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キノの旅 -the Beautiful World-, Kino no Tabi: The Beautiful World (Kino's Journey) Episode 9

Kino no Tabi : The Beautiful World (Kino 's Journey ) Episode 9

♪ ~

~ ♪

( キノ ) 旅人 が 森 で 休 ん で いる と 1 台 の 戦車 に 出会い まし た

( 戦車 ) や あ モト ラド さん と その 運転手 さん

戦車 を 見かけ なかった かい ?

( キノ ) 戦車 の 話 は こう で し た

長年 彼 に 乗って い た 戦車 長 が 流れ弾 に 当たって 死ぬ 直前 ―

最後 の 命令 を 残し た の です

色 が 黒く て 砲 頭 の 右側 に 3 本 の 紅 い 縦 線

左側 に バク の 絵 が 描 い て ある 戦車 を 完全 に 破壊 しろ と

( 戦車 ) それ から そい つ を ずっと 捜し てる の さ 見 なかった ?

( キノ ) いえ

( 戦車 ) そう か それ じゃあ まだまだ 捜さ なきゃ

絶対 に 破壊 し て やる 絶対 に …

( キノ ) 旅人 は 見送り まし た

砲 頭 の 右 に 3 本 の 紅 い 縦 線

左 に バク の 絵 が 描か れ た 戦車 が 去って いく の を

いつ まで も いつ まで も …

( キノ ) と さ …

( エルメス ) あんまり おもしろい 本 じゃ ない ね

( キノ ) そう ?

( エルメス ) モト ラド が 活躍 し ない の が 気 に 入ら ない

なるほど 納得 し た よ

( エルメス ) とにかく これ から 行く 国 で は ―

もっと おもしろい 本 が 見つかる こと を 祈って る よ

その 本 と 引き換え に ね

( エルメス ) キノ 誰 か いる よ

( キノ ) うん

( 男 ) み … 水 …

( 男 ) フゥ …

ありがとう キノ さん

お 礼 を し たい が 今 は こんな もの しか …

これ から あの 世界 中 の 本 を 集め て いる 本 の 国 に 行く ん だ ろ ?

はい

図書 館 で 借り られる は 持ち込 ん だ 本 と 同じ 冊数 だけ な ん だ

だから それ を

( キノ ) どう も

( 男 ) 実は 僕 は あの 国 から 脱出 し て き た ん だ

( エルメス ) 脱出 だって ?

あの 国 で は 何 か 危険 な こと でも 起こって る ん です か ?

あ … いや そう じゃ ない

そう じゃ ない が …

あの 国 が 僕 に は 耐え難かった ん だ

( 男 ) あの 国 で は 本 を 書く こと が 禁止 さ れ て いる ん だ

だけど 僕 は 本 を 書く 仕事 が し たく て ね

( エルメス ) 世界 中 から 本 を 集め て いる のに ―

本 を 書く の が 禁止 さ れ てる って いう の ?

( 男 ) あの 国 の 図書 館 に 行って み れ ば 分かる よ

( エルメス ) 意外 と 小さい ね

( キーボード を 打つ 音 )

( 司書 ) 1 冊 … です か ?

では 1 冊 しか 借り られ ませ ん よ

はい 知って い ます

本 は これ です

( キノ ) あの …

この 国 の 図書 館 に は ―

世界 中 の 本 が 集め られ てる そう です が ―

ここ が そう です か ?

( 司書 ) え … ええ まあ

( エルメス ) 世界 中 の 本 が たった これ だけ ?

( 館長 ) そう です よ モト ラド さん 旅人 さん

世界 中 の 読 ん で いい 本 は すべて ここ に あり ます

ようこそ わが 図書 館 へ 私 は ここ の 館長 です

こんにち は 館長 さん

今 “ 読 ん で いい 本 ” と おっしゃい まし た か ?

( 館長 ) そう です

ここ に ある の は 読書 厚生 省 が 認可 し た ―

正真 正銘 まさしく 無害 な 本 だけ な の です

( キノ ) 無害 な 本 … です か ?

( 館長 ) はい

世界 中 から この 国 に 持ち込ま れ た 本 は

すべて 厳正 な 審査 に よって

“ 有害 な 本 ” と “ 無害 な 本 ” と に 分類 さ れ ます

“ 有害 ” か “ 無害 ” か を どう やって 判断 する ん です か ?

また その 審査 は 誰 が 行う ん です か ?

( 館長 ) 審査 は “ 城 ” の 方々 が 行い ます

( エルメス ) “ 城 ” って ?

読書 厚生 省 の 建物 を 我々 は “ 城 ” と 呼 ん で いる の です

あそこ に 入れる の は この 国 でも 有数 の 批評 家 の 方々 だけ

有害 か 無害 か は その 方 たち が 判断 し ます

( キノ ) で も その 人 たち の 判断 が 間違って い たら ?

批評 家 に 間 違い が ある はず が あり ませ ん

何しろ 批評 家 な ん です から

ハハハハ …

( キーボード を 打つ 音 )

( 同志 ) 作家 から の 連絡 が 途絶え て もう 3 か月 だ

城 に 捕らえ られ た の かも しれ ん

( 司書 ) で も 城 に 潜入 する なんて … シッ !

( 司書 ) で も 城 に 潜入 する なんて … シッ !

( 足音 )

( エルメス ) 結局 おもしろ そう な 本 なかった ね

( キノ ) うん 子供 だ まし と 実用 書 ばかり

こんな もの だ と 思って た けど

( 司書 ) キノ さん この 本 の こと で お 話 が …

この 本 は 誰 か から もらった もの で は ?

ええ 砂漠 で 倒れ て い た 人 を 助け た お 礼 に …

やっぱり …

それ は きっと 私 の 恋人 だった 人 です

そう だった ん です か

キノ さん

彼 から 城 の 入り口 が どこ に ある か 聞い て い ませ ん か ?

はい ?

( 同志 ) おい 同志 !

作家 から 連絡 が あった ぞ

ホント ! ?

( 扉 の 閉まる 音 )

( 司書 ) 私 たち は 城 に 抵抗 し て いる 地下 組織 ―

“ 出版 の 会 ” の メンバー な ん です

( キノ ) 出版 の 会 … です か ?

( 司書 ) ええ 私 たち は 本 を 出版 し て いる ん です

それ も 城 の 審査 を 受け て い ない 違法 と さ れる 本 を

( 同志 ) レジスタンス だ よ

我々 は 捕らえ られ た 同志 を 助ける ため に

城 へ の 入り口 を 探し て いる ん だ

それ で 入り口 の こと を 僕 に …

でも 残念 ながら 僕 は 何 も 聞い て い ませ ん

( 司書 ) そう です か

でも どう し て 僕 が 彼 から 聞い た ん じゃ ない か と ?

彼 は 旅人 が この 国 に 持ち込 ん だ 本 を

城 に 運ぶ 仕事 を し て い た ん です

運ぶ 合間 に まだ 分類 さ れる 前 の 本 を ―

たくさん 読 ん だ と 言って い まし た

本当 は 違法 な ん です けど …

( エルメス ) きっと その とき に 本 の 魅力 を 知った ん だ ね

( 司書 ) 彼 は 城 の 中 まで 本 を 運 ん で い た はず です だ から …

だから 我々 の 知ら ない 秘密 の 通路 を

彼 なら 知って いる かも しれ ない と 思った ん です が …

( 同志 ) なあ 旅人 さん

あんた を 一流 の パース エイダー 使い と 見込 ん で 頼み たい

我々 の 仲間 に なって 一緒に 戦って くれ ない か ?

( 同志 ) そう だ 腕 の 立つ 仲間 が いる と 心強い !

待って ください

僕 は この 国 に 3 日 しか い ませ ん し 皆さん の 力 に は なれ ませ ん

( 同志 ) そう か

( 同志 ) 本 の お 話 の よう に は いか ない もの だ

( エルメス ) 助け て あげ れ ば いい のに

どうせ ヒマ な ん だ から

そう いう わけ に は いか ない よ

( 司書 ) キノ さん どう か 私 たち の こと は 秘密 に

( キノ ) ええ もちろん

それ より 作家 から 連絡 が あった らしい が

原稿 は まだ 届か ない 心配 だ な

( キノ ) その “ 作家 ” と いう の は 誰 な ん です ?

( 司書 ) もともと は 城 の 中 に い た 人 らしい ん です

城 に 集まる 世界 中 の 本 を ことごとく 読み 尽くす と ―

突然 部屋 に こもって 2 週間 で 1 冊 の 本 を 書き上げ ―

“ 私 は 世界 の すべて を 書き記し た ” と いう ひと言 を 残し て ―

姿 を 消し た と か …

その 本 は 今 も 城 の 中 に 眠って いる と いう

( キノ ) “ 世界 の すべて を 書き記し た 本 ” です か

我々 が 出版 し て いる の は すべて その 作家 の もの だ

( 司書 ) 作家 の 書く お 話 に は ―

何 か 魔法 の よう に 人 を 引きつける 魅力 が ある ん です

そう …

いつの間にか 自分 が

お 話 の 登場 人 物 に なった と 錯覚 し て しまう よう な …

( エルメス ) でも キノ が もらった あの 本 も ―

その 作家 の 作品 だ と する と あまり 才能 が ある と は 思え ない ね

( キノ ) エルメス 今 だ から 言う けど

僕 は おもしろい と 思った な あの 話

でき れ ば もっと 読み たい と 思った

( 浮 浪 者 ) もう 読 ん でる の かも しれ ん よ

ここ は 実は 本 の 中 の 世界 で ―

あんた も その モト ラド 君 も 本 に 書か れ た ―

登場 人物 だった と し たら どう か ね ?

( キノ ) はい ?

( 浮 浪 者 ) モト ラド に 乗って 旅 を 続ける ―

旅人 の 本 が あった と する

あんた は それ を 読む うち ―

自分 が その 旅人 だ と 思い込 ん で しまった 読者 の 1 人

な の かも しれ ん よ

あなた は …

( 浮 浪 者 ) 作家 だ よ

( 警官 ) そっち に 逃げ た ぞ ! ( 警官 ) 捕まえろ !

( キノ ) あ …

( 同志 ) あ !

( 同志 ) あ … ( 警官 ) この 近く に いる はず だ !

( 警官 ) 捜せ !

( 同志 ) か … 彼女 に ! ( キノ ) え ?

( 同志 ) 図書 館 の 司書 を し て いる 女 に 渡し て くれ

作家 なら それ が どこ の 鍵 か 知って いる と … 頼む !

( 警官 ) い た ぞ こっち だ !

( 警官 ) 待て ! ( 同志 ) クソー !

作家 … なら …

( 老 紳士 ) レジスタンス ごっこ の 連中 か

困った もの だ

世界 中 の 本 の 中 に は ―

過激 な 描写 や 危険 思想 が 書か れ た もの も あり ます

それ に 影響 を 受け て ―

凶悪 事件 を 起こす 者 が 出 て き た の です よ

( キノ ) で も それ は 本 が 悪い の で は なく て ―

本 を 読 ん で それ を 解釈 する 人 自身 の 問題 じゃ ない です か ?

( 老 紳士 ) それ だけ で は あり ませ ん

物語 に のめり込む あまり ―

虚構 と 現実 の 区別 が つか なく なったり ―

中 に は 本 の 登場 人物 に 本気 で 恋 を し ―

身 を 滅ぼす 者 まで 現れ た

( エルメス ) それ は まとも じゃ ない ね

( 老 紳士 ) 事 の 重大 さ に 気付 い た 読書 厚生 省 は ―

彼ら を 治療 する ため の 隔離 病棟 と し て 城 を 作り ―

国民 に は 審査 を パス し た 安全 な 本 のみ を 供給 する ―

今 の システム を 作り上げ た の です

虚構 に のめり込む の は 危険 です よ 旅人 さん

どんな に 楽しく て も それ は 現実 じゃ ない ん です から

( キノ ) 科学 が とても 発達 し た 世界 に ―

少女 が 1 人 おり まし た

ある 日 少女 の 父親 が 言い まし た

“ また そんな 大昔 の 本 を 読 ん で いる の かい ? キノ ”

少女 は 答え まし た

“ ええ お 父 様 私 この 本 大好き ”

“ だったら ちょうど いい ”

“ ついに 完成 し た ん だ よ 自動 読書 装置 が ね ”

“ これ で 本 の 世界 が 現実 の よう に 体験 できる ”

“ もう 思い出す 必要 は ない ん だ よ ”

“ こんな 現実 は ”

“ お前 は 本 の 世界 で 生き れ ば いい ”

“ 世界 が 滅 ん で ― ”

“ 私 たち だけ が 生き残った 現実 など 忘れ て ね ”

“ さあ 好き な 本 の 世界 へ お 行き ”

ここ は まだ 本 の 世界 ?

( エルメス ) ん ?

( キノ ) 何でもない

( キノ ) あれ ?

ああ 昨日 の 旅人 さん

いや ~ 参り まし た よ

うち の 司書 まで 病気 に かかって い た なんて ね

( キノ ) 病気 … です か

( 館長 ) 虚構 と 現実 の 区別 が つか なく なり ―

自分 たち を 本 の 世界 の 人間 に 同一 視 し て しまって いる ん です

圧政 と 戦う レジスタンス だ なんて ね

本 の 登場 人 物 に なり きって い た と ?

ええ

彼女 たち は 城 の 中 に ある と いう 病院 で ―

治療 を 受ける こと に なる でしょ う

( エルメス ) 鍵 あの 人 に 渡 せ なかった ね

( キノ ) うん

( 浮 浪 者 ) ほほ う それ を 手 に 入れ た の か

それ が あんた の 手元 に 来 た と いう こと は

あんた の 役回り が 決まった と いう こと だ よ

( エルメス ) また 出 た

( キノ ) 役回り ?

( 浮 浪 者 ) そう わし が 書 い た あの 本 の とおり

つまり この 世界 は わし が 書 い た 本 の 中 な ん だ よ

旅人 さん

( エルメス ) ねえ キノ

この 人 も 現実 と 虚構 の 区別 が つい て ない ん じゃ ない ?

( 浮 浪 者 ) 虚構 と 現実 と いう 区別 こそ ―

人間 が 作り出し た 虚構 だ よ モト ラド 君

人生 は 自分 と 他人 の 区別 が つい た とき から 始まる

その 瞬間 から 世界 は 自分 を 主人公 と する 物語 の 舞台 と なる

すべて の 人 間 が ―

自分 を 主人公 と する 虚構 を 生き て いる と いう わけ さ

( キノ ) なるほど

ところが 世界 の ほう は 一 向 に 自分 を 主人公 と し て 扱って くれ ない

何という 隔たり だ ろ う

人 は 一生 この 混乱 に さいなま れ ながら 生きる

この 地獄 から 抜け出る 道 は ただ 1 つ

自分 を …

主人公 でも 端 役 で も ない 立場 に 置く こと つまり …

そう

“ 作家 ” だ

つい て おいで 扉 の 場所 を 教えよ う

( エルメス ) 彼 も まとも じゃ ない ね

作家 なんて そもそも まとも な 人間 が なる もの じゃ ない よ

エルメス

( 浮 浪 者 ) わし の 本 を 読み たけ れ ば 赤い 本棚 を 探せ ば いい

世界 の すべて を 書き記し た 本 が そこ に ある

( エルメス ) キノ は 本当 に 世界 の すべて を 記述 し た 本 なんて ―

ある と 思って る の ?

わざわざ こんな 所 まで 来 て さ

まだ 本 を 借り て ない から ね

どうせ 1 冊 なら その 本 が いい

( キノ ) あ !

( エルメス ) やっぱり 有害 に さ れ た ん だ ね あの 本

( 批評 家 ) 相変わらず 人物 描写 が 下手 だ ね この 作者 は

( 批評 家 ) 展開 も いいかげん だ し 偶然 に 頼り すぎ

( 批評 家 ) あんた ら に は この 味わい が 分から ん の か ね

( エルメス ) あれ が 批評 家 たち ?

そう らしい

あ !

あれ かな ? 赤い 本棚

( 警官 隊長 ) ここ が これ から お前 たち が 暮らす 隔離 病棟 だ

彼ら は お前 たち の 先輩 で ある

分から ない こと が あったら 何でも 教え て もらえ

ここ で 私 たち に 何 を さ せよ う って いう の ?

( 警官 隊長 ) 本 の 批評 だ 世界 中 から 集まる 本 を

有害 な もの と 無害 な もの に 分別 さ せ て やる

私 たち に 批評 家 に なれ って いう の ? あんな 最低 の 人種 に !

( 浮 浪 者 ) フフ フフ …

誰 だ ! ?

( 浮 浪 者 ) 世界 は ろう 獄 だ すべて 空想 の ろう 獄 だ よ

( 警官 隊長 ) 作家 だ 捕まえろ ! ( 警官 ) 作家 作家 が 現れ た ぞ !

( 同志 ) 我々 も 戦 お う ! ( 警官 ) う わ っ !

( 同志 ) アンガージュマン !

あ … あなた は !

( キノ ) 昨日 お 仲間 から ここ の 鍵 を 預かった ん です

それ と これ が 作家 さん の 原稿 です

ありがとう

みんな 原稿 が 届 い た わ よ !

( 同志 たち ) う お ー !

( キノ ) これ だ

( 大臣 ) 待って ください

私 は この 国 の 読書 厚生 大臣 です

旅人 さん

鍵 が あなた の 所 に 行った の は 手違い で し た

おわび し ます

どう いう こと です か ?

( 大臣 ) あれ は 作家 と 名乗って いる あの 男 の 所 へ 行く よう ―

仕組 ん だ もの だった ん です ( キノ ) 仕組 ん だ ?

( 大臣 ) あの 男 は もともと ここ の 患者 だった の です

( エルメス ) やっぱり

( 大臣 ) ところ が 抜け道 を 見つけ て 逃げ出し て しまった

私 たち は 彼 を 捕まえる ため に ワナ を 張り まし た

ワナ ?

( 大臣 ) あの 男 は この 世界 は ―

すべて 自分 が 書 い た 虚構 だ と 思い込 ん で いる

それ を 逆手 に とって ―

物語 的 な 方法 で ここ へ の 通路 の 鍵 を 手 に 入れ さ せ

舞い戻って くる よう 仕向け た ん です

彼 に そう いう 役回り だ と 信じ させる こと で ね

結果 的 に 彼 も 捕まえ られ そう です

旅人 さん もし よかったら ―

お 好き な 本 を 1 冊 お礼 に 差し上げ ます よ

では これ を 頂 い て いき ます

( 大臣 ) 旅人 さん この 国 の システム の ―

もう 1 つ の 目的 を お 教え し ま しょ う か

( キノ ) はい ?

( 大臣 ) あの ホール に いる 連中

つまり 批評 家 たち の こと です が ―

彼ら を 一般 の 人 から 隔離 する ため で も ある ん です よ

うん ちく を たれる だけ の や から

したり顔 で 本 を 採点 し て 悦 に 入って る 連中

作品 を けなし て 偉く なった 気 で いる 者 たち

ヤツ ら は 人 の 楽しみ に 水 を さす 亡者 ども です

本 は … 本 の 快楽 は もっと 個人 的 な も の よ

自分 1 人 の 中 に 閉じ込め て おく べき もの

そう 私 だけ の … フフフ フフ フフ …

( 職員 ) 大臣 ! た … 大変 です ! ( 大臣 ) どう し まし た ?

( 職員 ) さっき の 騒ぎ で ランプ が 倒れ た らしく 本 に 火 が !

ものすごい 勢い で 燃え広がって い ます !

え … 何て こと !

( 浮 浪 者 ) 消える ! 世界 が 消え て いく !

( 浮 浪 者 ) 消える ! 世界 が 消え て いく !

( 大臣 ) 早く 消し なさい !

( 大臣 ) 早く 消し なさい !

( 大臣 ) 早く 消し なさい !

ハハハハ …

ハハハハ …

ハハハハ …

ああ どう し ま しょ う 私 の 本 が !

( エルメス ) みんな 本 の 亡者 だ ね 彼女 も

( キノ ) 行 こ う エルメス ( エルメス ) うん

( エルメス ) で 世界 の すべて を 書き記し た 本 の 感想 は ?

あまり おもしろい と は 言 え ない ね

( エルメス ) それ は 想像 力 の 欠如 だ よ キノ

あの 作家 さん なら そこ に は ―

自分 の 思い描く すべて が 書 ける ん だって 言う よ

それ こそ 世界 の すべて を

( キノ ) そりゃ あ 白紙 の 原稿 用紙 だ から ね

あの 人 は もう 次 の 国 に 着 い た だ ろ う か

ありがとう キノ さん じゃあ もう 行く よ

( キノ ) あの …

この 本 本当 に 頂 い て い い ん です か ?

( 男 ) ああ 考え た ん だ が もう それ は いら ない ん だ

これ から は 自分 で 書く から ね

( エルメス ) そろそろ 何 か 現れる 予感 が する よ キノ

( キノ ) どう し て 分かる ん だい ? エルメス

( エルメス ) 物語 の 始まり は 大抵 そう さ

ほら ね

( 戦車 ) や あ モト ラド さん と その 運転手 さん

♪ ~

~ ♪

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Kino no Tabi : The Beautiful World (Kino 's Journey ) Episode 9 kino||tabi|the|beautiful|world|kino||journey|episode Kino no Tabi: The Beautiful World (Kino's Journey) Episode 9 Kino no Tabi : The Beautiful World (Kino's Journey) Episode 9 Kino no Tabi: The Beautiful World (A Viagem de Kino) Episódio 9 奇诺之旅: 美丽的世界》(奇诺之旅)第 9 集

♪ ~

~ ♪

( キノ ) 旅人 が 森 で 休 ん で いる と 1 台 の 戦車 に 出会い まし た きの|たびびと||しげる||きゅう|||||だい||せんしゃ||であい||

( 戦車 ) や あ モト ラド さん と その 運転手 さん せんしゃ|||もと|||||うんてんしゅ| Hello, motorrad and rider.

戦車 を 見かけ なかった かい ? せんしゃ||みかけ|| Have you seen a tank?

( キノ ) 戦車 の 話 は こう で し た きの|せんしゃ||はなし||||| The tank's story went like this...

長年 彼 に 乗って い た 戦車 長 が 流れ弾 に 当たって 死ぬ 直前 ― ながねん|かれ||のって|||せんしゃ|ちょう||ながれだま||あたって|しぬ|ちょくぜん The tank commander had operated the tank for many years.

最後 の 命令 を 残し た の です さいご||めいれい||のこし||| ...he issued one final order.

色 が 黒く て 砲 頭 の 右側 に 3 本 の 紅 い 縦 線 いろ||くろく||ほう|あたま||みぎがわ||ほん||くれない||たて|せん

左側 に バク の 絵 が 描 い て ある 戦車 を 完全 に 破壊 しろ と ひだりがわ||||え||えが||||せんしゃ||かんぜん||はかい|| and a picture of a tapir on the left side."

( 戦車 ) それ から そい つ を ずっと 捜し てる の さ 見 なかった ? せんしゃ|||||||さがし||||み| I've been looking for that one ever since.

( キノ ) いえ きの| No.

( 戦車 ) そう か それ じゃあ まだまだ 捜さ なきゃ せんしゃ||||||さがさ| I see.

絶対 に 破壊 し て やる 絶対 に … ぜったい||はかい||||ぜったい| I'll destroy it for sure.

( キノ ) 旅人 は 見送り まし た きの|たびびと||みおくり||

砲 頭 の 右 に 3 本 の 紅 い 縦 線 ほう|あたま||みぎ||ほん||くれない||たて|せん which had three red lines on the right side of its cannon

左 に バク の 絵 が 描か れ た 戦車 が 去って いく の を ひだり||||え||えがか|||せんしゃ||さって||| and a picture of a tapir on the left.

いつ まで も いつ まで も …

( キノ ) と さ … きの||

( エルメス ) あんまり おもしろい 本 じゃ ない ね |||ほん||| It wasn't a very interesting book.

( キノ ) そう ? きの| You didn't think so?

( エルメス ) モト ラド が 活躍 し ない の が 気 に 入ら ない |もと|||かつやく|||||き||はいら| I didn't like it because the motorrad didn't have an active part.

なるほど 納得 し た よ |なっとく||| I see.

( エルメス ) とにかく これ から 行く 国 で は ― ||||いく|くに|| Anyway,

もっと おもしろい 本 が 見つかる こと を 祈って る よ ||ほん||みつかる|||いのって||

その 本 と 引き換え に ね |ほん||ひきかえ|| In exchange for that book.

( エルメス ) キノ 誰 か いる よ |きの|だれ|||

( キノ ) うん きの| Yeah.

( 男 ) み … 水 … おとこ||すい Water...

( 男 ) フゥ … おとこ|

ありがとう キノ さん |きの| Thank you, Kino.

お 礼 を し たい が 今 は こんな もの しか … |れい|||||いま|||| I'd like to give you something in return,

これ から あの 世界 中 の 本 を 集め て いる 本 の 国 に 行く ん だ ろ ? |||せかい|なか||ほん||あつめ|||ほん||くに||いく||| You're going to the land of books

はい Yes.

図書 館 で 借り られる は 持ち込 ん だ 本 と 同じ 冊数 だけ な ん だ としょ|かん||かり|||もちこ|||ほん||おなじ|さっすう|||| You can only borrow as many books as you bring into the library.

だから それ を So take this one.

( キノ ) どう も きの|| Thanks.

( 男 ) 実は 僕 は あの 国 から 脱出 し て き た ん だ おとこ|じつは|ぼく|||くに||だっしゅつ|||||| To tell you the truth,

( エルメス ) 脱出 だって ? |だっしゅつ| Escaped?

あの 国 で は 何 か 危険 な こと でも 起こって る ん です か ? |くに|||なん||きけん||||おこって|||| Is there something dangerous there?

あ … いや そう じゃ ない Huh?

そう じゃ ない が … There isn't, but...

あの 国 が 僕 に は 耐え難かった ん だ |くに||ぼく|||たえがたかった|| I just couldn't stand that place.

( 男 ) あの 国 で は 本 を 書く こと が 禁止 さ れ て いる ん だ おとこ||くに|||ほん||かく|||きんし|||||| It's prohibited to write books in that country,

だけど 僕 は 本 を 書く 仕事 が し たく て ね |ぼく||ほん||かく|しごと||||| but I wanted to be a writer.

( エルメス ) 世界 中 から 本 を 集め て いる のに ― |せかい|なか||ほん||あつめ||| You mean, they collect books from all over the world,

本 を 書く の が 禁止 さ れ てる って いう の ? ほん||かく|||きんし|||||| but it's prohibited to write books?

( 男 ) あの 国 の 図書 館 に 行って み れ ば 分かる よ おとこ||くに||としょ|かん||おこなって||||わかる| If you go to the library there, you'll understand.

( エルメス ) 意外 と 小さい ね |いがい||ちいさい| It's smaller than I thought it would be.

( キーボード を 打つ 音 ) ||うつ|おと

( 司書 ) 1 冊 … です か ? ししょ|さつ|| One book, is it?

では 1 冊 しか 借り られ ませ ん よ |さつ||かり|||| Then you can only borrow one book.

はい 知って い ます |しって|| Yes, I know.

本 は これ です ほん||| This is the book.

( キノ ) あの … きの| Excuse me...

この 国 の 図書 館 に は ― |くに||としょ|かん|| I heard this country's library

世界 中 の 本 が 集め られ てる そう です が ― せかい|なか||ほん||あつめ||||| has books from all over the world,

ここ が そう です か ? but is this it?

( 司書 ) え … ええ まあ ししょ||| Yes, sort of...

( エルメス ) 世界 中 の 本 が たった これ だけ ? |せかい|なか||ほん|||| All the books from the world

( 館長 ) そう です よ モト ラド さん 旅人 さん かんちょう||||もと|||たびびと| Yes, motorrad and traveler.

世界 中 の 読 ん で いい 本 は すべて ここ に あり ます せかい|なか||よ||||ほん|||||| We have all the books from all over the world that you may read.

ようこそ わが 図書 館 へ 私 は ここ の 館長 です ||としょ|かん||わたくし||||かんちょう| Welcome to our library.

こんにち は 館長 さん ||かんちょう| Hello, Mr. Chief.

今 “ 読 ん で いい 本 ” と おっしゃい まし た か ? いま|よ||||ほん||||| Did you just say "the books we may read"?

( 館長 ) そう です かんちょう|| That's right.

ここ に ある の は 読書 厚生 省 が 認可 し た ― |||||どくしょ|こうせい|しょう||にんか|| All the books here

正真 正銘 まさしく 無害 な 本 だけ な の です しょうしん|しょうめい||むがい||ほん||||

( キノ ) 無害 な 本 … です か ? きの|むがい||ほん|| Harmless books?

( 館長 ) はい かんちょう| Yes!

世界 中 から この 国 に 持ち込ま れ た 本 は せかい|なか|||くに||もちこま|||ほん| All the books brought here from around the world

すべて 厳正 な 審査 に よって |げんせい||しんさ|| undergo the strictest screening

“ 有害 な 本 ” と “ 無害 な 本 ” と に 分類 さ れ ます ゆうがい||ほん||むがい||ほん|||ぶんるい||| and are categorized as either "harmful books" or "harmless books."

“ 有害 ” か “ 無害 ” か を どう やって 判断 する ん です か ? ゆうがい||むがい|||||はんだん|||| How do you judge if a book is harmful or not?

また その 審査 は 誰 が 行う ん です か ? ||しんさ||だれ||おこなう||| And who does the screening?

( 館長 ) 審査 は “ 城 ” の 方々 が 行い ます かんちょう|しんさ||しろ||ほうぼう||おこない| The people at the Castle do the screening.

( エルメス ) “ 城 ” って ? |しろ| Castle?

読書 厚生 省 の 建物 を 我々 は “ 城 ” と 呼 ん で いる の です どくしょ|こうせい|しょう||たてもの||われわれ||しろ||よ||||| We call the building of the Department of Reading and Welfare the Castle.

あそこ に 入れる の は この 国 でも 有数 の 批評 家 の 方々 だけ ||いれる||||くに||ゆうすう||ひひょう|いえ||ほうぼう| Only the most prominent critics of this country are allowed in there.

有害 か 無害 か は その 方 たち が 判断 し ます ゆうがい||むがい||||かた|||はんだん|| They decide what's harmful and what's harmless.

( キノ ) で も その 人 たち の 判断 が 間違って い たら ? きの||||じん|||はんだん||まちがって|| But what if their decision is wrong?

批評 家 に 間 違い が ある はず が あり ませ ん ひひょう|いえ||あいだ|ちがい||||||| Critics cannot make any wrong decisions.

何しろ 批評 家 な ん です から なにしろ|ひひょう|いえ|||| After all, they are critics!

ハハハハ …

( キーボード を 打つ 音 ) ||うつ|おと

( 同志 ) 作家 から の 連絡 が 途絶え て もう 3 か月 だ どうし|さっか|||れんらく||とだえ|||かげつ| We haven't heard from the Author for three months now.

城 に 捕らえ られ た の かも しれ ん しろ||とらえ|||||| He might have been captured by the Castle.

( 司書 ) で も 城 に 潜入 する なんて … シッ ! ししょ|||しろ||せんにゅう||| But sneaking into the Castle is...

( 司書 ) で も 城 に 潜入 する なんて … シッ ! ししょ|||しろ||せんにゅう|||

( 足音 ) あしおと

( エルメス ) 結局 おもしろ そう な 本 なかった ね |けっきょく||||ほん|| We didn't find any interesting looking books in the end.

( キノ ) うん 子供 だ まし と 実用 書 ばかり きの||こども||||じつよう|しょ| No.

こんな もの だ と 思って た けど ||||おもって|| That's about what I expected, though.

( 司書 ) キノ さん この 本 の こと で お 話 が … ししょ|きの|||ほん|||||はなし| Kino-san,

この 本 は 誰 か から もらった もの で は ? |ほん||だれ|||||| Did someone give you this book?

ええ 砂漠 で 倒れ て い た 人 を 助け た お 礼 に … |さばく||たおれ||||じん||たすけ|||れい| Yes.

やっぱり … I knew it!

それ は きっと 私 の 恋人 だった 人 です |||わたくし||こいびと||じん| I'm sure it was my former lover.

そう だった ん です か I had no idea.

キノ さん きの| Did he happen to tell you where the entrance to the Castle was?

彼 から 城 の 入り口 が どこ に ある か 聞い て い ませ ん か ? かれ||しろ||いりぐち||||||ききい|||||

はい ? What?

( 同志 ) おい 同志 ! どうし||どうし Hey, comrade!

作家 から 連絡 が あった ぞ さっか||れんらく||| We've heard from the Author!

ホント ! ? ほんと Really?

( 扉 の 閉まる 音 ) とびら||しまる|おと

( 司書 ) 私 たち は 城 に 抵抗 し て いる 地下 組織 ― ししょ|わたくし|||しろ||ていこう||||ちか|そしき We're members of the Publication Society,

“ 出版 の 会 ” の メンバー な ん です しゅっぱん||かい||めんばー||| an underground organization that stands against the Castle.

( キノ ) 出版 の 会 … です か ? きの|しゅっぱん||かい|| Publication Society?

( 司書 ) ええ 私 たち は 本 を 出版 し て いる ん です ししょ||わたくし|||ほん||しゅっぱん||||| We're publishing books.

それ も 城 の 審査 を 受け て い ない 違法 と さ れる 本 を ||しろ||しんさ||うけ||||いほう||||ほん| Books that have not been screened by the Castle

( 同志 ) レジスタンス だ よ どうし||| It's a resistance movement.

我々 は 捕らえ られ た 同志 を 助ける ため に われわれ||とらえ|||どうし||たすける|| We're looking for the entrance to the Castle

城 へ の 入り口 を 探し て いる ん だ しろ|||いりぐち||さがし|||| so we can save our fellow members who were captured.

それ で 入り口 の こと を 僕 に … ||いりぐち||||ぼく| That's why you asked me about the entrance.

でも 残念 ながら 僕 は 何 も 聞い て い ませ ん |ざんねん||ぼく||なん||ききい|||| But I'm afraid I haven't heard anything about it.

( 司書 ) そう です か ししょ||| I see.

でも どう し て 僕 が 彼 から 聞い た ん じゃ ない か と ? ||||ぼく||かれ||ききい|||||| But why did you think I might have heard it from him?

彼 は 旅人 が この 国 に 持ち込 ん だ 本 を かれ||たびびと|||くに||もちこ|||ほん| His job was to carry the books

城 に 運ぶ 仕事 を し て い た ん です しろ||はこぶ|しごと|||||||

運ぶ 合間 に まだ 分類 さ れる 前 の 本 を ― はこぶ|あいま|||ぶんるい|||ぜん||ほん| He told me that when he was carrying them,

たくさん 読 ん だ と 言って い まし た |よ||||いって|||

本当 は 違法 な ん です けど … ほんとう||いほう||||

( エルメス ) きっと その とき に 本 の 魅力 を 知った ん だ ね |||||ほん||みりょく||しった||| I guess he found how fascinating books were then.

( 司書 ) 彼 は 城 の 中 まで 本 を 運 ん で い た はず です だ から … ししょ|かれ||しろ||なか||ほん||うん|||||||| He must have been carrying books into the Castle, so...

だから 我々 の 知ら ない 秘密 の 通路 を |われわれ||しら||ひみつ||つうろ| So, we thought he might have known a secret passage

彼 なら 知って いる かも しれ ない と 思った ん です が … かれ||しって||||||おもった||| that we don't know about.

( 同志 ) なあ 旅人 さん どうし||たびびと| Hey, traveler.

あんた を 一流 の パース エイダー 使い と 見込 ん で 頼み たい ||いちりゅう||||つかい||みこ|||たのみ| Since you're a top class persuader shooter,

我々 の 仲間 に なって 一緒に 戦って くれ ない か ? われわれ||なかま|||いっしょに|たたかって||| Won't you join us and fight together with us?

( 同志 ) そう だ 腕 の 立つ 仲間 が いる と 心強い ! どうし|||うで||たつ|なかま||||こころづよい That's right!

待って ください まって| Please hold on.

僕 は この 国 に 3 日 しか い ませ ん し 皆さん の 力 に は なれ ませ ん ぼく|||くに||ひ||||||みなさん||ちから||||| I'm only staying in this country for three days.

( 同志 ) そう か どうし|| I see.

( 同志 ) 本 の お 話 の よう に は いか ない もの だ どうし|ほん|||はなし|||||||| I guess it won't happen like a story from a book.

( エルメス ) 助け て あげ れ ば いい のに |たすけ|||||| You could've just helped them.

どうせ ヒマ な ん だ から |ひま|||| You're not busy anyway.

そう いう わけ に は いか ない よ I can't do that.

( 司書 ) キノ さん どう か 私 たち の こと は 秘密 に ししょ|きの||||わたくし|||||ひみつ| Please keep us a secret, Kino-san.

( キノ ) ええ もちろん きの|| Yes, of course.

それ より 作家 から 連絡 が あった らしい が ||さっか||れんらく|||| Anyway I heard the Author contacted us,

原稿 は まだ 届か ない 心配 だ な げんこう|||とどか||しんぱい|| but we haven't received the manuscript yet.

( キノ ) その “ 作家 ” と いう の は 誰 な ん です ? きの||さっか|||||だれ||| Who is this Author?

( 司書 ) もともと は 城 の 中 に い た 人 らしい ん です ししょ|||しろ||なか||||じん||| I heard he was originally from the Castle.

城 に 集まる 世界 中 の 本 を ことごとく 読み 尽くす と ― しろ||あつまる|せかい|なか||ほん|||よみ|つくす| Once he finished reading all the books brought into the Castle,

突然 部屋 に こもって 2 週間 で 1 冊 の 本 を 書き上げ ― とつぜん|へや|||しゅうかん||さつ||ほん||かきあげ he suddenly retreated to his room

“ 私 は 世界 の すべて を 書き記し た ” と いう ひと言 を 残し て ― わたくし||せかい||||かきしるし||||ひとこと||のこし| Then he disappeared, proclaiming

姿 を 消し た と か … すがた||けし|||

その 本 は 今 も 城 の 中 に 眠って いる と いう |ほん||いま||しろ||なか||ねむって||| And they say that book is still in the Castle.

( キノ ) “ 世界 の すべて を 書き記し た 本 ” です か きの|せかい||||かきしるし||ほん|| A book written about everything of the world?

我々 が 出版 し て いる の は すべて その 作家 の もの だ われわれ||しゅっぱん||||||||さっか||| All the books that we're publishing are written by him.

( 司書 ) 作家 の 書く お 話 に は ― ししょ|さっか||かく||はなし|| His stories draw you into them

何 か 魔法 の よう に 人 を 引きつける 魅力 が ある ん です なん||まほう||||じん||ひきつける|みりょく||||

そう … Yes.

いつの間にか 自分 が いつのまにか|じぶん| They give you the illusion

お 話 の 登場 人 物 に なった と 錯覚 し て しまう よう な … |はなし||とうじょう|じん|ぶつ||||さっかく||||| of becoming a character in the story.

( エルメス ) でも キノ が もらった あの 本 も ― ||きの||||ほん| But if the Author also wrote the book you got,

その 作家 の 作品 だ と する と あまり 才能 が ある と は 思え ない ね |さっか||さくひん||||||さいのう|||||おもえ||

( キノ ) エルメス 今 だ から 言う けど きの||いま|||いう| Hermes,

僕 は おもしろい と 思った な あの 話 ぼく||||おもった|||はなし but I thought it was an interesting story.

でき れ ば もっと 読み たい と 思った ||||よみ|||おもった I wished I could've read more.

( 浮 浪 者 ) もう 読 ん でる の かも しれ ん よ うか|ろう|もの||よ||||||| You may be reading it already.

ここ は 実は 本 の 中 の 世界 で ― ||じつは|ほん||なか||せかい| What if this world is actually inside a book

あんた も その モト ラド 君 も 本 に 書か れ た ― |||もと||きみ||ほん||かか|| and you and that motorrad are both characters in the book?

登場 人物 だった と し たら どう か ね ? とうじょう|じんぶつ|||||||

( キノ ) はい ? きの| Excuse me?

( 浮 浪 者 ) モト ラド に 乗って 旅 を 続ける ― うか|ろう|もの|もと|||のって|たび||つづける Suppose there is a book about a traveler journeying on a motorrad.

旅人 の 本 が あった と する たびびと||ほん||||

あんた は それ を 読む うち ― ||||よむ| While reading it, many come to believe that they are the traveler.

自分 が その 旅人 だ と 思い込 ん で しまった 読者 の 1 人 じぶん|||たびびと|||おもいこ||||どくしゃ||じん

な の かも しれ ん よ You may be one such reader.

あなた は … You are...

( 浮 浪 者 ) 作家 だ よ うか|ろう|もの|さっか|| I'm the Author.

( 警官 ) そっち に 逃げ た ぞ ! ( 警官 ) 捕まえろ ! けいかん|||にげ|||けいかん|つかまえろ He escaped that way!

( キノ ) あ … きの|

( 同志 ) あ ! どうし|

( 同志 ) あ … ( 警官 ) この 近く に いる はず だ ! どうし||けいかん||ちかく|||| He must be near.

( 警官 ) 捜せ ! けいかん|さがせ Find him!

( 同志 ) か … 彼女 に ! ( キノ ) え ? どうし||かのじょ||きの| Give it to her!

( 同志 ) 図書 館 の 司書 を し て いる 女 に 渡し て くれ どうし|としょ|かん||ししょ|||||おんな||わたし|| Please give this to the lady librarian.

作家 なら それ が どこ の 鍵 か 知って いる と … 頼む ! さっか||||||かぎ||しって|||たのむ Tell her that the Author will know what this key is for!

( 警官 ) い た ぞ こっち だ ! けいかん||||| I found him! This way!

( 警官 ) 待て ! ( 同志 ) クソー ! けいかん|まて|どうし| Wait!

作家 … なら … さっか| The Author will know...

( 老 紳士 ) レジスタンス ごっこ の 連中 か ろう|しんし||||れんちゅう| People play-acting the resistance movement, huh?

困った もの だ こまった|| They're troublesome.

世界 中 の 本 の 中 に は ― せかい|なか||ほん||なか|| In this world there are books

過激 な 描写 や 危険 思想 が 書か れ た もの も あり ます かげき||びょうしゃ||きけん|しそう||かか|||||| that have radical descriptions or dangerous thoughts.

それ に 影響 を 受け て ― ||えいきょう||うけ| Some people are affected by that and commit brutal crimes.

凶悪 事件 を 起こす 者 が 出 て き た の です よ きょうあく|じけん||おこす|もの||だ||||||

( キノ ) で も それ は 本 が 悪い の で は なく て ― きの|||||ほん||わるい||||| But it doesn't mean the books are bad.

本 を 読 ん で それ を 解釈 する 人 自身 の 問題 じゃ ない です か ? ほん||よ|||||かいしゃく||じん|じしん||もんだい|||| Isn't the problem with

( 老 紳士 ) それ だけ で は あり ませ ん ろう|しんし||||||| That's not all.

物語 に のめり込む あまり ― ものがたり||のめりこむ| Some become so involved in the books,

虚構 と 現実 の 区別 が つか なく なったり ― きょこう||げんじつ||くべつ|||| they can no longer distinguish between reality and fantasy.

中 に は 本 の 登場 人物 に 本気 で 恋 を し ― なか|||ほん||とうじょう|じんぶつ||ほんき||こい|| Some have even seriously fallen in love

身 を 滅ぼす 者 まで 現れ た み||ほろぼす|もの||あらわれ|

( エルメス ) それ は まとも じゃ ない ね They're crazy.

( 老 紳士 ) 事 の 重大 さ に 気付 い た 読書 厚生 省 は ― ろう|しんし|こと||じゅうだい|||きづ|||どくしょ|こうせい|しょう| The Department of Reading and Welfare realized how serious this was.

彼ら を 治療 する ため の 隔離 病棟 と し て 城 を 作り ― かれら||ちりょう||||かくり|びょうとう||||しろ||つくり They built the Castle as an isolation ward in which to treat them

国民 に は 審査 を パス し た 安全 な 本 のみ を 供給 する ― こくみん|||しんさ||ぱす|||あんぜん||ほん|||きょうきゅう|

今 の システム を 作り上げ た の です いま||しすてむ||つくりあげ||| are supplied to the citizens.

虚構 に のめり込む の は 危険 です よ 旅人 さん きょこう||のめりこむ|||きけん|||たびびと| It's dangerous to get drawn into fantasy, traveler.

どんな に 楽しく て も それ は 現実 じゃ ない ん です から ||たのしく|||||げんじつ||||| No matter how fun it might be,

( キノ ) 科学 が とても 発達 し た 世界 に ― きの|かがく|||はったつ|||せかい| There was a girl in a world with highly developed science.

少女 が 1 人 おり まし た しょうじょ||じん|||

ある 日 少女 の 父親 が 言い まし た |ひ|しょうじょ||ちちおや||いい|| One day, the girl's father said,

“ また そんな 大昔 の 本 を 読 ん で いる の かい ? キノ ” ||おおむかし||ほん||よ||||||きの "Are you reading that ancient book again, Kino?"

少女 は 答え まし た しょうじょ||こたえ|| "Yes, father. I love this book," replied the girl.

“ ええ お 父 様 私 この 本 大好き ” ||ちち|さま|わたくし||ほん|だいすき

“ だったら ちょうど いい ” "Then this is perfect."

“ ついに 完成 し た ん だ よ 自動 読書 装置 が ね ” |かんせい||||||じどう|どくしょ|そうち|| "Finally, I have completed the auto reading system."

“ これ で 本 の 世界 が 現実 の よう に 体験 できる ” ||ほん||せかい||げんじつ||||たいけん| "You can experience the world of the book as if it were real."

“ もう 思い出す 必要 は ない ん だ よ ” |おもいだす|ひつよう||||| "You don't need to remember our reality anymore."

“ こんな 現実 は ” |げんじつ|

“ お前 は 本 の 世界 で 生き れ ば いい ” おまえ||ほん||せかい||いき||| "You just need to live in the world of books."

“ 世界 が 滅 ん で ― ” せかい||めつ|| "Forget that the world was ruined

“ 私 たち だけ が 生き残った 現実 など 忘れ て ね ” わたくし||||いきのこった|げんじつ||わすれ|| "that we're the only survivors."

“ さあ 好き な 本 の 世界 へ お 行き ” |すき||ほん||せかい|||いき "Here you go."

ここ は まだ 本 の 世界 ? |||ほん||せかい Am I still in the world of the book?

( エルメス ) ん ? What?

( キノ ) 何でもない きの|なんでもない Nothing...

( キノ ) あれ ? きの| Oh?

ああ 昨日 の 旅人 さん |きのう||たびびと| Oh, the traveler from yesterday.

いや ~ 参り まし た よ |まいり||| Oh, boy.

うち の 司書 まで 病気 に かかって い た なんて ね ||ししょ||びょうき||||||

( キノ ) 病気 … です か きの|びょうき|| Infected?

( 館長 ) 虚構 と 現実 の 区別 が つか なく なり ― かんちょう|きょこう||げんじつ||くべつ|||| She cannot tell the difference between fantasy and reality.

自分 たち を 本 の 世界 の 人間 に 同一 視 し て しまって いる ん です じぶん|||ほん||せかい||にんげん||どういつ|し|||||| She equates herself with characters in the books.

圧政 と 戦う レジスタンス だ なんて ね あっせい||たたかう|||| Like this "Resistance Movement that fights against oppression".

本 の 登場 人 物 に なり きって い た と ? ほん||とうじょう|じん|ぶつ|||||| You mean, they completely believed themselves

ええ Yes.

彼女 たち は 城 の 中 に ある と いう 病院 で ― かのじょ|||しろ||なか|||||びょういん| They will be treated in the hospital

治療 を 受ける こと に なる でしょ う ちりょう||うける||||| supposedly located in the Castle.

( エルメス ) 鍵 あの 人 に 渡 せ なかった ね |かぎ||じん||と||| You couldn't give her the key.

( キノ ) うん きの| No.

( 浮 浪 者 ) ほほ う それ を 手 に 入れ た の か うか|ろう|もの|||||て||いれ||| Oh, so you got it.

それ が あんた の 手元 に 来 た と いう こと は ||||てもと||らい||||| It came to your hands.

あんた の 役回り が 決まった と いう こと だ よ ||やくまわり||きまった||||| That means your role has been decided.

( エルメス ) また 出 た ||だ| Here we go again.

( キノ ) 役回り ? きの|やくまわり

( 浮 浪 者 ) そう わし が 書 い た あの 本 の とおり うか|ろう|もの||||しょ||||ほん|| Yes.

つまり この 世界 は わし が 書 い た 本 の 中 な ん だ よ ||せかい||||しょ|||ほん||なか|||| In other words, this world is in the book I wrote, traveler.

旅人 さん たびびと|

( エルメス ) ねえ キノ ||きの Hey, Kino.

この 人 も 現実 と 虚構 の 区別 が つい て ない ん じゃ ない ? |じん||げんじつ||きょこう||くべつ||||||| Maybe he can't tell the difference between fantasy and reality either?

( 浮 浪 者 ) 虚構 と 現実 と いう 区別 こそ ― うか|ろう|もの|きょこう||げんじつ|||くべつ| Classification of fantasy and reality

人間 が 作り出し た 虚構 だ よ モト ラド 君 にんげん||つくりだし||きょこう|||もと||きみ is itself a fantasy that humans created, my dear motorrad.

人生 は 自分 と 他人 の 区別 が つい た とき から 始まる じんせい||じぶん||たにん||くべつ||||||はじまる Life... It begins when you first make

その 瞬間 から 世界 は 自分 を 主人公 と する 物語 の 舞台 と なる |しゅんかん||せかい||じぶん||しゅじんこう|||ものがたり||ぶたい|| From that moment on, the world becomes a stage

すべて の 人 間 が ― ||じん|あいだ| All people live in a fantasy

自分 を 主人公 と する 虚構 を 生き て いる と いう わけ さ じぶん||しゅじんこう|||きょこう||いき||||||

( キノ ) なるほど きの| I see.

ところが 世界 の ほう は 一 向 に 自分 を 主人公 と し て 扱って くれ ない |せかい||||ひと|むかい||じぶん||しゅじんこう||||あつかって|| But the world doesn't recognize you as the main character at all.

何という 隔たり だ ろ う なんという|へだたり||| What nonsense!

人 は 一生 この 混乱 に さいなま れ ながら 生きる じん||いっしょう||こんらん|||||いきる Everyone lives their entire life tormented by this confusion!

この 地獄 から 抜け出る 道 は ただ 1 つ |じごく||ぬけでる|どう||| There's only one way out of this hell.

自分 を … じぶん| To place yourself in a position

主人公 でも 端 役 で も ない 立場 に 置く こと つまり … しゅじんこう||はし|やく||||たちば||おく|| that is neither the main character nor a supporting role.

そう Yes.

“ 作家 ” だ さっか| The "Author".

つい て おいで 扉 の 場所 を 教えよ う |||とびら||ばしょ||おしえよ| Follow me.

( エルメス ) 彼 も まとも じゃ ない ね |かれ||||| He's not normal, either.

作家 なんて そもそも まとも な 人間 が なる もの じゃ ない よ さっか|||||にんげん|||||| Normal people don't become authors to begin with, Hermes.

エルメス

( 浮 浪 者 ) わし の 本 を 読み たけ れ ば 赤い 本棚 を 探せ ば いい うか|ろう|もの|||ほん||よみ||||あかい|ほんだな||さがせ|| If you want to read my books,

世界 の すべて を 書き記し た 本 が そこ に ある せかい||||かきしるし||ほん|||| The book written about everything of the world is there.

( エルメス ) キノ は 本当 に 世界 の すべて を 記述 し た 本 なんて ― |きの||ほんとう||せかい||||きじゅつ|||ほん| Kino? Do you really believe

ある と 思って る の ? ||おもって||

わざわざ こんな 所 まで 来 て さ ||しょ||らい|| You've come all the way here...

まだ 本 を 借り て ない から ね |ほん||かり|||| I haven't borrowed a book yet.

どうせ 1 冊 なら その 本 が いい |さつ|||ほん|| If I can only borrow one book anyway,

( キノ ) あ ! きの|

( エルメス ) やっぱり 有害 に さ れ た ん だ ね あの 本 ||ゆうがい|||||||||ほん I knew it, that book was identified as harmful.

( 批評 家 ) 相変わらず 人物 描写 が 下手 だ ね この 作者 は ひひょう|いえ|あいかわらず|じんぶつ|びょうしゃ||へた||||さくしゃ| This author is still not good at character descriptions.

( 批評 家 ) 展開 も いいかげん だ し 偶然 に 頼り すぎ ひひょう|いえ|てんかい|||||ぐうぜん||たより| Development is sloppy and too many coincidences.

( 批評 家 ) あんた ら に は この 味わい が 分から ん の か ね ひひょう|いえ||||||あじわい||わから|||| Don't any of you understand the charm in this?

( エルメス ) あれ が 批評 家 たち ? |||ひひょう|いえ| Are they the critics?

そう らしい I guess so.

あ !

あれ かな ? 赤い 本棚 ||あかい|ほんだな Is that it?

( 警官 隊長 ) ここ が これ から お前 たち が 暮らす 隔離 病棟 だ けいかん|たいちょう|||||おまえ|||くらす|かくり|びょうとう| Here is the isolation ward,

彼ら は お前 たち の 先輩 で ある かれら||おまえ|||せんぱい|| They are your seniors.

分から ない こと が あったら 何でも 教え て もらえ わから|||||なんでも|おしえ||

ここ で 私 たち に 何 を さ せよ う って いう の ? ||わたくし|||なん||||||| What are you going to make us do?!

( 警官 隊長 ) 本 の 批評 だ 世界 中 から 集まる 本 を けいかん|たいちょう|ほん||ひひょう||せかい|なか||あつまる|ほん| Critique books.

有害 な もの と 無害 な もの に 分別 さ せ て やる ゆうがい||||むがい||||ぶんべつ||||

私 たち に 批評 家 に なれ って いう の ? あんな 最低 の 人種 に ! わたくし|||ひひょう|いえ|||||||さいてい||じんしゅ| Are you telling us to become critics?!

( 浮 浪 者 ) フフ フフ … うか|ろう|もの||

誰 だ ! ? だれ|

( 浮 浪 者 ) 世界 は ろう 獄 だ すべて 空想 の ろう 獄 だ よ うか|ろう|もの|せかい|||ごく|||くうそう|||ごく|| The world is a prison!

( 警官 隊長 ) 作家 だ 捕まえろ ! ( 警官 ) 作家 作家 が 現れ た ぞ ! けいかん|たいちょう|さっか||つかまえろ|けいかん|さっか|さっか||あらわれ|| Author! Here comes the Author!

( 同志 ) 我々 も 戦 お う ! ( 警官 ) う わ っ ! どうし|われわれ||いくさ|||けいかん||| Let's fight too!

( 同志 ) アンガージュマン ! どうし|

あ … あなた は !

( キノ ) 昨日 お 仲間 から ここ の 鍵 を 預かった ん です きの|きのう||なかま||||かぎ||あずかった|| I received this key from your fellow member yesterday.

それ と これ が 作家 さん の 原稿 です ||||さっか|||げんこう| And this is the Author's manuscript.

ありがとう Thank you!

みんな 原稿 が 届 い た わ よ ! |げんこう||とどけ|||| Everybody!

( 同志 たち ) う お ー ! どうし||||-

( キノ ) これ だ きの|| This is it.

( 大臣 ) 待って ください だいじん|まって| Please wait.

私 は この 国 の 読書 厚生 大臣 です わたくし|||くに||どくしょ|こうせい|だいじん| I'm the Minister of the Department of Reading and Welfare.

旅人 さん たびびと| Traveler,

鍵 が あなた の 所 に 行った の は 手違い で し た かぎ||||しょ||おこなった|||てちがい||| it was a mistake that the key ended up in your hands.

おわび し ます I apologize.

どう いう こと です か ? What do you mean?

( 大臣 ) あれ は 作家 と 名乗って いる あの 男 の 所 へ 行く よう ― だいじん|||さっか||なのって|||おとこ||しょ||いく| We arranged it so the key would

仕組 ん だ もの だった ん です ( キノ ) 仕組 ん だ ? しく|||||||きの|しく||

( 大臣 ) あの 男 は もともと ここ の 患者 だった の です だいじん||おとこ|||||かんじゃ||| He used to be a patient here.

( エルメス ) やっぱり I knew it!

( 大臣 ) ところ が 抜け道 を 見つけ て 逃げ出し て しまった だいじん|||ぬけみち||みつけ||にげだし|| But he found a secret passage and escaped.

私 たち は 彼 を 捕まえる ため に ワナ を 張り まし た わたくし|||かれ||つかまえる|||わな||はり|| We set a trap to catch him.

ワナ ? わな A trap?

( 大臣 ) あの 男 は この 世界 は ― だいじん||おとこ|||せかい| He believes the whole world is a fantasy that he wrote.

すべて 自分 が 書 い た 虚構 だ と 思い込 ん で いる |じぶん||しょ|||きょこう|||おもいこ|||

それ を 逆手 に とって ― ||さかて|| We tried to take advantage of that

物語 的 な 方法 で ここ へ の 通路 の 鍵 を 手 に 入れ さ せ ものがたり|てき||ほうほう|||||つうろ||かぎ||て||いれ|| and make him obtain the key to this secret passage

舞い戻って くる よう 仕向け た ん です まいもどって|||しむけ||| by weaving an elaborate story.

彼 に そう いう 役回り だ と 信じ させる こと で ね かれ||||やくまわり|||しんじ|さ せる||| He would believe it was his role to come back here.

結果 的 に 彼 も 捕まえ られ そう です けっか|てき||かれ||つかまえ||| As a result, it appears we'll be able to catch him as well.

旅人 さん もし よかったら ― たびびと||| if you'd like, we'll give you a book

お 好き な 本 を 1 冊 お礼 に 差し上げ ます よ |すき||ほん||さつ|お れい||さしあげ||

では これ を 頂 い て いき ます |||いただ|||| Then, I'll take this one.

( 大臣 ) 旅人 さん この 国 の システム の ― だいじん|たびびと|||くに||しすてむ| Shall I tell you the other purpose of our system, traveler?

もう 1 つ の 目的 を お 教え し ま しょ う か |||もくてき|||おしえ|||||

( キノ ) はい ? きの| Yes?

( 大臣 ) あの ホール に いる 連中 だいじん||ほーる|||れんちゅう Those guys in the hall.

つまり 批評 家 たち の こと です が ― |ひひょう|いえ||||| They're the critics.

彼ら を 一般 の 人 から 隔離 する ため で も ある ん です よ かれら||いっぱん||じん||かくり|||||||| It's also to keep them away from the ordinary people.

うん ちく を たれる だけ の や から All they do is expound their knowledge.

したり顔 で 本 を 採点 し て 悦 に 入って る 連中 したりがお||ほん||さいてん|||えつ||はいって||れんちゅう They get pleasure by scoring the books with their triumphant looks.

作品 を けなし て 偉く なった 気 で いる 者 たち さくひん||||えらく||き|||もの| They dispraise books and feel as if they are so important.

ヤツ ら は 人 の 楽しみ に 水 を さす 亡者 ども です やつ|||じん||たのしみ||すい|||もうじゃ|| They're crazy people who ruin other people's pleasure.

本 は … 本 の 快楽 は もっと 個人 的 な も の よ ほん||ほん||かいらく|||こじん|てき|||| Books are...

自分 1 人 の 中 に 閉じ込め て おく べき もの じぶん|じん||なか||とじこめ|||| It should be kept in one's heart.

そう 私 だけ の … フフフ フフ フフ … |わたくし||||| Yes, only in my heart.

( 職員 ) 大臣 ! た … 大変 です ! ( 大臣 ) どう し まし た ? しょくいん|だいじん||たいへん||だいじん|||| Minister!

( 職員 ) さっき の 騒ぎ で ランプ が 倒れ た らしく 本 に 火 が ! しょくいん|||さわぎ||らんぷ||たおれ|||ほん||ひ| A lamp must have fallen during the commotion

ものすごい 勢い で 燃え広がって い ます ! |いきおい||もえひろがって|| It's spreading at an enormous rate!

え … 何て こと ! |なんて| Oh, my goodness!

( 浮 浪 者 ) 消える ! 世界 が 消え て いく ! うか|ろう|もの|きえる|せかい||きえ|| Disappearing!

( 浮 浪 者 ) 消える ! 世界 が 消え て いく ! うか|ろう|もの|きえる|せかい||きえ|| Hurry up and put out the fire!

( 大臣 ) 早く 消し なさい ! だいじん|はやく|けし|

( 大臣 ) 早く 消し なさい ! だいじん|はやく|けし|

( 大臣 ) 早く 消し なさい ! だいじん|はやく|けし|

ハハハハ …

ハハハハ … Oh my goodness!

ハハハハ …

ああ どう し ま しょ う 私 の 本 が ! ||||||わたくし||ほん|

( エルメス ) みんな 本 の 亡者 だ ね 彼女 も ||ほん||もうじゃ|||かのじょ| Everybody is book crazy.

( キノ ) 行 こ う エルメス ( エルメス ) うん きの|ぎょう||||| Let's go, Hermes.

( エルメス ) で 世界 の すべて を 書き記し た 本 の 感想 は ? ||せかい||||かきしるし||ほん||かんそう| So,

あまり おもしろい と は 言 え ない ね ||||げん||| I can't say it was very interesting.

( エルメス ) それ は 想像 力 の 欠如 だ よ キノ |||そうぞう|ちから||けつじょ|||きの It's because you lack imagination, Kino.

あの 作家 さん なら そこ に は ― |さっか||||| If it was the Author, he would say,

自分 の 思い描く すべて が 書 ける ん だって 言う よ じぶん||おもいえがく|||しょ||||いう| "Everything I think of can be written there."

それ こそ 世界 の すべて を ||せかい||| That's truly everything of the world.

( キノ ) そりゃ あ 白紙 の 原稿 用紙 だ から ね きの|||はくし||げんこう|ようし||| Of course, it's all blank writing papers.

あの 人 は もう 次 の 国 に 着 い た だ ろ う か |じん|||つぎ||くに||ちゃく|||||| I wonder if he's reached the next country by now?

ありがとう キノ さん じゃあ もう 行く よ |きの||||いく| Thank you, Kino-san.

( キノ ) あの … きの| Are you really sure I can keep this book?

この 本 本当 に 頂 い て い い ん です か ? |ほん|ほんとう||いただ|||||||

( 男 ) ああ 考え た ん だ が もう それ は いら ない ん だ おとこ||かんがえ||||||||||| Yeah.

これ から は 自分 で 書く から ね |||じぶん||かく|| I'll write it myself from now on.

( エルメス ) そろそろ 何 か 現れる 予感 が する よ キノ ||なん||あらわれる|よかん||||きの I have a hunch something is going to appear soon, Kino.

( キノ ) どう し て 分かる ん だい ? エルメス きの||||わかる||| How do you know that, Hermes?

( エルメス ) 物語 の 始まり は 大抵 そう さ |ものがたり||はじまり||たいてい|| Because it's usually like that at the beginning of a story.

ほら ね See?

( 戦車 ) や あ モト ラド さん と その 運転手 さん せんしゃ|||もと|||||うんてんしゅ| Hello, motorrad and rider...

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