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刀語, Katanagatari Episode 3 (1)

Katanagatari Episode 3 (1)

出 云

奇 策 士 とがめ と 虚 刀 流 七 代 目 当主 鑢 七 花 が

四季 崎記 紀 の 変 体 刀 十二 本 の うち

残り 十 本 を 集める 旅 に 出て

三 月 が 経とう と して おり ます

古くから 神々 の 集う 地 と さ れ

幕府 すら 介入 が 難しい 自治 区

出雲

その 中央 に ある 三 途 神社 の 長

敦賀 迷彩 の 所有 する 千 刀 · 鎩 こそ

とがめ と 七 花 が 次に 集め ん と する 刀 で ございます

これ が 有名な 千 段階 段 だ

まるで 要塞 の ようだ な

行く ぞ 七 花

迷彩 は あの 頂上 だ

ん 自分 で 昇る の か

ふん 私 は あの 地獄 の ような 因幡 砂漠 を 横断 した のだ ぞ

この くらい お茶 の 子 さいさい だ

待て 七 花

疲れた 手 を 貸して くれ

え 疲れた って

そ なた 三 月 も 共に 旅 して いる と いう のに

まだ 私 の 弱 さ を 心得て おら ん の か

おら ん の か って

そよ風 に 吹き飛ばさ れ 小雨 で 寝込む

そんな 弱き 体 を 酷使 して ここ まで 自力 で 昇った のだ

褒めて 欲しい くらい だ わ

悪かった よ

えっ と

じゃあ お ぶろう か

そのような 破廉恥な 真似 を 私 に しろ と 言う の か

破廉恥

お 男 に 後ろ から 抱きつく 姿勢 に なる であろう が

それ が どうした

どうした も こうした も か 身体 が 密着 する であろう

それ が どうした

じゃ 肩車 なら どう だ

ち ぇり お ー

肩車 なん ぞ 余計に 破廉恥だ わ

成人 した 男女 の やる こと で は ない

え おれ 島 に いた 頃 は 姉ちゃん と よく

よく

いや なんでもない

って じゃあ どう すれば 良い んだ

ばか 者 私 は 奇 策 士 だ ぞ

その 程度 の こと ちゃん と 妙案 が ある わ

どう だ これ なら 良い であろう

誰 が 見て も 破廉恥で は ない ぞ

ああ とがめ

何 だ

その 千 刀 · 鎩 って ひょっとして 千 本 あったり する の か

そう だ 鎩 は 圧倒 的な 数量 を 主題 に して 作ら れた 刀 だ から な

ゆえに 千 本 でも 一 本 だ

一 本 でも 人参 みたいな 言い 方 す んな よ

い てっ

ようやく 頂上 の 大鳥居 が 見えて きた わ

そな たが 亀 より も のろのろ 昇る ので 日 が 暮れる と 思った

悪かった な

ごきげんよう

幕府 の 遣い ね

信じる よ

だって 信じた 方 が 面白 そうじゃ ない か

ね 奇 策 士 殿

あんた 本当に 敦賀 迷彩 な の か

元 山賊 に 見え ない な

山賊 であった の は 七 年 も 前 の こと で な

以来 山賊 稼業 から は 足 を あらって

仲間 と も 会って ない

それ に 敦賀 迷彩 と いう の は 前 の 神主 の 名 で

あたし は 便宜 上 それ を 名乗って いる に すぎ ない

だから 『 本当に 』 敦賀 迷彩 な の か と 問わ れる と

難しい もの だ な

ん 前 の 名前 かい

忘れた よ 確か なかった んじゃ ない か な

山賊 に 名前 は いら ない から ね

神社 と 言って も 今 は 形 だけ

ここ に は もう 巫女 しか い ない

まあ 仏教 で いう 尼寺 みたいな もの だ

きみ うち の 巫女 達 に 会ったろう

ああ 麓 に いた 奴 ら だ ろ

下 だけ じゃ なく ここ に も いる よ

五十 人 ほど ね

一応 武装 神社 と いう こと に なって いる から さ

うち に は 全部 で 千 人 の 巫女 が いる ので な

辺り に ばらして おか ない と 溢れて しまう

で 突然 幕府 から 遣い が くる と は 緊急の 用件 らしい な

その 件 だ が 迷彩 殿 ここ から は 一 対 一 で 話し たい

宜しい か

いい だろう

とがめ

心配に は 及ば ない しばし その辺 で 遊んで おれ

では 用件 は 本殿 で 聞こう か

この 境内 に いる 五十 人 は 深刻な 症状 の 者 ばかり で な

親 を 殺さ れた 者

家族 を 皆殺し に さ れた 者

一族 郎党 根絶やし に さ れた 者

永遠に 心 の 安らぎ と は 無縁の 者 達 だ

気 に し ないで くれ

それにしても 面白い 髪 だ ね お 嬢ちゃん

あなた に お 嬢ちゃん と 言わ れる ほど 私 は 若く ない

お 嬢ちゃん さ あたし から 見れば ね

まあ 確かに 見た目 ほど 若く は ない ようだ が

迷彩 殿

まあまあ そう 慌て な さん な

飲み たまえ よ

毒 など 入って おら ん の は 見て の 通り だ

良い 飲み っぷり だ

これ で いい か

これ で あたし たち は 友達 だ

ま 正直 言って 話 の 内容 は 予想 ついて いる さ

四季 崎記 紀 の 変 体 刀 の こと だろう

ここ に お上 が 口 を 出して 来た の は 一 度 しか ない から ね

言う まで も なく 旧 将軍 の 刀狩 令 の 時 の こと さ

まして あんた は 軍 所 の 総 監督 だって 言う じゃ ない か

ならば 用件 は 十中八九 千 刀 · 鎩 の こと だ

ご 察し の 通り だ

四季 崎記 紀 の 変 体 刀 完成 形 十二 本 の 蒐集 を 役目 と して いる

何の ため に

むろん 国家 安寧 の ため に

私 達 は 既に 二 本 の 刀 を 入手 して おる

絶 刀 『 鉋 』 と 斬 刀 『 鈍 』 だ

千 刀 · 鎩 の 所有 者 ならば

刀 の 名前 くらい は 聞いて おろう

ああ 知っている よ

旧 将軍 でも 集 られ なかった 刀 を 既に 二 本 か

すごい な

そして あなた の 千 刀 · 鎩 が 三 本 目 だ

四季 崎 が 唯一 刀 を 消耗 品 と みなして 作った

至高 に して 絶対 の 千 本

迷彩 殿 が 千 人 の 巫女 に それぞれ 帯刀 さ せて いる と いう 千 刀 · 鎩

私 も 幕府 の 人間 だ

出雲 の 事情 に は 少なからず 通じて おる

三 途 神社 の 抱えて おる 裏 事情 に も な

もしも 千 刀 を 譲って 下さる のであれば

その 辺り の 裏 事情 を 幕府 が 引き受ける こと は 可能だ

ん 悪い 話 で は ない と 思う が そう だ ね 良い 話 だ と 思う よ

ところで 一 つ 聞き たい 事 が ある んだ が

よう

俺 何 か した か なあ

あの 坊や は お 嬢ちゃん の 男 かい

あれ は 私 の 刀 だ

刀 ねえ

見た 所 刀 を 帯びて は い なかった ようだ が

どこ か に 隠して いる の かい

そういう 性質 な のだ よ

あれ の 名 は 鑢 七 花 虚 刀 流 七 代 目 当主 鑢 七 花 だ

虚 刀 流 七 代 目 か

なるほど だ から 刀 と いった わけだ

少し 斬れ 過ぎる 所 が ある が な

その 刀 で

『 鉋 』 と 『 鈍 』 の 所有 者 を 斬った か

斬った

大 乱 の 英雄 虚 刀 流 刀 を 使わ ない 剣士 か

興味 が ある な

いや 血 が 騒ぐ って 言う の か ね

あの 坊や の 虚 刀 流 と あたし の 千 刀 流 が 衝突 すれば

どちら が 勝つ の か

千 刀 流

よし 分かった お 嬢ちゃん

いや 奇 策 士 と が めさ ん

出雲 大山 三 途 神社 の 長 と して の 結論 だ

ちょっと した 条件 さえ 呑 んで くれりゃ

千 刀 · 鎩

あんた に 譲って も 構わ ない よ

どう だった

残念 ながら

最悪の 結果 だ

千 刀 · 鎩 の 最初の 一 本 を 探し出す

ああ 鎩 は 千 本 と も まるっきり 同じ 刀 だ

その 中 に 原型 が ある はずだ と 迷彩 は いう のだ

それ を 見つけろ って

そ なた の 助け なし で な

最初の 一 本 を 見つければ

迷彩 とそ なた が 一 対 一 の 決闘 を し

勝てば 鎩 を 譲る と いう

負けたら

『 鉋 』 と 『 鈍 』 を 迷彩 に 譲る

なんだ よ それ

なんだ と は なんだ

あんまり じゃ ない か

こっち は 勝って も 一 本

向こう は 勝ったら 二 本 か よ

と いう より 今回 に 限って 戦闘 は 避け たかった のだ が

七 花 もう 髪 を 下ろして いい ぞ

こら だ お かんか っ

いや どけ と 言わ れて も

これ って も しか して と が め が 言って た 破廉恥 って やつ か

ち ぇり お

こら 避ける な

いや 避けて は ない んです けど

言い訳 など 聞き たく ない わ

とがめ 殿 は 迷彩 様 の 条件 を のむ ようでした

あの 二 人 ただ の 主従 関係 で は ある まい な

勿論 男女 の 関係 で も ない

定め と でも 言える 絆 で 結ばれて いる のだろう

確かに そう かも しれ ませ ん

見た か あの 髪

余程 の こと が ない 限り あんに は なら ない

それ に あの 立ち振る舞い

どんな 惨 い 目 に 遭おう と も 自分 と いう 核 は 捨て られ ない ようだ な

いや 捨てて は いけない と 潜在 的に 守ろう と して いる の かも しれ ぬ

迷彩 様

なぜ あんな 仰々しい 着物 を 身 に 着けて いる の か

それ は 己 が 何たる か 忘れ ない ため さ

あの 奇 策 士 は どこ ぞ の 藩主 の 娘 だった のだろう

世 が 世 なら 一 国一 城 の 姫 と いう ところ だ

戦国 の 世 も 平安な 世 も 決して

私 達 を 癒して は くれ ない

どう だ 七 花

似合う か

ほら 何 か 感じ ない か

うん

そ なた に 聞いた の が 間違い だった

良い か

これ から 私 が 「 似合う か 」 と 聞いたら 「 よく 似合って る 」 と 答えろ

うん

残念 ながら 七 花 に は 今 で いう 巫女 萌 え の 属性 は なかった ので ございます

とがめ 今日 は どこ 行く んだ

まず 境内 に いる 黒 巫女 達 の 刀 を 見せて 貰う

それ から 麓 だ

夜 帰る 時 は

下 で 松明 を 灯す から

それ を 見たら すぐ 迎え に くる ように

なあ 俺 の 役目 って それ だけ かよ

もう 一 つ ある ぞ

なんだ

うろちょろ する な

つま ん ねえ な

刀 の 毒 か

嬢ちゃん おれ ら と 遊ば ねえ かい

邪魔だ

どく で ご ざる

邪魔な の は お め ぇの 方 だ

やり や がった な

ぶ っ 殺して やる

すげ え こんな 刀 見た こと ねえ

ああ お 天道 様 が 透けて 見え ら あ

刀 は 見世物 で は ない

斬る もの に ご ざる

拙者 に ときめいて もらう で ご ざる

か かっこいい

これ が この 境内 に ある 残り の 千 刀 だ

迷彩 殿

彼女 達 を 連れて 行け

しかし

あたし の こと は 構う な

迷彩 殿

さあ

もう 大丈夫だ よ

怪我 は ない か

それ より 早く 傷 の 手当て を

大丈夫だ

調べ 終えて 刀 は 机 に 戻し といて くれ

迷彩 殿

ありがとう

私 が 最初の 一 本 を 見つけたら 迷彩 は

真庭 蝙蝠 真庭 白鷺

二 人 と も 四季 崎記 紀 の 変 体 刀 の 入手 に 失敗 し

返り 討ち に さ れた 可能 性 が あり ます ね

蝙蝠 は 既に 絶 刀 『 鉋 』 を 持って いた のです が

どう なった こと やら

気 に なり ます ね 気 に なり ます ね 気 に なり ます ね

そう 思い ませ ん か

お 見えて き ました ねえ

だ 旦那 つ つき ました

そんなに 期待 さ れちゃ うと

こちら と して は 応え ない わけに いか なく なる じゃ ないで す か

お 許し を っ

忍法 渦 刀

私 が 鎖 に 呪縛 の 縛 と 書いて

「 鎖 縛 の 喰鮫 」 と 呼ば れる ゆえん

え お前 は 先月 登場 して おけ

面白い こと 言う 人 達 です ね

そういう 人 達 を 斬る の は

最高に 楽しい で すね

楽しい です ね 嬉しい です ねえ 期待 に 応え られる と いう こと は

さて 千 刀 「 鎩 」 の 蒐集 に いそしむ と し ます か

確か 三 途 神社 でした っけ

楽しみです ね 楽しみです ね

七 花 殿

ありがとう ございました

別に


Katanagatari Episode 3 (1) Katanagatari Episode 3 (1)

出 云 だ|うん

奇 策 士 とがめ と 虚 刀 流 七 代 目 当主 鑢 七 花 が き|さく|し|||きょ|かたな|りゅう|なな|だい|め|とうしゅ|やすり|なな|か|

四季 崎記 紀 の 変 体 刀 十二 本 の うち しき|さきき|き||へん|からだ|かたな|じゅうに|ほん||

残り 十 本 を 集める 旅 に 出て のこり|じゅう|ほん||あつめる|たび||でて

三 月 が 経とう と して おり ます みっ|つき||たとう||||

古くから 神々 の 集う 地 と さ れ ふるくから|かみがみ||つどう|ち|||

幕府 すら 介入 が 難しい 自治 区 ばくふ||かいにゅう||むずかしい|じち|く

出雲 いずも

その 中央 に ある 三 途 神社 の 長 |ちゅうおう|||みっ|と|じんじゃ||ちょう

敦賀 迷彩 の 所有 する 千 刀 · 鎩 こそ つるが|めいさい||しょゆう||せん|かたな||

とがめ と 七 花 が 次に 集め ん と する 刀 で ございます ||なな|か||つぎに|あつめ||||かたな||

これ が 有名な 千 段階 段 だ ||ゆうめいな|せん|だんかい|だん|

まるで 要塞 の ようだ な |ようさい|||

行く ぞ 七 花 いく||なな|か

迷彩 は あの 頂上 だ めいさい|||ちょうじょう|

ん 自分 で 昇る の か |じぶん||のぼる||

ふん 私 は あの 地獄 の ような 因幡 砂漠 を 横断 した のだ ぞ |わたくし|||じごく|||いなば|さばく||おうだん|||

この くらい お茶 の 子 さいさい だ ||おちゃ||こ||

待て 七 花 まて|なな|か

疲れた 手 を 貸して くれ つかれた|て||かして|

え 疲れた って |つかれた|

そ なた 三 月 も 共に 旅 して いる と いう のに ||みっ|つき||ともに|たび|||||

まだ 私 の 弱 さ を 心得て おら ん の か |わたくし||じゃく|||こころえて||||

おら ん の か って

そよ風 に 吹き飛ばさ れ 小雨 で 寝込む そよかぜ||ふきとばさ||こさめ||ねこむ

そんな 弱き 体 を 酷使 して ここ まで 自力 で 昇った のだ |よわき|からだ||こくし||||じりき||のぼった|

褒めて 欲しい くらい だ わ ほめて|ほしい|||

悪かった よ わるかった|

えっ と

じゃあ お ぶろう か

そのような 破廉恥な 真似 を 私 に しろ と 言う の か |はれんちな|まね||わたくし||||いう||

破廉恥 はれんち

お 男 に 後ろ から 抱きつく 姿勢 に なる であろう が |おとこ||うしろ||だきつく|しせい||||

それ が どうした

どうした も こうした も か 身体 が 密着 する であろう |||||からだ||みっちゃく||

それ が どうした

じゃ 肩車 なら どう だ |かたぐるま|||

ち ぇり お ー |||-

肩車 なん ぞ 余計に 破廉恥だ わ かたぐるま|||よけいに|はれんちだ|

成人 した 男女 の やる こと で は ない せいじん||だんじょ||||||

え おれ 島 に いた 頃 は 姉ちゃん と よく ||しま|||ころ||ねえちゃん||

よく

いや なんでもない

って じゃあ どう すれば 良い んだ ||||よい|

ばか 者 私 は 奇 策 士 だ ぞ |もの|わたくし||き|さく|し||

その 程度 の こと ちゃん と 妙案 が ある わ |ていど|||||みょうあん|||

どう だ これ なら 良い であろう ||||よい|

誰 が 見て も 破廉恥で は ない ぞ だれ||みて||はれんちで|||

ああ とがめ

何 だ なん|

その 千 刀 · 鎩 って ひょっとして 千 本 あったり する の か |せん|かたな||||せん|ほん||||

そう だ 鎩 は 圧倒 的な 数量 を 主題 に して 作ら れた 刀 だ から な ||||あっとう|てきな|すうりょう||しゅだい|||つくら||かたな|||

ゆえに 千 本 でも 一 本 だ |せん|ほん||ひと|ほん|

一 本 でも 人参 みたいな 言い 方 す んな よ ひと|ほん||にんじん||いい|かた|||

い てっ

ようやく 頂上 の 大鳥居 が 見えて きた わ |ちょうじょう||おおとりい||みえて||

そな たが 亀 より も のろのろ 昇る ので 日 が 暮れる と 思った ||かめ||||のぼる||ひ||くれる||おもった

悪かった な わるかった|

ごきげんよう

幕府 の 遣い ね ばくふ||つかい|

信じる よ しんじる|

だって 信じた 方 が 面白 そうじゃ ない か |しんじた|かた||おもしろ|そう じゃ||

ね 奇 策 士 殿 |き|さく|し|しんがり

あんた 本当に 敦賀 迷彩 な の か |ほんとうに|つるが|めいさい|||

元 山賊 に 見え ない な もと|さんぞく||みえ||

山賊 であった の は 七 年 も 前 の こと で な さんぞく||||なな|とし||ぜん||||

以来 山賊 稼業 から は 足 を あらって いらい|さんぞく|かぎょう|||あし||

仲間 と も 会って ない なかま|||あって|

それ に 敦賀 迷彩 と いう の は 前 の 神主 の 名 で ||つるが|めいさい|||||ぜん||かんぬし||な|

あたし は 便宜 上 それ を 名乗って いる に すぎ ない ||べんぎ|うえ|||なのって||||

だから 『 本当に 』 敦賀 迷彩 な の か と 問わ れる と |ほんとうに|つるが|めいさい|||||とわ||

難しい もの だ な むずかしい|||

ん 前 の 名前 かい |ぜん||なまえ|

忘れた よ 確か なかった んじゃ ない か な わすれた||たしか|||||

山賊 に 名前 は いら ない から ね さんぞく||なまえ|||||

神社 と 言って も 今 は 形 だけ じんじゃ||いって||いま||かた|

ここ に は もう 巫女 しか い ない ||||いちこ|||

まあ 仏教 で いう 尼寺 みたいな もの だ |ぶっきょう|||あまでら|||

きみ うち の 巫女 達 に 会ったろう |||いちこ|さとる||あったろう

ああ 麓 に いた 奴 ら だ ろ |ふもと|||やつ|||

下 だけ じゃ なく ここ に も いる よ した||||||||

五十 人 ほど ね ごじゅう|じん||

一応 武装 神社 と いう こと に なって いる から さ いちおう|ぶそう|じんじゃ||||||||

うち に は 全部 で 千 人 の 巫女 が いる ので な |||ぜんぶ||せん|じん||いちこ||||

辺り に ばらして おか ない と 溢れて しまう あたり||||||あふれて|

で 突然 幕府 から 遣い が くる と は 緊急の 用件 らしい な |とつぜん|ばくふ||つかい|||||きんきゅうの|ようけん||

その 件 だ が 迷彩 殿 ここ から は 一 対 一 で 話し たい |けん|||めいさい|しんがり||||ひと|たい|ひと||はなし|

宜しい か よろしい|

いい だろう

とがめ

心配に は 及ば ない しばし その辺 で 遊んで おれ しんぱいに||およば|||そのへん||あそんで|

では 用件 は 本殿 で 聞こう か |ようけん||ほんでん||きこう|

この 境内 に いる 五十 人 は 深刻な 症状 の 者 ばかり で な |けいだい|||ごじゅう|じん||しんこくな|しょうじょう||もの|||

親 を 殺さ れた 者 おや||ころさ||もの

家族 を 皆殺し に さ れた 者 かぞく||みなごろし||||もの

一族 郎党 根絶やし に さ れた 者 いちぞく|ろうとう|ねだやし||||もの

永遠に 心 の 安らぎ と は 無縁の 者 達 だ えいえんに|こころ||やすらぎ|||むえんの|もの|さとる|

気 に し ないで くれ き||||

それにしても 面白い 髪 だ ね お 嬢ちゃん |おもしろい|かみ||||じょうちゃん

あなた に お 嬢ちゃん と 言わ れる ほど 私 は 若く ない |||じょうちゃん||いわ|||わたくし||わかく|

お 嬢ちゃん さ あたし から 見れば ね |じょうちゃん||||みれば|

まあ 確かに 見た目 ほど 若く は ない ようだ が |たしかに|みため||わかく||||

迷彩 殿 めいさい|しんがり

まあまあ そう 慌て な さん な ||あわて|||

飲み たまえ よ のみ||

毒 など 入って おら ん の は 見て の 通り だ どく||はいって|||||みて||とおり|

良い 飲み っぷり だ よい|のみ||

これ で いい か

これ で あたし たち は 友達 だ |||||ともだち|

ま 正直 言って 話 の 内容 は 予想 ついて いる さ |しょうじき|いって|はなし||ないよう||よそう|||

四季 崎記 紀 の 変 体 刀 の こと だろう しき|さきき|き||へん|からだ|かたな|||

ここ に お上 が 口 を 出して 来た の は 一 度 しか ない から ね ||おかみ||くち||だして|きた|||ひと|たび||||

言う まで も なく 旧 将軍 の 刀狩 令 の 時 の こと さ いう||||きゅう|しょうぐん||かたながり|れい||じ|||

まして あんた は 軍 所 の 総 監督 だって 言う じゃ ない か |||ぐん|しょ||そう|かんとく||いう|||

ならば 用件 は 十中八九 千 刀 · 鎩 の こと だ |ようけん||じゅっちゅうはっく|せん|かたな||||

ご 察し の 通り だ |さっし||とおり|

四季 崎記 紀 の 変 体 刀 完成 形 十二 本 の 蒐集 を 役目 と して いる しき|さきき|き||へん|からだ|かたな|かんせい|かた|じゅうに|ほん||しゅうしゅう||やくめ|||

何の ため に なんの||

むろん 国家 安寧 の ため に |こっか|あんねい|||

私 達 は 既に 二 本 の 刀 を 入手 して おる わたくし|さとる||すでに|ふた|ほん||かたな||にゅうしゅ||

絶 刀 『 鉋 』 と 斬 刀 『 鈍 』 だ た|かたな|かんな||き|かたな|どん|

千 刀 · 鎩 の 所有 者 ならば せん|かたな|||しょゆう|もの|

刀 の 名前 くらい は 聞いて おろう かたな||なまえ|||きいて|

ああ 知っている よ |しっている|

旧 将軍 でも 集 られ なかった 刀 を 既に 二 本 か きゅう|しょうぐん||しゅう|||かたな||すでに|ふた|ほん|

すごい な

そして あなた の 千 刀 · 鎩 が 三 本 目 だ |||せん|かたな|||みっ|ほん|め|

四季 崎 が 唯一 刀 を 消耗 品 と みなして 作った しき|さき||ゆいいつ|かたな||しょうもう|しな|||つくった

至高 に して 絶対 の 千 本 しこう|||ぜったい||せん|ほん

迷彩 殿 が 千 人 の 巫女 に それぞれ 帯刀 さ せて いる と いう 千 刀 · 鎩 めいさい|しんがり||せん|じん||いちこ|||たてわき||||||せん|かたな|

私 も 幕府 の 人間 だ わたくし||ばくふ||にんげん|

出雲 の 事情 に は 少なからず 通じて おる いずも||じじょう|||すくなからず|つうじて|

三 途 神社 の 抱えて おる 裏 事情 に も な みっ|と|じんじゃ||かかえて||うら|じじょう|||

もしも 千 刀 を 譲って 下さる のであれば |せん|かたな||ゆずって|くださる|

その 辺り の 裏 事情 を 幕府 が 引き受ける こと は 可能だ |あたり||うら|じじょう||ばくふ||ひきうける|||かのうだ

ん 悪い 話 で は ない と 思う が |わるい|はなし|||||おもう| そう だ ね   良い 話 だ と 思う よ |||よい|はなし|||おもう|

ところで 一 つ 聞き たい 事 が ある んだ が |ひと||きき||こと||||

よう

俺 何 か した か なあ おれ|なん||||

あの 坊や は お 嬢ちゃん の 男 かい |ぼうや|||じょうちゃん||おとこ|

あれ は 私 の 刀 だ ||わたくし||かたな|

刀 ねえ かたな|

見た 所 刀 を 帯びて は い なかった ようだ が みた|しょ|かたな||おびて|||||

どこ か に 隠して いる の かい |||かくして|||

そういう 性質 な のだ よ |せいしつ|||

あれ の 名 は 鑢 七 花   虚 刀 流 七 代 目 当主 鑢 七 花 だ ||な||やすり|なな|か|きょ|かたな|りゅう|なな|だい|め|とうしゅ|やすり|なな|か|

虚 刀 流   七 代 目 か きょ|かたな|りゅう|なな|だい|め|

なるほど だ から 刀 と いった わけだ |||かたな|||

少し 斬れ 過ぎる 所 が ある が な すこし|きれ|すぎる|しょ||||

その 刀 で |かたな|

『 鉋 』 と 『 鈍 』 の 所有 者 を 斬った か かんな||どん||しょゆう|もの||きった|

斬った きった

大 乱 の 英雄 虚 刀 流   刀 を 使わ ない 剣士 か だい|らん||えいゆう|きょ|かたな|りゅう|かたな||つかわ||けんし|

興味 が ある な きょうみ|||

いや 血 が 騒ぐ って 言う の か ね |ち||さわぐ||いう|||

あの 坊や の 虚 刀 流 と あたし の 千 刀 流 が 衝突 すれば |ぼうや||きょ|かたな|りゅう||||せん|かたな|りゅう||しょうとつ|

どちら が 勝つ の か ||かつ||

千 刀 流 せん|かたな|りゅう

よし 分かった お 嬢ちゃん |わかった||じょうちゃん

いや 奇 策 士 と が めさ ん |き|さく|し||||

出雲 大山 三 途 神社 の 長 と して の 結論 だ いずも|おおやま|みっ|と|じんじゃ||ちょう||||けつろん|

ちょっと した 条件 さえ 呑 んで くれりゃ ||じょうけん||どん||

千 刀 · 鎩 せん|かたな|

あんた に 譲って も 構わ ない よ ||ゆずって||かまわ||

どう だった

残念 ながら ざんねん|

最悪の 結果 だ さいあくの|けっか|

千 刀 · 鎩 の 最初の 一 本 を 探し出す せん|かたな|||さいしょの|ひと|ほん||さがしだす

ああ 鎩 は 千 本 と も まるっきり 同じ 刀 だ |||せん|ほん||||おなじ|かたな|

その 中 に 原型 が ある はずだ と 迷彩 は いう のだ |なか||げんけい|||||めいさい|||

それ を 見つけろ って ||みつけろ|

そ なた の 助け なし で な |||たすけ|||

最初の 一 本 を 見つければ さいしょの|ひと|ほん||みつければ

迷彩 とそ なた が 一 対 一 の 決闘 を し めいさい||||ひと|たい|ひと||けっとう||

勝てば 鎩 を 譲る と いう かてば|||ゆずる||

負けたら まけたら

『 鉋 』 と 『 鈍 』 を 迷彩 に 譲る かんな||どん||めいさい||ゆずる

なんだ よ それ

なんだ と は なんだ

あんまり じゃ ない か

こっち は 勝って も 一 本 ||かって||ひと|ほん

向こう は 勝ったら 二 本 か よ むこう||かったら|ふた|ほん||

と いう より 今回 に 限って 戦闘 は 避け たかった のだ が |||こんかい||かぎって|せんとう||さけ|||

七 花 もう 髪 を 下ろして いい ぞ なな|か||かみ||おろして||

こら だ お かんか っ

いや どけ と 言わ れて も |||いわ||

これ って も しか して と が め が 言って た 破廉恥 って やつ か |||||||||いって||はれんち|||

ち ぇり お

こら 避ける な |さける|

いや 避けて は ない んです けど |さけて|||ん です|

言い訳 など 聞き たく ない わ いい わけ||きき|||

とがめ 殿 は 迷彩 様 の 条件 を のむ ようでした |しんがり||めいさい|さま||じょうけん|||

あの 二 人 ただ の 主従 関係 で は ある まい な |ふた|じん|||しゅじゅう|かんけい|||||

勿論 男女 の 関係 で も ない もちろん|だんじょ||かんけい|||

定め と でも 言える 絆 で 結ばれて いる のだろう さだめ|||いえる|きずな||むすばれて||

確かに そう かも しれ ませ ん たしかに|||||

見た か あの 髪 みた|||かみ

余程 の こと が ない 限り あんに は なら ない よほど|||||かぎり||||

それ に あの 立ち振る舞い |||たちふるまい

どんな 惨 い 目 に 遭おう と も 自分 と いう 核 は 捨て られ ない ようだ な |さん||め||あおう|||じぶん|||かく||すて||||

いや 捨てて は いけない と 潜在 的に 守ろう と して いる の かも しれ ぬ |すてて||||せんざい|てきに|まもろう|||||||

迷彩 様 めいさい|さま

なぜ あんな 仰々しい 着物 を 身 に 着けて いる の か ||ぎょうぎょうしい|きもの||み||つけて|||

それ は 己 が 何たる か 忘れ ない ため さ ||おのれ||なんたる||わすれ|||

あの 奇 策 士 は どこ ぞ の 藩主 の 娘 だった のだろう |き|さく|し|||||はんしゅ||むすめ||

世 が 世 なら 一 国一 城 の 姫 と いう ところ だ よ||よ||ひと|くにいち|しろ||ひめ||||

戦国 の 世 も 平安な 世 も 決して せんごく||よ||へいあんな|よ||けっして

私 達 を 癒して は くれ ない わたくし|さとる||いやして|||

どう だ 七 花 ||なな|か

似合う か にあう|

ほら 何 か 感じ ない か |なん||かんじ||

うん

そ なた に 聞いた の が 間違い だった |||きいた|||まちがい|

良い か よい|

これ から 私 が 「 似合う か 」 と 聞いたら 「 よく 似合って る 」 と 答えろ ||わたくし||にあう|||きいたら||にあって|||こたえろ

うん

残念 ながら 七 花 に は 今 で いう 巫女 萌 え の 属性 は なかった ので ございます ざんねん||なな|か|||いま|||いちこ|ほう|||ぞくせい||||

とがめ 今日 は どこ 行く んだ |きょう|||いく|

まず 境内 に いる 黒 巫女 達 の 刀 を 見せて 貰う |けいだい|||くろ|いちこ|さとる||かたな||みせて|もらう

それ から 麓 だ ||ふもと|

夜 帰る 時 は よ|かえる|じ|

下 で 松明 を 灯す から した||たいまつ||ともす|

それ を 見たら すぐ 迎え に くる ように ||みたら||むかえ|||よう に

なあ 俺 の 役目 って それ だけ かよ |おれ||やくめ||||

もう 一 つ ある ぞ |ひと|||

なんだ

うろちょろ する な

つま ん ねえ な

刀 の 毒 か かたな||どく|

嬢ちゃん おれ ら と 遊ば ねえ かい じょうちゃん||||あそば||

邪魔だ じゃまだ

どく で ご ざる

邪魔な の は お め ぇの 方 だ じゃまな||||||かた|

やり や がった な

ぶ っ 殺して やる ||ころして|

すげ え こんな 刀 見た こと ねえ |||かたな|みた||

ああ お 天道 様 が 透けて 見え ら あ ||てんどう|さま||すけて|みえ||

刀 は 見世物 で は ない かたな||みせもの|||

斬る もの に ご ざる きる||||

拙者 に ときめいて もらう で ご ざる せっしゃ||||||

か かっこいい

これ が この 境内 に ある 残り の 千 刀 だ |||けいだい|||のこり||せん|かたな|

迷彩 殿 めいさい|しんがり

彼女 達 を 連れて 行け かのじょ|さとる||つれて|いけ

しかし

あたし の こと は 構う な ||||かまう|

迷彩 殿 めいさい|しんがり

さあ

もう 大丈夫だ よ |だいじょうぶだ|

怪我 は ない か けが|||

それ より 早く 傷 の 手当て を ||はやく|きず||てあて|

大丈夫だ だいじょうぶだ

調べ 終えて 刀 は 机 に 戻し といて くれ しらべ|おえて|かたな||つくえ||もどし||

迷彩 殿 めいさい|しんがり

ありがとう

私 が 最初の 一 本 を 見つけたら 迷彩 は わたくし||さいしょの|ひと|ほん||みつけたら|めいさい|

真庭 蝙蝠 真庭 白鷺 まにわ|こうもり|まにわ|しらさぎ

二 人 と も 四季 崎記 紀 の 変 体 刀 の 入手 に 失敗 し ふた|じん|||しき|さきき|き||へん|からだ|かたな||にゅうしゅ||しっぱい|

返り 討ち に さ れた 可能 性 が あり ます ね かえり|うち||||かのう|せい||||

蝙蝠 は 既に 絶 刀 『 鉋 』 を 持って いた のです が こうもり||すでに|た|かたな|かんな||もって||の です|

どう なった こと やら

気 に なり ます ね 気 に なり ます ね 気 に なり ます ね き|||||き|||||き||||

そう 思い ませ ん か |おもい|||

お 見えて き ました ねえ |みえて|||

だ 旦那   つ つき ました |だんな|||

そんなに 期待 さ れちゃ うと |きたい|||

こちら と して は 応え ない わけに いか なく なる じゃ ないで す か ||||こたえ|||||||||

お 許し を っ |ゆるし||

忍法 渦 刀 にんぽう|うず|かたな

私 が 鎖 に 呪縛 の 縛 と 書いて わたくし||くさり||じゅばく||しば||かいて

「 鎖 縛 の 喰鮫 」 と 呼ば れる ゆえん くさり|しば||しょくさめ||よば||

え お前 は 先月 登場 して おけ |おまえ||せんげつ|とうじょう||

面白い こと 言う 人 達 です ね おもしろい||いう|じん|さとる||

そういう 人 達 を 斬る の は |じん|さとる||きる||

最高に 楽しい で すね さいこうに|たのしい||

楽しい です ね 嬉しい です ねえ 期待 に 応え られる と いう こと は たのしい|||うれしい|||きたい||こたえ|||||

さて 千 刀 「 鎩 」 の 蒐集 に いそしむ と し ます か |せん|かたな|||しゅうしゅう||||||

確か 三 途 神社 でした っけ たしか|みっ|と|じんじゃ||

楽しみです ね 楽しみです ね たのしみ です||たのしみ です|

七 花 殿 なな|か|しんがり

ありがとう ございました

別に べつに