×

우리는 LingQ를 개선하기 위해서 쿠키를 사용합니다. 사이트를 방문함으로써 당신은 동의합니다 쿠키 정책.


image

三姉妹探偵団 1, 三姉妹探偵団01 chapter 03 (1)

三 姉妹 探偵 団 01 chapter 03 (1)

3 OL 綾子 の 優雅な 生活

「 行って らっしゃい 、 お 姉 さま 」

夕 里子 は ていねいに 頭 を 下げて 、 綾子 を 送り出した 。 いや 、 送り込んだ 。

水口 淳子 の 勤めて いた 会社 ──〈 東京 セクレタリーサービス 〉 と いう 名 だった ── の 入った ビル の 下 まで 、 綾子 を 引きずる ように 連れて 来て 、 ビル の 入口 で 別れよう か と 思った が 、 どうも 心配で エレベーター の 所 まで やって 来た 。 まだ 不安な ので 、 ついに 五 階 まで 上って 、 当の 会社 の ガラス 扉 を 開けて やる ところ まで 、 夕 里子 と して は とことん 面倒 を みた のである 。

さて 、 これ で いい だろう 。 腕 時計 を みる と 、 ぎりぎり 、 九 時 二 分 前 だった 。

「 間に合って 良かった ! さて 帰る か 、 と 下り の エレベーター を 待って いる と 、 一 階 から 各駅 停車 で 上って 来る 。 そして 扉 が 開いた 、 と 思う と 、 凄い 勢い で 中 から 若い 男 が 飛び出して 来た 。

ドシン と 夕 里子 に 突き当り 、 不意 を くらって 夕 里子 は もの の みごとに ひっくり返って しまった 。

「 気 を 付けろ ! と 男 は 怒鳴って 、〈 東京 セクレタリー 〉 へ 飛び込んで 行く 。

「 ああ 、 びっくり した ……」

夕 里子 は 目 を パチクリ して 、「 どっち が 気 を 付けろ だ か ……」

凄い もん ね 、 サラリーマン って 。

一方 、 夕 里子 に 押し込ま れた 綾子 は 、〈 受付 〉 と 札 の ある カウンター の 前 で 、 黙って 立って いた 。

その 内 、 誰 か が 話しかけて くれる んじゃ ない か 、 と 思って いた のである 。

何やら 若い 男 が 猛烈な ダッシュ で 駆け込んで 来る と 、 カード を 時計 に 差し込んで 、

「 やった ! と 、 飛び上って いる 。

あれ が タイムレコーダー なる もの らしい 。 九 時 に 間に合う って 、 そんなに 嬉しい もの な の かしら ?

ポロン 、 ポロン と チャイム が 鳴って 、 仕事 が 始まる 。

広い 事務 所 で は ない 。 ── 人数 は 、 ざっと 数えて 、 二十 人 ぐらい か 。

女性 の 方 が 多い ようで 、 綾子 は 少し ホッと した 。 しかし ── 綾子 は 困って しまった 。

いくら 待って も 、 誰 も 、

「 何の ご用 ? と 訊 いて くれ ない のだ 。

それ も 当然で 、 綾子 は カウンター から 三 メートル も 離れて 立って いた のである 。 受付 の 女性 は 、 綾子 が 、 たぶん どこ か の 出入り の 業者 の お 使い か 何 か で 、 そこ で 書類 の 出来上り を 待って いる んだろう 、 と 思って いた 。

十 分 近く たって から 、 綾子 は やっと 、 恐る恐る カウンター の 方 へ 一 メートル ばかり 近付いた 。

受付 の 女性 が 気付いて 、

「 何 かご 用 です か ? と 声 を かけて 来た 。

「 あの ……」

と 言い かける と 、

「 どう だ 、 滑り込み セーフ だ ぜ 」

と 、 ワイシャツ に ネクタイ 、 サンダル を パタパタ いわ せ ながら 、 くわえ タバコ で やって 来た の は 、 さっき 飛び込んで 来た 若い 男 である 。 ずいぶんだ らし の ない 会社 ね 、 と 綾子 は 眉 を ひそめた 。

「 ぎりぎりだった でしょ 」

と 、 受付 の 女の子 が 言った 。

「 エレベーター の 前 に 女の子 が ポケーッ と 立って や がって さ 、 こっち は 急いで る から 、 ドーンと ぶつかって 、 向 う は 引っくり返 っち まった よ 」

「 まあ 、 可哀そうに 」

「 キョトンと して や ん の よ 。 スカート が ちらっと め くれて 、 白い の が 見えて さ 」

「 いや ねえ ! 二 人 が 一緒に なって 笑った 。

綾子 は 、 それ が 夕 里子 の こと に 違いない 、 と 気付いた 。 ── 気 は 弱い が 、 妹 想い で は ある のだ 。 ムッと して 、 カッ と なって 、 キッ と にらみつける と 、

「 それ は 私 の 妹 です ! と 声 を 震わせて 、「 女の子 の スカート の 中 を 覗く なんて 、 恥ずかしく ない んです か ! 二 人 は キョトンと して 綾子 を 眺めて いた が 、

「── これ 、 誰 ? と 男 の 方 が 言った 。

「 さあ ……」

「 私 、 アルバイト です 」

綾子 は 堂々と (? ) 名乗った 。

一方 、 夕 里子 の 方 とて 、 遊んで いた わけで は ない 。

父 が 勤めて いた 〈 K 建設 〉 の ビル の 近く まで 行って 電話 を かけた 。

「 もしもし 、 販売 第 二 課 の 西川 さん 、 おいでになり ます でしょう か 」

「 西川 です か 。 そちら 様 は 」

「 あの …… バー 〈 三毛猫 〉 と 申し ます 」

「 少々 お 待ち 下さい 」

夕 里子 の 声 は 、 多少 大人びて 聞こえる のである 。 西川 は 父 と 親しい 同僚 で 、 何 度 か 家 に 遊び に 来た こと も ある ので 、 よく 知っている のだ 。

「── おい 、 何 だ よ 、 会社 へ かけて 来ちゃ 困る じゃ ない か 」

電話 口 を 手 で 囲って 、 周り へ 聞こえ ない ように 話して いる らしい 。 夕 里子 は 笑い を かみ殺した 。

「 今月 、 ちゃんと 払う から さ 、 もう 少し 待って くれよ 」

「 もしもし 、 西川 さん 」

「── 誰 だい ? 「 佐々 本 夕 里子 です 」

「 え ? 何 だ 、 びっくり した 」

大きな 吐息 が 、 電話 口 から 伝わって 来た 。

「 ちょっと 、 お 話し たい んです けど 」

と 、 夕 里子 は 言った 。

「── お 父さん の こと じゃ 、 大変だろう ねえ 」

K 建設 ビル の 向 い に ある 、 小さな コーヒーハウス で 、 西川 は 言った 。 コロコロ と よく 太った 、 童顔 の 男 だ が 、 父 と 同期 の 入社 だった 。

「 会社 で 、 父 の 話 、 出 ます か 」

「 まあ 、 あんまり ね ……。 分 る だろう 。 話 と いって も ……」

「 分 り ます 。 西川 さん 、 父 と 親しかった でしょう 。 何 か ご存知 あり ませ ん か 」

「 何 か ……。 いや 、 知って りゃ いい んだ が ねえ 」

「 父 に 恋人 が いたって こと 、 知ってい ました ? 「 いや 、 全然 。 巧 く 隠して いた もん だ と 思って びっくり した んだ よ 。 しかし 、 いて も 不思議じゃ ない が ね 。 君 の お 父さん は 、 あの 通り ハンサムだ し 」

「 何 か 父 の 口 から 聞いた こと あり ませ ん か ? お 酒 を 飲んで る とき なんか に 。 誰 か 、 好きな 女性 が いる 、 くらい 」

「 それ は 訊 かれた よ 、 警察 でも ね 。 しかし 、 全然 記憶 ない んだ 。 まあ 、 酔って る とき の 話 なんて 、 右 から 左 へ 通り抜け ち まう もん だ けど ね 」

「 あの 水口 淳子 って 女性 、 妊娠 して たって いう んです 。 でも 、 父 は やもめ です から 、 別に 他の 女 の 人 に 子供 が できて も 、 殺す 必要 ない はずでしょ ? たとえば 西川 さん みたいに 奥さん の ある 方 なら ともかく 」

「 おいおい 、 夕 里子 ちゃん 、 ゾッと する ような こと 言う な よ 」

と 、 西川 は 目 を 大きく 見開いて 、「 そんな 話 が 女房 の 耳 に でも 入ったら 、 大騒ぎ だ よ 」

「 でも 、 そう 思い ませ ん ? 「 まあ …… 確かに ね 」

「 私 、 父 は あの 女性 を 殺して ない って 信じて ます 」

「 じゃ 、 他 に 犯人 が いる 、 と ……? 「 ええ 。 もちろん です わ 」

「 でも 、 それ なら 、 どうして 佐々 本 は 出て 来 ない んだろう ? 「 出て 来 られ ない 状態 な の か 、 それとも 、 殺さ れて いる か です 」

「 君 は なかなか 凄い こと を 言う ねえ 」

西川 は すっかり 夕 里子 に 呑 ま れて いる 格好だった 。

「 父 が あの 木曜 から 休暇 を 取って いた の は ご存知 でしょう 」

「 うん 」

「 でも 、 うち に は 出張 で 札幌 へ 行く と 言って いた んです 。 西川 さん 、 何 か 聞き ませ ん でした ? 「 いや 、 聞か ない な 。 ただ ──」

「 何 です か ? 「 休む って の も 知ら なかった よ 。 いつも なら 休み を 取る 前 は 、 あれこれ 伝言 して いく の が 普通だった 。 何しろ 販売 は お 得意 あって の 仕事 だ から ね 。 お 得意先 から 電話 が あって も 、 話 が 通じ なかったら 大変だ 。 お 得意先 を 失う こと に なり かね ない から ね 」

「 あの とき は 何も 言わ ず に ? 「 うん 、 変だ な 、 と 思った んだ が 」

夕 里子 は 少し 考えて いた が 、

「 課長 さん に 会わ せて 下さい 」

と 言った 。

「 植松 課長 に ? でも 、 どうして ? 「 父 が 休暇 の 理由 を どう 言った か 、 うかがって み たい んです 。 お 願い し ます 」

「 うん …… しかし ……」

と 、 西川 は 渋って いる 。

「 いらっしゃる んでしょ ? 「 いる こと は いる よ 。 ただ …… その …… 僕 が 取り次ぐ と いう の は ……」

夕 里子 は 、 西川 が 、 迷惑 がって いる の に 気付いた 。 仲間 なんて こんな もの か 、 と 思った 。

「 分 り ました 。 直接 会社 に うかがい ます 」

夕 里子 は 立ち上った 。

「── 植松 課長 に お目にかかり たい んです けど 」

「 どちら 様 でしょう か ? と 、 受付 の 女性 が 訊 く 。

「 佐々 本 夕 里子 と 申し ます 」

「 佐々 本 …… さん ? 「 佐々 本 の 娘 です 」

「 ちょっと 待って ね 」

受付 の 女性 は 、 急いで 席 を 立つ と 、 奥 へ 引込んで 行った 。

夕 里子 は 父 の 会社 に 来る の は 初めて だった 。 販売 の 人間 は 、 ほとんど どこ か 出歩いて いる ので 、 会社 の 近く で会う など と いう こと は なかった のだ 。

殺風景な 廊下 と 、 受付 、 そして 衝立 で 仕切ら れた 職場 ……。 これ が モダン と いう もの な の かしら 、 と 夕 里子 は 思った 。

衝立 の 向 う から 、 電話 の ベル の 音 、 タイプ を 打つ 音 など が 聞こえて 来る 。

ここ に 、 パパ が 通って 来て いた んだ 、 と 思う と 、 急に 涙 が こみ上げて 来て 、 夕 里子 は あわてて 頭 を 振った 。 ── しっかり し なきゃ ! お 姉さん と は 違う んだ から ね !

「── あら 、 佐々 本 さん の 娘 さん じゃ ない ? と 、 女性 の 声 に 振り向く 。

「 あなた 、 佐々 本 さん の ──」

「 はい 、 そう です 」

「 やっぱり ! もう 四十 代 も かなり 行って いる だろう と いう 感じ の 〈 おばさん 〉 タイプ の 女性 である 。

「 私 、 同じ 課 に いる 野上 幸代 よ 」

「 あ ── 父 が よく 話して ました 」

「 凄い お っか ない おばさん が いる って ? と 笑って 、「 お 父さん 、 心配 ね 」

と 言った 。

「 ええ 」

「 でも 大丈夫 。 ちゃんと 帰って 来る わ よ 。 あなた 、 二 番 目 の 娘 さん ? 「 はい 、 夕 里子 です 」

「 一 番 しっかり して る って 、 よく 自慢 して たわ よ 。 いつか あなた の 写真 、 見せて もらった こと が ある の 」

「 そう です か 」

「 目 の とこ なんか 、 お 父さん そっくり ね 」

夕 里子 は 、 野上 幸代 の ポンポン と 弾ける ような 言い 方 に 、 何とも いえ ない 安堵 を 覚えた 。 迷惑 がる でも なく 、 同情 する でも ない 、 親愛 の 情 が あった 。

受付 の 女性 が 戻って 来た 。

「 悪い けど 、 植松 課長 は 今 会議 中 で 出て 来 れ ない の 」

「 いつ 終り ます か 」

「 長く かかる と 思う わ 。 その後 、 すぐ 出かける し 」

「 そう です か ……」

「 ちょっと ちょっと 」

と 、 野上 幸代 が 口 を 挟んだ 。 「 うち の 課長 が 会議 中 ? 何 言って ん の よ ! つい さっき 、 業者 と ゴルフ の 話 を 一 時間 も して たわ よ 。 ── いらっしゃい 、 夕 里子 さん 」

「 は 、 はい ! 夕 里子 は 、 野上 幸代 の 後 に ついて 、 急いで 歩いて 行った 。

── 応接 室 へ 、 小柄な 初老 の 男 が 入って 来た 。 いかにも 口うるさい 感じ の する 男 である 。

「 何 かね 、 用 って の は 」

とぶ っき ら 棒 に 訊 く 。

「 父 が 休暇 を 取った とき 、 理由 を どう 言った の か 、 お 訊 きし たかった んです 」

「 そんな こと を 訊 いて どう する んだ 」

「 大切な こと な んです 。 教えて 下さい 」

ドア が 開いて 、 野上 幸代 が お 茶 を 運んで 来る 。 植松 は 渋々 、 口 を 開いた 。

「 よく 知ら ん よ 。 旅行 に 出る と か いう こと だった が 」

「 長い 休み の 場合 、 前もって 届 を 出す もの な んでしょう ? その とき は どう だった んです か ? 「 それ は …… 確か 、 前 の 日 に 急に 言い出した んだ 。 何 か 急な 用 が できた と か 言って いた 」

「 どこ へ 行く と か 、 何 が ある と か 言い ませ ん でした か 」

「 私 は 知ら ん よ 。 何 だ ね 、 一体 」

植松 は 苛々 と 、「 君 の お 父さん の 件 で うち の 社 は イメージ を 傷つけ られて 迷惑 し とる 。 私 も 社長 から 文句 を 言わ れる し 、 全く 、 目 を かけて やった お返し が これ だ ! 「 そう ガミガミ 言い なさ んな よ 」

野上 幸代 は 、 課長 だろう と 、 ちっとも 怖く ない らしかった 。 「 佐々 本 さん の 働き で ずいぶん いい 思い して る くせ に 」

植松 は ジロッ と いまいまし げ に にらんだ が 、 何とも 言え ない 様子 で 、

「 ともかく 、 もう 佐々 本 は うち の 社 と は 関係ない んだ 。 急に 訪ねて 来 られて も 迷惑だ ね 」

と 夕 里子 に 向 って 言った 。

「 よく 分 り ました 」

夕 里子 は 腹立たし さ を 、 何とか 抑えて 、 言った 。 「 お邪魔 し ました 」

と 席 を 立つ 。

「 ああ 、 君 ──」

植松 が 言い すぎた と 思った の か 、 上 衣 の ポケット から 財布 を 出す と 、 一万 円 札 を 一 枚 抜いて 、「 何かと 困る だろう 。 これ は 小遣い に し なさい 」

と 、 夕 里子 の 手 を 取って 、 握ら せた 。

夕 里子 は 一瞬 、 鋭い 目 で 植松 を 見返す と 、 テーブル の 上 に あった 卓上 ライター を 取って 、 炎 を 出した 。 そして 、 一万 円 札 の 端に 火 を つけた 。

「 おい ! 何 を する ! 植松 が 目 を 丸く した 。 一万 円 札 は たちまち メラメラ と 燃え上って 、 灰皿 の 中 へ 落ち 、 灰 と 化した 。

夕 里子 は ていねいに 頭 を 下げ 、

「 灰 を お返し し ます 」

と 言って 、 応接 室 を 出て 行った 。

「 佐々木 さん 、 お 昼 休み よ 」

と 、 誰 か の 声 が した 。 「 佐々木 さん 」

ほら ほら 、 佐々木 さん 、 どうして 返事 し ない の かしら ? ── 佐々木 か 。 佐々 本 と 似て る わ ね 、 と 綾子 は 一心に コピー の 機械 と 取り組み ながら 思った 。

ん ? 何 か 夕 里子 が 言って たわ ね 。


三 姉妹 探偵 団 01 chapter 03 (1) みっ|しまい|たんてい|だん| Three Sisters Detective Agency 01 chapter 03 (1)

3  OL 綾子 の 優雅な 生活 ol|あやこ||ゆうがな|せいかつ 3 OL Reiko's elegant life

「 行って らっしゃい 、 お 姉 さま 」 おこなって|||あね| "Welcome, older sister"

夕 里子 は ていねいに 頭 を 下げて 、 綾子 を 送り出した 。 ゆう|さとご|||あたま||さげて|あやこ||おくりだした Yuuriko lowered her head carefully and sent out dumplings. いや 、 送り込んだ 。 |おくりこんだ No, I sent you.

水口 淳子 の 勤めて いた 会社 ──〈 東京 セクレタリーサービス 〉 と いう 名 だった ── の 入った ビル の 下 まで 、 綾子 を 引きずる ように 連れて 来て 、 ビル の 入口 で 別れよう か と 思った が 、 どうも 心配で エレベーター の 所 まで やって 来た 。 みずぐち|あつこ||つとめて||かいしゃ|とうきょう||||な|||はいった|びる||した||あやこ||ひきずる||つれて|きて|びる||いりぐち||わかれよう|||おもった|||しんぱいで|えれべーたー||しょ|||きた I thought that I would bring Shiiko to the bottom of the building containing Reiko Mizuguchi 's work, which was the name of Tokyo Secretarial Service, as if it were to pull off at the entrance of the building. I came to the elevator with my worries. まだ 不安な ので 、 ついに 五 階 まで 上って 、 当の 会社 の ガラス 扉 を 開けて やる ところ まで 、 夕 里子 と して は とことん 面倒 を みた のである 。 |ふあんな|||いつ|かい||のぼって|とうの|かいしゃ||がらす|とびら||あけて||||ゆう|さとご|||||めんどう||| As I am still uneasy, I finally went up to the fifth floor and opened the glass door of the company, and I was extremely troubled as Yuuriko.

さて 、 これ で いい だろう 。 Well, that would be fine. 腕 時計 を みる と 、 ぎりぎり 、 九 時 二 分 前 だった 。 うで|とけい|||||ここの|じ|ふた|ぶん|ぜん| Looking at the arm clock, it was just nine minutes past nine o'clock.

「 間に合って 良かった ! まにあって|よかった "It was good to be in time! さて 帰る か 、 と 下り の エレベーター を 待って いる と 、 一 階 から 各駅 停車 で 上って 来る 。 |かえる|||くだり||えれべーたー||まって|||ひと|かい||かくえき|ていしゃ||のぼって|くる If I wait for the down elevator, I will come up from the first floor with stops at each station. そして 扉 が 開いた 、 と 思う と 、 凄い 勢い で 中 から 若い 男 が 飛び出して 来た 。 |とびら||あいた||おもう||すごい|いきおい||なか||わかい|おとこ||とびだして|きた And when I thought that the door was open, a young man rushed out from inside at a great speed.

ドシン と 夕 里子 に 突き当り 、 不意 を くらって 夕 里子 は もの の みごとに ひっくり返って しまった 。 ||ゆう|さとご||つきあたり|ふい|||ゆう|さとご|||||ひっくりかえって| At the end of Doshin and Yuriko, Yuriko overcame a surprise and turned over in the beauty of things.

「 気 を 付けろ ! き||つけろ "Watch out! と 男 は 怒鳴って 、〈 東京 セクレタリー 〉 へ 飛び込んで 行く 。 |おとこ||どなって|とうきょう|||とびこんで|いく And the man yells and jumps into <Tokyo secretary>.

「 ああ 、 びっくり した ……」

夕 里子 は 目 を パチクリ して 、「 どっち が 気 を 付けろ だ か ……」 ゆう|さとご||め||||||き||つけろ|| Yuuriko slammed her eyes and said, "Which one is careful ..."

凄い もん ね 、 サラリーマン って 。 すごい|||さらりーまん| It's ugly, it's a salary man.

一方 、 夕 里子 に 押し込ま れた 綾子 は 、〈 受付 〉 と 札 の ある カウンター の 前 で 、 黙って 立って いた 。 いっぽう|ゆう|さとご||おしこま||あやこ||うけつけ||さつ|||かうんたー||ぜん||だまって|たって| On the other hand, Yuriko, who was pushed into Yuuriko, stood silently in front of the counter with <reception> and a tag.

その 内 、 誰 か が 話しかけて くれる んじゃ ない か 、 と 思って いた のである 。 |うち|だれ|||はなしかけて||||||おもって|| Among them, I thought that someone would talk to me.

何やら 若い 男 が 猛烈な ダッシュ で 駆け込んで 来る と 、 カード を 時計 に 差し込んで 、 なにやら|わかい|おとこ||もうれつな|だっしゅ||かけこんで|くる||かーど||とけい||さしこんで When a young man rushed in with a ferocious dash, he inserted the card into the watch,

「 やった ! と 、 飛び上って いる 。 |とびあがって| And are flying up.

あれ が タイムレコーダー なる もの らしい 。 It seems that that will be a time clock. 九 時 に 間に合う って 、 そんなに 嬉しい もの な の かしら ? ここの|じ||まにあう|||うれしい|||| Is it so nice to be in time for nine o'clock?

ポロン 、 ポロン と チャイム が 鳴って 、 仕事 が 始まる 。 |||ちゃいむ||なって|しごと||はじまる Poron, Poron and chime ring, and work begins.

広い 事務 所 で は ない 。 ひろい|じむ|しょ||| It is not a large office. ── 人数 は 、 ざっと 数えて 、 二十 人 ぐらい か 。 にんずう|||かぞえて|にじゅう|じん|| か Do you count roughly twenty people?

女性 の 方 が 多い ようで 、 綾子 は 少し ホッと した 。 じょせい||かた||おおい||あやこ||すこし|ほっと| There seemed to be more women, and Ayako was a little relieved. しかし ── 綾子 は 困って しまった 。 |あやこ||こまって| But 綾 Reiko was in trouble.

いくら 待って も 、 誰 も 、 |まって||だれ| No matter how long you wait, everyone

「 何の ご用 ? なんの|ごよう "What are you using? と 訊 いて くれ ない のだ 。 |じん|||| I can not ask you.

それ も 当然で 、 綾子 は カウンター から 三 メートル も 離れて 立って いた のである 。 ||とうぜんで|あやこ||かうんたー||みっ|めーとる||はなれて|たって|| Naturally, Reiko stood three meters away from the counter. 受付 の 女性 は 、 綾子 が 、 たぶん どこ か の 出入り の 業者 の お 使い か 何 か で 、 そこ で 書類 の 出来上り を 待って いる んだろう 、 と 思って いた 。 うけつけ||じょせい||あやこ||||||でいり||ぎょうしゃ|||つかい||なん|||||しょるい||できあがり||まって||||おもって| The lady at the reception desk thought that Reiko would probably be waiting for the completion of the paperwork there, probably using something from an in-and-coming trader.

十 分 近く たって から 、 綾子 は やっと 、 恐る恐る カウンター の 方 へ 一 メートル ばかり 近付いた 。 じゅう|ぶん|ちかく|||あやこ|||おそるおそる|かうんたー||かた||ひと|めーとる||ちかづいた After it was close enough, Reiko finally approached the fearful counter for only one meter.

受付 の 女性 が 気付いて 、 うけつけ||じょせい||きづいて The lady at the reception notices

「 何 かご 用 です か ? なん||よう|| "What is it for? と 声 を かけて 来た 。 |こえ|||きた I called out to me.

「 あの ……」

と 言い かける と 、 |いい|| If you say,

「 どう だ 、 滑り込み セーフ だ ぜ 」 ||すべりこみ|せーふ|| "How about it, it 's slippery safe"

と 、 ワイシャツ に ネクタイ 、 サンダル を パタパタ いわ せ ながら 、 くわえ タバコ で やって 来た の は 、 さっき 飛び込んで 来た 若い 男 である 。 |わいしゃつ||ねくたい|さんだる|||||||たばこ|||きた||||とびこんで|きた|わかい|おとこ| And, while having a shirt and tie and sandals, it is the young man who came in with the cigarette that came with a cigarette. ずいぶんだ らし の ない 会社 ね 、 と 綾子 は 眉 を ひそめた 。 ||||かいしゃ|||あやこ||まゆ|| Keiko hid a bribe, saying that it was a company without much damage.

「 ぎりぎりだった でしょ 」 "It was barely right."

と 、 受付 の 女の子 が 言った 。 |うけつけ||おんなのこ||いった Said the girl at the reception.

「 エレベーター の 前 に 女の子 が ポケーッ と 立って や がって さ 、 こっち は 急いで る から 、 ドーンと ぶつかって 、 向 う は 引っくり返 っち まった よ 」 えれべーたー||ぜん||おんなのこ||||たって||||||いそいで|||どーんと||むかい|||ひっくりかえ||| "The girl stood up in front of the elevator and she was in a hurry, so I ran into Dawn and headed back to the end."

「 まあ 、 可哀そうに 」 |かわいそうに "Well, sorry,"

「 キョトンと して や ん の よ 。 きょとんと||||| "I'm going to be Kyoton. スカート が ちらっと め くれて 、 白い の が 見えて さ 」 すかーと|||||しろい|||みえて| The skirt looks a little bit white and I can see it.

「 いや ねえ ! 二 人 が 一緒に なって 笑った 。 ふた|じん||いっしょに||わらった The two became together and laughed.

綾子 は 、 それ が 夕 里子 の こと に 違いない 、 と 気付いた 。 あやこ||||ゆう|さとご||||ちがいない||きづいた Reiko realized that it must have been Yuuriko. ── 気 は 弱い が 、 妹 想い で は ある のだ 。 き||よわい||いもうと|おもい|||| 気 I have a weak mind, but my sister's feelings are. ムッと して 、 カッ と なって 、 キッ と にらみつける と 、 むっと|||||||| When I was stunned, it became a squeaky, and when I looked upon it,

「 それ は 私 の 妹 です ! ||わたくし||いもうと| "It is my sister! と 声 を 震わせて 、「 女の子 の スカート の 中 を 覗く なんて 、 恥ずかしく ない んです か ! |こえ||ふるわせて|おんなのこ||すかーと||なか||のぞく||はずかしく||| "I'm not ashamed to look in the girl 's skirt! 二 人 は キョトンと して 綾子 を 眺めて いた が 、 ふた|じん||きょとんと||あやこ||ながめて|| The two were watching Kyoko as Kyoton, but

「── これ 、 誰 ? |だれ と 男 の 方 が 言った 。 |おとこ||かた||いった

「 さあ ……」

「 私 、 アルバイト です 」 わたくし|あるばいと| "I am a part-time job."

綾子 は 堂々と (? あやこ||どうどうと ) 名乗った 。 なのった ) I named myself.

一方 、 夕 里子 の 方 とて 、 遊んで いた わけで は ない 。 いっぽう|ゆう|さとご||かた||あそんで|||| On the other hand, Yuuriko was not playing as well.

父 が 勤めて いた 〈 K 建設 〉 の ビル の 近く まで 行って 電話 を かけた 。 ちち||つとめて||k|けんせつ||びる||ちかく||おこなって|でんわ|| I went to the vicinity of the building of <K construction> where my father was working and made a phone call.

「 もしもし 、 販売 第 二 課 の 西川 さん 、 おいでになり ます でしょう か 」 |はんばい|だい|ふた|か||にしかわ||||| "Thank you, Mr. Nishikawa in the Second Division of Sales, will you come?"

「 西川 です か 。 にしかわ|| そちら 様 は 」 |さま| That person is "

「 あの …… バー 〈 三毛猫 〉 と 申し ます 」 |ばー|みけねこ||もうし| "That ...... I say my name is Bar 三 毛」 "

「 少々 お 待ち 下さい 」 しょうしょう||まち|ください " Please wait "

夕 里子 の 声 は 、 多少 大人びて 聞こえる のである 。 ゆう|さとご||こえ||たしょう|おとなびて|きこえる| Yuriko's voice sounds a little more mature. 西川 は 父 と 親しい 同僚 で 、 何 度 か 家 に 遊び に 来た こと も ある ので 、 よく 知っている のだ 。 にしかわ||ちち||したしい|どうりょう||なん|たび||いえ||あそび||きた||||||しっている| Nishikawa is a close colleague of my father and I know a lot because I have been to the house several times.

「── おい 、 何 だ よ 、 会社 へ かけて 来ちゃ 困る じゃ ない か 」 |なん|||かいしゃ|||きちゃ|こまる||| "-Hey, what are you, I'm having trouble coming to the office"

電話 口 を 手 で 囲って 、 周り へ 聞こえ ない ように 話して いる らしい 。 でんわ|くち||て||かこって|まわり||きこえ|||はなして|| It seems that you are covering the phone with your hand and talking so that you can not hear it. 夕 里子 は 笑い を かみ殺した 。 ゆう|さとご||わらい||かみころした Yuriko grabbed a laugh and killed him.

「 今月 、 ちゃんと 払う から さ 、 もう 少し 待って くれよ 」 こんげつ||はらう||||すこし|まって| "This month, I'll pay for it properly, wait a little more."

「 もしもし 、 西川 さん 」 |にしかわ|

「── 誰 だい ? だれ| "-Who are you? 「 佐々 本 夕 里子 です 」 ささ|ほん|ゆう|さとご| "I am Yuko Sasamoto."

「 え ? 何 だ 、 びっくり した 」 なん||| I was surprised.

大きな 吐息 が 、 電話 口 から 伝わって 来た 。 おおきな|といき||でんわ|くち||つたわって|きた A big sigh came over from the phone.

「 ちょっと 、 お 話し たい んです けど 」 ||はなし||| "I want to talk to you for a moment,"

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「── お 父さん の こと じゃ 、 大変だろう ねえ 」 |とうさん||||たいへんだろう| "こ と About Father, it will be difficult"

K 建設 ビル の 向 い に ある 、 小さな コーヒーハウス で 、 西川 は 言った 。 k|けんせつ|びる||むかい||||ちいさな|||にしかわ||いった Nishikawa said in a small coffee house in the direction of the K construction building. コロコロ と よく 太った 、 童顔 の 男 だ が 、 父 と 同期 の 入社 だった 。 ころころ|||ふとった|どうがん||おとこ|||ちち||どうき||にゅうしゃ| He was a fat and well-dressed man, but he joined his father in sync.

「 会社 で 、 父 の 話 、 出 ます か 」 かいしゃ||ちち||はなし|だ|| "Will you talk about your father at the company?"

「 まあ 、 あんまり ね ……。 "Well, well ... ...... 分 る だろう 。 ぶん|| You will understand. 話 と いって も ……」 はなし||| Even if you talk about it ... "

「 分 り ます 。 ぶん|| 西川 さん 、 父 と 親しかった でしょう 。 にしかわ||ちち||したしかった| Mr. Nishikawa, I would have been familiar with my father. 何 か ご存知 あり ませ ん か 」 なん||ごぞんじ|||| Do you know anything?

「 何 か ……。 なん| いや 、 知って りゃ いい んだ が ねえ 」 |しって||||| No, I wish I knew it "

「 父 に 恋人 が いたって こと 、 知ってい ました ? ちち||こいびと||||しってい| "Did you know that your father had a lover? 「 いや 、 全然 。 |ぜんぜん 巧 く 隠して いた もん だ と 思って びっくり した んだ よ 。 こう||かくして|||||おもって|||| I was surprised to find that it was a skillfully hidden one. しかし 、 いて も 不思議じゃ ない が ね 。 |||ふしぎじゃ||| But it is no wonder if you have one. 君 の お 父さん は 、 あの 通り ハンサムだ し 」 きみ|||とうさん|||とおり|はんさむだ| Your father is handsome as it is.

「 何 か 父 の 口 から 聞いた こと あり ませ ん か ? なん||ちち||くち||きいた||||| "Have you ever heard something from your father 's mouth? お 酒 を 飲んで る とき なんか に 。 |さけ||のんで|||| When you have a drink. 誰 か 、 好きな 女性 が いる 、 くらい 」 だれ||すきな|じょせい||| Somebody has a favorite woman, so much "

「 それ は 訊 かれた よ 、 警察 でも ね 。 ||じん|||けいさつ|| "It was beaten, even the police. しかし 、 全然 記憶 ない んだ 。 |ぜんぜん|きおく|| まあ 、 酔って る とき の 話 なんて 、 右 から 左 へ 通り抜け ち まう もん だ けど ね 」 |よって||||はなし||みぎ||ひだり||とおりぬけ|||||| Well, the story of being drunk is passing from right to left though "

「 あの 水口 淳子 って 女性 、 妊娠 して たって いう んです 。 |みずぐち|あつこ||じょせい|にんしん|||| "That Ms. Mizuguchi is a woman, she is pregnant. でも 、 父 は やもめ です から 、 別に 他の 女 の 人 に 子供 が できて も 、 殺す 必要 ない はずでしょ ? |ちち|||||べつに|たの|おんな||じん||こども||||ころす|ひつよう|| But my father is a wife, so if you have children from other women, you should not have to kill them? たとえば 西川 さん みたいに 奥さん の ある 方 なら ともかく 」 |にしかわ|||おくさん|||かた|| For example, if you have a wife like Nishikawa-san, anyway.

「 おいおい 、 夕 里子 ちゃん 、 ゾッと する ような こと 言う な よ 」 |ゆう|さとご||ぞっと||||いう|| "Come on, Yuuriko Yuko, don't say something creepy"

と 、 西川 は 目 を 大きく 見開いて 、「 そんな 話 が 女房 の 耳 に でも 入ったら 、 大騒ぎ だ よ 」 |にしかわ||め||おおきく|みひらいて||はなし||にょうぼう||みみ|||はいったら|おおさわぎ|| Nishikawa opened her eyes wide, "If such a story enters the ear of the wife, it 's a fuss"

「 でも 、 そう 思い ませ ん ? ||おもい|| "But don't you think so? 「 まあ …… 確かに ね 」 |たしかに|

「 私 、 父 は あの 女性 を 殺して ない って 信じて ます 」 わたくし|ちち|||じょせい||ころして|||しんじて| "I believe my father hasn't killed that woman."

「 じゃ 、 他 に 犯人 が いる 、 と ……? |た||はんにん||| "Then there are other criminals ... ...? 「 ええ 。 もちろん です わ 」

「 でも 、 それ なら 、 どうして 佐々 本 は 出て 来 ない んだろう ? ||||ささ|ほん||でて|らい|| "But then why does Sasamoto not come out? 「 出て 来 られ ない 状態 な の か 、 それとも 、 殺さ れて いる か です 」 でて|らい|||じょうたい|||||ころさ|||| "Are you unable to come out or are you killed?"

「 君 は なかなか 凄い こと を 言う ねえ 」 きみ|||すごい|||いう| "You say quite something ugly."

西川 は すっかり 夕 里子 に 呑 ま れて いる 格好だった 。 にしかわ|||ゆう|さとご||どん||||かっこうだった Nishikawa was completely covered with Yuuriko.

「 父 が あの 木曜 から 休暇 を 取って いた の は ご存知 でしょう 」 ちち|||もくよう||きゅうか||とって||||ごぞんじ| "You know that my father had taken a vacation from that Thursday."

「 うん 」

「 でも 、 うち に は 出張 で 札幌 へ 行く と 言って いた んです 。 ||||しゅっちょう||さっぽろ||いく||いって|| "But I told you to go to Sapporo on a business trip. 西川 さん 、 何 か 聞き ませ ん でした ? にしかわ||なん||きき||| Mr Nishikawa, did you ask anything? 「 いや 、 聞か ない な 。 |きか|| "No, I don't ask. ただ ──」

「 何 です か ? なん|| 「 休む って の も 知ら なかった よ 。 やすむ||||しら|| "I didn't even know that I was resting. いつも なら 休み を 取る 前 は 、 あれこれ 伝言 して いく の が 普通だった 。 ||やすみ||とる|ぜん|||でんごん|||||ふつうだった As usual, before taking a day off, it was normal to send a message. 何しろ 販売 は お 得意 あって の 仕事 だ から ね 。 なにしろ|はんばい|||とくい|||しごと||| After all, selling is a job I'm good at. お 得意先 から 電話 が あって も 、 話 が 通じ なかったら 大変だ 。 |とくいさき||でんわ||||はなし||つうじ||たいへんだ Even if the customer calls you, it's tough if you can't talk. お 得意先 を 失う こと に なり かね ない から ね 」 |とくいさき||うしなう||||||| You could lose a customer. "

「 あの とき は 何も 言わ ず に ? |||なにも|いわ|| "At that time, don't say anything? 「 うん 、 変だ な 、 と 思った んだ が 」 |へんだ|||おもった|| "Yep, I thought it was strange."

夕 里子 は 少し 考えて いた が 、 ゆう|さとご||すこし|かんがえて|| Yuuriko was thinking a little, but

「 課長 さん に 会わ せて 下さい 」 かちょう|||あわ||ください "Please let me meet the manager"

と 言った 。 |いった

「 植松 課長 に ? うえまつ|かちょう| でも 、 どうして ? But why ? 「 父 が 休暇 の 理由 を どう 言った か 、 うかがって み たい んです 。 ちち||きゅうか||りゆう|||いった||||| "I want to know how my father told me why I was on vacation. お 願い し ます 」 |ねがい||

「 うん …… しかし ……」 "Yeah ... but ..."

と 、 西川 は 渋って いる 。 |にしかわ||しぶって|

「 いらっしゃる んでしょ ? "Are you here? 「 いる こと は いる よ 。 "I have something to do. ただ …… その …… 僕 が 取り次ぐ と いう の は ……」 ||ぼく||とりつぐ|||| Just ... that ... ... that I will take over ... ... "

夕 里子 は 、 西川 が 、 迷惑 がって いる の に 気付いた 。 ゆう|さとご||にしかわ||めいわく|||||きづいた Yuuriko noticed that Nishikawa was having trouble. 仲間 なんて こんな もの か 、 と 思った 。 なかま||||||おもった I thought what a friend was like this.

「 分 り ました 。 ぶん|| 直接 会社 に うかがい ます 」 ちょくせつ|かいしゃ||| Directly to the company "

夕 里子 は 立ち上った 。 ゆう|さとご||たちのぼった Yuriko got up.

「── 植松 課長 に お目にかかり たい んです けど 」 うえまつ|かちょう||おめにかかり||| "I would like to see Mr. Uematsu, but I'm looking forward to it."

「 どちら 様 でしょう か ? |さま|| " May I ask who's calling ? と 、 受付 の 女性 が 訊 く 。 |うけつけ||じょせい||じん| And, the lady at the reception desk looks into it.

「 佐々 本 夕 里子 と 申し ます 」 ささ|ほん|ゆう|さとご||もうし| "I am Yuko Sasamoto."

「 佐々 本 …… さん ? ささ|ほん| 「 佐々 本 の 娘 です 」 ささ|ほん||むすめ|

「 ちょっと 待って ね 」 |まって|

受付 の 女性 は 、 急いで 席 を 立つ と 、 奥 へ 引込んで 行った 。 うけつけ||じょせい||いそいで|せき||たつ||おく||ひきこんで|おこなった When the lady at the reception desk hurried up, she pulled in to the back.

夕 里子 は 父 の 会社 に 来る の は 初めて だった 。 ゆう|さとご||ちち||かいしゃ||くる|||はじめて| Yuriko was the first to come to my father 's company. 販売 の 人間 は 、 ほとんど どこ か 出歩いて いる ので 、 会社 の 近く で会う など と いう こと は なかった のだ 。 はんばい||にんげん|||||であるいて|||かいしゃ||ちかく|であう||||||| Most of the people on sale went out somewhere, so there was no such thing as meeting near the company.

殺風景な 廊下 と 、 受付 、 そして 衝立 で 仕切ら れた 職場 ……。 さっぷうけいな|ろうか||うけつけ||ついたて||しきら||しょくば A slaughtered hallway, a reception, and a work place divided by partitions ..... これ が モダン と いう もの な の かしら 、 と 夕 里子 は 思った 。 ||もだん||||||||ゆう|さとご||おもった Yuko Yuko wondered if this was something modern.

衝立 の 向 う から 、 電話 の ベル の 音 、 タイプ を 打つ 音 など が 聞こえて 来る 。 ついたて||むかい|||でんわ||べる||おと|たいぷ||うつ|おと|||きこえて|くる From the front of the screen, you will hear the sound of the telephone bell and the sound of hitting the type.

ここ に 、 パパ が 通って 来て いた んだ 、 と 思う と 、 急に 涙 が こみ上げて 来て 、 夕 里子 は あわてて 頭 を 振った 。 ||ぱぱ||かよって|きて||||おもう||きゅうに|なみだ||こみあげて|きて|ゆう|さとご|||あたま||ふった When I thought that dad was coming here, tears came up suddenly and Yuriko shook his head in a hurry. ── しっかり し なきゃ ! ── I have to be firm! お 姉さん と は 違う んだ から ね ! |ねえさん|||ちがう||| It 's different from your sister!

「── あら 、 佐々 本 さん の 娘 さん じゃ ない ? |ささ|ほん|||むすめ||| "Oh, is not Sasamoto 's daughter, right? と 、 女性 の 声 に 振り向く 。 |じょせい||こえ||ふりむく And, turn around to the voice of the woman.

「 あなた 、 佐々 本 さん の ──」 |ささ|ほん||

「 はい 、 そう です 」

「 やっぱり ! もう 四十 代 も かなり 行って いる だろう と いう 感じ の 〈 おばさん 〉 タイプ の 女性 である 。 |しじゅう|だい|||おこなって|||||かんじ|||たいぷ||じょせい| It is a woman of the “Aunt” type that feels that she will be doing quite well in the forties.

「 私 、 同じ 課 に いる 野上 幸代 よ 」 わたくし|おなじ|か|||のかみ|さちよ| "I am in the same department, Yukie Nogami

「 あ ── 父 が よく 話して ました 」 |ちち|||はなして| "Ah-my father talked a lot."

「 凄い お っか ない おばさん が いる って ? すごい||||||| "Are you having an aunt who can't stand it? と 笑って 、「 お 父さん 、 心配 ね 」 |わらって||とうさん|しんぱい| Laughing, "Father, I'm worried"

と 言った 。 |いった

「 ええ 」

「 でも 大丈夫 。 |だいじょうぶ ちゃんと 帰って 来る わ よ 。 |かえって|くる|| I'll come home properly. あなた 、 二 番 目 の 娘 さん ? |ふた|ばん|め||むすめ| You, your second daughter? 「 はい 、 夕 里子 です 」 |ゆう|さとご|

「 一 番 しっかり して る って 、 よく 自慢 して たわ よ 。 ひと|ばん||||||じまん||| "I was very proud to be the best. いつか あなた の 写真 、 見せて もらった こと が ある の 」 |||しゃしん|みせて||||| Someday I've shown you a photo of you.

「 そう です か 」

「 目 の とこ なんか 、 お 父さん そっくり ね 」 め|||||とうさん|| "My eyes are like my father."

夕 里子 は 、 野上 幸代 の ポンポン と 弾ける ような 言い 方 に 、 何とも いえ ない 安堵 を 覚えた 。 ゆう|さとご||のかみ|さちよ||ぽんぽん||はじける||いい|かた||なんとも|||あんど||おぼえた Yuuriko learned a relief that he could not say anything about how he could play with Nomurai Yukiyo's pom-poms. 迷惑 がる でも なく 、 同情 する でも ない 、 親愛 の 情 が あった 。 めいわく||||どうじょう||||しんあい||じょう|| There was a feeling of friendship, neither annoying nor sympathetic.

受付 の 女性 が 戻って 来た 。 うけつけ||じょせい||もどって|きた The lady at the reception has returned.

「 悪い けど 、 植松 課長 は 今 会議 中 で 出て 来 れ ない の 」 わるい||うえまつ|かちょう||いま|かいぎ|なか||でて|らい||| "I'm sorry, but Mr.Uematsu can not come out during the meeting now."

「 いつ 終り ます か 」 |おわり|| "When will it end?"

「 長く かかる と 思う わ 。 ながく|||おもう| "I think it will take a long time. その後 、 すぐ 出かける し 」 そのご||でかける| Then go out soon

「 そう です か ……」

「 ちょっと ちょっと 」

と 、 野上 幸代 が 口 を 挟んだ 。 |のかみ|さちよ||くち||はさんだ And, Yukiyo Nogami pinched his mouth. 「 うち の 課長 が 会議 中 ? ||かちょう||かいぎ|なか "My manager is in a meeting? 何 言って ん の よ ! なん|いって||| What are you saying! つい さっき 、 業者 と ゴルフ の 話 を 一 時間 も して たわ よ 。 ||ぎょうしゃ||ごるふ||はなし||ひと|じかん|||| I just talked about golf with a trader for an hour. ── いらっしゃい 、 夕 里子 さん 」 |ゆう|さとご| い Welcome, Mr. Yu Riko

「 は 、 はい ! 夕 里子 は 、 野上 幸代 の 後 に ついて 、 急いで 歩いて 行った 。 ゆう|さとご||のかみ|さちよ||あと|||いそいで|あるいて|おこなった Yuuriko walked hurriedly after Yukiyo Nogami.

── 応接 室 へ 、 小柄な 初老 の 男 が 入って 来た 。 おうせつ|しつ||こがらな|しょろう||おとこ||はいって|きた 小 A small elderly man came into the reception room. いかにも 口うるさい 感じ の する 男 である 。 |くちうるさい|かんじ|||おとこ| It is a man who feels very frustrating.

「 何 かね 、 用 って の は 」 なん||よう||| "What is it for?"

とぶ っき ら 棒 に 訊 く 。 |||ぼう||じん| I went to a stick.

「 父 が 休暇 を 取った とき 、 理由 を どう 言った の か 、 お 訊 きし たかった んです 」 ちち||きゅうか||とった||りゆう|||いった||||じん||| "When my father took a vacation, I wanted to ask him what he meant and why.

「 そんな こと を 訊 いて どう する んだ 」 |||じん|||| "What are you going to do about that?"

「 大切な こと な んです 。 たいせつな||| 教えて 下さい 」 おしえて|ください Please tell me "

ドア が 開いて 、 野上 幸代 が お 茶 を 運んで 来る 。 どあ||あいて|のかみ|さちよ|||ちゃ||はこんで|くる The door opens and Yukiyo Nogami comes to carry the tea. 植松 は 渋々 、 口 を 開いた 。 うえまつ||しぶしぶ|くち||あいた Uematsu reluctantly opened his mouth.

「 よく 知ら ん よ 。 |しら|| "I don't know well. 旅行 に 出る と か いう こと だった が 」 りょこう||でる|||||| I was told that I would go on a trip

「 長い 休み の 場合 、 前もって 届 を 出す もの な んでしょう ? ながい|やすみ||ばあい|まえもって|とどけ||だす||| "In the case of a long vacation, is it something to give notice in advance? その とき は どう だった んです か ? How was it then? 「 それ は …… 確か 、 前 の 日 に 急に 言い出した んだ 。 ||たしか|ぜん||ひ||きゅうに|いいだした| "That 's true ... yes, I made a sudden statement yesterday. 何 か 急な 用 が できた と か 言って いた 」 なん||きゅうな|よう|||||いって| It was said that something could be done suddenly. "

「 どこ へ 行く と か 、 何 が ある と か 言い ませ ん でした か 」 ||いく|||なん|||||いい|||| "Where did you go and what did you say?"

「 私 は 知ら ん よ 。 わたくし||しら|| 何 だ ね 、 一体 」 なん|||いったい What the hell is it? "

植松 は 苛々 と 、「 君 の お 父さん の 件 で うち の 社 は イメージ を 傷つけ られて 迷惑 し とる 。 うえまつ||いらいら||きみ|||とうさん||けん||||しゃ||いめーじ||きずつけ||めいわく|| Uematsu irritated, "My father's problem is that our company hurts the image and bothers me. 私 も 社長 から 文句 を 言わ れる し 、 全く 、 目 を かけて やった お返し が これ だ ! わたくし||しゃちょう||もんく||いわ|||まったく|め||||おかえし||| I am also complained by the president, and this is my return with all my eyes! 「 そう ガミガミ 言い なさ んな よ 」 |がみがみ|いい|な さ|| "Yes, I don't say it."

野上 幸代 は 、 課長 だろう と 、 ちっとも 怖く ない らしかった 。 のかみ|さちよ||かちょう||||こわく|| Nojo Yukiyo was not afraid at all, even if he was the manager. 「 佐々 本 さん の 働き で ずいぶん いい 思い して る くせ に 」 ささ|ほん|||はたらき||||おもい|||| "I wish you a very good time with Sasamoto's work."

植松 は ジロッ と いまいまし げ に にらんだ が 、 何とも 言え ない 様子 で 、 うえまつ|||||||||なんとも|いえ||ようす| Uematsu was grinned with Giro, but in a state he could not say anything

「 ともかく 、 もう 佐々 本 は うち の 社 と は 関係ない んだ 。 ||ささ|ほん||||しゃ|||かんけいない| "In any case, Sasamoto has nothing to do with my company. 急に 訪ねて 来 られて も 迷惑だ ね 」 きゅうに|たずねて|らい|||めいわくだ| It 's annoying if you suddenly come and visit us.

と 夕 里子 に 向 って 言った 。 |ゆう|さとご||むかい||いった Said Yuuriko for Yuko.

「 よく 分 り ました 」 |ぶん|| "I understand well"

夕 里子 は 腹立たし さ を 、 何とか 抑えて 、 言った 。 ゆう|さとご||はらだたし|||なんとか|おさえて|いった Yuuriko somehow suppressed the anger and said. 「 お邪魔 し ました 」 おじゃま|| " I bother you "

と 席 を 立つ 。 |せき||たつ I will take a seat with you.

「 ああ 、 君 ──」 |きみ

植松 が 言い すぎた と 思った の か 、 上 衣 の ポケット から 財布 を 出す と 、 一万 円 札 を 一 枚 抜いて 、「 何かと 困る だろう 。 うえまつ||いい|||おもった|||うえ|ころも||ぽけっと||さいふ||だす||いちまん|えん|さつ||ひと|まい|ぬいて|なにかと|こまる| If I thought that Uematsu had said too much, if I put my wallet out of my jacket pocket, I pulled out a 10,000-yen bill and said, "I'll be in trouble. これ は 小遣い に し なさい 」 ||こづかい||| Make this a pocket money.

と 、 夕 里子 の 手 を 取って 、 握ら せた 。 |ゆう|さとご||て||とって|にぎら| And, I took a hand of Yuuriko and let me hold it.

夕 里子 は 一瞬 、 鋭い 目 で 植松 を 見返す と 、 テーブル の 上 に あった 卓上 ライター を 取って 、 炎 を 出した 。 ゆう|さとご||いっしゅん|するどい|め||うえまつ||みかえす||てーぶる||うえ|||たくじょう|らいたー||とって|えん||だした As Yuuriko looked back at Uematsu with a sharp eye for a moment, he took the tabletop lighter on the table and fired it out. そして 、 一万 円 札 の 端に 火 を つけた 。 |いちまん|えん|さつ||はしたに|ひ|| And, I lit the end of the ten thousand yen bill.

「 おい ! 何 を する ! なん|| 植松 が 目 を 丸く した 。 うえまつ||め||まるく| Uematsu rounded his eyes. 一万 円 札 は たちまち メラメラ と 燃え上って 、 灰皿 の 中 へ 落ち 、 灰 と 化した 。 いちまん|えん|さつ|||めらめら||もえあがって|はいざら||なか||おち|はい||かした The 10,000 yen bill burned up immediately with the melamel, fell into the ashtray and turned into ash.

夕 里子 は ていねいに 頭 を 下げ 、 ゆう|さとご|||あたま||さげ Yuuriko carefully lowered her head,

「 灰 を お返し し ます 」 はい||おかえし|| "We will return the ash"

と 言って 、 応接 室 を 出て 行った 。 |いって|おうせつ|しつ||でて|おこなった I said, I went out of the reception room.

「 佐々木 さん 、 お 昼 休み よ 」 ささき|||ひる|やすみ| "Sasaki-san, lunch break"

と 、 誰 か の 声 が した 。 |だれ|||こえ|| And there was someone's voice. 「 佐々木 さん 」 ささき|

ほら ほら 、 佐々木 さん 、 どうして 返事 し ない の かしら ? ||ささき|||へんじ|||| You see, Sasaki-san, why don't you reply? ── 佐々木 か 。 ささき| 佐々 本 と 似て る わ ね 、 と 綾子 は 一心に コピー の 機械 と 取り組み ながら 思った 。 ささ|ほん||にて|||||あやこ||いっしんに|こぴー||きかい||とりくみ||おもった It is similar to Sasamoto, but Keiko thought while working with the copy machine.

ん ? 何 か 夕 里子 が 言って たわ ね 。 なん||ゆう|さとご||いって|| Yuko Riko said something.