JIN - 仁 - 完结 编 #05
( 咲 ) え ッ … え ッ !?
≪( 三吉 ) 坂本 様 後ろ !
先生 !
先生 !
〈( 仁 ) 何 が … 起こって る んだ 〉
先生 ッ 先生 !
〈 ここ どこ だ ?〉
〈 結婚 式 ?〉
( 文 左 衛 門 ) お初 に こんな 日 が 来る た あ
〈 あれ は 成長 した お初 ちゃん な の か ?〉
〈 南 … 方 ?〉
〈 じゃあ あの 男 は 俺 の 先祖 ?〉
〈 何 だ ?〉
〈 ここ は 現代 ?〉
〈 俺 の 生まれた 家 〉
行って きま ~ す
〈 あれ は 俺 …〉
〈 じゃ ない 〉
あ ッ 体操 着
〈 どういう こと な んだ 〉
〈 お初 ちゃん が 成長 する と 俺 じゃ ない 俺 が 生まれる ?〉
お 返事 ください まし 先生 !
お初 ちゃん !
戻った 先生
お初 ちゃん が !
DIC … 何で !?
何で ! 何で ッ
戻って こい お初 ちゃん !
お初 ちゃん 戻って こい !
( 女将 ) お初 …
( 文 左 衛 門 ) これ が お初 の 運命 だった のだ
申し訳 あり ませ ん
お初 ちゃん が 大きく なる と 先生 の ご 先祖 の 方 に 嫁ぐ
すると 先生 の ご 先祖 は
本来 出会う はずの ご 先祖 と 出会わ なく なり
先生 は 今 の 先生 と して は
お 生まれ に なら ない と いう こと で ございます か ?
消えて しまった 間 に そういう 映像 を 見た んです
あの … 「 えいぞう 」 と は ?
絵巻 みたいな もの です
私 は お初 ちゃん の 命 と 引き換え に 生まれて くる
人間 な んじゃ ない でしょう か
だから あんな あり え ない ような DIC が 起こって
お初 ちゃん は 助から なく なって
その 代わり に 私 が 戻って こ れて …
では これ が
お初 ちゃん の 運命 であった と いう こと で ございましょう
でも 私 が 来 なければ
もう 少し 長く 生き られたり …
運命 であれば イカヒコーキ を 追いかけ ず と も
蝶 を 追いかけて 同じ とき に 同じ 怪我 を した の や も しれ ませ ぬ
先生 の せい で は …
前 から 感じて いた こと です けど
私 は 本当 は 誰一人 助けて い ない の かも しれ ませ ん
先生 が 助けた 方々 は
先生 が いら した から 病気 に なった
逆に 死ぬ 運命 である 方 は
助けて も 程なく 命 を 落とさ れる と いう カラ クリ の こと で ございます か
私 は 何 か を 変える こと なんて でき ない し
そんな こと 望ま れて も い ない
神 は それ を 改めて 知ら しめた んじゃ ない でしょう か
一 番 分かり やすい 形 で
龍 馬 さん が 襲わ れた んです か ?
( 勝 ) 京 の 寺田 屋 で 謀 反 を 企てた かどで
捕らえ られ そうに なった って 噂 だ
あの … 龍 馬 さん は 無事な んです か ?
逃げのびた らしい よ
先生
こっか ら 先 龍 馬 と かかわる とき に ゃあ
十分 用心 して くん な
先生 ありゃ 例の アレ かい ?
そう です
ペニシリン を 粉末 化 しよう と して る んです
どれ ちょいと
( 橘 ) あの …
咲 と 川越 に 行か れた そうで
あ ッ ≪( 橘 ) 先生 は その …
咲 の こと を いかが お 考え な ので ございましょう か
私 に できる こと は
咲 さん を 一人前 の 医者 に する こと だけ です
咲 さん も それ を 望んで いる と 思い ます
本当に そう でしょう か ?
身元 も 分かり ませ ん し
こんな 幽霊 みたいな 男 と 一緒に なろう なんて 人 いま せ ん よ
〈 俺 が 聞いた 話 は 〉
〈 あの 「 寺田 屋 事件 」 て やつ だ と 思う 〉
〈 俺 と いう 異物 を 抱え込み ながら も 〉
〈 歴史 は おそらく 〉
〈 史実 どおり に 進んで いって いる んだろう 〉
〈 龍 馬 さん の 暗殺 に 向けて 〉
《( 龍 馬 ) 南方 仁 が おれば 坂本 龍 馬 は 死な ん !》
《 助け ます よ 俺 が 》
《 この 手 で 》
〈 そんな こと は でき ない んじゃ ない だろう か 〉
〈 もし 俺 が 襲わ れた 龍 馬 さん を 助け られた と して も 〉
〈 それ は やはり つかの間 の 延命 で 〉
〈 すべて は 無 に 帰して いく ので は ない だろう か 〉
〈 歴史 の 修正 力 と でも いう もの に よって 〉
〈 だ と したら 俺 は 〉
〈 何の ため に ここ に 送ら れて きた のだろう 〉
田 之助 さん
( 田 之助 ) 先生 ちょっくら 診て ほしい やつ が いる んだ よ
( 田 之助 ) 兄さん 先生 に 来て もらった よ
私 の 兄 弟子 で ね 吉 十郎 って 役者 さ
吉 十郎 と は
あの 坂東 吉 十郎 様 で ?
≪( 田 之助 ) ああ 裸 一貫 から
名 題 まで 上りつめた 天才 役者 さ
先生 早く 診て やって くん な
失礼 し ます
鉛 縁 が 見 られ ます
鉛 中毒 です ね
鉛 ? 何 だって 兄さん は 鉛 なんか
舞台 で 使う お しろい か 何 か に 入って る んじゃ ない でしょう か
お しろ いって 塗る だけ で 中毒 に なる ような もの な の かい ?
お しろい を 落とす とき は どうして ます か ?
( 吉 十郎 ) あ ~ ッ ! う ~ ッ
咲 さ ん モルヒネ ! はい
これ かも しれ ませ ん ね
落とす とき 湯気 と 一緒に 知らず知らず の うち に
大量の お しろい を 吸い込んで しまう んじゃ ない でしょう か
先生
モルヒネ は あんまり 効か ぬ よう で 自然に おさまる の を 待ち ました が
そう です か
兄さん の 息子 の 与吉 だ よ →
ここ で 下働き を さ せて んだ
で 先生 兄さん は 治る の かい ?
鉛 を 体 の 外 に 出す 薬 が ない んです
残念です が 手足 を 切って 延命 を 図る こと しか …
じゃあ せめて もう 一 度 舞台 に 立た せる こと は 無理かい ?
舞台 です か ?
来月 の 芝居 に 出 れりゃ →
兄さん は 当たり役 の 朝比奈 を やれる の さ
もう 一 度 朝比奈 やり たい って の が 兄さん の 最後 の 望み な んだ から さ
お 気持ち は 分かり ます が 無理です
手 も 足 も 神経 が 麻痺 して る んです よ
でも やって み なきゃ 分から ねえ だろう
養生 して も ひと 月 や そこら で
動き 回れる ように する なんて 絶対 に 無理です
無理 無理 って それ でも 医者 な の かい !
無理 無理 言う だけ なら 誰 だって で きら あ
無理 ひと つ 通せ ねえ で 何 が 医者 先生 様 だ
そんだったら やめ ち まえ !
先生 に とて できる こと と …
そう です よ ね
先生 !?
吉 十郎 さん を 仁 友 堂 に 運んで も いい です か ?
壊 疽部 分 が 感染 症 を 起こして る ので
ペニシリン を 点滴 して い ます
同時に 食事 療法 も 始め ます
しらす 干し ゆず や しょうが あと ビタミン C や ミネラル
カルシウム を 多く 含んだ もの を とら せる ように して ください
咲 さ ん お 願い し ます は い
先生 方 に は 塩化 カルシウム の 製造 を 手伝って いただき ます
( 佐分利 ) 塩化 カルシウム ? はい
塩化 カルシウム で 鉛 中毒 に よる カルシウム 不足 を 補える と 思う んです
塩化 カルシウム は 「 いし ばい 」 から つくる こと が できる ので
腹壁 の 硬直 が おさまって き ました
やっぱり 塩化 カルシウム は 有効な ようです ね
お 父 っつ ぁん お 薬 効く みたいで よかった わ ね
与吉 ちゃん ?
佐分利 先生 あと お 願い し ます 何 か あったら 呼んで ください
( 佐分利 ) はい
先生 いつも に も 増して 張り切って はり まん なあ
ええ
〈 鉛 中毒 の 治療 に は 〉
〈 通常 キレート 剤 が 使用 さ れる 〉
〈 だが この 時代 に キレート 剤 を つくりだす の は 不可能だ 〉
〈 と なれば 生薬 を 調べて みる しか ない 〉
≪( 福田 ) あらゆる 中毒 に 効く …→
植物 の 中毒 に よい と さ れる …→
毒 に よる 発熱 の 解熱 作用 が ある と さ れる →
ご 注文 どおり 解毒 作用 の ある 生薬 を 集め ました
じゃあ 鉛 を 排出 する 効果 が ある か どう か
片っ端から 調べて み ましょう
あの ちなみに どう やって お 調べ に ?
ネズミ で 薬 を 試す ので ございます か ?
かわいそうです が 医術 の ため です
まず ネズミ の 蒸し 風呂 を つくり ます
お しろい が 蒸気 に 混ざり こむ よう 細工 した 蒸し 風呂 を つくり
そこ に ネズミ を 入れ ます
これ を 繰り返す こと で
まず 鉛 中毒 の 症状 を 見せる ネズミ を つくりだし
その あと その ネズミ に 生薬 を 練りこんだ エサ を 与え
その 薬 に 効き目 が ある か どう か 判断 する んです
しかし 何とも 残酷です なあ
本当に
ごめん な
感染 症 は よく なって きて る みたいで ん なあ
傷 も 乾いて き ました ね
( 吉 十郎 ) と まって くれ
一 番 と まって くん さる なら …
これ は お 芝居 の セリフ で ございます か ?
≪( 佐分利 ) 先生 この 分 やったら 舞台 立てる ん と ちゃ い ます ?
先生 !
あまりに 経過 が いい ので びっくり して
よかった わ ね 与吉 ちゃん
お 父 っつ ぁん の 芝居 見 られる かも よ
与吉 ちゃん と 吉 十郎 さん は
けんか でも して いる のでしょう か
≪( 佐分利 ) 舞台 に 立つ の は 反対 なんか も …
そんな こと せ ん と 養生 して
少し でも 長生き して ほしい ん と ちゃ い ます か ?→
吉 十郎 さん 起こし ます よ
吉 十郎 さん は 順調な ので ございます か
では 私 達 も 頑張ら ねば なり ませ ん な
はい
与吉 ちゃん 何 して る の ?
( 与吉 ) ずれて たから
ずれて おり ました か
油 お 持ち いたし ました
ちゃんと 眠ら れて いらっしゃい ます か ?
川越 から 戻ら れて
ろくに お 休み さ れて い ない ので は ?
そう だ そうだ ほら おい
そっち の 檻 の ネズミ どう です か ?
はい ただいま
先生 ちょっと 来て ください
お 願い し ます ≪( 福田 ) はい
食事 療法 と 塩化 カルシウム が 思いのほか 効いた みたいで
《 DIC … 何で !》
先生
そう です ね このまま いけば …
え ~ い
あ ~ ッ !
動ける …
先生
何 か ご 心配な こと でも …
とても よい 経過 だ と 思わ れる のです が
信じ られ ない ほど いい です
何 か おかしい んじゃ ない か って ぐらい
え ッ ?
福田 先生 残り の ネズミ は ?
改善 は さ れて おり ませ ん でした
他 に 生薬 は ない んです か ?
私 の 知る かぎり 効く と 思わ れる もの は
本当に もう ない んです か ?
何 千 種類 も 薬 が あって 効く もの が ひと つ も ない んです か ?
先生 !?
すいません 興奮 して
あれ 何で だ ?
少し のめりこみ すぎて は おら れ ませ ぬ か ?
負け たく ない んです
歴史 の 修正 力 に
修正 力
これ まで 何度 も 治した と 思ったら
足 もと を すくわ れて の 繰り返し でした から
今回 は 完璧に 治し たい んです
ここ で 負けたら
私 は 認める しか なくなる んです
自分 に できる こと は
ほんの 少し の 延命 だけ で
結局 は 何も 変える こと は でき ない んだ って
延命 だけ で は いけない のです か ?
すべて の 医術 は しょせん
延命 に しか すぎ ぬ ので は ございませ ぬ か ?
未来 が いかに 進んだ 世 か は 存じ ませ ぬ が
人 は やはり 死ぬ ので ございましょう ?
それ は …
勝つ の 負ける の おっしゃい ます が
吉 十郎 さん を 鉛 中毒 から 完璧に 救え
70 まで 生き延び させた と して も
先生 が ここ に 来 なければ
そもそも そういう 運命 であった と いう 考え から する と
それ とて 勝った と いう こと に は なら ぬ ので は ございませ ぬ か ?
じゃあ
私 は 何の ため に ここ に 送ら れて きた んでしょう か
( 物音 )
( 吉 十郎 ) どこ やった 与吉 !
何 やって は る んで っか やめ な は れ
何 が あった んです か ?
こいつ が 俺 の ホン を 捨て や がった んだ よ
ホン ? 歌舞伎 の ホン だ よ
今度 やる 曽我 対面 だけ が ねえ んだ よ !
《 与吉 ちゃん 何 して る の ?》
やった ん か ? お前
芝居 なんか せ ん と 長生き して ほしい から か ?
( 吉 十郎 ) そんな ん じゃ ねえ んだ よ 先生
こいつ は なあ 俺 の こと が 嫌いで 嫌いで しかた が ねえ んだ よ
俺 が 舞台 に 立つ の を 邪魔 し たい だけ な んだ よ
そう だ よ なあ
何とか 言え この 野郎 ! 吉 十郎 さん !
治療 やめ ます よ
事情 は 知ら ん けど 子供 を 殴ら せる ため に
あんた を 治して る ん と ちゃ う
吉 十郎 さん も 佐分利 先生 も
ちょっと 待って ください
与吉
荷物 まとめろ
待って ください 吉 十郎 さん
行く こと ない ここ に おり !
今度 は ここ の 厄介 者 に なる つもり か ?
とりあえず 行って 様子 を 見て き ます
投薬 やめたら どう なる か 分かり ませ ん し
では 支度 を いたし ます
≪( 吉 十郎 ) 逢って くん さる か →
いかにも ~→
そい つ あ 近頃 か っち け ねえ
さらば 二 人 を 呼び出す べ え か ~
よく あんなに 動け ます ね
あ ッ …
大丈夫です か ? 吉 十郎 さん
で え じょうぶだ
これ …
≪( 役者 ) やっぱり 無理な んじゃ ねえ か ?
ありゃ 駄目だ よ 大丈夫な の か ?
で え じょうぶだ よ !
俺 は でき んだ よ
ああ ッ 吉 十郎 さん
ここ で 無理 したら ≪( 佐分利 ) ちょっと す ん ま へん
ちょっと す ん ま へん
て め え やぶ医者
ああ ~ もう 大丈夫 大丈夫
私 が 痛み止め 打ち 忘れた ん や
ちょ ちょ ちょっと 治せ ます さかい 心配 せ ん と いて ください
≪( 役者 達 ) 医者 が そう 言う なら よ 本番 は しっかり 頼んだ ぞ
( 佐分利 ) す ん ま へんな
≪( 役者 ) しっかり して くれよ
芝居 に 出る の は 考え 直した ほう が いい と 思い ます このまま 続ければ
舞台 に 立つ 前 に 亡くなって しまう こと だって あり え ます
どうして そこ まで して
舞台 に 立た なければ なら ない んです か ?
それ が 役者 だ から です か ?
親 だ から さ
親 ?
言わ ない ど いて くれよ
口止め さ れて る んだ から
はい
兄さん は 役者 バカ って やつで ね →
芸 の 肥やし って 言っちゃ あ 飲む 打つ 買う を 繰り返し →
女房 と まだ 言葉 も 出 ねえ 与吉 を →
面倒 くせ え って 追い出し ち まった の さ →
だけど 今度 は その 母親 に 男 が できた らしくて ね
行く 場所 の なくなった 与吉 は
ここ に 転がりこんで きた って わけ さ →
その頃 兄さん は もう 体 を 悪く して たし →
長く ない だろう から →
何とか 道 を つけて やろう と →
躍起に なって 芝居 の 稽古 を さ せよう と した の さ
《 ほら 立つ んだ よ 》
≪( 田 之助 ) けど あの 子 も 強情で →
まったく 覚えよう と し なくて さ
《 与吉 !》
≪( 田 之助 ) ついに 手 が 出る ように な っち まって
与吉 は 与吉 で 口 も きか なく な っち まって さ
与吉 ちゃん は どうして 稽古 を し なかった のです か ?
芸 の ため に 捨て られた 与吉 に は
役者 稼業 は 恨み で しか ない んだろう さ
それ なら しかた ねえ 奉公 の 口 を 探したら どう かって
兄さん に 相談 を 持ちかけた んだ よ そ したら さ …
《 田 之助 》
《 与吉 に 俺 の 芝居 を 見 しちゃ やれ ねえ だろう か 》
《 一 日 だけ で いい 》
《 朝比奈 を やらして もらえ ねえ かって 》
《 座頭 に 頼んじゃ くれ ねえ か ?》
《 兄さん 悪い けど のめ ない よ 》
《 こんな 役者 を 客 の 前 に 出しちゃ 》
《 座 の 名折れ だ 》
《 俺 が 与吉 に 残して やれる もん は もう それ しか ねえ んだ よ 》
《 兄さん 》
《 俺 は 人間 の クズ だ 》
《 恨ま れて 当然だ 》
《 今さら 謝って 許して もらおう と 思っちゃ いね えし 》
《 そんな くせ え 芝居 なんて でき ねえ よ 》
《 けど よ 俺 が すべて を 注いだ 芸 だけ は 》
《 見せて やりて えん だ よ 》
《 今 の まま じゃ よ 》
《 あいつ クズ の 親父 から 生まれて きた んだ と 思って 》
《 生きて いく しか ねえ だろう よ 》
《 けど よ 》
《 その クズ に も たった ひと つ だけ でも 》
《 取り柄 が あった って 思えりゃ 》
《 生きて いく の も ち っと は ましに なる って もんじゃ ねえ か 》
《 田 之助 後生 だ 》
《 田 之助 …》
兄さん に とっちゃ 手足 を 切って 生きながらえる こと は
大して 値打ち が ない の さ
先生
命 の 値打ち って の は
長 さ だけ な の かい ?
さっき は 何で かばって くれた ん だい ?
私 は 医術 を 極め たい んです
だから あんた が 最後 まで 芸 を 極め たい 言う 気持ち は 分かる
おう
自分 の 気持ち に 振り回さ れて
患者 を ちゃんと 診 れて い なかった です
長生き さ せる こと ばかり に とらわれて
先生 が ここ に 送ら れて きた 目的 は
一人一人 の 命 を 救う こと と は 違う もの な ので は ない でしょう か
どういう こと です か ?
もっと 大きな
一人一人 の 世 の 営み を 超えた もの の ため と いい ます か
何と は 言え ぬ のです が
世 の 営み を 超える もの
何という 薬 です か ? これ は
吉 十郎 さん の 落ち込んで いる 体 の 働き を
もと に 戻す こと を 考えて 調合 した ので 名前 と 言わ れる と
ありがとう ございます
使わ せて いただき ます
はい
いる わきゃ ねえ か
すぐ 点滴 打ち ます さかい に
( 横 松 ) ここ に も ゴム を 配すれば 動き やすく なる ので は …
なるほど
一 番 と まって くん さる なら
ありがた 茄子 の …
《 こいつ は なあ 俺 の こと が 》
《 嫌いで 嫌いで しかた が ねえ んだ よ 》
どう です か ?
( 横 松 ) よい 感じ です
ふん !
何 して る んです か ? 咲 さ ん
ふん ッ
ふん !
ふん ッ !
これ は …
やはり
もって くれよ
何 か あって も 私ら が 舞台 の 袖 に い ます から
あり が と な 先生
吉 十郎 さん お 芝居 楽しみに して ます ね
おう
与吉 ちゃん 捜して まいり ます ね
さて と
俺 も 田 之助 に 礼 の ひと つ でも 言って くる かな
与吉 ちゃん
≪( 座頭 ) 吉 十郎 で え じょうぶ か !
兄さん 立てる かい ?
廊下 が 濡れて て 滑 っち まった だけ だい
よい しょ
あ ッ
おかしい な
( 座頭 ) 吉 十郎 残念だ が 諦めて くん ねえ か
≪( 座頭 ) 何 が 起こる か 分か ん ねえ 役者 を
客 の 前 に 出す わけに は いか ん よ
いい じゃ ねえ か 動け なく なった って
血 ヘド 吐いて 倒れた って
それ が 最高に かぶ いた 芝居 に 見せ れりゃ いい だけ の 話 だ ろ !
能書き ばっかり 並べて んじゃ ねえ よ
そんな こと できる わけ ねえ だろう が !
大丈夫です
必ず 立てる ように し ます
実は ひと つ 策 が
( 吉 十郎 の うなり 声 )
( 田 之助 ) 兄さん ! 部屋 に 運び ましょう
吉 十郎 さん 聞こえ ます か ?
聞こえ ます か ?
かぶ いた 芝居 だった ろ ?
芝居 だった んです か ?
やっぱり よ
芝居 は 俺 だけ の もん じゃ ねえ もん な
( 足音 )
( 拍手 )
始ま っち まった な
ちき しょう
もう ちょっと だった のに な
吉 十郎 さん 体 起こせ ます か ?
立つ ため の 道具 です
芝居 中 立て なく なったら と 思って つくって みた んです
さて
これ から は 祐 経 殿 へ
折り入って 頼み が ある →
頼んで おいた 二 人 の …
本当 は 吉 十郎 さん が
お 芝居 の こと ばかり 考えて る の が 悔しくて …
だから こんな こと した んでしょ ?
≪( 吉 十郎 ) すりゃ
逢って くん さる か
死に そうに なって いて も
与吉 ちゃん に は ひと言 も なし に
お 芝居 の こと ばかり で
ひどい お 父 っつ ぁん よ ね
だけど ほんと は
言い たかった こと たくさん あって
でも 素直に 言え なく なって た だけ じゃ ない か な
与吉 ちゃん と 同じ ように
お 父 っつ ぁん 今 与吉 ちゃん に
話しかけよう と して る んじゃ ない か な
う う ~
うわ ~ ッ
うわ ッ うわ ~!
( 吉 十郎 の うなり 声 )
≪( 与吉 ) や … 大和屋
大和屋 ~ ッ !
あい すま ぬ
ああ ッ
あいす ま ~ ぬ !
与吉 ~!
よ ッ 日本 一 !
〈 つかの間 の 延命 〉
〈 もしかしたら 延命 に すら なって い ない の かも しれ ない 〉
〈 こうした こと で 命 を 縮めた 可能 性 すら ある 〉
〈 だけど この 瞬間 に は 〉
〈 長 さ で は 語れ ない 命 の 意味 が ある 〉
〈 残さ れた 時間 を 輝か せる と いう 〉
〈 医療 の 意味 が ある 〉
さらば ~!
田 之助 さん おい ら
お 父 っつ ぁん の 跡 を 継ぎ たい です
仕込んで もらえ ませ ん か ?
楽な 世界 じゃ ない よ
はい
〈 世代 を 超え 受け継が れて いく 芸 の ように 〉
〈 世 の 営み を 超えて いく もの 〉
〈 歴史 の 修正 力 に あら が える もの を 〉
〈 俺 も 残し たい 〉
な ッ 何 ゆえ !?
え ッ 間違え ました ?
咲 さ ん 何 を した んです か ?
消毒 用 の アルコール を つくろう と
高 濃度 の アルコール に
蒸留 水 を 加えた ところ …
( 山田 ) これ は 水 で は ございませ ぬ
ペニシリン で ございます する と
100 パーセント 近い アルコール の 脱水 作用 で
ペニシリン が 結晶 化 した んです
これ を こせば
ペニシリン の 粉末 が 取り出せ ます
ばんざい ばん ざ ~ い
ばんざい あ ~ ッ
ばんざい
坂本 様 は 何と ?
亀山 社 中 で ペニシリン を 扱う こと は でき ない か と
何 か ご 心配な こと が ?
龍 馬 さん に 今 かかわる こと は
仁 友 堂 に とって 危険な んじゃ ない か って
では 何の ため に ペニシリン の 粉末 化 を ?
ここ で 行か ず に して
どこ で 行く ので ございます か
これ は 仁 友 堂 の 使命 で ございます
では
はい
〈 行こう 龍 馬 さん の ところ へ 〉
見て て くれよ
お初 ちゃん