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Aozora Bunko, 蛙 (2/2)

蛙 (2/2)

―― より江 たち の お 母さん は 九 時 頃 帰って 来 ました 。

健 ちゃん たち が 、 さっき の 男 の ひと の 話 を する と 、 お 母さん は 心配 そうに 「 ほう 」 と いって い ました 。 濡れた 自転車 を 土間 へ 入れて 健 ちゃん が 硝子 戸 に 鍵 を かけよう と する と 、 さっき の 蛙 が まだ つくばって い ます 。 「 より ちゃん 、 まだ 蛙 が いる よ 。 」 と 、 健 ちゃん が 蛙 を つまみ あげる と 、 薄 青い 色 を した 蛙 は 、 く の 字 に なった 両 脚 を 強く 曲げて 逃げよう と し ました 。 健 ちゃん は 空 箱 の 小さい の へ 蛙 を 入れて 、 寝床 へ は いった より江 の 枕元 へ 持って行って やり ました 。 より江 は その 箱 を 耳 に つけて 、 いっ とき 、 ごそごそ と いう 蛙 の けはい を 愉 しんで い ました 。 お 母さん は 、 まだ 何 か お 仕事 の ようでした が 、 より江 は 箱 を 持った まま 小さい 鼾 を たてて 眠り 始め ました 。 翌 る 朝 。 夜来 の 雨 が 霽 れて 、 いい お 天気 でした 。 健 ちゃん は 学校 へ 行き ました 。 より江 は 蛙 が い なく なった と 騒いで い ました 。 戸外 で は 、 まぶしい 程 朝 陽 が あたって 、 青葉 は 燃える ように 光って い ました 。 より江 が 庭 で ほうせん花 の 赤い 花 を とって 遊んで いる と 、 店 の 土間 で 自転車 を 洗って いた お 母さん が 、 「 より ちゃん や ! より ちゃん 一 寸 おい で 。 」 と 呼び ました 。 より江 は 何かしら と おもって 走って ゆき ます と 、 昨夜 の おじさん が 、 バナナ の 籠 を さげて 板の間 へ 腰 を かけて い ました 。 お 母さん は にこにこ 笑って 、 「 わたし は 、 ま ァ 、 心 の うち で 泥棒 じゃ なかった かしら なんて 考えて い ました んです よ 。 」 と いって い ました 。 おじさん は 、 新 らしく 来た この 県 の 林野 局 の お 役人 で 、 山 から 降り しな に 径 に 迷って しまって 、 雨 で 冷えこんで 、 腹 を 悪く した と いって い ました 。 「 ほんとに 、 薬 を 飲んだ とき は やれやれ と おもい ました よ 。 これ は お土産 です よ 。 」 そう いって 、 紐 で くくった 傘 と バナナ の 籠 を 土間 に 置いて 、 より江 の 頭 を なぜ て くれ ました 。 より江 は おじさん が 、 如何にも うれし そうに 声 を たてて 笑う 皓 い 歯 を みて い ました 。 お 母さん は 自転車 を 洗い 終る と 、 店先 き の 陽向 に 干して 、 おじさん に 茶 を 入れて 出し ました 。 「 おや 、 雨蛙 が いる よ 。 」 おじさん が ひょいと 股 を ひろげる と 、 おじさん の 長靴 の 後 に 昨夜 の 雨蛙 が 呆 ん やり した 眼 を して きょとんと して い ます 。 より江 は 雨蛙 を どこ か 水 の ある ところ へ 放して やろう と おもい ました 。 そっと 両手 で 挟 さ んで 、 往来 の 窪み へ 置いて やり ました が 、 蛙 は 疲れて いる の か 、 道ばた に 呆 ん やり つくばった まま で い ます ので 、 より江 は ひしゃく に 水 を 汲 んで ぱさり と 、 蛙 の 背中 に 水 を かけて やり ました 。 蛙 は びっくり して 、 長く 脚 を 伸ばして 二三 度 飛び はねて ゆき ました が 、 より江 が まばたき して いる 間 に 、 どこ か へ 隠れて しまった の か 煙 の ように 藪 垣 の 方 へ 消えて 行って しまい ました 。 乗合 自動車 が 地 響 を たてて 上がって 来 ました 。 おじさん は 、 「 さ ァ て 、 山 へ 行く かな ……」 そう 云 って 立ちあがり ます と 、 より江 の お 母さん は 、 赤い 旗 を 持って 土間 へ 降りて ゆき ました 。 より江 も ひしゃく を 持った まま お 母さん の 後 へ ついて 、 表 の 陽向 へ 出て 行き ました 。

蛙 (2/2) かえる frog Frösche (2/2) Frog (2/2) Ranas (2/2) 개구리 (2/2) Grodor (2/2) 青蛙 (2/2)

―― より江 たち の お 母さん は 九 時 頃 帰って 来 ました 。 より こう||||かあさん||ここの|じ|ころ|かえって|らい| ||||||||around||| »Yoshies Mutter kam gegen 9 Uhr zurück. - From the time the mothers of Jiang return home around 9 o'clock.

健 ちゃん たち が 、 さっき の 男 の ひと の 話 を する と 、 お 母さん は 心配 そうに 「 ほう 」 と いって い ました 。 けん||||||おとこ||||はなし|||||かあさん||しんぱい|そう に||||| Ken|||||||||||||||||zmartwienie||och|||| When Ken and her friends talked about the man just before, their mother said worriedly, "He." 濡れた 自転車 を 土間 へ 入れて 健 ちゃん が 硝子 戸 に 鍵 を かけよう と する と 、 さっき の 蛙 が まだ つくばって い ます 。 ぬれた|じてんしゃ||どま||いれて|けん|||がらす|と||かぎ||||||||かえる|||つくば って|| wet|||przedsionek||||Kenny|||sliding door||the key||to lock||||||||||| When Ken puts his wet bike into the dirt and tries to lock the glass door, the frog is still squashed. 「 より ちゃん 、 まだ 蛙 が いる よ 。 |||かえる||| "Yori-chan, there are still frogs. 」   と 、 健 ちゃん が 蛙 を つまみ あげる と 、 薄 青い 色 を した 蛙 は 、 く の 字 に なった 両 脚 を 強く 曲げて 逃げよう と し ました 。 |けん|||かえる|||||うす|あおい|いろ|||かえる||||あざ|||りょう|あし||つよく|まげて|にげよう||| ||||||to pinch|to||light|||||||||character||became|both|legs||strongly|to bend|to try to escape||| Ken-chan picked up the frog, and the light-blue-colored frog tried to escape by bending both of its legs that were shaped like a letter. 健 ちゃん は 空 箱 の 小さい の へ 蛙 を 入れて 、 寝床 へ は いった より江 の 枕元 へ 持って行って やり ました 。 けん|||から|はこ||ちいさい|||かえる||いれて|ねどこ||||より こう||まくらもと||もっていって|| ||||pudełko||||||||bed||||||pillow|||| Ken-chan put the frog into the small empty box and took it to Eno's bedside before going to bed. より江 は その 箱 を 耳 に つけて 、 いっ とき 、 ごそごそ と いう 蛙 の けはい を 愉 しんで い ました 。 より こう|||はこ||みみ|||||ご そご そ|||かえる||||ゆ||| |||box|||||one||szeleszcząco|||||presence||enjoy|to enjoy|| He put the box in his ears and enjoyed the frog's injuries. お 母さん は 、 まだ 何 か お 仕事 の ようでした が 、 より江 は 箱 を 持った まま 小さい 鼾 を たてて 眠り 始め ました 。 |かあさん|||なん|||しごと||||より こう||はこ||もった||ちいさい|いびき|||ねむり|はじめ| |||||||||seemed|||||||||snore|||sleep|| Mom seemed to be still doing some work, but she began to sleep with a little snoring while holding the box. 翌 る 朝 。 よく||あさ next||rano The next morning. 夜来 の 雨 が 霽 れて 、 いい お 天気 でした 。 やらい||あめ||さい||||てんき| night||||cleared||||weather| The rain of night came and the weather was good. 健 ちゃん は 学校 へ 行き ました 。 けん|||がっこう||いき| Ken went to school. より江 は 蛙 が い なく なった と 騒いで い ました 。 より こう||かえる||||||さわいで|| ||||||||was making noise|| The river was more noisy than the frog was gone. 戸外 で は 、 まぶしい 程 朝 陽 が あたって 、 青葉 は 燃える ように 光って い ました 。 こがい||||ほど|あさ|よう|||あおば||もえる||ひかって|| outdoors|||dazzling|extent|morning|sun|||green leaves||to burn|||| In the open air, the morning sun was shining so brightly that the green leaves glowed like burning. より江 が 庭 で ほうせん花 の 赤い 花 を とって 遊んで いる と 、 店 の 土間 で 自転車 を 洗って いた お 母さん が 、 「 より ちゃん や ! より こう||にわ||ほうせんか||あかい|か|||あそんで|||てん||どま||じてんしゃ||あらって|||かあさん|||| ||garden||hydrangea|||||is taking||||||dirt floor||||wash||||||| When Ms. Eori was playing with red flowers in her garden, she was washing a bicycle in the dirt of the shop. より ちゃん 一 寸 おい で 。 ||ひと|すん|| ||one|a little|| Come one inch more. 」   と 呼び ました 。 |よび| "I called. より江 は 何かしら と おもって 走って ゆき ます と 、 昨夜 の おじさん が 、 バナナ の 籠 を さげて 板の間 へ 腰 を かけて い ました 。 より こう||なにかしら|||はしって||||さくや||||ばなな||かご|||いたのま||こし|||| ||something||to think|||||last night||||||basket||lower|the wooden floor||waist|||| When Eko ran with some thought, the uncle of last night was sitting on a banana basket sitting between the boards. お 母さん は にこにこ 笑って 、 「 わたし は 、 ま ァ 、 心 の うち で 泥棒 じゃ なかった かしら なんて 考えて い ました んです よ 。 |かあさん|||わらって|||||こころ||||どろぼう|||||かんがえて|||| |||||||well||||||thief||||||||| Meine Mutter lächelte und sagte: "Nun, ich habe mich gefragt, ob ich ein Dieb in meinem Herzen bin. She smiled with a smile and said, "I was thinking, ah, I was not a thief in my heart. 」   と いって い ました 。 " おじさん は 、 新 らしく 来た この 県 の 林野 局 の お 役人 で 、 山 から 降り しな に 径 に 迷って しまって 、 雨 で 冷えこんで 、 腹 を 悪く した と いって い ました 。 ||しん||きた||けん||りんや|きょく|||やくにん||やま||ふり|||けい||まよって||あめ||ひえこんで|はら||わるく||||| ||||||prefecture||forestry||||official||||to descend|||path||to get lost||||to get cold|stomach||badly||||| The uncle was a new official of the forestry bureau of the prefecture, who said he had lost his way down the mountain and lost his diameter, and was chilled by the rain and had a bad stomach. 「 ほんとに 、 薬 を 飲んだ とき は やれやれ と おもい ました よ 。 |くすり||のんだ||||||| "I really thought when I took the medicine, I would do it. これ は お土産 です よ 。 ||おみやげ|| ||souvenir|| This is a souvenir. 」   そう いって 、 紐 で くくった 傘 と バナナ の 籠 を 土間 に 置いて 、 より江 の 頭 を なぜ て くれ ました 。 ||ひも|||かさ||ばなな||かご||どま||おいて|より こう||あたま||||| ||string||tied|||||basket||earthen||to place|||head||||| Das heißt, er legte einen Regenschirm mit einer Schnur und einem Korb Bananen in den Boden und gab mir einen besseren Kopf des Flusses. That's why he put a string of umbrellas and a basket of bananas in the dirt, and he helped the head of the river more. より江 は おじさん が 、 如何にも うれし そうに 声 を たてて 笑う 皓 い 歯 を みて い ました 。 より こう||||いかにも||そう に|こえ|||わらう|あきら||は|||| ||||how||like|voice||||white|||||| Jiang saw the uncle's laughing, laughing and laughing teeth. お 母さん は 自転車 を 洗い 終る と 、 店先 き の 陽向 に 干して 、 おじさん に 茶 を 入れて 出し ました 。 |かあさん||じてんしゃ||あらい|おわる||みせさき|||ようこう||ほして|||ちゃ||いれて|だし| ||||||||store front|||the sunny spot||to dry||||||| When she finished washing her bicycle, she dried it in the sunlight at the storefront and put tea with her uncle. 「 おや 、 雨蛙 が いる よ 。 |あまがえる||| oh|rain frog||| "Oh, there's a frog. 」   おじさん が ひょいと 股 を ひろげる と 、 おじさん の 長靴 の 後 に 昨夜 の 雨蛙 が 呆 ん やり した 眼 を して きょとんと して い ます 。 |||また||||||ながぐつ||あと||さくや||あまがえる||ぼけ||||がん|||||| ||quickly|legs||to spread||||rubber boots||||last night||rain frog|||||||||||| As he unfolded his crotch, the rain frog last night saw his glanced eyes behind his uncle's boots. より江 は 雨蛙 を どこ か 水 の ある ところ へ 放して やろう と おもい ました 。 より こう||あまがえる||||すい|||||はなして|||| ||frog|||||||||release|||| The river wanted to release the frog somewhere with water. そっと 両手 で 挟 さ んで 、 往来 の 窪み へ 置いて やり ました が 、 蛙 は 疲れて いる の か 、 道ばた に 呆 ん やり つくばった まま で い ます ので 、 より江 は ひしゃく に 水 を 汲 んで ぱさり と 、 蛙 の 背中 に 水 を かけて やり ました 。 |りょうて||はさ|||おうらい||くぼみ||おいて||||かえる||つかれて||||みちばた||ぼけ|||つく ばった||||||より こう||||すい||きゅう||ぱさ り||かえる||せなか||すい|||| |||to hold|||coming and going||depression||||||||||||roadside|to|stayed|||||||||||ladle||||to scoop||to||||back|||||| I gently put it between my hands and put it in the depression of the traffic, but I was tired of the frog, or I was still tired of walking on the roadside. Ritto, watering the back of the frog. 蛙 は びっくり して 、 長く 脚 を 伸ばして 二三 度 飛び はねて ゆき ました が 、 より江 が まばたき して いる 間 に 、 どこ か へ 隠れて しまった の か 煙 の ように 藪 垣 の 方 へ 消えて 行って しまい ました 。 かえる||||ながく|あし||のばして|ふみ|たび|とび|||||より こう|||||あいだ|||||かくれて||||けむり|||やぶ|かき||かた||きえて|おこなって|| |||||||||||||||||眨眼間||||||||||||||||||||||| ||||long|legs||stretched|||jump|is jumping||||||blinks|||time|||||to hide||||smoke|||bush|hedge||||disappeared||| The frog was surprised, stretched out his legs long and jumped a few times, but while the river was blinking, did he hide somewhere, like smoke? I disappeared and gone. 乗合 自動車 が 地 響 を たてて 上がって 来 ました 。 じょう ごう|じどうしゃ||ち|ひび|||あがって|らい| shared|automobile||the ground|sound|||to go up|| A shared car is coming up in the ground. おじさん は 、 「 さ ァ て 、 山 へ 行く かな ……」   そう 云 って 立ちあがり ます と 、 より江 の お 母さん は 、 赤い 旗 を 持って 土間 へ 降りて ゆき ました 。 |||||やま||いく|||うん||たちあがり|||より こう|||かあさん||あかい|き||もって|どま||おりて|| |||||||||||||||依江|||||||||地面房间|||| ||||||||||say||stands up|||||||||flag|||||go down|| Uncle said, "Would you like to go to the mountain ...?" When he stood up, Emo's mother descended to the dirt with a red flag. より江 も ひしゃく を 持った まま お 母さん の 後 へ ついて 、 表 の 陽向 へ 出て 行き ました 。 より こう||||もった|||かあさん||あと|||ひょう||ようこう||でて|いき| ||勺子||||||||||||陽光下|||| |||||||||behind|||front|of|sunny|||| After that, Ms. E followed her mother with her ladle and went out in the direction of the table.