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Readings (6-7mins), 1. 犬と人形 - 夢野久作

1. 犬 と 人形 - 夢野 久作

犬 と 人形 - 夢野 久作

東京 で は 今度 大 地震 と 大 火事 が あり まして たくさんの ひと が 死にました 。 死な なかった ひと も お うち やきもの や たべもの が なくなって 大変に 困りました 。 ・・

太郎 さん と 花子 さん は 、 お 父 様 と お 母 様 に 手 を 引かれて 東京 の 近所 の ば あやの 処 へ 逃げて 来ました 。 二 人 は 久し振りに 親切な ば あやの お 話 を きいて よろこんで おとなしく ねむりました 。 ・・

ところが 夜中 に なる と 太郎 さん は ねむった まま 大きな 声 を 出して 、・・

「 ポチ 、 ポチ 」・・

と よびました 。 すると 花子 さん も ねむった まま で 、・・

「 メリー さん 、 メリー さん 」・・

と 呼びました 。 そうして また スヤスヤ と ねむりました 。 お 父 様 と お 母 様 と は 顔 を 見合わせて 、・・

「 犬 と お 人形 の 夢 を 見て いる のです よ 」・・

「 どちら も 焼けて しまった だろう 。 可哀そうに ……」・・

と 言わ れました 。 ・・

あくる 朝 、 太郎 さん と 花子 さん は 二 人 揃って お 父 様 と お 母 様 の 前 へ 出て 、・・

「 どうぞ も 一 ペン 東京 に 連れて 行って 下さい 。 あたし たち は 昨夜 二 人 共同 じ 夢 を みました 。 ポチ も メリー ちゃん も 焼け ず に いて 、 早く お迎え に 来て 頂 戴って お まねき を して いました から 」・・

と 言いました 。 お 父さん も お母さん も 大層 お 笑い に なって 、・・

「 そんな 事 は ない 。 犬 は 逃げた かも 知れ ない が 、 人形 は 押入れ に 仕舞って あった のだ から 、 きっと 焼けて しまった に 違いない 。 もう しかたがない から 二 人 と も おとなしく 遊ぶ のです よ 。 そう したら 今に 又 いい 犬 と いい お 人形 を 買って 上げる から 」・・

と 言わ れました 。 ・・

二 人 は 悲しく なって シクシク 泣き出しました が 、 やがて 花子 さん は ば あやの お 庭 の 隅 に 、「 メリー さん の お 墓 」 と 書いた 木 の 札 を 立てて コスモス や ケイトー の 花 を 上げて 拝みました 。 太郎 さん は 、・・

「 ポチ が 生きて いれば メリーチャン も きっと 焼け ないで いる よ 。 まだ よく わから ない のだ から お 墓 を 建てる の お よし よ 」・・

と 止めました が 、 花子 さん は ただ シクシク 泣いて 拝んで いました 。 ・・

火事 が すっかり 済んで から 、 お 父 様 は 一 人 で お家 の 焼けあと を 見 に いらっしゃいました が 、 夕方 に なる と 急いで 帰って 来て 、・・

「 うち は たった 一 軒 焼け残って いた 。 さあ みんな 来い 」・・

と 大喜びで 、 ば あや も 連れて 東京 の お うち へ お 帰り に なりました 。 ・・

お うち に 来る と 花子 さん は 何より 先 に 押入れ を あけて 人形 を 見つけます と 、 抱き締めて 飛んで よろこびました 。 それ と 一緒に 太郎 さん は お うち の まわり を クルクル まわって 、・・

「 ポチ よ 、 ポチ よ 」・・

と 呼んで いました が 見つかりません ので 、 ベソ を かいて 帰って 来ました 。 そうして 今度 は お 庭 の 隅 に ポチ の お 墓 を こしらえ 始めました 。 ・・

花子 さん は それ を 見て 、・・

「 お 兄 様 、 お 人形 が 焼け なかった から ポチ も きっと 無事です よ 。 お 墓 を 作る の は お よし なさい 」・・

と 慰めました が 、 太郎 さん は きか ず に お 墓 を 作って お 水 を 上げて 拝んで いました 。 ・・

する と その 晩 おそく ワンワン ワン と はげしく 犬 が 吠える 声 と 一緒に 、・・

「 痛い 痛い 。 畜生 。 ア 痛 た 痛 た 。 助けて くれ 」・・

と 言う うち に 、 バタバタ と 誰 か 逃げて 行く 音 が しました 。 ・・

太郎 さん は 一 番 に 飛び起きて 、・・

「 ポチ だ 、 ポチ だ 」・・

と 表 へ 飛び出しました 。 お 父 様 も お 母 様 も 花子 さん も 驚いて みんな 表 へ 出ます と 、 泥棒 の ような なり を した 大 男 が 犬 に 食いつかれて 跛 を 引き 引き 向 う へ 逃げて 行きます 。 その あと から ポチ が 一 所 懸命 吠え ながら 追っかけて 行きます と 、 やがて 泥棒 は 通りかかった お 巡査 さん に 捕まって しまいました 。 ・・

帰って 来た ポチ を 見る と 、 太郎 さん は 抱きついて 嬉し泣き を しました 。 ・・

「 えらい 、 えらい 。 よく 泥棒 を 追っ払った 」・・

「 さあ 御 ほうび に お握り を 上げる よ 」・・

と お 父さん と お母さん が 交わる 交わる お 賞 め に なりました 。 ・・

「 やっぱり あの 夢 は ほんとだった わ ね 」・・

と 花子 さん は 人形 を 抱き ながら 太郎 さん に 言いました 。 太郎 さん は 犬 の 背中 を 撫で ながら 嬉し そうに うなずきました 。


1. 犬 と 人形 - 夢野 久作 いぬ||にんぎょう|ゆめの|きゅうさく 1. dog and doll - Hisasaku Yumeno

犬 と 人形 - 夢野 久作 いぬ||にんぎょう|ゆめの|きゅうさく Dogs and Dolls-Yumeno Kyusaku

東京 で は 今度 大 地震 と 大 火事 が あり まして たくさんの ひと が 死にました 。 とうきょう|||こんど|だい|じしん||だい|かじ|||||||しに ました 死な なかった ひと も お うち やきもの や たべもの が なくなって 大変に 困りました 。 しな|||||||||||たいへんに|こまり ました Even those who did not die were in great trouble because they had no home or food. ・・

太郎 さん と 花子 さん は 、 お 父 様 と お 母 様 に 手 を 引かれて 東京 の 近所 の ば あやの 処 へ 逃げて 来ました 。 たろう|||はなこ||||ちち|さま|||はは|さま||て||ひか れて|とうきょう||きんじょ||||しょ||にげて|き ました Taro and Hanako were pulled by their father and mother and fled to a neighborhood in Tokyo. 二 人 は 久し振りに 親切な ば あやの お 話 を きいて よろこんで おとなしく ねむりました 。 ふた|じん||ひさしぶりに|しんせつな||||はなし|||||ねむり ました After a long time, they listened to the kind story of Aya and were happy to sleep quietly. ・・

ところが 夜中 に なる と 太郎 さん は ねむった まま 大きな 声 を 出して 、・・ |よなか||||たろう|||||おおきな|こえ||だして However, in the middle of the night, Taro made a loud voice while sleeping ...

「 ポチ 、 ポチ 」・・

と よびました 。 |よび ました And. すると 花子 さん も ねむった まま で 、・・ |はなこ||||| Then Hanako stayed sleepy ...

「 メリー さん 、 メリー さん 」・・

と 呼びました 。 |よび ました そうして また スヤスヤ と ねむりました 。 ||すやすや||ねむり ました Then I slept with Suyasuya again. お 父 様 と お 母 様 と は 顔 を 見合わせて 、・・ |ちち|さま|||はは|さま|||かお||みあわせて Face-to-face between father and mother ...

「 犬 と お 人形 の 夢 を 見て いる のです よ 」・・ いぬ|||にんぎょう||ゆめ||みて||| "I'm dreaming of a dog and a doll."

「 どちら も 焼けて しまった だろう 。 ||やけて|| "Both would have been burnt. 可哀そうに ……」・・ かわいそうに Poor ... "...

と 言わ れました 。 |いわ|れ ました They said . ・・

あくる 朝 、 太郎 さん と 花子 さん は 二 人 揃って お 父 様 と お 母 様 の 前 へ 出て 、・・ |あさ|たろう|||はなこ|||ふた|じん|そろって||ちち|さま|||はは|さま||ぜん||でて In the morning, Taro and Hanako went out together in front of their father and mother ...

「 どうぞ も 一 ペン 東京 に 連れて 行って 下さい 。 ||ひと|ぺん|とうきょう||つれて|おこなって|ください "Please take me to Ippen Tokyo. あたし たち は 昨夜 二 人 共同 じ 夢 を みました 。 |||さくや|ふた|じん|きょうどう||ゆめ||み ました We had a dream together last night. ポチ も メリー ちゃん も 焼け ず に いて 、 早く お迎え に 来て 頂 戴って お まねき を して いました から 」・・ |||||やけ||||はやく|おむかえ||きて|いただ|たい って|||||い ました| Both Pochi and Mary weren't burnt, and they came to pick me up early and imitated me. "

と 言いました 。 |いい ました お 父さん も お母さん も 大層 お 笑い に なって 、・・ |とうさん||お かあさん||たいそう||わらい|| Both my dad and my mom were laughing a lot ...

「 そんな 事 は ない 。 |こと|| " That is not it . 犬 は 逃げた かも 知れ ない が 、 人形 は 押入れ に 仕舞って あった のだ から 、 きっと 焼けて しまった に 違いない 。 いぬ||にげた||しれ|||にんぎょう||おしいれ||しまって|||||やけて|||ちがいない The dog may have escaped, but the doll was in the closet, so it must have been burnt. もう しかたがない から 二 人 と も おとなしく 遊ぶ のです よ 。 |||ふた|じん||||あそぶ|| There is no choice but to play quietly with them. そう したら 今に 又 いい 犬 と いい お 人形 を 買って 上げる から 」・・ ||いまに|また||いぬ||||にんぎょう||かって|あげる| Then I'll buy a good dog and a good doll again now. "

と 言わ れました 。 |いわ|れ ました They said . ・・

二 人 は 悲しく なって シクシク 泣き出しました が 、 やがて 花子 さん は ば あやの お 庭 の 隅 に 、「 メリー さん の お 墓 」 と 書いた 木 の 札 を 立てて コスモス や ケイトー の 花 を 上げて 拝みました 。 ふた|じん||かなしく||しくしく|なきだし ました|||はなこ||||||にわ||すみ||||||はか||かいた|き||さつ||たてて|こすもす||||か||あげて|おがみ ました The two became sad and began to cry, but eventually Hanako put up a wooden tag with the words "Mary's grave" in the corner of Aya's garden and raised the flowers of Cosmos and Kate to worship. I did. 太郎 さん は 、・・ たろう||

「 ポチ が 生きて いれば メリーチャン も きっと 焼け ないで いる よ 。 ||いきて|||||やけ||| "If Pochi is alive, Merry Chan will surely not be burnt. まだ よく わから ない のだ から お 墓 を 建てる の お よし よ 」・・ |||||||はか||たてる|||| I'm not sure yet, so it's okay to build a grave. "

と 止めました が 、 花子 さん は ただ シクシク 泣いて 拝んで いました 。 |とどめ ました||はなこ||||しくしく|ないて|おがんで|い ました Hanako just cried and worshiped. ・・

火事 が すっかり 済んで から 、 お 父 様 は 一 人 で お家 の 焼けあと を 見 に いらっしゃいました が 、 夕方 に なる と 急いで 帰って 来て 、・・ かじ|||すんで|||ちち|さま||ひと|じん||おいえ||やけあと||み||いらっしゃい ました||ゆうがた||||いそいで|かえって|きて After the fire was over, my dad came to see the burnt house by himself, but in the evening he came back in a hurry ...

「 うち は たった 一 軒 焼け残って いた 。 |||ひと|のき|やけのこって| "We had only one house left unburned. さあ みんな 来い 」・・ ||こい Come on everyone "...

と 大喜びで 、 ば あや も 連れて 東京 の お うち へ お 帰り に なりました 。 |おおよろこびで||||つれて|とうきょう||||||かえり||なり ました With delight, I went home with Aya to my house in Tokyo. ・・

お うち に 来る と 花子 さん は 何より 先 に 押入れ を あけて 人形 を 見つけます と 、 抱き締めて 飛んで よろこびました 。 |||くる||はなこ|||なにより|さき||おしいれ|||にんぎょう||みつけ ます||だきしめて|とんで|よろこび ました When she came to my house, Hanako opened the closet first and found the doll, and she hugged her and was happy to fly. それ と 一緒に 太郎 さん は お うち の まわり を クルクル まわって 、・・ ||いっしょに|たろう||||||||くるくる| Along with that, Taro went around the house ...

「 ポチ よ 、 ポチ よ 」・・

と 呼んで いました が 見つかりません ので 、 ベソ を かいて 帰って 来ました 。 |よんで|い ました||みつかり ませ ん|||||かえって|き ました I called it, but I couldn't find it, so I wrote a beso and came back. そうして 今度 は お 庭 の 隅 に ポチ の お 墓 を こしらえ 始めました 。 |こんど|||にわ||すみ|||||はか|||はじめ ました Then, this time, I started to make a tomb of Pochi in the corner of the garden. ・・

花子 さん は それ を 見て 、・・ はなこ|||||みて Hanako saw it ...

「 お 兄 様 、 お 人形 が 焼け なかった から ポチ も きっと 無事です よ 。 |あに|さま||にんぎょう||やけ||||||ぶじです| "My brother, the doll wasn't burnt, so I'm sure Pochi is safe. お 墓 を 作る の は お よし なさい 」・・ |はか||つくる||||| It's okay to make a grave. "

と 慰めました が 、 太郎 さん は きか ず に お 墓 を 作って お 水 を 上げて 拝んで いました 。 |なぐさめ ました||たろう|||||||はか||つくって||すい||あげて|おがんで|い ました However, Taro-san made a grave and raised water to worship. ・・

する と その 晩 おそく ワンワン ワン と はげしく 犬 が 吠える 声 と 一緒に 、・・ |||ばん||わんわん|わん|||いぬ||ほえる|こえ||いっしょに Then, that night, it's late, one-on-one, and with the barking voice of the dog ...

「 痛い 痛い 。 いたい|いたい " It hurts . 畜生 。 ちくしょう damn it . ア 痛 た 痛 た 。 |つう||つう| A hurts, hurts. 助けて くれ 」・・ たすけて|

と 言う うち に 、 バタバタ と 誰 か 逃げて 行く 音 が しました 。 |いう|||||だれ||にげて|いく|おと||し ました In the meantime, I heard a fluttering sound of someone running away. ・・

太郎 さん は 一 番 に 飛び起きて 、・・ たろう|||ひと|ばん||とびおきて

「 ポチ だ 、 ポチ だ 」・・ "Pochi, Pochi" ...

と 表 へ 飛び出しました 。 |ひょう||とびだし ました I jumped out to the table. お 父 様 も お 母 様 も 花子 さん も 驚いて みんな 表 へ 出ます と 、 泥棒 の ような なり を した 大 男 が 犬 に 食いつかれて 跛 を 引き 引き 向 う へ 逃げて 行きます 。 |ちち|さま|||はは|さま||はなこ|||おどろいて||ひょう||で ます||どろぼう||||||だい|おとこ||いぬ||くいつか れて|は||ひき|ひき|むかい|||にげて|いき ます When my father, mother, and Hanako were surprised and all went out to the table, a big man who looked like a thief was eaten by a dog and ran away to pull the lame. その あと から ポチ が 一 所 懸命 吠え ながら 追っかけて 行きます と 、 やがて 泥棒 は 通りかかった お 巡査 さん に 捕まって しまいました 。 |||||ひと|しょ|けんめい|ほえ||おっかけて|いき ます|||どろぼう||とおりかかった||じゅんさ|||つかまって|しまい ました After that, Pochi barked hard and chased after him, and eventually the thief was caught by a passing policeman. ・・

帰って 来た ポチ を 見る と 、 太郎 さん は 抱きついて 嬉し泣き を しました 。 かえって|きた|||みる||たろう|||だきついて|うれしなき||し ました When I saw Pochi who came back, Taro hugged me and cried with joy. ・・

「 えらい 、 えらい 。 "Great, great. よく 泥棒 を 追っ払った 」・・ |どろぼう||つい っ はらった I often chased away thieves. "

「 さあ 御 ほうび に お握り を 上げる よ 」・・ |ご|||おにぎり||あげる| "Come on, I'll give you a rice ball."

と お 父さん と お母さん が 交わる 交わる お 賞 め に なりました 。 ||とうさん||お かあさん||まじわる|まじわる||しょう|||なり ました It was a prize for the intersection of father and mother. ・・

「 やっぱり あの 夢 は ほんとだった わ ね 」・・ ||ゆめ|||| "After all, that dream was true."

と 花子 さん は 人形 を 抱き ながら 太郎 さん に 言いました 。 |はなこ|||にんぎょう||いだき||たろう|||いい ました Hanako said to Taro while holding the doll. 太郎 さん は 犬 の 背中 を 撫で ながら 嬉し そうに うなずきました 。 たろう|||いぬ||せなか||なで||うれし|そう に|うなずき ました Taro nodded happily while stroking the dog's back.