三 姉妹 探偵 団 3 Chapter 06 みっ|しまい|たんてい|だん|chapter

６　 ある 居候 |いそうろう

「 夕 里子 、 遅い わ ね 」 ゆう|さとご|おそい||

と 、 綾子 が 言った 。 |あやこ||いった

「 いい じゃ ない の 。

放っとけば 」 ほっとけば

珠美 は さっさと 夕食 を 終えて 、「 ＴＶ 見よう っと 」 たまみ|||ゆうしょく||おえて|ｔｖ|みよう|

「 あんた 、 夕 里子 の こと 、 心配じゃ ない の ？ |ゆう|さとご|||しんぱいじゃ||

「 夕 里子 姉ちゃん は しっかり して る もん 。 ゆう|さとご|ねえちゃん|||||

大体 、 誰 と デート して る か 、 分 って ん の ？ だいたい|だれ||でーと||||ぶん||| 刑事 さん よ 。 けいじ|| これ 以上 安全な こと なんか ない じゃ ない の 」 |いじょう|あんぜんな|||||| It's not safe any more. "

「 それ ぐらい 分 って る わ よ 」 ||ぶん||||

と 、 綾子 は 憮然と して 、「 こう 見えて も 、 長女 な んです から ね 」 |あやこ||ぶぜんと|||みえて||ちょうじょ||||

「 先 に 生れた ぐらい で 威張 ん ないで よ 」 さき||うまれた|||いば|||

「 あんた は もう ……」

と 、 綾子 は ため息 を ついて 、「 少し 年上 の 人間 へ の 敬意 を 持ったら ？ |あやこ||ためいき|||すこし|としうえ||にんげん|||けいい||もったら

「 持って る よ 」 もって||

と 、 珠美 は 言い 返した 。 |たまみ||いい|かえした

「 でも 、 それ は 年下 の 人間 が 、 自主 的に 持つ もの で 、 年上 の 方 から 請求 して 来る もん じゃ ない と 思う けど 」 |||としした||にんげん||じしゅ|てきに|もつ|||としうえ||かた||せいきゅう||くる|||||おもう| "But, I think that it is not a person who is under the age of young people, who voluntarily owns it and that I will request from older people."

「 理屈 ばっかり 」 りくつ|

と 、 綾子 は 諦めた ように 首 を 振った 。 |あやこ||あきらめた||くび||ふった

「 ともかく ね 、 心配 は 心配 よ 。 ||しんぱい||しんぱい| いくら 相手 が 刑事 さん でも 」 |あいて||けいじ||

「 どうして ？

「 だって ── 刑事 さん だって 男 でしょ 。 |けいじ|||おとこ|

夕 里子 は 女 よ 」 ゆう|さとご||おんな|

珠美 は びっくり して 、 たまみ|||

「 じゃ 、 お 姉ちゃん 、 そんな こと 心配 して る わけ ？ ||ねえちゃん|||しんぱい|||

夕 里子 姉ちゃん と 国 友 さん が ホテル か 何 か で ──」 ゆう|さとご|ねえちゃん||くに|とも|||ほてる||なん||

珠美 は 、 そこ まで 言う と 、 ゲラゲラ 笑い 出した 。 たまみ||||いう|||わらい|だした

「 あんた は 子供 だ から そう やって 笑って る けど ね 。 ||こども|||||わらって|||

男 と 女 なんて 、 本当に ちょっと した 勢い で 、 そんな 風 に なっちゃ う の よ 」 おとこ||おんな||ほんとうに|||いきおい|||かぜ|||||

「 そう ね 。

── 綾子 姉ちゃん 、 前科 が ある もん ね 」 あやこ|ねえちゃん|ぜんか||||

珠美 に からかわ れて 、 綾子 は 、 たまみ||||あやこ|

「 何 よ ！ なん|

と 、 真 赤 に なって いる 。 |まこと|あか|||

いささか 大人げない 、 と いう 感じ である 。 |おとなげない|||かんじ|

「 夕 里子 姉ちゃん も 、 もう 高校 三 年生 な んだ から 、 いい じゃ ない の 恋人 と 少々 何 か あって も 」 ゆう|さとご|ねえちゃん|||こうこう|みっ|ねんせい||||||||こいびと||しょうしょう|なん||| "Because even Riko nyan is already a senior in high school, even if there is something a little with a lover who is not good"

「 そういう もの じゃ ない の よ 」 "It's not like that"

と 、 綾子 は おごそかに 、「 それ は お 嫁 に 行く まで 大切に ──」 |あやこ||||||よめ||いく||たいせつに

「 でも ねえ 、 国 友 さん 、 ちゃんと 避妊 して くれる か な 。 ||くに|とも|||ひにん||||

中絶 する と 、 体 に 悪い し 、 お 金 も かかる し ……」 ちゅうぜつ|||からだ||わるい|||きむ|||

綾子 は 、 諦めた ように 、 ため息 を ついた 。 あやこ||あきらめた||ためいき||

「── あら 電話 」 |でんわ

「 きっと 夕 里子 姉ちゃん だ 」 |ゆう|さとご|ねえちゃん|

と 、 珠美 が 立って 行く 。 |たまみ||たって|いく

「 ベッド の 中 から かも ね 」 べっど||なか|||

「 早く 帰る ように 言って 」 はやく|かえる||いって

綾子 は 、 のんびり と 夕 ご飯 を 食べ 始めた 。 あやこ||||ゆう|ごはん||たべ|はじめた

今 まで 、 夕 里子 が 帰って 来る か と 、 待って いた のである 。 いま||ゆう|さとご||かえって|くる|||まって||

「 はい 、 佐々 本 です 。 |ささ|ほん|

── あ 、 夕 里子 姉ちゃん ？ |ゆう|さとご|ねえちゃん どこ から かけて る の ？ 「 今 、 やっと 現場 の 処理 が 終った の よ 」 いま||げんば||しょり||しまった||

「 何だか サイレン の 音 が して る ね 。 なんだか|さいれん||おと||||

現場 って 何の 現場 ？ げんば||なんの|げんば 「 殺人 事件 」 さつじん|じけん

「 へえ 」

珠美 は 目 を パチクリ さ せた 。 たまみ||め||||

「 お 姉ちゃん も 好き ねえ 」 |ねえちゃん||すき|

「 誰 も 、 好きで 殺人 に 出くわして る わけじゃ ない わ よ 」 だれ||すきで|さつじん||でくわして|||||

と 、 夕 里子 が 、 いささか 不機嫌 そうに 言い 返した 。 |ゆう|さとご|||ふきげん|そう に|いい|かえした

「 もう 、 お腹 空いちゃ って ──」 |おなか|あいちゃ|

「 国 友 さん 、 一緒じゃ ない の ？ くに|とも||いっしょじゃ||

「 現場 に 居 合せた んだ もの 、 ご飯 食べる どころ じゃ ない の 。 げんば||い|あわせた|||ごはん|たべる||||

今 から 帰って 食べる わ 。 いま||かえって|たべる| お 姉さん に そう 言 っと いて 」 |ねえさん|||げん||

「 うん 、 分 った 。 |ぶん|

ついでに 犯人 も 捕まえて きたら ？ |はんにん||つかまえて| 「 そう 簡単じゃ ない わ 。 |かんたんじゃ||

あ 、 それ に ね 、 殺さ れた の 、 あんた の 数学 の 先生 よ 」 ||||ころさ|||||すうがく||せんせい|

「 数学 ？ すうがく

── 丸山 ？ まるやま 「 そう 。

ほら 、 例の 問題 の コピー の こと で ね 、 話 を 聞いて た の 」 |れいの|もんだい||こぴー|||||はなし||きいて||

「 へえ ！

「 ともかく 、 帰って ゆっくり 説明 する わ 。 |かえって||せつめい||

じゃあ ね 」

珠美 は 、 受話器 を おろす と 、 ちょっと 首 を かしげて 、 たまみ||じゅわき|||||くび||

「 明日 の 宿題 、 やって か なくて も 大丈夫 か なあ ……」 あした||しゅくだい|||||だいじょうぶ||

と 呟いた 。 |つぶやいた

居間 へ 行こう と して 、 珠美 は 、 足 を 止めた 。 いま||いこう|||たまみ||あし||とどめた

「 気のせい かな ……」 きのせい|

トントン 、 と ドア を 叩く ような 音 が 聞こえた のだ 。 とんとん||どあ||たたく||おと||きこえた|

でも ── 客 なら 、 チャイム を 鳴らす だろう し 。 |きゃく||ちゃいむ||ならす||

と 、 歩き かける と 、 今度 は もっと はっきり 、 トントン 。 |あるき|||こんど||||とんとん

「 誰 かな ……」 だれ|

珠美 は 、 玄関 に 出て 行く と 、 サンダル を つっかけ 、「 どなた です か ？ たまみ||げんかん||でて|いく||さんだる|||||

と 声 を かけた 。 |こえ||

歩き かけた らしい 足音 が 、 止った 。 あるき|||あしおと||とまった

珠美 は 、 覗き 穴 から 外 を 見た 。 たまみ||のぞき|あな||がい||みた

誰 だ か …… 男 だ 。 だれ|||おとこ|

いや 、 男の子 ……。 |おとこのこ

「 な あんだ 」

珠美 は ドア を 開けた 。 たまみ||どあ||あけた

「 あんた だった の 」

有田 勇一 は 、 ためらい がちに 、 歩いて 来る と 、 ありた|ゆういち||||あるいて|くる|

「 よう 」

と 言った 。 |いった

「 どうした の ？

「 うん ……。

どう って ── わけじゃ ない けど ──」

と 、 勇一 は 、 両手 を ポケット に 突っ込んだ まま 、 言葉 を 濁した 。 |ゆういち||りょうて||ぽけっと||つっこんだ||ことば||にごした

「 上る ？ のぼる

「 一 人 か ？ ひと|じん|

「 姉さん が いる 」 ねえさん||

「 そう か 」

勇一 は 、 肩 を すくめて 、「 じゃ 、 また 来 ら あ 」 ゆういち||かた|||||らい||

「 何 よ 。 なん|

大丈夫 よ 、 綾子 姉ちゃん は 、 そんな こと やかましく 言わ ない から 」 だいじょうぶ||あやこ|ねえちゃん|||||いわ||

「 でも 、 別に どう って 用 じゃ ねえ んだ 」 |べつに|||よう|||

と 、 勇一 は 言った 。 |ゆういち||いった

「 お腹 、 空いて んじゃ ない の ？ おなか|あいて|||

「 いや 、 ちっとも 」

と 言った とたん 、 勇一 の お腹 が 、 グーッ と 抗議 の 声 を 発した 。 |いった||ゆういち||おなか||||こうぎ||こえ||はっした

珠美 は 吹き出して しまった 。 たまみ||ふきだして|

「 無理 し ないで 。 むり||

入 ん なさい よ 」 はい|||

「 じゃあ ……」

勇一 は 、 きまり 悪 げ に 、 真 赤 に なって 、 それ でも 中 へ 入って 来た 。 ゆういち|||あく|||まこと|あか|||||なか||はいって|きた Yuichi got badly indeed, becoming true red, and even he came inside.

「 ちょっと ── 手 を 洗わ せて くれ 。 |て||あらわ|| 汚れて んだ 」 けがれて|

「 いい わ よ 。

そっち が 洗面 所 」 ||せんめん|しょ

珠美 が 台所 へ 行く と 、 綾子 が 顔 を 上げた 。 たまみ||だいどころ||いく||あやこ||かお||あげた

「 夕 里子 、 戻った の ？ ゆう|さとご|もどった|

「 う うん 。

お 客 」 |きゃく

「 お 客 様 ？ |きゃく|さま

── じゃ 、 居間 へ お 通し して ──」 |いま|||とおし|

「 ここ で いい の よ 」

「 こんな 所 に お 通し しちゃ 失礼 よ 」 |しょ|||とおし||しつれい|

「 便利だ から いい の 」 べんりだ|||

「 便利 って ？ べんり|

── そこ へ 、 勇一 が 顔 を 出した 。 ||ゆういち||かお||だした

「 かけて よ 。

今 、 ご飯 よそ って あげる 」 いま|ごはん|||

と 、 珠美 が 言った 。 |たまみ||いった

「 この 人 ね 、 有田 勇一 。 |じん||ありた|ゆういち これ が 上 の 方 の お 姉ちゃん 」 ||うえ||かた|||ねえちゃん

「 どうも ……」

勇一 が ボソッ と 呟く ように 言った 。 ゆういち||||つぶやく||いった

「 まあ 、 いらっしゃい 」

綾子 が 、 パッと 立ち上る と 、「 いつも 珠美 が お 世話 に なって ──」 あやこ||ぱっと|たちのぼる|||たまみ|||せわ||

と 始めた ので 、 勇一 も あわてて 立ち上り 、 |はじめた||ゆういち|||たちのぼり

「 と 、 とんでもない です 。

こっち こそ ──」

「 座 んな さい って 、 二 人 と も 」 ざ||||ふた|じん||

珠美 が 呆れ顔 で 、「 ただ の 友だち な んだ から 、 気取る こと ない わ よ 」 たまみ||あきれがお||||ともだち||||きどる||||

「 そう ？

綾子 は 、 それ でも 何となく 心残りな 様子 で 、 あやこ||||なんとなく|こころのこりな|ようす|

「 どうぞ ご ゆっくり 」

など と やって いる 。

しかし ── 勇一 が ご飯 を 食べ 始める と 、 いくら 綾子 でも 、 話し かける 気 に は なれ なく なった 。 |ゆういち||ごはん||たべ|はじめる|||あやこ||はなし||き|||||

ご飯 、 おかず ── どちら も 見る見る 内 に 、 消えて いた 。 ごはん||||みるみる|うち||きえて|

まるで 四 次元 の 世界 へ でも 吸い 込ま れた か の よう …… と いう の は 大げさだ が 、 実際 、 さしも の 珠美 が 啞然 と する ほど の スピード であった 。 |よっ|じげん||せかい|||すい|こま|||||||||おおげさだ||じっさい|||たまみ||啞ぜん|||||すぴーど|

「 よっぽど …… お腹 が 空いて た の ね 」 |おなか||あいて|||

と 、 綾子 が やっと 口 を 開いた とき に は 、 すでに 勇一 は 三 杯 目 であった 。 |あやこ|||くち||あいた|||||ゆういち||みっ|さかずき|め|

「── ああ 、 旨 かった ！ |むね|

と 、 空 の 茶碗 を 置いて 、 息 を つく 。 |から||ちゃわん||おいて|いき||

「 今 日一日 、 何も 食べて なかった んでしょ 」 いま|ひいちにち|なにも|たべて||

と 、 珠美 が 、 呆れ顔 で 言った 。 |たまみ||あきれがお||いった

「 そんな ん じゃ ねえ や 」

と 、 勇一 は 言い 返した 。 |ゆういち||いい|かえした

「 昨日 も だ 」 きのう||

「 よく 生きて た わ ね 、 全く ！ |いきて||||まったく

と 、 珠美 は 笑って しまった 。 |たまみ||わらって|

そして ── はて な 、 と 思った 。 ||||おもった

私 、 今日 は どうかして る ぞ 。 わたくし|きょう||||

いつも だったら 、 ろくに 知り も し ない こんな 奴 に 、 タダ で 飯 なんか 食わ して やったり し ない 。 |||しり|||||やつ||ただ||めし||くわ|||| If it is usual, I will not eat rice in free caddies for those who do not know very well.

たとえ 食べ させた と して も 、 ちゃんと 請求 書 を 渡して やる だろう 。 |たべ|さ せた|||||せいきゅう|しょ||わたして||

でも …… 何となく 、 そんな 気 に なら ない のだ 。 |なんとなく||き||||

ま 、 大体 、 見た って 、 一 文なし って こと は 分 る から 、 請求 する だけ 、 む だって もの だ が 、 |だいたい|みた||ひと|もんなし||||ぶん|||せいきゅう||||||| Well, in general, because you know that there is one sentence, you only seek a claim,

「 ああ くたびれた ……」

と 、 勇一 が 、 今度 は 眠く なった の か 、 大 欠 伸 を した 。 |ゆういち||こんど||ねむく||||だい|けつ|しん||

「 ちょっと ── 休ま せて もらって い い か な 」 |やすま||||||

「 いい わ よ 。

ソファ に 引っくり返って れ ば ？ ||ひっくりかえって|| 「 サンキュー 。 さんきゅー

そう すら あ 」

勇一 は 、 居間 の 方 へ 歩いて 行った 。 ゆういち||いま||かた||あるいて|おこなった

「── 珠美 」 たまみ

綾子 が 、 少し して 言った 。 あやこ||すこし||いった

「 変った 友だち が いる の ね 」 かわった|ともだち|||| "You have a strange friend"

「 え ？

── そう ね 。 ちょっと ユニークな 子 でしょ 」 |ゆにーくな|こ|

「 言葉づかい は 感心 し ない わ ね 。 ことばづかい||かんしん||||

まあ 、 人 は いい みたいだ けど 」 |じん||||

「 そう ？

「 ただ の 不良 って 感じ じゃ ない わ よ 。 ||ふりょう||かんじ||||

何だか 無理 して 『 不良 して る 』 みたい 」 なんだか|むり||ふりょう|||

綾子 は 、 およそ 世間知らずで 、 子供 みたいな もの な のだ が 、 その 無邪気な 直感 が 、 時として 、 人 を 見抜く 力 に も なる 。 あやこ|||せけんしらずで|こども|||||||むじゃきな|ちょっかん||ときとして|じん||みぬく|ちから|||

「 へえ 。

── 綾子 姉ちゃん 、 なかなか いい こと 言う じゃ ない ？ あやこ|ねえちゃん||||いう|| 「 姉 を からかっちゃ いけない わ 」 あね||||

と 、 綾子 は 言って から 、「 あら ！ |あやこ||いって||

「 どうした の ？

「 夕 里子 に と っと いた おかず 、 あの 子 、 全部 食べちゃ った わ 」 ゆう|さとご|||||||こ|ぜんぶ|たべちゃ||

と 、 綾子 は 言った ……。 |あやこ||いった

「── 何で すって ？ なんで|

夕 里子 は 、 自分 の 耳 を 疑った 。 ゆう|さとご||じぶん||みみ||うたがった

「 珠美 、 今 何て 言った の ？ たまみ|いま|なんて|いった| 玄関 を 上った ところ で 、 夕 里子 は ポカン と 突っ立って いた 。 げんかん||のぼった|||ゆう|さとご||||つったって|

「 だから ── これ 」

と 、 珠美 が 差し出して いる の は ……。 |たまみ||さしだして|||

「 珠美 ── あんた 、 それ が 何 か 分 って る の ？ たまみ||||なん||ぶん|||

「 千 円 札 よ 」 せん|えん|さつ|

「 そう よ 。

それ を 私 に くれる って いう の ？ ||わたくし||||| Do you mean to give it to me? 「 うん 」

夕 里子 は 、 急いで 、 珠美 の 額 に 手 を 当てて みて 、「 熱 は ない わ ね 」 ゆう|さとご||いそいで|たまみ||がく||て||あてて||ねつ||||

「 失礼 ねえ 」 しつれい|

「 だって ── あんた が 自分 の 小づかい から 千 円 出して よこす なんて ……」 |||じぶん||こづかい||せん|えん|だして||

「 だから 説明 した じゃ ない の 。 |せつめい||||

友だち が 全部 おかず を 食べちゃ った の よ 。 ともだち||ぜんぶ|||たべちゃ||| だから 、 夕 里子 姉ちゃん 、 これ で 外 へ 行って 何 か 食べて 来て って こと 」 |ゆう|さとご|ねえちゃん|||がい||おこなって|なん||たべて|きて||

「 そりゃ 、 理屈 は 分 る けど ──」 |りくつ||ぶん||

「 でも 、 おつり が あったら 、 返して よ 」 ||||かえして|

この 辺 は 珠美 らしい ところ だ 。 |ほとり||たまみ|||

「 いい わ よ 、 そんな こと 」

と 、 夕 里子 は 手 を 振って 、「 私 、 もう クタクタ な の 。 |ゆう|さとご||て||ふって|わたくし||||

外 へ 食べ に 出る 元気な いわ 。 がい||たべ||でる|げんきな| 目玉焼き と か 何 か で 食べる から いい わ よ 」 めだまやき|||なん|||たべる||||

台所 へ 入って 行く と 、 綾子 が 洗い もの を して いる 。 だいどころ||はいって|いく||あやこ||あらい||||

「 お 帰り 」 |かえり

と 、 綾子 は 、 手 を 拭いて 、「 国 友 さん 、 ちゃんと して くれた ？ |あやこ||て||ふいて|くに|とも|||| , Ayako wiped his hand and said, "Did you do it properly?

「── 何 を ？ なん|

珠美 が 吹き出した 。 たまみ||ふきだした

「 綾子 姉ちゃん ね 、 夕 里子 姉ちゃん が 国 友 さん と ホテル に 行って た と 思い 込んで んだ よ 」 あやこ|ねえちゃん||ゆう|さとご|ねえちゃん||くに|とも|||ほてる||おこなって|||おもい|こんで||

「 馬鹿 言わ ないで よ ！ ばか|いわ||

と 、 夕 里子 は 真 赤 に なった 。 |ゆう|さとご||まこと|あか||

「 こっち は 殺人 事件 を 目撃 して 、 大騒ぎ だった 、 って いう のに 」 ||さつじん|じけん||もくげき||おおさわぎ||||

「 殺人 ？ さつじん

「 そう 。

── 卵 を 出して 、 と 。 たまご||だして| フライパン に 油 を ひいて ……」 ふらいぱん||あぶら||

夕 里子 が さっさと 勝手に 目玉焼き を 作って 、 ご飯 を 食べ 始める と 、 綾子 、 珠美 は 椅子 に かけて 、 しばらく 黙って 夕 里子 を 眺めて いた 。 ゆう|さとご|||かってに|めだまやき||つくって|ごはん||たべ|はじめる||あやこ|たまみ||いす||||だまって|ゆう|さとご||ながめて|

「── 何 よ 、 人 の こと ジロジロ 見て 」 なん||じん|||じろじろ|みて

と 、 夕 里子 は 口 を モグモグ やり ながら 言った 。 |ゆう|さとご||くち||もぐもぐ|||いった

「 食べ にくい じゃ ない の 」 たべ||||

「 ねえ 、 夕 里子 。 |ゆう|さとご

── お 願い だ から 、 また 、 危 い こと に 首 を 突っ込ま ないで ね 」 |ねがい||||き||||くび||つっこま||

「 仕方ない でしょ 。 しかたない|

事件 の 方 が 、 勝手に やって 来た んだ から 」 じけん||かた||かってに||きた||

「 それ に したって さ ……。

パパ が い ない と 、 決 って こう だ もの ねえ 」 ぱぱ|||||けっ|||||

と 、 綾子 は ため息 を ついた 。 |あやこ||ためいき||

「 殺人 事件 なんか に 巻き 込ま れる より は 、 まだ 国 友 さん と ホテル へ 行って くれた 方 が いい わ 」 さつじん|じけん|||まき|こま|||||くに|とも|||ほてる||おこなって||かた|||

「 綾子 姉ちゃん 、 大胆な こと 言う じゃ ん 」 あやこ|ねえちゃん|だいたんな||いう||

と 、 珠美 は ニヤニヤ して いる 。 |たまみ||||

「 ま 、 出産 の 方 が お 葬式 より は 安く 上る けど ね 」 |しゅっさん||かた|||そうしき|||やすく|のぼる|| "Well, the baby gets cheaper than the funeral though,"

「 二 人 で 勝手に やって なさい 。 ふた|じん||かってに||

── 国 友 さん は 、 事件 で 、 女の子 どころ じゃ ない の よ 」 くに|とも|||じけん||おんなのこ|||||

「 夕 里子 姉ちゃん 、 目撃 した って 言った ね 、 さっき 」 ゆう|さとご|ねえちゃん|もくげき|||いった||

「 そう よ 」

「 じゃ 、 丸山 先生 が 殺さ れた の を 見た わけ ？ |まるやま|せんせい||ころさ||||みた|

「 まあ ね 」

── 食べ ながら 、 夕 里子 が いきさつ を 説明 して やる と （ ただし 、 あの 杉 下 ルミ の 出て 来た くだり は 省いて いた ）、 珠美 は 肯 いて 、 たべ||ゆう|さとご||||せつめい||||||すぎ|した|るみ||でて|きた|||はぶいて||たまみ||こう|

「 フーン 。

じゃ 、 犯人 を 見た んだ 」 |はんにん||みた|

「 そう 。

── 印象 的だった わ 。 いんしょう|てきだった| 血 の ついた ナイフ を 手 に 、 呆然と 突っ立って る の 」 ち|||ないふ||て||ぼうぜんと|つったって||

「 じゃ 、 すぐ 捕まる ね 」 ||つかまる|

「 でしょう ね 。

国 友 さん 、 もう 手配 して る はず よ 」 くに|とも|||てはい||||

「 男の子 なんて ……。 おとこのこ|

どうして 丸山 先生 を 殺したり した の か なあ 」 |まるやま|せんせい||ころしたり||||

「 知ら ない わ 。 しら||

この 前 の 事件 と 関係 ある んじゃ ない ？ |ぜん||じけん||かんけい||| 「 この前 って ？ この まえ|

「 有田 信子 が 殺さ れた 事件 よ 」 ありた|のぶこ||ころさ||じけん|

珠美 が 、 ちょっと 不安 げ な 顔 に なった 。 たまみ|||ふあん|||かお||

「 どうして ── そう 思う の ？ ||おもう|

「 だって 、 丸山 先生 を 刺した の 、 有田 信子 の 息子 な んだ もの 」 |まるやま|せんせい||さした||ありた|のぶこ||むすこ|||

これ を 聞いて 、 珠美 も さすが に 愕然と した 。 ||きいて|たまみ||||がくぜんと|

「 でも ── お 姉ちゃん 、 知ら ない でしょ 、 その 子 の 顔 なんか 」 ||ねえちゃん|しら||||こ||かお|

「 国 友 さん が そう らしい って 言った の 。 くに|とも||||||いった|

で 、 大倉 さん って いう 、 その 子 の 入って る 施設 の 所長 さん に 会って ね 、 写真 を 見せて もらった の よ 」 |おおくら|||||こ||はいって||しせつ||しょちょう|||あって||しゃしん||みせて|||

「 その 子 の 写真 ？ |こ||しゃしん

「 間違い なく 、 有田 勇一 だった わ 。 まちがい||ありた|ゆういち||

しかも 、 姿 を くらまして る 、 って いう し ね 」 |すがた|||||||

「 でも ── 他人 の 空似 って こと も ある んじゃ ない ？ |たにん||そらに||||||

「 私 、 そんなに 目 は 悪く ない もん 」 わたくし||め||わるく||

夕 里子 は 空 に した 茶碗 を 流し へ 運んで 、 洗い 始めた 。 ゆう|さとご||から|||ちゃわん||ながし||はこんで|あらい|はじめた

「── 夕 里子 」 ゆう|さとご

と 、 綾子 が 振り向いた 。 |あやこ||ふりむいた

「 その 子 、 何て 名前 ？ |こ|なんて|なまえ 「 犯人 ？ はんにん

有田 勇一 。 ありた|ゆういち どうして ？

「 どこ か で 聞いた 名 だ と 思って ……。 |||きいた|な|||おもって

ねえ 、 珠美 ── あら ？ |たまみ| 珠美 は 、 居間 へ 入って 行った 。 たまみ||いま||はいって|おこなった

ソファ に 、 勇一 が 引っくり返って 寝て いる 。 ||ゆういち||ひっくりかえって|ねて|

よほど 疲れて いる のだろう 。 |つかれて||

グオーッ 、 と いう 、 派手な 寝息 を たてて 、 少々 の こと で は 目 を 覚まし そうに ない 。 |||はでな|ねいき|||しょうしょう|||||め||さまし|そう に|

珠美 は 、 初めて 、 勇一 の 着て いた ジャンパー に 、 血 らしい もの が こびりついて いる のに 気 が 付いた 。 たまみ||はじめて|ゆういち||きて||じゃんぱー||ち|||||||き||ついた

「 ちょっと 。

── 起き なさい よ 。 おき|| ── ねえ 、 ちょっと ！ 珠美 は 、 力一杯 、 勇一 を 揺さぶった 。 たまみ||ちからいっぱい|ゆういち||ゆさぶった

「 ウーン 」 うーん

と 、 勇一 は 唸った が 、 また そのまま グーッ と 寝 込んで しまう 。 |ゆういち||うなった||||||ね|こんで|

「 参った なあ ……。 まいった|

ほら 起きて ！ |おきて 捕まっちゃ う よ ！ つかまっちゃ|| もう 一 度 、 起こそう と やって みる が 、 とても だめだ 。 |ひと|たび|おこそう||||||

「── 珠美 、 誰 、 それ ？ たまみ|だれ|

夕 里子 が 入って 来た 。 ゆう|さとご||はいって|きた

そして 、 眠って いる 勇一 を 見る と 、 目 を 丸く した 。 |ねむって||ゆういち||みる||め||まるく|

「 この 子 ……。 |こ

この 子 だ わ ！ |こ|| 丸山 を 殺した の は 、 この 子 よ ！ まるやま||ころした||||こ| 「 ねえ 、 お 姉ちゃん ──」 ||ねえちゃん

「 どうして 、 この 子 が ここ で 寝て る の ？ ||こ||||ねて||

「 何 か あった の ？ なん|||

と 、 綾子 が 顔 を 出す 。 |あやこ||かお||だす

「 あら 、 珠美 の 友だち 、 いい 気持 で 寝ちゃ って る わ ね 」 |たまみ||ともだち||きもち||ねちゃ||||

「 珠美 の 友だち ？ たまみ||ともだち

夕 里子 は 仰天 した 。 ゆう|さとご||ぎょうてん|

「 珠美 ！ たまみ どういう こと ？ 「 うん ……。

まあ 、 ちょっと した 知り合い な の 」 |||しりあい||

そう と でも 言う しか ない 。 |||いう||

「 だけど 、 夕 里子 姉ちゃん 、 この 子 、 人 を 殺したり し ない わ よ 」 |ゆう|さとご|ねえちゃん||こ|じん||ころしたり||||

「 だって 、 私 、 見た んだ もの 」 |わたくし|みた||

「 見 間違い って こと だって ある でしょ ？ み|まちがい|||||

「 それ は 、 警察 で 調べて くれる わ 。 ||けいさつ||しらべて||

── 国 友 さん へ 電話 しよう 」 くに|とも|||でんわ|

と 、 夕 里子 が 電話 の 方 へ 行き かけた とき だった 。 |ゆう|さとご||でんわ||かた||いき|||

信じ られ ない ような こと が 起きた 。 しんじ||||||おきた

珠美 が ダッ と 駆け 出す と 、 電話 の 前 に 立ちはだかった のである 。 たまみ||||かけ|だす||でんわ||ぜん||たちはだかった|

「 だめ ！

「 珠美 ── どうした の よ ？ たまみ|||

「 その 子 を 見なさ いよ ！ |こ||みなさ|

そんなに 疲れて ── そんなに 気持 良 さ そうに 眠って る じゃ ない の 。 |つかれて||きもち|よ||そう に|ねむって|||| 夕 里子 姉ちゃん 、 警官 を 呼んで 、 その 子 を 叩き起こそう って いう の ？ ゆう|さとご|ねえちゃん|けいかん||よんで||こ||たたきおこそう||| 珠美 の 剣幕 に 、 夕 里子 は 呆 気 に 取ら れて いた 。 たまみ||けんまく||ゆう|さとご||ぼけ|き||とら||

「 だって 、 珠美 ──」 |たまみ

「 どうしても 警察 呼ぶ なら 、 その 子 が たっぷり 眠って から に して 」 |けいさつ|よぶ|||こ|||ねむって|||

「 あんた 、 変 よ 。 |へん|

どうした の ？

「 どうも し ない 。

ただ ── その 子 が 可哀そうな の よ 」 ||こ||かわいそうな||

「 殺人 犯 よ 」 さつじん|はん|

「 どうしても 、 今 、 一一〇 番 する んだったら 、 私 、 この 家 を 出て 行く ！ |いま|いちいち|ばん|||わたくし||いえ||でて|いく

もう お 姉ちゃん たち と は 関係 ない 人間 に なる んだ 」 ||ねえちゃん||||かんけい||にんげん|||

「 あんた ……」

夕 里子 は 、 やっと 、 信じ がたい 結論 に 達した 。 ゆう|さとご|||しんじ||けつろん||たっした

「 あんた ── この 子 が 好きな の ね 」 ||こ||すきな||

珠美 に も 、 それ は 思いがけない 言葉 だった 。 たまみ|||||おもいがけない|ことば|

「 そんな ん じゃ ない ！

可哀そうな だけ よ 」 かわいそうな||

と 言い 返す 。 |いい|かえす

「 驚いた ……」 おどろいた

夕 里子 は 首 を 振った 。 ゆう|さとご||くび||ふった

珠美 が 恋 を ！ たまみ||こい|

── そんな 話 を 聞けば 、 まず 大笑い した だろう 。 |はなし||きけば||おおわらい||

珠美 の 恋人 は 「 お 金 」 だけ だ 、 と ── そう 思って いた 。 たまみ||こいびと|||きむ|||||おもって|

いや 、 珠美 自身 も 、 そう 言って いた 。 |たまみ|じしん|||いって|

だけど 、 いつまでも 珠美 だって 、 子供 で は ない 。 ||たまみ||こども|||

夕 里子 だって 、 それ くらい は 分 って いる が 、 しかし 、 こう も 突然に その 現実 を つきつけ られる と は 、 思わ なかった のである 。 ゆう|さとご|||||ぶん|||||||とつぜんに||げんじつ||||||おもわ|| Even Yuriko seems to know that much, but I did not think that this suddenly could afford that reality.

珠美 が 恋 を した 。 たまみ||こい||

夕 里子 は 、 ふっと 、 自分 の 興奮 が たちまち 冷めて いく の を 感じた 。 ゆう|さとご|||じぶん||こうふん|||さめて||||かんじた Yuriko felt herself getting excited quickly and cold.

── 夕 里子 の 中 に ある 、「 母親 代り 」 の 部分 が 、 一種 の 感慨 を 抱いて いる の かも しれ なかった 。 ゆう|さとご||なか|||ははおや|かわり||ぶぶん||いっしゅ||かんがい||いだいて||||| ── The portion of "Mother 's substitution" in Yuriko Yuri might have a kind of emotion.

そう 。

それ は ごく 自然な こと で 、 そして 決して 悪い こと じゃ ない 。 |||しぜんな||||けっして|わるい|||

「── 分 った わ 」 ぶん||

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 起きる まで 待って ましょう 」 おきる||まって|

「 お 姉ちゃん ……」 |ねえちゃん

珠美 が 、 頰 を 染めた 。 たまみ||||そめた

「 ごめん 。 つい カッ と して 」

「 あんた も カッ と する こと 、 ある んだ って 分 って ホッと した わ よ 」 |||||||||ぶん||ほっと||| "You were relieved that you had something to do with you,"

と 、 夕 里子 は 微笑んだ 。 |ゆう|さとご||ほおえんだ

「── 夕 里子 」 ゆう|さとご

と 、 綾子 が 言った 。 |あやこ||いった

「 あんた 、 本当に この 子 が 人 を 殺す の を 見た の ？ |ほんとうに||こ||じん||ころす|||みた| 「 どうして よ ？

「 私 、 この 子 は 人 なんか 刺せ ない と 思う 」 わたくし||こ||じん||させ|||おもう

と 、 綾子 は 言った 。 |あやこ||いった

「 目 が 優しい わ 」 め||やさしい|

「 目 が 、 ね ……」 め||

夕 里子 は 、 ため息 を ついた 。 ゆう|さとご||ためいき||

全く 、 我が家 は 「 まとも 」 な 人間 が い ない んだ から ！ まったく|わがや||||にんげん|||||

「 私 、 ちゃんと 見た の よ 、 この 子 が 血 の ついた ナイフ を 持って ──」 わたくし||みた||||こ||ち|||ないふ||もって

と 言い かけ 、 夕 里子 は 言葉 を 切った 。 |いい||ゆう|さとご||ことば||きった

そう か 。

夕 里子 とて 、 勇一 が 丸山 を 刺す ところ を 見た わけで は ない 。 ゆう|さとご||ゆういち||まるやま||さす|||みた||| With Yuriko, I did not see Yuichi stabbing Maruyama.

「 確かに 、 刺す ところ は 見て ない わ 」 たしかに|さす|||みて||

「 ほら 、 そう でしょ ！

珠美 が 飛び上った 。 たまみ||とびあがった

「 それ じゃ 、 この 子 が 刺した か どう か 、 分 ら ない じゃ ない の 」 |||こ||さした||||ぶん|||||

「 理屈 じゃ ね 」 りくつ||

と 、 夕 里子 は 肩 を すくめた 。 |ゆう|さとご||かた||

「 でも 、 この 子 、 あわてて 逃げた わ 」 ||こ||にげた|

「 何 か わけ が ある の よ 。 なん||||||

── 母親 を 殺した 犯人 を 見付ける んだ って 言って た から 」 ははおや||ころした|はんにん||みつける|||いって||

「 あんた 、 どこ で そんな 話 、 聞いた の ？ ||||はなし|きいた|

珠美 が 、 勇一 と の 出会い と 、 そして 母親 の 葬儀 で 、 小 峰 と いう 老 紳士 が 現われた こと まで 話す と 、 夕 里子 は ますます びっくり した 。 たまみ||ゆういち|||であい|||ははおや||そうぎ||しょう|みね|||ろう|しんし||あらわれた|||はなす||ゆう|さとご||||

「 じゃ 、 勇一 は 、 その お 金持 の 孫 、 か 。 |ゆういち||||かねもち||まご|

── ドラマチック ね ──」 どらまちっく|

「 で 、 どう する の ？

と 、 綾子 が 言った とき 、 電話 が 鳴り 出して 、 三 人 と も ギョッ と した 。 |あやこ||いった||でんわ||なり|だして|みっ|じん|||||

「── はい 、 佐々 本 です 」 |ささ|ほん|

珠美 が 出て 、「── あ 、 国 友 さん 。 たまみ||でて||くに|とも|

── お 姉ちゃん …… いる よ 。 |ねえちゃん|| ── 待って ね 」 まって|

珠美 が 受話器 を 夕 里子 に 渡す 。 たまみ||じゅわき||ゆう|さとご||わたす

夕 里子 は 、 少し 間 を 置いて から 、 受話器 を 取った 。 ゆう|さとご||すこし|あいだ||おいて||じゅわき||とった

「── もしもし 」

「 や あ 、 悪かった ね 。 ||わるかった|

送って 行け なくて 」 おくって|いけ| I can not send it. "

「 いい の 。

そっち は どう ？ 「 やっと 一 段落 した 。 |ひと|だんらく|

今 、 手配 を 終った ところ だ よ 」 いま|てはい||しまった||| I just finished arranging it now. "

「 有田 勇一 の ？ ありた|ゆういち|

「 もちろん さ 」

「 それ で ── 見付かり そう ？ ||みつかり|

「 どうか な 。

やって みる しか ない よ 。 非常 線 に 、 まだ 引っかかって い ない 」 ひじょう|せん|||ひっかかって||

夕 里子 は 、 ちょっと 、 振り向いて 、 ソファ で 、 相 変ら ず ぐっすり 眠って いる 有田 勇一 を 見た 。 ゆう|さとご|||ふりむいて|||そう|かわら|||ねむって||ありた|ゆういち||みた

「 大倉 さん って いう 人 、 何 か 言って た ？ おおくら||||じん|なん||いって|

と 、 夕 里子 は 訊 いた 。 |ゆう|さとご||じん|

「 うん 。

── あの 子 が 人 を 殺す と は 思え ない と 言って た よ 」 |こ||じん||ころす|||おもえ|||いって||

「 そう 」

「 しかし 、 目撃 者 が いる んだ から ね 。 |もくげき|もの|||||

── まあ 丸山 が 母親 を 殺した と 思った のだ と したら 、 分 ら ないで も ない 」 |まるやま||ははおや||ころした||おもった||||ぶん||||

「 丸山 が やった の かしら ？ まるやま||||

「 動機 が ある かな ？ どうき|||

── 捜査 は これ から だ よ 」 そうさ|||||

「 そう ね ……」

「 ともかく 、 今夜 は 、 悪かった ね 」 |こんや||わるかった|

「 いい の よ 。

── あの ルミ って 子 は ？ |るみ||こ| 「 さすが に ここ まで は ついて 来 ない よ 」 ||||||らい||

と 、 国 友 は 笑った 。 |くに|とも||わらった

「 もてて 困る わ ね 」 |こまる||

「 冷やかす な よ 」 ひやかす||

「 じゃ 、 何 か 分 ったら 教えて 」 |なん||ぶん||おしえて

「 うん 。

── 明日 から は また フル 回転 だ よ 」 あした||||ふる|かいてん||

「 気 を 付けて ね 」 き||つけて|

── 夕 里子 は 、 お やすみ なさい 、 と 言って 、 電話 を 切った 。 ゆう|さとご||||||いって|でんわ||きった

「── 言わ なかった ね 」 いわ||

と 、 珠美 が 息 を ついて 、「 ありがとう 」 |たまみ||いき|||

「 あんた が 礼 を 言う こと ない わ 」 ||れい||いう|||

夕 里子 は 肩 を すくめた 。 ゆう|さとご||かた||

「 明日 、 その 子 から ゆっくり 話 を 聞き ま しょ 。 あした||こ|||はなし||きき|| もし 、 本当に やった の なら ──」 |ほんとうに|||

「 自首 さ せる わ よ 」 じしゅ||||

珠美 は そう 言って 、「── ああ 、 安心 したら こっち も 眠く なっちゃ った 。 たまみ|||いって||あんしん||||ねむく||

お 風呂 に 入って 寝 よう っと 」 |ふろ||はいって|ね||

さっさと 行って しまう 。 |おこなって|

夕 里子 は 、 綾子 と 顔 を 見合せた 。 ゆう|さとご||あやこ||かお||みあわせた

「 珠美 ったら ……」 たまみ|

夕 里子 は 苦笑い し ながら 、「 やっぱり 姉妹 ね 。 ゆう|さとご||にがわらい||||しまい|

お 姉ちゃん と も 似た とこ ある わ 」 |ねえちゃん|||にた|||

と 言った 。 |いった

「 どういう 意味 ？ |いみ

綾子 に は 、 一向に 分 って いない 様子 だった ……。 あやこ|||いっこうに|ぶん|||ようす|