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江戸小話, ひとりかご

ひとり かご

ひとり かご

むかし むかし 、 江戸 の はずれ に 、 とても けちな だんな が い ました 。 もらう の は ゴミ でも もらう のに 、 出す の は 舌 を 出す の も 嫌がり ます 。 ある 日 の 事 、 麹町 ( こうじ まち → 東京 の 千代田 区 ) の 大 だんな に 急ぎ の 用 が 出来 ました 。 ( さーて 、 弱った ぞ 。 は よう 、 いかに ゃな らん が 、 かご屋 の かご で は 高く つく 。 と いう て 、 歩いて も いか れ ん し 。 うん ? ・・・ おお 、 そう そう 。 あの 力 自慢 の 権 助 ( ご ん すけ ) に かつが せて 、 家 の かご で 行く と しよう ) そこ で さっそく 、 下 男 ( げ な ん → お 手伝い の 人 ) の 権 助 を 呼んで 言い ました 。 「 お前 は 飯 も よう 食う が 、 それ 以上 に 力 も ある な 」 「 へえ 、 だんな さま 。 米 なら 五 俵 ぐらい は 、 わけなく かつげ ま すわ い 」 「 よし 。 それ ならわし 一 人 かつぐ くらい は 、 わけなかろう 」 「 そりゃ あ 、 もう 、 朝飯前 の こって 」 「 そう じゃ ろう 、 そう じゃ ろう 。 では わし を のせて 、 麹町 の 大 だんな の ところ まで 走って くれ 」 「 へえ 。 して 、 相棒 は ? 」 「 そんな 者 は 、 おら ん 。 大 だんな の ところ まで 、 ちゃんと ついたら 、 お前 に は かご 賃 を やる 。 もちろん 、 一 人 分 だ が 。 そして 、 もし 途中 で かご を 下 に おろしたら 、 びた一文 やら ん ぞ 」 「 下 に おいて は 、 なり ませ ん か ? 」 「 なら ん 。 では 権 助 、 まいろう 」 下 男 の 権 助 は かご に だんな を のせて 、 ひと り で エーホイ 、 エーホイ と かついで 行き ました 。 ゆられる かご に のり ながら 、 だんな は こう 思い ました 。 ( いくら 力 自慢 の 権 助 でも 、 麹町 まで ひと休み も せ ず に 行く こと は でき まい 。 そう すりゃ あ 、 今日 の かご 賃 は ただ と いう もん じゃ 。 ウッシシシシ 、 こりゃ 、 もうけた )

さて 、 かご は 元々 二 人 で かつぐ 物 です 。 権 助 が いくら 力 自慢 でも 、 一 人 で かつぐ の は なかなか に 大変でした 。 権 助 が かご の 様子 を うかがう と 、 だんな は いつの間に やら 、 グーグー と 居眠り を はじめて い ます 。 ( 人 の 苦労 も 知ら ん と 、 いまいましい 。 それにしても 、 どこ ぞ に 、 うまい 休み 場所 は ない もの か ) その 時 、 ちょうど いい 具合 に 橋 が あり ました 。 「 ありがたい 。 ここ なら 下 に おろした こと に は なら んだろう 」 権 助 は 、 橋 の 手すり に かご を のせ ました 。 「 や ー れ 、 これ で ひと休み 出来る わ い 。 どれ 」 権 助 は 片手 で かご の かじ 棒 を 押さえ ながら もう 片手 で 腰 の たばこ 入れ を 取って 、 プカーリ 、 プカリ と 一 ぷく つけて は ポン と 、 手すり に 吸いがら を 叩いて 落とし ました 。 する と その 度 に 、 かご が グラグラ と ゆれ ます 。 それ に 気づいた だんな が 、 目 を 覚まし ました 。 ( はて な 。 かご が 走って おら ん ぞ 。 えー い 、 急ぎ の 用 と いう に ) だんな は すだれ を 開けて 、 外 を のぞき ました 。 する と びっくり 、 かご の 下 で は 川 の 水 が ごうご う と 音 を たてて 流れて い ます 。 「 ああ 、 だんな 。 動いちゃ い ませ ん ぜ 。 この 手すり は くさ っと る で 、 危ない です よ 」 泳げ ない だんな は 、 全身 を ブルブル と 震わせ ながら 言い ました 。 「 こら 、 かご を 下 へ 置け ! 麹町 まで いかん でも 、 ここ で か ご 賃 を やる から ! 」 する と 権 助 は 、 仕返し と ばかり に ゆっくり たばこ を 吸い ながら 言い ました 。 「 なあ に 、 だんな さま 。 権 助 は 、 そんな 横着 は いたし ませ ん わ い 」

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )


ひとり かご

ひとり かご

むかし むかし 、 江戸 の はずれ に 、 とても けちな だんな が い ました 。 ||えど||||||||| もらう の は ゴミ でも もらう のに 、 出す の は 舌 を 出す の も 嫌がり ます 。 |||ごみ||||だす|||した||だす|||いやがり| ある 日 の 事 、 麹町 ( こうじ まち → 東京 の 千代田 区 ) の 大 だんな に 急ぎ の 用 が 出来 ました 。 |ひ||こと|こうじまち|||とうきょう||ちよだ|く||だい|||いそぎ||よう||でき| ( さーて 、 弱った ぞ 。 |よわった| は よう 、 いかに ゃな らん が 、 かご屋 の かご で は 高く つく 。 ||||||かごや|||||たかく| と いう て 、 歩いて も いか れ ん し 。 |||あるいて||||| うん ? ・・・ おお 、 そう そう 。 あの 力 自慢 の 権 助 ( ご ん すけ ) に かつが せて 、 家 の かご で 行く と しよう )   そこ で さっそく 、 下 男 ( げ な ん → お 手伝い の 人 ) の 権 助 を 呼んで 言い ました 。 |ちから|じまん||けん|じょ|||||かつ が||いえ||||いく||||||した|おとこ|||||てつだい||じん||けん|じょ||よんで|いい| 「 お前 は 飯 も よう 食う が 、 それ 以上 に 力 も ある な 」 「 へえ 、 だんな さま 。 おまえ||めし|||くう|||いじょう||ちから|||||| 米 なら 五 俵 ぐらい は 、 わけなく かつげ ま すわ い 」 「 よし 。 べい||いつ|たわら|||||||| それ ならわし 一 人 かつぐ くらい は 、 わけなかろう 」 「 そりゃ あ 、 もう 、 朝飯前 の こって 」 「 そう じゃ ろう 、 そう じゃ ろう 。 ||ひと|じん||||||||あさめしまえ|||||||| では わし を のせて 、 麹町 の 大 だんな の ところ まで 走って くれ 」 「 へえ 。 ||||こうじまち||だい|||||はしって|| して 、 相棒 は ? |あいぼう| 」 「 そんな 者 は 、 おら ん 。 |もの||| 大 だんな の ところ まで 、 ちゃんと ついたら 、 お前 に は かご 賃 を やる 。 だい|||||||おまえ||||ちん|| もちろん 、 一 人 分 だ が 。 |ひと|じん|ぶん|| そして 、 もし 途中 で かご を 下 に おろしたら 、 びた一文 やら ん ぞ 」 「 下 に おいて は 、 なり ませ ん か ? ||とちゅう||||した|||びたいちもん||||した||||||| 」 「 なら ん 。 では 権 助 、 まいろう 」   下 男 の 権 助 は かご に だんな を のせて 、 ひと り で エーホイ 、 エーホイ と かついで 行き ました 。 |けん|じょ||した|おとこ||けん|じょ||||||||||||||いき| ゆられる かご に のり ながら 、 だんな は こう 思い ました 。 ||||||||おもい| ( いくら 力 自慢 の 権 助 でも 、 麹町 まで ひと休み も せ ず に 行く こと は でき まい 。 |ちから|じまん||けん|じょ||こうじまち||ひとやすみ|||||いく|||| そう すりゃ あ 、 今日 の かご 賃 は ただ と いう もん じゃ 。 |||きょう|||ちん|||||| ウッシシシシ 、 こりゃ 、 もうけた )

さて 、 かご は 元々 二 人 で かつぐ 物 です 。 |||もともと|ふた|じん|||ぶつ| 権 助 が いくら 力 自慢 でも 、 一 人 で かつぐ の は なかなか に 大変でした 。 けん|じょ|||ちから|じまん||ひと|じん|||||||たいへんでした 権 助 が かご の 様子 を うかがう と 、 だんな は いつの間に やら 、 グーグー と 居眠り を はじめて い ます 。 けん|じょ||||ようす||||||いつのまに||||いねむり|||| ( 人 の 苦労 も 知ら ん と 、 いまいましい 。 じん||くろう||しら||| それにしても 、 どこ ぞ に 、 うまい 休み 場所 は ない もの か )   その 時 、 ちょうど いい 具合 に 橋 が あり ました 。 |||||やすみ|ばしょ||||||じ|||ぐあい||きょう||| 「 ありがたい 。 ここ なら 下 に おろした こと に は なら んだろう 」   権 助 は 、 橋 の 手すり に かご を のせ ました 。 ||した||||||||けん|じょ||きょう||てすり||||| 「 や ー れ 、 これ で ひと休み 出来る わ い 。 |-||||ひとやすみ|できる|| どれ 」   権 助 は 片手 で かご の かじ 棒 を 押さえ ながら もう 片手 で 腰 の たばこ 入れ を 取って 、 プカーリ 、 プカリ と 一 ぷく つけて は ポン と 、 手すり に 吸いがら を 叩いて 落とし ました 。 |けん|じょ||かたて|||||ぼう||おさえ|||かたて||こし|||いれ||とって||||ひと||||||てすり||すいがら||たたいて|おとし| する と その 度 に 、 かご が グラグラ と ゆれ ます 。 |||たび||||ぐらぐら||| それ に 気づいた だんな が 、 目 を 覚まし ました 。 ||きづいた|||め||さまし| ( はて な 。 かご が 走って おら ん ぞ 。 ||はしって||| えー い 、 急ぎ の 用 と いう に )   だんな は すだれ を 開けて 、 外 を のぞき ました 。 ||いそぎ||よう||||||||あけて|がい||| する と びっくり 、 かご の 下 で は 川 の 水 が ごうご う と 音 を たてて 流れて い ます 。 |||||した|||かわ||すい|||||おと|||ながれて|| 「 ああ 、 だんな 。 動いちゃ い ませ ん ぜ 。 うごいちゃ|||| この 手すり は くさ っと る で 、 危ない です よ 」   泳げ ない だんな は 、 全身 を ブルブル と 震わせ ながら 言い ました 。 |てすり||||||あぶない|||およげ||||ぜんしん||ぶるぶる||ふるわせ||いい| 「 こら 、 かご を 下 へ 置け ! |||した||おけ 麹町 まで いかん でも 、 ここ で か ご 賃 を やる から ! こうじまち||||||||ちん||| 」   する と 権 助 は 、 仕返し と ばかり に ゆっくり たばこ を 吸い ながら 言い ました 。 ||けん|じょ||しかえし|||||||すい||いい| 「 なあ に 、 だんな さま 。 権 助 は 、 そんな 横着 は いたし ませ ん わ い 」 けん|じょ|||おうちゃく||||||

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )