JIN - 仁 - #11 (1)
≪( 仁 ) 死んで は いけ ませ ん 坂本 龍 馬 が …
こんな ところ で !
( 龍 馬 ) 戻る ぜ よ ! 先生
ああ ~ ッ !
龍 馬 さん ?
龍 馬 さん !
( 久 坂 ) 坂本 の 姿 が 消えた ?
倒れて いた の は あの 医者 一 人 で →
死体 と なって 流さ れた ので は ない か と 思う が
どう する ?
坂本 ごとき で
面倒な こと に なる の は ごめん じゃ
( 門 を たたく 音 )
私 は 助かった んです が 龍 馬 さん が
( 橘 ) 勝 先生 に 頼んで 探索 の 手 を 出して もらい ます
咲 南方 先生 に お 着替え を
( 咲 ) はい …
私 は この あたり から 川 を 上がり ました
ちょうど あの 崖 の 上 から この 川 に 落ち ました
龍 馬 さん は ここ より も 下流 に 流さ れた の か と
ちょっと 尋ねる が この あたり に 流れ 着いた 者 は おら ぬ か ?
≪( 勝 ) 龍 の 字 のだ な
長 州 の 人 達 に 仕組ま れ たって こと は
どう だろう な
( 門下 生 ) 勝 先生 久 坂 は →
何事 も なかった ように たった そうです →
周辺 に 死体 を 捨てた あと も なく
と なる と … 龍 馬 は 死んで 流さ れた か
どこ か へ 身 を 隠した か
それとも 神 隠し に でも あったか
どっち に しろ 海軍 は 当分 龍 馬 なし って ことか
日本 は 坂本 龍 馬 なし に 進む って こと です か !?
そう さ
だが 先生
あいつが なく なりゃ
あいつ の 代わり に なる 奴 が おのずと 出て きて
あいつ が やる はずだった こと を やる もん さ
世の中 って の は そういう もん だ と 俺 は 思う よ
まあ もう 少し 捜す さ
〈 心配 し ない わけで は なかった が 〉
〈 俺 は 半ば 確信 し つつ あった 〉
〈 龍 馬 さん は タイム スリップ して しまった ので は ない だろう か 〉
〈 そして あの 患者 と して 病院 に 運ば れて きて 〉
〈 もの珍しい 土産 と して 〉
〈 救急 医療 用 の パッキン や ホルマリン を 持ち出そう と した 〉
やり そうだ
〈 だけど 龍 馬 さん が 〉
〈 あの 患者 と して 戻った と いう こと は 〉
〈 俺 は もう 戻れ ない と いう こと だろう か 〉
《≪( 咲 ) 南方 先生 》
《 今 まで ありがとう ございました 》
〈 もう 誰一人 〉
〈 秘密 を 分かち合って くれる 人 も なく 〉
〈 ここ で 一 人 生きて いく のだろう か 〉
〈 見慣れて た はずの 江戸 が 〉
〈 別の 町 に 見えた 〉
〈 そして …〉
〈 坂本 龍 馬 だけ を どこ か へ 押しやった まま 〉
〈 時 の 川 は 再び 流れ 始めた 〉
〈 それぞれ を あるべき 運命 の 船 に 乗せ 〉
あの 方 が 蒲 毛 殿 だ
( 彦三郎 ) いよいよ だ な 野 風
《( 咲 ) 先生 は 野 風 さん を 》
《 見殺し に しよう と した んじゃ ない んです か !》
《 未来 さん の ため に !》
《 その 子 が 生まれ ん こと で 》
《 悲しむ もん も 困る もん も 誰 っちゃ おら ん ぜ よ 》
これ で いい んだ
≪( 佐分利 ) 南方 先生
どうした ん です か ?
( 佐分利 ) 乳 の 岩 の こと なら お 役 に 立てる かも しれ ま へん
〈 時 の 川 は 再び 流れ 始めた 〉
〈 それぞれ を あるべき 運命 の 船 に 乗せ 〉
〈 運んで いく 〉
〈 誰 も 見た こと の ない 〉
〈 時 の かなた へ 〉
〈 俺 の 知ら ない 未来 へ と 続く 〉
〈 運命 の 扉 〉
♪♪~
これ は 以前 私 が 乳 の 岩 に ついて 調べた もん です
すごい で すね これ 一体 どう やって こんな
女 郎達 に 金 を 払って 調べ させて もらって た んです
女 郎 ? つう と も 初め は →
これ が きっかけ で 知り合った んです
乳 の 岩 かも しれ へん 患者 さん が いる んです よ ね ?
私 に も その方 を 調べ させて もらえ ま へんか ?
いや … 先方 から は
これ 以上 調べて ほしい と は 言わ れて ませ ん し
らしゅう お ま へんな
「 切る な 」 言う て も 切る の が 南方 先生 で っし ゃろ
もう いっぺん 調べて み ま へんか ?
ほん ま に 岩 やったら あれ です けど …
岩 や ない って 分かる こと も ある わけです し
( 野 風 ) なぜ …
≪( 禿 ) 花魁 →
南方 先生 より 文 であり ん す
ガン じゃ ない こと だって あり える んだ よ な
佐分利 先生 お 願い し ます
はい
野 風 さん 乳 より 汁 など は 出た こと は あり ます か ?
乳首 の まわり を 押したり した とき など に
あり ん す
≪( 佐分利 ) しこり は 硬く 周囲 と 癒着 が あり ます
熱 や 疼 痛 も なく その他 の 様子 から も
乳 ようと は 思え ま へん →
まだ わき の 下 に しこり は 見え ませ ん が
乳 の 岩 特有の 汁 も 出る
私 の 経験 で は まず 岩 に 間違い あり ま へん
そう と も 言い切れ ない んじゃ ない でしょう か ?
え ッ !
乳 頭 分泌 は 悪性 の 岩 に 限った こと で は あり ませ ん し
良性 の もの であれば 取り出す 必要 も ない でしょう し
先生 間違い なく たち の 悪い 岩 で すって !
乳房 に メス を 入れる の は 大変な こと な んです
切る こと に なれば …
身 請け 話 も つぶして しまう こと に なる
私 に は まだ 判断 が … しかし !
南方 先生 が そう おっしゃる の なら
切ら ぬ 方 が よい のであり ん しょう
私 の 診 立て は 信用 して もらえ へん って こと です よ ね
そう じゃ ない んです
確定 が でき ない 以上 私 に 切る 勇気 が ない って だけ で
だから それ は 信用 して もらえ なかった っ ちゅうこ と です
≪( 山田 ) こない だ 打ち明け られた のです が →
佐分利 殿 は 以前 華岡 流 にて 学び
乳 の 岩 の 研究 が 「 合 水 堂 」 の 当主 華岡 良平 先生 に 認め られて
あの 若 さ で 何と
華岡 流 の 免許 皆 伝 に なった そうで ございます
が ある とき 研究 に 協力 した 女 郎 から
乳 の 岩 の 手術 を 頼ま れ まして
まあ 手術 に は 成功 した のです が
その 女 郎 感染 症 が もと で 亡くなって しまった そうです
佐分利 殿 を 面白く 思わ ない 者 達 に
ここぞとばかり に 「 人斬り 医者 」 と やられた そうで
身の上 を 隠し 逃げる ように して こちら に 来た そうです
佐分利 先生 は 私 の ため に 身の上 を 明かす 決心 を
ええ 手術 と なれば
エーテル より 深く 長く 効く 麻酔 が 必要であろう と
すでに 華岡 流 秘伝 の 麻酔 薬
「 通 仙散 」 を 作る 準備 も 始めて
秘伝 の もの なんか … いい んです か ?
佐分利 先生 は 以前 の 腑分 け の こと を
つぐない たい のだ と 思い ます
《 よい もの は 流派 を 超え 広めて いく べきです 》
《 それ が 医 の 道 の ため です から 》
喜ば れる でしょう ね
緒方 先生
生きて いら したら
( 茜 ) もう 何 か ある たび うらぶれ ん の やめて くれる !?
こら ッ !
( 物音 )
もう い ない んだ よ な
坂本 殿 から 連絡 が ない か
先生 に 聞き に いこう と 思う のだ が ともに
行って らっしゃい ませ
( 初音 ) 何 ゆえ の ご 登 楼 … で ?
妹 に 縁談 が きた →
よい 話 だ
家 格 は 当 家 より も 上 人物 も 申し分 ない
何より 咲 を 気 に 入って くださって おる
が … 咲 に は 別に 慕って いる 男 が おる
あいつ の 性分 で は うまく やれ ぬ 気 が する
もしや あ ちき に 仕返し に ?
とはいえ 実際 は もう 断れる 時期 で も ない のじゃ
どうした もの か と 思って の
あの 方 なら どう な さ りんしょう か
あの 奇 策 の 得意な
何 か いつの間にか 一 人 だ な
「 緒方 先生 の 墓参り に 行って き ます 」
「 夕刻 まで に は 戻る つもりです 」
二日酔い か
ORS じゃ す ん ま へん
南方 先生 とて 人間 な のだ 自信 の ない とき も あら れよう
( 横 松 ) や … 山田 先生 あれ は !
坂本 殿 !
おう ! 久しい のう
( 福田 ) ま こ … まことに 坂本 殿 で ございます か !?
( 八木 ) 行方 知れ ず と 聞いて ました が
おう 刺客 に 襲わ れ 川 に 落ちた ん じゃけん ど …
《( 子供 達 ) うわ ~ ッ !》
≪( 龍 馬 ) 気づいたら 海 近く の 漁師 小屋 に おって →
出さ れる 魚 は 絶品 で の う つい 土佐 を 思い出し …
《≪( 海女 ) 土 左 衛 門 起きた って ?》
≪( 龍 馬 ) 出て くる 女子 は →
浅黒い はち きん で こりゃ また 土佐 を 思い出し
いつの間に やら こんなに 日 が たって しもう た わけじゃ
浦島 太郎 か …
ほん で 南方 先生 は ?→
どう し とる が じゃ ?
緒方 先生 私 は 今 まで
未来 の こと は あまり 考え ない ように して き ました
目の前 の 命 を 救う こと だけ を 正義 と して
だけど … 今 私 は
野 風 さん の 乳 ガン を 見て 見 ぬ ふり を しよう と して ます
理由 は …
ただ の 身勝手です
野 風 さん は たぶん …
私 の 婚約 者 だった 未来 と いう 女性 の 祖先 で
野 風 さん が 身 請け に 行か なければ
未来 は 生まれ なく なる かも しれ ない んです
咲 さん に 軽べつ さ れ
龍 馬 さん に は 未来 が 生まれ なく なって
一体 誰 が 悲しむ の か と 言わ れ
佐分利 先生 の 気持ち を 踏みにじり
野 風 さん の 気持ち に 甘え
最低です …
私 は
だけど …
やっぱり でき ませ ん よ
でき ないで す 私 に は
( 物音 )
のう 先生
たとえば 目の前 で 先生 の 子 が 死に か か っち ょる
けん ど その 子 を 助ければ
代わり に 先生 の 別の 子 が 殺さ れる
そん とき 先生 は 目の前 の 子 を 助ける かえ ?
俺 は そんな ヘタ は 打た ねえ よ
たとえば じゃ
いっそ 誰 か に 決めて もらう かな
決めて もらう !?
銭 を 投げて もらって 決める と かな
どっち を 取って も 後悔 が 残 ん なら
運 を 天 に 任せる の も 一 つ の 手 さ
≪( 男 A ) じゃあ 野 風 花魁 は
( B ) 今日 が しまい の 宴 だって よ 寂しく なる な
ありがとう な 野 風
ご 家 門 の 妾 に なる など 女 郎 と して は 最高の 栄華
お前 の おかげ で →
これ から また 皆 夢 が 見 られる
菩薩 に は なれ ん した けん どな
行き と お ない と 居座って おり ん す
煩悩 が
ちょ っ …
はは は …
龍 馬 さん です よ ね !?
ほれ 足 もつ いち ょる ぜ よ
ほんとに 龍 馬 さん です よ ね !?
嘘 ついて ないで す よ ね !?
ワン ! わしゃ 犬 じゃ ない ぜ よ
今 まで どこ 行って た んです か !?
漁師 ん とこ で 世話に な っち ょっ たが ぜ よ
漁師 って … あの 江戸 の 漁師 です ね !?
先生 ち っく と 龍 馬 さん !
どこ 行く んです か !? 龍 馬 さん 待って ください って
何 な んです か ? 龍 馬 さん
野 風 を 助け と ~ せ !
聞いた が じゃ
野 風 が 乳 の 岩 かも しれん が じゃ ろう ?
先生 が 迷う 気持ち は 分かる
けん ど ここ は 一 つ どう か わし の ため に
手術 を して くれ ん かえ
わし の … ため ?
わしゃ 考えた ぜ よ ここ で 野 風 の 乳 を 切れば
野 風 の 身 請け が 流れる
女 郎 と して も お払い 箱 に なる
さすが の 野 風 も この先 頼り の うなる ろう
そこ で わし の 出番 じゃ こう 言う が じゃ
「 乳 な ん ぞ あろう が なかろう が かまわ ん !」
「 わし が お まん の 面倒 を 見る !」 これ は 効く ~
さすが の 野 風 も 「 は は ~ ん 」 ちゅう て 落ちる ぜ よ
ちゅう わけで 先生 頼む !
龍 馬 さん お 気持ち は 分かり ます が …
やかましい が じゃ !
切れ っ ちゅう たら 切れ !
ええ かい
切って ち いい 言う が は わし じゃ
先生 は ただ 黙って わし の 頼み を 聞けば ええ が じゃ
手術 の 後 の こと は 何 が 起ころう と も
何も かん も ぜ ~ ん ぶ わし の せい じゃ
わし の せい じゃ
そう やき 野 風 を 助け と ~ せ
辰五郎 さん うん ?
前 に 好きだった 女性 の いる 家 を そう と は 知ら ず に