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Fairy Tales, 鳥追いの森

鳥追いの森

鳥 追い の 森

むかし むかし 、 鹿児島 県 北西 部 の 川内 ( せんだい ) に 、 日暮 らし 長者 と いう 大変な お 金持ち が 住んで い ました 。 この 長者 に は 美しい 妻 と 二 人 の 子ども が いて 、 二 人 の 子ども の お 姉さん は お 北 ( きた )、 弟 は 花 若 丸 ( はなわ か まる ) と いう 名前 です 。

この 長者 の 家 に は 左近 充 ( さ こ ん じゅう ) と いう 男 が 働いて い ました が 、 どういう わけ か 長者 の 妻 の 悪 口 を 言う のです 。 それ が いかにも 本当 らしく 言う ので 、 それ を 信じた 長者 は 妻 を 実家 に 返して しまい ました 。 それ から 間もなく 長者 は 左近 充 の 世話 で 新しい 妻 を 迎えた のです が 、 今度 の 妻 は とても いじわるな 人 で 、 血 の つながって い ない お 北 と 花 若 丸 を いつも いじめて いた のです 。

ある 日 、 長者 は 仕事 で 、 京都 へ 行く 事 に なり ました 。 「 しばらく 帰って 来 られ ない が 、 子ども たち を よろしく 頼む よ 」 「 はい 、 旦那 さま 」 ところが その 間 に 継母 ( ままはは ) と 左近 充 は ぐるに なって 、 長者 の 家 も 財産 も 全部 自分 たち の 物 に して しまった のです 。 それ から と いう もの 、 お 北 と 花 若 丸 へ の いじめ は 前 より も いっそう ひどく なり ました 。 朝 から 晩 まで 二 人 を 休み なく 働か せ 、 秋 に なって イネ が 実る と 一 日 中 、 鳥 の 群れ を 追い払う 仕事 を さ せ ました 。 お 北 と 花 若 丸 は 小さな 舟 に のせ られて 、 鐘 や たいこ を 叩いて は 川 を 上ったり 下ったり して 鳥 を 追い払う のです 。 幼い 二 人 に は 、 とても つらい 仕事 でした 。 二 人 は いつも 、 「 母 さま が 、 いて くれたら 」 「 父 さま 、 早う 帰って きて 」 と 、 泣き ながら 烏 を 追い払い ました 。 でも 京都 へ 行った 父親 は 、 なかなか 帰って き ませ ん 。 継母 と 左近 充 の 毎日 の いじめ に 絶え られ なく なった 二 人 は 、 「 母 さま 、 父 さま 、 わたし たち 、 もう 疲れ ました 。 ごめんなさい 」 と 、 しっかり と 手 を つないだ まま 、 川 に 身 を 投げて 死んで しまった のです 。 「 まだ 小さい のに 、 かわいそうな 」 あわれに 思った 村人 たち は 、 二 人 の 亡骸 ( なきがら ) を 川 の 近く に 手厚く 葬って やり ました 。

それ から 間もなく 、 長い 旅 から ようやく 長者 が 帰って 来た のです 。 しかし 帰って みれば 二 人 の 子ども は おら ず 、 家 と 財産 は 左近 充 と 妻 の 物 に なって い ます 。 「 なぜ 、 こんな 事 に ! 子ども たち は ! 」 「 長者 さま 。 実は ・・・」 村人 から すべて を 聞いた 長者 は 、 左近 充 と 妻 を 刀 で きり殺し ました 。 そして 二 人 の 子ども が 葬ら れた 、 川 の ほとり に 腰 を おろす と 、 「 す まん かった 。 金もうけ に 夢中で 、 帰る の が 遅く なった ばかりに 。 ・・・ お 北 。 ・・・ 花 若 丸 。 今 から 父 も 、 お前 たち の そば へ 行く ぞ 」 と 、 長者 も 自ら の 命 を 絶とう と した その 時 、 長者 の 耳 に 二 人 の 子ども たち の 声 が 聞こえて きた のです 。 『 父 さま 。 お 帰り なさい 。 わたし たち は 、 木 に 生まれ変わった の 。 どうか 、 わたし たち の 木 を 育てて 』 その 声 に 目 を 見開いた 長者 は 、 川 の ほとり に 二 本 の タブ の 木 (→ クスノキ 科 の 常緑 高木 ) が 生えて いる の を 見つけ ました 。 「 そう か 。 お前 たち は 、 木 に なった の か 。 よし 、 父 が 必ず 、 お前 たち を 立派に 育てて やる ぞ 」 やがて 二 本 の 小さな タブ の 木 は どんどん 大きく なり 、 二 本 が 四 本 に 、 四 本 は 八 本 に と 、 木 から 林 に 、 林 から 森 に なり ました 。 村人 たち は 死んだ 二 人 の 子ども の 事 を 思い出して 、 この 森 を 『 鳥 追い の 森 』 と 呼び 、 小さな 観音 さま を たてて やった そうです 。

この 森 は 太平洋 戦争 の 爆弾 で 焼けて しまい ました が 、 観音 さま は 今 でも 残って いる そうです 。

おしまい

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鳥追いの森 ちょう おい の しげる bird chasing forest Wald der Vogeljagd Forest of Bird Chase

鳥 追い の 森 ちょう|おい||しげる Bird chasing forest

むかし むかし 、 鹿児島 県 北西 部 の 川内 ( せんだい ) に 、 日暮 らし 長者 と いう 大変な お 金持ち が 住んで い ました 。 ||かごしま|けん|ほくせい|ぶ||かわうち|||ひ くら||ちょうじゃ|||たいへんな||かねもち||すんで|| ||||||||||Higashi||||||||||| この 長者 に は 美しい 妻 と 二 人 の 子ども が いて 、 二 人 の 子ども の お 姉さん は お 北 ( きた )、 弟 は 花 若 丸 ( はなわ か まる ) と いう 名前 です 。 |ちょうじゃ|||うつくしい|つま||ふた|じん||こども|||ふた|じん||こども|||ねえさん|||きた||おとうと||か|わか|まる||||||なまえ| |||||||||||||||||||||||||||||Hana||||||

この 長者 の 家 に は 左近 充 ( さ こ ん じゅう ) と いう 男 が 働いて い ました が 、 どういう わけ か 長者 の 妻 の 悪 口 を 言う のです 。 |ちょうじゃ||いえ|||ひだり ちか|まこと|||||||おとこ||はたらいて|||||||ちょうじゃ||つま||あく|くち||いう| ||||||Sakon||||||||||||||||||||||||| それ が いかにも 本当 らしく 言う ので 、 それ を 信じた 長者 は 妻 を 実家 に 返して しまい ました 。 |||ほんとう||いう||||しんじた|ちょうじゃ||つま||じっか||かえして|| それ から 間もなく 長者 は 左近 充 の 世話 で 新しい 妻 を 迎えた のです が 、 今度 の 妻 は とても いじわるな 人 で 、 血 の つながって い ない お 北 と 花 若 丸 を いつも いじめて いた のです 。 ||まもなく|ちょうじゃ||ひだり ちか|まこと||せわ||あたらしい|つま||むかえた|||こんど||つま||||じん||ち||||||きた||か|わか|まる|||||

ある 日 、 長者 は 仕事 で 、 京都 へ 行く 事 に なり ました 。 |ひ|ちょうじゃ||しごと||みやこ||いく|こと||| 「 しばらく 帰って 来 られ ない が 、 子ども たち を よろしく 頼む よ 」 「 はい 、 旦那 さま 」   ところが その 間 に 継母 ( ままはは ) と 左近 充 は ぐるに なって 、 長者 の 家 も 財産 も 全部 自分 たち の 物 に して しまった のです 。 |かえって|らい||||こども||||たのむ|||だんな||||あいだ||ままはは|まま は は||ひだり ちか|まこと||ぐ る に||ちょうじゃ||いえ||ざいさん||ぜんぶ|じぶん|||ぶつ|||| ||||||||||||||||||||stepmother|||||colluded|||||||||||||||| それ から と いう もの 、 お 北 と 花 若 丸 へ の いじめ は 前 より も いっそう ひどく なり ました 。 ||||||きた||か|わか|まる|||||ぜん|||||| 朝 から 晩 まで 二 人 を 休み なく 働か せ 、 秋 に なって イネ が 実る と 一 日 中 、 鳥 の 群れ を 追い払う 仕事 を さ せ ました 。 あさ||ばん||ふた|じん||やすみ||はたらか||あき|||いね||みのる||ひと|ひ|なか|ちょう||むれ||おいはらう|しごと|||| お 北 と 花 若 丸 は 小さな 舟 に のせ られて 、 鐘 や たいこ を 叩いて は 川 を 上ったり 下ったり して 鳥 を 追い払う のです 。 |きた||か|わか|まる||ちいさな|ふね||||かね||||たたいて||かわ||のぼったり|くだったり||ちょう||おいはらう| 幼い 二 人 に は 、 とても つらい 仕事 でした 。 おさない|ふた|じん|||||しごと| 二 人 は いつも 、 「 母 さま が 、 いて くれたら 」 「 父 さま 、 早う 帰って きて 」 と 、 泣き ながら 烏 を 追い払い ました 。 ふた|じん|||はは|||||ちち||はやう|かえって|||なき||からす||おいはらい| でも 京都 へ 行った 父親 は 、 なかなか 帰って き ませ ん 。 |みやこ||おこなった|ちちおや|||かえって||| 継母 と 左近 充 の 毎日 の いじめ に 絶え られ なく なった 二 人 は 、 「 母 さま 、 父 さま 、 わたし たち 、 もう 疲れ ました 。 ままはは||ひだり ちか|まこと||まいにち||||たえ||||ふた|じん||はは||ちち|||||つかれ| ごめんなさい 」 と 、 しっかり と 手 を つないだ まま 、 川 に 身 を 投げて 死んで しまった のです 。 ||||て||||かわ||み||なげて|しんで|| 「 まだ 小さい のに 、 かわいそうな 」   あわれに 思った 村人 たち は 、 二 人 の 亡骸 ( なきがら ) を 川 の 近く に 手厚く 葬って やり ました 。 |ちいさい||||おもった|むらびと|||ふた|じん||なきがら|||かわ||ちかく||てあつく|ほうむって||

それ から 間もなく 、 長い 旅 から ようやく 長者 が 帰って 来た のです 。 ||まもなく|ながい|たび|||ちょうじゃ||かえって|きた| しかし 帰って みれば 二 人 の 子ども は おら ず 、 家 と 財産 は 左近 充 と 妻 の 物 に なって い ます 。 |かえって||ふた|じん||こども||||いえ||ざいさん||ひだり ちか|まこと||つま||ぶつ|||| 「 なぜ 、 こんな 事 に ! ||こと| 子ども たち は ! こども|| 」 「 長者 さま 。 ちょうじゃ| 実は ・・・」   村人 から すべて を 聞いた 長者 は 、 左近 充 と 妻 を 刀 で きり殺し ました 。 じつは|むらびと||||きいた|ちょうじゃ||ひだり ちか|まこと||つま||かたな||きりころし| |||||||||||||||killed| そして 二 人 の 子ども が 葬ら れた 、 川 の ほとり に 腰 を おろす と 、 「 す まん かった 。 |ふた|じん||こども||ほうむら||かわ||||こし|||||| 金もうけ に 夢中で 、 帰る の が 遅く なった ばかりに 。 かねもうけ||むちゅうで|かえる|||おそく|| ・・・ お 北 。 |きた ・・・ 花 若 丸 。 か|わか|まる 今 から 父 も 、 お前 たち の そば へ 行く ぞ 」 と 、 長者 も 自ら の 命 を 絶とう と した その 時 、 長者 の 耳 に 二 人 の 子ども たち の 声 が 聞こえて きた のです 。 いま||ちち||おまえ|||||いく|||ちょうじゃ||おのずから||いのち||たとう||||じ|ちょうじゃ||みみ||ふた|じん||こども|||こえ||きこえて|| 『 父 さま 。 ちち| お 帰り なさい 。 |かえり| わたし たち は 、 木 に 生まれ変わった の 。 |||き||うまれかわった| どうか 、 わたし たち の 木 を 育てて 』   その 声 に 目 を 見開いた 長者 は 、 川 の ほとり に 二 本 の タブ の 木 (→ クスノキ 科 の 常緑 高木 ) が 生えて いる の を 見つけ ました 。 ||||き||そだてて||こえ||め||みひらいた|ちょうじゃ||かわ||||ふた|ほん||||き||か||じょうりょく|たかぎ||はえて||||みつけ| 「 そう か 。 お前 たち は 、 木 に なった の か 。 おまえ|||き|||| よし 、 父 が 必ず 、 お前 たち を 立派に 育てて やる ぞ 」   やがて 二 本 の 小さな タブ の 木 は どんどん 大きく なり 、 二 本 が 四 本 に 、 四 本 は 八 本 に と 、 木 から 林 に 、 林 から 森 に なり ました 。 |ちち||かならず|おまえ|||りっぱに|そだてて||||ふた|ほん||ちいさな|||き|||おおきく||ふた|ほん||よっ|ほん||よっ|ほん||やっ|ほん|||き||りん||りん||しげる||| 村人 たち は 死んだ 二 人 の 子ども の 事 を 思い出して 、 この 森 を 『 鳥 追い の 森 』 と 呼び 、 小さな 観音 さま を たてて やった そうです 。 むらびと|||しんだ|ふた|じん||こども||こと||おもいだして||しげる||ちょう|おい||しげる||よび|ちいさな|かんのん|||||そう です

この 森 は 太平洋 戦争 の 爆弾 で 焼けて しまい ました が 、 観音 さま は 今 でも 残って いる そうです 。 |しげる||たいへいよう|せんそう||ばくだん||やけて||||かんのん|||いま||のこって||そう です

おしまい