×

우리는 LingQ를 개선하기 위해서 쿠키를 사용합니다. 사이트를 방문함으로써 당신은 동의합니다 쿠키 정책.


image

『二百十日』 夏目漱石, 「二」 二百十日 夏目漱石

「二 」 二百十 日 夏目 漱石

「 この 湯 は 何 に 利く んだろう 」 と 豆腐 屋 の 圭 さん が 湯 槽 の なか で 、 ざ ぶ ざ ぶ やり ながら 聞く 。

「 何 に 利く か なあ 。

分析 表 を 見る と 、 何 に でも 利く ようだ 。

―― 君 そんなに 、 臍 ばかり ざ ぶ ざ ぶ 洗ったって 、 出 臍 は 癒 ら ない ぜ 」 「 純 透明だ ね 」 と 出 臍 の 先生 は 、 両手 に 温泉 を 掬 んで 、 口 へ 入れて 見る 。 やがて 、 「 味 も 何も ない 」 と 云 いながら 、 流し へ 吐き出した 。

「 飲んで も いい んだ よ 」 と 碌 さん は が ぶ が ぶ 飲む 。

圭 さん は 臍 を 洗う の を やめて 、 湯 槽 の 縁 へ 肘 を かけて 漫然と 、 硝子 越し に 外 を 眺めて いる 。

碌 さん は 首 だけ 湯 に 漬かって 、 相手 の 臍 から 上 を 見上げた 。

「 どうも 、 いい 体格 だ 。

全く 野生 の まま だ ね 」 「 豆腐 屋 出身 だ から なあ 。

体格 が 悪 るい と 華族 や 金持ち と 喧嘩 は 出来 ない 。

こっち は 一 人 向 は 大勢 だ から 」 「 さも 喧嘩 の 相手 が ある ような 口 振 だ ね 。

当の 敵 は 誰 だい 」 「 誰 でも 構わ ない さ 」 「 ハハハ 呑気 な もん だ 。

喧嘩 に も 強そうだ が 、 足 の 強い の に は 驚いた よ 。

君 と いっしょで なければ 、 きのう ここ まで くる 勇気 は なかった よ 。

実は 途中 で 御免 蒙ろう か と 思った 」 「 実際 少し 気の毒だった ね 。

あれ でも 僕 は よほど 加減 して 、 歩行 いた つもりだ 」 「 本当 かい ?

はたして 本当 なら えらい もの だ 。

―― 何だか 怪しい な 。

すぐ 付け上がる から いやだ 」 「 ハハハ 付け上がる もの か 。

付け上がる の は 華族 と 金持 ばかり だ 」 「 また 華族 と 金持ち か 。

眼 の 敵 だ ね 」 「 金 は なくって も 、 こっち は 天下 の 豆腐 屋 だ 」 「 そう だ 、 いやしくも 天下 の 豆腐 屋 だ 。 野生 の 腕力 家 だ 」 「 君 、 あの 窓 の 外 に 咲いて いる 黄色い 花 は 何 だろう 」 碌 さん は 湯 の 中 で 首 を 捩じ 向ける 。

「 かぼちゃ さ 」 「 馬鹿 あ 云って る 。 かぼちゃ は 地 の 上 を 這って る もの だ 。

あれ は 竹 へ からまって 、 風呂 場 の 屋根 へ あがって いる ぜ 」 「 屋根 へ 上がっちゃ 、 かぼちゃ に なれ ない か な 」 「 だって おかしい じゃ ない か 、 今頃 花 が 咲く の は 」 「 構う もの か ね 、 おかし いたって 、 屋根 に かぼちゃ の 花 が 咲く さ 」 「 そりゃ 唄 かい 」 「 そう さ な 、 前半 は 唄 の つもり で も なかった んだ が 、 後半 に 至って 、 つい 唄 に なって しまった ようだ 」 「 屋根 に かぼちゃ が 生 る ようだ から 、 豆腐 屋 が 馬車 なんか へ 乗る んだ 。

不都合 千万 だ よ 」 「 また 慷慨 か 、 こんな 山 の 中 へ 来て 慷慨 したって 始まら ない さ 。 それ より 早く 阿蘇 へ 登って 噴火 口 から 、 赤い 岩 が 飛び出す ところ でも 見る さ 。

―― しかし 飛び込んじゃ 困る ぜ 。

―― 何だか 少し 心配だ な 」 「 噴火 口 は 実際 猛烈な もの だろう な 。

何でも 、 沢庵 石 の ような 岩 が 真 赤 に なって 、 空 の 中 へ 吹き出す そうだ ぜ 。

それ が 三四 町 四方 一面に 吹き出す のだ から 壮 んに 違 ない 。

―― あした は 早く 起き なくっちゃ 、 いけない よ 」 「 うん 、 起きる 事 は 起きる が 山 へ かかって から 、 あんなに 早く 歩行 いちゃ 、 御免 だ 」 と 碌 さん は すぐ 予防 線 を 張った 。

「 ともかくも 六 時 に 起きて ……」 「 六 時 に 起きる ?

」 「 六 時 に 起きて 、 七 時 半 に 湯 から 出て 、 八 時 に 飯 を 食って 、 八 時 半 に 便所 から 出て 、 そうして 宿 を 出て 、 十一 時 に 阿蘇 神社 へ 参詣 して 、 十二 時 から 登る のだ 」 「 へえ 、 誰 が 」 「 僕 と 君 が さ 」 「 何だか 君 一 人 り で 登る ようだ ぜ 」 「 な に 構わ ない 」 「 ありがたい 仕 合せ だ 。

まるで 御供 の ようだ ね 」 「 う ふん 。

時に 昼 は 何 を 食う か な 。

やっぱり 饂飩 に して 置く か 」 と 圭 さん が 、 あす の 昼 飯 の 相談 を する 。

「 饂飩 は よす よ 。

ここ い ら の 饂飩 は まるで 杉 箸 を 食う ようで 腹 が 突 張って たまらない 」 「 では 蕎麦 か 」 「 蕎麦 も 御免 だ 。

僕 は 麺類 じゃ 、 とても 凌げ ない 男 だ から 」 「 じゃ 何 を 食う つもりだ い 」 「 何でも 御馳走 が 食いたい 」 「 阿蘇 の 山 の 中 に 御馳走 が ある はず が ない よ 。 だから この際 、 ともかくも 饂飩 で 間 に 合せて 置いて ……」 「 この際 は 少し 変だ ぜ 。

この際 た 、 どんな 際 なんだい 」 「 剛 健 な 趣味 を 養成 する ため の 旅行 だ から ……」 「 そんな 旅行 な の かい 。

ちっとも 知ら なかった ぜ 。

剛 健 は いい が 饂飩 は 平に 不 賛成 だ 。

こう 見えて も 僕 は 身分 が 好 いんだ から ね 」 「 だから 柔 弱 で いけない 。

僕 なぞ は 学資 に 窮した 時 、 一 日 に 白米 二 合 で 間に合 せた 事 が ある 」 「 痩せたろう 」 と 碌 さん が 気の毒な 事 を 聞く 。

「 そんなに 痩せ も し なかった が ただ 虱 が 湧いた に は 困った 。

―― 君 、 虱 が 湧いた 事 が ある かい 」 「 僕 は ない よ 。

身分 が 違わ あ 」 「 まあ 経験 して 見た まえ 。

そりゃ 容易に 猟 り 尽 せる もん じゃ ない ぜ 」 「 煮え湯 で 洗濯 したら よかろう 」 「 煮え湯 ?

煮え湯 なら いい かも 知れ ない 。

しかし 洗濯 する に して も ただ で は 出来 ない から な 」 「 な ある ほど 、 銭 が 一 文 も ない んだ ね 」 「 一 文 も ない の さ 」 「 君 どうした 」 「 仕方 が ない から 、 襯衣 を 敷居 の 上 へ 乗せて 、 手頃な 丸い 石 を 拾って 来て 、 こつこつ 叩いた 。

そう したら 虱 が 死な ない うち に 、 襯衣 が 破れて しまった 」 「 お やおや 」 「 しかも それ を 宿 の かみ さん が 見つけて 、 僕 に 退去 を 命じた 」 「 さぞ 困ったろう ね 」 「 なあ に 困ら ん さ 、 そんな 事 で 困っちゃ 、 今日 まで 生きて いられる もの か 。 これ から 追い追い 華族 や 金持ち を 豆腐 屋 に する んだ から な 。

滅多に 困っちゃ 仕方 が ない 」 「 する と 僕 な ん ぞ も 、 今に 、 と お ふい 、 油揚 、 がん も どき と 怒鳴って 、 あるか なくっちゃ なら ない か ね 」 「 華族 で も ない 癖 に 」 「 まだ 華族 に は なら ない が 、 金 は だいぶ ある よ 」 「 あって も その くらい じゃ 駄目だ 」 「 この くらい じゃ 豆腐 いと 云 う 資格 は ない の か な 。

大 に 僕 の 財産 を 見縊った ね 」 「 時に 君 、 背中 を 流して くれ ない か 」 「 僕 の も 流す の かい 」 「 流して も いい さ 。

隣り の 部屋 の 男 も 流し くら を やって た ぜ 、 君 」 「 隣り の 男 の 背中 は 似たり寄ったりだ から 公平だ が 、 君 の 背中 と 、 僕 の 背中 と は だいぶ 面積 が 違う から 損だ 」 「 そんな 面倒な 事 を 云 う なら 一 人 で 洗う ばかりだ 」 と 圭 さん は 、 両足 を 湯 壺 の 中 に うんと 踏ん張って 、 ぎ ゅう と 手拭 を しごいた と 思ったら 、 両端 を 握った まま 、 ぴしゃり と 、 音 を 立てて 斜 に 膏 切った 背中 へ あてがった 。

やがて 二の腕 へ 力瘤 が 急に 出来上がる と 、 水 を 含んだ 手拭 は 、 岡 の ように 肉 づい た 背中 を ぎ ちぎ ち 磨 り 始める 。

手拭 の 運動 に つれて 、 圭 さん の 太い 眉 がくしゃ り と 寄って 来る 。

鼻 の 穴 が 三 角形 に 膨脹 して 、 小 鼻 が 勃 と して 左右 に 展開 する 。

口 は 腹 を 切る 時 の ように 堅く 喰 締った まま 、 両 耳 の 方 まで 割けて くる 。

「 まるで 仁王 の ようだ ね 。

仁王 の 行水 だ 。

そんな 猛烈な 顔 が よく できる ね 。

こりゃ 不思議だ 。

そう 眼 を ぐ り ぐ りさ せ なくって も 、 背中 は 洗え そうな もの だ が ね 」 圭 さん は 何にも 云 わ ず に 一生懸命に ぐいぐい 擦る 。 擦って は 時々 、 手拭 を 温泉 に 漬けて 、 充分 水 を 含ま せる 。

含ま せる たんび に 、 碌 さん の 顔 へ 、 汗 と 膏 と 垢 と 温泉 の 交った もの が 十五六 滴 ずつ 飛んで 来る 。 「 こいつ は 降参 だ 。

ちょっと 失敬 して 、 流し の 方 へ 出る よ 」 と 碌 さん は 湯 槽 を 飛び出した 。

飛び出し は した もの の 、 感心 の 極 、 流し へ 突っ立った まま 、 茫然と して 、 仁王 の 行水 を 眺めて いる 。

「 あの 隣り の 客 は 元来 何者 だろう 」 と 圭 さん が 槽 の なか から 質問 する 。

「 隣り の 客 どころ じゃ ない 。

その 顔 は 不思議だ よ 」 「 もう 済んだ 。

ああ 好 い 心 持 だ 」 と 圭 さん 、 手拭 の 一端 を 放す や 否 や 、 ざ ぶん と 温泉 の 中 へ 、 石 の ように 大きな 背中 を 落す 。

満 槽 の 湯 は 一度に 面 喰って 、 槽 の 底 から 大 恐 惶 を 持ち上げる 。 ざ あっざ あっと 音 が して 、 流し へ 溢れ だす 。 「 ああ いい 心持ち だ 」 と 圭 さん は 波 の なか で 云った 。 「 なるほど そう 遠慮 なし に 振舞ったら 、 好 い 心 持 に 相違 ない 。

君 は 豪傑 だ よ 」 「 あの 隣り の 客 は 竹刀 と 小手 の 事 ばかり 云って る じゃ ない か 。 全体 何者 だい 」 と 圭 さん は 呑気 な もの だ 。

「 君 が 華族 と 金持ち の 事 を 気 に する ような もの だろう 」 「 僕 の は 深い 原因 が ある のだ が 、 あの 客 の は 何だか 訳 が 分 ら ない 」 「 なに 自分 じゃあ 、 あれ で 分って る んだ よ 。 ―― そこ で その 小手 を 取ら れた んだ あね ――」 と 碌 さん が 隣り の 真似 を する 。

「 ハハハハ そこ で そら 竹刀 を 落した んだ あね か 。

ハハハハ 。

どうも 気楽な もの だ 」 と 圭 さん も 真似 して 見る 。

「 なに あれ でも 、 実は 慷慨 家 かも 知れ ない 。

そら よく 草 双 紙 に ある じゃ ない か 。

何とか の 何 々 、 実は 海賊 の 張 本 毛 剃 九 右 衛 門 て 」 「 海賊 らしく も ない ぜ 。

さっき 温泉 に 這 入り に 来る 時 、 覗いて 見たら 、 二 人 共 木 枕 を して 、 ぐう ぐう 寝て いた よ 」 「 木 枕 を して 寝られる くらい の 頭 だ から 、 そら 、 そこ で 、 その 、 小手 を 取ら れる んだ あね 」 と 碌 さん は 、 まだ 真似 を する 。 「 竹刀 も 取ら れる んだ あね か 。

ハハハハ 。

何でも 赤い 表紙 の 本 を 胸 の 上 へ 載せた まん ま 寝て いた よ 」 「 その 赤い 本 が 、 何でも その 、 竹刀 を 落したり 、 小手 を 取ら れる んだ あね 」 と 碌 さん は 、 どこまでも 真似 を する 。

「 何 だろう 、 あの 本 は 」 「 伊賀 の 水 月 さ 」 と 碌 さん は 、 躊躇 なく 答えた 。

「 伊賀 の 水 月 ?

伊賀 の 水 月 た 何 だい 」 「 伊賀 の 水 月 を 知ら ない の かい 」 「 知ら ない 。

知ら なければ 恥 か な 」 と 圭 さん は ちょっと 首 を 捻った 。

「 恥 じゃ ない が 話せ ない よ 」 「 話せ ない ?

なぜ 」 「 なぜって 、 君 、 荒木 又 右 衛 門 を 知ら ない か 」 「 うん 、 又 右 衛 門 か 」 「 知って る の かい 」 と 碌 さん また 湯 の 中 へ 這 入る 。 圭 さん は また 槽 の なか へ 突 立った 。

「 もう 仁王 の 行水 は 御免 だ よ 」 「 もう 大丈夫 、 背中 は あらわ ない 。

あまり 這 入って る と 逆 上る から 、 時々 こう 立つ の さ 」 「 ただ 立つ ばかり なら 、 安心だ 。

―― それ で 、 その 、 荒木 又 右 衛 門 を 知って る かい 」 「 又 右 衛 門 ?

そう さ 、 どこ か で 聞いた ようだ ね 。

豊臣 秀吉 の 家来 じゃ ない か 」 と 圭 さん 、 飛んで も ない 事 を 云 う 。

「 ハハハハ こいつ は あきれた 。

華族 や 金持ち を 豆腐 屋 に する だ なんて 、 えらい 事 を 云 う が 、 どうも 何も 知ら ない ね 」 「 じゃ 待った 。

少し 考える から 。

又 右 衛 門 だ ね 。

又 右 衛 門 、 荒木 又 右 衛 門 だ ね 。

待ち たまえ よ 、 荒木 の 又 右 衛 門 と 。

うん 分った 」 「 何 だい 」 「 相撲 取だ 」 「 ハハハハ 荒木 、 ハハハハ 荒木 、 又 ハハハハ 又 右 衛 門 が 、 相撲 取り 。 いよいよ 、 あきれて しまった 。

実に 無 識 だ ね 。

ハハハハ 」 と 碌 さん は 大 恐 悦 である 。

「 そんなに おかしい か 」 「 おかし いって 、 誰 に 聞か したって 笑う ぜ 」 「 そんなに 有名な 男 か 」 「 そう さ 、 荒木 又 右 衛 門 じゃ ない か 」 「 だから 僕 も どこ か で 聞いた ように 思う の さ 」 「 そら 、 落ち 行く先 き は 九州 相良って 云 う じゃ ない か 」 「 云 うか も 知れ ん が 、 その 句 は 聞いた 事 が ない ようだ 」 「 困った 男 だ な 」 「 ちっとも 困りゃ し ない 。 荒木 又 右 衛 門 ぐらい 知ら なくったって 、 毫 も 僕 の 人格 に は 関係 は しまい 。 それ より も 五 里 の 山路 が 苦 に なって 、 やたらに 不平 を 並べる ような 人 が 困った 男 な んだ 」 「 腕力 や 脚力 を 持ち出さ れちゃ 駄目だ ね 。

とうてい 叶いっこ ない 。 そこ へ 行く と 、 どうしても 豆腐 屋 出身 の 天下 だ 。

僕 も 豆腐 屋 へ 年 期 奉公 に 住み込んで 置けば よかった 」 「 君 は 第 一 平生 から 惰弱 で いけない 。

ちっとも 意志 が ない 」 「 これ で よっぽど 有る つもりな んだ が な 。

ただ 饂飩 に 逢った 時 ばかり は 全く 意志 が 薄弱だ と 、 自分 ながら 思う ね 」 「 ハハハハ つまら ん 事 を 云って いら あ 」 「 しかし 豆腐 屋 に しちゃ 、 君 の からだ は 奇麗 過ぎる ね 」 「 こんなに 黒くって も かい 」 「 黒い 白い は 別 と して 、 豆腐 屋 は 大概 箚青 が ある じゃ ない か 」 「 なぜ 」 「 なぜ か 知ら ない が 、 箚青 が ある もん だ よ 。 君 、 なぜ ほら なかった 」 「 馬鹿 あ 云って ら あ 。 僕 の ような 高尚な 男 が 、 そんな 愚 な 真似 を する もの か 。

華族 や 金持 が ほれば 似合う かも 知れ ない が 、 僕 に は そんな もの は 向か ない 。

荒木 又 右 衛 門 だって 、 ほっちゃ いま い 」 「 荒木 又 右 衛 門 か 。

そい つ は 困った な 。

まだ そこ まで は 調べ が 届いて いない から ね 」 「 そりゃ どう で も いい が 、 ともかくも あした は 六 時 に 起きる んだ よ 」 「 そうして 、 ともかくも 饂飩 を 食う んだろう 。 僕 の 意志 の 薄弱な の に も 困る かも 知れ ない が 、 君 の 意志 の 強固な の に も 辟易 する よ 。

うち を 出て から 、 僕 の 云 う 事 は 一 つ も 通ら ない んだ から な 。

全く 唯 々 諾々 と して 命令 に 服して いる んだ 。

豆腐 屋 主義 は きびしい もん だ ね 」 「 な に この くらい 強硬に し ない と 増長 して いけない 」 「 僕 が かい 」 「 なあ に 世の中 の 奴 ら が さ 。

金持ち と か 、 華族 と か 、 なんとか か と か 、 生意気に 威張る 奴 ら が さ 」 「 しかし そりゃ 見当 違 だ ぜ 。

そんな もの の 身代り に 僕 が 豆腐 屋 主義 に 屈従 する な たまらない 。

どうも 驚 ろ いた 。

以来 君 と 旅行 する の は 御免 だ 」 「 なあ に 構わ ん さ 」 「 君 は 構わ なくって も こっち は 大いに 構う んだ よ 。 その 上 旅費 は 奇麗に 折半 さ れる んだ から 、 愚 の 極 だ 」 「 しかし 僕 の 御蔭 で 天地 の 壮観 たる 阿蘇 の 噴火 口 を 見る 事 が できる だろう 」 「 可 愛想 に 。

一 人 だって 阿蘇 ぐらい 登れる よ 」 「 しかし 華族 や 金持 なんて 存外 意気地 が ない もん で ……」 「 また 身代り か 、 どう だい 身代り は やめ に して 、 本当の 華族 や 金持ち の 方 へ 持って行ったら 」 「 いずれ 、 その 内 持って く つもりだ が ね 。

―― 意気地 が なくって 、 理 窟 が わから なくって 、 個人 と しちゃ あ 三 文 の 価値 も ない もん だ 」 「 だ から 、 どしどし 豆腐 屋 に して しまう さ 」 「 その 内 、 して やろう と 思って る の さ 」 「 思って る だけ じゃ 剣 呑 な もの だ 」 「 なあ に 年 が 年中 思って いりゃ 、 どうにか なる もん だ 」 「 随分 気 が 長い ね 。 もっとも 僕 の 知った もの に ね 。

虎 列 拉 ( コレラ ) に なる なる と 思って いたら 、 とうとう 虎 列 拉 に なった もの が ある が ね 。

君 の もそう 、 うまく 行く と 好 い けれども 」 「 時に あの 髯 を 抜いて た 爺さん が 手拭 を さげて やって 来た ぜ 」 「 ちょうど 好 い から 君 一 つ 聞いて 見た まえ 」 「 僕 は もう 湯気 に 上がり そうだ から 、 出る よ 」 「 まあ 、 いい さ 、 出 ない でも 。

君 が いや なら 僕 が 聞いて 見る から 、 もう 少し 這 入って いた まえ 」 「 おや 、 あと から 竹刀 と 小手 が いっしょに 来た ぜ 」 「 どれ 。

なるほど 、 揃って 来た 。

あと から 、 まだ 来る ぜ 。

や あ 婆さん が 来た 。

婆さん も 、 この 湯 槽 へ 這 入る の か な 」 「 僕 は ともかくも 出る よ 」 「 婆さん が 這 入る なら 、 僕 も ともかくも 出よう 」 風呂 場 を 出る と 、 ひやりと 吹く 秋風 が 、 袖口 から すう と 這 入って 、 素肌 を 臍 の あたり まで 吹き抜けた 。

出 臍 の 圭 さん は 、 はっくしょう と 大きな 苦 沙 弥 を 無遠慮に やる 。 上がり 口 に 白 芙蓉 が 五六 輪 、 夕 暮 の 秋 を 淋しく 咲いて いる 。

見上げる 向 で は 阿蘇 の 山 が ごうう ごうう と 遠く ながら 鳴って いる 。

「 あす こ へ 登る んだ ね 」 と 碌 さん が 云 う 。

「 鳴って る ぜ 。

愉快だ な 」 と 圭 さん が 云 う 。

Learn languages from TV shows, movies, news, articles and more! Try LingQ for FREE

「二 」 二百十 日 夏目 漱石 ふた|にひゃくじゅう|ひ|なつめ|そうせき Zwei." 210. Natsume Soseki 2" Two Hundred and Eleven Days, Natsume Soseki

「 この 湯 は 何 に 利く んだろう 」 と 豆腐 屋 の 圭 さん が 湯 槽 の なか で 、 ざ ぶ ざ ぶ やり ながら 聞く 。 |ゆ||なん||きく|||とうふ|や||けい|||ゆ|ふね||||||||||きく “What is this hot water good for?” Asks Kei, a tofu shop, in the hot water tank while rushing.

「 何 に 利く か なあ 。 なん||きく|| "What is it good for?

分析 表 を 見る と 、 何 に でも 利く ようだ 。 ぶんせき|ひょう||みる||なん|||きく| анализ||||||||| Looking at the analysis table, it seems to work for anything.

―― 君 そんなに 、 臍 ばかり ざ ぶ ざ ぶ 洗ったって 、 出 臍 は 癒 ら ない ぜ 」 「 純 透明だ ね 」 と 出 臍 の 先生 は 、 両手 に 温泉 を 掬 んで 、 口 へ 入れて 見る 。 きみ||へそ||||||あらった って|だ|へそ||いや||||じゅん|とうめいだ|||だ|へそ||せんせい||りょうて||おんせん||まり||くち||いれて|みる ||пупок||||||||||заживать|||||||||||||||||||||| ――You so much, even if you wash your navel so much, your navel will not heal. ”“ It's purely transparent, ”said the umbilical teacher, scooping the hot springs in both hands and putting them in his mouth. やがて 、 「 味 も 何も ない 」 と 云 いながら 、 流し へ 吐き出した 。 |あじ||なにも|||うん||ながし||はきだした Eventually, he spit it out into the sink, saying, "There is no taste."

「 飲んで も いい んだ よ 」 と 碌 さん は が ぶ が ぶ 飲む 。 のんで||||||ろく|||||||のむ |||||||||(subject marker)|||| Roku-san drank it down, saying, "You can drink it if you want.

圭 さん は 臍 を 洗う の を やめて 、 湯 槽 の 縁 へ 肘 を かけて 漫然と 、 硝子 越し に 外 を 眺めて いる 。 けい|||へそ||あらう||||ゆ|ふね||えん||ひじ|||まんぜんと|がらす|こし||がい||ながめて| ||||||||||||край||локоть|||бессмысленно|стекло|||||| Kei stopped washing his navel and rested his elbows on the edge of the bathtub, looking out through the glass.

碌 さん は 首 だけ 湯 に 漬かって 、 相手 の 臍 から 上 を 見上げた 。 ろく|||くび||ゆ||つかって|あいて||へそ||うえ||みあげた Roku-san looked up from the other party's navel, with only his neck immersed in the hot water.

「 どうも 、 いい 体格 だ 。 ||たいかく| "Hello, I have a good physique.

全く 野生 の まま だ ね 」 「 豆腐 屋 出身 だ から なあ 。 まったく|やせい|||||とうふ|や|しゅっしん||| |wild|||||||||| It's still wild at all. "" I'm from a tofu shop.

体格 が 悪 るい と 華族 や 金持ち と 喧嘩 は 出来 ない 。 たいかく||あく|||かぞく||かねもち||けんか||でき| If you're not a big girl, you can't fight with the rich and powerful.

こっち は 一 人 向 は 大勢 だ から 」 「 さも 喧嘩 の 相手 が ある ような 口 振 だ ね 。 ||ひと|じん|むかい||おおぜい||||けんか||あいて||||くち|ふ|| ||||||много людей||||||||||||| This is because there are a lot of people for one person. "" It's like having a fighting partner.

当の 敵 は 誰 だい 」 「 誰 でも 構わ ない さ 」 「 ハハハ 呑気 な もん だ 。 とうの|てき||だれ||だれ||かまわ||||のんき||| ||||||any|||||||| Who is the enemy in question? "" Anyone is fine. "" Hahaha, I'm sick.

喧嘩 に も 強そうだ が 、 足 の 強い の に は 驚いた よ 。 けんか|||きょうそうだ||あし||つよい||||おどろいた| It seems to be strong in fights, but I was surprised that the legs were strong.

君 と いっしょで なければ 、 きのう ここ まで くる 勇気 は なかった よ 。 きみ||||||||ゆうき|||

実は 途中 で 御免 蒙ろう か と 思った 」 「 実際 少し 気の毒だった ね 。 じつは|とちゅう||ごめん|かぶろう|||おもった|じっさい|すこし|きのどくだった| I was actually a little sorry to hear that.

あれ でも 僕 は よほど 加減 して 、 歩行 いた つもりだ 」 「 本当 かい ? ||ぼく|||かげん||ほこう|||ほんとう| |||||умеренность||ходьба|||| But I think I was walking with a lot of extra weight.

はたして 本当 なら えらい もの だ 。 |ほんとう|||| It's really great if it's true.

―― 何だか 怪しい な 。 なんだか|あやしい| -- Something fishy is going on here.

すぐ 付け上がる から いやだ 」 「 ハハハ 付け上がる もの か 。 |つけあがる||||つけあがる|| |развиваться|||||| I don't like it because it will be added soon. "" Hahaha.

付け上がる の は 華族 と 金持 ばかり だ 」 「 また 華族 と 金持ち か 。 つけあがる|||かぞく||かねもち||||かぞく||かねもち| Only the Chinese and the rich are added. "" Is it the Chinese and the rich again?

眼 の 敵 だ ね 」 「 金 は なくって も 、 こっち は 天下 の 豆腐 屋 だ 」 「 そう だ 、 いやしくも 天下 の 豆腐 屋 だ 。 がん||てき|||きむ||なく って||||てんか||とうふ|や|||||てんか||とうふ|や| ||||||||||||||||||even if||||| |||||||not|||||||||||||||| It's an enemy of the eyes. "" Even if you don't have money, this is a tofu shop in the world. "" Yes, it's a tofu shop in the world. 野生 の 腕力 家 だ 」 「 君 、 あの 窓 の 外 に 咲いて いる 黄色い 花 は 何 だろう 」 碌 さん は 湯 の 中 で 首 を 捩じ 向ける 。 やせい||わんりょく|いえ||きみ||まど||がい||さいて||きいろい|か||なん||ろく|||ゆ||なか||くび||ねじ|むける It's a wild strength man. "" You, what's the yellow flower that's blooming outside that window? "Mr. Igo twists his neck in the hot water.

「 かぼちゃ さ 」 「 馬鹿 あ 云って る 。 ||ばか||うん って| "Pumpkin, you idiot!" かぼちゃ は 地 の 上 を 這って る もの だ 。 ||ち||うえ||はって||| ||||||ползать||| Pumpkins are supposed to crawl on the ground.

あれ は 竹 へ からまって 、 風呂 場 の 屋根 へ あがって いる ぜ 」 「 屋根 へ 上がっちゃ 、 かぼちゃ に なれ ない か な 」 「 だって おかしい じゃ ない か 、 今頃 花 が 咲く の は 」 「 構う もの か ね 、 おかし いたって 、 屋根 に かぼちゃ の 花 が 咲く さ 」 「 そりゃ 唄 かい 」 「 そう さ な 、 前半 は 唄 の つもり で も なかった んだ が 、 後半 に 至って 、 つい 唄 に なって しまった ようだ 」 「 屋根 に かぼちゃ が 生 る ようだ から 、 豆腐 屋 が 馬車 なんか へ 乗る んだ 。 ||たけ|||ふろ|じょう||やね|||||やね||あがっちゃ||||||||||||いまごろ|か||さく|||かまう||||||やね||||か||さく|||うた|||||ぜんはん||うた||||||||こうはん||いたって||うた|||||やね||||せい||||とうふ|や||ばしゃ|||のる| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||песня||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| It's stuck in the bamboo and it's going up to the roof of the bathhouse.

不都合 千万 だ よ 」 「 また 慷慨 か 、 こんな 山 の 中 へ 来て 慷慨 したって 始まら ない さ 。 ふつごう|せんまん||||こうがい|||やま||なか||きて|こうがい||はじまら|| неудобство|миллион||||щедро|||||||||||| It's an inconvenience of 10 million. "" It doesn't start to be angry again, or to come into such a mountain and get angry. それ より 早く 阿蘇 へ 登って 噴火 口 から 、 赤い 岩 が 飛び出す ところ でも 見る さ 。 ||はやく|あそ||のぼって|ふんか|くち||あかい|いわ||とびだす|||みる| |||Асо|||вулкан|||||||||| I'm going to climb up to Aso and see if I can find the red rocks popping out of the crater.

―― しかし 飛び込んじゃ 困る ぜ 。 |とびこんじゃ|こまる| -- But you can't just jump in.

―― 何だか 少し 心配だ な 」 「 噴火 口 は 実際 猛烈な もの だろう な 。 なんだか|すこし|しんぱいだ||ふんか|くち||じっさい|もうれつな||| -- I'm a little concerned that the crater will actually be ferocious.

何でも 、 沢庵 石 の ような 岩 が 真 赤 に なって 、 空 の 中 へ 吹き出す そうだ ぜ 。 なんでも|たくあん|いし|||いわ||まこと|あか|||から||なか||ふきだす|そう だ| |дасань|||||||||||||||| It is said that rocks like Sawan stone turn red and blow out into the sky.

それ が 三四 町 四方 一面に 吹き出す のだ から 壮 んに 違 ない 。 ||さんし|まち|しほう|いちめんに|ふきだす|||そう||ちが| |||||||||великолепно||| It must have been spectacular for it to blow out in every direction for 34 towns.

―― あした は 早く 起き なくっちゃ 、 いけない よ 」 「 うん 、 起きる 事 は 起きる が 山 へ かかって から 、 あんなに 早く 歩行 いちゃ 、 御免 だ 」 と 碌 さん は すぐ 予防 線 を 張った 。 ||はやく|おき|||||おきる|こと||おきる||やま|||||はやく|ほこう||ごめん|||ろく||||よぼう|せん||はった ――You have to get up early tomorrow. ”“ Yeah, it happens, but after it hits the mountain, I'm sorry to walk so fast, ”said Mr. Ikari, who immediately put up a preventive line.

「 ともかくも 六 時 に 起きて ……」 「 六 時 に 起きる ? |むっ|じ||おきて|むっ|じ||おきる Anyway, wake up at six o'clock. ......" "Wake up at six o'clock?

」 「 六 時 に 起きて 、 七 時 半 に 湯 から 出て 、 八 時 に 飯 を 食って 、 八 時 半 に 便所 から 出て 、 そうして 宿 を 出て 、 十一 時 に 阿蘇 神社 へ 参詣 して 、 十二 時 から 登る のだ 」 「 へえ 、 誰 が 」 「 僕 と 君 が さ 」 「 何だか 君 一 人 り で 登る ようだ ぜ 」 「 な に 構わ ない 」 「 ありがたい 仕 合せ だ 。 むっ|じ||おきて|なな|じ|はん||ゆ||でて|やっ|じ||めし||くって|やっ|じ|はん||べんじょ||でて||やど||でて|じゅういち|じ||あそ|じんじゃ||さんけい||じゅうに|じ||のぼる|||だれ||ぼく||きみ|||なんだか|きみ|ひと|じん|||のぼる|||||かまわ|||し|あわせ| I'll get up at six o'clock, get out of the bath at seven and a half, eat at eight, get out of the bathroom at eight and a half, leave the inn, pay a visit to the Aso shrine at eleven, and climb the mountain at twelve.

まるで 御供 の ようだ ね 」 「 う ふん 。 |おとも||||| It's like a companion. "" Uh-huh.

時に 昼 は 何 を 食う か な 。 ときに|ひる||なん||くう|| Sometimes what do you eat during the day?

やっぱり 饂飩 に して 置く か 」 と 圭 さん が 、 あす の 昼 飯 の 相談 を する 。 |うどん|||おく|||けい|||||ひる|めし||そうだん|| |удон|||||||||||||||| After all, do you want to put it in udon noodles? "Kei-san talks about tomorrow's lunch.

「 饂飩 は よす よ 。 うどん||| Udon is good.

ここ い ら の 饂飩 は まるで 杉 箸 を 食う ようで 腹 が 突 張って たまらない 」 「 では 蕎麦 か 」 「 蕎麦 も 御免 だ 。 ||||うどん|||すぎ|はし||くう||はら||つ|はって|||そば||そば||ごめん| ||||удон||||||||||||||соба (японская лапша)||||| The udon here is like eating with cedar chopsticks, and it makes my stomach ache.

僕 は 麺類 じゃ 、 とても 凌げ ない 男 だ から 」 「 じゃ 何 を 食う つもりだ い 」 「 何でも 御馳走 が 食いたい 」 「 阿蘇 の 山 の 中 に 御馳走 が ある はず が ない よ 。 ぼく||めんるい|||しのげ||おとこ||||なん||くう|||なんでも|ごちそう||くい たい|あそ||やま||なか||ごちそう|||||| ||||very||unable|||||||||||||||||||||||||| I'm a man who can't survive on noodles." "Then what are you going to eat? だから この際 、 ともかくも 饂飩 で 間 に 合せて 置いて ……」 「 この際 は 少し 変だ ぜ 。 |このさい||うどん||あいだ||あわせて|おいて|このさい||すこし|へんだ| So, anyway, let's make it up to you with udon at ......." "This is a little strange.

この際 た 、 どんな 際 なんだい 」 「 剛 健 な 趣味 を 養成 する ため の 旅行 だ から ……」 「 そんな 旅行 な の かい 。 このさい|||さい||かたし|けん||しゅみ||ようせい||||りょこう||||りょこう||| What kind of occasion is this?" "It's a trip to cultivate a rigid hobby. ......" "Is it such a trip?

ちっとも 知ら なかった ぜ 。 |しら||

剛 健 は いい が 饂飩 は 平に 不 賛成 だ 。 かたし|けん||||うどん||ひらに|ふ|さんせい| Takeshi is good, but Udon is flatly disagreeable.

こう 見えて も 僕 は 身分 が 好 いんだ から ね 」 「 だから 柔 弱 で いけない 。 |みえて||ぼく||みぶん||よしみ|||||じゅう|じゃく|| |||I|||||||||||with| I'm a good man in spite of my looks," he said.

僕 なぞ は 学資 に 窮した 時 、 一 日 に 白米 二 合 で 間に合 せた 事 が ある 」 「 痩せたろう 」 と 碌 さん が 気の毒な 事 を 聞く 。 ぼく|||がくし||きゅうした|じ|ひと|ひ||はくまい|ふた|ごう||まにあ||こと|||やせたろう||ろく|||きのどくな|こと||きく When I was in need of tuition, I was able to make it in time with two white rice in a day. ”“ I'm thin, ”says Mr. Igo, who feels sorry for him.

「 そんなに 痩せ も し なかった が ただ 虱 が 湧いた に は 困った 。 |やせ||||||しらみ||わいた|||こまった |||||||вши||||| ||also|||||||||| "I didn't lose a lot of weight, but I did have a problem with lice.

―― 君 、 虱 が 湧いた 事 が ある かい 」 「 僕 は ない よ 。 きみ|しらみ||わいた|こと||||ぼく||| -- Have you ever had a louse infestation?

身分 が 違わ あ 」 「 まあ 経験 して 見た まえ 。 みぶん||ちがわ|||けいけん||みた| статус|||||||| You've got a different identity.

そりゃ 容易に 猟 り 尽 せる もん じゃ ない ぜ 」 「 煮え湯 で 洗濯 したら よかろう 」 「 煮え湯 ? |よういに|りょう||つく||||||にえゆ||せんたく|||にえゆ ||охота||||||||||||| That's not something that can be easily hunted. "" Would you like to wash it in boiling water? "" Boiled water?

煮え湯 なら いい かも 知れ ない 。 にえゆ||||しれ| Boiling water might be a good idea.

しかし 洗濯 する に して も ただ で は 出来 ない から な 」 「 な ある ほど 、 銭 が 一 文 も ない んだ ね 」 「 一 文 も ない の さ 」 「 君 どうした 」 「 仕方 が ない から 、 襯衣 を 敷居 の 上 へ 乗せて 、 手頃な 丸い 石 を 拾って 来て 、 こつこつ 叩いた 。 |せんたく||||||||でき|||||||せん||ひと|ぶん|||||ひと|ぶん|||||きみ||しかた||||しんい||しきい||うえ||のせて|てごろな|まるい|いし||ひろって|きて||たたいた ||||||||||||||||||||||||||||||||||||рубашка|||||||||||||| I had no choice but to put the underwear on the threshold, pick up a handy round stone, and pound on it.

そう したら 虱 が 死な ない うち に 、 襯衣 が 破れて しまった 」 「 お やおや 」 「 しかも それ を 宿 の かみ さん が 見つけて 、 僕 に 退去 を 命じた 」 「 さぞ 困ったろう ね 」 「 なあ に 困ら ん さ 、 そんな 事 で 困っちゃ 、 今日 まで 生きて いられる もの か 。 ||しらみ||しな||||しんい||やぶれて|||||||やど|||||みつけて|ぼく||たいきょ||めいじた||こまったろう||||こまら||||こと||こまっちゃ|きょう||いきて|いら れる|| ||вши||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| And before the lice could die, the underwear was ripped off. これ から 追い追い 華族 や 金持ち を 豆腐 屋 に する んだ から な 。 ||おいおい|かぞく||かねもち||とうふ|や||||| And now they are going to turn the rich and powerful into tofu shops.

滅多に 困っちゃ 仕方 が ない 」 「 する と 僕 な ん ぞ も 、 今に 、 と お ふい 、 油揚 、 がん も どき と 怒鳴って 、 あるか なくっちゃ なら ない か ね 」 「 華族 で も ない 癖 に 」 「 まだ 華族 に は なら ない が 、 金 は だいぶ ある よ 」 「 あって も その くらい じゃ 駄目だ 」 「 この くらい じゃ 豆腐 いと 云 う 資格 は ない の か な 。 めったに|こまっちゃ|しかた|||||ぼく|||||いまに||||あぶらあげ|||||どなって|||||||かぞく||||くせ|||かぞく||||||きむ||||||||||だめだ||||とうふ||うん||しかく||||| редко|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||not good||||||||||||| I'm not yet royalty, but I have a lot of money, and even if I had that much money, it's not enough.

大 に 僕 の 財産 を 見縊った ね 」 「 時に 君 、 背中 を 流して くれ ない か 」 「 僕 の も 流す の かい 」 「 流して も いい さ 。 だい||ぼく||ざいさん||みくびった||ときに|きみ|せなか||ながして||||ぼく|||ながす|||ながして||| I think you've underestimated my fortune." "Sometimes I wonder if you'd like to flush your back." "Would you like to flush mine?

隣り の 部屋 の 男 も 流し くら を やって た ぜ 、 君 」 「 隣り の 男 の 背中 は 似たり寄ったりだ から 公平だ が 、 君 の 背中 と 、 僕 の 背中 と は だいぶ 面積 が 違う から 損だ 」 「 そんな 面倒な 事 を 云 う なら 一 人 で 洗う ばかりだ 」 と 圭 さん は 、 両足 を 湯 壺 の 中 に うんと 踏ん張って 、 ぎ ゅう と 手拭 を しごいた と 思ったら 、 両端 を 握った まま 、 ぴしゃり と 、 音 を 立てて 斜 に 膏 切った 背中 へ あてがった 。 となり||へや||おとこ||ながし||||||きみ|となり||おとこ||せなか||にたりよったりだ||こうへいだ||きみ||せなか||ぼく||せなか||||めんせき||ちがう||そんだ||めんどうな|こと||うん|||ひと|じん||あらう|||けい|||りょうあし||ゆ|つぼ||なか|||ふんばって||||てぬぐい||||おもったら|りょうたん||にぎった||||おと||たてて|しゃ||こう|きった|せなか|| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||горшок|||||||||||||||||||||||||мазь||||прикоснулся The man in the next room was also doing the sink bath, you know." "The man next door has a similar back, so it's fair, but your back and mine are much different in area, so it's a loss." "If you insist on such trouble, I'll just wash my own back," said Kei, stepping both feet into the pot and squeezing the hand towel tightly, then holding both ends, he shot a sharp, sharp motion toward the back, which was slanted and plastered.

やがて 二の腕 へ 力瘤 が 急に 出来上がる と 、 水 を 含んだ 手拭 は 、 岡 の ように 肉 づい た 背中 を ぎ ちぎ ち 磨 り 始める 。 |にのうで||ちからこぶ||きゅうに|できあがる||すい||ふくんだ|てぬぐい||おか|||にく|||せなか|||||みがく||はじめる ||||||||||||||||||||||||полировать|| Eventually, a mass of power suddenly formed on his arms, and the watered hand towel began to grind against his back, which was fleshed out like an oak tree.

手拭 の 運動 に つれて 、 圭 さん の 太い 眉 がくしゃ り と 寄って 来る 。 てぬぐい||うんどう|||けい|||ふとい|まゆ||||よって|くる |||||||||брови||||| Kei's thick eyebrows furrowed in response to the exercise of the hand towel.

鼻 の 穴 が 三 角形 に 膨脹 して 、 小 鼻 が 勃 と して 左右 に 展開 する 。 はな||あな||みっ|すみ かた||ぼうちょう||しょう|はな||ぼつ|||さゆう||てんかい| |||||||расширяется|||||раскрываются|||||| The nostrils expand in a triangular shape, and the nose becomes erect and extends to the left and right.

口 は 腹 を 切る 時 の ように 堅く 喰 締った まま 、 両 耳 の 方 まで 割けて くる 。 くち||はら||きる|じ|||かたく|しょく|しまった||りょう|みみ||かた||さけて| The mouth remains tight as if it is being gutted, and it splits open to the ears.

「 まるで 仁王 の ようだ ね 。 |におう||| |Небесный король||| "It's just like Jin-O, isn't it?

仁王 の 行水 だ 。 におう||ぎょうずい| ||купание| It's Niou's waterfall.

そんな 猛烈な 顔 が よく できる ね 。 |もうれつな|かお|||| How can you look so fierce?

こりゃ 不思議だ 。 |ふしぎだ This is strange.

そう 眼 を ぐ り ぐ りさ せ なくって も 、 背中 は 洗え そうな もの だ が ね 」 圭 さん は 何にも 云 わ ず に 一生懸命に ぐいぐい 擦る 。 |がん|||||||なく って||せなか||あらえ|そう な|||||けい|||なんにも|うん||||いっしょうけんめいに||かする it seems|eye||||||||||||||||||||||||||| 擦って は 時々 、 手拭 を 温泉 に 漬けて 、 充分 水 を 含ま せる 。 かすって||ときどき|てぬぐい||おんせん||つけて|じゅうぶん|すい||ふくま| After scrubbing, occasionally soak the hand towel in hot spring water to soak it thoroughly.

含ま せる たんび に 、 碌 さん の 顔 へ 、 汗 と 膏 と 垢 と 温泉 の 交った もの が 十五六 滴 ずつ 飛んで 来る 。 ふくま||||ろく|||かお||あせ||こう||あか||おんせん||こう った|||じゅうごろく|しずく||とんで|くる |||||||||пот||мазь||грязь||||||||||| Whenever Roku-san gave it to him, fifteen to sixteen drops of a mixture of sweat, ointment, dirt, and hot spring water flew into his face. 「 こいつ は 降参 だ 。 ||こうさん| ||сдался| "I give up on this guy.

ちょっと 失敬 して 、 流し の 方 へ 出る よ 」 と 碌 さん は 湯 槽 を 飛び出した 。 |しっけい||ながし||かた||でる|||ろく|||ゆ|ふね||とびだした I'm going out to the sink," Roku-san said as he jumped out of the bathtub.

飛び出し は した もの の 、 感心 の 極 、 流し へ 突っ立った まま 、 茫然と して 、 仁王 の 行水 を 眺めて いる 。 とびだし|||||かんしん||ごく|ながし||つったった||ぼうぜんと||におう||ぎょうずい||ながめて| ||||||||поток||||||||баня||| |||fact|possessive particle||||||||||||||| He jumped out of the water, but was so impressed that he just stood there in the sink and watched Nioh's procession in a stupor.

「 あの 隣り の 客 は 元来 何者 だろう 」 と 圭 さん が 槽 の なか から 質問 する 。 |となり||きゃく||がんらい|なにもの|||けい|||ふね||||しつもん| ||||||||||||лот||||| Kei asked from inside the tank, "Who is that customer next to you originally?

「 隣り の 客 どころ じゃ ない 。 となり||きゃく||| "It's not just the neighbor's guests.

その 顔 は 不思議だ よ 」 「 もう 済んだ 。 |かお||ふしぎだ|||すんだ Your face is a mystery to me.

ああ 好 い 心 持 だ 」 と 圭 さん 、 手拭 の 一端 を 放す や 否 や 、 ざ ぶん と 温泉 の 中 へ 、 石 の ように 大きな 背中 を 落す 。 |よしみ||こころ|じ|||けい||てぬぐい||いったん||はなす||いな|||||おんせん||なか||いし|||おおきな|せなか||おとす As soon as Kei let go of the hand towel, he dropped his big, stone-like back into the hot spring water.

満 槽 の 湯 は 一度に 面 喰って 、 槽 の 底 から 大 恐 惶 を 持ち上げる 。 まん|ふね||ゆ||いちどに|おもて|しょく って|ふね||そこ||だい|こわ|こう||もちあげる |||||||кушает||||||||| A full tank of hot water eats up a lot of water at once, and brings up a huge fright from the bottom of the tank. ざ あっざ あっと 音 が して 、 流し へ 溢れ だす 。 |あっ ざ|あっ と|おと|||ながし||あふれ| The sound of a rushing sound and overflowing into the sink. 「 ああ いい 心持ち だ 」 と 圭 さん は 波 の なか で 云った 。 ||こころもち|||けい|||なみ||||うん った Kei said amidst the waves, "Oh, that's a good feeling. 「 なるほど そう 遠慮 なし に 振舞ったら 、 好 い 心 持 に 相違 ない 。 ||えんりょ|||ふるまったら|よしみ||こころ|じ||そうい| "Well, if you behave so openly and without reservation, I'm sure you'll feel good about it.

君 は 豪傑 だ よ 」 「 あの 隣り の 客 は 竹刀 と 小手 の 事 ばかり 云って る じゃ ない か 。 きみ||ごうけつ||||となり||きゃく||しない||こて||こと||うん って|||| ||герой|||||||||||||||||| You're a great guy!" "That customer next to me is always talking about bamboo swords and small arms. 全体 何者 だい 」 と 圭 さん は 呑気 な もの だ 。 ぜんたい|なにもの|||けい|||のんき||| Mr. Keizo is a very drunken man.

「 君 が 華族 と 金持ち の 事 を 気 に する ような もの だろう 」 「 僕 の は 深い 原因 が ある のだ が 、 あの 客 の は 何だか 訳 が 分 ら ない 」 「 なに 自分 じゃあ 、 あれ で 分って る んだ よ 。 きみ||かぞく||かねもち||こと||き||||||ぼく|||ふかい|げんいん||||||きゃく|||なんだか|やく||ぶん||||じぶん||||ぶん って||| I'm sure it's just like you caring about the rich and the famous, and mine has a deeper cause, but that client's is just so confusing. ―― そこ で その 小手 を 取ら れた んだ あね ――」 と 碌 さん が 隣り の 真似 を する 。 |||こて||とら|||||ろく|||となり||まね|| -- Roku-san imitates his neighbor, "That's where he took my hand, isn't it?

「 ハハハハ そこ で そら 竹刀 を 落した んだ あね か 。 ||||しない||おとした||| "Ha ha ha ha, you dropped your bamboo sword there, didn't you?

ハハハハ 。

どうも 気楽な もの だ 」 と 圭 さん も 真似 して 見る 。 |きらくな||||けい|||まね||みる It's very easy," Kei said as he watched in imitation.

「 なに あれ でも 、 実は 慷慨 家 かも 知れ ない 。 |||じつは|こうがい|いえ||しれ| "What is that, but he might actually be a deplainer...

そら よく 草 双 紙 に ある じゃ ない か 。 ||くさ|そう|かみ||||| You know, you often read about that in Kusa Soshi.

何とか の 何 々 、 実は 海賊 の 張 本 毛 剃 九 右 衛 門 て 」 「 海賊 らしく も ない ぜ 。 なんとか||なん||じつは|かいぞく||ちょう|ほん|け|てい|ここの|みぎ|まもる|もん||かいぞく|||| |||||||||||||||quotation particle||||| "Whatsho of Whatsho, is actually the pirate Zhangmoto Kezho-Kyuemon." "That's not even like a pirate.

さっき 温泉 に 這 入り に 来る 時 、 覗いて 見たら 、 二 人 共 木 枕 を して 、 ぐう ぐう 寝て いた よ 」 「 木 枕 を して 寝られる くらい の 頭 だ から 、 そら 、 そこ で 、 その 、 小手 を 取ら れる んだ あね 」 と 碌 さん は 、 まだ 真似 を する 。 |おんせん||は|はいり||くる|じ|のぞいて|みたら|ふた|じん|とも|き|まくら|||||ねて|||き|まくら|||ね られる|||あたま|||||||こて||とら|||||ろく||||まね|| ||||||||||||||деревянная подушка||||||||||||||||||||||||||||||||||| When they were coming to the hot spring, I looked in and saw that they were both sleeping in a bunk on a wooden pillow," Roku-san said, still mimicking the scene. 「 竹刀 も 取ら れる んだ あね か 。 しない||とら|||| "They're going to take my bamboo sword too, huh?

ハハハハ 。

何でも 赤い 表紙 の 本 を 胸 の 上 へ 載せた まん ま 寝て いた よ 」 「 その 赤い 本 が 、 何でも その 、 竹刀 を 落したり 、 小手 を 取ら れる んだ あね 」 と 碌 さん は 、 どこまでも 真似 を する 。 なんでも|あかい|ひょうし||ほん||むね||うえ||のせた|||ねて||||あかい|ほん||なんでも||しない||おとしたり|こて||とら|||||ろく||||まね|| ||||||||||||||||that|||||||||||||||||||||| I used to sleep with a book with a red cover still on my chest." "That red book is the one that makes me drop my bamboo sword or get my kote," Roku-san said, mimicking him to no end.

「 何 だろう 、 あの 本 は 」 「 伊賀 の 水 月 さ 」 と 碌 さん は 、 躊躇 なく 答えた 。 なん|||ほん||いが||すい|つき|||ろく|||ちゅうちょ||こたえた ||||||||||||||колебался|| What is that book?" "It's called Iga no Suigetsu," Roku-san answered without hesitation.

「 伊賀 の 水 月 ? いが||すい|つき

伊賀 の 水 月 た 何 だい 」 「 伊賀 の 水 月 を 知ら ない の かい 」 「 知ら ない 。 いが||すい|つき||なん||いが||すい|つき||しら||||しら| What is Iga no Suigetsu Ta Dai?" "You don't know Iga no Suigetsu?" "I don't know ..." "I don't know Iga no Suigetsu Ta!

知ら なければ 恥 か な 」 と 圭 さん は ちょっと 首 を 捻った 。 しら||はじ||||けい||||くび||ねじった Kei-san twisted his head a little and said, "It would be a shame if I didn't know.

「 恥 じゃ ない が 話せ ない よ 」 「 話せ ない ? はじ||||はなせ|||はなせ| "I'm not ashamed to say I can't talk about it." "You can't?

なぜ 」 「 なぜって 、 君 、 荒木 又 右 衛 門 を 知ら ない か 」 「 うん 、 又 右 衛 門 か 」 「 知って る の かい 」 と 碌 さん また 湯 の 中 へ 這 入る 。 |なぜ って|きみ|あらき|また|みぎ|まもる|もん||しら||||また|みぎ|まもる|もん||しって|||||ろく|||ゆ||なか||は|はいる ||||опять||||||||||||||||||||||||||| Roku-san crawled into the hot water again, saying "You don't know Araki Mataemon, do you? 圭 さん は また 槽 の なか へ 突 立った 。 けい||||ふね||||つ|たった Kei-san plunged into the tank again.

「 もう 仁王 の 行水 は 御免 だ よ 」 「 もう 大丈夫 、 背中 は あらわ ない 。 |におう||ぎょうずい||ごめん||||だいじょうぶ|せなか||| |Ниō|||||||||||| I don't want to be in the Niou's water any more.

あまり 這 入って る と 逆 上る から 、 時々 こう 立つ の さ 」 「 ただ 立つ ばかり なら 、 安心だ 。 |は|はいって|||ぎゃく|のぼる||ときどき||たつ||||たつ|||あんしんだ If you just stand there, you'll be safe.

―― それ で 、 その 、 荒木 又 右 衛 門 を 知って る かい 」 「 又 右 衛 門 ? |||あらき|また|みぎ|まもる|もん||しって|||また|みぎ|まもる|もん -- So, do you know Araki Mataemon?

そう さ 、 どこ か で 聞いた ようだ ね 。 |||||きいた|| Yes, I think I heard that somewhere.

豊臣 秀吉 の 家来 じゃ ない か 」 と 圭 さん 、 飛んで も ない 事 を 云 う 。 とよとみ|しゅうきち||けらい|||||けい||とんで|||こと||うん| |||слуга||||||||||||| Kei-san said something outrageous, "Isn't he a retainer of Hideyoshi Toyotomi?

「 ハハハハ こいつ は あきれた 。 "Hahahahaha, this guy is a joke.

華族 や 金持ち を 豆腐 屋 に する だ なんて 、 えらい 事 を 云 う が 、 どうも 何も 知ら ない ね 」 「 じゃ 待った 。 かぞく||かねもち||とうふ|や||||||こと||うん||||なにも|しら||||まった You are talking a great deal about turning the rich and wealthy into tofu makers, but you don't know anything about it.

少し 考える から 。 すこし|かんがえる| I'll think about it a little.

又 右 衛 門 だ ね 。 また|みぎ|まもる|もん|| It's Mataemon, isn't it?

又 右 衛 門 、 荒木 又 右 衛 門 だ ね 。 また|みぎ|まもる|もん|あらき|また|みぎ|まもる|もん|| Mataemon, Araki Mataemon, right?

待ち たまえ よ 、 荒木 の 又 右 衛 門 と 。 まち|||あらき||また|みぎ|まもる|もん| Wait for me, Araki no Mataemon to...

うん 分った 」 「 何 だい 」 「 相撲 取だ 」 「 ハハハハ 荒木 、 ハハハハ 荒木 、 又 ハハハハ 又 右 衛 門 が 、 相撲 取り 。 |ぶん った|なん||すもう|とりだ||あらき||あらき|また||また|みぎ|まもる|もん||すもう|とり Yeah, okay." "What?" "He's a Sumo wrestler." "Hahahaha Araki, hahahaha Araki, and hahahaha 又 又右衛門 is a Sumo wrestler. いよいよ 、 あきれて しまった 。 Finally, I'm getting tired of it.

実に 無 識 だ ね 。 じつに|む|しき|| ||knowledge|| You're really quite ignorant, aren't you?

ハハハハ 」 と 碌 さん は 大 恐 悦 である 。 ||ろく|||だい|こわ|えつ| |||||||радость| Roku-san was very pleased.

「 そんなに おかしい か 」 「 おかし いって 、 誰 に 聞か したって 笑う ぜ 」 「 そんなに 有名な 男 か 」 「 そう さ 、 荒木 又 右 衛 門 じゃ ない か 」 「 だから 僕 も どこ か で 聞いた ように 思う の さ 」 「 そら 、 落ち 行く先 き は 九州 相良って 云 う じゃ ない か 」 「 云 うか も 知れ ん が 、 その 句 は 聞いた 事 が ない ようだ 」 「 困った 男 だ な 」 「 ちっとも 困りゃ し ない 。 |||||だれ||きか||わらう|||ゆうめいな|おとこ||||あらき|また|みぎ|まもる|もん|||||ぼく|||||きいた||おもう||||おち|ゆくさき|||きゅうしゅう|さがら って|うん|||||うん|||しれ||||く||きいた|こと||||こまった|おとこ||||こまりゃ|| I don't know if it's that funny. - "Is he that famous?" - "Yes, isn't he Araki Mataemon?" - "That's why I think I heard about him somewhere." - "You know, they say that the place to fall is Kyushu Sagara. 荒木 又 右 衛 門 ぐらい 知ら なくったって 、 毫 も 僕 の 人格 に は 関係 は しまい 。 あらき|また|みぎ|まもる|もん||しら|な くった って|ごう||ぼく||じんかく|||かんけい|| Not knowing Araki Mataemon has nothing to do with my character. それ より も 五 里 の 山路 が 苦 に なって 、 やたらに 不平 を 並べる ような 人 が 困った 男 な んだ 」 「 腕力 や 脚力 を 持ち出さ れちゃ 駄目だ ね 。 |||いつ|さと||やまじ||く||||ふへい||ならべる||じん||こまった|おとこ|||わんりょく||きゃくりょく||もちださ||だめだ| A man who complains too much about the five-mile mountain path is a man in trouble.

とうてい 叶いっこ ない 。 |かない っこ| It will never happen. そこ へ 行く と 、 どうしても 豆腐 屋 出身 の 天下 だ 。 ||いく|||とうふ|や|しゅっしん||てんか| |||||||||天下| When I go there, I can't help but think that I'm from a tofu shop.

僕 も 豆腐 屋 へ 年 期 奉公 に 住み込んで 置けば よかった 」 「 君 は 第 一 平生 から 惰弱 で いけない 。 ぼく||とうふ|や||とし|き|ほうこう||すみこんで|おけば||きみ||だい|ひと|へいぜい||だじゃく|| |||||||служба||||||||||||| ||||||||||||||||||lazy||not good I should have lived in a tofu shop for a term of apprenticeship," "You have been inert and weak all your life.

ちっとも 意志 が ない 」 「 これ で よっぽど 有る つもりな んだ が な 。 |いし||||||ある|||| I don't have any will at all." "I think I have a lot more than this, though.

ただ 饂飩 に 逢った 時 ばかり は 全く 意志 が 薄弱だ と 、 自分 ながら 思う ね 」 「 ハハハハ つまら ん 事 を 云って いら あ 」 「 しかし 豆腐 屋 に しちゃ 、 君 の からだ は 奇麗 過ぎる ね 」 「 こんなに 黒くって も かい 」 「 黒い 白い は 別 と して 、 豆腐 屋 は 大概 箚青 が ある じゃ ない か 」 「 なぜ 」 「 なぜ か 知ら ない が 、 箚青 が ある もん だ よ 。 |うどん||あった|じ|||まったく|いし||はくじゃくだ||じぶん||おもう|||||こと||うん って||||とうふ|や|||きみ||||きれい|すぎる|||くろく って|||くろい|しろい||べつ|||とうふ|や||たいがい|さつあお|||||||||しら|||さつあお||||| |удон|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||синий цвет||||| ||||||||||||||||||||||||||||as for||||||||||||||||||||||||||||||||||sorrel||||| I think I'm a bit weak-willed when it comes to udon," he said, "but your body is too beautiful for a tofu maker. 君 、 なぜ ほら なかった 」 「 馬鹿 あ 云って ら あ 。 きみ||||ばか||うん って|| Why didn't you see it?" "You're an idiot, you know that? 僕 の ような 高尚な 男 が 、 そんな 愚 な 真似 を する もの か 。 ぼく|||こうしょうな|おとこ|||ぐ||まね|||| How could such a noble man as me do such a foolish thing?

華族 や 金持 が ほれば 似合う かも 知れ ない が 、 僕 に は そんな もの は 向か ない 。 かぞく||かねもち|||にあう||しれ|||ぼく||||||むか| It might suit someone from a wealthy family, but it's not for me.

荒木 又 右 衛 門 だって 、 ほっちゃ いま い 」 「 荒木 又 右 衛 門 か 。 あらき|また|みぎ|まもる|もん|||||あらき|また|みぎ|まもる|もん| |Опять||||||||||||| Araki 又衛門 だって, Hottei desu" "Araki 又衛門 ka..." "Araki 又衛門..." "Araki 又衛門?

そい つ は 困った な 。 |||こまった| That's a problem.

まだ そこ まで は 調べ が 届いて いない から ね 」 「 そりゃ どう で も いい が 、 ともかくも あした は 六 時 に 起きる んだ よ 」 「 そうして 、 ともかくも 饂飩 を 食う んだろう 。 ||||しらべ||とどいて|||||||||||||むっ|じ||おきる|||||うどん||くう| ||||||||||||||||||||||||||anyway|||| I don't really care, but I have to be up at 6:00 a.m. tomorrow, so I can have some udon anyway. 僕 の 意志 の 薄弱な の に も 困る かも 知れ ない が 、 君 の 意志 の 強固な の に も 辟易 する よ 。 ぼく||いし||はくじゃくな||||こまる||しれ|||きみ||いし||きょうこな||||へきえき|| |||||||||||||||||||||усталость отвращение|| I may be annoyed by my weak will, but I am also fed up with your strong will.

うち を 出て から 、 僕 の 云 う 事 は 一 つ も 通ら ない んだ から な 。 ||でて||ぼく||うん||こと||ひと|||とおら|||| ||||||||||||||||after| You haven't heard a single thing I've said since we left home.

全く 唯 々 諾々 と して 命令 に 服して いる んだ 。 まったく|ただ||だくだく|||めいれい||ふくして|| |||согласие||||||| You're just obeying orders with total acquiescence.

豆腐 屋 主義 は きびしい もん だ ね 」 「 な に この くらい 強硬に し ない と 増長 して いけない 」 「 僕 が かい 」 「 なあ に 世の中 の 奴 ら が さ 。 とうふ|や|しゅぎ||||||||||きょうこうに||||ぞうちょう|||ぼく|||||よのなか||やつ||| |||||||||||||||||||||||||possessive particle|||| Tofu-ya-ism is a harsh thing." "You have to be this tough to grow up." "I'll take care of it." "Hey, you know what?

金持ち と か 、 華族 と か 、 なんとか か と か 、 生意気に 威張る 奴 ら が さ 」 「 しかし そりゃ 見当 違 だ ぜ 。 かねもち|||かぞく|||||||なまいきに|いばる|やつ||||||けんとう|ちが|| ||||||||||нагло||||||||||| The rich, the rich, the rich and famous, and the what-have-you, and all those other guys with their cocky, pompous faces, but you're wrong, you know.

そんな もの の 身代り に 僕 が 豆腐 屋 主義 に 屈従 する な たまらない 。 |||みがわり||ぼく||とうふ|や|しゅぎ||くつじゅう||| |||||||||||подчиняться||| ||||||||||||||can't stand I will not bow down to the tofu shop principle in place of such a thing.

どうも 驚 ろ いた 。 |おどろ|| Thank you. You scared me.

以来 君 と 旅行 する の は 御免 だ 」 「 なあ に 構わ ん さ 」 「 君 は 構わ なくって も こっち は 大いに 構う んだ よ 。 いらい|きみ||りょこう||||ごめん||||かまわ|||きみ||かまわ|なく って||||おおいに|かまう|| since|||||||||||||||||||||||| I don't want to travel with you anymore." "Hey, it doesn't matter." "It doesn't matter to you, but it matters to me. その 上 旅費 は 奇麗に 折半 さ れる んだ から 、 愚 の 極 だ 」 「 しかし 僕 の 御蔭 で 天地 の 壮観 たる 阿蘇 の 噴火 口 を 見る 事 が できる だろう 」 「 可 愛想 に 。 |うえ|りょひ||きれいに|せっぱん|||||ぐ||ごく|||ぼく||おかげ||てんち||そうかん||あそ||ふんか|くち||みる|こと||||か|あいそ| |||||||||||||||||||||величественный вид|||||||||||||| But thanks to me, you'll be able to see the Aso crater, the most spectacular sight in all of heaven and earth.

一 人 だって 阿蘇 ぐらい 登れる よ 」 「 しかし 華族 や 金持 なんて 存外 意気地 が ない もん で ……」 「 また 身代り か 、 どう だい 身代り は やめ に して 、 本当の 華族 や 金持ち の 方 へ 持って行ったら 」 「 いずれ 、 その 内 持って く つもりだ が ね 。 ひと|じん||あそ||のぼれる|||かぞく||かねもち||ぞんがい|いくじ||||||みがわり||||みがわり|||||ほんとうの|かぞく||かねもち||かた||もっていったら|||うち|もって|||| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||that|||||| I can climb Aso by myself." "But the rich and the famous are not so generous. ......" "Another scapegoat, maybe you should stop scapegoating and take it to the real rich and famous.

―― 意気地 が なくって 、 理 窟 が わから なくって 、 個人 と しちゃ あ 三 文 の 価値 も ない もん だ 」 「 だ から 、 どしどし 豆腐 屋 に して しまう さ 」 「 その 内 、 して やろう と 思って る の さ 」 「 思って る だけ じゃ 剣 呑 な もの だ 」 「 なあ に 年 が 年中 思って いりゃ 、 どうにか なる もん だ 」 「 随分 気 が 長い ね 。 いくじ||なく って|り|いわや|||なく って|こじん||||みっ|ぶん||かち||||||||とうふ|や||||||うち||||おもって||||おもって||||けん|どん||||||とし||ねんじゅう|おもって||||||ずいぶん|き||ながい| ||||||||||||||||||||||постепенно|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| |||||||||||||||||||||so|||||||||||||||||||||||well|||||||||||will work out||||||| -- "I'm going to turn you into a tofu shop," "I'm going to do it sooner or later," "I've been thinking about it," "I've been thinking about it all my life," "Hey, if you think about it all the time, you'll figure it out," "You're a very long-winded person..." "I've been thinking about it all my life," "I'm going to turn you into a tofu shop," "I'm going to do it all the time," "You're a very long-winded person," "I'm going to turn you into a tofu shop," "I'm going to do it all my life. もっとも 僕 の 知った もの に ね 。 |ぼく||しった||| The one I know the most about.

虎 列 拉 ( コレラ ) に なる なる と 思って いたら 、 とうとう 虎 列 拉 に なった もの が ある が ね 。 とら|れつ|らつ|これら|||||おもって|||とら|れつ|らつ||||||| There are some things that I thought would turn out to be cholera, but they finally turned out to be cholera.

君 の もそう 、 うまく 行く と 好 い けれども 」 「 時に あの 髯 を 抜いて た 爺さん が 手拭 を さげて やって 来た ぜ 」 「 ちょうど 好 い から 君 一 つ 聞いて 見た まえ 」 「 僕 は もう 湯気 に 上がり そうだ から 、 出る よ 」 「 まあ 、 いい さ 、 出 ない でも 。 きみ||も そう||いく||よしみ|||ときに||ぜん||ぬいて||じいさん||てぬぐい||||きた|||よしみ|||きみ|ひと||きいて|みた||ぼく|||ゆげ||あがり|そう だ||でる|||||だ|| ||also|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| I'm about to come up in a puff of steam, so I'll get out.

君 が いや なら 僕 が 聞いて 見る から 、 もう 少し 這 入って いた まえ 」 「 おや 、 あと から 竹刀 と 小手 が いっしょに 来た ぜ 」 「 どれ 。 きみ||||ぼく||きいて|みる|||すこし|は|はいって||||||しない||こて|||きた|| ||||||||||||||before||||||||||| I'll ask him if you don't like it, so just crawl in there a little longer.

なるほど 、 揃って 来た 。 |そろって|きた I see. They're all here.

あと から 、 まだ 来る ぜ 。 |||くる| They'll be back later.

や あ 婆さん が 来た 。 ||ばあさん||きた ||бабушка|| Hey, the old lady's here.

婆さん も 、 この 湯 槽 へ 這 入る の か な 」 「 僕 は ともかくも 出る よ 」 「 婆さん が 這 入る なら 、 僕 も ともかくも 出よう 」 風呂 場 を 出る と 、 ひやりと 吹く 秋風 が 、 袖口 から すう と 這 入って 、 素肌 を 臍 の あたり まで 吹き抜けた 。 ばあさん|||ゆ|ふね||は|はいる||||ぼく|||でる||ばあさん||は|はいる||ぼく|||でよう|ふろ|じょう||でる|||ふく|あきかぜ||そでぐち||||は|はいって|すはだ||へそ||||ふきぬけた ||||||||||||||||||||||||||||||||||рукава||||||голая кожа||пупок|||| As I left the bathroom, a chilly autumn wind blew in through my cuffs and blew across my bare skin up to my navel.

出 臍 の 圭 さん は 、 はっくしょう と 大きな 苦 沙 弥 を 無遠慮に やる 。 だ|へそ||けい|||はっ くしょう||おおきな|く|いさご|わたる||ぶえんりょに| |||||||||||песок||| Kei-san, who is the navel, does the big "hakkusho" and the big "sha-ya" without hesitation. 上がり 口 に 白 芙蓉 が 五六 輪 、 夕 暮 の 秋 を 淋しく 咲いて いる 。 あがり|くち||しろ|ふよう||ごろく|りん|ゆう|くら||あき||さびしく|さいて| Fifty-six white hibiscuses are blooming at the entrance of the building.

見上げる 向 で は 阿蘇 の 山 が ごうう ごうう と 遠く ながら 鳴って いる 。 みあげる|むかい|||あそ||やま|||||とおく||なって| Looking up, the mountains of Aso are roaring in the distance.

「 あす こ へ 登る んだ ね 」 と 碌 さん が 云 う 。 |||のぼる||||ろく|||うん| Roku-san said, "You're going up there, aren't you?

「 鳴って る ぜ 。 なって|| "It's ringing.

愉快だ な 」 と 圭 さん が 云 う 。 ゆかいだ|||けい|||うん| It's funny," Kei said.