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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第六章 それぞれの星 (3)

第 六 章 それぞれ の 星 (3)

そち は どう 思う か 」

「…… 若 さ に 似あわ ぬ 伯 の 見識 、 臣 は 感服 いたし ました 。 臣 と して も 、 国家 に 大 功 ある 三 長官 にたいし 、 寛大な ご 処置 を と 願う もの で ございます 」 「 両人 が そう 申す なら 、 余 と して も 彼ら に 苛酷な 処分 は くだす まい 。 だが 、 まる きり 罪 を 問わ ぬ と いう わけに も いく まい が ……」

「 されば 、 陛下 、 今後 一 年 、 彼ら の 俸給 を 返上 さ せ 、 それ を 戦没 将兵 の 遺族 救済 基金 に まわして は いかが か と 存じます 」 「 そんな ところ だ な 、 よかろう 、 国務 尚 書 に 委細 は まかす 。 話 は それ だけ か 」

「 さ ようで ございます 」

「 では 両人 と も さがれ 。 これ から 温室 で 薔薇 の 世話 を せ ねば なら ぬ で な 」

両者 は 退出 した 。

しかし 五 分 と たた ない うち 、 ひと り が ひそかに もどって きた 。 なかば 駆け足 であった ため 、 七五 歳 の リヒテンラーデ 侯 は 呼吸 を ととのえる 時間 を 必要 と した が 、 皇帝 の 薔薇 園 に 立った とき は 肉体 上 の 平静 さ を 回復 して いた 。

ゆたかな 色彩 と 芳香 を 乱舞 さ せる 薔薇 の 群 の なか に 、 枯木 の ように 皇帝 が たたずんで いる 。 老 貴族 は 歩みより 、 充分な 注意 を はらい つつ ひざまずいた 。

「 おそれ ながら 、 陛下 ……」

「 なに か 」

「 ご 不 興 を こうむる の を 覚悟 の うえ で 申しあげ ま する が ……」

「 ローエングラム 伯 の こと か ? 」 皇帝 の 声 に は するど さ も 激し さ も 熱 さ も なかった 。 風 に 飛ばさ れる 砂 の 音 を 想起 さ せる 、 生気 の ない 老人 めいた 声 。

「 余 が 、 アンネローゼ の 弟 に 地位 と 権力 を あたえ すぎる と いう のであろう 」

「 陛下 に は ご 承知 で いらっしゃい ました か 」

国務 尚 書 が 驚いた の は 、 皇帝 の 話し かた が 意外に 明晰だった から で も ある 。

「 おそれ を 知ら ぬ 者 ゆえ 、 重臣 と して 権力 を ふるう に とどまら ず 、 図 に のって 簒奪 を たくらむ かも しれ ぬ 、 と でも そち は 思う か 」

「 口 の 端に のぼせる の も は ばかり 多い こと ながら ……」

「 よい で は ない か 」

「 は !?」

「 人類 の 創成 と ともに ゴールデンバウム 王朝 が あった わけで は ない 。 不 死 の 人間 が おら ぬ と 同様 、 不滅の 国家 も ない 。 余 の 代 で 銀河 帝国 が 絶えて 悪い 道理 が なかろう 」

乾き きった 低い 笑い声 が 、 国務 尚 書 を 戦慄 さ せた 。 のぞきこんだ 虚無 の 淵 の 深 さ が 、 彼 の 魂 を 底 まで 冷たく した 。

「 どうせ 滅びる なら ……」

皇帝 の 声 が 彗星 の 不吉な 尾 の ように つづいて いた 。

「 せいぜい 華麗に 滅びる が よい のだ ……」

Ⅳ 不本意であり 、 不愉快で も あった が 、 三 長官 と して は ラインハルト に 借り を つくった こと を 認め ざる を え なかった 。 したがって 、 その 翌日 、 ラインハルト が パウル ・ フォン ・ オーベルシュタイン 大佐 の 免責 ―― イゼルローン 失 陥 にたいする ―― と 、 彼 の 元帥 府 へ の 転 属 と を 要請 した とき 、 拒絶 する わけに は いか なかった のである 。 みずから が 〝 皇帝 陛下 の ご 寛容 〟 の 恩恵 に 浴し ながら 、 他者 に きびしい 処置 を とる こと も でき ない し 、 しょせん は 一 大佐 の 進退 など それ ほど の 重要 事 と は 思え なかった 、 と いう こと も ある 。 ともあれ 、 オーベルシュタイン に とって は 満足 す べき 結果 だった 。

ラインハルト が 帝国 軍 三 長官 の 地位 に つく 機会 を みずから 捨てた 、 その 行動 に かんして は 、

「 意外に 無欲で は ない か 」

と いう 好意 的な 評価 と 、

「 なん の 、 かっこう を つけた だけ さ 」

と いう 否定 的な 観察 と が 、 相 半ば した 。

どちら の 声 に せよ 、 ラインハルト は 歯牙 に も かけ なかった 。 三 長官 の 地位 など 、 いつでも 手 に は いる 。 しばらく 、 老 将 ども に 貸して おいて やる だけ の こと だ 。 だいいち 、 そのような 地位 は 彼 に とって たんなる 通過 点 で しか ない 。

ラインハルト が 至 尊 の 地位 に 即 いた とき 、 三 長 官職 を 兼務 する であろう 立場 の 人物 は 、 いまひとつ すっきり と し ないで いた 。

「 どうした 、 キルヒアイス 、 なに か 言いたい こと が あり そうだ な 」 「 お わかり でしょう に 、 お 人 の 悪い 」

「 怒る な 。 オーベルシュタイン の 件 だろう 。 あの 男 が 門 閥 貴族 ども の 手先 で は ない か 、 と 、 一 時 は おれ も うたがった 。 しかし 、 貴族 ども の 手 に おえる ような 男 で は ない 。 頭 は 切れる だろう が 癖 が あり すぎる 」

「 ラインハルト さま の お手 に は おえる のです か 」

ラインハルト は かるく 首 を かしげた 。 そう する と 、 金髪 の 華麗な ひと 房 が いっぽう に 流れた 。

「 そうだ な …… おれ は あの 男 に 友情 や 忠誠 心 を 期待 して は いない 。 あの 男 は おれ を 利用 しよう と して いる だけ だ 。 自分 自身 の 目的 を はたす ため に な 」

長い しなやかな 指 が 伸びて 、 ルビー を 溶かした 液 で 染めた ような 友人 の 髪 を かるく ひっぱった 。 他人 の いない とき 、 ラインハルト は ときどき このような こと を する 。 幼い 少年 の ころ 、 たまに キルヒアイス と 仲違い する と ―― 長く そのような 状態 が つづいた こと は なかった が ――「 なんだ 、 血 みたいな 赤毛 」 と 悪 口 を 言い 、 仲直り する と 「 炎 が 燃えて る みたいで とても 綺麗だ 」 と 賞 賛 する など 、 ラインハルト は 勝手な もの だった 。

「…… だ から 、 おれ も 奴 の 頭脳 を 利用 する 。 奴 の 動機 など どう で も いい さ 。 奴 ひと り 御し え ないで 宇宙 の 覇権 を のぞむ なんて 不可能だ と 思わ ない か 」

政治 と は 過程 や 制度 で は なく 結果 だ 、 と ラインハルト は 思う 。

ルドルフ 大帝 を 許し がたく 思う の は 、 銀河 連邦 を のっとった から で は なく 、 皇帝 など に なった から で も ない 。 せっかく 獲得 した 強大な 権力 を 、 自己 神聖 化 と いう もっとも 愚 劣 な 行為 に 使用 した から である 。 それ が 英雄 ぶった 亡者 ルドルフ の 正体 だ 。 その 強大な 権力 を 正当に 使用 すれば 、 文明 の 進歩 と 建設 に どれほど 有益だった か しれ ない 。 人類 は 政治 思想 の 相違 から くる 抗争 に エネルギー を 浪費 する こと も なく 、 全 銀河 系 に 足跡 を しるして いた であろう に 。 現在 は 帝国 と 叛乱 勢力 と を 合して も 、 この 巨大な 恒星 世界 の 五 分 の 一 を 支配 して いる に すぎ ない のだ 。

かくも 人類 の 歴史 の 前進 を 阻害 した 責任 は 、 あげて ルドルフ の 偏 執 に ある 。 なに が 生ける 神 か 。 厄病 神 も いい ところ だ 。

旧 体制 を 破壊 し 新 秩序 を うちたてる に は 強大な 権力 と 武力 が 必要だ 。 だが 自分 は ルドルフ の 轍 は 踏ま ない 。 皇帝 に は なろう 。 しかし 帝 位 を 自分 の 子孫 に 伝える ような こと は し ない 。

ルドルフ は 血統 を 、 遺伝子 を 盲 信 した 。 だが 遺伝 など 信用 できる もの で は ない 。 ラインハルト の 父親 は 天才 でも 偉人 で も なかった 。 自力 で 生活 する 能力 も 意思 も なく 、 美貌 の 娘 を 権力 者 に 売りつけて 、 安楽で 自 堕落 な 生活 に おぼれた ろくでなし だった 。 七 年 前 に 過度の 飲酒 と 漁 色 が 原因 で 急死 した とき 、 流す べき 涙 を ラインハルト は もちあわせて い なかった 。 最高 級 の 白磁 で 造 型 した ような 姉 の 頰 を 伝い 落ちる 透明な 流れ を 見て 、 胸 が いたみ は した が 、 それ は 姉 に むけた 感情 だった 。

信用 する に 値し ない 遺伝 の 例 証 と して 、 ゴールデンバウム の 帝 室 の 現状 を みる が よい 。 あの フリードリヒ 四 世 の 腐 蝕 した 体 内 に 、 偉大 かつ 巨大な ルドルフ の 血 が 一 ミリ リットル でも 流れて いる と 、 誰 が 想像 できる だろう 。 ゴールデンバウム 家 の 血 は すでに 濁り きって いる のだ 。

フリードリヒ 四 世 の 兄弟 姉妹 九 人 は ことごとく 死亡 して いる 。 フリードリヒ 四 世 自身 は 皇后 はじめ 六 人 の 女性 を 二八 回 に わたって 妊娠 さ せた が 、 六 回 は 流産 、 九 回 は 死産 、 とにかく も 誕生 した 一三 人 の うち 、 生後 一 年 まで に 四 人 が 、 成人 まで に 五 人 が 、 成人 後 に 二 人 が 死亡 した 。 現存 する の は 、 ブラウンシュヴァイク 公爵 夫人 アマーリエ と リッテンハイム 侯爵 夫人 クリスティーネ の 両 女 だけ である 。 ともに 強大な 門 閥 貴族 に 嫁いだ が 、 子供 と いえば 、 これ も ともに 一女 が ある だけ だ 。 この ほか 、 成人 後 に 死亡 した 皇太子 ルードヴィヒ に 遺児 が いる 。 これ が 現在 、 帝 室 ただ ひと り の 男児 エルウィン ・ ヨーゼフ だ が 、 五 歳 に なった ばかりで 、 いまだ 皇太 孫 と して たて られて も いない 。 宮廷 の 頽廃 を 一身 に 集めた ような 皇帝 フリードリヒ 四 世 は 、 ラインハルト に とって にがい 憎悪 と 軽蔑 の 対象 で しか なかった が 、 たった 二 点 、 容認 できる こと が あった 。

ひと つ は 、 過去 の 難産 で 幾 人 も の 寵妃 を 死な せた 皇帝 が 、 アンネローゼ を 失う こと を おそれ 、 彼女 を 妊 ら せ なかった こと である 。 さらに は アンネローゼ に 子供 が 誕生 した とき 、 帝 位 継承 権 を めぐる 争 乱 が 生じる こと を 憂慮 した 貴族 たち の 圧力 も あった 。 ラインハルト に して みれば 、 あの 皇帝 の 子 を 姉 が 産む など 、 想像 する さえ おぞましい のだった 。

そして 、 いまひとつ は 、 帝 位 継承 権 の 有 資格 者 が 極端に すくない こと だった 。 皇帝 の 孫 三 人 だけ な のである 。 それ さえ 排除 すれば よい のだ 。 あるいは 二 人 の 孫娘 の うち どちら か と 結婚 する 策 も ある 。 ―― どうせ 形式 だけ だ が 。

いずれ に せよ 、 オーベルシュタイン は 役 に たつ 。 あの 男 なら 暗い 情熱 と 執拗な 意志 を もって 帝 室 や 貴族 にたいする 権謀 を めぐらせ 、 必要 と あれば 幼児 や 女性 を 殺害 する こと も 辞さ ない だろう 。 それ を 無意識 の うち に 察した から こそ 、 キルヒアイス は 彼 を 嫌う のだろう が 、 しかし 彼 は ラインハルト に とって 必要な のだ 。

オーベルシュタイン の ような 男 を 必要 と する 自分 を 、 姉 アンネローゼ や キルヒアイス は 快く 思う だろう か …… しかし 、 これ は やら なくて は なら ない こと な のだ 。

Ⅴ フェザーン 自治 領主 ルビンスキー は 、 官邸 で 、 経済 戦略 に かんする 補佐 官 の 説明 を うけて いた 。 「 ユニバース ・ ファイナンス 社 、 これ は 自由 惑星 同盟 に おける わ が 自治 領 政府 の ダミー です が 、 バラトプール 星 系 第 七 ・ 第 八 両 惑星 の 固体 天然ガス 採掘 権 を 獲得 し ました 。 可 採 埋蔵 量 は 合計 四八〇〇万 立方キロメートル に 達し 、 二 年 後 に は 採算 ベース に のる 予定 です 」

ルビンスキー が うなずく の を 見 ながら 、 補佐 官 は 報告 を つづけた 。

「 それ に 同盟 でも 最大 級 の 恒星 間 輸送 企業 サンタクルス ・ ライン 社 に かんして は 、 株式 取得 率 四一・九 パーセント に 達し ました 。 名義 が 二〇 以上 に 分割 されて おります ので 気づかれて いません が 、 筆頭 株主 である 国営 投資 会社 を すでに うわまわって います 」 「 けっこうだ 。 しかし 過半数 に 達する まで は 気 を ゆるめる な 」

「 もちろん です 。 いっぽう 、 帝国 の ほう です が 、 第 七 辺境 星 域 の 農業 開発 計画 に 資本 参加 が 決定 し ました 。 アイゼンヘルツ 第 二 惑星 の 水 二〇 京 トン を 八 つ の 乾燥 惑星 に はこんで 五〇億 人 ぶん の 食糧 を 増産 しよう と いう 、 例の 計画 です 」

「 資本 参加 の 比率 は ? 」 「 わが 政府 の ダミー 三 社 で 合計 して 八四 パーセント です 。 事実 上 の 独占 です 。 つぎに インゴルシュタット の 金属 ラジウム 工場 に ついて です が ……」

報告 を 聞き 終えた ルビンスキー は 、 いったん 補佐 官 を さがら せ 、 荒涼 の 美 を しめす 壁 外 の 風景 を ながめ やった 。

現在 の ところ 、 事態 の 進展 は 順調 そのもの だ 。

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第 六 章 それぞれ の 星 (3) だい|むっ|しょう|||ほし

そち は どう 思う か 」 |||おもう|

「…… 若 さ に 似あわ ぬ 伯 の 見識 、 臣 は 感服 いたし ました 。 わか|||にあわ||はく||けんしき|しん||かんぷく|| 臣 と して も 、 国家 に 大 功 ある 三 長官 にたいし 、 寛大な ご 処置 を と 願う もの で ございます 」 しん||||こっか||だい|いさお||みっ|ちょうかん||かんだいな||しょち|||ねがう||| 「 両人 が そう 申す なら 、 余 と して も 彼ら に 苛酷な 処分 は くだす まい 。 りょうにん|||もうす||よ||||かれら||かこくな|しょぶん||| だが 、 まる きり 罪 を 問わ ぬ と いう わけに も いく まい が ……」 |||ざい||とわ||||||||

「 されば 、 陛下 、 今後 一 年 、 彼ら の 俸給 を 返上 さ せ 、 それ を 戦没 将兵 の 遺族 救済 基金 に まわして は いかが か と 存じます 」 |へいか|こんご|ひと|とし|かれら||ほうきゅう||へんじょう|||||せんぼつ|しょうへい||いぞく|きゅうさい|ききん|||||||ぞんじます 「 そんな ところ だ な 、 よかろう 、 国務 尚 書 に 委細 は まかす 。 |||||こくむ|しよう|しょ||いさい|| 話 は それ だけ か 」 はなし||||

「 さ ようで ございます 」

「 では 両人 と も さがれ 。 |りょうにん||| これ から 温室 で 薔薇 の 世話 を せ ねば なら ぬ で な 」 ||おんしつ||ばら||せわ|||||||

両者 は 退出 した 。 りょうしゃ||たいしゅつ|

しかし 五 分 と たた ない うち 、 ひと り が ひそかに もどって きた 。 |いつ|ぶん|||||||||| なかば 駆け足 であった ため 、 七五 歳 の リヒテンラーデ 侯 は 呼吸 を ととのえる 時間 を 必要 と した が 、 皇帝 の 薔薇 園 に 立った とき は 肉体 上 の 平静 さ を 回復 して いた 。 |かけあし|||しちご|さい|||こう||こきゅう|||じかん||ひつよう||||こうてい||ばら|えん||たった|||にくたい|うえ||へいせい|||かいふく||

ゆたかな 色彩 と 芳香 を 乱舞 さ せる 薔薇 の 群 の なか に 、 枯木 の ように 皇帝 が たたずんで いる 。 |しきさい||ほうこう||らんぶ|||ばら||ぐん||||かれき||よう に|こうてい||| 老 貴族 は 歩みより 、 充分な 注意 を はらい つつ ひざまずいた 。 ろう|きぞく||あゆみより|じゅうぶんな|ちゅうい||||

「 おそれ ながら 、 陛下 ……」 ||へいか

「 なに か 」

「 ご 不 興 を こうむる の を 覚悟 の うえ で 申しあげ ま する が ……」 |ふ|きょう|||||かくご||||もうしあげ|||

「 ローエングラム 伯 の こと か ? |はく||| 」 皇帝 の 声 に は するど さ も 激し さ も 熱 さ も なかった 。 こうてい||こえ||||||はげし|||ねつ||| 風 に 飛ばさ れる 砂 の 音 を 想起 さ せる 、 生気 の ない 老人 めいた 声 。 かぜ||とばさ||すな||おと||そうき|||せいき|||ろうじん||こえ

「 余 が 、 アンネローゼ の 弟 に 地位 と 権力 を あたえ すぎる と いう のであろう 」 よ||||おとうと||ちい||けんりょく||||||

「 陛下 に は ご 承知 で いらっしゃい ました か 」 へいか||||しょうち||||

国務 尚 書 が 驚いた の は 、 皇帝 の 話し かた が 意外に 明晰だった から で も ある 。 こくむ|しよう|しょ||おどろいた|||こうてい||はなし|||いがいに|めいせきだった||||

「 おそれ を 知ら ぬ 者 ゆえ 、 重臣 と して 権力 を ふるう に とどまら ず 、 図 に のって 簒奪 を たくらむ かも しれ ぬ 、 と でも そち は 思う か 」 ||しら||もの||じゅうしん|||けんりょく||||||ず|||さんだつ||||||||||おもう|

「 口 の 端に のぼせる の も は ばかり 多い こと ながら ……」 くち||はしたに||||||おおい||

「 よい で は ない か 」

「 は !?」

「 人類 の 創成 と ともに ゴールデンバウム 王朝 が あった わけで は ない 。 じんるい||そうせい||||おうちょう||||| 不 死 の 人間 が おら ぬ と 同様 、 不滅の 国家 も ない 。 ふ|し||にんげん|||||どうよう|ふめつの|こっか|| 余 の 代 で 銀河 帝国 が 絶えて 悪い 道理 が なかろう 」 よ||だい||ぎんが|ていこく||たえて|わるい|どうり||

乾き きった 低い 笑い声 が 、 国務 尚 書 を 戦慄 さ せた 。 かわき||ひくい|わらいごえ||こくむ|しよう|しょ||せんりつ|| のぞきこんだ 虚無 の 淵 の 深 さ が 、 彼 の 魂 を 底 まで 冷たく した 。 |きょむ||ふち||ふか|||かれ||たましい||そこ||つめたく|

「 どうせ 滅びる なら ……」 |ほろびる|

皇帝 の 声 が 彗星 の 不吉な 尾 の ように つづいて いた 。 こうてい||こえ||すいせい||ふきつな|お||よう に||

「 せいぜい 華麗に 滅びる が よい のだ ……」 |かれいに|ほろびる|||

Ⅳ 不本意であり 、 不愉快で も あった が 、 三 長官 と して は ラインハルト に 借り を つくった こと を 認め ざる を え なかった 。 ふほんいであり|ふゆかいで||||みっ|ちょうかん||||||かり|||||みとめ|||| したがって 、 その 翌日 、 ラインハルト が パウル ・ フォン ・ オーベルシュタイン 大佐 の 免責 ―― イゼルローン 失 陥 にたいする ―― と 、 彼 の 元帥 府 へ の 転 属 と を 要請 した とき 、 拒絶 する わけに は いか なかった のである 。 ||よくじつ||||||たいさ||めんせき||うしな|おちい|||かれ||げんすい|ふ|||てん|ぞく|||ようせい|||きょぜつ|||||| みずから が 〝 皇帝 陛下 の ご 寛容 〟 の 恩恵 に 浴し ながら 、 他者 に きびしい 処置 を とる こと も でき ない し 、 しょせん は 一 大佐 の 進退 など それ ほど の 重要 事 と は 思え なかった 、 と いう こと も ある 。 ||こうてい|へいか|||かんよう||おんけい||よくし||たしゃ|||しょち||||||||||ひと|たいさ||しんたい|||||じゅうよう|こと|||おもえ|||||| ともあれ 、 オーベルシュタイン に とって は 満足 す べき 結果 だった 。 |||||まんぞく|||けっか|

ラインハルト が 帝国 軍 三 長官 の 地位 に つく 機会 を みずから 捨てた 、 その 行動 に かんして は 、 ||ていこく|ぐん|みっ|ちょうかん||ちい|||きかい|||すてた||こうどう|||

「 意外に 無欲で は ない か 」 いがいに|むよくで|||

と いう 好意 的な 評価 と 、 ||こうい|てきな|ひょうか|

「 なん の 、 かっこう を つけた だけ さ 」

と いう 否定 的な 観察 と が 、 相 半ば した 。 ||ひてい|てきな|かんさつ|||そう|なかば|

どちら の 声 に せよ 、 ラインハルト は 歯牙 に も かけ なかった 。 ||こえ|||||しが|||| 三 長官 の 地位 など 、 いつでも 手 に は いる 。 みっ|ちょうかん||ちい|||て||| しばらく 、 老 将 ども に 貸して おいて やる だけ の こと だ 。 |ろう|すすむ|||かして|||||| だいいち 、 そのような 地位 は 彼 に とって たんなる 通過 点 で しか ない 。 ||ちい||かれ||||つうか|てん|||

ラインハルト が 至 尊 の 地位 に 即 いた とき 、 三 長 官職 を 兼務 する であろう 立場 の 人物 は 、 いまひとつ すっきり と し ないで いた 。 ||いたる|とうと||ちい||そく|||みっ|ちょう|かんしょく||けんむ|||たちば||じんぶつ|||||||

「 どうした 、 キルヒアイス 、 なに か 言いたい こと が あり そうだ な 」 ||||いいたい||||そう だ| 「 お わかり でしょう に 、 お 人 の 悪い 」 |||||じん||わるい

「 怒る な 。 いかる| オーベルシュタイン の 件 だろう 。 ||けん| あの 男 が 門 閥 貴族 ども の 手先 で は ない か 、 と 、 一 時 は おれ も うたがった 。 |おとこ||もん|ばつ|きぞく|||てさき||||||ひと|じ|||| しかし 、 貴族 ども の 手 に おえる ような 男 で は ない 。 |きぞく|||て||||おとこ||| 頭 は 切れる だろう が 癖 が あり すぎる 」 あたま||きれる|||くせ|||

「 ラインハルト さま の お手 に は おえる のです か 」 |||おて||||の です|

ラインハルト は かるく 首 を かしげた 。 |||くび|| そう する と 、 金髪 の 華麗な ひと 房 が いっぽう に 流れた 。 |||きんぱつ||かれいな||ふさ||||ながれた

「 そうだ な …… おれ は あの 男 に 友情 や 忠誠 心 を 期待 して は いない 。 そう だ|||||おとこ||ゆうじょう||ちゅうせい|こころ||きたい||| あの 男 は おれ を 利用 しよう と して いる だけ だ 。 |おとこ||||りよう|||||| 自分 自身 の 目的 を はたす ため に な 」 じぶん|じしん||もくてき|||||

長い しなやかな 指 が 伸びて 、 ルビー を 溶かした 液 で 染めた ような 友人 の 髪 を かるく ひっぱった 。 ながい||ゆび||のびて|るびー||とかした|えき||そめた||ゆうじん||かみ||| 他人 の いない とき 、 ラインハルト は ときどき このような こと を する 。 たにん|||||||||| 幼い 少年 の ころ 、 たまに キルヒアイス と 仲違い する と ―― 長く そのような 状態 が つづいた こと は なかった が ――「 なんだ 、 血 みたいな 赤毛 」 と 悪 口 を 言い 、 仲直り する と 「 炎 が 燃えて る みたいで とても 綺麗だ 」 と 賞 賛 する など 、 ラインハルト は 勝手な もの だった 。 おさない|しょうねん||||||なかたがい|||ながく||じょうたい||||||||ち||あかげ||あく|くち||いい|なかなおり|||えん||もえて||||きれいだ||しょう|さん|||||かってな||

「…… だ から 、 おれ も 奴 の 頭脳 を 利用 する 。 ||||やつ||ずのう||りよう| 奴 の 動機 など どう で も いい さ 。 やつ||どうき|||||| 奴 ひと り 御し え ないで 宇宙 の 覇権 を のぞむ なんて 不可能だ と 思わ ない か 」 やつ|||ぎょし|||うちゅう||はけん||||ふかのうだ||おもわ||

政治 と は 過程 や 制度 で は なく 結果 だ 、 と ラインハルト は 思う 。 せいじ|||かてい||せいど||||けっか|||||おもう

ルドルフ 大帝 を 許し がたく 思う の は 、 銀河 連邦 を のっとった から で は なく 、 皇帝 など に なった から で も ない 。 |たいてい||ゆるし||おもう|||ぎんが|れんぽう|||||||こうてい||||||| せっかく 獲得 した 強大な 権力 を 、 自己 神聖 化 と いう もっとも 愚 劣 な 行為 に 使用 した から である 。 |かくとく||きょうだいな|けんりょく||じこ|しんせい|か||||ぐ|おと||こうい||しよう||| それ が 英雄 ぶった 亡者 ルドルフ の 正体 だ 。 ||えいゆう||もうじゃ|||しょうたい| その 強大な 権力 を 正当に 使用 すれば 、 文明 の 進歩 と 建設 に どれほど 有益だった か しれ ない 。 |きょうだいな|けんりょく||せいとうに|しよう||ぶんめい||しんぽ||けんせつ|||ゆうえきだった||| 人類 は 政治 思想 の 相違 から くる 抗争 に エネルギー を 浪費 する こと も なく 、 全 銀河 系 に 足跡 を しるして いた であろう に 。 じんるい||せいじ|しそう||そうい|||こうそう||えねるぎー||ろうひ|||||ぜん|ぎんが|けい||あしあと||||| 現在 は 帝国 と 叛乱 勢力 と を 合して も 、 この 巨大な 恒星 世界 の 五 分 の 一 を 支配 して いる に すぎ ない のだ 。 げんざい||ていこく||はんらん|せいりょく|||あわして|||きょだいな|こうせい|せかい||いつ|ぶん||ひと||しはい||||||

かくも 人類 の 歴史 の 前進 を 阻害 した 責任 は 、 あげて ルドルフ の 偏 執 に ある 。 |じんるい||れきし||ぜんしん||そがい||せきにん|||||へん|と|| なに が 生ける 神 か 。 ||いける|かみ| 厄病 神 も いい ところ だ 。 やくびょう|かみ||||

旧 体制 を 破壊 し 新 秩序 を うちたてる に は 強大な 権力 と 武力 が 必要だ 。 きゅう|たいせい||はかい||しん|ちつじょ|||||きょうだいな|けんりょく||ぶりょく||ひつようだ だが 自分 は ルドルフ の 轍 は 踏ま ない 。 |じぶん||||わだち||ふま| 皇帝 に は なろう 。 こうてい||| しかし 帝 位 を 自分 の 子孫 に 伝える ような こと は し ない 。 |みかど|くらい||じぶん||しそん||つたえる|||||

ルドルフ は 血統 を 、 遺伝子 を 盲 信 した 。 ||けっとう||いでんし||もう|しん| だが 遺伝 など 信用 できる もの で は ない 。 |いでん||しんよう||||| ラインハルト の 父親 は 天才 でも 偉人 で も なかった 。 ||ちちおや||てんさい||いじん||| 自力 で 生活 する 能力 も 意思 も なく 、 美貌 の 娘 を 権力 者 に 売りつけて 、 安楽で 自 堕落 な 生活 に おぼれた ろくでなし だった 。 じりき||せいかつ||のうりょく||いし|||びぼう||むすめ||けんりょく|もの||うりつけて|あんらくで|じ|だらく||せいかつ|||| 七 年 前 に 過度の 飲酒 と 漁 色 が 原因 で 急死 した とき 、 流す べき 涙 を ラインハルト は もちあわせて い なかった 。 なな|とし|ぜん||かどの|いんしゅ||りょう|いろ||げんいん||きゅうし|||ながす||なみだ|||||| 最高 級 の 白磁 で 造 型 した ような 姉 の 頰 を 伝い 落ちる 透明な 流れ を 見て 、 胸 が いたみ は した が 、 それ は 姉 に むけた 感情 だった 。 さいこう|きゅう||はくじ||つく|かた|||あね||||つたい|おちる|とうめいな|ながれ||みて|むね||||||||あね|||かんじょう|

信用 する に 値し ない 遺伝 の 例 証 と して 、 ゴールデンバウム の 帝 室 の 現状 を みる が よい 。 しんよう|||あたいし||いでん||れい|あかし|||||みかど|しつ||げんじょう|||| あの フリードリヒ 四 世 の 腐 蝕 した 体 内 に 、 偉大 かつ 巨大な ルドルフ の 血 が 一 ミリ リットル でも 流れて いる と 、 誰 が 想像 できる だろう 。 ||よっ|よ||くさ|むしば||からだ|うち||いだい||きょだいな|||ち||ひと|みり|||ながれて|||だれ||そうぞう|| ゴールデンバウム 家 の 血 は すでに 濁り きって いる のだ 。 |いえ||ち|||にごり|||

フリードリヒ 四 世 の 兄弟 姉妹 九 人 は ことごとく 死亡 して いる 。 |よっ|よ||きょうだい|しまい|ここの|じん|||しぼう|| フリードリヒ 四 世 自身 は 皇后 はじめ 六 人 の 女性 を 二八 回 に わたって 妊娠 さ せた が 、 六 回 は 流産 、 九 回 は 死産 、 とにかく も 誕生 した 一三 人 の うち 、 生後 一 年 まで に 四 人 が 、 成人 まで に 五 人 が 、 成人 後 に 二 人 が 死亡 した 。 |よっ|よ|じしん||こうごう||むっ|じん||じょせい||にはち|かい|||にんしん||||むっ|かい||りゅうざん|ここの|かい||しざん|||たんじょう||かずみ|じん|||せいご|ひと|とし|||よっ|じん||せいじん|||いつ|じん||せいじん|あと||ふた|じん||しぼう| 現存 する の は 、 ブラウンシュヴァイク 公爵 夫人 アマーリエ と リッテンハイム 侯爵 夫人 クリスティーネ の 両 女 だけ である 。 げんそん|||||こうしゃく|ふじん||||こうしゃく|ふじん|||りょう|おんな|| ともに 強大な 門 閥 貴族 に 嫁いだ が 、 子供 と いえば 、 これ も ともに 一女 が ある だけ だ 。 |きょうだいな|もん|ばつ|きぞく||とついだ||こども||||||いちじょ|||| この ほか 、 成人 後 に 死亡 した 皇太子 ルードヴィヒ に 遺児 が いる 。 ||せいじん|あと||しぼう||こうたいし|||いじ|| これ が 現在 、 帝 室 ただ ひと り の 男児 エルウィン ・ ヨーゼフ だ が 、 五 歳 に なった ばかりで 、 いまだ 皇太 孫 と して たて られて も いない 。 ||げんざい|みかど|しつ|||||だんじ|||||いつ|さい|||||こうた|まご|||||| 宮廷 の 頽廃 を 一身 に 集めた ような 皇帝 フリードリヒ 四 世 は 、 ラインハルト に とって にがい 憎悪 と 軽蔑 の 対象 で しか なかった が 、 たった 二 点 、 容認 できる こと が あった 。 きゅうてい||たいはい||いっしん||あつめた||こうてい||よっ|よ||||||ぞうお||けいべつ||たいしょう||||||ふた|てん|よう にん||||

ひと つ は 、 過去 の 難産 で 幾 人 も の 寵妃 を 死な せた 皇帝 が 、 アンネローゼ を 失う こと を おそれ 、 彼女 を 妊 ら せ なかった こと である 。 |||かこ||なんざん||いく|じん|||ちょうきさき||しな||こうてい||||うしなう||||かのじょ||はら||||| さらに は アンネローゼ に 子供 が 誕生 した とき 、 帝 位 継承 権 を めぐる 争 乱 が 生じる こと を 憂慮 した 貴族 たち の 圧力 も あった 。 ||||こども||たんじょう|||みかど|くらい|けいしょう|けん|||あらそ|らん||しょうじる|||ゆうりょ||きぞく|||あつりょく|| ラインハルト に して みれば 、 あの 皇帝 の 子 を 姉 が 産む など 、 想像 する さえ おぞましい のだった 。 |||||こうてい||こ||あね||うむ||そうぞう||||

そして 、 いまひとつ は 、 帝 位 継承 権 の 有 資格 者 が 極端に すくない こと だった 。 |||みかど|くらい|けいしょう|けん||ゆう|しかく|もの||きょくたんに||| 皇帝 の 孫 三 人 だけ な のである 。 こうてい||まご|みっ|じん||| それ さえ 排除 すれば よい のだ 。 ||はいじょ||| あるいは 二 人 の 孫娘 の うち どちら か と 結婚 する 策 も ある 。 |ふた|じん||まごむすめ||||||けっこん||さく|| ―― どうせ 形式 だけ だ が 。 |けいしき|||

いずれ に せよ 、 オーベルシュタイン は 役 に たつ 。 |||||やく|| あの 男 なら 暗い 情熱 と 執拗な 意志 を もって 帝 室 や 貴族 にたいする 権謀 を めぐらせ 、 必要 と あれば 幼児 や 女性 を 殺害 する こと も 辞さ ない だろう 。 |おとこ||くらい|じょうねつ||しつような|いし|||みかど|しつ||きぞく||けんぼう|||ひつよう|||ようじ||じょせい||さつがい||||じさ|| それ を 無意識 の うち に 察した から こそ 、 キルヒアイス は 彼 を 嫌う のだろう が 、 しかし 彼 は ラインハルト に とって 必要な のだ 。 ||むいしき||||さっした|||||かれ||きらう||||かれ|||||ひつような|

オーベルシュタイン の ような 男 を 必要 と する 自分 を 、 姉 アンネローゼ や キルヒアイス は 快く 思う だろう か …… しかし 、 これ は やら なくて は なら ない こと な のだ 。 |||おとこ||ひつよう|||じぶん||あね|||||こころよく|おもう|||||||||||||

Ⅴ フェザーン 自治 領主 ルビンスキー は 、 官邸 で 、 経済 戦略 に かんする 補佐 官 の 説明 を うけて いた 。 |じち|りょうしゅ|||かんてい||けいざい|せんりゃく|||ほさ|かん||せつめい||| 「 ユニバース ・ ファイナンス 社 、 これ は 自由 惑星 同盟 に おける わ が 自治 領 政府 の ダミー です が 、 バラトプール 星 系 第 七 ・ 第 八 両 惑星 の 固体 天然ガス 採掘 権 を 獲得 し ました 。 ||しゃ|||じゆう|わくせい|どうめい|||||じち|りょう|せいふ||だみー||||ほし|けい|だい|なな|だい|やっ|りょう|わくせい||こたい|てんねんがす|さいくつ|けん||かくとく|| 可 採 埋蔵 量 は 合計 四八〇〇万 立方キロメートル に 達し 、 二 年 後 に は 採算 ベース に のる 予定 です 」 か|と|まいぞう|りょう||ごうけい|しはち|よろず|りっぽうきろめーとる||たっし|ふた|とし|あと|||さいさん|べーす|||よてい|

ルビンスキー が うなずく の を 見 ながら 、 補佐 官 は 報告 を つづけた 。 |||||み||ほさ|かん||ほうこく||

「 それ に 同盟 でも 最大 級 の 恒星 間 輸送 企業 サンタクルス ・ ライン 社 に かんして は 、 株式 取得 率 四一・九 パーセント に 達し ました 。 ||どうめい||さいだい|きゅう||こうせい|あいだ|ゆそう|きぎょう||らいん|しゃ||||かぶしき|しゅとく|りつ|よいち|ここの|ぱーせんと||たっし| 名義 が 二〇 以上 に 分割 されて おります ので 気づかれて いません が 、 筆頭 株主 である 国営 投資 会社 を すでに うわまわって います 」 めいぎ||ふた|いじょう||ぶんかつ||||きづかれて|いま せ ん||ひっとう|かぶぬし||こくえい|とうし|かいしゃ|||| 「 けっこうだ 。 しかし 過半数 に 達する まで は 気 を ゆるめる な 」 |かはんすう||たっする|||き|||

「 もちろん です 。 いっぽう 、 帝国 の ほう です が 、 第 七 辺境 星 域 の 農業 開発 計画 に 資本 参加 が 決定 し ました 。 |ていこく|||||だい|なな|へんきょう|ほし|いき||のうぎょう|かいはつ|けいかく||しほん|さんか||けってい|| アイゼンヘルツ 第 二 惑星 の 水 二〇 京 トン を 八 つ の 乾燥 惑星 に はこんで 五〇億 人 ぶん の 食糧 を 増産 しよう と いう 、 例の 計画 です 」 |だい|ふた|わくせい||すい|ふた|けい|とん||やっ|||かんそう|わくせい|||いつ|おく|じん|||しょくりょう||ぞうさん||||れいの|けいかく|

「 資本 参加 の 比率 は ? しほん|さんか||ひりつ| 」 「 わが 政府 の ダミー 三 社 で 合計 して 八四 パーセント です 。 |せいふ||だみー|みっ|しゃ||ごうけい||はちし|ぱーせんと| 事実 上 の 独占 です 。 じじつ|うえ||どくせん| つぎに インゴルシュタット の 金属 ラジウム 工場 に ついて です が ……」 |||きんぞく|らじうむ|こうじょう||||

報告 を 聞き 終えた ルビンスキー は 、 いったん 補佐 官 を さがら せ 、 荒涼 の 美 を しめす 壁 外 の 風景 を ながめ やった 。 ほうこく||きき|おえた||||ほさ|かん||||こうりょう||び|||かべ|がい||ふうけい|||

現在 の ところ 、 事態 の 進展 は 順調 そのもの だ 。 げんざい|||じたい||しんてん||じゅんちょう|その もの|