三 姉妹 探偵 団 (2) Chapter 10 (2) みっ|しまい|たんてい|だん|chapter

「 近づいたら 、 刺し殺す から ね ！ ちかづいたら|さしころす||

「 おい 、 待て 。 |まて

落ちつけよ 」 おちつけよ

と 、 タカシ は 、 やっと 立ち上って 、「 なあ 、 何も そんなに カッカ し なくて も ──」 |たかし|||たちのぼって||なにも||かっか|||

「 私 ね 、 落ち目 の スター に 抱か れる 趣味 は ない の 」 わたくし||おちめ||すたー||いだか||しゅみ|||

この 一言 が 、 タカシ に は 応えた らしい 。 |いちげん||たかし|||こたえた|

サッと 青ざめ 、 体 が 、 はっきり 分 る ほど 震えた 。 さっと|あおざめ|からだ|||ぶん|||ふるえた

珠美 が いくら ドライで も 、 こういう 場合 、 怖い の は 当然である 。 たまみ|||どらいで|||ばあい|こわい|||とうぜんである

しまった 、 と 思った 。 ||おもった

相手 は 、 いくら 軟弱 と は いえ 、 一応 男 である 。 あいて|||なんじゃく||||いちおう|おとこ|

本気で 怒ったら ── 殺さ れる かも しれ ない 。 ほんきで|いかったら|ころさ||||

珠美 の 脳裏 を 一瞬 かすめた の は ──「 生命 保険 に 入っと け ば 良かった ！ たまみ||のうり||いっしゅん||||せいめい|ほけん||はい っと|||よかった 」 と いう 思い だった ……。 ||おもい|

しかし 、 神山 田 タカシ は 、 一向に 牙 を むき 出して 飛びかかって 来る 様子 は なかった 。 |かみやま|た|たかし||いっこうに|きば|||だして|とびかかって|くる|ようす||

そして 、 突然 …… ヘナヘナ と その 場 に 座り込む と 、 グスングスン と 泣き出した のである 。 |とつぜん|へなへな|||じょう||すわりこむ||||なきだした|

これ に は 珠美 も 呆 気 に 取ら れた 。 |||たまみ||ぼけ|き||とら|

しかし 、 演技 と いう 可能 性 も ある から 、 油断 は でき ない 。 |えんぎ|||かのう|せい||||ゆだん|||

珠美 は ジリジリ と 横 に 動いて 、 台所 の ドア の 方 へ と 近づいて 行った 。 たまみ||じりじり||よこ||うごいて|だいどころ||どあ||かた|||ちかづいて|おこなった

「── 逃げ なく たって いい ぜ 」 にげ||||

と 、 タカシ が 顔 を 上げて 、 言った 。 |たかし||かお||あげて|いった

涙 に 汚れた 顔 は 、 およそ スター の イメージ と は 程遠かった 。 なみだ||けがれた|かお|||すたー||いめーじ|||ほどとおかった

声 に も 力 が なくなって 、 まるで 別人 の ように 甘ったるい 声 に なって いる 。 こえ|||ちから||||べつじん|||あまったるい|こえ|||

「 私 が どうして 逃げる の よ 」 わたくし|||にげる||

と 、 珠美 は 、 強気 を 取り戻して 言った 。 |たまみ||つよき||とりもどして|いった

「 あんた が 出て 行く の が 筋 でしょう 」 ||でて|いく|||すじ|

「 警察 に 知らせ ない の かい ？ けいさつ||しらせ|||

「 知らせて ほしきゃ 、 知らせて やる わ よ 」 しらせて||しらせて|||

タカシ は 、 急に 老け 込んで しまった ようだった 。 たかし||きゅうに|ふけ|こんで||

ガックリ と 肩 を 落として 、 がっくり||かた||おとして

「 任せる よ 。 まかせる|

好きに して くれ 」 すきに||

と 、 投げ出す ような 口調 で 言った 。 |なげだす||くちょう||いった

珠美 は 、 椅子 を 引き寄せて 、 腰 を かけた 。 たまみ||いす||ひきよせて|こし||

「── 一一〇 番 したら 、 どう なる と 思う の ？ いちいち|ばん|||||おもう|

あんた 、 もう 歌手 と して 、 やって行け なく なる わ よ 」 ||かしゅ|||やっていけ||||

「 ああ 、 それ も 悪 か ない よ 」 |||あく|||

と 、 肩 を すくめて 、「 どうせ 落ち目 の 俺 な んだ 。 |かた||||おちめ||おれ||

やめる ふんぎり も つくって もん さ 」

「 へえ 。

分って んだ 」 タカシ は 珠美 を 見て 、 ちょっと 笑った 。 ぶん って||たかし||たまみ||みて||わらった 「── お前 、 いく つ だい ？ おまえ|||

「 十五 よ 」 じゅうご|

「 十五 か 。 じゅうご|

── 俺 に も そんな ころ が あった んだ な 」 おれ||||||||

「 いやに 年寄り じみ たこ と 言う の ね 」 |としより||||いう||

「 そりゃ そう さ 。

俺 が いくつか 知って る かい ？ おれ||いく つ か|しって|| 「 二十一って ふれ込み よ ね 。 にじゅういち って|ふれこみ|| でも 、 もう 二十四 ぐらい に なって んでしょ ？ ||にじゅうし|||| 「 二十八 だ よ 」 にじゅうはち||

「── 八 ？ やっ

呆れた ！ あきれた 「 くたびれて んだ 、 確かに 。 ||たしかに

女 の 一 人 や 二 人 、 相手 に して なきゃ たまらない よ 」 おんな||ひと|じん||ふた|じん|あいて|||||

「 あの 殺さ れた マネージャー の 奥さん と 結婚 する んじゃ なかった の ？ |ころさ||まねーじゃー||おくさん||けっこん||||

「 一 度 は その 気 に も なった けど な 。 ひと|たび|||き|||||

── 今度 は向う が びびって ん の さ 。 こんど|はむかう||びび って||| 俺 に ケチ が ついた 。 おれ|||| こう なる と 落ちる の も 早い 」 |||おちる|||はやい

「 金 の 切れ目 が 縁 の 切れ目って わけ ね 」 「 よく 分って る じゃ ない か 」 「 私 、 お 金って 大好きな の 」 と 珠美 は アッサリ と 言った 。 きむ||きれめ||えん||きれめ って||||ぶん って|||||わたくし||きむ って|だいすきな|||たまみ||||いった 「 でも 、 あんた 、 お 金 も 大して な さ そう ね 」 |||きむ||たいして||||

「 言いにくい こと を はっきり 言う 奴 だ なあ 」 いいにくい||||いう|やつ||

と 、 タカシ は 苦笑い した 。 |たかし||にがわらい|

「 口止め 料 でも 払えって の かい ？ くちどめ|りょう||はらえ って|| 「 そう 言いたい とこ だ けど 、 勘弁 して あげる わ 」 と 、 珠美 は 言った 。 |いい たい||||かんべん|||||たまみ||いった 「 その代り 、 三 日 の 文化 祭 は 無料 出演 よ 。 そのかわり|みっ|ひ||ぶんか|さい||むりょう|しゅつえん| 分った ？ ぶん った 「 タダ ？ ただ

「 留置 場 と 、 どっち が いい ？ りゅうち|じょう|||| "Which is better, the detention center?

「 分った よ ！ ぶん った| ── 金田 の 奴 に 言っと く よ 」 「 ＯＫ 。 かなだ||やつ||げん っと|||ｏｋ ── Tell the guy in Kaneda. "" OK. じゃ 、 細かい 打ち合せ を やり ま しょ 」 |こまかい|うちあわせ|||| Let's have a detailed meeting. "

「 打ち合せ ？ うちあわせ

と 、 タカシ は 目 を パチクリ さ せて 言った 。 |たかし||め|||||いった Takashi said with a snapping eye.

── 少し して 、 夕 里子 と 綾子 が 帰って 来た 。 すこし||ゆう|さとご||あやこ||かえって|きた ── After a while, Yuriko and Ayako came back.

「 あら 、 誰 か 来て る わ 」 |だれ||きて|| "Oh, somebody is coming."

と 、 夕 里子 は 言って 、「── 珠美 。 |ゆう|さとご||いって|たまみ Yuriko said, "── Tamami.

ただいま 」 I'm back "

と 声 を かけ ながら 、 居間 を 覗いた 。 |こえ||||いま||のぞいた I looked into the living room while calling out.

「 まあ 」 " Oh dear "

夕 里子 は 目 を 見開いた 。 ゆう|さとご||め||みひらいた Yuriko opened her eyes.

テーブル を 挟んで 、 珠美 が ── なぜ か 傍 に 包丁 を 置いて ── 神山 田 タカシ と 交渉 の 最中 だった 。 てーぶる||はさんで|たまみ||||そば||ほうちょう||おいて|かみやま|た|たかし||こうしょう||さい なか| With the table in between, Tamami ── for some reason put a kitchen knife beside her ── and was in the middle of negotiations with Takashi Kamiyama.

「 だめ ！ " No good !

二十五 曲 は 歌わ なきゃ 、 一一〇 番 よ ！ にじゅうご|きょく||うたわ||いちいち|ばん| Twenty-five songs must be sung, number 110! 「 勘弁 して くれ ！ かんべん|| "Please forgive me!

とても 喉 が もた ない よ 」 |のど|||| I'm very throatless. "

タカシ が 情 ない 声 を 出した 。 たかし||じょう||こえ||だした Takashi made a pitiful voice.