×

LingQをより快適にするためCookieを使用しています。サイトの訪問により同意したと見なされます cookie policy.


image

JIN-仁- 完结编, JIN-仁- 完结编 #05

JIN - 仁 - 完结 编 #05

( 咲 ) え ッ … え ッ !?

≪( 三吉 ) 坂本 様 後ろ !

先生 !

先生 !

〈( 仁 ) 何 が … 起こって る んだ 〉

先生 ッ 先生 !

〈 ここ どこ だ ?〉

〈 結婚 式 ?〉

( 文 左 衛 門 ) お初 に こんな 日 が 来る た あ

〈 あれ は 成長 した お初 ちゃん な の か ?〉

〈 南 … 方 ?〉

〈 じゃあ あの 男 は 俺 の 先祖 ?〉

〈 何 だ ?〉

〈 ここ は 現代 ?〉

〈 俺 の 生まれた 家 〉

行って きま ~ す

〈 あれ は 俺 …〉

〈 じゃ ない 〉

あ ッ 体操 着

〈 どういう こと な んだ 〉

〈 お初 ちゃん が 成長 する と 俺 じゃ ない 俺 が 生まれる ?〉

お 返事 ください まし 先生 !

お初 ちゃん !

戻った 先生

お初 ちゃん が !

DIC … 何で !?

何で ! 何で ッ

戻って こい お初 ちゃん !

お初 ちゃん 戻って こい !

( 女将 ) お初 …

( 文 左 衛 門 ) これ が お初 の 運命 だった のだ

申し訳 あり ませ ん

お初 ちゃん が 大きく なる と 先生 の ご 先祖 の 方 に 嫁ぐ

すると 先生 の ご 先祖 は

本来 出会う はずの ご 先祖 と 出会わ なく なり

先生 は 今 の 先生 と して は

お 生まれ に なら ない と いう こと で ございます か ?

消えて しまった 間 に そういう 映像 を 見た んです

あの … 「 えいぞう 」 と は ?

絵巻 みたいな もの です

私 は お初 ちゃん の 命 と 引き換え に 生まれて くる

人間 な んじゃ ない でしょう か

だから あんな あり え ない ような DIC が 起こって

お初 ちゃん は 助から なく なって

その 代わり に 私 が 戻って こ れて …

では これ が

お初 ちゃん の 運命 であった と いう こと で ございましょう

でも 私 が 来 なければ

もう 少し 長く 生き られたり …

運命 であれば イカヒコーキ を 追いかけ ず と も

蝶 を 追いかけて 同じ とき に 同じ 怪我 を した の や も しれ ませ ぬ

先生 の せい で は …

前 から 感じて いた こと です けど

私 は 本当 は 誰一人 助けて い ない の かも しれ ませ ん

先生 が 助けた 方々 は

先生 が いら した から 病気 に なった

逆に 死ぬ 運命 である 方 は

助けて も 程なく 命 を 落とさ れる と いう カラ クリ の こと で ございます か

私 は 何 か を 変える こと なんて でき ない し

そんな こと 望ま れて も い ない

神 は それ を 改めて 知ら しめた んじゃ ない でしょう か

一 番 分かり やすい 形 で

龍 馬 さん が 襲わ れた んです か ?

( 勝 ) 京 の 寺田 屋 で 謀 反 を 企てた かどで

捕らえ られ そうに なった って 噂 だ

あの … 龍 馬 さん は 無事な んです か ?

逃げのびた らしい よ

先生

こっか ら 先 龍 馬 と かかわる とき に ゃあ

十分 用心 して くん な

先生 ありゃ 例の アレ かい ?

そう です

ペニシリン を 粉末 化 しよう と して る んです

どれ ちょいと

( 橘 ) あの …

咲 と 川越 に 行か れた そうで

あ ッ ≪( 橘 ) 先生 は その …

咲 の こと を いかが お 考え な ので ございましょう か

私 に できる こと は

咲 さん を 一人前 の 医者 に する こと だけ です

咲 さん も それ を 望んで いる と 思い ます

本当に そう でしょう か ?

身元 も 分かり ませ ん し

こんな 幽霊 みたいな 男 と 一緒に なろう なんて 人 いま せ ん よ

〈 俺 が 聞いた 話 は 〉

〈 あの 「 寺田 屋 事件 」 て やつ だ と 思う 〉

〈 俺 と いう 異物 を 抱え込み ながら も 〉

〈 歴史 は おそらく 〉

〈 史実 どおり に 進んで いって いる んだろう 〉

〈 龍 馬 さん の 暗殺 に 向けて 〉

《( 龍 馬 ) 南方 仁 が おれば 坂本 龍 馬 は 死な ん !》

《 助け ます よ 俺 が 》

《 この 手 で 》

〈 そんな こと は でき ない んじゃ ない だろう か 〉

〈 もし 俺 が 襲わ れた 龍 馬 さん を 助け られた と して も 〉

〈 それ は やはり つかの間 の 延命 で 〉

〈 すべて は 無 に 帰して いく ので は ない だろう か 〉

〈 歴史 の 修正 力 と でも いう もの に よって 〉

〈 だ と したら 俺 は 〉

〈 何の ため に ここ に 送ら れて きた のだろう 〉

田 之助 さん

( 田 之助 ) 先生 ちょっくら 診て ほしい やつ が いる んだ よ

( 田 之助 ) 兄さん 先生 に 来て もらった よ

私 の 兄 弟子 で ね 吉 十郎 って 役者 さ

吉 十郎 と は

あの 坂東 吉 十郎 様 で ?

≪( 田 之助 ) ああ 裸 一貫 から

名 題 まで 上りつめた 天才 役者 さ

先生 早く 診て やって くん な

失礼 し ます

鉛 縁 が 見 られ ます

鉛 中毒 です ね

鉛 ? 何 だって 兄さん は 鉛 なんか

舞台 で 使う お しろい か 何 か に 入って る んじゃ ない でしょう か

お しろ いって 塗る だけ で 中毒 に なる ような もの な の かい ?

お しろい を 落とす とき は どうして ます か ?

( 吉 十郎 ) あ ~ ッ ! う ~ ッ

咲 さ ん モルヒネ ! はい

これ かも しれ ませ ん ね

落とす とき 湯気 と 一緒に 知らず知らず の うち に

大量の お しろい を 吸い込んで しまう んじゃ ない でしょう か

先生

モルヒネ は あんまり 効か ぬ よう で 自然に おさまる の を 待ち ました が

そう です か

兄さん の 息子 の 与吉 だ よ →

ここ で 下働き を さ せて んだ

で 先生 兄さん は 治る の かい ?

鉛 を 体 の 外 に 出す 薬 が ない んです

残念です が 手足 を 切って 延命 を 図る こと しか …

じゃあ せめて もう 一 度 舞台 に 立た せる こと は 無理かい ?

舞台 です か ?

来月 の 芝居 に 出 れりゃ →

兄さん は 当たり役 の 朝比奈 を やれる の さ

もう 一 度 朝比奈 やり たい って の が 兄さん の 最後 の 望み な んだ から さ

お 気持ち は 分かり ます が 無理です

手 も 足 も 神経 が 麻痺 して る んです よ

でも やって み なきゃ 分から ねえ だろう

養生 して も ひと 月 や そこら で

動き 回れる ように する なんて 絶対 に 無理です

無理 無理 って それ でも 医者 な の かい !

無理 無理 言う だけ なら 誰 だって で きら あ

無理 ひと つ 通せ ねえ で 何 が 医者 先生 様 だ

そんだったら やめ ち まえ !

先生 に とて できる こと と …

そう です よ ね

先生 !?

吉 十郎 さん を 仁 友 堂 に 運んで も いい です か ?

壊 疽部 分 が 感染 症 を 起こして る ので

ペニシリン を 点滴 して い ます

同時に 食事 療法 も 始め ます

しらす 干し ゆず や しょうが あと ビタミン C や ミネラル

カルシウム を 多く 含んだ もの を とら せる ように して ください

咲 さ ん お 願い し ます は い

先生 方 に は 塩化 カルシウム の 製造 を 手伝って いただき ます

( 佐分利 ) 塩化 カルシウム ? はい

塩化 カルシウム で 鉛 中毒 に よる カルシウム 不足 を 補える と 思う んです

塩化 カルシウム は 「 いし ばい 」 から つくる こと が できる ので

腹壁 の 硬直 が おさまって き ました

やっぱり 塩化 カルシウム は 有効な ようです ね

お 父 っつ ぁん お 薬 効く みたいで よかった わ ね

与吉 ちゃん ?

佐分利 先生 あと お 願い し ます 何 か あったら 呼んで ください

( 佐分利 ) はい

先生 いつも に も 増して 張り切って はり まん なあ

ええ

〈 鉛 中毒 の 治療 に は 〉

〈 通常 キレート 剤 が 使用 さ れる 〉

〈 だが この 時代 に キレート 剤 を つくりだす の は 不可能だ 〉

〈 と なれば 生薬 を 調べて みる しか ない 〉

≪( 福田 ) あらゆる 中毒 に 効く …→

植物 の 中毒 に よい と さ れる …→

毒 に よる 発熱 の 解熱 作用 が ある と さ れる →

ご 注文 どおり 解毒 作用 の ある 生薬 を 集め ました

じゃあ 鉛 を 排出 する 効果 が ある か どう か

片っ端から 調べて み ましょう

あの ちなみに どう やって お 調べ に ?

ネズミ で 薬 を 試す ので ございます か ?

かわいそうです が 医術 の ため です

まず ネズミ の 蒸し 風呂 を つくり ます

お しろい が 蒸気 に 混ざり こむ よう 細工 した 蒸し 風呂 を つくり

そこ に ネズミ を 入れ ます

これ を 繰り返す こと で

まず 鉛 中毒 の 症状 を 見せる ネズミ を つくりだし

その あと その ネズミ に 生薬 を 練りこんだ エサ を 与え

その 薬 に 効き目 が ある か どう か 判断 する んです

しかし 何とも 残酷です なあ

本当に

ごめん な

感染 症 は よく なって きて る みたいで ん なあ

傷 も 乾いて き ました ね

( 吉 十郎 ) と まって くれ

一 番 と まって くん さる なら …

これ は お 芝居 の セリフ で ございます か ?

≪( 佐分利 ) 先生 この 分 やったら 舞台 立てる ん と ちゃ い ます ?

先生 !

あまりに 経過 が いい ので びっくり して

よかった わ ね 与吉 ちゃん

お 父 っつ ぁん の 芝居 見 られる かも よ

与吉 ちゃん と 吉 十郎 さん は

けんか でも して いる のでしょう か

≪( 佐分利 ) 舞台 に 立つ の は 反対 なんか も …

そんな こと せ ん と 養生 して

少し でも 長生き して ほしい ん と ちゃ い ます か ?→

吉 十郎 さん 起こし ます よ

吉 十郎 さん は 順調な ので ございます か

では 私 達 も 頑張ら ねば なり ませ ん な

はい

与吉 ちゃん 何 して る の ?

( 与吉 ) ずれて たから

ずれて おり ました か

油 お 持ち いたし ました

ちゃんと 眠ら れて いらっしゃい ます か ?

川越 から 戻ら れて

ろくに お 休み さ れて い ない ので は ?

そう だ そうだ ほら おい

そっち の 檻 の ネズミ どう です か ?

はい ただいま

先生 ちょっと 来て ください

お 願い し ます ≪( 福田 ) はい

食事 療法 と 塩化 カルシウム が 思いのほか 効いた みたいで

《 DIC … 何で !》

先生

そう です ね このまま いけば …

え ~ い

あ ~ ッ !

動ける …

先生

何 か ご 心配な こと でも …

とても よい 経過 だ と 思わ れる のです が

信じ られ ない ほど いい です

何 か おかしい んじゃ ない か って ぐらい

え ッ ?

福田 先生 残り の ネズミ は ?

改善 は さ れて おり ませ ん でした

他 に 生薬 は ない んです か ?

私 の 知る かぎり 効く と 思わ れる もの は

本当に もう ない んです か ?

何 千 種類 も 薬 が あって 効く もの が ひと つ も ない んです か ?

先生 !?

すいません 興奮 して

あれ 何で だ ?

少し のめりこみ すぎて は おら れ ませ ぬ か ?

負け たく ない んです

歴史 の 修正 力 に

修正 力

これ まで 何度 も 治した と 思ったら

足 もと を すくわ れて の 繰り返し でした から

今回 は 完璧に 治し たい んです

ここ で 負けたら

私 は 認める しか なくなる んです

自分 に できる こと は

ほんの 少し の 延命 だけ で

結局 は 何も 変える こと は でき ない んだ って

延命 だけ で は いけない のです か ?

すべて の 医術 は しょせん

延命 に しか すぎ ぬ ので は ございませ ぬ か ?

未来 が いかに 進んだ 世 か は 存じ ませ ぬ が

人 は やはり 死ぬ ので ございましょう ?

それ は …

勝つ の 負ける の おっしゃい ます が

吉 十郎 さん を 鉛 中毒 から 完璧に 救え

70 まで 生き延び させた と して も

先生 が ここ に 来 なければ

そもそも そういう 運命 であった と いう 考え から する と

それ とて 勝った と いう こと に は なら ぬ ので は ございませ ぬ か ?

じゃあ

私 は 何の ため に ここ に 送ら れて きた んでしょう か

( 物音 )

( 吉 十郎 ) どこ やった 与吉 !

何 やって は る んで っか やめ な は れ

何 が あった んです か ?

こいつ が 俺 の ホン を 捨て や がった んだ よ

ホン ? 歌舞伎 の ホン だ よ

今度 やる 曽我 対面 だけ が ねえ んだ よ !

《 与吉 ちゃん 何 して る の ?》

やった ん か ? お前

芝居 なんか せ ん と 長生き して ほしい から か ?

( 吉 十郎 ) そんな ん じゃ ねえ んだ よ 先生

こいつ は なあ 俺 の こと が 嫌いで 嫌いで しかた が ねえ んだ よ

俺 が 舞台 に 立つ の を 邪魔 し たい だけ な んだ よ

そう だ よ なあ

何とか 言え この 野郎 ! 吉 十郎 さん !

治療 やめ ます よ

事情 は 知ら ん けど 子供 を 殴ら せる ため に

あんた を 治して る ん と ちゃ う

吉 十郎 さん も 佐分利 先生 も

ちょっと 待って ください

与吉

荷物 まとめろ

待って ください 吉 十郎 さん

行く こと ない ここ に おり !

今度 は ここ の 厄介 者 に なる つもり か ?

とりあえず 行って 様子 を 見て き ます

投薬 やめたら どう なる か 分かり ませ ん し

では 支度 を いたし ます

≪( 吉 十郎 ) 逢って くん さる か →

いかにも ~→

そい つ あ 近頃 か っち け ねえ

さらば 二 人 を 呼び出す べ え か ~

よく あんなに 動け ます ね

あ ッ …

大丈夫です か ? 吉 十郎 さん

で え じょうぶだ

これ …

≪( 役者 ) やっぱり 無理な んじゃ ねえ か ?

ありゃ 駄目だ よ 大丈夫な の か ?

で え じょうぶだ よ !

俺 は でき んだ よ

ああ ッ 吉 十郎 さん

ここ で 無理 したら ≪( 佐分利 ) ちょっと す ん ま へん

ちょっと す ん ま へん

て め え やぶ医者

ああ ~ もう 大丈夫 大丈夫

私 が 痛み止め 打ち 忘れた ん や

ちょ ちょ ちょっと 治せ ます さかい 心配 せ ん と いて ください

≪( 役者 達 ) 医者 が そう 言う なら よ 本番 は しっかり 頼んだ ぞ

( 佐分利 ) す ん ま へんな

≪( 役者 ) しっかり して くれよ

芝居 に 出る の は 考え 直した ほう が いい と 思い ます このまま 続ければ

舞台 に 立つ 前 に 亡くなって しまう こと だって あり え ます

どうして そこ まで して

舞台 に 立た なければ なら ない んです か ?

それ が 役者 だ から です か ?

親 だ から さ

親 ?

言わ ない ど いて くれよ

口止め さ れて る んだ から

はい

兄さん は 役者 バカ って やつで ね →

芸 の 肥やし って 言っちゃ あ 飲む 打つ 買う を 繰り返し →

女房 と まだ 言葉 も 出 ねえ 与吉 を →

面倒 くせ え って 追い出し ち まった の さ →

だけど 今度 は その 母親 に 男 が できた らしくて ね

行く 場所 の なくなった 与吉 は

ここ に 転がりこんで きた って わけ さ →

その頃 兄さん は もう 体 を 悪く して たし →

長く ない だろう から →

何とか 道 を つけて やろう と →

躍起に なって 芝居 の 稽古 を さ せよう と した の さ

《 ほら 立つ んだ よ 》

≪( 田 之助 ) けど あの 子 も 強情で →

まったく 覚えよう と し なくて さ

《 与吉 !》

≪( 田 之助 ) ついに 手 が 出る ように な っち まって

与吉 は 与吉 で 口 も きか なく な っち まって さ

与吉 ちゃん は どうして 稽古 を し なかった のです か ?

芸 の ため に 捨て られた 与吉 に は

役者 稼業 は 恨み で しか ない んだろう さ

それ なら しかた ねえ 奉公 の 口 を 探したら どう かって

兄さん に 相談 を 持ちかけた んだ よ そ したら さ …

《 田 之助 》

《 与吉 に 俺 の 芝居 を 見 しちゃ やれ ねえ だろう か 》

《 一 日 だけ で いい 》

《 朝比奈 を やらして もらえ ねえ かって 》

《 座頭 に 頼んじゃ くれ ねえ か ?》

《 兄さん 悪い けど のめ ない よ 》

《 こんな 役者 を 客 の 前 に 出しちゃ 》

《 座 の 名折れ だ 》

《 俺 が 与吉 に 残して やれる もん は もう それ しか ねえ んだ よ 》

《 兄さん 》

《 俺 は 人間 の クズ だ 》

《 恨ま れて 当然だ 》

《 今さら 謝って 許して もらおう と 思っちゃ いね えし 》

《 そんな くせ え 芝居 なんて でき ねえ よ 》

《 けど よ 俺 が すべて を 注いだ 芸 だけ は 》

《 見せて やりて えん だ よ 》

《 今 の まま じゃ よ 》

《 あいつ クズ の 親父 から 生まれて きた んだ と 思って 》

《 生きて いく しか ねえ だろう よ 》

《 けど よ 》

《 その クズ に も たった ひと つ だけ でも 》

《 取り柄 が あった って 思えりゃ 》

《 生きて いく の も ち っと は ましに なる って もんじゃ ねえ か 》

《 田 之助 後生 だ 》

《 田 之助 …》

兄さん に とっちゃ 手足 を 切って 生きながらえる こと は

大して 値打ち が ない の さ

先生

命 の 値打ち って の は

長 さ だけ な の かい ?

さっき は 何で かばって くれた ん だい ?

私 は 医術 を 極め たい んです

だから あんた が 最後 まで 芸 を 極め たい 言う 気持ち は 分かる

おう

自分 の 気持ち に 振り回さ れて

患者 を ちゃんと 診 れて い なかった です

長生き さ せる こと ばかり に とらわれて

先生 が ここ に 送ら れて きた 目的 は

一人一人 の 命 を 救う こと と は 違う もの な ので は ない でしょう か

どういう こと です か ?

もっと 大きな

一人一人 の 世 の 営み を 超えた もの の ため と いい ます か

何と は 言え ぬ のです が

世 の 営み を 超える もの

何という 薬 です か ? これ は

吉 十郎 さん の 落ち込んで いる 体 の 働き を

もと に 戻す こと を 考えて 調合 した ので 名前 と 言わ れる と

ありがとう ございます

使わ せて いただき ます

はい

いる わきゃ ねえ か

すぐ 点滴 打ち ます さかい に

( 横 松 ) ここ に も ゴム を 配すれば 動き やすく なる ので は …

なるほど

一 番 と まって くん さる なら

ありがた 茄子 の …

《 こいつ は なあ 俺 の こと が 》

《 嫌いで 嫌いで しかた が ねえ んだ よ 》

どう です か ?

( 横 松 ) よい 感じ です

ふん !

何 して る んです か ? 咲 さ ん

ふん ッ

ふん !

ふん ッ !

これ は …

やはり

もって くれよ

何 か あって も 私ら が 舞台 の 袖 に い ます から

あり が と な 先生

吉 十郎 さん お 芝居 楽しみに して ます ね

おう

与吉 ちゃん 捜して まいり ます ね

さて と

俺 も 田 之助 に 礼 の ひと つ でも 言って くる かな

与吉 ちゃん

≪( 座頭 ) 吉 十郎 で え じょうぶ か !

兄さん 立てる かい ?

廊下 が 濡れて て 滑 っち まった だけ だい

よい しょ

あ ッ

おかしい な

( 座頭 ) 吉 十郎 残念だ が 諦めて くん ねえ か

≪( 座頭 ) 何 が 起こる か 分か ん ねえ 役者 を

客 の 前 に 出す わけに は いか ん よ

いい じゃ ねえ か 動け なく なった って

血 ヘド 吐いて 倒れた って

それ が 最高に かぶ いた 芝居 に 見せ れりゃ いい だけ の 話 だ ろ !

能書き ばっかり 並べて んじゃ ねえ よ

そんな こと できる わけ ねえ だろう が !

大丈夫です

必ず 立てる ように し ます

実は ひと つ 策 が

( 吉 十郎 の うなり 声 )

( 田 之助 ) 兄さん ! 部屋 に 運び ましょう

吉 十郎 さん 聞こえ ます か ?

聞こえ ます か ?

かぶ いた 芝居 だった ろ ?

芝居 だった んです か ?

やっぱり よ

芝居 は 俺 だけ の もん じゃ ねえ もん な

( 足音 )

( 拍手 )

始ま っち まった な

ちき しょう

もう ちょっと だった のに な

吉 十郎 さん 体 起こせ ます か ?

立つ ため の 道具 です

芝居 中 立て なく なったら と 思って つくって みた んです

さて

これ から は 祐 経 殿 へ

折り入って 頼み が ある →

頼んで おいた 二 人 の …

本当 は 吉 十郎 さん が

お 芝居 の こと ばかり 考えて る の が 悔しくて …

だから こんな こと した んでしょ ?

≪( 吉 十郎 ) すりゃ

逢って くん さる か

死に そうに なって いて も

与吉 ちゃん に は ひと言 も なし に

お 芝居 の こと ばかり で

ひどい お 父 っつ ぁん よ ね

だけど ほんと は

言い たかった こと たくさん あって

でも 素直に 言え なく なって た だけ じゃ ない か な

与吉 ちゃん と 同じ ように

お 父 っつ ぁん 今 与吉 ちゃん に

話しかけよう と して る んじゃ ない か な

う う ~

うわ ~ ッ

うわ ッ うわ ~!

( 吉 十郎 の うなり 声 )

≪( 与吉 ) や … 大和屋

大和屋 ~ ッ !

あい すま ぬ

ああ ッ

あいす ま ~ ぬ !

与吉 ~!

よ ッ 日本 一 !

〈 つかの間 の 延命 〉

〈 もしかしたら 延命 に すら なって い ない の かも しれ ない 〉

〈 こうした こと で 命 を 縮めた 可能 性 すら ある 〉

〈 だけど この 瞬間 に は 〉

〈 長 さ で は 語れ ない 命 の 意味 が ある 〉

〈 残さ れた 時間 を 輝か せる と いう 〉

〈 医療 の 意味 が ある 〉

さらば ~!

田 之助 さん おい ら

お 父 っつ ぁん の 跡 を 継ぎ たい です

仕込んで もらえ ませ ん か ?

楽な 世界 じゃ ない よ

はい

〈 世代 を 超え 受け継が れて いく 芸 の ように 〉

〈 世 の 営み を 超えて いく もの 〉

〈 歴史 の 修正 力 に あら が える もの を 〉

〈 俺 も 残し たい 〉

な ッ 何 ゆえ !?

え ッ 間違え ました ?

咲 さ ん 何 を した んです か ?

消毒 用 の アルコール を つくろう と

高 濃度 の アルコール に

蒸留 水 を 加えた ところ …

( 山田 ) これ は 水 で は ございませ ぬ

ペニシリン で ございます する と

100 パーセント 近い アルコール の 脱水 作用 で

ペニシリン が 結晶 化 した んです

これ を こせば

ペニシリン の 粉末 が 取り出せ ます

ばんざい ばん ざ ~ い

ばんざい あ ~ ッ

ばんざい

坂本 様 は 何と ?

亀山 社 中 で ペニシリン を 扱う こと は でき ない か と

何 か ご 心配な こと が ?

龍 馬 さん に 今 かかわる こと は

仁 友 堂 に とって 危険な んじゃ ない か って

では 何の ため に ペニシリン の 粉末 化 を ?

ここ で 行か ず に して

どこ で 行く ので ございます か

これ は 仁 友 堂 の 使命 で ございます

では

はい

〈 行こう 龍 馬 さん の ところ へ 〉

見て て くれよ

お初 ちゃん


JIN - 仁 - 完结 编 #05 |しとし|かん结|

( 咲 ) え ッ …  え ッ !? さ||||

≪( 三吉 ) 坂本 様   後ろ ! みよし|さかもと|さま|うしろ

先生 ! せんせい

先生 ! せんせい

〈( 仁 ) 何 が …  起こって る んだ 〉 しとし|なん||おこって||

先生 ッ   先生 ! せんせい||せんせい

〈 ここ   どこ だ ?〉

〈 結婚 式 ?〉 けっこん|しき

( 文 左 衛 門 ) お初 に こんな 日 が 来る た あ ぶん|ひだり|まもる|もん|おはつ|||ひ||くる||

〈 あれ は 成長 した   お初 ちゃん な の か ?〉 ||せいちょう||おはつ||||

〈 南 …  方 ?〉 みなみ|かた

〈 じゃあ   あの 男 は   俺 の 先祖 ?〉 ||おとこ||おれ||せんぞ

〈 何 だ ?〉 なん|

〈 ここ は 現代 ?〉 ||げんだい

〈 俺 の   生まれた 家 〉 おれ||うまれた|いえ

行って きま ~ す おこなって||

〈 あれ は   俺 …〉 ||おれ

〈 じゃ ない 〉

あ ッ   体操 着 ||たいそう|ちゃく

〈 どういう こと な んだ 〉

〈 お初 ちゃん が 成長 する と 俺 じゃ ない 俺 が 生まれる ?〉 おはつ|||せいちょう|||おれ|||おれ||うまれる

お 返事 ください まし   先生 ! |へんじ|||せんせい

お初 ちゃん ! おはつ|

戻った 先生 もどった|せんせい

お初 ちゃん が ! おはつ||

DIC …  何で !? |なんで

何で !  何で ッ なんで|なんで|

戻って こい   お初 ちゃん ! もどって||おはつ|

お初 ちゃん   戻って こい ! おはつ||もどって|

( 女将 ) お初 … おかみ|おはつ

( 文 左 衛 門 ) これ が お初 の 運命 だった のだ ぶん|ひだり|まもる|もん|||おはつ||うんめい||

申し訳 あり ませ ん もうし わけ|||

お初 ちゃん が 大きく なる と 先生 の ご 先祖 の 方 に 嫁ぐ おはつ|||おおきく|||せんせい|||せんぞ||かた||とつぐ

すると   先生 の ご 先祖 は |せんせい|||せんぞ|

本来   出会う はずの ご 先祖 と 出会わ なく なり ほんらい|であう|||せんぞ||であわ||

先生 は   今 の 先生 と して は せんせい||いま||せんせい|||

お 生まれ に なら ない と いう こと で ございます か ? |うまれ|||||||||

消えて しまった 間 に そういう 映像 を 見た んです きえて||あいだ|||えいぞう||みた|ん です

あの … 「 えいぞう 」 と は ?

絵巻 みたいな もの です えまき|||

私 は   お初 ちゃん の 命 と 引き換え に 生まれて くる わたくし||おはつ|||いのち||ひきかえ||うまれて|

人間 な んじゃ ない でしょう か にんげん|||||

だから   あんな   あり え ない ような DIC が 起こって ||||||||おこって

お初 ちゃん は   助から なく なって おはつ|||たすから||

その 代わり に   私 が 戻って こ れて … |かわり||わたくし||もどって||

では   これ が

お初 ちゃん の 運命 であった と いう こと で ございましょう おはつ|||うんめい||||||

でも   私 が 来 なければ |わたくし||らい|

もう 少し 長く   生き られたり … |すこし|ながく|いき|

運命 であれば イカヒコーキ を 追いかけ ず と も うんめい||||おいかけ|||

蝶 を 追いかけて   同じ とき に 同じ 怪我 を した の や も しれ ませ ぬ ちょう||おいかけて|おなじ|||おなじ|けが||||||||

先生 の せい で は … せんせい||||

前 から 感じて いた こと です けど ぜん||かんじて||||

私 は 本当 は   誰一人 助けて い ない の かも しれ ませ ん わたくし||ほんとう||だれひとり|たすけて|||||||

先生 が 助けた 方々 は せんせい||たすけた|ほうぼう|

先生 が   いら した から 病気 に なった せんせい|||||びょうき||

逆に   死ぬ 運命 である 方 は ぎゃくに|しぬ|うんめい||かた|

助けて も   程なく 命 を 落とさ れる と いう カラ クリ の こと で ございます か たすけて||ほどなく|いのち||おとさ||||から|くり|||||

私 は   何 か を 変える こと なんて でき ない し わたくし||なん|||かえる|||||

そんな こと   望ま れて も い ない ||のぞま||||

神 は   それ を 改めて 知ら しめた んじゃ ない でしょう か かみ||||あらためて|しら|||||

一 番   分かり やすい 形 で ひと|ばん|わかり||かた|

龍 馬 さん が   襲わ れた んです か ? りゅう|うま|||おそわ||ん です|

( 勝 ) 京 の 寺田 屋 で 謀 反 を 企てた かどで か|けい||てらた|や||はかりごと|はん||くわだてた|

捕らえ られ そうに なった って 噂 だ とらえ||そう に|||うわさ|

あの … 龍 馬 さん は   無事な んです か ? |りゅう|うま|||ぶじな|ん です|

逃げのびた らしい よ にげのびた||

先生 せんせい

こっか ら 先 龍 馬 と   かかわる とき に ゃあ ||さき|りゅう|うま|||||

十分   用心 して くん な じゅうぶん|ようじん|||

先生   ありゃ   例の アレ かい ? せんせい||れいの||

そう です

ペニシリン を 粉末 化 しよう と して る んです ||ふんまつ|か|||||ん です

どれ   ちょいと

( 橘 ) あの … たちばな|

咲 と   川越 に 行か れた そうで さ||かわごえ||いか||そう で

あ ッ ≪( 橘 ) 先生 は   その … ||たちばな|せんせい||

咲 の こと を   いかが お 考え な ので ございましょう か さ||||||かんがえ||||

私 に   できる こと は わたくし||||

咲 さん を 一人前 の 医者 に する こと だけ です さ|||いちにんまえ||いしゃ|||||

咲 さん も それ を 望んで いる と 思い ます さ|||||のぞんで|||おもい|

本当に   そう でしょう か ? ほんとうに|||

身元 も 分かり ませ ん し みもと||わかり|||

こんな 幽霊 みたいな 男 と 一緒に なろう なんて 人   いま せ ん よ |ゆうれい||おとこ||いっしょに|||じん||||

〈 俺 が 聞いた 話 は 〉 おれ||きいた|はなし|

〈 あの 「 寺田 屋 事件 」 て やつ だ と 思う 〉 |てらた|や|じけん|||||おもう

〈 俺 と いう 異物 を 抱え込み ながら も 〉 おれ|||いぶつ||かかえこみ||

〈 歴史 は   おそらく 〉 れきし||

〈 史実 どおり に 進んで いって いる んだろう 〉 しじつ|||すすんで|||

〈 龍 馬 さん の 暗殺 に 向けて 〉 りゅう|うま|||あんさつ||むけて

《( 龍 馬 ) 南方 仁 が おれば 坂本 龍 馬 は 死な ん !》 りゅう|うま|なんぽう|しとし|||さかもと|りゅう|うま||しな|

《 助け ます よ   俺 が 》 たすけ|||おれ|

《 この 手 で 》 |て|

〈 そんな こと は でき ない んじゃ ない だろう か 〉

〈 もし 俺 が   襲わ れた 龍 馬 さん を 助け られた と して も 〉 |おれ||おそわ||りゅう|うま|||たすけ||||

〈 それ は   やはり つかの間 の 延命 で 〉 |||つかのま||えんめい|

〈 すべて は   無 に 帰して いく ので は ない だろう か 〉 ||む||かえして||||||

〈 歴史 の 修正 力 と でも いう もの に よって 〉 れきし||しゅうせい|ちから||||||

〈 だ と したら   俺 は 〉 |||おれ|

〈 何の ため に ここ に 送ら れて きた のだろう 〉 なんの|||||おくら|||

田 之助 さん た|ゆきじょ|

( 田 之助 ) 先生   ちょっくら 診て ほしい やつ が いる んだ よ た|ゆきじょ|せんせい||みて||||||

( 田 之助 ) 兄さん 先生 に 来て もらった よ た|ゆきじょ|にいさん|せんせい||きて||

私 の 兄 弟子 で ね   吉 十郎 って 役者 さ わたくし||あに|でし|||きち|じゅうろう||やくしゃ|

吉 十郎 と は きち|じゅうろう||

あの   坂東 吉 十郎 様 で ? |ばんどう|きち|じゅうろう|さま|

≪( 田 之助 ) ああ   裸 一貫 から た|ゆきじょ||はだか|いっかん|

名 題 まで 上りつめた 天才 役者 さ な|だい||のぼりつめた|てんさい|やくしゃ|

先生   早く 診て やって くん な せんせい|はやく|みて|||

失礼 し ます しつれい||

鉛 縁 が 見 られ ます なまり|えん||み||

鉛 中毒 です ね なまり|ちゅうどく||

鉛 ?  何 だって   兄さん は 鉛 なんか なまり|なん||にいさん||なまり|

舞台 で 使う   お しろい か 何 か に 入って る んじゃ ない でしょう か ぶたい||つかう||||なん|||はいって|||||

お しろ いって   塗る だけ で 中毒 に なる ような もの な の かい ? |||ぬる|||ちゅうどく|||||||

お しろい を 落とす とき は どうして ます か ? |||おとす|||||

( 吉 十郎 ) あ ~ ッ !  う ~ ッ きち|じゅうろう||||

咲 さ ん   モルヒネ ! はい さ|||もるひね|

これ かも しれ ませ ん ね

落とす とき   湯気 と 一緒に 知らず知らず の うち に おとす||ゆげ||いっしょに|しらずしらず|||

大量の お しろい を   吸い込んで しまう んじゃ ない でしょう か たいりょうの||||すいこんで|||||

先生 せんせい

モルヒネ は   あんまり 効か ぬ よう で 自然に   おさまる の を 待ち ました が もるひね|||きか||||しぜんに||||まち||

そう です か

兄さん の 息子 の 与吉 だ よ → にいさん||むすこ||よきち||

ここ で   下働き を さ せて んだ ||したばたらき||||

で   先生   兄さん は 治る の かい ? |せんせい|にいさん||なおる||

鉛 を 体 の 外 に 出す 薬 が ない んです なまり||からだ||がい||だす|くすり|||ん です

残念です が   手足 を 切って 延命 を 図る こと しか … ざんねん です||てあし||きって|えんめい||はかる||

じゃあ   せめて   もう 一 度 舞台 に 立た せる こと は 無理かい ? |||ひと|たび|ぶたい||たた||||むりかい

舞台 です か ? ぶたい||

来月 の 芝居 に 出 れりゃ → らいげつ||しばい||だ|

兄さん は 当たり役 の 朝比奈 を やれる の さ にいさん||あたりやく||あさひな||||

もう 一 度   朝比奈 やり たい って の が 兄さん の 最後 の 望み な んだ から さ |ひと|たび|あさひな||||||にいさん||さいご||のぞみ||||

お 気持ち は 分かり ます が   無理です |きもち||わかり|||むり です

手 も 足 も 神経 が 麻痺 して る んです よ て||あし||しんけい||まひ|||ん です|

でも   やって み なきゃ 分から ねえ だろう ||||わから||

養生 して も   ひと 月 や そこら で ようじょう||||つき|||

動き 回れる ように する なんて 絶対 に 無理です うごき|まわれる|よう に|||ぜったい||むり です

無理 無理 って それ でも 医者 な の かい ! むり|むり||||いしゃ|||

無理 無理   言う だけ なら 誰 だって で きら あ むり|むり|いう|||だれ||||

無理 ひと つ   通せ ねえ で 何 が   医者 先生 様 だ むり|||とおせ|||なん||いしゃ|せんせい|さま|

そんだったら   やめ ち まえ !

先生 に とて   できる こと と … せんせい|||||

そう です よ ね

先生 !? せんせい

吉 十郎 さん を 仁 友 堂 に 運んで も いい です か ? きち|じゅうろう|||しとし|とも|どう||はこんで||||

壊 疽部 分 が 感染 症 を 起こして る ので こわ|そぶ|ぶん||かんせん|しょう||おこして||

ペニシリン を 点滴 して い ます ||てんてき|||

同時に   食事 療法 も 始め ます どうじに|しょくじ|りょうほう||はじめ|

しらす 干し   ゆず や   しょうが あと   ビタミン C や ミネラル |ほし|||||びたみん|||みねらる

カルシウム を 多く 含んだ もの を とら せる ように して ください かるしうむ||おおく|ふくんだ|||||よう に||

咲 さ ん   お 願い し ます は い さ||||ねがい||||

先生 方 に は   塩化 カルシウム の 製造 を 手伝って いただき ます せんせい|かた|||えんか|かるしうむ||せいぞう||てつだって||

( 佐分利 ) 塩化 カルシウム ? はい さぶり|えんか|かるしうむ|

塩化 カルシウム で   鉛 中毒 に よる カルシウム 不足 を 補える と 思う んです えんか|かるしうむ||なまり|ちゅうどく|||かるしうむ|ふそく||おぎなえる||おもう|ん です

塩化 カルシウム は  「 いし ばい 」 から つくる こと が できる ので えんか|かるしうむ|||||||||

腹壁 の 硬直 が   おさまって き ました ふくへき||こうちょく||||

やっぱり   塩化 カルシウム は 有効な ようです ね |えんか|かるしうむ||ゆうこうな|よう です|

お 父 っつ ぁん お 薬   効く みたいで   よかった わ ね |ちち||||くすり|きく||||

与吉 ちゃん ? よきち|

佐分利 先生   あと   お 願い し ます 何 か あったら 呼んで ください さぶり|せんせい|||ねがい|||なん|||よんで|

( 佐分利 ) はい さぶり|

先生   いつも に も 増して 張り切って はり まん なあ せんせい||||まして|はりきって|||

ええ

〈 鉛 中毒 の 治療 に は 〉 なまり|ちゅうどく||ちりょう||

〈 通常   キレート 剤 が 使用 さ れる 〉 つうじょう||ざい||しよう||

〈 だが   この 時代 に キレート 剤 を つくりだす の は 不可能だ 〉 ||じだい|||ざい|||||ふかのうだ

〈 と なれば 生薬 を 調べて みる しか ない 〉 ||しょうやく||しらべて|||

≪( 福田 ) あらゆる 中毒 に 効く …→ ふくた||ちゅうどく||きく

植物 の 中毒 に   よい と さ れる …→ しょくぶつ||ちゅうどく|||||

毒 に よる 発熱 の 解熱 作用 が ある と さ れる → どく|||はつねつ||げねつ|さよう|||||

ご 注文 どおり 解毒 作用 の ある 生薬 を 集め ました |ちゅうもん||げどく|さよう|||しょうやく||あつめ|

じゃあ 鉛 を 排出 する 効果 が ある か どう か |なまり||はいしゅつ||こうか|||||

片っ端から 調べて み ましょう かたっぱしから|しらべて||

あの   ちなみに どう やって   お 調べ に ? |||||しらべ|

ネズミ で 薬 を 試す ので ございます か ? ねずみ||くすり||ためす|||

かわいそうです が   医術 の ため です かわいそう です||いじゅつ|||

まず ネズミ の 蒸し 風呂 を つくり ます |ねずみ||むし|ふろ|||

お しろい が   蒸気 に 混ざり こむ よう 細工 した 蒸し 風呂 を つくり |||じょうき||まざり|||さいく||むし|ふろ||

そこ に   ネズミ を 入れ ます ||ねずみ||いれ|

これ を 繰り返す こと で ||くりかえす||

まず   鉛 中毒 の 症状 を 見せる ネズミ を つくりだし |なまり|ちゅうどく||しょうじょう||みせる|ねずみ||

その あと   その ネズミ に 生薬 を 練りこんだ エサ を 与え |||ねずみ||しょうやく||ねりこんだ|えさ||あたえ

その 薬 に   効き目 が ある か どう か 判断 する んです |くすり||ききめ||||||はんだん||ん です

しかし   何とも 残酷です なあ |なんとも|ざんこく です|

本当に ほんとうに

ごめん な

感染 症 は よく なって きて る みたいで ん なあ かんせん|しょう||||||||

傷 も 乾いて き ました ね きず||かわいて|||

( 吉 十郎 ) と まって くれ きち|じゅうろう|||

一 番   と まって くん さる なら … ひと|ばん|||||

これ は お 芝居 の セリフ で ございます か ? |||しばい||せりふ|||

≪( 佐分利 ) 先生   この 分 やったら 舞台   立てる ん と ちゃ い ます ? さぶり|せんせい||ぶん||ぶたい|たてる|||||

先生 ! せんせい

あまりに 経過 が いい ので びっくり して |けいか|||||

よかった わ ね   与吉 ちゃん |||よきち|

お 父 っつ ぁん の 芝居 見 られる かも よ |ちち||||しばい|み|||

与吉 ちゃん と 吉 十郎 さん は よきち|||きち|じゅうろう||

けんか でも して いる のでしょう か

≪( 佐分利 ) 舞台 に 立つ の は 反対 なんか も … さぶり|ぶたい||たつ|||はんたい||

そんな こと せ ん と   養生 して |||||ようじょう|

少し でも 長生き して ほしい ん と ちゃ い ます か ?→ すこし||ながいき||||||||

吉 十郎 さん   起こし ます よ きち|じゅうろう||おこし||

吉 十郎 さん は 順調な ので ございます か きち|じゅうろう|||じゅんちょうな|||

では 私 達 も   頑張ら ねば なり ませ ん な |わたくし|さとる||がんばら|||||

はい

与吉 ちゃん   何 して る の ? よきち||なん|||

( 与吉 ) ずれて たから よきち||

ずれて おり ました か

油   お 持ち いたし ました あぶら||もち||

ちゃんと 眠ら れて いらっしゃい ます か ? |ねむら||||

川越 から 戻ら れて かわごえ||もどら|

ろくに お 休み さ れて い ない ので は ? ||やすみ||||||

そう だ   そうだ   ほら   おい ||そう だ||

そっち の 檻 の ネズミ   どう です か ? ||おり||ねずみ|||

はい   ただいま

先生   ちょっと 来て ください せんせい||きて|

お 願い し ます ≪( 福田 ) はい |ねがい|||ふくた|

食事 療法 と 塩化 カルシウム が 思いのほか   効いた みたいで しょくじ|りょうほう||えんか|かるしうむ||おもいのほか|きいた|

《 DIC …  何で !》 |なんで

先生 せんせい

そう です ね   このまま いけば …

え ~ い

あ ~ ッ !

動ける … うごける

先生 せんせい

何 か   ご 心配な こと でも … なん|||しんぱいな||

とても よい 経過 だ と 思わ れる のです が ||けいか|||おもわ||の です|

信じ られ ない ほど   いい です しんじ|||||

何 か おかしい んじゃ ない か って ぐらい なん|||||||

え ッ ?

福田 先生   残り の ネズミ は ? ふくた|せんせい|のこり||ねずみ|

改善 は   さ れて おり ませ ん でした かいぜん|||||||

他 に 生薬 は   ない んです か ? た||しょうやく|||ん です|

私 の 知る かぎり 効く と 思わ れる もの は わたくし||しる||きく||おもわ|||

本当に   もう ない んです か ? ほんとうに|||ん です|

何 千 種類 も 薬 が あって   効く もの が ひと つ も ない んです か ? なん|せん|しゅるい||くすり|||きく|||||||ん です|

先生 !? せんせい

すいません   興奮 して |こうふん|

あれ   何で だ ? |なんで|

少し   のめりこみ すぎて は おら れ ませ ぬ か ? すこし||||||||

負け たく ない んです まけ|||ん です

歴史 の 修正 力 に れきし||しゅうせい|ちから|

修正 力 しゅうせい|ちから

これ まで 何度 も   治した と 思ったら ||なんど||なおした||おもったら

足 もと を すくわ れて の 繰り返し でした から あし||||||くりかえし||

今回 は   完璧に 治し たい んです こんかい||かんぺきに|なおし||ん です

ここ で 負けたら ||まけたら

私 は   認める しか なくなる んです わたくし||みとめる|||ん です

自分 に できる こと は じぶん||||

ほんの 少し の 延命 だけ で |すこし||えんめい||

結局 は   何も 変える こと は でき ない んだ って けっきょく||なにも|かえる||||||

延命 だけ で は   いけない のです か ? えんめい|||||の です|

すべて の 医術 は   しょせん ||いじゅつ||

延命 に しか すぎ ぬ ので は ございませ ぬ か ? えんめい|||||||||

未来 が   いかに 進んだ 世 か は 存じ ませ ぬ が みらい|||すすんだ|よ|||ぞんじ|||

人 は   やはり 死ぬ ので ございましょう ? じん|||しぬ||

それ は …

勝つ の 負ける の   おっしゃい ます が かつ||まける||||

吉 十郎 さん を 鉛 中毒 から   完璧に 救え きち|じゅうろう|||なまり|ちゅうどく||かんぺきに|すくえ

70 まで   生き延び させた と して も |いきのび|さ せた|||

先生 が   ここ に 来 なければ せんせい||||らい|

そもそも   そういう 運命 であった と いう 考え から する と ||うんめい||||かんがえ|||

それ とて   勝った と いう こと に は なら ぬ ので は ございませ ぬ か ? ||かった||||||||||||

じゃあ

私 は   何の ため に ここ に 送ら れて きた んでしょう か わたくし||なんの|||||おくら||||

( 物音 ) ものおと

( 吉 十郎 ) どこ やった   与吉 ! きち|じゅうろう|||よきち

何 やって は る んで っか   やめ な は れ なん|||||||||

何 が あった んです か ? なん|||ん です|

こいつ が 俺 の ホン を 捨て や がった んだ よ ||おれ||ほん||すて||||

ホン ? 歌舞伎 の ホン だ よ ほん|かぶき||ほん||

今度 やる 曽我 対面 だけ が   ねえ んだ よ ! こんど||そが|たいめん|||||

《 与吉 ちゃん   何 して る の ?》 よきち||なん|||

やった ん か ?  お前 |||おまえ

芝居 なんか せ ん と 長生き して ほしい から か ? しばい|||||ながいき||||

( 吉 十郎 ) そんな ん じゃ ねえ んだ よ   先生 きち|じゅうろう|||||||せんせい

こいつ は なあ   俺 の こと が 嫌いで 嫌いで   しかた が ねえ んだ よ |||おれ||||きらいで|きらいで|||||

俺 が 舞台 に 立つ の を 邪魔 し たい だけ な んだ よ おれ||ぶたい||たつ|||じゃま||||||

そう だ よ なあ

何とか 言え   この 野郎 ! 吉 十郎 さん ! なんとか|いえ||やろう|きち|じゅうろう|

治療   やめ ます よ ちりょう|||

事情 は 知ら ん けど 子供 を 殴ら せる ため に じじょう||しら|||こども||なぐら|||

あんた を 治して る ん と ちゃ う ||なおして|||||

吉 十郎 さん も   佐分利 先生 も きち|じゅうろう|||さぶり|せんせい|

ちょっと 待って ください |まって|

与吉 よきち

荷物   まとめろ にもつ|

待って ください   吉 十郎 さん まって||きち|じゅうろう|

行く こと ない   ここ に おり ! いく|||||

今度 は ここ の 厄介 者 に なる つもり か ? こんど||||やっかい|もの||||

とりあえず 行って 様子 を 見て き ます |おこなって|ようす||みて||

投薬 やめたら どう なる か 分かり ませ ん し とうやく|||||わかり|||

では   支度 を いたし ます |したく|||

≪( 吉 十郎 ) 逢って くん さる か → きち|じゅうろう|あって|||

いかにも ~→

そい つ あ   近頃   か っち け ねえ |||ちかごろ||||

さらば 二 人 を   呼び出す べ え か ~ |ふた|じん||よびだす|||

よく   あんなに 動け ます ね ||うごけ||

あ ッ …

大丈夫です か ?  吉 十郎 さん だいじょうぶ です||きち|じゅうろう|

で え じょうぶだ

これ …

≪( 役者 ) やっぱり 無理な んじゃ ねえ か ? やくしゃ||むりな|||

ありゃ   駄目だ よ 大丈夫な の か ? |だめだ||だいじょうぶな||

で え じょうぶだ よ !

俺 は   でき んだ よ おれ||||

ああ ッ 吉 十郎 さん ||きち|じゅうろう|

ここ で 無理 したら ≪( 佐分利 ) ちょっと   す ん ま へん ||むり||さぶり|||||

ちょっと   す ん ま へん

て め え   やぶ医者 |||やぶいしゃ

ああ ~  もう 大丈夫   大丈夫 ||だいじょうぶ|だいじょうぶ

私 が 痛み止め   打ち 忘れた ん や わたくし||いたみどめ|うち|わすれた||

ちょ ちょ ちょっと   治せ ます さかい 心配 せ ん と いて ください |||なおせ|||しんぱい|||||

≪( 役者 達 ) 医者 が   そう 言う なら よ 本番 は   しっかり 頼んだ ぞ やくしゃ|さとる|いしゃ|||いう|||ほんばん|||たのんだ|

( 佐分利 ) す ん ま へんな さぶり||||

≪( 役者 ) しっかり して くれよ やくしゃ|||

芝居 に 出る の は   考え 直した ほう が いい と 思い ます   このまま 続ければ しばい||でる|||かんがえ|なおした|||||おもい|||つづければ

舞台 に 立つ 前 に   亡くなって しまう こと だって   あり え ます ぶたい||たつ|ぜん||なくなって||||||

どうして   そこ まで して

舞台 に 立た なければ なら ない んです か ? ぶたい||たた||||ん です|

それ が   役者 だ から です か ? ||やくしゃ||||

親 だ から さ おや|||

親 ? おや

言わ ない ど いて くれよ いわ||||

口止め さ れて る んだ から くちどめ|||||

はい

兄さん は   役者 バカ って やつで ね → にいさん||やくしゃ|ばか|||

芸 の 肥やし って 言っちゃ あ 飲む   打つ   買う を 繰り返し → げい||こやし||いっちゃ||のむ|うつ|かう||くりかえし

女房 と   まだ 言葉 も 出 ねえ 与吉 を → にょうぼう|||ことば||だ||よきち|

面倒 くせ え って 追い出し ち まった の さ → めんどう||||おいだし||||

だけど   今度 は その 母親 に 男 が できた らしくて ね |こんど|||ははおや||おとこ||||

行く 場所 の なくなった 与吉 は いく|ばしょ|||よきち|

ここ に 転がりこんで きた って わけ さ → ||ころがりこんで||||

その頃   兄さん は もう 体 を 悪く して たし → そのころ|にいさん|||からだ||わるく||

長く ない だろう から → ながく|||

何とか   道 を つけて やろう と → なんとか|どう||||

躍起に なって 芝居 の 稽古 を さ せよう と した の さ やっきに||しばい||けいこ|||||||

《 ほら   立つ んだ よ 》 |たつ||

≪( 田 之助 ) けど   あの 子 も 強情で → た|ゆきじょ|||こ||ごうじょうで

まったく 覚えよう と し なくて さ |おぼえよう||||

《 与吉 !》 よきち

≪( 田 之助 ) ついに 手 が 出る ように な っち まって た|ゆきじょ||て||でる|よう に|||

与吉 は 与吉 で 口 も きか なく な っち まって さ よきち||よきち||くち|||||||

与吉 ちゃん は   どうして 稽古 を し なかった のです か ? よきち||||けいこ||||の です|

芸 の ため に 捨て られた 与吉 に は げい||||すて||よきち||

役者 稼業 は 恨み で しか ない んだろう さ やくしゃ|かぎょう||うらみ|||||

それ なら   しかた ねえ 奉公 の 口 を 探したら どう かって ||||ほうこう||くち||さがしたら||

兄さん に 相談 を 持ちかけた んだ よ そ したら さ … にいさん||そうだん||もちかけた|||||

《 田 之助 》 た|ゆきじょ

《 与吉 に   俺 の 芝居 を 見 しちゃ やれ ねえ だろう か 》 よきち||おれ||しばい||み|||||

《 一 日 だけ で いい 》 ひと|ひ|||

《 朝比奈 を やらして もらえ ねえ かって 》 あさひな|||||

《 座頭 に 頼んじゃ くれ ねえ か ?》 ざがしら||たのんじゃ|||

《 兄さん   悪い けど   のめ ない よ 》 にいさん|わるい||||

《 こんな 役者 を 客 の 前 に 出しちゃ 》 |やくしゃ||きゃく||ぜん||だしちゃ

《 座 の 名折れ だ 》 ざ||なおれ|

《 俺 が 与吉 に 残して やれる もん は もう   それ しか ねえ んだ よ 》 おれ||よきち||のこして|||||||||

《 兄さん 》 にいさん

《 俺 は   人間 の クズ だ 》 おれ||にんげん||くず|

《 恨ま れて 当然だ 》 うらま||とうぜんだ

《 今さら   謝って 許して もらおう と 思っちゃ いね えし 》 いまさら|あやまって|ゆるして|||おもっちゃ||

《 そんな くせ え 芝居 なんて   でき ねえ よ 》 |||しばい||||

《 けど よ 俺 が   すべて を 注いだ 芸 だけ は 》 ||おれ||||そそいだ|げい||

《 見せて やりて えん だ よ 》 みせて||||

《 今 の まま じゃ よ 》 いま||||

《 あいつ   クズ の 親父 から 生まれて きた んだ と 思って 》 |くず||おやじ||うまれて||||おもって

《 生きて いく しか ねえ だろう よ 》 いきて|||||

《 けど よ 》

《 その クズ に も たった ひと つ だけ でも 》 |くず|||||||

《 取り柄 が あった って 思えりゃ 》 とりえ||||おもえりゃ

《 生きて いく の も   ち っと は ましに なる って もんじゃ ねえ か 》 いきて||||||||||||

《 田 之助   後生 だ 》 た|ゆきじょ|ごしょう|

《 田 之助 …》 た|ゆきじょ

兄さん に とっちゃ   手足 を 切って 生きながらえる こと は にいさん|||てあし||きって|いきながらえる||

大して   値打ち が ない の さ たいして|ねうち||||

先生 せんせい

命 の 値打ち って の は いのち||ねうち|||

長 さ だけ な の かい ? ちょう|||||

さっき は 何で   かばって くれた ん だい ? ||なんで||||

私 は   医術 を 極め たい んです わたくし||いじゅつ||きわめ||ん です

だから   あんた が 最後 まで 芸 を 極め たい 言う 気持ち は 分かる |||さいご||げい||きわめ||いう|きもち||わかる

おう

自分 の 気持ち に 振り回さ れて じぶん||きもち||ふりまわさ|

患者 を ちゃんと 診 れて い なかった です かんじゃ|||み||||

長生き さ せる こと ばかり に とらわれて ながいき||||||

先生 が   ここ に 送ら れて きた 目的 は せんせい||||おくら|||もくてき|

一人一人 の 命 を 救う こと と は 違う もの な ので は ない でしょう か ひとりひとり||いのち||すくう||||ちがう|||||||

どういう こと です か ?

もっと 大きな |おおきな

一人一人 の 世 の 営み を 超えた もの の ため   と いい ます か ひとりひとり||よ||いとなみ||こえた|||||||

何と は 言え ぬ のです が なんと||いえ||の です|

世 の 営み を 超える もの よ||いとなみ||こえる|

何という 薬 です か ?  これ は なんという|くすり||||

吉 十郎 さん の 落ち込んで いる 体 の 働き を きち|じゅうろう|||おちこんで||からだ||はたらき|

もと に 戻す こと を 考えて 調合 した ので   名前 と 言わ れる と ||もどす|||かんがえて|ちょうごう|||なまえ||いわ||

ありがとう ございます

使わ せて いただき ます つかわ|||

はい

いる わきゃ ねえ か

すぐ 点滴   打ち ます さかい に |てんてき|うち|||

( 横 松 ) ここ に も   ゴム を 配すれば 動き やすく なる ので は … よこ|まつ||||ごむ||はいすれば|うごき||||

なるほど

一 番   と まって くん さる なら ひと|ばん|||||

ありがた 茄子 の … |なす|

《 こいつ は なあ   俺 の こと が 》 |||おれ|||

《 嫌いで 嫌いで しかた が ねえ んだ よ 》 きらいで|きらいで|||||

どう です か ?

( 横 松 ) よい 感じ です よこ|まつ||かんじ|

ふん !

何 して る んです か ?  咲 さ ん なん|||ん です||さ||

ふん ッ

ふん !

ふん ッ !

これ は …

やはり

もって くれよ

何 か あって も   私ら が 舞台 の 袖 に   い ます から なん||||わたしら||ぶたい||そで||||

あり が と な   先生 ||||せんせい

吉 十郎 さん お 芝居   楽しみに して ます ね きち|じゅうろう|||しばい|たのしみに|||

おう

与吉 ちゃん   捜して まいり ます ね よきち||さがして|||

さて と

俺 も   田 之助 に 礼 の ひと つ でも 言って くる かな おれ||た|ゆきじょ||れい|||||いって||

与吉 ちゃん よきち|

≪( 座頭 ) 吉 十郎   で え じょうぶ か ! ざがしら|きち|じゅうろう||||

兄さん   立てる かい ? にいさん|たてる|

廊下 が 濡れて て 滑 っち まった だけ だい ろうか||ぬれて||すべ||||

よい しょ

あ ッ

おかしい な

( 座頭 ) 吉 十郎   残念だ が 諦めて くん ねえ か ざがしら|きち|じゅうろう|ざんねんだ||あきらめて|||

≪( 座頭 ) 何 が 起こる か 分か ん ねえ 役者 を ざがしら|なん||おこる||わか|||やくしゃ|

客 の 前 に 出す わけに は いか ん よ きゃく||ぜん||だす|||||

いい じゃ ねえ か 動け なく なった って ||||うごけ|||

血 ヘド   吐いて 倒れた って ち||はいて|たおれた|

それ が 最高に   かぶ いた 芝居 に 見せ れりゃ いい だけ の 話 だ ろ ! ||さいこうに|||しばい||みせ|||||はなし||

能書き ばっかり 並べて んじゃ ねえ よ のうがき||ならべて|||

そんな こと できる わけ ねえ だろう が !

大丈夫です だいじょうぶ です

必ず   立てる ように し ます かならず|たてる|よう に||

実は   ひと つ   策 が じつは|||さく|

( 吉 十郎 の うなり 声 ) きち|じゅうろう|||こえ

( 田 之助 ) 兄さん ! 部屋 に 運び ましょう た|ゆきじょ|にいさん|へや||はこび|

吉 十郎 さん   聞こえ ます か ? きち|じゅうろう||きこえ||

聞こえ ます か ? きこえ||

かぶ いた 芝居 だった ろ ? ||しばい||

芝居   だった んです か ? しばい||ん です|

やっぱり よ

芝居 は 俺 だけ の もん じゃ ねえ もん な しばい||おれ|||||||

( 足音 ) あしおと

( 拍手 ) はくしゅ

始ま っち まった な はじま|||

ちき しょう

もう ちょっと だった のに な

吉 十郎 さん   体   起こせ ます か ? きち|じゅうろう||からだ|おこせ||

立つ ため の 道具 です たつ|||どうぐ|

芝居 中   立て なく なったら と 思って つくって みた んです しばい|なか|たて||||おもって|||ん です

さて

これ から は   祐 経 殿 へ |||たすく|へ|しんがり|

折り入って   頼み が ある → おりいって|たのみ||

頼んで おいた   二 人 の … たのんで||ふた|じん|

本当 は   吉 十郎 さん が ほんとう||きち|じゅうろう||

お 芝居 の こと ばかり 考えて る の が 悔しくて … |しばい||||かんがえて||||くやしくて

だから こんな こと   した んでしょ ?

≪( 吉 十郎 ) すりゃ きち|じゅうろう|

逢って くん さる か あって|||

死に そうに なって いて も しに|そう に|||

与吉 ちゃん に は   ひと言 も なし に よきち||||ひとこと|||

お 芝居 の こと ばかり で |しばい||||

ひどい   お 父 っつ ぁん よ ね ||ちち||||

だけど   ほんと は

言い たかった こと   たくさん あって いい||||

でも   素直に 言え なく なって た だけ じゃ ない か な |すなおに|いえ||||||||

与吉 ちゃん と 同じ ように よきち|||おなじ|よう に

お 父 っつ ぁん   今   与吉 ちゃん に |ちち|||いま|よきち||

話しかけよう と して る んじゃ ない か な はなしかけよう|||||||

う う ~

うわ ~ ッ

うわ ッ   うわ ~!

( 吉 十郎 の うなり 声 ) きち|じゅうろう|||こえ

≪( 与吉 ) や …  大和屋 よきち||やまとや

大和屋 ~ ッ ! やまとや|

あい すま ぬ

ああ ッ

あいす ま ~ ぬ !

与吉 ~! よきち

よ ッ   日本 一 ! ||にっぽん|ひと

〈 つかの間 の 延命 〉 つかのま||えんめい

〈 もしかしたら   延命 に すら なって い ない の かも しれ ない 〉 |えんめい|||||||||

〈 こうした こと で 命 を 縮めた 可能 性 すら ある 〉 |||いのち||ちぢめた|かのう|せい||

〈 だけど   この 瞬間 に は 〉 ||しゅんかん||

〈 長 さ で は 語れ ない 命 の 意味 が ある 〉 ちょう||||かたれ||いのち||いみ||

〈 残さ れた 時間 を 輝か せる と いう 〉 のこさ||じかん||かがやか|||

〈 医療 の 意味 が ある 〉 いりょう||いみ||

さらば ~!

田 之助 さん   おい ら た|ゆきじょ|||

お 父 っつ ぁん の 跡 を 継ぎ たい です |ちち||||あと||つぎ||

仕込んで もらえ ませ ん か ? しこんで||||

楽な 世界 じゃ ない よ らくな|せかい|||

はい

〈 世代 を 超え 受け継が れて いく 芸 の ように 〉 せだい||こえ|うけつが|||げい||よう に

〈 世 の 営み を 超えて いく もの 〉 よ||いとなみ||こえて||

〈 歴史 の 修正 力 に あら が える もの を 〉 れきし||しゅうせい|ちから||||||

〈 俺 も 残し たい 〉 おれ||のこし|

な ッ   何 ゆえ !? ||なん|

え ッ   間違え ました ? ||まちがえ|

咲 さ ん   何 を した んです か ? さ|||なん|||ん です|

消毒 用 の アルコール を つくろう と しょうどく|よう||あるこーる|||

高 濃度 の アルコール に たか|のうど||あるこーる|

蒸留 水 を 加えた ところ … じょうりゅう|すい||くわえた|

( 山田 ) これ は 水 で は ございませ ぬ やまだ|||すい||||

ペニシリン で ございます する と

100 パーセント 近い   アルコール の 脱水 作用 で ぱーせんと|ちかい|あるこーる||だっすい|さよう|

ペニシリン が 結晶 化 した んです ||けっしょう|か||ん です

これ を   こせば

ペニシリン の 粉末 が 取り出せ ます ||ふんまつ||とりだせ|

ばんざい ばん ざ ~ い

ばんざい   あ ~ ッ

ばんざい

坂本 様 は   何と ? さかもと|さま||なんと

亀山 社 中 で ペニシリン を 扱う こと は でき ない か と かめやま|しゃ|なか||||あつかう||||||

何 か   ご 心配な こと が ? なん|||しんぱいな||

龍 馬 さん に 今   かかわる こと は りゅう|うま|||いま|||

仁 友 堂 に とって 危険な んじゃ ない か って しとし|とも|どう|||きけんな||||

では 何の ため に   ペニシリン の 粉末 化 を ? |なんの|||||ふんまつ|か|

ここ で 行か ず に して ||いか|||

どこ で 行く ので ございます か ||いく|||

これ は 仁 友 堂 の 使命 で ございます ||しとし|とも|どう||しめい||

では

はい

〈 行こう   龍 馬 さん の ところ へ 〉 いこう|りゅう|うま||||

見て て くれよ みて||

お初 ちゃん おはつ|