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Fairy Tales, 動くかかし

動く かかし

動く かかし

むかし むかし 、 吉 四六 さん と 言う 、 とても ゆかいな 人 が い ました 。 むかし から 、 夏 の 食べ物 と 言えば スイカ で 、 吉 四六 さん の 村 でも スイカ を 作って い ました 。 しかし 最近 は 夜 に なる と スイカ 畑 に 忍び 入り 、 よく 出来た 甘くて おいし そうな スイカ を 片っ端から 盗んで 行く 、 スイカ 泥棒 が 現れた のです 。 「 せっかく の スイカ を 、 何て 腹 の 立つ 奴 だ ! 今夜 こそ 、 ひ っ とらえて やる ぞ ! 」 村人 たち は 見張り 小屋 を 建てて 、 一晩 中 スイカ 畑 を 見張って い ます が 、 スイカ 泥棒 を 捕まえる どころ か 、 ちょっと 油断 した すきに また 新しい スイカ を 盗ま れて しまう のです 。 吉 四六 さん の 畑 も やられて しまった ので 、 いまいましくて たまり ませ ん 。 「 う ー む 。 何 か 良い 工夫 は ない もの だろう か ? 」 昼間 の 畑 仕事 を し ながら 、 吉 四六 さん は 考えて い ました が 、 「・・・ そうだ 、 これ で いこう ! 」 と 、 何 か 名案 を 思い ついて 、 急いで 家 に 戻って 来 ました 。 そして 大きな わら 人形 を 作る と 、 それ に 自分 の 着物 を 着せて 、 手ぬぐい で ほお か むり を し ました 。 かかし の 出来 上がり です 。 「 我ながら 、 なかなか の 出来 だ 」 さっそく 吉 四六 さん は 、 その かかし を かついで 自分 の スイカ 畑 へ 行き ました 。 それ を 見た 村人 たち は 、 吉 四六 さん に 声 を かけ ました 。 「 おいおい 、 吉 四六 さん よ 。 そんな かかし を 持って 、 どう する つもりだ ? 」 吉 四六 さん は スイカ 畑 の まん 中 に かかし を 立てる と 、 まじめな 顔 で 答え ました 。 「 何 って 、 見れば わかる だろう 。 これ は 泥棒 よけ だ 。 毎晩 毎晩 、 番 小屋 で 夜明かし する の は 、 大変だ から なあ 」 「 泥棒 よけ だって ? 」 それ を 聞いて 、 みんな は 大笑い です 。 「 あはは は は は 、 こいつ は いい ! 」 「 吉 四六 さん 、 お前 、 どうかして る んじゃ ない の か ? スイカ 泥棒 は カラス じゃ なくて 、 人間 だ よ 」 しかし 吉 四六 さん は 、 ニッコリ 笑う と 、 「 なあ に 、 世の中 に は 、 カラス より も 馬鹿な 人間 も いる んだ よ 」 と 、 さっさと 帰って しまい ました 。 「 はん 。 何 を 言って やがる 。 人間 が かかし を 怖 がる はず ない だろう に 」 「 吉 四六 さん 、 むかし から 頭 が 良い の か 悪い の か 、 よく わから ねえ 人 だった が 、 やっぱり 馬鹿だ 」 「 そう に 違いない 。 あはは は は は 」 村人 は 、 腹 を かかえて 笑い ました 。 そして 道 を 通る 人 たち も 、 「 おや おや 、 あの スイカ 畑 に は 、 かかし が 立って いる ぞ 。 泥棒 よけ だ そうだ が 、 何とも 変わった 百姓 が いた もん だ 」 と 、 笑い ながら 過ぎて 行き ました 。

さて 、 夜 に なり ました 。 村人 たち は 今夜 も 夜明かし で 見張り を する つもりで 、 それぞれ 自分 たち の 見張り 小屋 に 泊まり 込み ました 。 ですが 、 吉 四六 さん の 小屋 に は 、 誰一人 姿 を 見せ ませ ん 。 「 おや ? 吉 四六 さん め 、 本当に かかし が 泥棒 よけ に なる と 思って い やがる 。 知ら ねえ ぞ 、 明日 に なって 、 スイカ が 一 つ 残らず 盗ま れて も 」 今夜 は 雲 が 多く 月 も 星 も ない 真っ暗闇で 、 泥棒 に は もってこいです 。 すると やはり 、 どこ から と も なく 現れた 二 つ の 黒い 影 が 、 そろりそろり と あぜ道 に 入って 来 ました 。 そして 、 「 おいおい 、 馬鹿な 奴 も いる もの じゃ 。 畑 に かかし なんか 立てて 、 番 小屋 は お 留守 だ ぜ 」 「 こりゃ 、 ありがたい 。 カラス と 人間 を 間違える と は 」 「 全く だ 。 おかげ で 今夜 は 、 うんと 稼げる と いう もの だ 」 二 人 の 泥棒 は 、 吉 四六 さん の 畑 に 入り 込み ました 。 そして 出来る だけ 大きな スイカ を 取ろう と 、 手探り で 畑 の 中 を 探し 回って いる と 、 かかし の そば まで やってき ました 。 する と 突然 、 ♪ ポカッ と 、 いう 音 が して 、 泥棒 の 一 人 が 悲鳴 を あげ ました 。 「 あいた ! おい 、 なん だって 、 おれ の 頭 を 殴る んだ ? 」 「 は あ ? おれ は 殴ら ない ぞ 。 あいた ! お前 こそ 、 おれ を 殴った じゃ ない か ! 」 「 馬鹿 いう な 。 なんで おれ が 殴る もの か 。 お前 こそ 、 あいた ! こら 、 また 殴った な ! 」 二 人 は 思わず 後ろ を 振り返り 、 そして びっくり し ました 。 なんと 後ろ に 立って いた 大きな かかし が 、 大きな 声 で 、 ♪ ケッケケケケー と 、 笑い 出した のです 。 「 お 、 お 、 お化け だ ー ! 」 「 た 、 た 、 助けて くれ ー ! 」 二 人 は あわてて 逃げ 出そう と し ました が 、 スイカ の つる に 足 を とら れて 、 その 場 に 倒れて しまい ました 。 する と かかし が 、 倒れた 泥棒 の 上 に のしかかる と 、 「 お ー い 、 村 の 衆 ! 泥棒 を 捕まえた ぞ ! 早く 早く ! 」 と 、 大声 で 叫び ました 。 なんと その 声 は 、 吉 四六 さん の 声 でした 。 そして 騒ぎ を 聞き つけた 村人 たち が 、 あわてふためく 泥棒 を 捕まえた のです 。 実は 吉 四六 さん 、 わら で 作った 服 を 着て 、 こっそり かかし と 入れ替わって いた のです 。 「 どう だい 。 かかし に 捕まる 、 カラス より も 馬鹿な 人間 が いた だろう 」 吉 四六 さん は 、 ゆかい そうに 笑い ました 。

おしまい


動く かかし うごく| moving scarecrow épouvantail mobile bewegende vogelverschrikker

動く かかし うごく|

むかし むかし 、 吉 四六 さん と 言う 、 とても ゆかいな 人 が い ました 。 ||きち|しろく|||いう|||じん||| Once upon a time, there was a very pleasant person named Yoshishiroku. むかし から 、 夏 の 食べ物 と 言えば スイカ で 、 吉 四六 さん の 村 でも スイカ を 作って い ました 。 ||なつ||たべもの||いえば|すいか||きち|しろく|||むら||すいか||つくって|| しかし 最近 は 夜 に なる と スイカ 畑 に 忍び 入り 、 よく 出来た 甘くて おいし そうな スイカ を 片っ端から 盗んで 行く 、 スイカ 泥棒 が 現れた のです 。 |さいきん||よ||||すいか|はたけ||しのび|はいり||できた|あまくて||そう な|すいか||かたっぱしから|ぬすんで|いく|すいか|どろぼう||あらわれた| 「 せっかく の スイカ を 、 何て 腹 の 立つ 奴 だ ! ||すいか||なんて|はら||たつ|やつ| 今夜 こそ 、 ひ っ とらえて やる ぞ ! こんや|||||| 」   村人 たち は 見張り 小屋 を 建てて 、 一晩 中 スイカ 畑 を 見張って い ます が 、 スイカ 泥棒 を 捕まえる どころ か 、 ちょっと 油断 した すきに また 新しい スイカ を 盗ま れて しまう のです 。 むらびと|||みはり|こや||たてて|ひとばん|なか|すいか|はたけ||みはって||||すいか|どろぼう||つかまえる||||ゆだん||||あたらしい|すいか||ぬすま||| 吉 四六 さん の 畑 も やられて しまった ので 、 いまいましくて たまり ませ ん 。 きち|しろく|||はたけ|||||||| 「 う ー む 。 |-| 何 か 良い 工夫 は ない もの だろう か ? なん||よい|くふう||||| 」   昼間 の 畑 仕事 を し ながら 、 吉 四六 さん は 考えて い ました が 、 「・・・ そうだ 、 これ で いこう ! ひるま||はたけ|しごと||||きち|しろく|||かんがえて||||そう だ||| 」 と 、 何 か 名案 を 思い ついて 、 急いで 家 に 戻って 来 ました 。 |なん||めいあん||おもい||いそいで|いえ||もどって|らい| そして 大きな わら 人形 を 作る と 、 それ に 自分 の 着物 を 着せて 、 手ぬぐい で ほお か むり を し ました 。 |おおきな||にんぎょう||つくる||||じぶん||きもの||きせて|てぬぐい||||||| かかし の 出来 上がり です 。 ||でき|あがり| 「 我ながら 、 なかなか の 出来 だ 」   さっそく 吉 四六 さん は 、 その かかし を かついで 自分 の スイカ 畑 へ 行き ました 。 われながら|||でき|||きち|しろく|||||||じぶん||すいか|はたけ||いき| それ を 見た 村人 たち は 、 吉 四六 さん に 声 を かけ ました 。 ||みた|むらびと|||きち|しろく|||こえ||| 「 おいおい 、 吉 四六 さん よ 。 |きち|しろく|| そんな かかし を 持って 、 どう する つもりだ ? |||もって||| 」   吉 四六 さん は スイカ 畑 の まん 中 に かかし を 立てる と 、 まじめな 顔 で 答え ました 。 きち|しろく|||すいか|はたけ|||なか||||たてる|||かお||こたえ| 「 何 って 、 見れば わかる だろう 。 なん||みれば|| これ は 泥棒 よけ だ 。 ||どろぼう|| 毎晩 毎晩 、 番 小屋 で 夜明かし する の は 、 大変だ から なあ 」 「 泥棒 よけ だって ? まいばん|まいばん|ばん|こや||よあかし||||たいへんだ|||どろぼう|| 」   それ を 聞いて 、 みんな は 大笑い です 。 ||きいて|||おおわらい| 「 あはは は は は 、 こいつ は いい ! あ は は|||||| 」 「 吉 四六 さん 、 お前 、 どうかして る んじゃ ない の か ? きち|しろく||おまえ|||||| スイカ 泥棒 は カラス じゃ なくて 、 人間 だ よ 」   しかし 吉 四六 さん は 、 ニッコリ 笑う と 、 「 なあ に 、 世の中 に は 、 カラス より も 馬鹿な 人間 も いる んだ よ 」 と 、 さっさと 帰って しまい ました 。 すいか|どろぼう||からす|||にんげん||||きち|しろく|||にっこり|わらう||||よのなか|||からす|||ばかな|にんげん|||||||かえって|| 「 はん 。 何 を 言って やがる 。 なん||いって|や がる 人間 が かかし を 怖 がる はず ない だろう に 」 「 吉 四六 さん 、 むかし から 頭 が 良い の か 悪い の か 、 よく わから ねえ 人 だった が 、 やっぱり 馬鹿だ 」 「 そう に 違いない 。 にんげん||||こわ||||||きち|しろく||||あたま||よい|||わるい||||||じん||||ばかだ|||ちがいない あはは は は は 」   村人 は 、 腹 を かかえて 笑い ました 。 あ は は||||むらびと||はら|||わらい| そして 道 を 通る 人 たち も 、 「 おや おや 、 あの スイカ 畑 に は 、 かかし が 立って いる ぞ 。 |どう||とおる|じん||||||すいか|はたけ|||||たって|| 泥棒 よけ だ そうだ が 、 何とも 変わった 百姓 が いた もん だ 」 と 、 笑い ながら 過ぎて 行き ました 。 どろぼう|||そう だ||なんとも|かわった|ひゃくしょう||||||わらい||すぎて|いき|

さて 、 夜 に なり ました 。 |よ||| 村人 たち は 今夜 も 夜明かし で 見張り を する つもりで 、 それぞれ 自分 たち の 見張り 小屋 に 泊まり 込み ました 。 むらびと|||こんや||よあかし||みはり|||||じぶん|||みはり|こや||とまり|こみ| ですが 、 吉 四六 さん の 小屋 に は 、 誰一人 姿 を 見せ ませ ん 。 |きち|しろく|||こや|||だれひとり|すがた||みせ|| 「 おや ? 吉 四六 さん め 、 本当に かかし が 泥棒 よけ に なる と 思って い やがる 。 きち|しろく|||ほんとうに|||どろぼう|||||おもって||や がる 知ら ねえ ぞ 、 明日 に なって 、 スイカ が 一 つ 残らず 盗ま れて も 」   今夜 は 雲 が 多く 月 も 星 も ない 真っ暗闇で 、 泥棒 に は もってこいです 。 しら|||あした|||すいか||ひと||のこらず|ぬすま|||こんや||くも||おおく|つき||ほし|||まっくらやみで|どろぼう||| すると やはり 、 どこ から と も なく 現れた 二 つ の 黒い 影 が 、 そろりそろり と あぜ道 に 入って 来 ました 。 |||||||あらわれた|ふた|||くろい|かげ||||あぜみち||はいって|らい| そして 、 「 おいおい 、 馬鹿な 奴 も いる もの じゃ 。 ||ばかな|やつ|||| 畑 に かかし なんか 立てて 、 番 小屋 は お 留守 だ ぜ 」 「 こりゃ 、 ありがたい 。 はたけ||||たてて|ばん|こや|||るす|||| カラス と 人間 を 間違える と は 」 「 全く だ 。 からす||にんげん||まちがえる|||まったく| おかげ で 今夜 は 、 うんと 稼げる と いう もの だ 」   二 人 の 泥棒 は 、 吉 四六 さん の 畑 に 入り 込み ました 。 ||こんや|||かせげる|||||ふた|じん||どろぼう||きち|しろく|||はたけ||はいり|こみ| そして 出来る だけ 大きな スイカ を 取ろう と 、 手探り で 畑 の 中 を 探し 回って いる と 、 かかし の そば まで やってき ました 。 |できる||おおきな|すいか||とろう||てさぐり||はたけ||なか||さがし|まわって|||||||| する と 突然 、 ♪ ポカッ と 、 いう 音 が して 、 泥棒 の 一 人 が 悲鳴 を あげ ました 。 ||とつぜん||||おと|||どろぼう||ひと|じん||ひめい||| 「 あいた ! おい 、 なん だって 、 おれ の 頭 を 殴る んだ ? |||||あたま||なぐる| 」 「 は あ ? おれ は 殴ら ない ぞ 。 ||なぐら|| あいた ! お前 こそ 、 おれ を 殴った じゃ ない か ! おまえ||||なぐった||| 」 「 馬鹿 いう な 。 ばか|| なんで おれ が 殴る もの か 。 |||なぐる|| お前 こそ 、 あいた ! おまえ|| こら 、 また 殴った な ! ||なぐった| 」   二 人 は 思わず 後ろ を 振り返り 、 そして びっくり し ました 。 ふた|じん||おもわず|うしろ||ふりかえり|||| なんと 後ろ に 立って いた 大きな かかし が 、 大きな 声 で 、 ♪ ケッケケケケー と 、 笑い 出した のです 。 |うしろ||たって||おおきな|||おおきな|こえ||||わらい|だした| 「 お 、 お 、 お化け だ ー ! ||おばけ||- 」 「 た 、 た 、 助けて くれ ー ! ||たすけて||- 」   二 人 は あわてて 逃げ 出そう と し ました が 、 スイカ の つる に 足 を とら れて 、 その 場 に 倒れて しまい ました 。 ふた|じん|||にげ|だそう|||||すいか||||あし|||||じょう||たおれて|| する と かかし が 、 倒れた 泥棒 の 上 に のしかかる と 、 「 お ー い 、 村 の 衆 ! ||||たおれた|どろぼう||うえ|||||-||むら||しゅう 泥棒 を 捕まえた ぞ ! どろぼう||つかまえた| 早く 早く ! はやく|はやく 」 と 、 大声 で 叫び ました 。 |おおごえ||さけび| なんと その 声 は 、 吉 四六 さん の 声 でした 。 ||こえ||きち|しろく|||こえ| そして 騒ぎ を 聞き つけた 村人 たち が 、 あわてふためく 泥棒 を 捕まえた のです 。 |さわぎ||きき||むらびと||||どろぼう||つかまえた| 実は 吉 四六 さん 、 わら で 作った 服 を 着て 、 こっそり かかし と 入れ替わって いた のです 。 じつは|きち|しろく||||つくった|ふく||きて||||いれかわって|| 「 どう だい 。 かかし に 捕まる 、 カラス より も 馬鹿な 人間 が いた だろう 」   吉 四六 さん は 、 ゆかい そうに 笑い ました 。 ||つかまる|からす|||ばかな|にんげん||||きち|しろく||||そう に|わらい|

おしまい