夜 の 事件
よ||じけん
||incident
その ロボット は 、 よく できて いた 。
|ろぼっと||||
The robot was well done.
若い 女 の 人 の 形 を した ロボット で 、 外見 から は 本当の 人間 と 見わけ が つか ない ほど だ 。
わかい|おんな||じん||かた|||ろぼっと||がいけん|||ほんとうの|にんげん||みわけ|||||
||||||||||appearance||||||distinguish|||||
It's a robot in the shape of a young woman, and it's hard to tell from the outside that it's a real human.
楽し そうな 表情 を して いる 。
たのし|そう な|ひょうじょう|||
だが 、 頭 の ほう は あまり よく なく 、 いくつか の 簡単な 言葉 が しゃべれる だけ 。
|あたま|||||||いく つ か||かんたんな|ことば|||
But my head isn't very good, I can only speak a few simple words.
しかし 、 それ で いい のだった 。
町 は ずれ に ある 遊園地 の 、 門 の そば に 立って いる の が 役目 な のだ から 。
まち|||||ゆうえんち||もん||||たって||||やくめ|||
It's the role of standing by the gate in an amusement park on the outskirts of the town.
昼間 は 、 とても にぎやかだ 。
ひるま|||
音楽 も 流れて いる し 、 いろいろな 人 が 声 を かけて くれる 。
おんがく||ながれて||||じん||こえ|||
そして 、 ロボット も いそがしい 。
|ろぼっと||
しかし 、 いま は 静かな 夜 。
|||しずかな|よ
人通り も なくなり 、 ロボット は だまった まま だった 。
ひとどおり|||ろぼっと||||
The traffic was gone, and the robot remained stale.
その 時 、 とつぜん 物かげ から 見なれ ない 連中 が あらわれ 、 ロボット を 取りかこんだ 。
|じ||ものかげ||みなれ||れんちゅう|||ろぼっと||とりかこんだ
|||shadow|||||||||
At that time, people who couldn't be seen from the shadows appeared and took in the robot.
むらさき色 を した 顔 で 、 大きな 赤い 目 を して いる 。
むらさきいろ|||かお||おおきな|あかい|め|||
It has a purple-colored face and big red eyes.
あまり 感じ の いい 姿 で は なかった 。
|かんじ|||すがた|||
腰 に は 、 武器 らしい もの を つけて いる 。
こし|||ぶき|||||
「 手むかい して も 、 むだだ ぞ 。
てむかい||||
handing||||
"It's a waste, even if it's done by hand.
われわれ は 、 キル 星 から やってきた 」
|||ほし||
と 、 ひと り が 言う と 、 ロボット は やさしい 声 を 出した 。
||||いう||ろぼっと|||こえ||だした
The robot made a gentle voice, one said.
「 遠い ところ から 、 ようこそ ……」
とおい|||
「 いやに 落着いて いる な 。
|おちついて||
"No, I'm calm.
われわれ は 、 地球 を ていさつ に 来た のだ 。
||ちきゅう||||きた|
We have come to the earth.
まず 円盤 状 の 宇宙 船 を 上空 で とめ 、 そこ から 望遠 鏡 で 観察 した 。
|えんばん|じょう||うちゅう|せん||じょうくう|||||ぼうえん|きよう||かんさつ|
First, I stopped the disk-shaped spacecraft in the sky and observed it with a telescope from there.
また 、 ラジオ や テレビ の 電波 を 受信 して 、 言葉 を いくらか 覚えた 。
|らじお||てれび||でんぱ||じゅしん||ことば|||おぼえた
I also learned some words by receiving radio and television radio waves.
だが 、 完全な 報告 書 を 作る に は 、 地球 人 を さらに くわしく 調べ なくて は なら ない 。
|かんぜんな|ほうこく|しょ||つくる|||ちきゅう|じん||||しらべ||||
||||||||||||more|||||
However, in order to produce a complete report, we must investigate the earthlings in more detail.
その ため に 着陸 した のだ 。
|||ちゃくりく||
いずれ は 、 この 星 を 占領 する こと に なる だろう 」
|||ほし||せんりょう|||||
「 はい 。
あなた が た を 心から 歓迎 いたします わ 」
||||こころから|かんげい|いたし ます|
I sincerely welcome you. "
「 これ は ふしぎだ 。
あまり 驚か ない ようだ 。
|おどろか||
I don't seem to be very surprised.
ねぼけて でも いる のだろう か 。
I wonder if he is also sick.
それとも 、 われわれ を 甘く 見て いる のだろう か 。
|||あまく|みて|||
Or are they looking at us sweetly?
少し おど か して みよう 」
すこし||||
|to dance|||
キル 星 人 たち は 油断 なく 身がまえ 、 ムチ の ような 長い 棒 を 振りまわした 。
|ほし|じん|||ゆだん||みがまえ|むち|||ながい|ぼう||ふりまわした
The Kill aliens were alert and swung around a long stick, like a whip.
それ が 当たった が 、 ロボット は 笑い顔 で 明るく 答えた 。
||あたった||ろぼっと||わらいがお||あかるく|こたえた
「 ありがとう ございます 」
「 どういう わけ だろう 。
what kind of||
"Why?
なにも 感じ ない らしい 。
|かんじ||
I don't seem to feel anything.
お 礼 など 言って いる 。
|れい||いって|
ほか の 方法 で やって みよう 。
||ほうほう|||
われわれ は 、 地球 人 の 弱点 を 発見 しなければ なら ない のだ 」
||ちきゅう|じん||じゃくてん||はっけん|し なければ|||
We must discover the weaknesses of the Earthlings. "
しかし 、 強い 光線 を 当てて も 、 いやな におい の ガス を 吹きつけて も 同じ こと だった 。
|つよい|こうせん||あてて|||||がす||ふきつけて||おなじ||
However, it was the same whether it was exposed to a strong ray of light or a gas with an unpleasant odor.
「 ありがとう ございます 」
と ロボット は くりかえし 、 時 どき 軽く 頭 を さげる 。
|ろぼっと|||じ||かるく|あたま||
The robot repeatedly bows its head lightly from time to time.
キル 星 人 たち は 、 顔 を 見あわせて 相談 した 。
|ほし|じん|||かお||みあわせて|そうだん|
The Kill aliens consulted face-to-face.
「 だめだ 。
どんな 武器 を 使って も 、 ききめ が ない ようだ な 」
|ぶき||つかって||||||
No matter what weapon you use, it doesn't seem to be textured. "
「 ああ 、 地球 人 と いう もの は 、 こわ さ や 痛 さ を 知ら ない の かも しれ ない 。
|ちきゅう|じん||||||||つう|||しら|||||
|earth|||||||||||||||||
"Oh, the earthlings may not know the stiffness and pain.
めったに ない 強敵 だ 。
||きょうてき|
うすき み が 悪く なって きた ぞ 」
|||わるく|||
The thinness is getting worse. "
「 いや 、 地球 人 は 戦う こと を 知ら ない 、 平和な 種族 な のだろう 。
|ちきゅう|じん||たたかう|||しら||へいわな|しゅぞく||
"No, the earthlings are a peaceful race who do not know to fight.
こんなに いじめて も 、 さっき から 少しも 反抗 し ない 。
|||||すこしも|はんこう||
Even if I bully him so much, I haven't rebelled at all since a while ago.
こんな いい 人 たち の 住む 星 を 占領 しよう と して いる われわれ が 、 はずかしく なって きた 」
||じん|||すむ|ほし||せんりょう|||||||||
We, who are trying to occupy the star where these good people live, have become embarrassed. "
「 いずれ に せよ 、 このまま 引きあげた ほう が よ さ そうだ 」
||||ひきあげた|||||そう だ
"In any case, it seems better to pull it up as it is."
その 意見 に は みな 賛成 だった 。
|いけん||||さんせい|
歩き はじめた キル 星 人 たち に 、 ロボット は お 別れ の あいさつ を した 。
あるき|||ほし|じん|||ろぼっと|||わかれ||||
「 もう お 帰り に なる の 。
||かえり|||
また 、 いらっしゃって ね 」
|coming|
キル 星 人 たち は 林 の なか に かくして おいた 宇宙 船 に 乗り 、 飛び立って いった 。
|ほし|じん|||りん||||||うちゅう|せん||のり|とびたって|
The Kill aliens boarded a spaceship hidden in the woods and took off.
それ は 高速 度 で 音 も なく 遠ざかった 。
||こうそく|たび||おと|||とおざかった
空 を ながめて いた 人 が あった と して も 、 流れ星 と しか 思わ なかった に ちがいない 。
から||||じん||||||ながれぼし|||おもわ|||
Even if some people were looking at the sky, they must have thought of it as a shooting star.
やがて 朝 が きて 、 遊園地 に は 人びと が やってくる 。
|あさ|||ゆうえんち|||ひとびと||
Eventually, the morning came, and people came to the amusement park.
笑い声 や 叫び声 が 聞こえ はじめる 。
わらいごえ||さけびごえ||きこえ|
ロボット は なにごと も なかった か の ように 、 お 客 から 声 を かけられる たび 、 簡単な あいさつ を くりかえす のだった 。
ろぼっと|||||||||きゃく||こえ||かけ られる||かんたんな||||
The robot repeated a simple greeting every time a customer called out, as if nothing had happened.
「 ようこそ ……。
心から 歓迎 いたします わ ……。
こころから|かんげい|いたし ます|
ありがとう ございます ……。
また いらっしゃって ね ……」