♪ ～
～ ♪
（ 携帯 電話 の アラーム ）
（ 桜井 ( さ くらい ) ） う うーん …
ん ん ん ん …
ん ？
わ あっ ！ おっと っと …
へ … 返事 来 てる
あっ ちょっと ちょっと 小岩井 ( こ いわい ) さん
まだ その 肉 焼け て ない から ダメ です よ
（ 小岩井 ） えー ？ 細かい なあ Ａ 型 ？
そう です けど
まじ か よ 俺 Ｏ 型 だ ぜ
だから あんまり 気 に し ない ん だ ぜ
（ 桜井 ） す っ ごく どう で も いい
で 本題 な ん です けど
何 ？ 桜 ちゃん
あの 桜 ちゃん って 何 です か ？
もう 細かい なあ Ａ 型
いい から ２ 人 きり の 焼き肉 食い 放題 を 楽し も う ぜ
は あ
小岩井 さん って 松風 物産 ( まつ かぜ ぶっさん ) 出身 です よ ね ？
さすが よく 知って る ね 流通 システム 室 次期 室長 ―
エリート コース まっ し ぐ ら の 桜井 優 太 ( ゆ うた ) 君
（ 桜井 ） う くっ …
松風 物産 の 流通 システム 課 に い た 盛岡 ( もり おか ) 森 子 ( も りこ ) さん って 知って ます ？
盛岡 森 子 …
あ ～ もり もり ちゃん
（ 桜井 ） も … もり もり ちゃん ？
（ 小岩井 ） もり もり ちゃん が どう かし た の ？
あ … この マニュアル 見 て こんな 優秀 な 人 なら ―
仕事 でき た ん だ ろ う な って 思った ん です けど ―
退社 し ちゃ って る らしく て
確か に もり もり ちゃん は 仕事 できる 人 だった な
あの さっき から 言って る その もり もり ちゃん って 何 です か ？
俺 の 付け た あだ名 だ ！
（ 桜井 ） 仲よし か ！
は あ … （ 小岩井 ） と 言って も ―
別に 友達 って わけ じゃ なく て 仕事 で 電話 し た とき に ―
担当 者 の 代わり に 出 た の が 彼女 って だけ な ん だ けど さ
（ 森 子 ） お 電話 代わり まし た 盛岡 です
本日 川島 ( かわ しま ) 不在 の ため 私 で よけ れ ば 承り ます が …
あ ま じ で ？ じゃあ 書類 の チェック …
（ 森 子 ） どうぞ 送って ください 確認 さ せ て いただき ます
あ … あの 小岩井 さん
30 分 ほど お 時間 いただく こと に なり そう な の です が ―
大丈夫 でしょ う か ？
（ 小岩井 ） いい よ その ぐらい
て か 盛岡 さん お 疲れ の ところ ごめん ね
て か めちゃくちゃ 声 疲れ て ん な ～
（ 森 子 ） す すみ ませ ん 気 を つけ て は い た の です が …
気持ち 分かる し 気 に す ん なって お 疲れ さ ん
（ 森 子 ） すみません … う っ …
どう し た どう し た ？ 泣く ほど 疲れ て ん の ？
（ 森 子 ） いえ … すみません …
（ 小岩井 ） いい よ いい よ
周り に 人 が い ない なら 泣 い ちゃ い な よ
俺 も 今 １ 人 だ し さ もり ちゃん
（ 森 子 ） へ ？
（ 小岩井 ） ああ “ もり ちゃん ” 嫌 だった ？
じゃあ 下 の 名前 は 何て 言う の ？
（ 森 子 ） も … 森 子 です
盛 と 森 …
あっ は ！ もり もり ちゃん か ～
みたい な ？
う わ あ ～
あった ！ もり もり ちゃん の 写真 （ 桜井 ） え ？
（ 桜井 ） やっぱり あの 人 だ
きれい だ よ な ～ 今 何 し てる の か な ～
会い に 行っちゃ お う かな ～
えっ … あっ
あー あ 箸 落ち た よ 桜 ちゃん
そんな はしたない 子 に 育っちゃ っ て 母 さん 悲しい わ
（ 桜井 ） 小岩井 母 さん
１ 本 床 に 落ち た んで 拾って ください
って めちゃくちゃ そっち 側 じゃ ない か よ ～
もう １ 本 は どこ だ よ ？
（ 桜井 ） いす の 上 に あり まし た
よこせ よこせ
で 新しい やつ ほ い
（ 桜井 ） は い ど ー も です … あっ
は あ ～ ちゃん と 握って ない から
俺 の せい に なる の ？ 仮に も 年上 に その 言いぐさ … あっ
（ 桜井 ） ん ？ ん ん …
（ 小岩井 ） 桜 ちゃん 桜 ちゃん あなた が 落とし た の は ―
この きれい な お 箸 ？ それとも この 汚い お 箸 ？
（ 桜井 ） 小岩井 さん
落ち て しまった 時点 で 両方 汚い じゃ ない です か
休憩 時間 あと 少し なんで 早く 新しい 箸 ください
（ 小岩井 ） 肩 の 力 抜けよ 桜 ちゃん
（ 小岩井 ） 俺 コーヒー 買って くわ
先 戻って ます
“ 私 自身 の 前方 不注意 も あり ― ”
“ 治療 費 も 出し て いた だい た 手前 ― ”
“ これ 以上 の ご 迷惑 は … ”
（ 桜井 ） は あ …
（ 森 子 ） なんか … いろいろ あった な
男 の 人 から “ おわび に 食事 でも ” なんて メール が 来る なんて …
（ 森 子 ） フ …
（ 矢代 ） いらっしゃい ませ ー
（ 藤本 ( ふじ もと ) ） あ …
（ 森 子 の 鼻歌 ）
（ 森 子 ） 桜井 さん へ の メール 結構 頑張って 文章 考え た し ―
失礼 に なら ない よう に 精一杯 の 誠意 も 込め たし
そう 自分 なり に
（ 森 子 ） グッ
フッフ フー
（ 藤本 ） なんか 今日 機嫌 よ さ そう だ な
（ 森 子 ） これ で スッキリ だ ！
こんにちは
あっ … こんにちは
あっ
（ 森 子 ） ん ？
あ … あっ ん ん … （ 森 子 ） あっ
ん ？
（ 森 子 ） 早く … 早く やり たい
ぷっ は ー ！ うめ ー なあ おい ！
これ で 心おきなく …
ログイン ！
（ 林 ( はやし ) ） くう う …
ネトゲ の 空気 は うめ ー なあ お ー い ！
（ 森 子 ） あっ ぽこ たろう さ ん
（ 林 ） こんにち は ー
（ ぽこ たろう ） お っ 林 君
その 様子 は 悩み ごと 解決 し た みたい だ ね
えっ ？
（ ぽこ たろう ） ライ ちゃん から 聞い た よ
林 君 が 何 か 悩 ん でる って
（ 林 ） は は … 筒抜け で し た か
まあ 悪く 思わ ない で よ みんな 心配 な ん だ よ 林 君 の こと
プライベート で 悩 ん じゃ って ―
ゲーム に イン し なく なっちゃ っ たり し ない か って
すみません ご 心配 お かけ し て
でも それ は むしろ 逆 と いう か 関係ない と いう か …
どう いう こと ？
（ 林 ） 悩み が ある とき は ゲーム に 救わ れ ます から
だ よ ね ～ 分かる ～
でも 悩み から 解放 さ れ た 今 は スッキリ 気分 で ゲーム が 楽し め ます
そ っか 解決 し た ん だ
はい おかげ さま で バッチリ です
（ ぽこ たろう ） よかった ね ～
（ 林 ） ん ？
おお と っと …
ん ー ？
ああ プレゼント だ ね
（ 森 子 ） あ あっ …
って え えー ！ リリィ さん から ー ! ?
こ … これ は 高 そう だ なあ
（ 森 子 ） もらっちゃ っ て いい の か な もらったら 何 か お 礼 し ない と
は あ …
（ 林 ） これ は 大きな 借り だ なあ
ああ それ は なかなか 引け目 感じ ちゃ う よ ね
男 と し て
（ 林 ） でしょ う ？
アッハハハ
本来 なら 男 と し て ビシッと こう …
君 に 100 億 カラット の 輝き を お 届け に 参上 し た よ
えっ ？
は … 林 さん
（ 林 ） 受け取って ほしい 俺 の 真心 を
って こう いう ふう に 男らしく キメ たい です よ ね
林 君 の 中 の 男らし さ って 何 な ん だ ろ う
と いう か 俺 の 作画 も 大変 な こと に
どう しよ う お礼 って 言って も …
（ 林 ） リリィ さん って ―
こんな 高い もの を ポン と 買 える くらい だ から ―
相当 お 金 持って ます よ ね
お返し と か お 礼 と か いろいろ 考え て み た と し て も ―
きっと もう どんな アイテム だって 持って い そう で 俺 …
あー ある よ な そう いう の アハ ハハ
俺 も この ゲーム を 始め た ばかり の ころ
ん ？
あ 同じ ギルド の Nico ( ニコ ) って 知って る でしょ ？
（ 林 ） ああ Nico さん
俺 は ２ ～ ３ 回 クエスト を ―
一緒に し た こと ぐらい しか ない です けど
（ ぽこ たろう ） うん その Nico から ―
いきなり すごい 武器 もらっちゃ っ て さ
え ～ それ は ちょっと 恐縮 し ちゃ い ます よ ね
でしょ ？ 俺 そう いう 貸し 借り と か 苦手 だ し
正直 困っちゃ っ た ん だ けど （ 林 ） はい
先行 投資 だ から って 言わ れ て 結局 受け取った ん だ よ ね
先行 投資
（ ぽこ たろう ） うん
（ Nico ） お互い 損 は し ない ん だ
礼 は 態度 で 示せ よ ？ ぽこ た ろ
（ ぽこ たろう ） と まあ それ 以来 かな
いろいろ 手助け し て くれる たび に ―
俺 なり の お礼 なんか を 繰り返し 続け てる の は
何だか んだ 言って Nico 俺 の こと 応援 し て くれ てる ん だ よ ね
きっと リリィ ちゃん も そう な ん じゃ ない か な
ふ う ～ 終わった
で さっき から 作って る これ ら は …
ああ スペル スクロール だ よ
つえ が ない と 唱え られ ない 魔法 なんか も ―
スクロール に する こと で 誰 でも 魔法 を 使う こと が できる ん だ よ
へ え ～
（ ぽこ たろう ） 林 君 も さ 堅苦しく 考え ない で ―
リリィ ちゃん の 下心 って 何 か な あって 程度 で ―
構え て れ ば いい ん じゃ ない か な ？
（ 林 ） なるほど … えっ ！
し … 下心 ! ?
下心 って 何 ？
リリィ さん の 下心 ？
ん っ ん …
うわ ー ダメ だ 気 に な る ー
（ 林 ） リリィ さん （ リリィ ） ん っ
やっぱり ここ に いたん で すね
（ リリィ ） ええ ちょっと 考え ごとし て て
（ 林 ） ん っ ん ん っ ん …
ん あ あ ～
（ リリィ ） あっ
あ …
あの これ ありがとう ございます
（ リリィ ） いえ 林 さん の 趣味 と は ちょっと 違った か も
え えっ そう じゃ なく て あの
あ …
何て 切り出 そ う
う ～ ん …
これ って もし かして 何 か 下 心 が あって の こと で は ない か と
（ リリィ ） し … 下心 ! ?
う わ あっ ストレート に 聞い ちゃ った
あ … すみません いえ も し そう なら ―
自分 に は 何 も お返し でき ない から 申し訳ない な って
し … 下心 なんて
あ いや その そんな こと も ある の か なあ なんて
あ … ない ん です か
（ リリィ ） 残念 そう
（ リリィ ） ない … と は 言い切 れ ませ ん が
ある ん だ
林 さん 少し 私 の 話 を さ せ て もらって も いい でしょ う か
あ はい 聞き たい です 聞か せ て ください
この ゲーム を 始め た ころ の こと な ん です けど …
毎日 かなり の 数 の ―
狩り へ の 誘い が 来る よう に なり まし た
（ リリィ ） う わ あ あっ あ ああ …
ああ …
（ リリィ ） それ まで は ―
野良 パーティ ばかり だった ので ―
野良 メイン の 人 たち と ―
ラン ダム に 組む ばかり だった の です が …
ギルド に 入って 知人 が 増え た の も あった の だ と は 思う の です が ―
結構 個人 チャット が 来る よう に なって …
（ リリィ ） あっ う … いや あっ …
（ リリィ ） その うち …
（ 女 キャラ ） リリィ さん って ―
うち の リーダー と どう いう 関係 な の ？
えっ と “ どう ” と は ？
これ 以上 彼 に 関わら ない で ください
あっ ああ …
そんな こと が
全部 誤解 な ん です けど
ネット の 世界 と は いえ やっぱり 人間 関係 は 難しい です よ ね
はい
（ リリィ ） そんな トラブル が 何度 か 続き まし た
やめ て しまえ ば 簡単 な ん です けど ―
でも どう し て も ゲーム は 続け たかった ん です
（ 林 ） それ は どう し て です か ？
昔 やって い た ゲーム で ―
とても すてき な 出会い が あった ん です
その 人 と は 結局 会 え なく なって しまった ん です けど
また あんな 出会い が ある かも しれ ない
あったら いい な って ずっと 思って い まし た
（ 林 ） 俺 も です
林 さん も ？
（ 林 ） はい
昔 やって い た ゲーム で ―
俺 の こと を 勇気づけ て くれる 人 が い た ん です
（ ユキ と ハース の 笑い声 ）
（ 林 ） だ から リリィ さん の 気持ち よく 分かり ます
ええ だ から 私 たとえ トラブル が あった と し て も ―
何とか ゲーム は 続け たい って 思って い て
そんな とき 相談 に 乗って くれ た の が ―
カンベ さん で し た
（ カンベ ） なるほど なあ
まあ その 見た目 じゃ モテ て も しょうが ねえ よ なあ
（ リリィ ） 私 は 普通 に 楽しく 過ごし たい だけ な の に
（ カンベ ） じゃあ うさんくさい ネカマ キャラ 目指す か ？
“ 私 ピンク と フリル と お 花 と ストロベリー と 森 と ― ”
“ 駆け回る 子 リス が 大好き です ” みたい な
その 気色 悪 さ を 出せ ば 私 の 好感 度 だ だ 下がり 確実 です ね
ダメ か じゃあ …
分かった 俺 と 相方 って こと に しろ
えっ 相方 ？
（ カンベ ） あくまで 表面 上 だ 俺 の 相方 だって 言え ば ―
面倒 な こ と 言って くる ヤツ も い ねえ だ ろ
でも い い ん です か ？
フッ 別 に いい ん じゃ ね ？
ありがとう ございます
だから 私 ゲーム 内 で 特定 の 誰 か と 仲よく なる こと が ―
ちょっと 怖い って いう か 警戒 し て い た ん です
でも そんな とき 林 さん と 出会い まし た
林 さん を 見 て い て ―
ああ 本当 に ゲーム する こと を 楽し ん で いる ん だ なあ って ―
私 まで とても 幸せ な 気持ち に なった ん です
林 さん
は … はい
私 ね 林 さん の …
何 ？ リリィ さん 何 を 言 お う と し てる の ？
相方 に なり たい ん です （ 林 ） 相方 ！
リリィ さん ！
（ リリィ ） 確か に 私 は 後方 支援 メイン だ から ―
いろんな 人 と 組む けれど ―
最近 は 林 さん と 組む の が 楽しみ と いう か …
楽しみ です か ？
（ リリィ ） いろいろ と 理由 は ある ん です けど ―
シンプル に 言う なら …
林 さん が 一 番 一緒に 遊 ん で い て 落ち着く 人 な ん です
ああ …
（ 森 子 ） や ばい や ばい や ばい
キュンキュン する ！ す っご い うれしい
うれしい と か そんな 言葉 じゃ 足り ない くらい だ よ
こう いう 興奮 って 久々
（ 森 子 ） こう いう の を “ 好き ” って 言う の か な
って 言う の か な … なんて
う わ あ あ ！ 三十 路 ( みそ じ ) が 何 を ！
（ 森 子 ） 相手 は 女の子 だ し
別に 恋愛 的 な 何 か が ある わけ じゃ ない し
第 一 ネット の 人 じゃ ない か ！
でも …
めちゃくちゃ うれしい よ お ～
リリィ さん （ リリィ ） はい
どう です か ？
とても お 似合い です
あ … ありがとう ございます
（ リリィ ） 林 さん あの じゃあ …
（ 林 ） はい これ から 相方 と し て よろしく お 願い し ます
（ 林 ･ リリィ ） フフフ
（ ぽこ たろう ） フフ やっぱり あった ん だ ね 下心
（ ヒメラルダ ） ヒューヒュー
（ ライラック ） この ネト 充 め うらやましい なあ チク ショウ ！
仲 いい ヤツ が でき て よかった な リリィ
（ 森 子 ） フフ
は あ ～ ！ リリィ さ ～ ん ！
（ キーボード を 打つ 音 ）
♪ ～
～ ♪
（ カンベ ） 察知 さ れ ち まったら 終わり だ ぞ
（ 桜井 ） やめ て ください
（ 小岩井 ） 俺 と デート し て くれる って さ
（ 桜井 ） そんな まさか
（ ライラック ） 欲し がった とたん に 遠の い て いく もの な ん だ ね
