盾 の 勇者 の 成り 上がり 02 Chapter 06
六 話 翼 を 持つ 者
森 の 散策 を 終え 、 乗り物酔い で ぐったり して いる ラフタリア を 置いて 先 に 村 で 荷物 を 降ろして 戻って くる と 、 ラフタリア が 元気に なって いた 。
「 大丈夫だった か ? 「 はい 」
「 は 、 はやい で すね ……」
木 こり は 俺 達 が 戻って くる の が 早くて 驚いて いる 。
「 コイツ は 健脚な んで な 」
フィーロ を 撫で ながら 木 こり に 答える 。
「 グア ! 元気に 答える フィーロ 。 うん 。 お前 は 速い な 。
「 じゃあ 本格 的に 森 を 探索 する か 」
「 ええ 」
「 帰り は ゆっくり 走れよ 」
「 グア ! ピキ ……。
なんだ ? この 音 。 成長 は 終わった はずだ よ な 。 変な 音 が フィーロ から 聞こえて 来る 。 おかしな 病気 じゃ ない と 良い んだ けど 。
その 日 の 収穫 は なかなか の もの だった 。 ラフタリア の 活躍 も 然ること ながら 、 フィーロ の 動 きや 攻撃 力 は 目 を 見張る もの が ある 。 正直 速 さ と 一撃 の 強 さ で は 、 ラフタリア に 勝る かも しれ ない 。
ただ 、 やっぱり ラフタリア は 前 に 出 た がる 傾向 が 目立つ 。
俺 Lv 26
ラフタリア Lv 29
フィーロ Lv 19
ホワイトウサピルシールド の 条件 が 解放 さ れました 。 ダークヤマアラシールド の 条件 が 解放 さ れました 。 ウサピルボーンシールド の 条件 が 解放 さ れました 。 ヤマアラボーンシールド の 条件 が 解放 さ れました 。 ホワイトウサピルシールド
能力 未 解放 …… 装備 ボーナス 、 防御 力 2
ダークヤマアラシールド
能力 未 解放 …… 装備 ボーナス 、 敏捷 2
ウサピルボーンシールド
能力 未 解放 …… 装備 ボーナス 、 スタミナ 上昇 ( 小 )
ヤマアラボーンシールド
能力 未 解放 …… 装備 ボーナス 、 SP 上昇 ( 小 )
見事に ステータスアップ 系 ばかり だ 。
もっと 効率 が 良ければ 性能 の 高い 盾 を 装備 する こと が できる のに 、 俺 は 金 も 経験 値 も 効率 良く 稼げる 場所 を 知ら ない 。 だから 、 地道に 能力 を 解放 して 盾 全体 の 底上げ を する しか ない 。
解放 した 能力 の 合計 は どれ だけ いった か …… 数 が 多 すぎて わから ない 。 そもそも オレンジスモールシールド など の 下級 装備 は 解放 して から 一 度 も 使って いない 。 精 々 砥石 し の 盾 など の 専用 効果 が ある 盾 を 必要な 時 に 使って いる くらい だ 。
まあ 少なくとも 今日 見つけた 四 つ は 解放 したら もう 二度と 使わ ない 。
日 が 落ち だした 頃 、 フィーロ を ゆっくり と 歩か せて 俺 達 は リユート 村 へ 戻って きた 。
ラフタリア に は 乗り物 に 慣れる 訓練 が 必要だ 。 途中 何度 か 気持ち が 悪く なった らしい の で 休み 休み 進む 。 結果 、 日 が 殆ど 落ち 切って から の 到着 と なった 。
「 もう しわけ ございませ ん 」
「 気 に する なって 、 徐々に 慣れて いけば 良い さ 」
自分 でも 不自然な ほど に 俺 は 酔う と いう こと が ない 。 だけど 、 だからといって 他人 に 根性 が 無い と か 言う 気 は なかった 。 乗り物酔い と いう の は 慣れれば 大丈夫に なる と 聞いた こと が ある ので 、 早く ラフタリア に は 荷車 に 慣れて もらいたい 。 まあ 、 何 か ある と 爆走 する フィーロ が 悪い んだ けど 。
「 グア ! この 時 、 異変 は 既に 始まって いた 。 正確に は 遥か 前 から だった のだろう が 、 俺 達 は まだ 気付か なかった 。 いや 、 気付いて いた の に 無視 を して いた のだ 。
翌朝 。 俺 は 異変 に 気 が 付き 、 ラフタリア も 俺 と 同様に 考え込む 。
「 グアア ! 馬 小屋 に 顔 を 出した 時 に は 既に 変化 は 極 まって いた 。
フィーロ が …… どう 見て も 、 フィロリアル の 平均 から 逸脱 して 大きく なって いた のだ 。
フィロリアル の 平均 身長 は 、 二 メートル 三〇 センチ 前後 だ 。 これ は ダチョウ の 身長 と 殆ど 同じ 。 ただ 、 フィロリアル の 方 が 骨格 が ガッシリ と して いて 、 顔 や 首 が 大きい 。
だが …… フィーロ の 身長 は 二 メートル 八〇 センチ に も 達して いた 。
もはや 立ち上がる と 馬 小屋 の 天井 に 頭 が 届く 程 だ 。
「 俺 は 本当に フィロリアル の 卵 を 買った の か ? 別の 何 か を 買った ので は ない か と 疑い たく なって 来た ぞ 」
「 ええ …… 私 も そう 思います 」 「 グア ! パクっと フィーロ が 何 か を 飲み込んで いた 。 よく 見たら 、 馬 小屋 に 干して いた キメラ の 肉 が 無い 。 牛 二 頭 分 くらい あった はずの 肉 が 、 跡形 も なく 消えて いた 。
今 食べた の は 最後 の 一 切れ か ?
「 食欲 が なくなった の か と 思って いた が ……」
「 食べて た んです ね ー ! 「 グアー ! 「 ハハハハハハハハ 」
「 笑い事 じゃ ねえ よ ! さて 、 どうした もの か …… とりあえず 、 外見 に 関して 特別 大きい 奴 な んです と 誤 魔 化 す か 。
ピキ ……。
相変わらず 成長 音 が 鳴り響いて いる 。
「 まだ 音 が して る ぞ ! 「 あの 、 もし かして ナオフミ 様 の 盾 の 力 で こんなに 成長 を して いる の では ありません か ? 「 可能 性 は 十分 ある な 。 魔物 使い の 盾 Ⅲ に も 成長 補正 ( 中 ) と いう ボーナス が あった 」
「 な 、 ナオフミ 様 …… 確か 奴隷 の 盾 も あります よ ね ? 「 ああ 、 奴隷 使い の 盾 と いう 似た ボーナス の 付いて いる 盾 が ある 」
「…… その 、 力 は 私 に ? 「 ああ 、 とっくに 解放 済み だ 。 ラフタリア も 少し は 影響 を 受けて いる 」
「 いや ああ ああ ああ ! ラフタリア が 叫び ながら 馬 小屋 から 走り出した 。
「 ら 、 ラフタリア !?」
「 最近 、 体 が 軽い なぁって 思って た んです よ 。 ナオフミ 様 の 所 為 だった んです ね ! 「 お 、 落ち着け ! 「 わ 、 私 も フィーロ みたいに 大きく なっちゃ う んです か !? 怖い です ! 「 お前 から は 成長 音 が し ない だろう が ! 「 そ 、 そう いえば そう でした 。 良かった 、 ほんとに 良かった ! …… 予断 を 許さ ない 状況 である の は 変わら ない けど な 。
ムキムキマッチョ に 育つ ラフタリア を 想像 し ながら フィーロ へ 視線 を 向ける 。
「 なんか 失礼な 事 、 考えてません か ? 「…… どうした もの か 」
ラフタリア の 疑惑 を 無視 して 話 を 続行 する 。
「 一 度 奴隷 商 さん の 所 に 行って 確認 を 取る の が よろしい か と 」
「 そう だ な 」
しょうがない 。 予定 外 で 城下町 に 戻る の は 嫌な のだ が …… 行く しか ない だろう 。
「 グア ! 荷車 を 引く フィーロ と 乗り物酔い と 戦う ラフタリア を 心配 し つつ 、 俺 達 は リユート 村 を 後 に した 。 途中 フィーロ が 飢え を 訴える ので 、 エサ を やり 、 魔物 と 戦い ながら 、 城下町 に 着いた の は 昼 過ぎ だった 。
「 おい ……」
気 が 付く と フィーロ の 外見 が また も 変わって いる 。 足 と 首 が 徐々に 短く なり 、 短 足 胴長 の ペンギン の ような 、 フクロウ みたいな 体形 に 変化 して いた 。
それ でも 荷車 を 引く の が 好きな の か 楽し そうに 引いて いる 。
しかし 、 引き 方 に 大きな 変化 が 生まれて いた 。 前 は 綱 で 荷車 と 胴 を 結んで 引いて いた 。 今 は 手 の ような 翼 で 器用に 荷車 の 取っ手 を 掴 つかんで 引いて いる 。
「 クエ ! 鳴き 方 まで 変わり 、 色 も 真っ白に なって いる 。
「 ん ? 徐に 荷車 から 降りて フィーロ の 身長 を 目 視 で 測る 。
縮んだ ?
二 メートル 三〇 センチ くらい に まで 身長 が 縮んで いる 。 だけど 横幅 が 広がって いて 前 より も 威圧 感 が 出て いる かも しれ ない 。 悪く 言えば 遊園地 の マスコット みたいで 不自然に 太って いる 。
「 クエ ? 「 いや 、 なんでもない 」
フィーロ は 自身 の 変化 に 気付いて いる の か ? もはや 何の 生物 か わから ない ぞ 。
「 いや ぁ …… どうした の か と 驚き の 言葉 しか ありません 。 ハイ 」
奴隷 商 の 奴 、 冷や汗 を 何度 も 拭 いながら フィーロ を マジマジ と 観察 して いる 。
「 クエ ? 縦 に も 横 に も 太く なった フィーロ 。 人 懐っこい ダチョウ みたいな 姿 は どこ へ やら 。
「 で 、 正直に 聞きたい 。 こいつ は お前 の 所 で 買った 卵 が 孵った 魔物 な んだ が 、 俺 に 何の 卵 を 渡した んだ ? 俺 が 詰め寄り ながら 指 を 鳴らす と 、 フィーロ は 今にも 襲い掛かろう と 威嚇 する 。
「 クエエエエエエ ! 奴隷 商 の 奴 、 なんか 焦って 何度 も 書類 らしき もの を 確認 して いる 。
「 お 、 おかしい です ね 。 私 共 が 提供 した くじ の 内訳 に は 、 勇者 様 が 購入 した 卵 は 、 確かに フィロリアル だ と 記載 されて おります が 」 「 これ が ? 「 クエエエ ! 俺 が 結構 大きな エサ を 投げる と フィーロ は 器用に パクッ と 口 で 受け取って 食べる 。
「 えーっと ……」 そう いえば 、 さっき から フィーロ の 方 から 成長 音 が し なく なった ような 気 が する 。 やっと 身体 的に 大人 に なった と いう こと な の か ?
「 まだ 数 日 しか 経って いない のに ここ まで 育つ と は 、 さすが 勇者 様 。 私 、 脱帽 です 」
「 世辞 で ごまかす な 。 さっさと 何の 卵 を 渡した か 教えろ 」
「 その …… 最初 から この 魔物 は この 姿 で ? 「 いや 」
俺 は 奴隷 商 に フィーロ が 生まれて から 今 まで の 成長 の しかた を 話した 。
「 では 途中 まで は ちゃんと フィロリアル だった のです ね ? 「 ああ 、 今 は 何の 魔物 か わから なく なって いる が な 」
「 クエ ? 首 を 傾げ ながら 、 なんとなく 可愛らしい ポーズ を 決める フィーロ に 若干 の 苛立ち を 覚える 。
誰 の 所 為 で こんな 事 を し なくちゃ いけない と 思って いる んだ 。
「 クエエエ 」
スリスリ と 俺 に 全身 を 使って 擦り寄る 。 かなり 大きな 翼 で 抱きつか れる と フィーロ 自身 の 体温 が 鳥 故 に 高い から か 正直 熱い 。
「 む ……」
ラフタリア が 眉 を 寄せて 俺 の 手 を とって 握る 。
「 クエ ? なんか ラフタリア と フィーロ が 見つめ 合って る 。
「 どうした ん だ 、 お前 等 ? 「 いえ 、 なにも 」
「 クエクエ 」
双方 首 を 振って 意思 表示 を して いる 。 どうした と いう んだ ?
「 で ? どう な んだ ? 「 えっと …… その 」 奴隷 商 の 奴 、 困って る 困って る 。 魔物 を 扱って いる のに その 魔物 が どんな 育ち 方 を する の か 知ら ない の か ?
「 とりあえず 、 調べます ので 預から せて もらって も よろしい です か ? ハイ 」
「 ああ 、 間違っても バラ さ ない と わから ない と か 言って 殺す な よ 」
「 クエ !?」
「 わかって います と も 。 少々 お 時間 が 必要な だけ です 。 ハイ 」
「…… まあ 、 良い だろう 。 任せた 。 何 か あったら 慰謝料 を 要求 する だけ だ 」
「 クエエエ !?」
俺 の 返答 に フィーロ が 異議 を 申し立てる ように 羽ばたく 。 しかし 奴隷 商 の 部下 が フィーロ に 首輪 を 付けて 檻 に 連行 した 。 俺 が 近く に いる こと も あって か 、 意外に も 素直に 檻 に 入る 。
「 じゃあ 明日 に は 迎え に 来る 。 それ まで に 答え を 出して おけ よ 」
念のため に クギ を 刺し 、 俺 は ラフタリア を 連れて テント を 出る 。
「 クエエエエエエエ ! フィーロ の でっかい 声 が テント を 出て も 聞こえて 来た 。 その 日 の 晩 …… 宿 に 泊まって いる と 、 急に 宿 の 店主 に 呼ば れた 。
「 あの 勇者 様 」
「 ん ? どうした ? 「 お 客 様 が お 見え に なって います 」 誰 だ ? と 思って 店主 が 客 を 待た せて いる と いう カウンター に 顔 を 出す 。 すると そこ に は 見覚え の ない 男 が いた 。
「 何の 用 だ ? 「 あの 、 私 …… 魔物 商 の 使い の 者 です 」
魔物 商 …… ああ 、 奴隷 商 か 。 確かに 表立って 自己 紹介 でき ない もん な 。
「 どうした ん だ ? 「 あの 、 お 預かり して いる 魔物 を お返し し たく 主 様 に 仰せつかって きました 」 「 は ぁ !?」 あれ から 数 時間 しか 経って いない と いう のに …… どうした と いう のだ 。 ラフタリア を 連れて 奴隷 商 の テント に 行く と 、 まだ フィーロ の 鳴き声 が 木霊 して いた 。
「 いやはや 、 夜分 遅く 申し訳 ありません 。 ハイ 」
少々 くたびれた 様子 の 奴隷 商 が 俺 達 を 出迎える 。
「 どう した んだ よ 。 明日 まで 預ける 約束 だった だ ろ ? 「 その つもり だった のです が 、 勇者 様 の 魔物 が 些 か 困り 物 でして 」
「 クエエエエエエ ! バタバタ と 檻 で 暴れる フィーロ は 俺 達 を 見つける と やっと 大人 しく なった 。
「 鉄 の 檻 を 三 つ ほど 破壊 し 、 取り押さえよう と した 部下 五 名 を 治療 院 送り に して 、 使役 して いた 魔物 三 匹 が 重傷 を 負いました 。 ハイ 」
「 弁償 は し ない ぞ 」
「 こんな 時 でも 金銭 を 第 一 に 考える 勇者 様 に 脱帽 です 。 ハイ 」
「 で 、 どう な んだ ? わかった の か ? 「 いえ …… ただ 、 フィロリアル の 主 と 思える 個体 が いる と いう 目撃 報告 を 見つけました 」 「 主 ? 「 正確に は フィロリアル の 群れ に は それ を 取り仕切る 主 が いる と の 話 です 。 冒険 者 の 中 でも 有名な 話 で あり まして 」
奴隷 商 の 奴 、 どうも 知る 限り の 情報 網 で 何 か 引っかから ない か を 調べて いた ようだ 。
野生 の フィロリアル に は 大きな 群れ が 存在 し 、 それ を 取り仕切る 主 が いる らしい 。
滅多に 人前 に 現れ ない フィロリアル の 主であり 王 が …… フィーロ な ので は ない か と いう 話 だ 。
「 ふ ー ん 」
伝承って 奴 か 。 魔物 紋 を 解除 して 、 盾 に 吸わ せれば 本当な の か わかる かも しれ ない けど 、 それって フィーロ を 殺す こと に なる んだ よ な 。 羽根 と か 血 と か 吸わ せて も 俺 の 魔物 だ から か 魔物 使い の 盾 しか 出て こ ない し 、 何 か 点灯 して も 不明な んだ よ なぁ ……。
必要 Lv と ツリー が 足りない 。
「…… クエ ? 仲間 の 魔物って ステータス 魔法 で 種族 名 が 出 ない んだ よ なぁ …… 敵対 関係 の 相手 なら わかる んだ けど 。 「 で 、 それ は 何と 呼ばれて いる んだ ? 「 フィロリアル ・ キング 、 もしくは クイーン と 呼ばれて おります 」 「 フィーロ は 雌 だ から クイーン か 」 「 で 、 です ね …… ここ まで 勇者 様 に 懐いて います し 、 この 状態 で 売買 に 出さ れる と 私 、 困って しまいます 」 「…… さま 」 「 ん ? いま 、 聞き覚え の ない 声 が 聞こえ なかった か ? 「 はて ? 私 も そのような 声 が 聞こえた 気 が 」
「 あ 、 あの ……」
ラフタリア が 口元 を 押さえ ながら フィーロ の いる 檻 を 指差す 。 同様に 奴隷 商 の 部下 も 絶句 した ように 指差して いた 。 俺 と 奴隷 商 は どうした ん だ と 首 を 傾げ つつ 振り返った 。
「 ご しゅじん さま ー 」
淡い 光 を 残滓 に 白い 翼 を 持った 裸 の 少女 が 、 檻 の 間 から 俺 に 向けて 手 を 伸ばして いた 。