鏡 の 中 の 親父
きよう||なか||おやじ
Vater im Spiegel
Father in the mirror
O pai no espelho
むかし むかし 、 田舎 ( いなか ) で は 、 カガミ と いう 物 を ほとんど 知ら なかった ころ の 話 です 。
||いなか|||||||ぶつ|||しら||||はなし|
Once upon a time, in the countryside, I didn't know much about Kagami.
ある 若 夫婦 が 、 夫 の 父親 と 三 人 で 仲良く くらして い ました 。
|わか|ふうふ||おっと||ちちおや||みっ|じん||なかよく|||
A young couple lived in harmony with their husband's father.
ところが ある 日 の 事 、 父親 は 急な 病 で 死んで しまった のです 。
||ひ||こと|ちちおや||きゅうな|びょう||しんで||
However, one day, his father died of a sudden illness.
大好きな 父親 に 死な れた 息子 は 、 毎日 毎日 、 涙 に くれて い ました 。
だいすきな|ちちおや||しな||むすこ||まいにち|まいにち|なみだ||||
My son, who died from his beloved father, was in tears every day.
さて 、 ある 日 の 事 、 その 息子 は 気ばら しに と 、 江戸 の 町 へ 出かけ ました 。
||ひ||こと||むすこ||きばら|||えど||まち||でかけ|
Well, one day, the son went out to the town of Edo for distraction.
そして 町中 を ぶらぶら と 歩いて いる と 、 店先 に おいて あった カガミ が ピカリ と 光り ます 。
|まち ちゅう||||あるいて|||みせさき||||||||ひかり|
As I strolled through the town, I saw a kagami on a storefront.
「 おや ?
Oh?
今 の は 何 だろう ?
いま|||なん|
What is it now?
」 不思議に 思った 息子 は 、 ピカッ と 光った カガミ を のぞいて みて びっくり 。
ふしぎに|おもった|むすこ||||ひかった|||||
My son wondered and was surprised when he peered into the shiny Kagami.
「 死んだ 親父 に 、 こんな ところ で 会える と は !
しんだ|おやじ|||||あえる||
"I never thought I could meet my dead father in a place like this!
」 カガミ に うつった 自分 の 顔 を 父親 と 勘違い した 息子 は 、 なけなし の お 金 を はたいて 、 その カガミ を 買い ました 。
|||じぶん||かお||ちちおや||かんちがい||むすこ|||||きむ||||||かい|
The son, who misunderstood his face as his father, bought the Kagami for a small amount of money.
そして それ を 大事に しまう と 、 ひま さえ あれば のぞき 込んで い ました 。
|||だいじに|||||||こんで||
And when I took care of it, I was looking into it as long as I had a free time.
そんな 夫 の 行動 を 不思議に 思った 女房 は 、 夫 が 昼寝 ( ひるね ) を して いる すきに 、 隠して ある カガミ を こっそり のぞき こみ ました 。
|おっと||こうどう||ふしぎに|おもった|にょうぼう||おっと||ひるね||||||かくして|||||||
My wife, who was wondering about her husband's behavior, sneaked into the hidden Kagami while she was taking a nap.
すると カガミ の 中 に は 、 とうぜん 、 女房 の 顔 が うつり ます 。
|||なか||||にょうぼう||かお|||
Then, in the Kagami, the face of my wife is finally moved.
しかし それ を 見た 女房 は 、 血相 ( けっそう ) を 変えて 怒り ました 。
|||みた|にょうぼう||けっそう|||かえて|いかり|
However, when she saw it, her wife changed her blood phase and became angry.
「 なんと まあ !
"Well!
こんな ところ に お なご を かくして おる と は 、 それ も あんな ブサイク なお なご を !
It's such a ugly thing to hide in such a place!
」 腹 を 立てた 女房 は 、 ガシャーン !
はら||たてた|にょうぼう||
The wife got angry and stormed out!
と 、 大切な カガミ を こわして しまい ました 。
|たいせつな|||||
And, he scared the precious Kagami away.
「 さあ 、 ブサイク 女 。
||おんな
"Come on, you ugly bitch.
よくも あたし から あの 人 を うばい やがって 、 はやく 出て こい !
||||じん|||や がって||でて|
How dare you steal that person from me, hurry up and get out!
」 女房 は こわれた カガミ を ひっくり返して み ました が 、 もちろん 、 だれ も 出て は き ませ ん 。
にょうぼう|||||ひっくりかえして|||||||でて||||
She turned the scarecrow upside down, but of course no one came out.
「 ちくしょう 。
Damn it.
逃げた な !
にげた|
You ran away, didn't you?
」 女房 は 気持ちよ さ そうに 昼寝 を して いた 夫 を たたき起こす と 、 こわい 顔 で いい ました 。
にょうぼう||きもちよ||そう に|ひるね||||おっと||たたきおこす|||かお|||
The wife said with a frightened face when she woke up her husband who was taking a nap comfortably.
「 あんた !
You!
わたし に だまって 、 あんな 所 へ お なご を かくして おる と は 、 どういう こと !
||||しょ||||||||||
What do you mean by hiding your eggs in a place like that without telling me!
」 「 は あ ?
" What?
お なご ?
A girl?
なに を 一体 ・・・、 ああ っ !
||いったい||
What the heck... Oh!
なんという 事 を して くれた 。
|こと|||
What did you do?
あれ に は わし の 親父 が 入って おった のに !
|||||おやじ||はいって||
My father was in it!
」 「 うそ おっしゃい 。
No, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no, no.
ブサイク なお なご じゃ った よ 」 「 なに を いう 。
You were an ugly girl.” “What are you saying?
わし の 親父 だ !
||おやじ|
That's my father!
」 そんな わけ で 、 夫婦 の 大 げんか が 始まり ました 。
|||ふうふ||だい|||はじまり|
” And so the big fight between the couple began.
ちょうど そこ へ 、 村 一 番 の 物知り の 庄屋 ( しょうや ) さんが 近く を 通り かかり ました 。
|||むら|ひと|ばん||ものしり||しょうや|||ちかく||とおり||
Just then, the most knowledgeable headman in the village passed by.
「 まあまあ 、 なに を けんか して おる 。
What are you fighting about?
落ち着いて 、 わし に 事情 を 話して みろ 」 そして 二 人 の 話 を 聞いた 庄屋 さん は 、 腹 を 抱えて 大笑い です 。
おちついて|||じじょう||はなして|||ふた|じん||はなし||きいた|しょうや|||はら||かかえて|おおわらい|
When the village headman heard what they had to say, he burst into laughter.
「 あはは は はっ 。
あ は は||
"Ha-ha-ha-ha.
何 じゃ 、 そんな 事 か 。
なん|||こと|
What? That's what this is about?
それ は な 、 カガミ と いって 、 自分 の 姿 が うつる 物 じゃ 。
||||||じぶん||すがた|||ぶつ|
It's called a kagami, which is a shadow of yourself.
亭主 が 見た 親父 さん と 言う の は 、 自分 の 顔 じゃ 。
ていしゅ||みた|おやじ|||いう|||じぶん||かお|
What the husband sees as father is his own face.
そして 女房 が 見た お なごも 、 自分 の 顔 じゃ 」 庄屋 さん の 説明 に 、 夫 も 女房 も 大笑い し ました 。
|にょうぼう||みた||なご も|じぶん||かお||しょうや|||せつめい||おっと||にょうぼう||おおわらい||
And the woman my wife saw had her own face, too," the village headman explained, to which my husband and wife both laughed hysterically.
「 なるほど 、 親父 に して は 、 若い と 思った 」 「 あたし も 、 どうりで 、 美人 なお な ごと 思った 」
|おやじ||||わかい||おもった||||びじん||||おもった
"Well, I thought he was young for a father, and I thought he was a beautiful woman, too."
おしまい