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江戸小話, 毛生え薬

毛 生え 薬

毛 生え 薬

髪 の 毛 が かなり 薄く なって きた 、 まき 売り がい ました 。 今日 も まき を かついで 一 日 中 売り 歩き ました が 、 十八 文 (→ 六百 円 ほど ) に しか なり ませ ん でした 。 「 まあ いい 。 これ で 毛 生え 薬 でも 買おう 」 まき 売り が 薬屋 の 前 まで 来る と 、 店 の 看板 に 、 《 毛 生え 薬 一 包 二十 文 》 と 、 書いて あり ます 。 「 うむ 、 二 文 たり ぬ が 、 何とか なる だろう 」 まき 売り は そう 言って 、 店 に 入り ました 。 「 こちら に 、 毛 生え 薬 が ある そうだ が 」 「 へえ 、 天下一 の 毛 生え 薬 で ございます 。 さあ 、 お 試し を 」 まき 売り は 、 番頭 ( ばんとう ) が 差し出す 薬 を 指先 に ちょっと ぬって びっくり です 。 なんと 指先 に 、 もう 黒々 と した 毛 が 生えて いる で は あり ませ ん か 。 それ も 丈夫な 毛 で 、 力一杯 引っ張って も びくとも し ませ ん 。 番頭 が それ を 見て 、 「 はい 、 その 毛 を 切り そろえ ます と 、 りっぱな 筆 に なり ます 」 と 、 言い ました 。 とにかく 効果 てきめんな ので 、 まき 売り は 有り金 の 十八 文 を 台 の 上 に 置いて 店 を 出 ました 。 「 もし 、 もし 。 お 客 さま 。 二 文 たり ませ ぬ が 」 番頭 が 、 あわてて 追いかけて き ます 。 「 そう か 。 まあ 二 文 ぐらい 、 まけて おけ 」 「 いや 、 ま かり ませ ぬ 」 番頭 が 薬 を ひったくろう と する ので 、 まき 売り は 怒って 、 「 えい 、 こんな もの ! 」 と 、 薬 の 包 ( つつみ ) を 地面 に 叩きつけ ました 。 「 あっ 、 なんて こと を 」 「 うる せ え 、 この やろう ! 」 二 人 は つかみ 合い の けんか に なり ました が 、 番頭 の 方 が 力 が 強くて 、 まき 売り は 突き飛ばさ れて 地面 に お 尻 を つき ました 。 その ひょうし に お 尻 の 下 に なった 薬 の 包 が 破れて 、 まき 売り の お 尻 に つき ました 。 「 けんか だ 、 けんか だ 。 けんか だ ぞ ー ! 」 さすが は 、 けん か 好きな 江戸っ子 です 。 あっという間 に 町 の 者 たち が 集まって きた ので 、 はずかしく なった 番頭 は 店 の 中 ヘ 戻って いき ました 。 「 気のどくに 、 大丈夫 かい ? 」 町 の 者 たち は 、 まき 売り を 助け おこして びっくり 。 「 ありゃ ! 」 なんと まき 売り の お 尻 から 、 馬 の しっぽ の 様 に 長くて ふさふさ した 毛 が 生えて いた のです 。

おしまい


毛 生え 薬 け|はえ|くすり hair restorer

毛 生え 薬 け|はえ|くすり

髪 の 毛 が かなり 薄く なって きた 、 まき 売り がい ました 。 かみ||け|||うすく||||うり|| 今日 も まき を かついで 一 日 中 売り 歩き ました が 、 十八 文 (→ 六百 円 ほど ) に しか なり ませ ん でした 。 きょう|||||ひと|ひ|なか|うり|あるき|||じゅうはち|ぶん|ろくひゃく|えん||||||| 「 まあ いい 。 これ で 毛 生え 薬 でも 買おう 」   まき 売り が 薬屋 の 前 まで 来る と 、 店 の 看板 に 、  《 毛 生え 薬   一 包 二十 文 》 と 、 書いて あり ます 。 ||け|はえ|くすり||かおう||うり||くすりや||ぜん||くる||てん||かんばん||け|はえ|くすり|ひと|つつ|にじゅう|ぶん||かいて|| 「 うむ 、 二 文 たり ぬ が 、 何とか なる だろう 」   まき 売り は そう 言って 、 店 に 入り ました 。 |ふた|ぶん||||なんとか||||うり|||いって|てん||はいり| 「 こちら に 、 毛 生え 薬 が ある そうだ が 」 「 へえ 、 天下一 の 毛 生え 薬 で ございます 。 ||け|はえ|くすり|||そう だ|||てんかいち||け|はえ|くすり|| さあ 、 お 試し を 」   まき 売り は 、 番頭 ( ばんとう ) が 差し出す 薬 を 指先 に ちょっと ぬって びっくり です 。 ||ためし|||うり||ばんとう|||さしだす|くすり||ゆびさき||||| なんと 指先 に 、 もう 黒々 と した 毛 が 生えて いる で は あり ませ ん か 。 |ゆびさき|||くろぐろ|||け||はえて||||||| それ も 丈夫な 毛 で 、 力一杯 引っ張って も びくとも し ませ ん 。 ||じょうぶな|け||ちからいっぱい|ひっぱって||||| 番頭 が それ を 見て 、 「 はい 、 その 毛 を 切り そろえ ます と 、 りっぱな 筆 に なり ます 」 と 、 言い ました 。 ばんとう||||みて|||け||きり|||||ふで|||||いい| とにかく 効果 てきめんな ので 、 まき 売り は 有り金 の 十八 文 を 台 の 上 に 置いて 店 を 出 ました 。 |こうか||||うり||ありがね||じゅうはち|ぶん||だい||うえ||おいて|てん||だ| 「 もし 、 もし 。 お 客 さま 。 |きゃく| 二 文 たり ませ ぬ が 」   番頭 が 、 あわてて 追いかけて き ます 。 ふた|ぶん|||||ばんとう|||おいかけて|| 「 そう か 。 まあ 二 文 ぐらい 、 まけて おけ 」 「 いや 、 ま かり ませ ぬ 」   番頭 が 薬 を ひったくろう と する ので 、 まき 売り は 怒って 、 「 えい 、 こんな もの ! |ふた|ぶん|||||||||ばんとう||くすり|||||||うり||いかって||| 」 と 、 薬 の 包 ( つつみ ) を 地面 に 叩きつけ ました 。 |くすり||つつ|||じめん||たたきつけ| 「 あっ 、 なんて こと を 」 「 うる せ え 、 この やろう ! 」   二 人 は つかみ 合い の けんか に なり ました が 、 番頭 の 方 が 力 が 強くて 、 まき 売り は 突き飛ばさ れて 地面 に お 尻 を つき ました 。 ふた|じん|||あい|||||||ばんとう||かた||ちから||つよくて||うり||つきとばさ||じめん|||しり||| その ひょうし に お 尻 の 下 に なった 薬 の 包 が 破れて 、 まき 売り の お 尻 に つき ました 。 ||||しり||した|||くすり||つつ||やぶれて||うり|||しり||| 「 けんか だ 、 けんか だ 。 けんか だ ぞ ー ! |||- 」   さすが は 、 けん か 好きな 江戸っ子 です 。 ||||すきな|えどっこ| あっという間 に 町 の 者 たち が 集まって きた ので 、 はずかしく なった 番頭 は 店 の 中 ヘ 戻って いき ました 。 あっというま||まち||もの|||あつまって|||||ばんとう||てん||なか||もどって|| 「 気のどくに 、 大丈夫 かい ? きのどくに|だいじょうぶ| 」   町 の 者 たち は 、 まき 売り を 助け おこして びっくり 。 まち||もの||||うり||たすけ|| 「 ありゃ ! 」   なんと まき 売り の お 尻 から 、 馬 の しっぽ の 様 に 長くて ふさふさ した 毛 が 生えて いた のです 。 ||うり|||しり||うま||||さま||ながくて|||け||はえて||の です

おしまい