×

우리는 LingQ를 개선하기 위해서 쿠키를 사용합니다. 사이트를 방문함으로써 당신은 동의합니다 쿠키 정책.


image

三姉妹探偵団 4 怪奇篇, 三姉妹探偵団 4 Chapter 09

三 姉妹 探偵 団 4 Chapter 09

9 死んだ 雇い主

よく 暖房 の 効いた 応接 室 で 、 三崎 刑事 は 、 つい ウトウト し かけて いた 。

何しろ 寝不足 気味な のである 。

この 暮れ の 時期 に ……。

刑事 に は 、 暮れ の 大掃除 も 正月 の くつろぎ も ない 。

もちろん 、 事件 が なければ 休め も する のだ が 、 年の暮れ と いう の は 、 むしろ 事件 の 多い 時期 である 。

もう ここ 何 年 も 、 三崎 は 家族 と 、 のんびり 正月 を 過 した こと が ない 。

予定 と いう もの の 立た ない 商売 である 以上 、 仕方 の ない こと で は ある が 、 やはり 妻 や 子 へ の 後ろめたい 思い は 抜き がたい もの だった 。

もちろん 、 三崎 も 、 人並みに 静かな 正月 を 迎え たい と は 思う のだ が ── 殺さ れた 被害 者 の 、 哀れな 姿 、 その 家族 の 嘆き を 思い出す と 、 とても のんびり コタツ に 入って いる わけに は いか なく なる 。

── 今日 は 暮れ の 二十八 日 。

他の 官公庁 は 御用 納 め の 日 だ 。

応接 室 の ドア が 開いて 、 三崎 は ハッと 顔 を 上げた 。

「 お 待た せ し ました 」

と 、 入って 来た の は 五十 歳 前後 の 、 見るからに インテリ タイプ の 紳士 。

「 私 が 沼 淵 です が 」

「 三崎 と 申し ます 」

眠って いた こと を 気付か れ ない ように 、 三崎 は 、 咳払い する ふり を して 、 目 を こすった 。

「 お 休み 中 の ところ 、 申し訳 あり ませ ん 」

「 いや ……。

それ で 、 お 話 と いう の は ? 「 平川 浩子 さん と いう 娘 さん を ご存知 です か 」

「 平川 ……。

私 の 大学 の ゼミ に いる 平川 君 の こと か な 」

「 そうです 」

「 それ なら 、 もちろん 知って い ます 。

平川 君 が 何 か ──」

「 実は 、 他殺 死体 に なって 、 発見 さ れた のです 」

それ を 聞いて 、 沼 淵 は サッと 青ざめた 。

その 様子 は 、 ただ の 驚き 様 で は ない 。

三崎 は 、 たちまち 体 が 熱く なる の を 感じた 。 手応え が あった のだ 。

「 平川 君 が …… 殺さ れた ?

沼 淵 は 、 低い 声 で 訊 き 返した 。

「 その 通り です 。

ご 両親 の 話 で は 、 先生 が 家庭 教師 の 口 を 紹介 なさった と か 」

「 それ は ── 確かに そうです 」

沼 淵 は 、 首 を 振った 。

「 何て こと だ ……」

「 その 家 は 何という ──」

「 平川 君 の 死体 は どこ で 見付かった のです か ?

と 、 沼 淵 は 遮って 言った 。

「 都 内 の 、 高速 道路 の 下 に ある 公園 です 」

「 都 内 で ?

都 内 で 見付かった のです か ? と 、 沼 淵 は 意外 そうに 言った 。

「 そうです 。

── 何 か ご存知 です ね 」

「 いや ……。

私 は ……」

と 、 口ごもる 。

「 平川 さん は 、 手首 に 縛ら れた 跡 が あり ました 。

背中 に は 鞭 で 打た れた あと も 。 その 上 で 絞め 殺さ れた のです 。 あんな むごい こと を した 人間 を 、 許して おく わけに は いきま せ ん 」

三崎 は 決然と した 調子 で 言った 。

「 ご存知 の こと は 、 何もかも 話して 下さい 」

沼 淵 は 、 青ざめた 顔 に 、 汗 を かいて いた 。

「── いや 、 分 り ました 」

と 、 汗 を 拭って 、「 まさか こんな こと に なろう と は ……。

私 も 、 昨日 まで 、 何も 知ら なかった のです 」

「 昨日 まで ?

「 そうです 。

── いや 、 どう お 話し した もの か ……」

沼 淵 は 、 少し 深い 呼吸 を くり返し 、 気持 を 落ちつけて いる 様子 だった 。

「 実は 、 昨日 、 昔 の 教え子 が 訪ねて 来た のです 。 教え子 と いって も 、 私 が まだ やっと 助教授 に なった ばかりの ころ ── もう 二十 年 近く も 前 の こと です が 、 それ こそ 、 全く 久しぶりの 対面 で 、 話 が 弾み ました 。 そして 一緒に 居間 で ウィスキー など 飲んで いた のです 。 その 内 、 自然 、 話 は 同窓 生 の 消息 の こと に なり 、 あいつ は どうして いる 、 こいつ は どこ で 何 を して いる 、 と 思い 付く まま に 話 を して いた のです 。 その 内 、 ふと ──」

「 しかし ねえ 、 沼 淵 先生 」

と 、 その 教え子 は 言った 。

「 僕 も もう 四十 です よ 。 同窓 の 奴 で 、 僕 の 知って る だけ でも 死んだ 奴 が 四 人 も いる ……」

「 そう か ?

そりゃ 知ら なかった な 」

少し 酔い の 回って いる 沼 淵 は 、 ため息 を ついて 、「 教え子 の 葬式 に 出る って の は いやな もん だ 。

お前 と 同期 で 、 誰 かいた かな ? 「 ええ 。

この 数 年間 で 、 バタバタ と ね 。 四十 前後 って の は 、 危 い 時期 な んです よ 。 二十 代 、 三十 代 と 会社 に こき使わ れ 、 その 疲れ が どっと 出る 。 しかも 仕事 は 一向に 減り も せ ず 、 ただ 責任 だけ が のしかかって 来る ──」

「 おいおい 、 そう 侘 し い こと を 言う な よ 」

と 、 沼 淵 は 苦笑い した 。

「 だって 事実 です よ 。

四十 で 死んじゃ ねえ ……。 結局 、 働く だけ 働いて 、 ホッと 息 を つく 間 も ない んです から 。 山 神 、 佐藤 、 石垣 ……。 もう 一 人 、 誰 だった かな ? いやだ な 、 忘れ ち まった 」

「 おい 」

と 、 沼 淵 は 言った 。

「 今 、 石垣 と 言った か ? 「 ええ 」

「 石垣 って ……。

あの 、 哲学 者 みたいな 感じ の 男 か ? 「 そうです 。

『 ソクラテス 』 なんて あだ名 で 呼んで た じゃ あり ませ ん か 」

「 憶 えて る よ 。

しかし ── そりゃ 勘違い だ 」

と 、 沼 淵 は 笑った 。

「 勘違い ?

「 ああ 。

石垣 は 死んじゃ い ない 。 可哀そうな こと を 言う な よ 」

教え子 の 方 は 目 を パチクリ さ せて 、

「 死んで ない って ……。

先生 、 石垣 の 奥さん の 方 と 間違えて る んじゃ あり ませ ん か 」

「 どうして ?

彼女 も 確かに 教え子 だ よ 。 一 年 下 だった と 思った が 」

「 そうです 。

あの 亭主 の 方 は 、 死に ました よ 。 つい 、 半年 ほど 前 です 」

「 まさか 」

と 、 沼 淵 は 言った 。

「 つい 最近 、 俺 は 奥さん から 電話 を もらった ぞ 。 その とき 、 話 を した んだ 、 亭主 の こと も 。 元気に して おり ます 、 と 言って た 」

「 妙な 話 です ね 。

僕 は 、 石垣 の 葬儀 に 出た んです 。 間違い あり ませ ん よ 」

「 葬儀 に ?

本当 か 、 それ は ? 「 ええ 。

── 奥さん の 方 は もう 半 狂乱 と いう か ……。 もともと 、 あの 夫婦 、 少し まともで ない ような 者 同士 って ところ でした から ね 。 じゃ 、 きっと 、 奥さん 、 ノイローゼ な んじゃ ない か な 。 旦那 が 生きて る と 思い 込んで いる と か 」

「 ノイローゼ ?

「 ええ 。

そう なった と して も おかしく ない です よ 。 あの 悲しみ 方 は 、 普通じゃ あり ませ ん でした から ね 」

「 しかし …… そんな 様子 は なかった が 」

と 、 沼 淵 は 首 を 振った 。

「 石垣 の 奥さん 、 何の 用 で 、 電話 して 来た んです ?

「 ああ ……。

子供 が いる らしい 。 十三 と か いって た 、 男の子 で 」

「 見 ました よ 」

と 、 肯 いて 、「 目 の 大きな 子 で ね 。

また これ が 気味 悪い と いう か 、 まるっきり 感情 と いう もの の ない 顔 を して る んです 。 子供 だ から って 、 十三 に も なりゃ 、 父親 が 死んだ って こと の 意味 ぐらい 分 る でしょう 。 でも 、 悲し そうな 様子 なんて 、 まるで ない 。 母親 の 嘆き ぶり と 対照 的に 、 冷たい 顔 して 座って る んです 。 ── あれ も 、 逆の 意味 で 、 まともじゃ なかった な 」

「 その 子 の 家庭 教師 を 捜して くれ 、 と 言わ れた んだ 」

と 、 沼 淵 は 言った 。

「 優しい 女子 学生 が いい って こと だった 。 だから 、 今 の ゼミ の 女の子 を 紹介 して やった んだ が 」

教え子 は 、 それ を 聞いて グラス を テーブル に 置いた 。

「 そい つ は 、 ますます おかしい や 」

「 どうして だ ?

「 石垣 が 死んだ の は 、 なぜ だった と 思い ます ?

「 知ら ん が ……」

「 子供 の 家庭 教師 に 来た 女子 学生 と 、 石垣 は ── つまり 、 親密な 仲 に なって しまった んです 。

石垣 は その 女子 学生 と 無理 心中 した んです よ 」

「 何 だって ?

すっかり 酔い は さめて しまった 。

「 女子 学生 を 殺して 、 自分 は 手首 を 切った んです 。

── 東京 で の 話 じゃ ない ので 、 新聞 に も のら なかった ようです が ……。 部屋 が 血 の 海 だった と か 、 葬式 に 来て た 奴 から 聞き ました よ 」

沼 淵 は 、 息 を ついた 。

「── 信じ られ ん !

「 そんな こと が あって 、 まだ 奥さん が 女子 学生 を 家庭 教師 に 頼む なんて 、 考え られ ませ ん よ 。

そう でしょう 」

「 しかし ── 実際 に 頼んで 来た んだ ぞ 」

「 妙です ね 。

まあ 、 もう 亭主 の 方 は 死んで る から 、 浮気 さ れる 心配 は なし 、 って こと な の か な 」

「 うむ ……」

沼 淵 は 曖昧に 肯 いた 。

そう かも しれ ない 。

しかし 、 いくら 夫 が い なく なった から と いって 、 家庭 教師 が 若い 女子 学生 で なくて は いけない と いう 理由 は ない のに 、 石垣 園子 は なぜ 、 わざわざ 沼 淵 に そう 頼んで 来たり した のだろう ?

── その 話 で 、 すっかり 酔い も さめて しまった 沼 淵 は 、 教え子 が 帰って 行く と 、 ちょっと 不安に なった 。

石垣 が 死んだ と いう の が 本当 なら ── あの 教え子 が 噓 を つく はず も ない が ── 園子 夫人 は 明らかに まともで は ない こと に なる 。

そんな 所 へ 、 自分 の ゼミ の 女子 学生 を 行か せて いる のだ ……。

「── 私 は 、 ゆうべ 、 石垣 園 子 から 聞いた 電話 番号 へ かけて み ました 」

と 、 沼 淵 は 言った 。

「 しかし 、 その 番号 は 、 もう 今 、 使わ れて い なかった のです 」

「 なるほど 」

三崎 は 肯 いた 。

それ は 、 平川 浩 子 の 両親 が 聞いて いた の と 同じ 番号 だった のだろう 。

「 石垣 と いう 人 が どこ に 住んで いる の か 、 お 聞き に なり ませ ん でした か 」

と 、 三崎 が 訊 く 。

「 詳しく は 知ら ん のです 。

ただ ── 長野 の 方 の 山 の 中 だ と 聞いて い ます 」

確かに 、 聞か さ れて いた 電話 番号 は 、 その 辺り の もの だった 。

三崎 の 方 でも 、 その 一帯 を 当ら せて は いた のだ が 、 ともかく 手がかり が なかった 。

しかし 、 今 は 「 石垣 」 と いう 名 が 分 って いる のだ !

道 が 見えて 来た 感じ で 、 三崎 は 疲れ など 吹っ飛んで しまった 。

沼 淵 は 、 石垣 達夫 ── それ が 夫 の 名 だった ── と 、 妻 の 園子 に ついて 、 知って いる 限り の こと を 話した 。

更に 、 昨日 訪ねて 来た 教え子 の 連絡 先 も 、 調べて 来た 。

「 いや 、 これ だけ 分 れば 、 大いに 助かり ます 」

と 、 三崎 は 手帳 を 閉じた 。

「 しかし ── 平川 君 の ご 両親 に 会わ せる 顔 が あり ませ ん よ 」

と 、 沼 淵 は 沈んだ 声 で 言って 、 ハッと した ように 顔 を 上げた 。

「── 大変だ ! 「 え ?

「 いや ── 実は 二 、 三 日 前 の こと です が 、 石垣 園 子 から 、 もう 一 度 電話 が あった のです 」

「 ほう ?

「 そう 、 その とき 、 彼女 は 、 平川 君 が 、 都合 で やめて しまった と 言い ました 」

「 自分 から やめた 、 と ?

「 そうです 。

そして ── 誰 か 、 他 に 適当な 人 を 推薦 して いただけ ませ ん か 、 と ……」

それ を 聞いて 、 三崎 は 、 ソファ から 飛び上り そうに なった 。

「 つまり ── 石垣 園子 は 、 また 先生 の 所 へ 連絡 して 来る のです ね ?

「 いや 、 そう じゃ ない のです 」

と 、 沼 淵 は 首 を 振った 。

「 私 は 、 もう 他の 学生 を 推薦 して しまった のです 。 ── まだ 石垣 の 所 へ 行って い なければ いい が 」

「 誰 です 、 それ は ?

「 やはり 、 私 の ゼミ の 学生 で 、 佐々 本 綾子 と いい ます 」

「 佐々 本 …… 綾子 、 です ね 」

と メモ を して 、「── 佐々 本 ?

どこ か で 聞いた 名 だ 、 と 思った 。

「 すぐ 電話 して み ましょう 。

あそこ の 三 人 姉妹 が 、 揃って 石垣 の 山荘 へ 出かけて いる かも しれ ない 」

と 、 沼 淵 は 腰 を 上げた 。

「 待って 下さい !

三崎 は 目 を みはって 、「 佐々 本 綾子 と いう の は ── 三 人 姉妹 の 長女 で 、 次女 が 夕 里子 と いう しっかり者 、 三女 が ガッチリ 屋 の 珠美 ……」

「 その 通り です 」

と 肯 いて 、 沼 淵 は 、「 まさか ── その 三 人 まで 、 死体 で 見付かった など と いう こと は ……」

「 何て こと だ !

あの 三 人 が !

より に よって 、 そんな 所 へ ……。 三崎 は 首 を 振って 言った 。

「 いや ……。

まだ 、 死体 は 見付かって い ませ ん ……。 まだ ……」


三 姉妹 探偵 団 4 Chapter 09 みっ|しまい|たんてい|だん|chapter

9  死んだ 雇い主 しんだ|やといぬし

よく 暖房 の 効いた 応接 室 で 、 三崎 刑事 は 、 つい ウトウト し かけて いた 。 |だんぼう||きいた|おうせつ|しつ||みさき|けいじ|||うとうと|||

何しろ 寝不足 気味な のである 。 なにしろ|ねぶそく|ぎみな|

この 暮れ の 時期 に ……。 |くれ||じき|

刑事 に は 、 暮れ の 大掃除 も 正月 の くつろぎ も ない 。 けいじ|||くれ||おおそうじ||しょうがつ||||

もちろん 、 事件 が なければ 休め も する のだ が 、 年の暮れ と いう の は 、 むしろ 事件 の 多い 時期 である 。 |じけん|||やすめ|||||としのくれ||||||じけん||おおい|じき|

もう ここ 何 年 も 、 三崎 は 家族 と 、 のんびり 正月 を 過 した こと が ない 。 ||なん|とし||みさき||かぞく|||しょうがつ||か||||

予定 と いう もの の 立た ない 商売 である 以上 、 仕方 の ない こと で は ある が 、 やはり 妻 や 子 へ の 後ろめたい 思い は 抜き がたい もの だった 。 よてい|||||たた||しょうばい||いじょう|しかた|||||||||つま||こ|||うしろめたい|おもい||ぬき||| It is unavoidable that it is a business without planning things, but as I thought, the desperate feelings towards my wife and child were hard to get rid of.

もちろん 、 三崎 も 、 人並みに 静かな 正月 を 迎え たい と は 思う のだ が ── 殺さ れた 被害 者 の 、 哀れな 姿 、 その 家族 の 嘆き を 思い出す と 、 とても のんびり コタツ に 入って いる わけに は いか なく なる 。 |みさき||ひとなみに|しずかな|しょうがつ||むかえ||||おもう|||ころさ||ひがい|もの||あわれな|すがた||かぞく||なげき||おもいだす||||こたつ||はいって|||||| Of course, Misaki also wants to celebrate a quiet New Year as a crowd, but when I think of the poor figure of the victim who was killed and the lamentation of his family, he is quite relaxed in Kotatsu It will be gone.

── 今日 は 暮れ の 二十八 日 。 きょう||くれ||にじゅうはち|ひ

他の 官公庁 は 御用 納 め の 日 だ 。 たの|かんこうちょう||ごよう|おさむ|||ひ|

応接 室 の ドア が 開いて 、 三崎 は ハッと 顔 を 上げた 。 おうせつ|しつ||どあ||あいて|みさき||はっと|かお||あげた

「 お 待た せ し ました 」 |また|||

と 、 入って 来た の は 五十 歳 前後 の 、 見るからに インテリ タイプ の 紳士 。 |はいって|きた|||ごじゅう|さい|ぜんご||みるからに|いんてり|たいぷ||しんし

「 私 が 沼 淵 です が 」 わたくし||ぬま|ふち||

「 三崎 と 申し ます 」 みさき||もうし|

眠って いた こと を 気付か れ ない ように 、 三崎 は 、 咳払い する ふり を して 、 目 を こすった 。 ねむって||||きづか||||みさき||せきばらい|||||め||

「 お 休み 中 の ところ 、 申し訳 あり ませ ん 」 |やすみ|なか|||もうしわけ|||

「 いや ……。

それ で 、 お 話 と いう の は ? |||はなし|||| 「 平川 浩子 さん と いう 娘 さん を ご存知 です か 」 ひらかわ|ひろこ||||むすめ|||ごぞんじ||

「 平川 ……。 ひらかわ

私 の 大学 の ゼミ に いる 平川 君 の こと か な 」 わたくし||だいがく||ぜみ|||ひらかわ|きみ||||

「 そうです 」 そう です

「 それ なら 、 もちろん 知って い ます 。 |||しって||

平川 君 が 何 か ──」 ひらかわ|きみ||なん|

「 実は 、 他殺 死体 に なって 、 発見 さ れた のです 」 じつは|たさつ|したい|||はっけん|||

それ を 聞いて 、 沼 淵 は サッと 青ざめた 。 ||きいて|ぬま|ふち||さっと|あおざめた

その 様子 は 、 ただ の 驚き 様 で は ない 。 |ようす||||おどろき|さま||| The situation is not just a surprise.

三崎 は 、 たちまち 体 が 熱く なる の を 感じた 。 みさき|||からだ||あつく||||かんじた 手応え が あった のだ 。 てごたえ|||

「 平川 君 が …… 殺さ れた ? ひらかわ|きみ||ころさ|

沼 淵 は 、 低い 声 で 訊 き 返した 。 ぬま|ふち||ひくい|こえ||じん||かえした

「 その 通り です 。 |とおり|

ご 両親 の 話 で は 、 先生 が 家庭 教師 の 口 を 紹介 なさった と か 」 |りょうしん||はなし|||せんせい||かてい|きょうし||くち||しょうかい|||

「 それ は ── 確かに そうです 」 ||たしかに|そう です

沼 淵 は 、 首 を 振った 。 ぬま|ふち||くび||ふった

「 何て こと だ ……」 なんて||

「 その 家 は 何という ──」 |いえ||なんという

「 平川 君 の 死体 は どこ で 見付かった のです か ? ひらかわ|きみ||したい||||みつかった||

と 、 沼 淵 は 遮って 言った 。 |ぬま|ふち||さえぎって|いった

「 都 内 の 、 高速 道路 の 下 に ある 公園 です 」 と|うち||こうそく|どうろ||した|||こうえん|

「 都 内 で ? と|うち|

都 内 で 見付かった のです か ? と|うち||みつかった|| と 、 沼 淵 は 意外 そうに 言った 。 |ぬま|ふち||いがい|そう に|いった

「 そうです 。 そう です

── 何 か ご存知 です ね 」 なん||ごぞんじ||

「 いや ……。

私 は ……」 わたくし|

と 、 口ごもる 。 |くちごもる

「 平川 さん は 、 手首 に 縛ら れた 跡 が あり ました 。 ひらかわ|||てくび||しばら||あと|||

背中 に は 鞭 で 打た れた あと も 。 せなか|||むち||うた||| その 上 で 絞め 殺さ れた のです 。 |うえ||しめ|ころさ|| あんな むごい こと を した 人間 を 、 許して おく わけに は いきま せ ん 」 |||||にんげん||ゆるして||||||

三崎 は 決然と した 調子 で 言った 。 みさき||けつぜんと||ちょうし||いった

「 ご存知 の こと は 、 何もかも 話して 下さい 」 ごぞんじ||||なにもかも|はなして|ください

沼 淵 は 、 青ざめた 顔 に 、 汗 を かいて いた 。 ぬま|ふち||あおざめた|かお||あせ|||

「── いや 、 分 り ました 」 |ぶん||

と 、 汗 を 拭って 、「 まさか こんな こと に なろう と は ……。 |あせ||ぬぐって|||||||

私 も 、 昨日 まで 、 何も 知ら なかった のです 」 わたくし||きのう||なにも|しら||

「 昨日 まで ? きのう|

「 そうです 。 そう です

── いや 、 どう お 話し した もの か ……」 |||はなし|||

沼 淵 は 、 少し 深い 呼吸 を くり返し 、 気持 を 落ちつけて いる 様子 だった 。 ぬま|ふち||すこし|ふかい|こきゅう||くりかえし|きもち||おちつけて||ようす|

「 実は 、 昨日 、 昔 の 教え子 が 訪ねて 来た のです 。 じつは|きのう|むかし||おしえご||たずねて|きた| 教え子 と いって も 、 私 が まだ やっと 助教授 に なった ばかりの ころ ── もう 二十 年 近く も 前 の こと です が 、 それ こそ 、 全く 久しぶりの 対面 で 、 話 が 弾み ました 。 おしえご||||わたくし||||じょきょうじゅ||||||にじゅう|とし|ちかく||ぜん|||||||まったく|ひさしぶりの|たいめん||はなし||はずみ| そして 一緒に 居間 で ウィスキー など 飲んで いた のです 。 |いっしょに|いま||うぃすきー||のんで|| その 内 、 自然 、 話 は 同窓 生 の 消息 の こと に なり 、 あいつ は どうして いる 、 こいつ は どこ で 何 を して いる 、 と 思い 付く まま に 話 を して いた のです 。 |うち|しぜん|はなし||どうそう|せい||しょうそく|||||||||||||なん|||||おもい|つく|||はなし|||| その 内 、 ふと ──」 |うち|

「 しかし ねえ 、 沼 淵 先生 」 ||ぬま|ふち|せんせい

と 、 その 教え子 は 言った 。 ||おしえご||いった

「 僕 も もう 四十 です よ 。 ぼく|||しじゅう|| 同窓 の 奴 で 、 僕 の 知って る だけ でも 死んだ 奴 が 四 人 も いる ……」 どうそう||やつ||ぼく||しって||||しんだ|やつ||よっ|じん||

「 そう か ?

そりゃ 知ら なかった な 」 |しら||

少し 酔い の 回って いる 沼 淵 は 、 ため息 を ついて 、「 教え子 の 葬式 に 出る って の は いやな もん だ 。 すこし|よい||まわって||ぬま|ふち||ためいき|||おしえご||そうしき||でる||||||

お前 と 同期 で 、 誰 かいた かな ? おまえ||どうき||だれ|| 「 ええ 。

この 数 年間 で 、 バタバタ と ね 。 |すう|ねんかん|||| 四十 前後 って の は 、 危 い 時期 な んです よ 。 しじゅう|ぜんご||||き||じき||| 二十 代 、 三十 代 と 会社 に こき使わ れ 、 その 疲れ が どっと 出る 。 にじゅう|だい|さんじゅう|だい||かいしゃ||こきつかわ|||つかれ|||でる しかも 仕事 は 一向に 減り も せ ず 、 ただ 責任 だけ が のしかかって 来る ──」 |しごと||いっこうに|へり|||||せきにん||||くる Moreover, I do not reduce jobs in any way, but only responsibility will come - ─ ─ "

「 おいおい 、 そう 侘 し い こと を 言う な よ 」 ||た|||||いう||

と 、 沼 淵 は 苦笑い した 。 |ぬま|ふち||にがわらい|

「 だって 事実 です よ 。 |じじつ||

四十 で 死んじゃ ねえ ……。 しじゅう||しんじゃ| 結局 、 働く だけ 働いて 、 ホッと 息 を つく 間 も ない んです から 。 けっきょく|はたらく||はたらいて|ほっと|いき|||あいだ|||| After all, I work as much as I work, and I do not have much time to breathe. 山 神 、 佐藤 、 石垣 ……。 やま|かみ|さとう|いしがき もう 一 人 、 誰 だった かな ? |ひと|じん|だれ|| いやだ な 、 忘れ ち まった 」 ||わすれ||

「 おい 」

と 、 沼 淵 は 言った 。 |ぬま|ふち||いった

「 今 、 石垣 と 言った か ? いま|いしがき||いった| 「 ええ 」

「 石垣 って ……。 いしがき|

あの 、 哲学 者 みたいな 感じ の 男 か ? |てつがく|もの||かんじ||おとこ| 「 そうです 。 そう です

『 ソクラテス 』 なんて あだ名 で 呼んで た じゃ あり ませ ん か 」 そくらてす||あだな||よんで||||||

「 憶 えて る よ 。 おく|||

しかし ── そりゃ 勘違い だ 」 ||かんちがい|

と 、 沼 淵 は 笑った 。 |ぬま|ふち||わらった

「 勘違い ? かんちがい

「 ああ 。

石垣 は 死んじゃ い ない 。 いしがき||しんじゃ|| 可哀そうな こと を 言う な よ 」 かわいそうな|||いう||

教え子 の 方 は 目 を パチクリ さ せて 、 おしえご||かた||め||||

「 死んで ない って ……。 しんで||

先生 、 石垣 の 奥さん の 方 と 間違えて る んじゃ あり ませ ん か 」 せんせい|いしがき||おくさん||かた||まちがえて|||||| Mr. Teacher, you are mistaken for Ishigaki's wife, are not you? "

「 どうして ?

彼女 も 確かに 教え子 だ よ 。 かのじょ||たしかに|おしえご|| 一 年 下 だった と 思った が 」 ひと|とし|した|||おもった|

「 そうです 。 そう です

あの 亭主 の 方 は 、 死に ました よ 。 |ていしゅ||かた||しに|| つい 、 半年 ほど 前 です 」 |はんとし||ぜん|

「 まさか 」

と 、 沼 淵 は 言った 。 |ぬま|ふち||いった

「 つい 最近 、 俺 は 奥さん から 電話 を もらった ぞ 。 |さいきん|おれ||おくさん||でんわ||| その とき 、 話 を した んだ 、 亭主 の こと も 。 ||はなし||||ていしゅ||| 元気に して おり ます 、 と 言って た 」 げんきに|||||いって|

「 妙な 話 です ね 。 みょうな|はなし||

僕 は 、 石垣 の 葬儀 に 出た んです 。 ぼく||いしがき||そうぎ||でた| 間違い あり ませ ん よ 」 まちがい||||

「 葬儀 に ? そうぎ|

本当 か 、 それ は ? ほんとう||| 「 ええ 。

── 奥さん の 方 は もう 半 狂乱 と いう か ……。 おくさん||かた|||はん|きょうらん||| もともと 、 あの 夫婦 、 少し まともで ない ような 者 同士 って ところ でした から ね 。 ||ふうふ|すこし||||もの|どうし||||| じゃ 、 きっと 、 奥さん 、 ノイローゼ な んじゃ ない か な 。 ||おくさん|のいろーぜ||||| 旦那 が 生きて る と 思い 込んで いる と か 」 だんな||いきて|||おもい|こんで|||

「 ノイローゼ ? のいろーぜ

「 ええ 。

そう なった と して も おかしく ない です よ 。 あの 悲しみ 方 は 、 普通じゃ あり ませ ん でした から ね 」 |かなしみ|かた||ふつうじゃ||||||

「 しかし …… そんな 様子 は なかった が 」 ||ようす|||

と 、 沼 淵 は 首 を 振った 。 |ぬま|ふち||くび||ふった

「 石垣 の 奥さん 、 何の 用 で 、 電話 して 来た んです ? いしがき||おくさん|なんの|よう||でんわ||きた|

「 ああ ……。

子供 が いる らしい 。 こども||| 十三 と か いって た 、 男の子 で 」 じゅうさん|||||おとこのこ|

「 見 ました よ 」 み||

と 、 肯 いて 、「 目 の 大きな 子 で ね 。 |こう||め||おおきな|こ||

また これ が 気味 悪い と いう か 、 まるっきり 感情 と いう もの の ない 顔 を して る んです 。 |||きみ|わるい|||||かんじょう||||||かお|||| Moreover, it is said that it is unpleasant, I have a face without things like a whole feeling. 子供 だ から って 、 十三 に も なりゃ 、 父親 が 死んだ って こと の 意味 ぐらい 分 る でしょう 。 こども||||じゅうさん||||ちちおや||しんだ||||いみ||ぶん|| でも 、 悲し そうな 様子 なんて 、 まるで ない 。 |かなし|そう な|ようす||| 母親 の 嘆き ぶり と 対照 的に 、 冷たい 顔 して 座って る んです 。 ははおや||なげき|||たいしょう|てきに|つめたい|かお||すわって|| In contrast to mother's wailing, I sit with a cold face. ── あれ も 、 逆の 意味 で 、 まともじゃ なかった な 」 ||ぎゃくの|いみ||||

「 その 子 の 家庭 教師 を 捜して くれ 、 と 言わ れた んだ 」 |こ||かてい|きょうし||さがして|||いわ||

と 、 沼 淵 は 言った 。 |ぬま|ふち||いった

「 優しい 女子 学生 が いい って こと だった 。 やさしい|じょし|がくせい||||| だから 、 今 の ゼミ の 女の子 を 紹介 して やった んだ が 」 |いま||ぜみ||おんなのこ||しょうかい||||

教え子 は 、 それ を 聞いて グラス を テーブル に 置いた 。 おしえご||||きいて|ぐらす||てーぶる||おいた

「 そい つ は 、 ますます おかしい や 」

「 どうして だ ?

「 石垣 が 死んだ の は 、 なぜ だった と 思い ます ? いしがき||しんだ||||||おもい|

「 知ら ん が ……」 しら||

「 子供 の 家庭 教師 に 来た 女子 学生 と 、 石垣 は ── つまり 、 親密な 仲 に なって しまった んです 。 こども||かてい|きょうし||きた|じょし|がくせい||いしがき|||しんみつな|なか||||

石垣 は その 女子 学生 と 無理 心中 した んです よ 」 いしがき|||じょし|がくせい||むり|しんじゅう|||

「 何 だって ? なん|

すっかり 酔い は さめて しまった 。 |よい|||

「 女子 学生 を 殺して 、 自分 は 手首 を 切った んです 。 じょし|がくせい||ころして|じぶん||てくび||きった|

── 東京 で の 話 じゃ ない ので 、 新聞 に も のら なかった ようです が ……。 とうきょう|||はなし||||しんぶん|||||| 部屋 が 血 の 海 だった と か 、 葬式 に 来て た 奴 から 聞き ました よ 」 へや||ち||うみ||||そうしき||きて||やつ||きき||

沼 淵 は 、 息 を ついた 。 ぬま|ふち||いき||

「── 信じ られ ん ! しんじ||

「 そんな こと が あって 、 まだ 奥さん が 女子 学生 を 家庭 教師 に 頼む なんて 、 考え られ ませ ん よ 。 |||||おくさん||じょし|がくせい||かてい|きょうし||たのむ||かんがえ|||| "There is such a thing, I can not think of yet that my wife will ask a tutor for girls students.

そう でしょう 」

「 しかし ── 実際 に 頼んで 来た んだ ぞ 」 |じっさい||たのんで|きた||

「 妙です ね 。 みょうです|

まあ 、 もう 亭主 の 方 は 死んで る から 、 浮気 さ れる 心配 は なし 、 って こと な の か な 」 ||ていしゅ||かた||しんで|||うわき|||しんぱい||||||||

「 うむ ……」

沼 淵 は 曖昧に 肯 いた 。 ぬま|ふち||あいまいに|こう|

そう かも しれ ない 。

しかし 、 いくら 夫 が い なく なった から と いって 、 家庭 教師 が 若い 女子 学生 で なくて は いけない と いう 理由 は ない のに 、 石垣 園子 は なぜ 、 わざわざ 沼 淵 に そう 頼んで 来たり した のだろう ? ||おっと||||||||かてい|きょうし||わかい|じょし|がくせい|||||||りゆう||||いしがき|そのこ||||ぬま|ふち|||たのんで|きたり||

── その 話 で 、 すっかり 酔い も さめて しまった 沼 淵 は 、 教え子 が 帰って 行く と 、 ちょっと 不安に なった 。 |はなし|||よい||||ぬま|ふち||おしえご||かえって|いく|||ふあんに|

石垣 が 死んだ と いう の が 本当 なら ── あの 教え子 が 噓 を つく はず も ない が ── 園子 夫人 は 明らかに まともで は ない こと に なる 。 いしがき||しんだ|||||ほんとう|||おしえご|||||||||そのこ|ふじん||あきらかに||||||

そんな 所 へ 、 自分 の ゼミ の 女子 学生 を 行か せて いる のだ ……。 |しょ||じぶん||ぜみ||じょし|がくせい||いか|||

「── 私 は 、 ゆうべ 、 石垣 園 子 から 聞いた 電話 番号 へ かけて み ました 」 わたくし|||いしがき|えん|こ||きいた|でんわ|ばんごう||||

と 、 沼 淵 は 言った 。 |ぬま|ふち||いった

「 しかし 、 その 番号 は 、 もう 今 、 使わ れて い なかった のです 」 ||ばんごう|||いま|つかわ||||

「 なるほど 」

三崎 は 肯 いた 。 みさき||こう|

それ は 、 平川 浩 子 の 両親 が 聞いて いた の と 同じ 番号 だった のだろう 。 ||ひらかわ|ひろし|こ||りょうしん||きいて||||おなじ|ばんごう||

「 石垣 と いう 人 が どこ に 住んで いる の か 、 お 聞き に なり ませ ん でした か 」 いしがき|||じん||||すんで|||||きき||||||

と 、 三崎 が 訊 く 。 |みさき||じん|

「 詳しく は 知ら ん のです 。 くわしく||しら||

ただ ── 長野 の 方 の 山 の 中 だ と 聞いて い ます 」 |ながの||かた||やま||なか|||きいて||

確かに 、 聞か さ れて いた 電話 番号 は 、 その 辺り の もの だった 。 たしかに|きか||||でんわ|ばんごう|||あたり|||

三崎 の 方 でも 、 その 一帯 を 当ら せて は いた のだ が 、 ともかく 手がかり が なかった 。 みさき||かた|||いったい||あたら|||||||てがかり||

しかし 、 今 は 「 石垣 」 と いう 名 が 分 って いる のだ ! |いま||いしがき|||な||ぶん|||

道 が 見えて 来た 感じ で 、 三崎 は 疲れ など 吹っ飛んで しまった 。 どう||みえて|きた|かんじ||みさき||つかれ||ふっとんで|

沼 淵 は 、 石垣 達夫 ── それ が 夫 の 名 だった ── と 、 妻 の 園子 に ついて 、 知って いる 限り の こと を 話した 。 ぬま|ふち||いしがき|たつお|||おっと||な|||つま||そのこ|||しって||かぎり||||はなした Numbuchi talked about what he knew about Ishigaki Tatsuo - that was the husband 's name - and his wife Sonoko.

更に 、 昨日 訪ねて 来た 教え子 の 連絡 先 も 、 調べて 来た 。 さらに|きのう|たずねて|きた|おしえご||れんらく|さき||しらべて|きた

「 いや 、 これ だけ 分 れば 、 大いに 助かり ます 」 |||ぶん||おおいに|たすかり|

と 、 三崎 は 手帳 を 閉じた 。 |みさき||てちょう||とじた

「 しかし ── 平川 君 の ご 両親 に 会わ せる 顔 が あり ませ ん よ 」 |ひらかわ|きみ|||りょうしん||あわ||かお|||||

と 、 沼 淵 は 沈んだ 声 で 言って 、 ハッと した ように 顔 を 上げた 。 |ぬま|ふち||しずんだ|こえ||いって|はっと|||かお||あげた

「── 大変だ ! たいへんだ 「 え ?

「 いや ── 実は 二 、 三 日 前 の こと です が 、 石垣 園 子 から 、 もう 一 度 電話 が あった のです 」 |じつは|ふた|みっ|ひ|ぜん|||||いしがき|えん|こ|||ひと|たび|でんわ|||

「 ほう ?

「 そう 、 その とき 、 彼女 は 、 平川 君 が 、 都合 で やめて しまった と 言い ました 」 |||かのじょ||ひらかわ|きみ||つごう|||||いい|

「 自分 から やめた 、 と ? じぶん|||

「 そうです 。 そう です

そして ── 誰 か 、 他 に 適当な 人 を 推薦 して いただけ ませ ん か 、 と ……」 |だれ||た||てきとうな|じん||すいせん||||||

それ を 聞いて 、 三崎 は 、 ソファ から 飛び上り そうに なった 。 ||きいて|みさき||||とびあがり|そう に|

「 つまり ── 石垣 園子 は 、 また 先生 の 所 へ 連絡 して 来る のです ね ? |いしがき|そのこ|||せんせい||しょ||れんらく||くる||

「 いや 、 そう じゃ ない のです 」

と 、 沼 淵 は 首 を 振った 。 |ぬま|ふち||くび||ふった

「 私 は 、 もう 他の 学生 を 推薦 して しまった のです 。 わたくし|||たの|がくせい||すいせん||| ── まだ 石垣 の 所 へ 行って い なければ いい が 」 |いしがき||しょ||おこなって||||

「 誰 です 、 それ は ? だれ|||

「 やはり 、 私 の ゼミ の 学生 で 、 佐々 本 綾子 と いい ます 」 |わたくし||ぜみ||がくせい||ささ|ほん|あやこ|||

「 佐々 本 …… 綾子 、 です ね 」 ささ|ほん|あやこ||

と メモ を して 、「── 佐々 本 ? |めも|||ささ|ほん

どこ か で 聞いた 名 だ 、 と 思った 。 |||きいた|な|||おもった

「 すぐ 電話 して み ましょう 。 |でんわ|||

あそこ の 三 人 姉妹 が 、 揃って 石垣 の 山荘 へ 出かけて いる かも しれ ない 」 ||みっ|じん|しまい||そろって|いしがき||さんそう||でかけて||||

と 、 沼 淵 は 腰 を 上げた 。 |ぬま|ふち||こし||あげた

「 待って 下さい ! まって|ください

三崎 は 目 を みはって 、「 佐々 本 綾子 と いう の は ── 三 人 姉妹 の 長女 で 、 次女 が 夕 里子 と いう しっかり者 、 三女 が ガッチリ 屋 の 珠美 ……」 みさき||め|||ささ|ほん|あやこ|||||みっ|じん|しまい||ちょうじょ||じじょ||ゆう|さとご|||しっかりもの|さんじょ||がっちり|や||たまみ

「 その 通り です 」 |とおり|

と 肯 いて 、 沼 淵 は 、「 まさか ── その 三 人 まで 、 死体 で 見付かった など と いう こと は ……」 |こう||ぬま|ふち||||みっ|じん||したい||みつかった|||||

「 何て こと だ ! なんて||

あの 三 人 が ! |みっ|じん|

より に よって 、 そんな 所 へ ……。 ||||しょ| 三崎 は 首 を 振って 言った 。 みさき||くび||ふって|いった

「 いや ……。

まだ 、 死体 は 見付かって い ませ ん ……。 |したい||みつかって||| まだ ……」