88. ごわごわ ご む 靴 - 櫻 間中 庸
|||くつ|さくら|まなか|よう
88. stiff shoes - Sakurama Chunyong
88. zapatos rígidos y corpulentos - Sakurama Chunyong
88. жесткие, громоздкие ботинки - Сакурама Чуньонг
88. sert, iri ayakkabılar - Sakurama Chunyong
ごわごわ ご む 靴 - 櫻 間中 庸
|||くつ|さくら|まなか|よう
stiff||||cherry blossom||
Stiff rubber shoes-Yo Sakurama
山 と 山 と の 間 に 小さい 川 が あります 。
やま||やま|||あいだ||ちいさい|かわ||あり ます
There is a small river between the mountains.
川 に は 、 澄みき つた 水 が 流れて ゐま す 。
かわ|||すみき||すい||ながれて||
|||cleared||||||
Clear water flows through the river.
川 の 底 に は 白くて 丸い 石 が 卵 の や う に 重なり合 つて ゐて 、 水 が 小石 にぶ つつ かつて 、 こ ぽり 、 こ ぽり と 音 を たてて ゐま す 。
かわ||そこ|||しろくて|まるい|いし||たまご|||||かさなりあ|||すい||こいし|||||||||おと||||
||||||||||||||overlapping|||||pebble|lightly||||||||||||
At the bottom of the river, white, round stones overlap like eggs, and water hits the pebbles, making a squeaky, squeaky sound.
・・
「 ぽつ ちや り 」 と 何だか 黒い かたまり が 水 の 中 に 入 つて きました 。
||||なんだか|くろい|||すい||なか||はい||き ました
Somehow a black lump came into the water, saying "Potsuchiyari".
・・
ゆら 、 ゆら 、 ゆら 、・・
Yura, Yura, Yura, ...
黒い ごわごわした かたまり は 川 の 底 まで ゆきました 。
くろい||||かわ||そこ||ゆき ました
The black, stiff mass went to the bottom of the river.
・・
こ ぽり 、 こ ぽり 、 こ ぽり 。
・・
流れ が はやい ので 、 ごわごわ は 、 くるり くるり と お腹 を 見せたり 背中 を 見せたり こ ぽり こ ぽり と 流れて ゆきました 。
ながれ|||||||||おなか||みせたり|せなか||みせたり||||||ながれて|ゆき ました
The flow was so fast that I was stiff and fluttering, showing my stomach and back.
・・
大きな 石 の ところ で 、 ごわごわ は やつ と とまりました 。
おおきな|いし||||||||とまり ました
|||||||||stopped
・・
大きな 口 を あいて 水 を 飮 んで ゐま す 。
おおきな|くち|||すい||いん|||
背中 は 太い 紐 で しば つて あります 。
せなか||ふとい|ひも||||あり ます
・・
黒い ごわごわ は 何で せ う 。
くろい|||なんで||
・・
ああ 。
正雄 君 の ご む 靴 です 。
まさお|きみ||||くつ|
さ う です 。
今 さつき 正雄 君 が 栗 の 木 に 昇る とき 、 靴 を はいて ゐて は うまく 昇れ ない ので 栗 の 木 の 根 もと で ぬいだ とき 、 ころころ 轉 んで 、 ぽつ ちや り と 水 の 中 に 落ちた のです 。
いま||まさお|きみ||くり||き||のぼる||くつ||||||のぼれ|||くり||き||ね||||||てん||||||すい||なか||おちた|
|Satsuki||||||||||||||||climb|||||||||||||rolled|||||||||||
・・
正雄 君 は 知りません 。
まさお|きみ||しり ませ ん
Masao|||
・・
栗 の 木 に は 、 とても 澤山 、 栗 が 實 つて ゐま す 。
くり||き||||さわやま|くり||まこと|||
||||||a lot|||fruit|||
いがい が の 中 から 、 い ゝ 色 の 栗 の 實 が 、 いく つ も いく つ も のぞいて ゐま す 。
|||なか||||いろ||くり||まこと||||||||||
unexpectedly|||||||||||||||||||||
・・
正雄 君 は 一生懸命 、 栗 の 木 に 昇 つて ゐま す 。
まさお|きみ||いっしょうけんめい|くり||き||のぼる|||
・・
--
黒い ごわごわ ご む 靴 は 、 大きな 口 を あいて お腹 一 ぱい 水 を 飮 みました 。
くろい||||くつ||おおきな|くち|||おなか|ひと||すい||いん|み ました
|||||||||||||||drank|
・・
めだか の 子供 が 友達 と 大ぜい で 寄つ てきました 。
||こども||ともだち||おおぜい||よりつ|てき ました
rice fish||||||a lot||gathered|gathered around
めだか は 小さい 口 で ツイツイ と つついて みました 。
||ちいさい|くち|||||み ました
|||||gently|||
・・
「 お 菓子 ぢや ない ね 」・・
|かし|||
「 つまらない な 」・・
めだか の 子供 は みんな 、 ちよ つと つついて みて 、 ツイツイ と あちら へ 泳いで ゆきました 。
||こども|||||||||||およいで|ゆき ました
・・
どん この を ぢ さん が 眼 を 、 きよ と きよ と さ せて 、 小石 と 小石 の 間 から 出て きました 。
||||||がん||||||||こいし||こいし||あいだ||でて|き ました
・・
「 へんな もの が ゐる ぞ 」・・
さ う 言 つて 、 大きな 口 で 、 ぶ う 、 と ごわごわ ご む 靴 に ぶつ つかりました 。
||げん||おおきな|くち||||||||くつ|||つかり ました
||||||||||||||||hit
・・
ぽこ ん 、 と ご む 靴 は はね か へりました 。
|||||くつ||||へり ました
|||||||||decreased
どん この を ぢ さん は 驚いて どこ か へ 逃げて ゆきました 。
||||||おどろいて||||にげて|ゆき ました
・・
しばらく 誰 も きません でした 。
|だれ||き ませ ん|
・・
お 日 樣 が 、 水 の あちら に ぼんやり と うるんで 見えました 。
|ひ|さま||すい|||||||みえ ました
水 の 上 を 木 の 葉 が いく つ も いく つ も 流れて ゆく の が 見えました 。
すい||うえ||き||は||||||||ながれて||||みえ ました
・・
ご む 靴 は 、 お しり の 所 に 何 が [#「 何 が 」 は ママ ] つきあた つた や う に 思 ひました 。
||くつ|||||しょ||なん||なん|||まま||||||おも|ひ ました
|||||||||||||||bumped into||||||
・・
する と ・・
「 おや 、 何で せ う 。
|なんで||
まあ 。
い ゝ お家 が ある わ 」 と 言 ふ 聲 が 聞こえました 。
||おいえ|||||げん||こえ||きこえ ました
・・
鮒 の を ば さん でした 。
ふな|||||
carp|possessive particle||||
鮒 の を ば さん は 、 ごわごわ ご む 靴 の お 口 から 入ら う と しました けれど 、 からだ が 大きい ので 入れません でした 。
ふな|||||||||くつ|||くち||はいら|||し ました||||おおきい||いれ ませ ん|
・・
「 おや 、 わたし は 入れ ない 」・・
|||いれ|
さ う 言 つて 、 すう い と 行 つて しま ひました 。
||げん|||||ぎょう|||ひ ました
その 聲 を 聞いて いた ど ぢ よう の を ぢい さん が 石 の 下 から 、 ぬ つと 顏 を 出しました 。
|こえ||きいて||||||||||いし||した||||かお||だし ました
・・
「 わし なら 大丈夫 入れる だ ら う 」 と 長い から だ を ぴんぴん 動かして ご む 靴 の 中 に 入 つて きました 。
||だいじょうぶ|いれる|||||ながい|||||うごかして|||くつ||なか||はい||き ました
||||||||||||energetically||||||||||
・・
「 これ は い ゝ 。
今夜 は よく 眠れる ぞ 」 とい つて 、 お ひげ を 動かしました 。
こんや|||ねむれる|||||||うごかし ました
||||||||||moved
・・
ごわごわ ご む 靴 は とうた うど ぢ よう の を ぢい さん の お家 に なりました 。
|||くつ|||||||||||おいえ||なり ました
|||||tied|||||||||||
・・
夜 が 來ました 。
よ||らい ました
お 月 樣 が 出た ので せ う 。
|つき|さま||でた|||
栗 が 金色 に 光りました 。
くり||きんいろ||ひかり ました
||||shone
ころ ん 、 ころ ん 、 と ピアノ を たたく や うに 音 を たてて 栗 が 流れて ゐま した 。
|||||ぴあの|||||おと|||くり||ながれて||
どこ から か 、 ころころ と 何 か 轉 んで くる 音 が して 、 ぽん と ご む 靴 に つきあたりました 。
|||||なん||てん|||おと|||||||くつ||つきあたり ました
|||||||||||||||||||bumped into
ご む 靴 の 中 に 眠 つて ゐた ど ぢ よう の を ぢい さん は 驚いて 、 とび出しました 。
||くつ||なか||ねむ|||||||||||おどろいて|とびだし ました
||||||||||||||||||jumped out
・・
「 おそろしい 家 だ 、 おそろしい 家 だ 」 と ぶつぶつ 言 ひ ながら 、 お 月 樣 の 光 で 明るい 川 の 中 を どこ か へ 行 つて 見え なく なりました 。
|いえ|||いえ||||げん||||つき|さま||ひかり||あかるい|かわ||なか|||||ぎょう||みえ||なり ました
・・
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ご む 靴 に ぶつ つか つたの は 栗 の 實 でした 。
||くつ||||||くり||まこと|
・・
ご む 靴 は 正雄 君 の こと を 思 ひました 。
||くつ||まさお|きみ||||おも|ひ ました
正雄 君 は きつ と 、 どの ポケツト も どの ポケツト も 栗 の 實 で ふくらま せて 、 片方 の ご む 靴 を はいて 山 から 降りて お家 へ 歸 つた で せ う 。
まさお|きみ||||||||||くり||まこと||||かたほう||||くつ|||やま||おりて|おいえ||き||||
||||||pocket|||||||||swelled up||one side||||||||||||||||