新 発明 の マクラ しん|はつめい||

「 やれやれ 、 なんとか 大 発明 が 完成 した 」 ||だい|はつめい||かんせい|

小さな 研究 室 の なか で 、 エフ 博士 は 声 を あげた 。 ちいさな|けんきゅう|しつ|||||はかせ||こえ|| それ を 耳 に して 、 お となり の 家 の 主人 が やってきて 聞いた 。 ||みみ||||||いえ||あるじ|||きいた

「 なに を 発明 なさった の です か 。 ||はつめい|||| 見た ところ 、 マクラ の よう です が 」 みた||||||

そば の 机 の 上 に 大事 そうに 置いて ある 品 は 、 大き さ と いい 形 と いい 、 マクラ に よく 似て いる 。 ||つくえ||うえ||だいじ|そう に|おいて||しな||おおき||||かた||||||にて|

「 たしかに 、 眠る 時 に 頭 を のせる ため の もの だ 。 |ねむる|じ||あたま|||||| しかし 、 ただ の マクラ で は ない 」

と 、 博士 は なか を あけて 、 指さした 。 |はかせ|||||ゆびさした |doctor||||| 電気 部品 が 、 ぎっしり と つまって いる 。 でんき|ぶひん||||| お となり の 主人 は 、 目 を 丸く して 質問 した 。 |||あるじ||め||まるく||しつもん|

「 すごい もの です ね 。 これ を 使う と 、 すばらしい 夢 でも 見られる のでしょう か 」 ||つかう|||ゆめ||みられる||

「 いや 、 もっと 役 に 立つ もの だ 。 ||やく||たつ|| 眠って いて 勉強 が できる しかけ 。 ねむって||べんきょう||| つまり 、 マクラ の なか に たくわえて ある 知識 が 、 電磁 波 の 作用 に よって 、 眠って いる あいだ に 、 頭 の なか に 送りこま れる と いう わけだ 」 |||||||ちしき||でんじ|なみ||さよう|||ねむって||||あたま||||おくりこま||||

「 なんだか 便利 そうな お 話 です が 、 それ で 、 どんな 勉強 が できる の です か 」 |べんり|そう な||はなし||||||べんきょう||||| |convenient||||||||||||||

「 これ は まだ 試作 品 だから 、 英語 だけ だ 。 |||しさく|しな||えいご|| 眠って いる うち に 、 英語 が 話せる よう に なる 。 ねむって||||えいご||はなせる||| しかし 、 改良 を 加えれば 、 ほか の 勉強 に も 、 同じ よう に 使える こと に なる だろう 」 |かいりょう||くわえれば|||べんきょう|||おなじ|||つかえる||||

「 驚く べき 発明 では ありません か 。 おどろく||はつめい||| ||invention||| どんな なまけ者 でも 、 夜 、 これ を マクラ に して 寝て い さえ すれば 、 なんでも 身 に ついて しまう の です ね 」 |なまけもの||よ||||||ねて|||||み|||||| |||||||||||even|||||||||

お となり の 主人 は 、 ますます 感心 する 。 |||あるじ|||かんしん| 博士 は 、 とくいげに うなずいて 答えた 。 はかせ||||こたえた

「 その 通り だ 。 |とおり| |that's right| 近ごろ は 、 努力 を し た がら ない人 が 多い 。 ちかごろ||どりょく|||||ない じん||おおい ||effort||||||| そんな人 たち が 、 買い た がる だろう 。 そんな じん|||かい||| おかげ で 、 わたし も 大もうけ が できる 」 ||||おおもうけ||

「 ききめ が 本当に ある の なら 、 だれ も が 欲しがる に きまって います よ 」 ||ほんとうに|||||||ほしがる|||| |||||||||||certainly||

「 もちろん 、 ききめ は ある はずだ 」

お となり の 主人 は 、 それ を 聞きとがめた 。 |||あるじ||||ききとがめた

「 と いう と 、 まだ たしかめてない の です か 」 ||||たしかめて ない|||

「 ああ 、 わたし は この 研究 に 熱中 し 、 そして 完成 した 。 ||||けんきゅう||ねっちゅう|||かんせい| しかし 考えて みる と 、 わたし は すでに 英語 が できる 。 |かんがえて||||||えいご|| だから 、 自分 で たしかめて みる こと が 、 できない のだ 」 |じぶん||||||でき ない|

と 、 博士 は 少し 困った ような 顔 に なった 。 |はかせ||すこし|こまった||かお|| ||||troubled|||| お となり の 主人 は 、 恥ずかし そうに 身 を 乗り出して 言った 。 |||あるじ||はずかし|そう に|み||のりだして|いった

「 それ なら 、 わたし に 使わ せて 下さい 。 ||||つかわ||ください 勉強 は めん どくさい が 、 英語 が うまく なりたい と 思って いた ところ です 。 べんきょう|||||えいご|||||おもって||| ぜひ 、 お 願い します 」 ||ねがい|

「 いい と も 。 やれやれ 、 こう すぐに 希望者 が あらわれる と は 、 思わ なかった 」 |||きぼう しゃ|||||おもわ| sigh|||||||||

「 どれ くらい 、 かかる のでしょう か 」 ||will it take||

「 一 ヵ 月 ぐらい で 、 かなり 上達 する はずだ 」 ひと||つき||||じょうたつ||

「 ありがとう ございます 」

と 、 お となり の 主人 は 、 新 発明 の マクラ を 持って 、 うれし そうに 帰って いった 。 ||||あるじ||しん|はつめい||||もって||そう に|かえって| しかし 、 二 ヵ 月 ほど たつ と 、 つまらな そうな 顔 で 、 エフ 博士 に マクラ を 返し に きた 。 |ふた||つき|||||そう な|かお|||はかせ||||かえし||

「 あれ から 、 ずっと 使って みました が 、 いっこうに 英語 が 話せる よう に なりません 。 |||つかって||||えいご||はなせる||| もう 、 やめます 」

博士 は なか を 調べ 、 つぶやいた 。 はかせ||||しらべ|

「 おかしい な 。 故障 は して いない 。 こしょう||| どこ か が 、 まちがって いた のだろう か 」

だが 、 ききめ が なければ 、 使い物 に ならない 。 ||||つかいもの||なら ない せっかく の 発明 も 、 だめだった ようだ 。 ||はつめい|||

それ から しばらく して 、 エフ 博士 は 道 で お となり の 女の子 に 会った 。 |||||はかせ||どう|||||おんなのこ||あった 声 を かける 。 こえ||

「 そのご 、 お とうさん は お 元気 か ね 」 |||||げんき||

「 ええ 。 だけど 、 ちょっと へんな こと が ある わ 。 このごろ 、 ねごと を 英語 で 言う の よ 。 |||えいご||いう|| いま まで 、 こんな こと なかった のに 。 どうした の かしら 」

眠って いる あいだ の 勉強 が 役 に 立つ の は 、 やはり 、 眠って いる 時 だけ な のだった 。 ねむって||||べんきょう||やく||たつ||||ねむって||じ|||