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江戸小話, 大泥棒の辞世

大 泥棒 の 辞世

ある 年 の 事 、 あちこち で 盗み を 働いて いた 大 泥棒 が 捕まり ました 。 そして 大 泥棒 の 死刑 ( しけい ) の 日 、 役人 が 大 泥棒 に 尋ね ました 。 「 今 まで 世間 を 騒がせて きた が 、 お前 の 命 も 今日 限り じゃ 。 何 か 言い残す 事 は ない か ? 」 「 はい 。 やり たい 事 は 全て やり ました ので 、 これ と 言って ございませ ぬ が 、 お 情け を 頂ける のでしたら 、 この世 ヘ の 別れ に 歌 を よみ たい と 思い ます 」 「 ほほ う 、 辞世 ( じせい → この世 に お 別れ する 前 の ) の 歌 か 。 それ は 見上げた 心がけ じゃ 。 では 、 よんで みろ 」 「 はい 」 大 泥棒 は 両手 を ひざ に 置く と 、 ぐっと 顔 を あげて 、 ♪ かかる とき さ こそ 命 の おしから め ♪ かねて なき 身 と 思いしら ず ば それ を 聞いた 役人 は 、 思わず 手 を 打って 感心 し ました 。 「 ふむ 。 前々 から 、 おのれ の 命 は ない もの と 覚悟 ( かくご ) を して おら なかったら 、 こうした 時 、 さぞかし 命 が おしい 事 であろう と よんだ のじゃ な 。 さすが は 天下 の 大 泥棒 。 立派な 歌 じゃ 」 そして しばらく 感心 して いた 役人 は 、 ある 事 に 気づき ました 。 「 あっ ! お前 、 それ は 太田 道 灌 ( おお た どうかん → 学問 に すぐれた 武将 ) の 歌 で は ない か 」 する と 大 泥棒 は 、 にっこり 笑って 言い ました 。 「 はい 。 これ が この世 で 最後 の 、 盗み おさめ で ございます 」

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )


大 泥棒 の 辞世

ある 年 の 事 、 あちこち で 盗み を 働いて いた 大 泥棒 が 捕まり ました 。 そして 大 泥棒 の 死刑 ( しけい ) の 日 、 役人 が 大 泥棒 に 尋ね ました 。 「 今 まで 世間 を 騒がせて きた が 、 お前 の 命 も 今日 限り じゃ 。 何 か 言い残す 事 は ない か ? 」 「 はい 。 やり たい 事 は 全て やり ました ので 、 これ と 言って ございませ ぬ が 、 お 情け を 頂ける のでしたら 、 この世 ヘ の 別れ に 歌 を よみ たい と 思い ます 」 「 ほほ う 、 辞世 ( じせい → この世 に お 別れ する 前 の ) の 歌 か 。 それ は 見上げた 心がけ じゃ 。 では 、 よんで みろ 」 「 はい 」   大 泥棒 は 両手 を ひざ に 置く と 、 ぐっと 顔 を あげて 、 ♪ かかる とき   さ こそ   命 の おしから め ♪ かねて   なき 身 と   思いしら ず ば   それ を 聞いた 役人 は 、 思わず 手 を 打って 感心 し ました 。 「 ふむ 。 前々 から 、 おのれ の 命 は ない もの と 覚悟 ( かくご ) を して おら なかったら 、 こうした 時 、 さぞかし 命 が おしい 事 であろう と よんだ のじゃ な 。 さすが は 天下 の 大 泥棒 。 立派な 歌 じゃ 」   そして しばらく 感心 して いた 役人 は 、 ある 事 に 気づき ました 。 「 あっ ! お前 、 それ は 太田 道 灌 ( おお た どうかん → 学問 に すぐれた 武将 ) の 歌 で は ない か 」   する と 大 泥棒 は 、 にっこり 笑って 言い ました 。 「 はい 。 これ が この世 で 最後 の 、 盗み おさめ で ございます 」

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )