だす||| ここ へ 連れて 来た の は 、 強制 でも 何でも あり ませ ん よ 」 ||つれて|きた|||きょうせい||なんでも||||

「 する と 、 進んで 一緒に 来た 、 と いう んです ね ？ ||すすんで|いっしょに|きた||||

「 刑事 さん 」 けいじ|

井口 は 、 にこやかに 笑顔 を 作り 、「 私 ども と して も ── たとえ 小峰 様 の 言いつけ だった と は いえ 、 ああいう 、 まだ 中学生 の 女の子 を あんな ゲーム に 使った の は 、 申し訳ない と 思って い ます 。 いぐち|||えがお||つくり|わたくし||||||こみね|さま||いいつけ|||||||ちゅうがくせい||おんなのこ|||げーむ||つかった|||もうしわけない||おもって|| Iguchi smiled smilingly and said, "Even though it was with us - even though Komine-sama was saying that, ah, I think I'm sorry I still used junior high school girls for such games It is.

しかし 、 誘拐 など と 言わ れて は どうも ……」 |ゆうかい|||いわ|||

「 心外だ 、 と ？ しんがいだ|

「 その 通り です 」 |とおり|

「 しかし 、 あそこ で 彼女 を 競売 しよう と した 、 と いう こと は 、 はっきり 言って 、 売春 の 仲介 を して いる ような もの でしょう 」 |||かのじょ||きょうばい|||||||||いって|ばいしゅん||ちゅうかい|||||| "But, to say that she tried auctioning her over there is clearly like saying that it is mediating prostitution,"

「 いや 、 それ は ──」

井口 が 頭 を かいて 、「 あくまで あれ は 遊び です よ 。 いぐち||あたま||||||あそび||

買 主 と 彼女 が 、 その後 の 話し 合い で どう なる か 、 そこ まで は 私 も よく 分 り ませ ん が 」 か|おも||かのじょ||そのご||はなし|あい||||||||わたくし|||ぶん|||| I do not know well what happens with the buyer and her in the subsequent discussions. "

逃げ口 上 である 。 にげぐち|うえ| It is on the escape.

そこ へ 、 進み 出た の は 草間 由美子 だった 。 ||すすみ|でた|||くさま|ゆみこ| It was Yumiko Kusama who came forward to it.

「 あの 子 に 服 を 着せたり した の は 私 です ので 」 |こ||ふく||きせたり||||わたくし||

と 、 滑らかな 口調 で 、「 これ は あの 女の子 に とって は 、 面白い アルバイト だった んです 」 |なめらかな|くちょう|||||おんなのこ||||おもしろい|あるばいと||

「 ほう ？

する と 、 お 金 を 払う 、 と 言った んです ね ？ |||きむ||はらう||いった|| 「 はい 。

可愛い 衣裳 を 身 に つけて 、 中年 の おじさん の 相手 を する だけ で ── それ は 決して 肉体 的な こと だけ じゃ あり ませ ん 。 かわいい|いしょう||み|||ちゅうねん||||あいて|||||||けっして|にくたい|てきな|||||| Just wearing pretty costumes, just having a middle-aged man's opponent - that is not just physical thing. とても いい お 金 に なる んだ と 喜んで い ました 」 |||きむ|||||よろこんで||

「 ふむ 。

しかし 、 それ なら なぜ 、 わざわざ 睡眠 薬 を 服 ませる 必要 が あった んです か ？ |||||すいみん|くすり||ふく||ひつよう|||| 「 いわば 演出 効果 です 」 |えんしゅつ|こうか|

と 、 井口 が 言った 。 |いぐち||いった

「 やはり 、 あそこ で は 人形 らしく 見え なくて は いけない 。 ||||にんぎょう||みえ||| 眠った ふり を して いる より は 、 やはり 本当に 眠って いる 方 が ね 」 ねむった||||||||ほんとうに|ねむって||かた|| Rather than pretending to be sleeping, those who really sleep well after all. "

「 本人 も 承知 の 上 だった 、 と ？ ほんにん||しょうち||うえ||

「 そうです 」 そう です

国 友 は 、 いかにも 抜け目 の ない 井口 の 答え に 、 しばらく 考え 込んで いた 。 くに|とも|||ぬけめ|||いぐち||こたえ|||かんがえ|こんで|

「── しかし 、 よく 分 り ませ ん ね 。 ||ぶん||||

話 で は 、 百万 と か 二百万 と か いう 値 が ついて いた そう じゃ ない です か 。 はなし|||ひゃくまん|||にひゃくまん||||あたい|||||||| In the story, it seems that there was a value of one million or two million. 若い 女の子 と 浮気 する ぐらい の こと なら 、 そんな 大金 を 出す こと も ない でしょう 」 わかい|おんなのこ||うわき|||||||たいきん||だす|||| If it is enough to cheat with a young girl, I will not give out such a lot of money. "

「 いや 、 まあ …… お 金持 は 、 変って い ます から ね 」 |||かねもち||かわって||||

井口 は 、 ちょっと 笑った 。 いぐち|||わらった

「 そちら の 言い分 は よく 分 り ました 。 ||いいぶん|||ぶん|| "I understood the details of them.

しかし 、 果して その 通り な の か どう か 、 その 人形 当人 に 訊 いて みれば すぐ 分 る こと です 」 |はたして||とおり|||||||にんぎょう|とうにん||じん||||ぶん||| However, if you are quite right, ask the doll owner immediately to see it. "

国 友 は 、 厳しい 口調 に なって 、 言った 。 くに|とも||きびしい|くちょう|||いった

「 佐々 本 珠美 は どこ へ 行った んです ？ ささ|ほん|たまみ||||おこなった| 夕 里子 が 、 組み合せた 腕 に 、 ギュッと 力 を 入れた 。 ゆう|さとご||くみあわせた|うで||ぎゅっと|ちから||いれた Riko Yu put a lot of energy on his combined arms.

「── 分 り ませ ん 」 ぶん|||

と 、 井口 は 首 を 振った 。 |いぐち||くび||ふった

「 信じて 下さい 。 しんじて|ください 本当です よ 。 ほんとうです| あの 混乱 の 間 に どこ か へ 消えて しまった 。 |こんらん||あいだ|||||きえて| 私 ども も 途方 に くれて いる んです から ！ わたくし|||とほう||||| Because we are at a loss at all! 「 困り ました ね 。 こまり||

こちら と して は 、 あなた 方 が 何 か 知って おら れる だろう と 思って いた んです が 」 |||||かた||なん||しって|||||おもって||| I thought that you would know something here. "

「 お 役 に 立て ず 、 申し訳 あり ませ ん 」 |やく||たて||もうしわけ|||

と 、 井口 が また 頭 を 下げる 。 |いぐち|||あたま||さげる

夕 里子 が 、 口 を 挟んだ 。 ゆう|さとご||くち||はさんだ

「 珠美 が 前 から 着て いた 服 は ？ たまみ||ぜん||きて||ふく|

「 ああ 、 あれ です か 」

と 、 草間 由美子 が 答えた 。 |くさま|ゆみこ||こたえた

「 いい 品 じゃ ない ので 、 捨てて しまい ました 」 |しな||||すてて||

カチン と 来て 、 夕 里子 は 草間 由美子 を にらみ つけて いた ……。 ||きて|ゆう|さとご||くさま|ゆみこ|||| When Katin came, Riko Yuri was staring at Yumiko Kusama ... ....

「── で は 、 佐々 本 珠美 さん の 件 に ついて は 、 当人 が 見付かり 次第 、 また 改めて お 話 を うかがう こと に し ましょう 。 ||ささ|ほん|たまみ|||けん||||とうにん||みつかり|しだい||あらためて||はなし|||||| In "──, let's decide again about the matter of Mr. Tami Sasamoto as soon as the person is found.

それ から 、 問題 の 競売 に ついて は ……」 ||もんだい||きょうばい|||

「 その 件 は です ね 」 |けん|||

と 、 井口 が 素早く 言った 。 |いぐち||すばやく|いった

「 何 分 、 他 聞 を はばかる こと で も あり ます ので 」 なん|ぶん|た|き||||||||

「 それ に 、 小峰 様 が 撃た れた 事件 と は 関係 ない と 思い ます 」 ||こみね|さま||うた||じけん|||かんけい|||おもい|

と 、 草間 由美子 が 言った 。 |くさま|ゆみこ||いった

国 友 は ジロリ と 彼女 の 方 を 見返して 、 くに|とも||||かのじょ||かた||みかえして

「 関係 あるか ない か 、 決める の は こちら の 仕事 です ！ かんけい||||きめる|||||しごと| "It's up to you to decide if there is any relationship!

と 言った 。 |いった

夕 里子 は 内心 、 国 友 に 拍手 を 送った 。 ゆう|さとご||ないしん|くに|とも||はくしゅ||おくった

井口 の 言う 意味 は 、 夕 里子 に も 察し が つく 。 いぐち||いう|いみ||ゆう|さとご|||さっし||

つまり 、 あの 競売 に 集まって いた 客 の 中 に は 、 各界 の 有力 者 も 少なく ない 。 ||きょうばい||あつまって||きゃく||なか|||かくかい||ゆうりょく|もの||すくなく| In other words, among the customers who gathered at that auction, there are not a few influential people in various fields. 当然 、 競売 の 事実 そのもの を 、 公表 して もらって は 困る 、 と いう わけな のだ 。 とうぜん|きょうばい||じじつ|その もの||こうひょう||||こまる||||

勇一 で は ない が 、 全く 金持 と いう の は 勝手な もの である 。 ゆういち|||||まったく|かねもち|||||かってな||

夕 里子 と して は 、 もう 一 つ 、 草間 由美子 が 、 どうして 丸山 を 知って いた の か 、 訊 いて み たかった が 、 それ は 今 持ち出さ ない 方 が いい 、 と 思った 。 ゆう|さとご|||||ひと||くさま|ゆみこ|||まるやま||しって||||じん|||||||いま|もちださ||かた||||おもった For Yuriko, another one, Yumiko Kusama wanted to ask why he knew Maruyama, but I thought it would be better not to bring it out now.

彼女 の 方 は 、 それ を 知ら れて いる と 思って い ない 。 かのじょ||かた||||しら||||おもって|| She does not think that it is known.

充分に 裏付け を 取って 、 ぶつけて やる のだ 。 じゅうぶんに|うらづけ||とって||| そう すれば 、 何 か ボロ を 出す かも しれ ない 。 ||なん||||だす||| If you do that, you may get rid of something.

それにしても 、 と 夕 里子 は 思った 。 ||ゆう|さとご||おもった

珠美 、 どこ へ 行った んだろう ？ たまみ|||おこなった|

「── すま なかった ね 」 "─ ─ We did sorry"

と 、 国 友 が 言った 。 |くに|とも||いった

「 いいえ 。

送って くれて ありがとう 」 おくって||

夕 里子 は 、 マンション の ロビー で 、 足 を 止めた 。 ゆう|さとご||まんしょん||ろびー||あし||とどめた

「 ここ まで で いい わ 」

「 大丈夫 かい ？ だいじょうぶ|

国 友 が 心配 そうに 訊 いた 。 くに|とも||しんぱい|そう に|じん|

大丈夫な わけ が ない 。 だいじょうぶな|||

── いくら 夕 里子 が 気丈な 娘 でも 、 妹 が 行方 不明 と いう ので は 。 |ゆう|さとご||きじょうな|むすめ||いもうと||ゆくえ|ふめい||||

でも 、 国 友 の 前 で 、 あまり 見 っと も なく 涙 なんか 見せ たく なかった 。 |くに|とも||ぜん|||み||||なみだ||みせ|| But, in front of a national friend, I did not want to see tears so much.

もちろん 、 国 友 は 大人 の 男 で 、 夕 里子 は まだ 十八 の 少女 な のだ から …… たまに は 国 友 の 胸 で 泣いたり する の も 、 悪く ない かも しれ ない 。 |くに|とも||おとな||おとこ||ゆう|さとご|||じゅうはち||しょうじょ||||||くに|とも||むね||ないたり||||わるく|||| Of course, the national friend is an adult man, and Riko Yuri is still a girl of 18 ... so it may not be bad to sometimes cry at the breasts of a national friend.

でも ── こうして 目の前 に いる と 、 つい 強 が って 見せて しまう 。 ||めのまえ|||||つよ|||みせて|

それ は 、 見栄 と いう より 、 国 友 に 心配 を かけ たく ない せい な のだ ……。 ||みえ||||くに|とも||しんぱい||||||| Rather than looking at it, I do not want to worry about the national friend ... ....

「 平気 」 へいき

夕 里子 は 微笑んだ 。 ゆう|さとご||ほおえんだ

「 ちょっと 気 が めいって る けど 、 疲れて る せい よ 」 |き|||||つかれて|||

「 そう だ な 。

眠って くれよ 、 ちゃんと 」 ねむって||

「 うん 。

でも 学校 が ──」 |がっこう|

と 言い かけて 、 夕 里子 は 、 ちょっと ポカン と した 顔 に なった 。 |いい||ゆう|さとご||||||かお||

「 そう か あ 。 今日 は 日曜日 だった んだ ……」 きょう||にちようび||