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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 73. 声と人柄 - 宮城道雄 (2nd version)

73. 声 と人柄 - 宮城 道雄 (2 nd version )

声 と 人柄 - 宮城 道雄

或時 、 横須賀 から 東京 に 向 う 省 線 に 逗子 駅 から 乗った こと が あった 。 ところが その 電車 が 非常に 混 んで いて 、 空いた 座席 が 殆ど なかった 。 丁度 その 時 、 どこ か の 地方 の 青年 団 の 人々 が 乗って いた が 、 その 中 の 一 人 が 、 私 の 乗り込んだ の を 見て か 「 おい 、 起 て 起 て 」 と 言ったら 、 腰かけて いた 人 たち が みな 起 ち あがって 、 私 たち に 席 を 与えて くれた 。 ・・

もし その 場合 に 、 私 が 目 が 見えて いたら 辞退 する のである が 、 私 は 盲人 な ので 折角 の 親切 を 無にして は 悪い と 思った ので 、 腰かけ させて もらった 。 ・・

私 は 初め その 青年 団 の 人 たち が 、 つい 近く へ でも 行く の か と 思って いたら 、 やはり 私 たち と 同様に 東京 へ 行く らしい のである 。 そして 、 独り言 の ように 「 なあ に 、 我々 は 起って いたって いい のだ 」 と 言って いた 。 それ から また 、 自分 たち が 起って いる 苦痛 を まぎらわす ため か 、 元 気 よく お 互 に 話し合って いた 。 そう か と 思う と 、 何 か 手 を まるめて 、 喇叭 の 真似 を 始め だした 。 ・・

そして 、 色々の 節 を 吹いて いた が 、 それ が なかなか 上手に やって いた 。 一節 吹いて は 興じ 合って 、 みんな が 元気に 笑って いた 。 私 は それ を 面白く 感じた 。 ・・

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私 は 人 の 言葉 つきで 、 その 人 が 今日 自分 に 、 どういう 用向き で 来た か と いう こと が 、 あらかじめ わかる 。 ・・

その 人 が どういう 態度 を して いる か と いう こと も 、 自然に 感じられる のである 。 ・・

ある 夏 の 暑い 時 であった が 、 或る 人 が 尺八 を 合せ に 、 私 の ところ に 来た こと が ある 。 その 人 と は 心 易い 間柄 だった し 、 丁度 その 時 は 誰 も 居合わせ なかった ので 、 その 人 が 上 著 を 脱ぎ 、 はだか に なって 尺八 を 吹き出した 。 私 は それ を 感じて いた けれども 黙って 合奏 を した のであった 。 そして いよいよ 済んだ あと で 、 私 が 今日 の ような 暑い 日 に は 、 はだか で やる と 大変 涼しい でしょう なあ 、 と 言ったら その 人 は 驚いて 、 這う 這う の 体 で 帰って しまった 。 その 人 は 別に 私 を 誤 魔 化 そう と 思って やった ので は なく 、 心 易 さ から の こと だったろう が 、 私 の 言った こと が 当たった のであった 。 ・・

とりわけ 、 声 で 、 一 番 私 の 感ずる こと は 、 バス や 円 タク に 乗った 場合 である 。 ・・

声 を 聞いた だけ で 、 今日 は 運転手 が 、 疲れて いる な と 思ったり 、 また 賃銀 でも 値ぎら れた の か 、 非常に 憤慨 した 気持 の まま だ と か 、 ちゃんと 知る こと が できる 。 ・・

電車 や バス など の 車掌 が 、 わざわざ 発車 する の を 遅らせて も 、 私 たち 不自由な 者 の 手 を 引いて 、 乗せて くれたり する こと が ある 。 こういう 風 に 、 道 の 途中 を 歩いて いて も 、 その 人 の 声 を 聞いて 、 その 人 の 人柄 が 知ら れる のである が 、 私 は 心 の 持ち ようで 、 声 まで 変わって 来る もの だ と いう こと を 信じて いる 。 ・・

そして 、 非常に 感謝 の 気持 で 仕事 を して いる 人 と 、 疲れ の 工 合 か 何 か 、 非常に 不愉快 らしく して いる 人 が ある ように 思う が 、 その 差 は 少し の 心 の 持ち ようで 、 どちら に も なる のである と 私 は 思う 。 ・・

73. 声 と人柄 - 宮城 道雄 (2 nd version ) こえ|と ひとがら|みやぎ|みちお|| |personality|||| 73. voice and personality - Michio Miyagi (2nd version) 73. voz e personalidade - Michio Miyagi (2ª versão) 73. голос и личность - Мичио Мияги (2-я версия) 73. 聲音與性格 - 宮城道夫(第二版)

声 と 人柄 - 宮城 道雄 こえ||ひとがら|みやぎ|みちお Voice and personality-Michio Miyagi

或時 、 横須賀 から 東京 に 向 う 省 線 に 逗子 駅 から 乗った こと が あった 。 あるとき|よこすか||とうきょう||むかい||しょう|せん||ずし|えき||のった||| ところが その 電車 が 非常に 混 んで いて 、 空いた 座席 が 殆ど なかった 。 ||でんしゃ||ひじょうに|こん|||あいた|ざせき||ほとんど| 丁度 その 時 、 どこ か の 地方 の 青年 団 の 人々 が 乗って いた が 、 その 中 の 一 人 が 、 私 の 乗り込んだ の を 見て か 「 おい 、 起 て 起 て 」 と 言ったら 、 腰かけて いた 人 たち が みな 起 ち あがって 、 私 たち に 席 を 与えて くれた 。 ちょうど||じ||||ちほう||せいねん|だん||ひとびと||のって||||なか||ひと|じん||わたくし||のりこんだ|||みて|||おこ||おこ|||いったら|こしかけて||じん||||おこ|||わたくし|||せき||あたえて| ・・

もし その 場合 に 、 私 が 目 が 見えて いたら 辞退 する のである が 、 私 は 盲人 な ので 折角 の 親切 を 無にして は 悪い と 思った ので 、 腰かけ させて もらった 。 ||ばあい||わたくし||め||みえて||じたい||||わたくし||もうじん|||せっかく||しんせつ||むにして||わるい||おもった||こしかけ|さ せて| ・・

私 は 初め その 青年 団 の 人 たち が 、 つい 近く へ でも 行く の か と 思って いたら 、 やはり 私 たち と 同様に 東京 へ 行く らしい のである 。 わたくし||はじめ||せいねん|だん||じん||||ちかく|||いく||||おもって|||わたくし|||どうよう に|とうきょう||いく|| そして 、 独り言 の ように 「 なあ に 、 我々 は 起って いたって いい のだ 」 と 言って いた 。 |ひとりごと||よう に|||われわれ||おこって|||||いって| それ から また 、 自分 たち が 起って いる 苦痛 を まぎらわす ため か 、 元 気 よく お 互 に 話し合って いた 。 |||じぶん|||おこって||くつう|||||もと|き|||ご||はなしあって| そう か と 思う と 、 何 か 手 を まるめて 、 喇叭 の 真似 を 始め だした 。 |||おもう||なん||て|||らっぱ||まね||はじめ| ・・

そして 、 色々の 節 を 吹いて いた が 、 それ が なかなか 上手に やって いた 。 |いろいろの|せつ||ふいて||||||じょうずに|| 一節 吹いて は 興じ 合って 、 みんな が 元気に 笑って いた 。 いっせつ|ふいて||きょうじ|あって|||げんきに|わらって| 私 は それ を 面白く 感じた 。 わたくし||||おもしろく|かんじた ・・

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私 は 人 の 言葉 つきで 、 その 人 が 今日 自分 に 、 どういう 用向き で 来た か と いう こと が 、 あらかじめ わかる 。 わたくし||じん||ことば|||じん||きょう|じぶん|||ようむき||きた||||||| ・・

その 人 が どういう 態度 を して いる か と いう こと も 、 自然に 感じられる のである 。 |じん|||たいど|||||||||しぜんに|かんじられる| ・・

ある 夏 の 暑い 時 であった が 、 或る 人 が 尺八 を 合せ に 、 私 の ところ に 来た こと が ある 。 |なつ||あつい|じ|||ある|じん||しゃくはち||あわせ||わたくし||||きた||| その 人 と は 心 易い 間柄 だった し 、 丁度 その 時 は 誰 も 居合わせ なかった ので 、 その 人 が 上 著 を 脱ぎ 、 はだか に なって 尺八 を 吹き出した 。 |じん|||こころ|やすい|あいだがら|||ちょうど||じ||だれ||いあわせ||||じん||うえ|ちょ||ぬぎ||||しゃくはち||ふきだした 私 は それ を 感じて いた けれども 黙って 合奏 を した のであった 。 わたくし||||かんじて|||だまって|がっそう||| そして いよいよ 済んだ あと で 、 私 が 今日 の ような 暑い 日 に は 、 はだか で やる と 大変 涼しい でしょう なあ 、 と 言ったら その 人 は 驚いて 、 這う 這う の 体 で 帰って しまった 。 ||すんだ|||わたくし||きょう|||あつい|ひ|||||||たいへん|すずしい||||いったら||じん||おどろいて|はう|はう||からだ||かえって| その 人 は 別に 私 を 誤 魔 化 そう と 思って やった ので は なく 、 心 易 さ から の こと だったろう が 、 私 の 言った こと が 当たった のであった 。 |じん||べつに|わたくし||ご|ま|か|||おもって|||||こころ|やす|||||||わたくし||いった|||あたった| ・・

とりわけ 、 声 で 、 一 番 私 の 感ずる こと は 、 バス や 円 タク に 乗った 場合 である 。 とり わけ|こえ||ひと|ばん|わたくし||かんずる|||ばす||えん|||のった|ばあい| ・・

声 を 聞いた だけ で 、 今日 は 運転手 が 、 疲れて いる な と 思ったり 、 また 賃銀 でも 値ぎら れた の か 、 非常に 憤慨 した 気持 の まま だ と か 、 ちゃんと 知る こと が できる 。 こえ||きいた|||きょう||うんてんしゅ||つかれて||||おもったり||ちんぎん||ねぎら||||ひじょうに|ふんがい||きもち|||||||しる||| ・・

電車 や バス など の 車掌 が 、 わざわざ 発車 する の を 遅らせて も 、 私 たち 不自由な 者 の 手 を 引いて 、 乗せて くれたり する こと が ある 。 でんしゃ||ばす|||しゃしょう|||はっしゃ||||おくらせて||わたくし||ふじゆうな|もの||て||ひいて|のせて||||| こういう 風 に 、 道 の 途中 を 歩いて いて も 、 その 人 の 声 を 聞いて 、 その 人 の 人柄 が 知ら れる のである が 、 私 は 心 の 持ち ようで 、 声 まで 変わって 来る もの だ と いう こと を 信じて いる 。 |かぜ||どう||とちゅう||あるいて||||じん||こえ||きいて||じん||ひとがら||しら||||わたくし||こころ||もち||こえ||かわって|くる|||||||しんじて| ・・

そして 、 非常に 感謝 の 気持 で 仕事 を して いる 人 と 、 疲れ の 工 合 か 何 か 、 非常に 不愉快 らしく して いる 人 が ある ように 思う が 、 その 差 は 少し の 心 の 持ち ようで 、 どちら に も なる のである と 私 は 思う 。 |ひじょうに|かんしゃ||きもち||しごと||||じん||つかれ||こう|ごう||なん||ひじょうに|ふゆかい||||じん|||よう に|おもう|||さ||すこし||こころ||もち||||||||わたくし||おもう ・・