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Fairy Tales, 魚石

魚 石

魚 石

むかし むかし 、 長崎 の 唐人 屋敷 ( とうじ ん や しき → 江戸 時代 、 長崎 に 作ら れた 中国 人 村 ) に 近い 篭 町 ( かご まち ) に 、 伊勢 屋 ( いせや ) と いう 欲張りな 主人 が い ました 。

ある 日 、 唐人 屋敷 の アチャ さん が 中国 へ 帰る 事 に なり 、 お 世話 に なった 伊勢 屋 の 主人 へ あいさつ に 行った のです が 、 その 時 、 アチャ さん は 伊勢 屋 の 土蔵 の 石垣 の 中 から 青く 光る 石 を 見つけた のです 。 「! これ は ・・・」 青く 光る 石 を しばらく 見つめ いた アチャ さん は 、 伊勢 屋 の 主人 に 青く 光る 石 を 売って くれる ように 頼み ました 。 する と 伊勢 屋 の 主人 は 、 アチャ さん に 気軽に 言い ました 。 「 へえ 、 こんな 石 が 欲しい のです か ? 別に お 金 なんか 出さ なくて も 、 ただ で あげ ます よ 。 ちょうど 来週 、 石垣 の 建て 替え を し ます から 、 その 時 まで 待って ください ね 」 「 いいえ 。 わたし 、 今日 の 船 で 中国 へ 帰り ます 。 石垣 を 建て 替える お 金 、 わたし 全部 出し ます から 、 はやく 下さい 」 その アチャ さん の あせり 方 を 見た 主人 は 、 ふと 思い ました 。 ( もしかしたら 、 中国 で は 大変 値打ち の ある 石 に 違いない ) そこ で 主人 は 、 いかにも 思い出した ように 言い ました 。 「 ああ 、 すみません 。 その 石 は ある 長者 に 、 百 両 で お 譲り する 約束 を して い ました 」 「 わかった 。 では 、 わたし 二百 両 出す よ 」 「 二百 両 です か 。 ああ そう そう 、 長者 は 他 に も 、 オランダ から 入って きた シャボン と いう 物 も つける と 」 「 わかった 。 三百 両 出す よ 」 「 それ から 長者 は 、 カステラ と いう 物 も つける と 」 「 わかった 。 四百 両 出す よ 」 「 さらに 長者 は ・・・」 「 わかった 。 わたし 、 五百 両 出す ね 。 でも 今 は 、 そんな 大金 持って ない から 、 一 度 中国 へ 帰り 、 次に 長崎 に 来た 時 に 持って 来る ね 」 アチャ さん は 主人 に そう 言って 、 中国 へ 帰って 行き ました 。

それ を 見送った 主人 は 、 石垣 の 青い 石 を 見 ながら 大喜びです 。 「 やった 、 やった ! こんな 石ころ が 、 五百 両 に なる なんて 。 ・・・ いや 、 待てよ 。 もしかすると これ は 、 五百 両 以上 の 価値 が ある の かも しれ ない 。 それ なら 、 五百 両 で 売る の は もったいない な 。 よし 、 これ を 取り出して 、 目 利き の 人 に 見て もらおう 。 五百 両 以上 の 価値 なら 、 もっと 値 を つり 上げて やる か 」 そこ で 主人 は 職人 を 呼んで 、 石 を 取り出し ました 。 取り出した 青い 石 を よく 見る と 、 何 か 水 の ような 物 が 入って い ます 。 「 これ は 、 何 だろう ? 」 主人 は 太陽 の 光 に 透かして 中 を 見よう と し ました が 、 その 時 、 うっかり 手 を 滑ら せて 青い 石 を 落として しまい ました 。 落ちた 青い 石 は 二 つ に 割れて 、 中 から 水 と 一緒に 生きた 金魚 が 飛び出し ます 。 「 しまった 。 五百 両 の 石 を 壊して しまった ! 翌年 、 再び 長崎 に やって 来た アチャ さん は 、 すぐ に 伊勢 屋 へ やって 来 ました 。 「 五百 両 、 持って 来た ね 。 石垣 を 建て 替える お 金 も 、 わたし 出す ね 。 だ から あの 石 を 、 早く 下さい 」 「 それ が ・・・」 困った 主人 は 、 仕方なし に 割れた 石 と 死んだ 金魚 を 見せて 、 全て の 事 を 話し ました 。 する と アチャ さん は 、 ポロポロ と 涙 を こぼし ながら 言い ました 。 「 あの 石 は 、 魚 石 です 。 丁寧に 磨く と 、 中 の 金魚 が 泳いで いる の が 見え ます 。 わたし の 国 で は これ を 見る と 、 とても 長生き できる と 言わ れて い ます 。 でも 金魚 が 死んで しまって は 、 一 両 の 価値 も あり ませ ん 」 「 何と ! それ は 、 もうけ そこなった 」 話 を 聞いた 主人 も 、 くやし涙 を ポロポロ と こぼし ました 。

おしまい


魚 石 ぎょ|いし Fischstein fish stone 魚石

魚 石 ぎょ|いし

むかし むかし 、 長崎 の 唐人 屋敷 ( とうじ ん や しき → 江戸 時代 、 長崎 に 作ら れた 中国 人 村 ) に 近い 篭 町 ( かご まち ) に 、 伊勢 屋 ( いせや ) と いう 欲張りな 主人 が い ました 。 ||ながさき||からびと|やしき|||||えど|じだい|ながさき||つくら||ちゅうごく|じん|むら||ちかい|かご|まち||||いせ|や|いせ や|||よくばりな|あるじ||| Érase una vez un avaricioso propietario llamado Iseya en Kagomachi, cerca del pueblo chino de Karajin Yashiki, en Nagasaki.

ある 日 、 唐人 屋敷 の アチャ さん が 中国 へ 帰る 事 に なり 、 お 世話 に なった 伊勢 屋 の 主人 へ あいさつ に 行った のです が 、 その 時 、 アチャ さん は 伊勢 屋 の 土蔵 の 石垣 の 中 から 青く 光る 石 を 見つけた のです 。 |ひ|からびと|やしき|||||ちゅうごく||かえる|こと||||せわ|||いせ|や||あるじ||||おこなった||||じ||||いせ|や||どぞう||いしがき||なか||あおく|ひかる|いし||みつけた| One day, Mr. Atcha from Tang Man Yashiki decided to go back to China and went to Iseya to pay his respects to the owner of Iseya, who had taken care of him. Un día, el Sr. Atcha del Tang Man Yashiki decidió volver a China y fue a saludar al dueño de Iseya, que le había cuidado muy bien. 「! これ は ・・・」   青く 光る 石 を しばらく 見つめ いた アチャ さん は 、 伊勢 屋 の 主人 に 青く 光る 石 を 売って くれる ように 頼み ました 。 ||あおく|ひかる|いし|||みつめ|||||いせ|や||あるじ||あおく|ひかる|いし||うって|||たのみ| Después de contemplar la piedra azul brillante durante un rato, Atcha-san pidió al dueño del Ise-ya que le vendiera la piedra azul brillante. する と 伊勢 屋 の 主人 は 、 アチャ さん に 気軽に 言い ました 。 ||いせ|や||あるじ|||||きがるに|いい| El dueño de la tienda Iseya le dijo entonces al Sr. Atcha: "Lo siento, pero no sé qué va a hacer. 「 へえ 、 こんな 石 が 欲しい のです か ? ||いし||ほしい|| 別に お 金 なんか 出さ なくて も 、 ただ で あげ ます よ 。 べつに||きむ||ださ||||||| No tienes que pagarnos nada, te lo damos gratis. ちょうど 来週 、 石垣 の 建て 替え を し ます から 、 その 時 まで 待って ください ね 」  「 いいえ 。 |らいしゅう|いしがき||たて|かえ||||||じ||まって||| Vamos a reconstruir el muro de piedra la semana que viene, así que tendrás que esperar hasta entonces. わたし 、 今日 の 船 で 中国 へ 帰り ます 。 |きょう||せん||ちゅうごく||かえり| 石垣 を 建て 替える お 金 、 わたし 全部 出し ます から 、 はやく 下さい 」   その アチャ さん の あせり 方 を 見た 主人 は 、 ふと 思い ました 。 いしがき||たて|かえる||きむ||ぜんぶ|だし||||ください||||||かた||みた|あるじ|||おもい| Al ver la impaciencia de Atcha, su marido pensó de repente. ( もしかしたら 、 中国 で は 大変 値打ち の ある 石 に 違いない )   そこ で 主人 は 、 いかにも 思い出した ように 言い ました 。 |ちゅうごく|||たいへん|ねうち|||いし||ちがいない|||あるじ|||おもいだした||いい| (Quizá debe de ser una piedra muy valiosa en China.) Entonces mi marido dijo, como si acabara de acordarse. 「 ああ 、 すみません 。 その 石 は ある 長者 に 、 百 両 で お 譲り する 約束 を して い ました 」 「 わかった 。 |いし|||ちょうじゃ||ひゃく|りょう|||ゆずり||やくそく||||| La piedra fue prometida a cierto jefe por 100 ryo. では 、 わたし 二百 両 出す よ 」 「 二百 両 です か 。 ||にひゃく|りょう|だす||にひゃく|りょう|| ああ そう そう 、 長者 は 他 に も 、 オランダ から 入って きた シャボン と いう 物 も つける と 」 「 わかった 。 |||ちょうじゃ||た|||おらんだ||はいって|||||ぶつ|||| 三百 両 出す よ 」 「 それ から 長者 は 、 カステラ と いう 物 も つける と 」 「 わかった 。 さんびゃく|りょう|だす||||ちょうじゃ||かすてら|||ぶつ|||| 四百 両 出す よ 」 「 さらに 長者 は ・・・」 「 わかった 。 しひゃく|りょう|だす|||ちょうじゃ|| わたし 、 五百 両 出す ね 。 |ごひゃく|りょう|だす| でも 今 は 、 そんな 大金 持って ない から 、 一 度 中国 へ 帰り 、 次に 長崎 に 来た 時 に 持って 来る ね 」   アチャ さん は 主人 に そう 言って 、 中国 へ 帰って 行き ました 。 |いま|||たいきん|もって|||ひと|たび|ちゅうごく||かえり|つぎに|ながさき||きた|じ||もって|くる|||||あるじ|||いって|ちゅうごく||かえって|いき|

それ を 見送った 主人 は 、 石垣 の 青い 石 を 見 ながら 大喜びです 。 ||みおくった|あるじ||いしがき||あおい|いし||み||おおよろこびです Su amo lo despide encantado, mirando las piedras azules del muro de piedra. 「 やった 、 やった ! こんな 石ころ が 、 五百 両 に なる なんて 。 |いしころ||ごひゃく|りょう||| ・・・ いや 、 待てよ 。 |まてよ もしかすると これ は 、 五百 両 以上 の 価値 が ある の かも しれ ない 。 |||ごひゃく|りょう|いじょう||かち|||||| それ なら 、 五百 両 で 売る の は もったいない な 。 ||ごひゃく|りょう||うる|||| よし 、 これ を 取り出して 、 目 利き の 人 に 見て もらおう 。 |||とりだして|め|きき||じん||みて| Muy bien, saquemos esto y que un entendido le eche un vistazo. 五百 両 以上 の 価値 なら 、 もっと 値 を つり 上げて やる か 」   そこ で 主人 は 職人 を 呼んで 、 石 を 取り出し ました 。 ごひゃく|りょう|いじょう||かち|||あたい|||あげて|||||あるじ||しょくにん||よんで|いし||とりだし| 取り出した 青い 石 を よく 見る と 、 何 か 水 の ような 物 が 入って い ます 。 とりだした|あおい|いし|||みる||なん||すい|||ぶつ||はいって|| Si miras de cerca la piedra azul que has sacado, verás que contiene algo parecido al agua. 「 これ は 、 何 だろう ? ||なん| 」   主人 は 太陽 の 光 に 透かして 中 を 見よう と し ました が 、 その 時 、 うっかり 手 を 滑ら せて 青い 石 を 落として しまい ました 。 あるじ||たいよう||ひかり||すかして|なか||みよう||||||じ||て||すべら||あおい|いし||おとして|| 落ちた 青い 石 は 二 つ に 割れて 、 中 から 水 と 一緒に 生きた 金魚 が 飛び出し ます 。 おちた|あおい|いし||ふた|||われて|なか||すい||いっしょに|いきた|きんぎょ||とびだし| La piedra azul se parte en dos y de su interior sale un pez de colores vivo, junto con agua. 「 しまった 。 五百 両 の 石 を 壊して しまった ! ごひゃく|りょう||いし||こわして| 翌年 、 再び 長崎 に やって 来た アチャ さん は 、 すぐ に 伊勢 屋 へ やって 来 ました 。 よくねん|ふたたび|ながさき|||きた||||||いせ|や|||らい| 「 五百 両 、 持って 来た ね 。 ごひゃく|りょう|もって|きた| 石垣 を 建て 替える お 金 も 、 わたし 出す ね 。 いしがき||たて|かえる||きむ|||だす| だ から あの 石 を 、 早く 下さい 」 「 それ が ・・・」   困った 主人 は 、 仕方なし に 割れた 石 と 死んだ 金魚 を 見せて 、 全て の 事 を 話し ました 。 |||いし||はやく|ください|||こまった|あるじ||しかた なし||われた|いし||しんだ|きんぎょ||みせて|すべて||こと||はなし| する と アチャ さん は 、 ポロポロ と 涙 を こぼし ながら 言い ました 。 |||||ぽろぽろ||なみだ||||いい| Atcha rompió a llorar y dijo: "Lo siento, lo siento, lo siento. 「 あの 石 は 、 魚 石 です 。 |いし||ぎょ|いし| 丁寧に 磨く と 、 中 の 金魚 が 泳いで いる の が 見え ます 。 ていねいに|みがく||なか||きんぎょ||およいで||||みえ| Sácale brillo con cuidado y podrás ver a los peces de colores nadando en su interior. わたし の 国 で は これ を 見る と 、 とても 長生き できる と 言わ れて い ます 。 ||くに|||||みる|||ながいき|||いわ||| En mi país, se dice que ver esto te ayudará a vivir una vida muy larga. でも 金魚 が 死んで しまって は 、 一 両 の 価値 も あり ませ ん 」 「 何と ! |きんぎょ||しんで|||ひと|りょう||かち|||||なんと But if the goldfish dies, it won't be worth a penny! Pero si el pez se muere, no valdrá nada. それ は 、 もうけ そこなった 」   話 を 聞いた 主人 も 、 くやし涙 を ポロポロ と こぼし ました 。 ||||はなし||きいた|あるじ||くやしなみだ||ぽろぽろ||| Hearing this story, even my husband burst into tears. Cuando mi marido escuchó la historia, también se echó a llorar.

おしまい