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三姉妹探偵団 1, 三姉妹探偵団01 chapter 05 (2)

三 姉妹 探偵 団 01 chapter 05 (2)

「── 夕 里子 」

「 うん ?

「 ずっと 友だち で いて ね 」

「 何 言って ん の 。

当り前じゃ ない 」

夕 里子 は 、 敦子 の 、 そう 言い たい 気持 が 良く 分 った 。

「── ママ !

家 の 手前 に 来て 、 敦子 は 足 を 止めた 。

敦子 の 母 が 、 小さな バッグ を 手 に 、 家 から 出て 来た のだ 。

「 どこ に 行く の ?

「 敦子 ……。

ごめんなさい 。 ママ 、 出て 行か なくちゃ なら ない から 」

「 いや よ !

どうして ──」

「 ともかく 、 しばらく は ……。

夕 里子 さん 、 すみません けど 、 後 は お 願い し ます 。 あなた は しっかり して らっしゃる から 」

夕 里子 は 、 何とも 言え なかった 。

「 どこ に 行く の ?

「 さあ ……。

お 友だち の 所 に でも 行って みる わ 」

敦子 の 母 は 寂しく 笑った 。

「 じゃ 、 連絡 する から 」

と 、 歩き 出す 。

「 ママ !

待って よ 。 パパ と 話し合って ──」

「 もう いい の よ 。

自分 で やった こと の 始末 は つけ なきゃ ね 」

と 、 敦子 の 母 は 言って 、 そのまま 足早に 歩いて 行った 。

敦子 は 家 の 中 へ 駆け込んで 行った 。

夕 里子 も 急いで 後 を 追って 中 へ 入った 。

「 パパ !

ママ が 行っちゃ うよ ! と 敦子 が 言った 。

「 紀子 が そう 決めた んだ 。

行か せて やれ 」

と 、 片瀬 が 言った 。

夕 里子 は 、 初めて 、 敦子 の 母親 の 名前 を 聞いた 。

電話 が 鳴って 、 夕 里子 が 出た 。

「 はい 、 片瀬 です 」

「 佐々 本 夕 里子 さん は い ます か ?

「 私 です 」

「 あ 、 珠美 さん が 学校 で けがし まして ね 」

「 けが ?

夕 里子 は 青く なった 。

珠美 が 、 目 の 周り を 青く して 、 唇 から 血 を 流し 、 頰 が はれ 上って 、 お 化 みたいな 顔 で 座って いた のだ 。

「 お 姉ちゃん ……」

珠美 が ニヤッ と 笑って 、 夕 里子 は ゾッと した 。

「 あんた !

── 大丈夫 ? 「 不良に 殴ら れた んだ よ 」

と 、 珠美 を 助けた 事務 室 の 男性 が 言った 。

「 お腹 も 殴ら れて る し 、 ひざ も すりむいて る し ……。 でも 、 骨 は 大丈夫 らしい けど ね 。 一応 、 レントゲン 撮って もらった 方 が いい と 思う よ 」

「 すみません 、 どうも 」

と 、 夕 里子 は 頭 を 下げた 。

「── 一体 どうして 殴ら れた の ? 「 この …… お 金 」

と 、 珠美 は 鞄 を 叩いて 、「 よこせ 、 って 」

「 知って た の ?

「 らしい 。

どうして か 分 ん ない けど 」

「 で 、 お 金 は ?

珠美 が 、 誇らしげに 、

「 やら なかった !

と 言った 。

「 あんた 、 馬鹿 ねえ 。

治療 費 の 方 が 、 よっぽど かかる じゃ ない の 」

「 でも ね 、 一 度 やったら 、 これ から だって 狙わ れる もん 。

── 先々 の 被害 まで 考えたら 、 この 方 が 得だ よ 」

夕 里子 は 、 呆れて 珠美 の 顔 を 眺めて いた 。

それ から 、 思い切った 様子 で 、 十 円 玉 を 投入 口 へ 三 枚 落とす と 、 プッシュホン の ボタン を 押した 。

腕 時計 を 見た 。 夜 の 十一 時 を 少し 過ぎて いた 。

受話器 を 持つ 手 は 、 小刻みに 震えて いた 。

── 向 う の 受話器 が 上った 。

「 もしもし 」

男 の 声 が した 。

「 私 です 」

と 、 片瀬 紀子 は 言った 。

「 どなた ?

「 片瀬 紀子 です 。

お 忘れ で は ない でしょう ね 」

やや 間 が あって 、 当惑 げ な 声 が 、

「 どちら へ お かけ です か ?

こちら は ──」

「 とぼけ ないで 下さい 。

私 が あなた に 気付いて ない と お 思い な んでしょう 。 でも あなた は 、 あの とき 、 落として 行った もの が ある んです 。 私 、 それ を 拾い ました 。 その とき は 、 何だか よく 分 ら なかった けど 、 後 で 、 たまたま 同じ 物 を 見る 機会 が あった んです 。 その とき に 気 が 付き ました ! 「 何の お 話 か 分 り ませ ん ね 」

「 お 気付き で ない はず は ない と 思い ます けども 。

── あなた は 悪魔 の ような 方 だ わ 。 私 の 家庭 を めちゃくちゃに して 」

しばらく 、 沈黙 が あった 。

「── 聞いて いらっしゃる んです か ?

と 、 紀子 は 言った 。

「 どっち で も いい わ 。 ともかく 、 私 は 、 あなた の 首 を 絞める ロープ を 握って る んです よ 」

荒い 息遣い が 、 伝わって 来た 。

「 そんな こと が できる と 思って る の かい 、 奥さん 」

あの 声 に なって いた 。

紀子 の 口元 に 、 勝ち誇った 笑み が 浮んだ 。

「 でき なくて どう する の ?

と 、 紀子 は 言った 。

「 あなた は 総 て を 失う わ 。 私 は もう 失って しまった 。 何も 怖い もの は ない わ 」

「 そうかい 」

「 覚悟 して 待って いる こと ね 。

それとも 、 自殺 する 方 が 、 まだ 救わ れる かも しれ ない けども 」

紀子 は 一 つ 息 を ついた 。

「 それ じゃ 、 私 は これ から 警察 へ 行って ──」

「 待てよ 」

「 何 か ?

「 家族 が どう なって も いい の か 」

「 どういう 意味 ?

「 教えて やろう 」

男 の 声 は 、 笑い を 含んで いた 。

「 俺 は な 、 あの 女 も 殺した んだ 」

「 あの 女 ?

「 そう 。

佐々 本 の 奴 の 家 で 見付かった 女 さ 」

「 あなた が ?

紀子 は 目 を 見開いた 。

「 そう と も 。

死体 を 押入れ に 放り込んで 、 火 を つけて やった 。 娘 っ子 共 は 生きのび や がった が 」

「 何て ひどい こと を ……」

紀子 は 青ざめた 。

「 お前 の 亭主 や 娘 が そう なって も いい の かい 」

「 何で すって ?

「 お前 が 警察 へ 行く の は 勝手だ 。

俺 に は 止め られ ない 。 お前 が どこ から 電話 を かけて る かも 分 ら ねえ んだ から な 。 だが 、 俺 も そう なりゃ 、 やけだ 。 その 間 に 、 お前 の 家族 を 皆殺し に して 火 を つけて やる 」

「 そんな こと が ──」

「 でき ねえ と 思う の か ?

俺 は そういう 男 だ 。 死刑 に なる なら 一 人 も 三 人 も 同じだ から な 」

紀子 の 額 に 汗 が 浮いた 。

唇 を なめて 、

「 はったり よ 。

すぐに 警官 が 行く わ 」

「 何分 か は かかる 。

俺 が お前 の 家 へ 行く 方 が 早い ぜ 」

紀子 は 唇 を かんだ 。

「── どう する 、 奥さん ?

「 でき っこ ない わ !

電話 が 切れた 。

紀子 は 一瞬 ためらった が 、 すぐに 受話器 を 戻し 、 もう 一 度 取り上げた 。

十 円 玉 を 入れる 。

敦子 が 、 受話器 を 上げた 。

「 片瀬 です 。

── もしもし ? 誰 も 出 ない 。

「 もしもし ? ── どなた です か ? 向 うに 誰 か が いる こと は 分 る 。

だが 、 何も しゃべろう と し ない のだ 。

片瀬 が 、 顔 を 出した 。

「── おい 、 誰 だ ?

「 分 ん ない 。

何も 言わ ない の 」

「 貸して みろ 。

── もしもし ! ── 誰 だ ね ? 紀子 は 、 お 話し 中 の 信号 音 を 聞いて 、 しまった 、 と 思った 。

すぐに 切って 、 もう 一 度 かけ 直す 。 やはり お 話し 中 である 。

紀子 は 、 電話 ボックス を 飛び出して 、 走った 。


三 姉妹 探偵 団 01 chapter 05 (2) みっ|しまい|たんてい|だん| Three Sisters Detective Agency 01 chapter 05 (2)

「── 夕 里子 」 ゆう|さとご

「 うん ?

「 ずっと 友だち で いて ね 」 |ともだち||| "Have you always been friends?"

「 何 言って ん の 。 なん|いって|| " What are you talking about .

当り前じゃ ない 」 あたりまえじゃ|

夕 里子 は 、 敦子 の 、 そう 言い たい 気持 が 良く 分 った 。 ゆう|さとご||あつこ|||いい||きもち||よく|ぶん| Yuuriko has a good sense of wanting to say so.

「── ママ ! まま

家 の 手前 に 来て 、 敦子 は 足 を 止めた 。 いえ||てまえ||きて|あつこ||あし||とどめた Coming to the front of the house, Reiko stopped his leg.

敦子 の 母 が 、 小さな バッグ を 手 に 、 家 から 出て 来た のだ 。 あつこ||はは||ちいさな|ばっぐ||て||いえ||でて|きた| A dumpling 's mother came out of the house with a small bag in her hand.

「 どこ に 行く の ? ||いく|

「 敦子 ……。 あつこ

ごめんなさい 。 ママ 、 出て 行か なくちゃ なら ない から 」 まま|でて|いか|||| Mom, because I have to go out "

「 いや よ !

どうして ──」

「 ともかく 、 しばらく は ……。 "Anyway, for a while ....

夕 里子 さん 、 すみません けど 、 後 は お 願い し ます 。 ゆう|さとご||||あと|||ねがい|| Yuuriko Excuse me, but I'm sorry, but I would like to ask for it later. あなた は しっかり して らっしゃる から 」 Because you are firm "

夕 里子 は 、 何とも 言え なかった 。 ゆう|さとご||なんとも|いえ| Yuuriko couldn't say anything.

「 どこ に 行く の ? ||いく|

「 さあ ……。

お 友だち の 所 に でも 行って みる わ 」 |ともだち||しょ|||おこなって|| I will go to my friend 's place "

敦子 の 母 は 寂しく 笑った 。 あつこ||はは||さびしく|わらった

「 じゃ 、 連絡 する から 」 |れんらく|| "Then I will contact you"

と 、 歩き 出す 。 |あるき|だす And walk out.

「 ママ ! まま

待って よ 。 まって| パパ と 話し合って ──」 ぱぱ||はなしあって

「 もう いい の よ 。

自分 で やった こと の 始末 は つけ なきゃ ね 」 じぶん|||||しまつ|||| I have to keep track of what I did myself "

と 、 敦子 の 母 は 言って 、 そのまま 足早に 歩いて 行った 。 |あつこ||はは||いって||あしばやに|あるいて|おこなった And, Reiko's mother said, and walked as fast as it went.

敦子 は 家 の 中 へ 駆け込んで 行った 。 あつこ||いえ||なか||かけこんで|おこなった Yuko ran into the house and went.

夕 里子 も 急いで 後 を 追って 中 へ 入った 。 ゆう|さとご||いそいで|あと||おって|なか||はいった Yuriko rushed into the room to follow later.

「 パパ ! ぱぱ

ママ が 行っちゃ うよ ! まま||おこなっちゃ| Mom will go! と 敦子 が 言った 。 |あつこ||いった

「 紀子 が そう 決めた んだ 。 としこ|||きめた| "Noriko decided so.

行か せて やれ 」 いか|| Let me go

と 、 片瀬 が 言った 。 |かたせ||いった Said Katase.

夕 里子 は 、 初めて 、 敦子 の 母親 の 名前 を 聞いた 。 ゆう|さとご||はじめて|あつこ||ははおや||なまえ||きいた Yuuriko first heard of Ms. Yuzu's mother's name.

電話 が 鳴って 、 夕 里子 が 出た 。 でんわ||なって|ゆう|さとご||でた The phone rang and Yuuriko came out.

「 はい 、 片瀬 です 」 |かたせ|

「 佐々 本 夕 里子 さん は い ます か ? ささ|ほん|ゆう|さとご||||| "Do you have Yuko Sasamoto?

「 私 です 」 わたくし|

「 あ 、 珠美 さん が 学校 で けがし まして ね 」 |たまみ|||がっこう||||

「 けが ?

夕 里子 は 青く なった 。 ゆう|さとご||あおく|

珠美 が 、 目 の 周り を 青く して 、 唇 から 血 を 流し 、 頰 が はれ 上って 、 お 化 みたいな 顔 で 座って いた のだ 。 たまみ||め||まわり||あおく||くちびる||ち||ながし||||のぼって||か||かお||すわって|| Suzumi bluened the eyes, shed blood from her lips, her eyes were rising, and she sat with a garish face.

「 お 姉ちゃん ……」 |ねえちゃん

珠美 が ニヤッ と 笑って 、 夕 里子 は ゾッと した 。 たまみ||||わらって|ゆう|さとご||ぞっと| Shumi smiles grinfully, and Yuuriko is chilling.

「 あんた !

── 大丈夫 ? だいじょうぶ 「 不良に 殴ら れた んだ よ 」 ふりょうに|なぐら||| "I was beaten badly."

と 、 珠美 を 助けた 事務 室 の 男性 が 言った 。 |たまみ||たすけた|じむ|しつ||だんせい||いった Said a man in the office who helped Shumi.

「 お腹 も 殴ら れて る し 、 ひざ も すりむいて る し ……。 おなか||なぐら|||||||| "I'm hungry and my knees are rubbing .... でも 、 骨 は 大丈夫 らしい けど ね 。 |こつ||だいじょうぶ||| But bones seem to be alright though. 一応 、 レントゲン 撮って もらった 方 が いい と 思う よ 」 いちおう||とって||かた||||おもう| I think it would be better for me to take a roentgen.

「 すみません 、 どうも 」

と 、 夕 里子 は 頭 を 下げた 。 |ゆう|さとご||あたま||さげた

「── 一体 どうして 殴ら れた の ? いったい||なぐら|| 「 この …… お 金 」 ||きむ

と 、 珠美 は 鞄 を 叩いて 、「 よこせ 、 って 」 |たまみ||かばん||たたいて|| And, Tamami beats the ax and says, "Get it!"

「 知って た の ? しって|| "Did you know?

「 らしい 。

どうして か 分 ん ない けど 」 ||ぶん||| I do not know why but "

「 で 、 お 金 は ? ||きむ|

珠美 が 、 誇らしげに 、 たまみ||ほこらしげに Tamami is proudly

「 やら なかった ! "I did not do it!

と 言った 。 |いった

「 あんた 、 馬鹿 ねえ 。 |ばか|

治療 費 の 方 が 、 よっぽど かかる じゃ ない の 」 ちりょう|ひ||かた|||||| The cost of treatment is not expensive.

「 でも ね 、 一 度 やったら 、 これ から だって 狙わ れる もん 。 ||ひと|たび|||||ねらわ|| "But if you do it once, you will be targeted from now on.

── 先々 の 被害 まで 考えたら 、 この 方 が 得だ よ 」 さきざき||ひがい||かんがえたら||かた||とくだ| -If you think about the damage ahead, this one is better "

夕 里子 は 、 呆れて 珠美 の 顔 を 眺めて いた 。 ゆう|さとご||あきれて|たまみ||かお||ながめて| Yuuriko was looking at the face of Tamami.

それ から 、 思い切った 様子 で 、 十 円 玉 を 投入 口 へ 三 枚 落とす と 、 プッシュホン の ボタン を 押した 。 ||おもいきった|ようす||じゅう|えん|たま||とうにゅう|くち||みっ|まい|おとす||||ぼたん||おした Then, in a state of desperation, I dropped three 10-yen coins into the insertion slot and pressed the push-phone button.

腕 時計 を 見た 。 うで|とけい||みた I saw an arm watch. 夜 の 十一 時 を 少し 過ぎて いた 。 よ||じゅういち|じ||すこし|すぎて| It was slightly past eleven o'clock in the evening.

受話器 を 持つ 手 は 、 小刻みに 震えて いた 。 じゅわき||もつ|て||こきざみに|ふるえて| The hand holding the handset was shaking in small steps.

── 向 う の 受話器 が 上った 。 むかい|||じゅわき||のぼった The handset for the future went up.

「 もしもし 」

男 の 声 が した 。 おとこ||こえ|| There was a man's voice.

「 私 です 」 わたくし|

と 、 片瀬 紀子 は 言った 。 |かたせ|としこ||いった Said Noriko Katase.

「 どなた ?

「 片瀬 紀子 です 。 かたせ|としこ| "It is Noriko Katase.

お 忘れ で は ない でしょう ね 」 |わすれ||||| It will not be forgotten "

やや 間 が あって 、 当惑 げ な 声 が 、 |あいだ|||とうわく|||こえ| There is a slight pause and an embarrassed voice,

「 どちら へ お かけ です か ? "Which are you calling for?

こちら は ──」

「 とぼけ ないで 下さい 。 ||ください "Don't blur it.

私 が あなた に 気付いて ない と お 思い な んでしょう 。 わたくし||||きづいて||||おもい|| You may not think I'm aware of you. でも あなた は 、 あの とき 、 落として 行った もの が ある んです 。 |||||おとして|おこなった|||| But at that time, there are things that you have dropped. 私 、 それ を 拾い ました 。 わたくし|||ひろい| I picked it up. その とき は 、 何だか よく 分 ら なかった けど 、 後 で 、 たまたま 同じ 物 を 見る 機会 が あった んです 。 |||なんだか||ぶん||||あと|||おなじ|ぶつ||みる|きかい||| At that time, I didn't know something well, but later, I happened to have the opportunity to see the same thing. その とき に 気 が 付き ました ! |||き||つき| I noticed that time! 「 何の お 話 か 分 り ませ ん ね 」 なんの||はなし||ぶん|||| "I don't know what you're talking about."

「 お 気付き で ない はず は ない と 思い ます けども 。 |きづき|||||||おもい|| "I think you shouldn't have noticed that though.

── あなた は 悪魔 の ような 方 だ わ 。 ||あくま|||かた|| -You are like a devil. 私 の 家庭 を めちゃくちゃに して 」 わたくし||かてい||| Mess up my home "

しばらく 、 沈黙 が あった 。 |ちんもく|| There was silence for a while.

「── 聞いて いらっしゃる んです か ? きいて||| "聞 い Do you hear me?

と 、 紀子 は 言った 。 |としこ||いった Said Noriko.

「 どっち で も いい わ 。 "But it doesn't matter. ともかく 、 私 は 、 あなた の 首 を 絞める ロープ を 握って る んです よ 」 |わたくし||||くび||しめる|ろーぷ||にぎって||| Anyway, I'm holding a rope that squeezes your neck. "

荒い 息遣い が 、 伝わって 来た 。 あらい|いきづかい||つたわって|きた A rough breath has been transmitted.

「 そんな こと が できる と 思って る の かい 、 奥さん 」 |||||おもって||||おくさん "Do you think you can do that, your wife"

あの 声 に なって いた 。 |こえ||| It was that voice.

紀子 の 口元 に 、 勝ち誇った 笑み が 浮んだ 。 としこ||くちもと||かちほこった|えみ||うかんだ At the mouth of Noriko, the winning smile came to me.

「 でき なくて どう する の ? "What are you going to do?

と 、 紀子 は 言った 。 |としこ||いった

「 あなた は 総 て を 失う わ 。 ||そう|||うしなう| "You lose everything. 私 は もう 失って しまった 。 わたくし|||うしなって| I have already lost it. 何も 怖い もの は ない わ 」 なにも|こわい||||

「 そうかい 」

「 覚悟 して 待って いる こと ね 。 かくご||まって||| "Be prepared and waiting.

それとも 、 自殺 する 方 が 、 まだ 救わ れる かも しれ ない けども 」 |じさつ||かた|||すくわ||||| Or maybe the one who commits suicide may still be saved.

紀子 は 一 つ 息 を ついた 。 としこ||ひと||いき|| Noriko has a breath.

「 それ じゃ 、 私 は これ から 警察 へ 行って ──」 ||わたくし||||けいさつ||おこなって "Well then, I will go to the police from now on ──"

「 待てよ 」 まてよ

「 何 か ? なん|

「 家族 が どう なって も いい の か 」 かぞく||||||| "What is wrong with my family?"

「 どういう 意味 ? |いみ

「 教えて やろう 」 おしえて| "Let me tell you"

男 の 声 は 、 笑い を 含んで いた 。 おとこ||こえ||わらい||ふくんで| The man's voice contained laughter.

「 俺 は な 、 あの 女 も 殺した んだ 」 おれ||||おんな||ころした| "I, I killed that girl too."

「 あの 女 ? |おんな

「 そう 。

佐々 本 の 奴 の 家 で 見付かった 女 さ 」 ささ|ほん||やつ||いえ||みつかった|おんな| "The girl I found in Sasa 's house"

「 あなた が ?

紀子 は 目 を 見開いた 。 としこ||め||みひらいた

「 そう と も 。 "That's right.

死体 を 押入れ に 放り込んで 、 火 を つけて やった 。 したい||おしいれ||ほうりこんで|ひ||| I threw the corpse into the closet and put on the fire. 娘 っ子 共 は 生きのび や がった が 」 むすめ|っこ|とも||いきのび||| The girls and their children survived and survived. "

「 何て ひどい こと を ……」 なんて||| "What awful thing ..."

紀子 は 青ざめた 。 としこ||あおざめた Noriko turned pale.

「 お前 の 亭主 や 娘 が そう なって も いい の かい 」 おまえ||ていしゅ||むすめ||||||| "Is it okay for your lord or daughter to do so?"

「 何で すって ? なんで| " What's that ?

「 お前 が 警察 へ 行く の は 勝手だ 。 おまえ||けいさつ||いく|||かってだ "It is selfish that you go to the police.

俺 に は 止め られ ない 。 おれ|||とどめ|| I can not stop it. お前 が どこ から 電話 を かけて る かも 分 ら ねえ んだ から な 。 おまえ||||でんわ|||||ぶん||||| I don't know where you are calling from. だが 、 俺 も そう なりゃ 、 やけだ 。 |おれ|||| But if I'm too, I'm sorry. その 間 に 、 お前 の 家族 を 皆殺し に して 火 を つけて やる 」 |あいだ||おまえ||かぞく||みなごろし|||ひ||| In the meantime, kill all of your family and put on the fire.

「 そんな こと が ──」 "That kind of thing ──"

「 でき ねえ と 思う の か ? |||おもう|| "Do you think you can do it?

俺 は そういう 男 だ 。 おれ|||おとこ| I am such a man. 死刑 に なる なら 一 人 も 三 人 も 同じだ から な 」 しけい||||ひと|じん||みっ|じん||おなじだ|| If it becomes a death penalty, one or three people are the same.

紀子 の 額 に 汗 が 浮いた 。 としこ||がく||あせ||ういた A sweat floated on Noriko's forehead.

唇 を なめて 、 くちびる|| Lick your lips,

「 はったり よ 。

すぐに 警官 が 行く わ 」 |けいかん||いく| A policeman will go soon

「 何分 か は かかる 。 なにぶん||| "It will take a few minutes.

俺 が お前 の 家 へ 行く 方 が 早い ぜ 」 おれ||おまえ||いえ||いく|かた||はやい| It is faster for me to go to your house "

紀子 は 唇 を かんだ 。 としこ||くちびる||

「── どう する 、 奥さん ? ||おくさん

「 でき っこ ない わ ! "I can't do it!

電話 が 切れた 。 でんわ||きれた The phone was disconnected.

紀子 は 一瞬 ためらった が 、 すぐに 受話器 を 戻し 、 もう 一 度 取り上げた 。 としこ||いっしゅん||||じゅわき||もどし||ひと|たび|とりあげた Noriko hesitated for a moment, but immediately returned the handset and picked it up again.

十 円 玉 を 入れる 。 じゅう|えん|たま||いれる Add 10 yen balls.

敦子 が 、 受話器 を 上げた 。 あつこ||じゅわき||あげた Reiko raised the handset.

「 片瀬 です 。 かたせ|

── もしもし ? 誰 も 出 ない 。 だれ||だ| No one comes out.

「 もしもし ? ── どなた です か ? 向 うに 誰 か が いる こと は 分 る 。 むかい||だれ||||||ぶん| I know that someone is on the way.

だが 、 何も しゃべろう と し ない のだ 。 |なにも||||| But, I try not to speak anything.

片瀬 が 、 顔 を 出した 。 かたせ||かお||だした Katase came out with a face.

「── おい 、 誰 だ ? |だれ|

「 分 ん ない 。 ぶん||

何も 言わ ない の 」 なにも|いわ||

「 貸して みろ 。 かして| "Let's lend it.

── もしもし ! ── 誰 だ ね ? だれ|| 紀子 は 、 お 話し 中 の 信号 音 を 聞いて 、 しまった 、 と 思った 。 としこ|||はなし|なか||しんごう|おと||きいて|||おもった Noriko thought that he had heard the signal sound while talking.

すぐに 切って 、 もう 一 度 かけ 直す 。 |きって||ひと|たび||なおす I'll cut it right away and try again. やはり お 話し 中 である 。 ||はなし|なか| I am still talking.

紀子 は 、 電話 ボックス を 飛び出して 、 走った 。 としこ||でんわ|ぼっくす||とびだして|はしった