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江戸小話, かぜのかみおくり

かぜ の か みおくり

むかし 、 町 の やぶ医者 たち が 集まって 、 こんな 話 を して い ました 。 「 どうも この 頃 は 、 ひまで ひまで 、 困った もの だ 」 「 さよう 。 こう も ひまで は 、 その うち に 医者 の 干物 が 出来て しまう わ い 」 「 本当に 。 名医 と 呼ば れる お方 で さえ 、 あまり 客 が 来 ない そうです から 、 とても 我々 ごとき の 、・・・ おっと 、 これ は 失礼 」 「 いや 、 構い ませ ん よ 。 それにしても 借金 の 事 を 考える と 、 頭 が 痛い です な 」

ところ が ある 時 、 町 中 に は やり の 風邪 が 広まった のです 。 「 やれ 、 やれ 。 病人 が 増えた おかげ で 、 命拾い を し ました わ 」 「 頑張って 、 今 の 間 に 稼が ねば 」 やぶ医者 たち は 、 大いに 喜び 、 大いに 働き ました 。

ところが 、 それ から 二 、 三 日 する と 、 表 の 方 から 、 ♪ チンカラドンドン ♪ ほ ー い ほ い ♪ チンカラドンドン ♪ ほ ー い ほ い と 、 にぎやかな 声 が 聞こえて くる のです 。 「 これ は 一体 、 何事 じゃ 」 やぶ医者 たち が 外 に 出て みる と 、 町 の 大勢 が 風邪 の 神さま の 姿 を した 人形 を 高々 と 担ぎ 上げて 、 鐘 ( かね ) や 太鼓 ( たいこ ) を 叩き ながら 、 ♪ おん 出せ や ー い ♪ おん 出せ や ー い ♪ 風邪 の 神 さん 、 おん 出せ や ー い ♪ チンカラドンドン ♪ ほ ー い ほ い と 、 は やり の 風邪 を 追い出す 儀式 を して いる のです 。 それ を 見た やぶ医者 たち は 、 がっかり して 言い ました 。 「 ああ 、 何という 、 殺生 ( せっしょう → むごい ) な 事 を する んじゃ 。 われら に とって の 福 の 神 を 追い出す なんて 」

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )


かぜ の か みおくり

むかし 、 町 の やぶ医者 たち が 集まって 、 こんな 話 を して い ました 。 「 どうも この 頃 は 、 ひまで ひまで 、 困った もの だ 」 「 さよう 。 こう も ひまで は 、 その うち に 医者 の 干物 が 出来て しまう わ い 」 「 本当に 。 名医 と 呼ば れる お方 で さえ 、 あまり 客 が 来 ない そうです から 、 とても 我々 ごとき の 、・・・ おっと 、 これ は 失礼 」 「 いや 、 構い ませ ん よ 。 それにしても 借金 の 事 を 考える と 、 頭 が 痛い です な 」

ところ が ある 時 、 町 中 に は やり の 風邪 が 広まった のです 。 「 やれ 、 やれ 。 病人 が 増えた おかげ で 、 命拾い を し ました わ 」 「 頑張って 、 今 の 間 に 稼が ねば 」   やぶ医者 たち は 、 大いに 喜び 、 大いに 働き ました 。

ところが 、 それ から 二 、 三 日 する と 、 表 の 方 から 、 ♪ チンカラドンドン ♪ ほ ー い ほ い ♪ チンカラドンドン ♪ ほ ー い ほ い と 、 にぎやかな 声 が 聞こえて くる のです 。 「 これ は 一体 、 何事 じゃ 」   やぶ医者 たち が 外 に 出て みる と 、 町 の 大勢 が 風邪 の 神さま の 姿 を した 人形 を 高々 と 担ぎ 上げて 、 鐘 ( かね ) や 太鼓 ( たいこ ) を 叩き ながら 、 ♪ おん 出せ や ー い ♪ おん 出せ や ー い ♪ 風邪 の 神 さん 、 おん 出せ や ー い ♪ チンカラドンドン ♪ ほ ー い ほ い と 、 は やり の 風邪 を 追い出す 儀式 を して いる のです 。 それ を 見た やぶ医者 たち は 、 がっかり して 言い ました 。 「 ああ 、 何という 、 殺生 ( せっしょう → むごい ) な 事 を する んじゃ 。 われら に とって の 福 の 神 を 追い出す なんて 」

♪ ちゃん ちゃん ( おしまい )