坊っちゃん / 夏目漱石 / 第2章
ぼっちゃん|なつめ そうせき|だい|しょう
Botchan / Soseki Natsume / Kapitel 2
Botchan / Soseki Natsume / Κεφάλαιο 2
Botchan / Soseki Natsume / Chapter 2
Botchan / Soseki Natsume / Capítulo 2
Botchan / Soseki Natsume / Chapitre 2
Botchan / Soseki Natsume / Capitolo 2
보짱 / 나츠메 소세키 / 제2장
Botchan / Soseki Natsume / Hoofdstuk 2
Botchan / Soseki Natsume / Capítulo 2
Ботчан / Сосэки Нацумэ / Глава 2
少爷 / 夏目漱石 / 第 2 章
少爺 / 夏目漱石 / 第 2 章
ぶう と 云って 汽船 が とまる と 、艀 が 岸 を 離 れて 、 漕 ぎ 寄せて 来た 。
ぶ う||うんって|きせん||||はしけ||きし||はな||こ||よせて|きた
boo|||steamship||stopped||boat||shore||departed from||row|rowing|rowed|
When the steamship came to a stop with a "whoo," a barge left the shore and rowed toward us.
혹려고 구름 (있어)라고 기선이 멈추는 경우 바지선이 해안을 분리 (는 마라)되고, 탱크 (이) 기술 보내왔다.
船頭 は 真っ裸 に 赤ふんどし を しめて いる 。
せんどう||まっはだか||あか ふんどし|||
boatman||completely naked||red loincloth||fastened|
The boatman was almost naked, wearing only a red loincloth.
野蛮 な 所 だ 。
やばん||しょ|
barbaric|||
What a barbaric place.
尤も この 熱さ では 着物 は きられまい 。
ゆう も||あつ さ||きもの||きら れ まい
justly||heat||kimono||able to wear
Although, in this heat, wearing clothes would probably be unbearable.
日 が 強い ので 水 が やに 光る 。
ひ||つよい||すい|||ひかる
||||||sticky|
The sun was so strong that the water shone like molten metal.
見詰めて 居ても 眼 が くらむ 。
みつめて|いて も|がん||
staring|even if|||dizzy
Staring at it would make your eyes go blind.
事務員 に 聞いて 見る と おれ は ここ へ 降りる のだ そう だ 。
じむ いん||きいて|みる||||||おりる|||
office worker|||||I||||get off|||
When I asked the clerk, it seemed I was supposed to disembark here.
見る 所 では 大森 位 な 漁村 だ 。
みる|しょ||おおもり|くらい||ぎょそん|
|||Oomori|approximately||fishing village|
|||大森|||漁村|
By the looks of it, it was about as big as Ōmori, a fishing village.
人 を 馬鹿 にして いらあ 、こんな 所 に 我慢 が 出来る もの か と 思った が 仕方 が ない 。
じん||ばか|に して|いら あ||しょ||がまん||できる||||おもった||しかた||
|||making|irritating||||||||||||way||
||||いらあ||||||||||||||
I felt like they were making fun of me, asking how I could bear to stay in such a place, but there was no other option.
威勢よく 一番 に 飛び込んだ 。
いせい よく|ひと ばん||とびこんだ
vigorously|||jumped
I jumped off energetically, leading the way.
続いて 五六人 は 乗ったろう 。
つづいて|ごろく り||のったろう
next|five or six people||probably got on
Five or six people followed me onto the barge.
外に 大きな 箱 を 四つ 許り 積み込んで 赤ふん は 岸 へ 漕ぎ戻して 来た 。
がい に|おおきな|はこ||よっつ|ゆる り|つみこんで|あか ふん||きし||こぎ もどして|きた
outside||||four|allowed|loaded|red poop||||rowed back|
In addition to that, about four large boxes were loaded, and the boatman in the red loincloth rowed us back to the shore.
陸へ 着いた 時 も 、 いの一番 に 飛び上がって 、 いきなり 、 磯 に 立って 居た 鼻たれ 小僧 を つらまえて 中学校 は どこ だ と 聞いた 。
りく へ|ついた|じ||いのいちばん||とびあがって||いそ||たって|いた|はな たれ|こぞう||つら ま えて|ちゅうがっこう|||||きいた
ashore|arrived|||very first||jumped up||rock|||was standing|snotty-nosed|young boy||grabbed||||||
When we reached land, I was the first to leap off, and I immediately asked a snotty-nosed kid standing on the beach where the middle school was.
小僧 は 茫やりして 、 知らん が の 、 と 云った 。
こぞう||ぼう やり して|しら ん||||うんった
young boy||absentmindedly|know||||
The kid looked confused and said he didn't know.
気の利かぬ 田舎 もの だ 。
き の きか ぬ|いなか||
unobservant|||
What an unhelpful bumpkin.
猫の額程な 町内 の 癖 に 、 中学校 の ありか も 知らぬ 奴 が ある もの か 。
ねこ の がく ほど な|ちょう ない||くせ||ちゅうがっこう||||しら ぬ|やつ||||
small|||||||whereabouts||unknown|||||
Can you believe that in a town this small, there's someone who doesn't even know where the middle school is?
所 へ 妙な 筒っぽう を 着た 男 が きて 、 こっち へ 来い と 云う から 、 ついて 行ったら 、 港屋 と 云う 宿屋 へ 連れて 来た 。
しょ||みょうな|つつっぽう||きた|おとこ|||||こい||うん う|||おこなったら|こう や||うん う|やどや||つれて|きた
|||cylindrical||wore||||||come here||||||inn|||inn||brought|
Just then, a man wearing an odd tubular outfit approached and told me to follow him, leading me to an inn called Minato-ya.
やな 女 が 声 を 揃えて 御上がりなさい と 云う ので 、 上がる のが いや に なった 。
や な|おんな||こえ||そろえて|ご あがり なさい||うん う||あがる|の が|||
unpleasant|||voice||together|please come up|||||becoming|||
Unpleasant women were calling in unison for me to come up, so I didn't feel like going in.
門口 へ 立った なり 中学校 を 教えろ と 云ったら 、 中学校 は これ から 汽車 で 二里 許り 行かなくっちゃいけない と 聞いて 、 猶 上がる のが いや に なった 。
かどぐち||たった||ちゅうがっこう||おしえろ||うん ったら|ちゅうがっこう||||きしゃ||ふた さと|ゆる り|いか なくっちゃ いけない||きいて|ゆう|あがる|の が|||
entrance|||as|||tell me|||||||||two miles||have to go|||still|||||
Standing at the entrance, I asked for directions to the middle school and was told I'd have to take a train for about two miles; this made me even less inclined to go in.
おれ は 、 筒っぽう を 着た 男 から 、 おれ の 革鞄 を 二つ 引きたくって 、 のそのそ あるき 出した 。
||つつっぽう||きた|おとこ||||かわ かばん||ふた つ|ひき たくって|||だした
|||||||I||leather bag|||trying to pull|hurriedly|walking|
I grabbed my two leather bags from the man in the tubular outfit and started walking away unhurriedly.
宿屋 の もの は 変な 顔 を して 居た 。
やどや||||へんな|かお|||いた
||||strange||||staying
The people at the inn had strange looks on their faces.
停車場 は すぐ 知れた 。
ていしゃば|||しれた
||soon|known
I quickly found the train station.
切符 も 訳 なく 買った 。
きっぷ||やく||かった
ticket||reason||
I bought a ticket without any trouble.
乗り込んで 見る と マッチ箱 の 様な 汽車 だ 。
のりこんで|みる||まっち はこ||さま な|きしゃ|
boarded|||matchbox||like||
When I boarded, I saw that the train was as small as a matchbox.
ごろごろ と 五分 許り 動いた と 思ったら 、 もう 降りなければならない 。
||ご ふん|ばかり|うごいた||おもったら||おり なければ なら ない
rumbling||five minutes||moved||||have to get off
Just when I thought it had only rumbled on for about five minutes, I already had to get off.
道理 で 切符 が 安い と 思った 。
どうり||きっぷ||やすい||おもった
reason||ticket||||
No wonder the ticket was cheap.
たった 三 銭 である 。
|みっ|せん|
|three|cent|
It was only three sen (old currency).
それから 車 を 傭って 、 中学校 へ 来たら 、 もう 放課後 で 誰 も 居ない 。
それ から|くるま||ようって|ちゅうがっこう||きたら||ほうかご||だれ||い ない
|||rented|||if came||after school||||there
After that, I hired a rickshaw, and when I arrived at the middle school, it was already after school hours and nobody was around.
宿直 は 一寸 用達 に 出た と 小使 が 教えた 。
しゅくちょく||ひと すん|よう たち||でた||こづかい||おしえた
night duty||a little|errand||||hall porter||informed
The caretaker had stepped out on some errand, a janitor informed me.
随分 気楽 な 宿直 が いる もの だ 。
ずいぶん|きらく||しゅくちょく||||
|carefree||night duty||||
What a laid-back caretaker!
校長 でも 尋ねよう か と 思った、草臥れた から 、車 に 乗って 宿屋 へ 連れて 行け と 車夫 に 云い 付けた 。
こうちょう||たずねよう|||おもった|くさ がれた||くるま||のって|やどや||つれて|いけ||くるま おっと||うん い|つけた
||to ask||||tired||||||||take me||rickshaw puller|||
I considered asking for the principal, but since I was tired, I told the rickshaw puller to take me to an inn.
車夫 は 威勢 よく 山城屋 と云う うち へ 横付 に した 。
くるま おっと||いせい||やましろ や|と うん う|||よこ つき||
rickshaw puller||dignified manner|||called|house||to stop by||
The rickshaw puller spiritedly took me to a place called "Yamashiroya."
山城屋 とは 質屋 の 勘太郎 の 屋号 と 同じ だ から 一寸 面白く 思った 。
やましろ や|と は|しちや||かん たろう||やごう||おなじ|||ひと すん|おもしろく|おもった
||||||store name||||||a little interesting|
I found it amusing that "Yamashiroya" had the same name as that of Kanta, the pawnshop owner.
何だか 二 階 の 楷子 段 の 下 の 暗い 部屋 へ 案内 した 。
なんだか|ふた|かい||かいこ|だん||した||くらい|へや||あんない|
||floor||floor|step|||||||guidance|
For some reason, I was led to a dark room under the ladder that leads to the second floor.
熱くって 居られ やしない 。
あつくって|おら れ|
passionate|able to stay|unable
It was so hot that I couldn't bear it.
こんな 部屋 は いやだ と 云ったら 、 あいにく みんな 塞がって おり ます から と 云い ながら 、 革 鞄 を 抛り出した まま 出て 行った 。
|へや||||うん ったら|||ふさがって|||||うん い||かわ|かばん||なげう り だした||でて|おこなった
|||unpleasant|||unfortunately||blocked||||||||||thrown|as it is||
When I said I didn't like this kind of room, the person, while saying unfortunately all rooms were occupied, tossed out my leather bag and left as is.
仕方 が ない から 部屋 の 中 へ 這入って 汗 を かいて 我慢 して 居た 。
しかた||||へや||なか||は はいって|あせ|||がまん||いた
||||||||crawled|||sweating|||was
Having no choice, I entered the room, sweating and enduring it.
やがて 湯 に 入れ と 云う から 、 ざぶり と 飛び込んで 、 すぐ 上がった 。
|ゆ||いれ||うん う||ざ ぶり||とびこんで||あがった
eventually|||||||splash||dived||got out
Eventually, when told to take a bath, I jumped in and quickly got out.
帰りがけ に 覗いて 見る と 涼しそうな 部屋 が 沢山 空いている 。
かえりがけ||のぞいて|みる||すずし そうな|へや||たくさん|あいて いる
on the way back||peeked|||seeming cool||||empty
When I took a peek on my way back, I saw many rooms that seemed cool and vacant.
失敬な 奴 だ 。
しっけいな|やつ|
rude||
How rude of him.
嘘 を つきゃ あがった 。
うそ|||
told||lied|caught
These people lied to me and got an upper hand.
それから 下女 が 膳 を 持って 来た 。
それ から|げ じょ||ぜん||もって|きた
||(subject marker)|tray|||
After that, a maid brought in a meal.
部屋 は 熱つかった が 、 飯 は 下宿 の より も 大分 旨かった 。
へや||ねつ つかった||めし||げしゅく||||だいぶ|むね かった
||hot||rice|||||||delicious
The room was stuffy, but the food was much better than that of the boarding house.
給仕 を しながら 下女 が どちら から 御出 に なりました と 聞く から 、 東京 から 来た と 答えた 。
きゅうじ||し ながら|した おんな||||ご だ||||きく||とうきょう||きた||こたえた
waiter||while|||which||departure||||||||||
While serving, the maid asked where I was from, so I replied that I came from Tokyo.
すると 東京 は よい 所 で 御座いましょう と 云った から 当り前 だ と 答えて やった 。
|とうきょう|||しょ||ございましょう||うん った||あたりまえ|||こたえて|
|Tokyo|||||is||||natural||||
Then, because she said "Tokyo must be a good place," I naturally responded "Of course it is."
膳 を 下げた 下女 が 台所 へ 行った 時分 、 大きな 笑い声 が 聞えた 。
ぜん||さげた|した おんな||だいどころ||おこなった|じぶん|おおきな|わらいごえ||きこえた
tray||removed|||kitchen|||||loud laughter||heard
After the maid took away the dishes and went to the kitchen, I heard a loud laughter.
くだらない から 、 すぐ 寐た が 、 中々 寐られない 。
|||び た||なかなか|びられ ない
stupid|||fallen asleep||quite|unable to sleep
I felt it was silly, so I tried to sleep, but I couldn't fall asleep easily.
熱い 許り では ない 。
あつい|ゆる り||
not hot|only||
It wasn't just because it was hot.
騒々しい 。
そうぞうしい
noisy
It was noisy.
下宿 の 五倍 位 八釜しい 。
げしゅく||いつ ばい|くらい|やっかま しい
||five times||eight times
It was about five times noisier than the boarding house.
うとうと したら 清 の 夢 を 見た 。
||きよし||ゆめ||みた
dozing||||||
I dozed off and dreamt of Kiyo.
清 が 越後 の 笹飴 を 笹 ぐるみ 、 むしゃむしゃ 食って 居る 。
きよし||えちご||ささ あめ||ささ||むしゃ むしゃ|くって|いる
||||bamboo leaf-wrapped candy||bamboo grass|wrapped|munching||there
Kiyo was voraciously eating Echigo's bamboo-wrapped candy.
笹 は 毒 だ から 、 よしたら よかろう と 云う と 、 いえ この 笹 が 御薬 で 御座います と 云って 旨そう に 食って 居る 。
ささ||どく||||||うん う||||ささ||ご くすり||ございます||うんって|むね そう||くって|いる
||poison|||decided to|||||house||bamboo grass||medicine||is|||appealing|||
When I told her that bamboo was poisonous and she should stop, she replied that this bamboo was actually medicinal and continued to eat it with relish.
おれ が あきれ 返って 大きな 口 を 開いて ハハハハ と 笑ったら 眼 が 覚めた 。
|||かえって|おおきな|くち||あいて|||わらったら|がん||さめた
I||amazed|returned|||||hahaha||laughed|||opened
I was so shocked that I laughed out loud, and that woke me up.
下女 が 雨戸 を 明けて いる 。
した おんな||あまど||あけて|
||sliding storm door||opening|
The maid was opening the storm shutters.
相変らず 空 の 底 が 突き抜けた 様 な 天気 だ 。
あい かわら ず|から||そこ||つきぬけた|さま||てんき|
as usual|||bottom||piercing||||
The sky remained as clear as ever, as if its bottom had been pierced through.
道中 を したら 茶代 を やる もの だ と 聞いて 居た 。
どうちゅう|||ちゃ だい||||||きいて|いた
on the way|||tea money|||||||was
I had heard that one should tip during the journey.
茶代 を やら ない と 粗末 に 取り扱わ れる と 聞いて いた 。
ちゃ だい|||||そまつ||とりあつかわ|||きいて|
tea fee||to give|||rudely||handled||||
I had heard that if you don't give a tip, you'll be treated poorly.
こんな 、 狭くて 暗い 部屋 へ 押し込める のも 茶代 を やらない 所為 だろう 。
|せまくて|くらい|へや||おしこめる|の も|ちゃ だい||やら ない|せい|
|narrow||||to confine|also|||will not do|fault|
Perhaps being pushed into such a narrow and dark room is also because I didn’t tip.
見すぼらしい 服装 を して 、 ズック の 革鞄 と 毛繻子 の 蝙蝠傘 を 提げてる から だろう 。
み すぼ らしい|ふくそう|||||かわ かばん||け しゅす||こうもり かさ||さげてる||
shabby|clothing||||possessive particle|||silk||bat umbrella||carrying||
Perhaps it's because I'm dressed shabbily, carrying a canvas leather bag and an old-fashioned woolen umbrella
田舎者 の 癖に 人 を 見括った な 。
いなか しゃ||くせ に|じん||み くくった|
country bumpkin||even|||looked down on|
Despite being from the countryside, he looked down on me.
一番 茶代 を やって 驚かしてやろう 。
ひと ばん|ちゃ だい|||おどろか して やろう
||||surprise
I'll give a large tip and surprise him.
おれ は これ でも 学資 の あまり を 三十 円 ほど 懐 に 入れて 東京 を 出て 来た のだ
||||がくし||||さんじゅう|えん||ふところ||いれて|とうきょう||でて|きた|
I||||||remainder|||||pocket|||||||explanatory tone
After all, I had around thirty yen left from my school fees when I left Tokyo.
汽車 の 汽船 の 切符代 と 雑費 を 差し引いて 、 まだ 十四円程 ある 。
きしゃ||きせん||きっぷ だい||ざっぴ||さしひいて||じゅうよん えん ほど|
||||ticket fare||incidental expenses||deduct||about fourteen yen|
After deducting train and steamship ticket costs and other expenses, I still have about fourteen yen.
みんな やったって 是からは 月給 を 貰うんだから 構わない 。
||ぜ から は|げっきゅう||もらう ん だから|かまわ ない
|even if|so|||will receive|care
Even if I spend it all, it doesn’t matter since I'll be getting a monthly salary from now on.
田舎者 は しみったれ だから 五円 も やれば 驚いて 眼を廻す に極って 居る 。
いなか もの||||いつ えん|||おどろいて|がん を まわす|に きょくって|いる
country bumpkin||unsophisticated||five yen|||surprised|roll his eyes|especially|
Country folks are stingy, so if I give even five yen, they would surely be shocked.
どうするか 見ろ と 澄して 顔 を 洗って 、 部屋 へ 帰って 待ってる と 、 夕べ の 下女 が 膳 を 持って 来た 。
どう する か|みろ||きよし して|かお||あらって|へや||かえって|まってる||ゆうべ||した おんな||ぜん||もって|きた
what to do|look here||clear|||||||waiting||last night||||tray|||
After washing my face with a look as if to say, "Watch what I’ll do," I returned to my room to wait, and the maid from last night came with a tray.
盆 を 持って 給仕 を しながら 、 やににやにや 笑っている 。
ぼん||もって|きゅうじ||し ながら|やに に やに や|わらって いる
tray|||serving||while|with a grin|smiling
While serving with a tray in hand, she was smiling with a smug look.
失敬 な 奴 だ 。
しっけい||やつ|
rude|||
She's so rude.
顔 の なか を 御祭り でも 通りゃしまいし 。
かお||||おまつり||とおりゃ しまい し
||inside||festival||passed
It's as if a festival is parading through her face.
是でも 此下女 の 面 より 余っ程 上等だ 。
ぜ でも|これした おんな||つら||よっほど|じょうとうだ
however|woman||||much more|better
Even then, I am much more refined than this maid.
飯 を 済ましてから にしよう と 思って 居たが 、 癪 に 障った から 、 途中で 五円札 を 一枚 出して 、 あとで 是を 帳場 へ 持って 行け と 云ったら 、 下女 は 変な 顔 を して 居た 。
めし||すまして から|に しよう||おもって|いた が|しゃく||さわった||とちゅう で|いつ えん さつ||ひと まい|だして|あと で|ぜ を|ちょうば||もって|いけ||うん ったら|した おんな||へんな|かお|||いた
||after eating|let's make|||was sitting|annoyance||annoyed||on the way|five yen bill||one||later|this|cash register||||||||||||
I had planned to settle after finishing my meal, but I was irritated, so I took out a five-yen bill during the meal and told her to bring it to the counter later. The maid looked at me with a strange expression.
夫から 飯 を 済まして すぐ 学校 へ 出懸けた 。
おっと から|めし||すまして||がっこう||で かけた
from husband|||finished|right away|||set out
After that, I finished my meal and immediately set out for school.
靴 は 磨いて なかった 。
くつ||みがいて|
||polished|
My shoes were not polished.
学校 は 昨日 車 で 乗りつけた から 、 大概 の 見当 は 分って 居る 。
がっこう||きのう|くるま||のりつけた||たいがい||けんとう||ぶん って|いる
|||||drove up||probably||||understood|
I knew roughly where the school was because I had arrived there by rickshaw yesterday.
四つ角 を 二三度 曲がったら すぐ 門 の 前 へ 出た 。
よつかど||にさん ど|まがったら||もん||ぜん||でた
intersection||two or three times|turned|right away|gate||||
After turning at a few crossroads, I soon arrived in front of the school gate.
門 から 玄関 迄 は 御影石 で 敷きつめてある 。
もん||げんかん|まで||みかげいし||しきつめて ある
||entrance|until||granite||paved with
From the gate to the entrance, the path is paved with Mikage stone.
きのう この 敷石 の 上 を 車 で がらがら と 通った 時 は 、 無暗 に 仰山 な 音 が する の で 少し 弱った 。
||しきいし||うえ||くるま||||かよった|じ||む くら||あお やま||おと|||||すこし|よわった
yesterday||paving stone||||||with a clatter||passed|||||a lot||||||||weakened
When I rode over this stone pavement yesterday, the noisy rumbling made me feel a bit uneasy.
途中 から 小倉 の 制服 を 着た 生徒 に 沢山 逢った が 、 みんな この 門 を 這入って 行く 。
とちゅう||おぐら||せいふく||きた|せいと||たくさん|あった||||もん||は はいって|いく
||Kokura||uniform|||||a lot|met|||||||
Along the way, I met many students dressed in Kokura uniforms, and they all entered through this gate.
中 に は おれ より 脊 が 高くって 強そう な の が 居る 。
なか|||||せ||たかくって|きょうそう||||いる
|||I||back||high and|looks strong||||
Among them, some appeared taller and stronger than me.
あんな 奴 を 教える のか と 思ったら 何だか 気味 が 悪く なった 。
|やつ||おしえる|の か||おもったら|なんだか|きみ||わるく|
such a||||quotation particle||||a little uneasy|||
The thought of teaching such students made me somewhat uneasy.
名刺 を 出したら 校長室 へ 通した 。
めいし||だしたら|こうちょう しつ||とおした
business card||submitted|principal's office||guided
I handed over my business card and was directed to the principal's office.
校長 は 今 に 職員 に 紹介してやる から 、 一々 其の 人 に この 辞令 を 見せるんだ と 言って 聞かした 。
こうちょう||いま||しょくいん||しょうかい して やる||いちいち|その|じん|||じれい||みせる ん だ||いって|きか した
||||staff||will introduce||one by one|that||||appointment letter||will show|||told
The principal was a man with a thin beard, dark complexion, and large eyes, resembling a raccoon dog (tanuki).
やに もったいぶって いた 。
also|acting coy|
He seemed rather pompous.
まあ 精出して 勉強してくれ と 云って 、 恭しく 大きな 印 の 捺った 、 辞令 を 渡した 。
|せい だして|べんきょう して くれ||うん って|うやうやしく|おおきな|いん||なつった|じれい||わたした
|with effort|study hard||saying|respectfully||seal||stamped|official notice||handed over
He politely handed me a formal appointment letter with a large stamp, saying, "Do your best in your studies."
この 辞令 は 東京 へ 帰る とき 丸めて 海 の 中 へ 抛り込んで 仕舞った 。
|じれい||とうきょう||かえる||まるめて|うみ||なか||なげう り こんで|しまった
|appointment letter||||||rolled up|||||threw in|put away
I later threw this appointment letter into the sea when I returned to Tokyo.
校長 は 今 に 職員 に 紹介してやる から 、 一々 其の 人 に この 辞令 を 見せるんだ と 言って 聞かした 。
こうちょう||いま||しょくいん||しょうかい して やる||ひと 々|その の|じん|||じれい||みせる ん だ||いって|きか した
|||||||||||||appointment letter|||||
The principal told me that he would introduce me to the staff soon and that I should show this letter to each person.
余計な 手数 だ 。
よけいな|て かず|
unnecessary|trouble|
It's an unnecessary procedure.
そんな 面倒な 事 を する より この 辞令 を 三日間 職員室 へ 張り付ける 方 が ましだ 。
|めんどうな|こと|||||じれい||みっかかん|しょくいん しつ||はりつける|かた||
|||||||appointment letter||three days|staff room||post up|||better
Rather than going through that trouble, it'd be better to just pin this appointment letter in the staff room for three days.
教員 が 控所 へ 揃う に は 一 時間 の 喇叭 が 鳴らなくてはならぬ 。
きょういん||ひかえ じょ||そろう|||ひと|じかん||らっぱ||なら なくて は なら ぬ
teachers||waiting place||gather||||||horn||must sound
The trumpet must sound an hour before the teachers gather in the staff room
大分 時間 が ある 。
だいぶ|じかん||
There's quite a bit of time left.
校長 は 時計 を 出して 見て 、 追々 ゆるりと 話す 積 だが 、 先づ 大体 の 事 を 呑み込んで 置いて 貰おう と 云って 、 夫 から 教育 の 精神 について 長い 御談義 を 聞かした 。
こうちょう||とけい||だして|みて|おいおい|ゆる り と|はなす|せき||さき づ|だいたい||こと||のみこんで|おいて|もらおう||うん って|おっと||きょういく||せいしん||ながい|ご だん ただし||きか した
||||||eventually|slowly||intention|but|first|||||understand||to receive||||||||||long talk||
The principal took out his watch to check the time, intending to discuss things leisurely. However, he began by wanting me to grasp the general concept, and then gave me a lengthy lecture on the spirit of education.
おれ は 無論 いゝ 加減 に 聞いて 居た が 、 途中 から 是 は 飛んだ 所 へ 来た と 思った 。
||むろん|い ゝ|かげん||きいて|いた||とちゅう||ぜ||とんだ|しょ||きた||おもった
||of course|good|moderation||listened|||||this|||||came||
I was, of course, listening half-heartedly and started to feel at some point that his talk had gone off the rails.
校長 の 云う ように は とても 出来 ない 。
こうちょう||うん う||||でき|
I couldn't possibly do as the principal was saying.
おれ 見た 様 な 無鉄砲 な もの を つらまえて 、 生徒 の 模範 に なれ の 、 一校 の 師表 と 仰がれなくては 行かん の 、 学問 以外 に 個人 の 徳化 を 及ぼさなくては 教育者 に なれない の 、 と 無暗 に 法外 な 注文 を する 。
|みた|さま||むてっぽう||||つら ま えて|せいと||もはん||||いっこう||しひょう||あおが れ なくて は|いか ん||がくもん|いがい||こじん||いさお か||およぼさ なくて は|きょういく しゃ||なれ ない|||む くら||ほうがい||ちゅうもん||
||||reckless||||caught|||example||must become||one school||model teacher||must be respected|must go|||||individual||moral influence||must exert|educator||cannot become|||||excessive||||
He was making outrageous demands, saying that someone reckless like me should become a role model for the students, be regarded as the exemplar for the entire school, and must cultivate personal virtue beyond academic knowledge to be considered an educator.
そんな えらい 人 が 月給 四十 円 で 遥々 こんな 田舎 へ くる もん か 。
||じん||げっきゅう|しじゅう|えん||はるばる||いなか||||
|great|||||||from afar||||||
Would someone so outstanding come all the way to this countryside for a monthly salary of forty yen?
人間 は 大概 似た もん だ 。
にんげん||たいがい|にた||
|||similar||
People are mostly similar.
腹が立てば 喧嘩の一つ位 は 誰でも するだろう と 思ってた が 、 此様子じゃ 滅多に 口も聞けない 。散歩 も 出来ない 。
はら が たてば|けんか の ひと つ い||だれ でも|する だろう||おもって た||これさま こ じゃ|めったに|くち も きけ ない|さんぽ||でき ない
if angry|one fight||anyone|probably will||thought||this way||cannot speak|||
I used to think that anyone would get into a fight if angered, but with this situation, it would be rare to even speak. I can't even take a walk.
そんな 六づかしい 役 なら 雇う 前 に これこれ だ と 話す が いゝ 。
|むっづか し い|やく||やとう|ぜん||これ これ|||はなす||い ゝ
|troublesome|role||hire|||this this|||||
If the role was this difficult, it should have been explained so beforehand.
おれ は 嘘 を つく の が 嫌 だから 、 仕方 が ない 。だまされて 来た の だ と あきらめて 、 思い切り よく 、 ここ で 断って 帰っち まおう と 思った 。
||うそ|||||いや||しかた||||きた|||||おもいきり||||たって|かえっち|||おもった
I||||to lie||||||||deceived|||||gave up|with determination||||refuse|go home|let's go||
I don't like lying, so there's no other way. I resigned myself to the idea that I had been deceived, and with determination, I thought I might as well refuse here and return.
宿屋 へ 五 円 やった から 財布 の 中 に は 九 円 なにがし しか ない 。
やどや||いつ|えん|||さいふ||なか|||ここの|えん|||
|||||||||||||something||
I had paid five yen to the inn, so I had only about nine yen left in my wallet.
九 円 じゃ 東京 迄 は 帰れない 。
ここの|えん||とうきょう|まで||かえれ ない
||||until||can't return
Nine yen isn't enough to return to Tokyo.
茶代 なんか やらなければ よかった 。
ちゃ だい||やら なければ|
||shouldn't have done|
It would have been better if I hadn't given the tip.
惜しい 事 を した 。
おしい|こと||
regrettable|||
I made a wasteful decision.
然し 九 円 だって 、 どうか ならない 事 は ない 。
ぜん し|ここの|えん|||なら ない|こと||
but||||||||
But even with nine yen, it's not like I can't do something.
旅費 は 足りなくっても 嘘 を つく より ましだ と 思って 、 到底 あなた の 仰 しゃる 通り にゃ 、 出来ません 、 此 辞令 は 返します と 云ったら 、 校長 は 狸 の 様な 眼 を ぱちつかせて おれ の 顔 を 見て 居た 。
りょひ||たりなくって も|うそ||||||おもって|とうてい|||あお|し ゃる|とおり|に ゃ|できません|これ|じれい||かえします||うん ったら|こうちょう||たぬき||さま な|がん||ぱち つか せて|||かお||みて|いた
travel expenses||not enough|lie||||||||||you|you said||like||this|resignation letter||will return|||||raccoon dog|||||blinked|I|||||
Thinking it was better to be short on travel money than to lie, I told him, "I absolutely can't do as you ask, so I'll return this appointment." The principal, with eyes like a tanuki, stared at me.
やがて 、 今 の は 只 希望 で ある 、 あなた が 希望 通り 出来ない の は よく 知って 居る から 心配 しなくっても いゝ と 云いながら 笑った。
|いま|||ただ|きぼう|||||きぼう|とおり|でき ない||||しって|いる||しんぱい|し なくって も|い ゝ||うん いながら|わらった
||||just||||||||||||||||not having to|it's fine||while saying|laughed
After a while, he laughed and said, "That was just a hope. I know well that you can't do as I wish, so don't worry."
その 位 よく 知ってる なら 、 始め から 威嚇 さなければ いゝ の に 。
|くらい||しってる||はじめ||いかく|さ なければ|い ゝ||
|||knows||from the beginning||intimidation|would not have to|good||
If he knew that well, he shouldn't have threatened me from the start.
そう、こうする 内 に 喇叭 が 鳴った。
|こう する|うち||らっぱ||なった
|to do this|||horn||
So, while I was doing this, the trumpet sounded.
教場 の 方 が 急 に がやがや する。
きょう じょう||かた||きゅう|||
classroom||||suddenly||noisy|
The training ground suddenly became noisy.
もう 教員 も 控所 へ 揃いました ろう と 云う から、校長 に 尾 いて 教員 控所 へ 這入った。
|きょういん||ひかえところ||そろいました|||うん う||こうちょう||お||きょういん|ひかえところ||は はいった
|||staff room||has gathered|probably||||||尾 = tail|||staff room||entered
Assuming that all the teachers had already gathered in the staff room, I followed the principal into it.
広い 細長い 部屋 の 周囲 に 机 を 並 ( なら ) べ て みんな 腰 ( こし ) を かけて いる 。
ひろい|ほそながい|へや||しゅうい||つくえ||なみ|||||こし||||
|slender|||surrounding||||line up||||||waist|||
In the long, narrow room, desks were arranged around the perimeter, and everyone was seated.
おれ が 這入った の を 見て、みんな 申し合せた 様 に 俺 の 顔 を 見た。
||は はいった|||みて||もうしあわせた|さま||おれ||かお||みた
I||that entered|||||agreed|||I||||
When I entered, everyone seemed to look at my face as if by agreement.
見世物 じゃある まいし。
みせもの|じゃ ある|まい し
sideshow|is|not likely
It's not like I'm a spectacle.
夫 から 申し付けられた 通り 一人々々 の 前 へ 行って 辞令 を 出して 挨拶 を した。
おっと||もうしつけられた|とおり|ひとり 々々||ぜん||おこなって|じれい||だして|あいさつ||
||requested||one by one|||||appointment letter|||greeting||
As instructed, I went to each individual and presented my appointment letter and greeted them.
大概 は 椅子 を 離れて 腰 を かがめる 許 で あった が、念 の 入った の は 差し出した 辞令 を 受け取って 一応 拝見 を して 夫 を 恭しく 返却した。
たいがい||いす||はなれて|こし|||ゆる||||ねん||はいった|||さしだした|じれい||うけとって|いちおう|はいけん|||おっと||うやうやしく|へんきゃく した
|||||||to bend|permission||||thought|||||submitted|appointment letter|||for the time being|to look at||to do||||returned
Most of them just nodded slightly from their chairs, but those who were more thorough took the letter I offered, gave it a quick glance, and respectfully returned it.
丸 で 宮芝居 の 真似 だ。
まる||みや しばい||まね|
circle||temple theater|||
It was just like a palace play.
十五人目 に 体操 の 教師 へ と 廻って 来た 時 に は、同じ 事 を 何返 も やる の で 少々 じれったく なった。
じゅうご り め||たいそう||きょうし|||まわって|きた|じ|||おなじ|こと||なに かえ|||||しょうしょう||
fifteenth||gymnastics|||||came around||||||||何返 = how many times||||||a little frustrating|
By the time I reached the fifteenth person, the physical education teacher, I became a bit irritated from repeating the same procedure over and over.
向 は 一度 で 済む。
むかい||ひと ど||すむ
||||will suffice
Others get it done in one go.
こっちは 同じ 所作 を 十五返 繰り返して 居る。
こっち は|おなじ|しょさ||じゅうご かえ|くりかえして|いる
here||behavior||fifteen times||
I had to repeat the same act fifteen times.
少し は ひと の 了 見 ( りょうけん ) も 察して みる が いい 。
すこし||||さとる|み|||さっして|||
||person||||understanding||to perceive|||
It would be good if people showed a bit of understanding.
挨拶 を した うち に 教頭 の なにがし と 云う の が 居た 。
あいさつ|||||きょうとう||||うん う|||いた
greeting|||||vice principal||someone|||||
During the greetings, there was someone named the head teacher or something.
これ は 文学 士 だ そうだ 。
||ぶんがく|し||そう だ
|||person||
Apparently, he is a Bachelor of Arts.
文学士 と 云えば 大学 の 卒業生 だ から えらい 人 なん だろう 。
ぶんがく し||うん えば|だいがく||そつぎょう せい||||じん||
Bachelor of Arts||to say|||graduate|||great|||
Being a Bachelor of Arts means he's a university graduate, so he must be a respectable person.
妙に 女 の様な 優しい 声 を 出す 人 だった 。
みょうに|おんな|の よう な|やさしい|こえ||だす|じん|
strangely||like|kind|||||
He had a strangely gentle voice, like that of a woman.
尤も 驚いた の は 此の 暑い の に フランネル の 襯衣 を 着て 居る 。
ゆう も|おどろいた|||この|あつい|||||しんい||きて|いる
certainly|surprised|||this||||flannel||shirt|||
The thing that surprised me the most is that despite this heat, he is wearing a flannel undershirt.
いくら 薄い 地 に は 相違 なくっても 暑い に は 極ってる 。
|うすい|ち|||そうい|な くって も|あつい|||ごくってる
how much||ground|||difference|not||||extreme
No matter how thin the material, it must be terribly hot.
文学士 丈に 御苦労千万 な 服装 を した もん だ 。
ぶんがく し|たけ に|ご くろう せんまん||ふくそう||||
bachelor of arts|Mr|thank you very much||||||
He wear such a cumbersome outfit (as though he had gone through immense hardships), even though he was just a Bachelor of Arts.
しかも 夫が 赤 シャツ だ から 人 を 馬鹿 に している 。
|おっと が|あか|しゃつ|||じん||ばか||して いる
moreover|husband|||||||||
Moreover, because it's a red shirt, he seems to be making a fool of himself.
あと から 聞いたら 此 の 男 は 年 が 年中 赤 シャツ を 着るん だ そう だ 。
||きいたら|これ||おとこ||とし||ねんじゅう|あか|しゃつ||きる ん|||
||heard|||||||||red shirt||wears|||
I later heard that this man wears a red shirt all year round.
妙な 病気 が あった 者 だ 。
みょうな|びょうき|||もの|
He must have some strange illness.
当人 の 説明 で は 赤 は 身体 ( からだ ) に 薬 に なる から 、 衛生 の ため に わざわざ 誂 ( あつ ) ら える んだ そうだ が 、 入ら ざる 心配だ 。
とうにん||せつめい|||あか||からだ|||くすり||||えいせい|||||ちょう|||||そう だ||はいら||しんぱいだ
the person||||||||||medicine||||sanitation||||deliberately|to prepare|specially made||to be able|||||not entering|it is a worry
According to him, red acts as a medicine for the body, so he had it specially made for health reasons, but I doubt its necessity.
そんなら序に 着物 も 袴 も 赤 に すれば いい 。
そん なら じょ に|きもの||はかま||あか|||
then|||hakama|||||
If that's the case, then he might as well make both his kimono and hakama red.
夫 から 英語 の 教師 に 古賀 とか 云う 大変 顔色 の 悪い 男 が 居た。
おっと||えいご||きょうし||こが|と か|うん う|たいへん|がん しょく||わるい|おとこ||いた
||||||Koga||||facial color|||||
Next, there was an English teacher named Koga, who had a particularly poor complexion.
大概 顔 の 蒼い 人 は 痩せて いる もん だ が 此 の 男 は 蒼く ふくれて 居る 。
たいがい|かお||あおい|じん||やせて|||||これ||おとこ||あお く||いる
|||blue||||||||||||blue|swollen|
Most people with pale faces tend to be thin, but this man was pale and puffy.
昔し 小学校 へ 行く 時分 、 浅井 の 民 さん と 云う 子 が 同級生 に あった が 、 この 浅井 の 親父 が 矢張り 、 こんな 色つや だった 。
むかし し|しょうがっこう||いく|じぶん|あさい||たみ|||うん う|こ||どうきゅう せい|||||あさい||おやじ||やはり||いろつや|
formerly|||||Asai|||||||||||||||father||after all||color and luster|
When I was going to elementary school, there was a classmate named Min of the Asai family, and the father of this Asai had such a complexion.
浅井 は 百姓 だから 、 百姓 に なる と あんな 顔 に なる か と 清 に 聞いて 見たら 、 そう じゃ ありません 、 あの 人 は うらなり の 唐茄子 許り 食べる から 、 蒼く ふくれるん です と 教えて くれた 。
あさい||ひゃくしょう||ひゃくしょう|||||かお|||||きよし||きいて|みたら|||||じん||||とう なす|ゆる り|たべる||あお く|ふくれる ん|||おしえて|
||farmer||||||such||||||||||||||||locust bean||Chinese eggplant||||blue|to swell||||
I asked Kiyo if people became farmers, would they end up with a face like Asai's. She replied, "No, that man turns blue because he eats too many eggplants from うらなり."
それ 以来 蒼く ふくれた 人 を 見れば 必ず うらなり の 唐茄子 を 食った 酬 だ と 思う 。
|いらい|あお く||じん||みれば|かならず|||とう なす||くった|しゅう|||おもう
||blue|swelled up|||||eggplant||||ate|reward|||
Ever since then, whenever I see someone with a swollen, blue complexion, I assume they've eaten eggplants from うらなり.
この 英語 の 教師 も うらなり 許り 食ってる に 違ない 。
|えいご||きょうし|||ゆる り|くってる||ちが ない
|||||suspicious||eating||probably
This English teacher must also be eating too many うらなり.
尤も うらなり と は 何 の 事 か 今 以て 知らない 。
ゆう も||||なん||こと||いま|い て|しら ない
most|unknown meaning||||||||by|
However, to this day, I still don't know what うらなり is.
清 に 聞いて みた 事 は ある が 、 清 は 笑って 答え なかった 。
きよし||きいて||こと||||きよし||わらって|こたえ|
|||||||||||to answer|
I once asked Kiyo about it, but she just laughed and didn't answer.
大方 清 も 知ら ない んだろう 。
おおかた|きよし||しら||
generous|||||probably
Kiyo probably doesn't know either.
夫 から おれ と 同じ 数学 の 教師 に 掘田 と 云う の が 居た 。
おっと||||おなじ|すうがく||きょうし||ほ た||うん う|||いた
||I|||||||Hokita|||||
Among the teachers, there was one teaching the same subject as me, mathematics, named Hotta.
是 は 逞しい 毬栗坊主 で 、 叡山 の 悪僧 と 云うべき 面構 で ある 。
ぜ||てい しい|いが くり ぼうず||えいざん||あく そう||うん う べき|おもて かま||
||sturdy|chestnut burr||Eizan||bad monk||to be called|facial features||
He was a sturdy, round-headed fellow, with a face that could be described as a wicked monk from Eizan.
人 が 叮嚀 に 辞令 を 見せたら 見向き も せず 、 やあ 君 が 新任 の 人 か 、 些 と 遊び に 来給え アハヽヽ と 云った 。
じん||ていねい||じれい||みせたら|みむき||せ ず|や あ|きみ||しんにん||じん||さ||あそび||らい たまえ|||うん った
||with a gentle reminder||appointment letter||showed|glance||without looking|hey|||newly appointed||||a little||||to come|ah ha||
When I showed him the formal introduction, he didn't even look and just said, "Ah, you're the new guy? Come and visit sometime, haha!"
何 が アハヽヽだ 。
なん||アハヽヽ だ
||laughter
What's with the "haha?"
そんな 礼儀 を 心得ぬ 奴 の 所 へ 誰 が 遊び に 行く もの か 。
|れいぎ||こころえ ぬ|やつ||しょ||だれ||あそび||いく||
|etiquette||does not understand|||||||||||
Who would visit someone with such a lack of manners?
おれ は この時 から この 坊主 に 山嵐 と 云う 渾名 を つけて やった 。
||この とき|||ぼうず||やまあらし||うん う|こんめい|||
I||this time|||monk||mountain storm|||nickname|||
Since then, I gave him the nickname "Mountain Storm."
漢学 の 先生 は 流石に 堅い もの だ 。
かんがく||せんせい||さすが に|かたい||
Confucian studies||||as expected|strict||
The teacher of Chinese studies, as expected, is a serious person.
昨日 で 、 嘸 御疲れ で 、 それでもう 授業 を 御始め で 、 大分 御励精 で 、 と のべつ に 弁じた の は 愛嬌 の ある 御爺さんだ 。
きのう||ぶ|ご つかれ||それ で もう|じゅぎょう||ご はじめ||だいぶ|ご はげ せい|||||べんじた|||あいきょう|||ご じいさん だ
yesterday||probably|honorable fatigue||that already|||honorable beginning|||with great effort|||continuously||explained|||charm|||an old man
The kind old man continuously said, "Yesterday was tiring, yet you began your lessons, you've been working hard..."
画学 の 教師 は 全く 芸人風 だ 。
が がく||きょうし||まったく|げいにん かぜ|
painting study|||||like a comedian|
The art teacher is entirely like an entertainer.
べらべらした 透綾 の 羽織 を 着て 、 扇子 を ぱちつかせて 、 御国 は どちら で げす 、 え ?
べらべら した|とおる あや||はおり||きて|せんす||ぱち つか せて|おくに||||げ す|
chattered|transparent silk||light jacket|||fan||snapping|your country||which way|at|is|
Wearing a flashy transparent haori, snapping a folding fan, he asked, "Where are you from?
東京 ?
とうきょう
Ah, Tokyo?
それ は 嬉しい 、 御仲間 が 出来て …… 私 も これで 江戸っ子 です と 云った 。
||うれしい|ご なかま||できて|わたくし||これ で|えどっこ|||うん った
|||friends||||||person from Edo|||
That's wonderful! We're fellow Edoites now... I'm an Edoite as well."
こんなの が 江戸っ子 なら 江戸 に は 生れたくない もんだ と 心中 に 考えた 。
こんな の||えどっこ||えど|||うまれ たく ない|||しんじゅう||かんがえた
such a thing||||Edo|||does not want to be born|emphasis particle||in one's heart||
If this is what an Edo native is like, I thought to myself that I wouldn't want to be born in Edo.
其のほか 一人一人 に 就いて こんな 事 を 書けば いくらでも ある 。
その の ほか|ひとりひとり||ついて||こと||かけば|いくら でも|
besides|one by one||concerning||||to write|as much as one wants|
There are many more things to write about each and every individual.
然し 際限 が ない から やめる 。
ぜん し|さいげん||||
|limit||||to stop
However, there's no end to it, so I'll stop.
挨拶 が 一 通り 済んだら 、 校長 が 今日 は もう 引き取って も いい 、 もっとも 授業 上 の 事 は 数学 の 主任 と 打ち合せ を して おいて 、 明後日 ( あさって ) から 課 業 を 始めて くれ と 云った 。
あいさつ||ひと|とおり|すんだら|こうちょう||きょう|||ひきとって||||じゅぎょう|うえ||こと||すうがく||しゅにん||うちあわせ||||みょうごにち|||か|ぎょう||はじめて|||うん った
greeting||||finished||||||to pick up|||of course||||||||主任 = head||meeting||||the day after tomorrow|the day after tomorrow||lesson|business|||||
After the greetings were over, the principal told me that I could leave for the day, but that I should discuss class matters with the head of mathematics and start my class the day after tomorrow.
数学 の 主任 は 誰 か と 聞いて みたら 例の 山嵐 であった 。
すうがく||しゅにん||だれ|||きいて||れいの|やまあらし|
||||||||||a nickname|
忌 々 ( いま いま ) しい 、 こいつ の 下 に 働く の か お やおや と 失望 した 。
い|||||||した||はたらく||||||しつぼう|
to be cautious||||ominous|this guy||||||||oh dear|||
I was disappointed that I would be working for him.
山嵐 は 「 おい 君 どこ に 宿 ( とま ) って る か 、 山城 屋 か 、 うん 、 今に 行って 相談 する 」 と 云い 残して 白墨 ( はくぼく ) を 持って 教 場 へ 出て 行った 。
やまあらし|||きみ|||やど|||||やましろ|や|||いまに|おこなって|そうだん|||うん い|のこして|はくぼく|||もって|きょう|じょう||でて|おこなった
mountain storm||||||lodging|lodging|||||||||||||||white chalk|white chalk|||to teach|classroom|||
Yamarashi said, "Hey, where do you stay, Yamashiroya or Yamashiroya? He left the classroom with a piece of white ink.
主任 の 癖 に 向う から 来て 相談 する なんて 不 見識 な 男 だ 。
しゅにん||くせ||むかう||きて|そうだん|||ふ|けんしき||おとこ|
|||||||||||lack of insight|||
He is an inconsiderate man who comes from the other side of the country to consult with us, as is his habit as a chief executive officer.
しかし 呼び 付ける より は 感心だ 。
|よび|つける|||かんしんだ
|||||it is impressive
But it's more impressive than calling them.
それ から 学校 の 門 を 出て 、 すぐ 宿 へ 帰ろう と 思った が 、 帰った って 仕方 が ない から 、 少し 町 を 散歩 して やろう と 思って 、 無 暗に 足 の 向く 方 を あるき 散らした 。
||がっこう||もん||でて||やど||かえろう||おもった||かえった||しかた||||すこし|まち||さんぽ||||おもって|む|あんに|あし||むく|かた|||ちらした
|from||||||right away||||||||||||||town|||||||||||to turn|||walked|scattered
After that, I left the school gate and thought I would go right back to the inn, but since I had no choice but to go home, I decided to take a short walk around town and walked around in the direction of my feet without thinking.
県庁 も 見た 。
けんちょう||みた
prefectural office||
I also saw the prefectural government office.
古い 前 世紀 の 建築 である 。
ふるい|ぜん|せいき||けんちく|
||||architecture|
It is an old pre-century building.
兵 営 も 見た 。
つわもの|いとな||みた
soldier|camp||
麻 布 ( あざ ぶ ) の 聯隊 ( れんたい ) より 立派で ない 。
あさ|ぬの||||れんたい|||りっぱで|
hemp||not|not||battalion|battalion||not splendid|
It is no more splendid than the Azabu Yontai.
大通り も 見た 。
おおどおり||みた
main street||
I also saw the main street.
神楽 坂 ( かぐら ざ か ) を 半分 に 狭く した ぐらい な 道 幅 ( みち は ば ) で 町並 ( まちなみ ) は あれ より 落ちる 。
かぐら|さか|||||はんぶん||せまく||||どう|はば|||||まちなみ|||||おちる
kagura|slope|kagura|locative particle|||||narrowly|||||width|road||||townscape|townscape||||
The street width is about half the width of Kagurazaka, and the townscape is even narrower.
二十五万 石 の 城 下 だって 高 の 知れた もの だ 。
にじゅうごまん|いし||しろ|した||たか||しれた||
two hundred fifty thousand|||castle|||||||
The castle was a well-known one with a castle of 250,000 koku.
こんな 所 に 住んで ご 城 下 だ など と 威張 ( いば ) って る 人間 は 可哀想 ( かわいそう ) な もの だ と 考え ながら くる と 、 いつしか 山城 屋 の 前 に 出た 。
|しょ||すんで||しろ|した||||いば||||にんげん||かわいそう||||||かんがえ|||||やましろ|や||ぜん||でた
||||||||||acting proud|to boast|||||pitiful||||||||||sooner or later||||||
I thought about how pitiful it must be to live in a place like this, and to be so arrogant as to claim to be a lord of a castle, and before I knew it, I was in front of the Yamashiroya house.
広い ようで も 狭い もの だ 。
ひろい|||せまい||
|like||narrow||
It may seem wide, but it is narrow.
これ で 大抵 ( たいてい ) は 見 尽 ( みつ く ) した のだろう 。
||たいてい|||み|つく||||
||usually|usually|||to see completely|to have seen|||probably
I guess most of them have run out of places to look.
帰って 飯 でも 食おう と 門口 を はいった 。
かえって|めし||くおう||かどぐち||
|||to eat||||
帳場 に 坐 ( す わ ) って いた かみさん が 、 おれ の 顔 を 見る と 急に 飛び出して きて お 帰り …… と 板の間 へ 頭 を つけた 。
ちょうば||すわ|||||かみ さん||||かお||みる||きゅうに|とびだして|||かえり||いたのま||あたま||
counter||to sit|||||wife||I|||||||to jump out|||||board floor||||touched
When the wife, who was sitting in the ledger, saw me, she suddenly jumped out and put her head down on the wooden floor, saying "Welcome home ......".
靴 ( くつ ) を 脱 ( ぬ ) いで 上がる と 、 お 座敷 ( ざしき ) が あき ました から と 下 女 が 二 階 へ 案内 を した 。
くつ|||だつ||い で|あがる|||ざしき|||||||した|おんな||ふた|かい||あんない||
|shoes||to take off||to take off|||||tatami room||opened||||||||||||
After taking off her shoes, the servant led the way to the second floor, saying that the tatami room had been cleared.
十五 畳 ( じょう ) の 表 二 階 で 大きな 床 ( とこ ) の 間 ( ま ) が ついて いる 。
じゅうご|たたみ|||ひょう|ふた|かい||おおきな|とこ|||あいだ||||
||tatami mats||||||||||||||
The second floor has 15 tatami mats and a large floor space.
おれ は 生れて から まだ こんな 立派な 座敷 へ は いった 事 は ない 。
||うまれて||||りっぱな|ざしき||||こと||
I|||||||||||||
I have never been in such a magnificent tatami room since I was born.
この後 いつ は いれる か 分ら ない から 、 洋服 を 脱いで 浴衣 ( ゆかた ) 一 枚 に なって 座敷 の 真中 ( まんなか ) へ 大の 字 に 寝て みた 。
このあと|||い れる||ぶん ら|||ようふく||ぬいで|ゆかた||ひと|まい|||ざしき||まんなか|||だいの|あざ||ねて|
after this|when||to put in|||||clothes||to take off|yukata|yukata||||||||the middle||big||||
Not knowing when I would be able to come back, I took off my clothes, put on a yukata, and lay down in the middle of the tatami room in a large position.
いい 心持ち である 。
|こころもち|
|feeling|
昼 飯 を 食って から 早速 清 へ 手紙 を かいて やった 。
ひる|めし||くって||さっそく|きよし||てがみ|||
noon|||||||||||
おれ は 文章 が まずい 上 に 字 を 知ら ない から 手紙 を 書く の が 大 嫌 ( だい きら ) い だ 。
||ぶんしょう|||うえ||あざ||しら|||てがみ||かく|||だい|いや||||
I||||||||||||||||||||really dislike||is
I hate writing letters because my writing is bad and I don't know how to write.
また やる 所 も ない 。
||しょ||
There is no place to do it again.
しかし 清 は 心配 して いる だろう 。
|きよし||しんぱい|||
But Kiyoshi must be worried.
難船 して 死に や し ない か など と 思っちゃ 困る から 、 奮発 ( ふんぱつ ) して 長い の を 書いて やった 。
なんせん||しに|||||||おもっちゃ|こまる||ふんぱつ|||ながい|||かいて|
difficulty in sailing||||||||||||to splurge|to splurge||||||
I didn't want him to think that he might die in a shipwreck, so I got inspired and wrote a long piece.
その 文句 は こう である 。
|もんく|||
The complaint goes like this.
「 きのう 着いた 。
|ついた
yesterday|
つまら ん 所 だ 。
||しょ|
boring|||
It's a boring place.
十五 畳 の 座敷 に 寝て いる 。
じゅうご|たたみ||ざしき||ねて|
宿屋 へ 茶 代 を 五 円 やった 。
やどや||ちゃ|だい||いつ|えん|
I gave the innkeeper five yen for tea.
かみさん が 頭 を 板の間 へ すり つけた 。
かみ さん||あたま||いたのま|||
wife|||||||
The wife rubbed her head against the board.
夕べ は 寝 られ なかった 。
ゆうべ||ね||
|||could|
I couldn't sleep last night.
清 が 笹 飴 を 笹 ごと 食う 夢 を 見た 。
きよし||ささ|あめ||ささ||くう|ゆめ||みた
||||||with||||
Kiyoshi dreamed that he ate bamboo grass candy with bamboo grass.
来年 の 夏 は 帰る 。
らいねん||なつ||かえる
I will return next summer.
今日 学校 へ 行って みんな に あだな を つけて やった 。
きょう|がっこう||おこなって||||||
||||||nickname|||
I went to school today and gave them all nicknames.
校長 は 狸 、 教頭 は 赤 シャツ 、 英語 の 教師 は うら なり 、 数学 は 山嵐 、 画 学 は のだ いこ 。
こうちょう||たぬき|きょうとう||あか|しゃつ|えいご||きょうし||||すうがく||やまあらし|が|まな|||
||raccoon||||red shirt|||||裏 = back|a kind of vegetable||||painting|study|||Iko
The principal is a raccoon, the vice principal is a red shirt, the English teacher is a Uranari, the math teacher is a Yamarashi, and the art teacher is a Nodainko.
今に いろいろな 事 を 書いて やる 。
いまに||こと||かいて|
I'm going to write about a lot of things now.
さようなら 」 手紙 を かいて しまったら 、 いい 心持ち に なって 眠気 ( ねむけ ) が さした から 、 最 前 の ように 座敷 の 真中 へ のびのび と 大 の 字 に 寝た 。
|てがみ|||||こころもち|||ねむけ|||||さい|ぜん|||ざしき||まんなか||||だい||あざ||ねた
|||wrote|if I had finished|||||sleepiness|sleepiness||it appeared||most||||||||with arms and legs stretched out||||||slept
Goodbye." After I had written the letter, I felt good and sleepy, so I stretched out in the middle of the tatami room like I had done before.
今度 は 夢 も 何も 見 ないで ぐっすり 寝た 。
こんど||ゆめ||なにも|み|||ねた
|||||||soundly|
This time, I slept soundly without dreaming or seeing anything.
この 部屋 かい と 大きな 声 が する ので 目 が 覚めたら 、 山嵐 が はいって 来た 。
|へや|||おおきな|こえ||||め||さめたら|やまあらし|||きた
||suddenly|||||||||when I woke up|storm||entered|came
I was awakened by a loud voice saying, "This room is here," and a mountain storm came in.
最 前 は 失敬 、 君 の 受持ち は …… と 人 が 起き上がる や 否 や 談判 を 開か れた ので 大いに 狼狽 ( ろうばい ) した 。
さい|ぜん||しっけい|きみ||うけもち|||じん||おきあがる||いな||だんぱん||あか|||おおいに|ろうばい||
||||||responsibility|||||to get up||否 = or not||negotiation||to be opened||||greatly troubled|greatly disturbed|
I'm sorry for the last time, but I was very upset when I was asked to discuss your receipt of ...... as soon as the person woke up.
受持ち を 聞いて みる と 別段 むずかしい 事 も な さ そうだ から 承知 した 。
うけもち||きいて|||べつだん||こと||||そう だ||しょうち|
||||||not||||||||
After listening to what they had to say, it didn't sound too difficult, so I agreed.
この くらい の 事 なら 、 明後日 は 愚 ( おろか )、 明日 ( あした ) から 始めろ と 云った って 驚 ろ か ない 。
|||こと||みょうごにち||ぐ||あした|||はじめろ||うん った||おどろ|||
|||||||foolish|||tomorrow||to start||||to be surprised|foolish||
I wouldn't be surprised if he told them to start tomorrow, rather than the day after tomorrow, if that's the case.
授業 上 の 打ち合せ が 済んだら 、 君 は いつまで こんな 宿屋 に 居る つもりで も ある まい 、 僕 ( ぼく ) が いい 下宿 を 周旋 ( しゅうせん ) して やる から 移り たまえ 。
じゅぎょう|うえ||うちあわせ||すんだら|きみ||||やどや||いる|||||ぼく||||げしゅく||しゅうせん|||||うつり|
||||||||||||||||||||||object marker||to arrange||||to move|
After the class meeting is over, you don't have any intention of staying at this kind of inn any longer, I'll find you a good place to stay, so please move in.
外 の もの で は 承知 し ない が 僕 が 話せば すぐ 出来る 。
がい|||||しょうち||||ぼく||はなせば||できる
|||||||||||if I speak||
I don't know what you're talking about, but I can do it.
早い 方 が いい から 、 今日 見て 、 あす 移って 、 あさって から 学校 へ 行けば 極 りがい いと 一 人 で 呑み 込んで いる 。
はやい|かた||||きょう|みて||うつって|||がっこう||いけば|ごく|||ひと|じん||のみ|こんで|
|||||||tomorrow|to move|||||||extremely|it is||||to swallow||
I thought to myself, "The sooner I see it, the better, so I'll look at it today, move on tomorrow, and go to school the day after tomorrow, the better.
なるほど 十五 畳敷 に いつまで 居る 訳 に も 行く まい 。
|じゅうご|じょうしき|||いる|やく|||いく|
||tatami mat||||||||probably won't
I see. I can't stay in the 15 tatami mats for much longer.
月給 を みんな 宿 料 ( しゅく りょう ) に 払 ( はら ) って も 追っ つ か ない かも しれ ぬ 。
げっきゅう|||やど|りょう||||はら||||つい っ||||||
||||fee|lodging|lodging||to pay|pay|||to chase||||||
Even if they were to pay their monthly wages, they might not be able to keep up with the monthly wage.
五 円 の 茶 代 を 奮発 ( ふんぱつ ) して すぐ 移る の は ち と 残念だ が 、 どうせ 移る 者 なら 、 早く 引き 越 ( こ ) して 落ち付く 方 が 便利だ から 、 そこ の ところ は よろしく 山嵐 に 頼 ( たの ) む 事 に した 。
いつ|えん||ちゃ|だい||ふんぱつ||||うつる|||||ざんねんだ|||うつる|もの||はやく|ひき|こ|||おちつく|かた||べんりだ|||||||やまあらし||たの|||こと||
||||||splurge|||right away||||||it is a little disappointing||anyway||||||to move|||to settle|||convenient|||||||locomotive||to rely|to rely|to bear|||
It would be a shame to move so soon after faking a five-yen tea fee, but if one is going to move, it would be more convenient to move in and settle down quickly, so I decided to ask Yamaarashi to take care of that for me.
すると 山嵐 は ともかくも いっしょに 来て みろ と 云う から 、 行った 。
|やまあらし||||きて|||うん う||おこなった
|mountain storm||anyway|||look here||||
Then YAMARASHI said, "Come with me anyway," and so I went.
町 は ずれ の 岡 の 中腹 に ある 家 で 至極 閑静 ( かんせい ) だ 。
まち||||おか||ちゅうふく|||いえ||しごく|かんせい||
town||edge||hill||middle of|||||very|quiet|quiet|
The house is located in the middle of a hillside on the outskirts of town and is extremely quiet.
主人 は 骨董 ( こっとう ) を 売買 する いか 銀 と 云う 男 で 、 女房 ( にょうぼう ) は 亭主 ( ていしゅ ) より も 四 つ ばかり 年嵩 ( としかさ ) の 女 だ 。
しゅじん||こっとう|||ばいばい|||ぎん||うん う|おとこ||にょうぼう|||ていしゅ||||よっ|||としかさ|||おんな|
||antique|antique||buying and selling||a certain|silver|||||wife|wife||husband|husband|||||just|age|about four years older|||
The owner was an antique dealer named Ika Gin, and his wife was a woman about four years older than her husband.
中学校 に 居た 時 ウィッチ と 云う 言葉 を 習った 事 が ある が この 女房 は まさに ウィッチ に 似て いる 。
ちゅうがっこう||いた|じ|||うん う|ことば||ならった|こと|||||にょうぼう|||||にて|
||||witch|||||learned||||||wife||exactly|witch|||
When I was in junior high school, I learned the word "witch," and this woman is exactly like a witch.
ウィッチ だって 人 の 女房 だ から 構わ ない 。
||じん||にょうぼう|||かまわ|
||||wife|||doesn't matter|
Witches are people's wives, so it doesn't matter.
とうとう 明日 から 引き 移る 事 に した 。
|あした||ひき|うつる|こと||
帰り に 山嵐 は 通 町 ( とおり ちょう ) で 氷 水 を 一杯 奢 ( ぱい おご ) った 。
かえり||やまあらし||つう|まち||||こおり|すい||いっぱい|しゃ|||
|||||town|town|town||||||to treat|a cup|to treat|
On the way home, Yamaarashi bought him a glass of ice water in the street.
学校 で 逢った 時 は やに 横風 ( おう ふう ) な 失敬な 奴 だ と 思った が 、 こんなに いろいろ 世話 を して くれる ところ を 見る と 、 わるい 男 でも なさ そうだ 。
がっこう||あった|じ|||おう ふう||||しっけいな|やつ|||おもった||||せわ||||||みる|||おとこ||な さ|そう だ
||met|||suddenly|crosswind|side|side|||||||||||||provides|||||not good|||not|
When I first met him at school, I thought he was a bit arrogant and disrespectful, but seeing how he took such good care of me, he didn't seem like a bad guy at all.
ただ おれ と 同じ ように せっかちで 肝 癪持 ( かんしゃく もち ) らしい 。
|||おなじ|||かん|しゃくじ|||
just|I||||impatient|gallbladder|short-tempered|anger|has a temper|
He seems to be just as impetuous and irritable as I am.
あと で 聞いたら この 男 が 一 番 生徒 に 人望 が ある のだ そうだ 。
||きいたら||おとこ||ひと|ばん|せいと||じんぼう||||そう だ
||||||||||popular support||||
I was later told that this man was the most popular among the students.