盾 の 勇者 の 成り 上がり 02 Chapter 05 (1)
五 話 蹴り 逃げ
翌朝 、 今日 は ラフタリア も 早く に 起き 出した ので 一緒に 馬 小屋 に 顔 を 出す 。
「 グア ! 俺 達 が 来る と フィーロ は 嬉し そうに 声 を 出して 駆け寄って きた 。
「 もう 、 体 は 大人 な の か ? 心なしか …… 昨日 より 頭 一 個 分 大きく なって いる 。
城下町 や 街道 で 見る フィロリアル の 外見 と 殆ど 変わら ない 姿 だ 。
色 は 白 …… で 、 少し 桜 色 が 混じって いる 。 綺麗な 色合い だ 。
「 腹 は 減って ない の か ? 「 グア ? フィーロ は 首 を 傾げて 鳴く 。 うん 。 もう 成長 期 は 抜けた みたいだ な 。
ビキ ……。
相変わらず 変な 音 が 響いて いる 。 急 成長 した 所 為 で まだ 体 が 追い付いて いない の かも 。 その後 、 朝食 を 終えた 俺 達 は これ から どう する か を 相談 した 。
村 は 現在 復興 作業 で 大忙しだ 。
「 グア ……」
村 の 中 を 通って いく 木製 の 荷車 を フィーロ は 羨ま し そうに 見つめて いた 。
「 やっぱ アレ を 引きたい の か ? 「 です か ねぇ 」
「 どうした の です か 、 勇者 様 ? 俺 が 荷車 を 指差して ラフタリア と 雑談 を して いる と 村 の 男 が 聞いて くる 。
「 ああ 、 俺 の フィロリアル が 荷車 を 見て いた から 、 引きたい の かって 話 を して た んだ 」 「 まあ …… フィロリアル は そういう 習性 が あります から ね 」 納得 した ように 男 は 頷き 、 俺 の フィロリアル に 目 を 向ける 。 「 今 この 村 の 建物 は 修復 中 で 人手 が 足りない のです よ 。 勇者 様 、 なんなら 荷車 を 一 つ 提供 する の を 条件 に 手伝って くれません か ? 「 む ……」
悪い 話 じゃ ない 。 せっかく そういう 魔物 が 手 に 入った のだ から 利用 し ない 手 は ない 。 上手く いけば 移動 中 に 別の 作業 が できる ように なる 。
「 何 を すれば 良い んだ ? 「 近く の 森 で 足りなく なった 材木 を 切って います ので 、 村 に 持ってきて 欲しい のです よ 」 「 森 か ……」 そう いえば あの 森 に は 行って なかった 。 「 帰り が 遅く なる が 良い か ? 「 ええ 」
なんて 話 を して いる と 、 村 の 外 から 見覚え の ある 奴 が こっち に 向かって 騎竜 が 引く 馬車 に 乗って 走って きた 。
くさり かた びら を 着込んだ 銀色 の 胸 当て 、 そして 目立つ 槍 。
そう 、 元康 と ビッチ が 馬車 から 降りて 来た 。
「 お ー い ! ここ の 村人 達 ー 集まれ ー ! そして 復興 中 の 村 の 真ん中 で 大々的に 人 を 集め 出した 。 そして ビッチ が 代表 して 羊 皮 紙 を 広げて 大々的に 宣言 する 。
「 国民 の 皆さま 。 この度 、 波 で の 功績 を 称え 、 槍 の 勇者 である モトヤス ・ キタムラ 様 が 王 から この 地 の 領主 に 任命 さ れた こと を ここ に 伝えます 」 は ぁ ? 領主って 元康 が ? 俺 の 疑問 を 余 所 に 元康 は したり顔 で 言った 。
「 と いう わけで ここ の 新たな 領主 に なった 槍 の 勇者 である 北村 元 も 康 だ 。 村 の 復興 を 頼ま れた ! 今後 と も よろしく な ! まずは 財源 確保 を して から 資材 を 購入 する んだ ! 「「「 は !?」」」
村人 の 殆ど が 眉 を 寄せて 困惑 の 表情 を 浮かべた 。
そりゃ あ そうだ 。 波 で の 活躍 を 称えって 言われて も 、 村 に 被害 が 出て いる 時 に 何も し なかった 槍 の 勇者 が 勝手に ここ の 領主 に なった なんて 話 、 受け入れられる はず も ない 。 と いう か 功績 で 領主 か よ 。 どん だけ 優遇 されて んだ 。 「 領主 は 私 である はずです が ? この 村 の 代表 を して いる 奴 が 手 を 上げて 質問 して いる 。 当然だ な 。 いきなり そんな 事 を 言われて も 『 はい そうです か 』 なんて 納得 できる はず も ない 。 いや 、 国 の 決定 なら 納得 する しか ない だろう が 、 それ でも 寝耳 に 水 だ ろ 。
「 な んです か ? 村人 風情 が 王 の 決定 に 異 を 唱える の ? 「 そう 言う わけ では ありません が 突然の 物言い 、 それ に ──」 「 お 黙り なさい ! ビッチ の 奴 は 相変わらず 偉 そうだ な 。 本当 殴り 飛ばして やりたい 。 と 言う か 、 この 村 は 元康 の 物 に なって しまう ? く …… また 移動 し ない と いけない の か よ 。 ここ は 、 宿 代 を オマケ して くれる から しばらく 拠点 に し たかった のに 。
「 なんだ ? なんで 尚文 が ここ に 居る んだ ? 元康 が 俺 を 見つけて 話しかけて くる 。
「 ここ を 拠点 に して んだ よ 」
「 あら ? まだ こんな 所 に いら した の ? さすが は 盾 、 随分 と 遅れて らっしゃる の ね 。 でも これ から この 村 は モトヤス 様 が 統治 なさる の よ 。 犯罪 者 は さっさと 出て 行き なさい 」
う ぜ ぇ !
実質 ビッチ が 支配 する ような 状況 だ ろ ? 考えられる の は ……。 「 まずは この 村 の 出入り に 税 を 掛けます 。 そう しなければ 復興 は 遠く なります から ね 。 税 は 入る のに 銀貨 五〇 枚 、 出る のに 銀貨 五〇 枚 。 合計 金貨 一 枚 に しましょう 」 「 そんな ! そんな 事 を したら 生きて いけません ! 「 そこ まで の 大金 か ? 元康 の 奴 、 金銭 感覚 が 欠如 して や がる 。
金貨 一 枚って …… 相当な 金 だ 。 少なくとも この 村 で 大人 一 人 が 一 日 を 慎ま しく 生活 する と して 銅貨 二〇 枚 も あれば 十分だ 。 宿 を 取る と したら 銀貨 一 枚 で 食事 が 付く 。
その 一〇〇 日 分 だ ぞ 。 正直 、 明日 食う の も 厳しく なる くらい 重い 税率 だ 。
「 な んです か ? 私 達 の 話 が 受け入れられ ない と でも ? 「 そりゃ あ そうだ ろ 」
俺 が 異 を 唱える と ビッチ が 俺 を 睨みつける 。
「 いきなり 村 に やってきて ここ の 領主 だ 。 税金 を 課すって …… よく 考えろ 」 「 そう いえば 、 そう だ よ な 。 マイン 、 村 の 人 が 生活 できる 程度 で いい んじゃ ない か ? 元康 が 頷いて ビッチ に 尋ねる 。
すると ビッチ の 奴 が 一瞬 だけ 鬼 の 形相 で 俺 を 睨んだ 後 、 元康 に 微笑む 。
「 こういう 時 は 痛み を 伴う 改革 を 起こさ ねば いつまでも 復興 など しません 。 前 の 領主 は 王 の 権限 で 解雇 します 」 「 そんな ! 横暴な ! 領主 が 解雇 に 対して 異議 を 唱える 。 もちろん 村 の 連中 も 同様だ 。
「 ふざける な ー ! 「 お前達 が 俺 達 に 何 を して くれ たって んだ ! 「 あら あら 、 国 の 決定 に 異議 を 唱える と は …… その 身をもって 知る しか ない よう ね 」
ビッチ が 手 を 上げる と 村 の 外れ から 騎士 が 騎竜 に 乗って くる 。
武力 行使 に 出る つもり か ? どこ の 暴君 だ 。
元康 の 奴 も 、 この 事態 に 焦った ような 顔 を して いる 。 犯人 は お前 だろう が !
「 いい加減に ──」
俺 が 怒鳴ろう と した の と ほぼ 同時 だった と 思う 。
ビッチ の 周り に 忍者 みたいな 格好 を した 黒 装束 の 集団 が 現れた 。
「 な ──」
「 マイン 殿 です ね 。 我等 の 事 は ご存じ でしょう 。 一 通 の 書状 を お 持ち いたしました 」 「 なんで すって ? そして 忍者 みたいな 連中 の 一 人 が ビッチ に 一 枚 の 羊 皮 紙 を 渡す 。
隠密 と か 、 暗殺 者って 奴 か ? この 国 に も いる んだ な 。
不機嫌 そうに その 羊 皮 紙 を 読んで いく ビッチ 。 その 顔色 が みるみる 青ざめて いく 。
なんだ ? 何 が 書かれて いる んだ ? 「 お前 等 は 一体 ? 「 私 達 は とある 方 の 命 で 動いて おります 。 いずれ 、 お わかり に なる でしょう 」
「 いや ……」
答えろ よ 。 いずれって もったいぶる んじゃ ねえ よ 。 と 、 言おう と した その 時 。
「 勝負 よ ! ビッチ が 高らかに 宣言 する 。
「 は ぁ ? いきなり 勝負 と か 言われて も 訳 が わから ね ー 。 元康 も 事態 に ついて いけ ず に 首 を 傾げて ん ぞ 。
「 私 達 の 所持 する ドラゴン と レース で 村 の 権利 を 賭けて 勝負 なさい ! 「 何 言って んだ 、 お前 」
その 羊 皮 紙 の 内容 が どんな もの か は 知ら ない けど 、 そんな 無 茶 が 通る はず ないだ ろ 。
「 じゃ なきゃ 譲ら ない わ ! ビッチ の 宣言 に 忍者 集団 が ヒソヒソ と 相談 を 始める 。 そして 領主 も 加わる ように 指示 して 話し合う 。
「 では 勝負 で 良い でしょう 。 では 村 で 足 の 速い 魔物 を 出す と しましょう 」 「 いいえ ──」 何故 か ビッチ は 俺 の 方 を 指差し 、 俺 が 手綱 を 握って いる フィーロ を 指差す 。 「 盾 の 勇者 を 指名 します 」 「 な ──」 事もあろうに 部 外 者 である 俺 を 指名 するって どういう 事 だ よ ! 領主 が 俺 の 方 を 見て ニヤリ と 笑う 。
「 盾 の 勇者 様 、 どう か ご 協力 を お 願い でき ない でしょう か ? 昨日 拝見 いたしました ところ 、 勇者 様 の フィロリアル は 相当 足 に 自信 が ある と 思う のです が ? 「 断る ! なんで 俺 が そんな 面倒な 事 を し なきゃ なら ん 。
「 勝った 暁 に は 色々 と 報奨 を 約束 致します ので 」 「 負けた 場合 は ? 「 特に 何も …… それ に 勇者 様 の フィロリアル はやる 気 が ある ようです し 」
フィーロ が なんか 騎竜 相手 に バチバチ と 視線 で 応酬 して いる ようだ 。 このまま 手綱 を 放したら 今にも 飛びかかり そうな 剣幕 で 元康 の 所持 する 騎竜 と 睨み合って いる 。
「 フィロリアル と ドラゴン は 仲 が 悪い 種族 ゆえ 、 こういった 勝負事 だ と やる 気 を 出す のです 」
なんとも 面倒な 事 で 。 だが 、 一応 負けて も 損 は ない か ……。
「 どう します か ナオフミ 様 ? 「 う ー む ……」
元康 の 領地 に なんて 居 たく ない し 、 村 の 連中 に は 悪い が 拠点 を 移さ せて もらう しか ない 。
そう なら ない ように 勝って 、 しばらく 滞在 したい ところ だ 。 「 わかった 。 じゃあ 相手 を し ようじゃ ない か 」
俺 は 渋々 フィーロ の 背中 に 乗って 準備 する 。 そして 元康 の 方 へ と 行く 。
「 ぶ はっ! や べ 、 ツボ に はまった 。 ぶ わ は は は は は はっは は ! 奴 は そんな 俺 の 姿 を 見る なり 腹 を 抱えて 笑い 出した 。
一体 何 が ツボ に はまった の か は 知ら ん が 、 笑われて いる だけ で ムカムカ して くる 。
「 いきなり な んだ 。 元康 」
「 だ 、 だって よ ! 最初 は 変な 鳥 を 連れて る なって 思った けど 、 まさか それ で 勝負 する なんて 思わ なかった んだ よ ! 「 何 が ? フィロリアル の 乗り 方 に 間違い は ないだ ろ ? 俺 が 連れて いた フィロリアル を 何 だ と 思って いた んだろう か ?
「 ダッセェエエエエエエ ! ドラゴン じゃ なくて 鳥 だ し 、 なんだ よこ の 色 、 白 に して は 薄い ピンク が 混じって いる し 、 純白だ ろ 普通 。 思いっきり 安物 だ な 、 おい ! 「 何 が 普通 か は 知ら ん が ……」
コイツ の 笑い の ツボ が わから ん 。
そう 考えて いる と 元康 は フィーロ を 指差し ながら 近づいて きた 。
「 グアアアア ! フィーロ が 元康 の 股 間 目掛けて 強靭な 足 で 蹴り 上げた 。
俺 に は 見えた 。 ヘラヘラ と 笑って いた 元康 が 顔 を 衝撃 で 変に 歪ま せ ながら 後方 に 五 メートル くらい 錐 揉み 回転 し ながら 飛んで いく の を 。
「 う げ ……」
いや ぁ …… 最高の 瞬間 。 こんな 場面 に 立ち 会える と は 夢にも 思わ なかった 。
「 キ 、 キャアアアアアアアアアア ! モトヤス 様 ! は は 、 アレ は 玉 が 潰れた な 。
すっげ え 爽快 。 これ が 見 れた だけ でも フィーロ を 買った 価値 が ある な 。 さすが 俺 の 魔物 だ 。 俺 の 代わり に 復讐 して くれた わけ か 。 フィーロ 、 今夜 は 特別に 美味 物 を 食わせて やる ぞ 。
「 グアアアアアアアア ! 「 卑怯 よ ! モトヤス 様 を 攻撃 する なんて ! 「 まだ レース は 始まって ないだ ろ 。 そもそも 不用意に 近づく から こう なる んだ ろ 」
「 くう …… て め ぇ 」
股 間 を 押さえ ながら 元康 は 立ち上がる 。 脂汗 を 噴き出して いる ところ を 見る に 相当 痛かった らしい な 。
俺 は フィーロ の 頭 を 撫で つつ 答える 。
「 で ? レース を 始める か ? 「 当たり前だ ! 卑怯 な 手段 を 講じられ ない か 警戒 し ながら 勝負 に 挑んだ 方 が 良い な 。