Violet Evergarden Episode 10
( アン ) 今日 は 何 して 遊ぶ ?
分か ん ない
お ままごと は 飽きちゃ った しね
ね ー
まだ お 母さん の お 客 さん 帰ら ない の か な ?
早く 帰っちゃ えば いい のに
ね ー
( 車 の 走行 音 )
( アン ) ん ?
なあ に ? あれ
( アン ) お 人形 が 歩いて きた の
すごく 大きな お 人形 が
何だか それ は ―
よく ない もの の ような 気 が した の
( アン ) お 母さん お 母さん
( エリス ) あっ お 嬢 様
( 親戚 ) そう は 言う けど ね ( 親戚 ) 大事な こと だ よ
( アン の 母 ) ええ でも …
お 母さん
アン
部屋 に 入る とき は ノック して って 言って る でしょ
う っ …
( 母 ) それ と ご挨拶
いらっしゃい ませ
( アン ) 失礼 し ます お 母 様 ( 親戚 ) まあ
よろしい
それ で なあ に ?
また 不思議な 虫 でも 見つけた の ?
でも お 母 様 に は 見せ ないで ね
( アン ) 虫 じゃ ない の
お 人形 が 歩いて きた の
( 母 ) お 人形 ?
( エリス ) 奥様
ご 到着 さ れ ました
( 母 ) ああ お 人形
そう いえば 今日 だった わ ね
居間 に お 通し して
( エリス ) かしこまり ました ( 親戚 ) ちょっと !
申し訳 あり ませ ん けど 続き は また
また って この 屋敷 どう する の ?
( 親戚 ) あの 子 1 人 で 住む に は …
だから 私 たち が …
( 母 ) 今日 の ところ は お 引き取り ください
( 親戚 ) えっ ちょっと …
( ドア が 閉まる 音 )
( 母 ) アン
いい 子 に して て ね
お 待た せ して ごめんなさい
遠い ところ 来て くれて ありがとう
( ヴァイオレット ) 問題 あり ませ ん
しゃべった
お 客 様 が お 望み なら どこ でも 駆けつけ ます
自動 手記 人形 サービス …
( アン ) やっぱり お 人形 !
アン
( 母 ) ごめんなさい ( ヴァイオレット ) いえ
ヴァイオレット ・ エヴァーガーデン です
( 母 ) さあ 今 お茶 が 入り ます から かけて いら して
( 母 ) お 口 に 合う と いい けれど
どうぞ
( ヴァイオレット ) 頂 戴 し ます
飲んだ
( アン ) 飲んだ 紅茶 どう なる の ? ( 母 ) アン
いずれ 体 内 から 排出 さ れ 大地 に 還り ます が
( アン ) わ あ … ( 母 ) アン
失礼です よ
( アン ) む ぅ …
( ヴァイオレット ) 始め ます か ?
私 の 貸出 期間 は 7 日間 と 承って おり ます
そう ね すぐ 始め たい わ
( ヴァイオレット ) かしこまり ました
作業 は どちら で なさ い ます か ?
( 母 ) それ じゃあ ―
明るい サンルーム の ほう で お 願い しよう かしら
何 する の ?
お 手紙 を 書く の を 手伝って もらう の よ
お 手紙 なら 私 が 書いて あげる のに
( 母 ) アン に は まだ 難しい 言葉 は 無理でしょ
無理じゃ ない
それ に ヴァイオレット さん は
お 手紙 を 書く の が とても 上手で 有名な 方 な の
誰 に 書く の ?
そう ね
とっても 遠く に いる 人 よ
( アン ) 遠く ? ( 母 ) そう
( 母 ) 大事な お 手紙 な の
サンルーム に 入って きて は ダメ よ
それ じゃ ヴァイオレット さん
( ヴァイオレット ) かしこまり ました
む ぅ …
( ヴァイオレット ) こちら が 持参 した タイプ ライター に なり ます
( 母 ) それ で 大丈夫 よ
( ヴァイオレット ) かしこまり ました
やっぱり よく ない もの だった わ
あっ
すごい ! やっぱり お 人形 だ わ
( 物音 )
( アン ) あっ ! ( エリス ) 奥様 !
あっ …
( アン ) お 母さん 大丈夫 ?
( 母 ) 大丈夫 よ
すぐ よく なる から
ホントに ?
ホントに
そう だ !
私 子守歌 歌って あげる
ありがとう
でも お 母 様 は 大人 だ から 大丈夫
じゃあ 一緒に 寝て も いい ?
まあ
もう お 昼寝 は 卒業 した でしょ ?
今日 は いい の
それ より アン
お 客 様 の お 相手 を して さしあげて
お 客 様 は 嫌い
私 から お 母さん を 奪う んだ もの
あっ …
ごめん ね アン
でも お 願い 7 日間 だけ よ
お 母さん を 困ら せ ないで
( アン ) お 母 様 は 少し お 休み に なる んです って
( ヴァイオレット ) さ ようです か
( アン ) ちょっと 眠い だけ で すって
その 間 ―
私 が あなた の 相手 を して あげる
お 客 様 は 嫌いだ けど
あなた は お 人形 だ から
何 を する のです か ?
う っ … そう ね
お 話し する と か 何 か して 遊ぶ と か
( ヴァイオレット ) それ は 私 の 担当 外 の 作業 です
ですが ...
少し の 間 でしたら
わ あ …
じゃあ お 人形 遊び する から
( ヴァイオレット ) はい
( アン ) フフフ …
お 人形 が お 人形 で 遊ぶ なんて 面白い でしょ ?
( アン ) フフフ …
これ で 何 を すれば ?
お 話し したり お 世話 したり する に 決まって る じゃ ない
まず 挨拶 して みなさ いよ
こんにちは
こんにちは
( アン ) あら こんにちは
あっ … 今 の は お 人形 が 言った の !
なるほど
理解 し ました
そ っか ! あなた お 人形 だ から
遊ば れた こと は あって も 遊んだ こと ない の ね ?
( ヴァイオレット ) いえ 私 は …
私 が 教えて あげる わ
それ じゃあ 次 は お ままごと し ましょう
お 庭 に テーブル も ある の よ
( エリス ) あの … お 部屋 の 用意 が でき ました ので
ご 案内 いたし ます
( ヴァイオレット ) はい
それでは お 嬢 様
( エリス )2 階 の お 部屋 に なり ます
イー !
( アン ) 何 話して る の か な ?
( ドア が 開く 音 )
( アン ) あっ !
エリス
私 が 持って くわ
( エリス ) あっ いけ ませ ん
これ は わたくし の お 仕事 です から
取ら ないで ください まし
もう !
人生 って どうして こう な の かしら ?
む ぅ …
あっ …
( ノック )
( ヴァイオレット ) はい ( アン ) 私 アン よ
( ヴァイオレット ) どうぞ お 入り ください
どうか なされ ました か ?
何 して る の ?
( ヴァイオレット ) 手 を 調整 して いた のです
( アン ) 調整 ?
はい ちゃんと 動く ように
じゃあ 明日 も お 手紙 書く の ?
( ヴァイオレット ) はい
( アン ) その 次の 日 も ?
( ヴァイオレット ) はい
( アン )7 日 だ から ―
その 次の 日 も 次の 日 も ?
( ヴァイオレット ) はい
( アン ) 誰 に 書いて る の ?
それ は 申し上げ られ ませ ん
どうして よ ?
( ヴァイオレット ) 守 秘 義務 が ある のです
しゅひ …
難しい 言葉 ばかり 使わ ないで
( ヴァイオレット ) 申し訳 あり ませ ん
( アン ) お 父 様 じゃ ない わ よ ね ?
だって お 父 様 は もう い ない もの
大きな 戦争 が あった でしょ ?
そこ で 立派な 戦死 を 遂げ られた の
ねえ … 誰 に お 手紙 書いて る の ?
( ヴァイオレット ) お 嬢 様
何 か ご用 が あって い ら した ので は ?
何 か って …
エリス は 帰っちゃ った し
お 母さん は もう お 休み に なって る し
( ヴァイオレット ) それでは お 嬢 様
もう お 休み に なら れて は ?
どうして ?
( ヴァイオレット ) 夜更かし は 女性 に とって 大敵 です
カトレア さん が そう 言って おら れ ました
( アン ) 誰 ?
当社 の 別の ドール です
( アン ) えっ 別の ? ( ヴァイオレット ) はい
ほか に も エリカ さん と アイリス さん と いう ドール が …
すごい ! そんなに 動く お 人形 が いる の ?
はい
お 嬢 様
( アン ) 分かった わ 寝る もん
あなた も 寝 ない と お 母さん に 怒ら れる んだ から ね
それ に 夜更かし する と いけない オバケ が 出る んだ から ね
お やすみ なさい ませ お 嬢 様
お やすみ !
ん っ …
変な お 人形
( ヴァイオレット ) “ そして その 泥棒 は ―”
“ わ あ ! と 叫んで ―”
“ ビックリ して 逃げて いった のです ”
あなた なかなか 本 を 読む の 上手じゃ ない
( アン ) ヴァイオレット
パン は パン でも ―
すごく 硬くて 食べ られ ない パン って な ー んだ ?
スープ に 入れれば 軟らかく なり ます
( アン ) ヴァイオレット ヴァイオレット
お 母さん が 来る まで なぞなぞ して
一緒に 踊って お ままごと して
虫 を つかまえて …
( ヴァイオレット ) お 嬢 様
優先 順位 を 教えて ください
( アン ) ヴァイオレット ご 本 読んで
ヴァイオレット
ヴァイオレット
( ヴァイオレット ) いかがでしょう か ?
ええ とって も いい わ
( ヴァイオレット ) で は この 印象 で
ありがとう
ハァ ハァ …
あっ …
アン
あっ ち … 違う の
ヴァ … ヴァイオレット に リボン を つけて もらおう と 思った の
分かった わ でも あと で ね
( ヴァイオレット ) 奥様 少し だけ 休憩 を 頂いて も よろしい でしょう か ?
え ?
お 嬢 様 は 今 が よろしい のでしょう
( ヴァイオレット ) でき ました よ お 嬢 様
本当 は ヴァイオレット に リボン を つけて ほしい んじゃ ない の
( ヴァイオレット ) はい
本当 は お 母さん に して ほしい の
( ヴァイオレット ) はい
( アン ) 一緒に ご 本 読む の も なぞなぞ も お ままごと も
虫 は お 母さん 苦手だ けど
お 母さん と 私 の 時間 を 取ら ないで ヴァイオレット !
( ヴァイオレット ) あと 数 日 です
じゃあ 手紙 を 書いて いる とき 私 も そば に いて いい って 言って
近く に い たい の
そば に いて 手 を ギュッ て 握る だけ よ
お 願い
( ヴァイオレット ) 申し訳 あり ませ ん 承り かね ます
( アン ) どうして ?
( ヴァイオレット ) すみません お 嬢 様
そろそろ 戻ら なくて は いけ ませ ん
( 母 ) 今日 中 に いけ そう かしら ?
( ヴァイオレット ) はい この 調子 であれば
奥様 お 願い し ます
奥様 ?
大丈夫 よ
う っ …
( エリス ) 奥様 !
( 母 ) 大丈夫 よ ( ヴァイオレット ) しか し …
お 願い 続けて
( アン ) もう やめて ! お 母さん ( エリス ) お 嬢 様
( アン ) もう やめて ! ( 母 ) アン
大丈夫だ から 向こう へ 行って て ちょうだい
どうして ? どうして 手紙 を 書く の ?
誰 に 書く の ?
お 父さん は もうい ない のに
大事な 手紙 な の
( アン ) 私 が 知ら ない 誰 か の 手紙 な んでしょ ?
お 見舞い も 来 ない 誰 か よ
お 母さん の こと を 本当に 心配 して いる 人 なんて い ない のに
う っ …
私 より 大事な 手紙 な の ?
アン より 大事な もの なんて ない わ
( アン ) お 母さん は ウソ ばっかり
( 母 ) ウソ じゃ ない わ
だって お 母さん ちっとも よく なら ない じゃ ない
すぐに 元気に なる って 言った くせ に
そう よ
私 知って る !
お 母さん は …
お 母さん が い なく なったら 私 1 人 よ
私 は いつまで お 母さん と 一緒に い られる の ?
これ から ずっと 1 人 に なる なら
手紙 なんて 書か ないで 今 私 と 一緒に いて
私 と いて よ お 母さん !
( アン ) お 母さん ! ( ヴァイオレット ) お 嬢 様
( アン ) お 母さん !
う っ !
( エリス ) お 嬢 様
( アン の 荒い 息遣い )
う っ …
あっ
ハァ ハァ ハァ …
う っ …
お 母さん
( アン の 泣き声 )
( ヴァイオレット ) お 嬢 様
お 嬢 様 の 時間 を
私 が 消費 して いる こと に は 意味 が あり ます
どう か お 母 様 に 対して お 怒り に なら ないで ください
( アン ) だって だって …
( ヴァイオレット ) お 嬢 様 が お つらい の は 当たり前です
その 小さな 体 で ―
すでに お 母 様 の ご 病気 を 受け止めて いらっしゃる
あなた は とても 立派です
( アン ) 立派じゃ ない !
立派じゃ ない
私 …
お 母さん を 泣か せちゃ った
いいえ お 嬢 様 は お 優しい 方 です
( アン ) 違う ( ヴァイオレット ) いいえ
違う !
違う ! 違う !
私 が イヤな 子だから お 母さん が 病気 に なって …
関係 あり ませ ん
違う ! 違う ! 違う !
( ヴァイオレット ) 誰 に も どうにも なら ない こと な のです
( アン ) 違う !
私 の 腕 が あなた の 腕 の ように ―
柔らかい 肌 に は なら ない の と 同じ くらい
どう しよう も ない こと な のです
お 母さん お 母さん
どうして 手紙 を 書く の ?
( ヴァイオレット ) 人 に は 届け たい 思い が ある のです
( アン ) そんな の ―
届か なくて いい
届か なくて いい 手紙 なんて ない のです よ
お 嬢 様
( アン の 泣き声 )
( アン ) そして ―
私 を 抱きしめて くれた お 人形 が ―
手紙 を 書き 終えて さよなら する 日 が 来た
( アン ) ヴァイオレット
( ヴァイオレット ) お 嬢 様 ( アン ) あれ ?
( アン ) あったかい
あっ
もし かして …
それ じゃ 飲んだ 紅茶 は ?
ですから いずれ 体 内 から 排出 さ れ ―
大地 に 還り ます
ハッ ! え ?
( アン ) それ は お 人形 じゃ なかった の
それ から よく ない もの で も なかった わ
とっても 優しくて
私 あの 人 が 書いた 手紙 読んで み たかった な
一体 誰 へ の 手紙 だった んだろう ?
( 母 ) アン
さあ お 茶 に し ましょう
( アン ) お 母さん お 人形 遊び を し ましょう
( 母 ) ええ ( アン ) それ から ―
ご 本 読んで お ままごと して …
( 母 ) まあ まあ
( 母 ) アン
アン
私 の アン
( 母 ) アン
( 母 ) 〝 アン 8 歳 の 誕生日 おめでとう 〞
〝 悲しい こと が たくさん ある かも しれ ない 〞
〝 頑張る こと が 多くて くじけて いる かも 〞
〝 でも 負け ないで 〞
〝 寂しくて 泣いて しまう こと も ―〞
〝 ある かも しれ ない けど 忘れ ないで 〞
〝 お 母さん は いつも アン の こと 愛して る わ 〞
〝 アン 10 歳 の 誕生日 おめでとう 〞
〝 背 も 伸びて ―〞
〝 ずいぶん 大きく なった んでしょう ね 〞
〝 でも まだ 本 を 読む の と ―〞
〝 踊る こと は 好きでしょ ?〞
〝 なぞなぞ と 虫 取り は 卒業 した かしら ?〞
〝18 歳 の 誕生日 おめでとう 〞
〝 もう 立派な レディー ね 〞
〝 好きな 人 が できた かしら ?〞
〝 恋 の 相談 に は 乗れ ない けど ―〞
〝 あなた が 選ぶ 人 なら きっと ―〞
〝 とても ステキな 人 よ 〞
〝 誕生日 おめでとう アン 〞
〝20 年 も 生きた の ね すごい わ 〞
〝 大人 に なって も ―〞
〝 たまに は 弱音 を 吐いて も いい の よ 〞
〝 あなた が 不安に なって も ―〞
〝 私 が いる わ 〞
〝 アン 〞
〝 ずっと ずっと ―〞
〝 見守って る わ 〞
( カトレア ) お 疲れ さま
( エリカ ) すごい 量
( ヴァイオレット ) 今後 50 年 に わたって ―
アン ・ マグノリア に 届ける 手紙 です
( アイリス )50 通 も 書いた の ?
( エリカ ) 久しぶりの 出張 代筆 だった の に 大丈夫だった ?
問題 あり ませ ん
( アイリス ) でも ステキ ね
これ から 毎年 届く の が 楽しみ ね
( ヴァイオレット ) はい です が …
( アイリス ) ん ? ( エリカ ) あ …
( ヴァイオレット ) 届く ころ に は
お 母 様 は …
まだ あんなに 小さい ―
寂し がり 屋 で
お 母 様 が 大好きな お 嬢 様 を 残して
あっ …
あの お 屋敷 に 1 人 残さ れて
私 …
私 お 屋敷 で は ずっと 泣く の を 我慢 して い ました
( カトレア ) うん
でも ヴァイオレット
届く の よ あなた の 書いた 手紙 が
それ に 遠く 離れて いて も …